検索

検索

×閉じる
トップページ  >  白書・統計・資料  >  白書・統計  >  白書  >  犯罪白書  >  平成13年版犯罪白書のあらまし(目次) >  平成13年版犯罪白書のあらまし 〈第4編〉 増加する犯罪と犯罪者

平成13年版犯罪白書のあらまし 〈第4編〉 増加する犯罪と犯罪者

〈第4編〉 増加する犯罪と犯罪者
1 一般刑法犯の増加~窃盗を中心として(第4表参照)

(1)  刑法犯の認知件数の増加と窃盗
 刑法犯の認知件数は,昭和50年以降,ほぼ一貫して増加を続け,平成7年以降は,5年連続して戦後最高の件数を更新し,前年と比べた増加率も1.2%,2.1%,6.8%,7.9%,12.1%と急激に上昇している。平成12年の刑法犯の認知件数は,昭和49年と比べて,158万4,144件増加しているが,そのうち111万8,011件(70.6%)は窃盗の認知件数の増加によるもので,この間の増加率は110.3%である。

(2)  認知件数から見た窃盗の主要手口
 認知件数の推移を主要手口(最近の10年間で認知件数が連続して1万件を超えているもの)別に見ると,侵入盗では,空き巣ねらい,事務所荒らしが,乗物盗では,自転車盗,オートバイ盗が,非侵入盗では,車上ねらい,自販機荒らし,部品盗,ひったくりの増加が著しい。
 また,最近の特徴として,職業犯として敢行されることが多い,空き巣ねらいと事務所荒らしの反転増加である。空き巣ねらいは,平成9年を底として増加に転じ,以後の3年間の増加率は47.6%となった。事務所荒らしは,平成期に入ると増加傾向を示し,平成9年以降の3年間で51.7%の増加を見せている。なお,ここ数年,空き巣ねらいや事務所荒らしでは,通称ピッキングと呼ばれている特殊な解錠道具を使用した犯行の件数が急増している。
 そのほか職業犯的色彩の強い金庫破り(平成期で353.9%増)及びすり(ここ2年間で16.7%増),習慣化傾向の強い万引き(平成4年以降で68.4%増)が,それぞれ増加している。

(3)  検挙件数・検挙人員から見た窃盗の犯行態様
 検挙された被疑者を対象に,近年の窃盗の犯行態様を分析・検討すると,近年ひったくりや車上ねらいの共犯化が進む傾向が見られる。空き巣ねらい,事務所荒らし,金庫破り,すり及び万引きの共犯態様を見ると,万引きの共犯事案の構成比は減少しているが,空き巣ねらい,金庫破りの共犯事案の構成比は全体として高くなってきており,すりでは,5人以上の共犯事案すなわち集団すりの構成比が高くなっている。
 また,検挙された窃盗犯の属性を見ると,年齢層別構成比では20歳代から40歳代が減少又は横ばいであるのに対し,50歳代以上の構成比の増加が顕著である。年齢層別検挙人員の増減を人口比(人口10万人当たりの比率)で見ても,50歳代は,平成4年の62.9から12年の85.9へ,60歳以上は,2年の38.2から12年の66.4へといずれも一貫して増加している。
 さらに,最近の10年間では窃盗前科者(窃盗により有罪判決を受けたことがある者)が増加し,12年には9.5%に,また,再犯者(何らかの前科・前歴を有する者)が,平成期に入って増加傾向を示し,12年には30%を超えた。

(4)  窃盗の検挙率・検挙件数
 刑法犯の認知件数が戦後最高を更新し続ける一方,その検挙率は,平成12年において,刑法犯全体で42.7%,一般刑法犯で23.6%,窃盗を除く一般刑法犯で54.3%,窃盗で19.1%といずれも戦後最低を更新した。検挙件数で見ると,窃盗を除く一般刑法犯の検挙件数に大きな推移はないが,窃盗の検挙件数は,平成4年以降,一時増加に転じたものの,11年,12年に急速に減少し,12年には戦後最低を記録した。
 検挙件数の増減を重要窃盗犯(警察庁が指定した治安情勢を観察する指標となる窃盗の手口)で見ると,ひったくり,金庫破り等は,昭和63年を100とする検挙指数がおおむね増加傾向にあるのに対し,車上ねらい,自転車盗,オートバイ盗,空き巣ねらい及び万引きの五手口は検挙指数が昭和63年を大きく下回っている。これら5手口は,平成期における窃盗の検挙件数減少分38万5,506件の73.9%(28万4,968件)を占めており,それがそのまま5手口の手口別検挙率に反映している。
 検挙件数が増加しているひったくり等の手口についても,平成10年以降,検挙件数の減少がはじまり,検挙率も急激に低下している。

(5)  検察庁及び裁判所における窃盗の処理状況
 検察庁における窃盗の起訴人員は,昭和50年から平成3年までは減少を続けたが,9年以降は一貫して増加を続けている。
 また,窃盗により通常第一審で有罪判決を受けた者の刑期を見ると,全体として1年未満と6月未満の構成比が大きく低下し,昭和50年の31.6%から平成12年の15.8%とほぼ半減した。その分,2年未満から10年以下までの各種構成比が上昇している。
 その中では,実刑の言渡しを受けた者では,2年未満の刑期が半数近く占め,執行猶予の言渡しを受けた者では,3年以下と2年未満の各構成比の上昇が顕著である。
 その他の一般刑法犯についてもここで併せて見ておくと,増加の顕著な強盗,傷害,強制わいせつ,器物損壊等の4罪種については,昭和50年以降刑の長期化が認められる。また,これら4罪種のうち,強盗の実刑率は上昇しているが,その他の3罪種は,減少ないし横ばい傾向にある。

(6)  諸外国の犯罪動向との比較
 1999年のアメリカ,イギリス,ドイツ,フランス及び韓国の主要な犯罪動向と我が国のそれを比較・検討すると,認知件数や発生率はアメリカ等五か国の中で最も低いが,犯罪の検挙率では,ドイツに次いで2番目である。
 窃盗についても,我が国は,アメリカ等5か国中,認知件数が最も低いものの,他の4か国の認知件数が減少傾向にある中で,我が国だけが増加傾向にあるため,次第に,フランスの認知件数に近づきつつある。これまで,トップであった検挙率も,ドイツに抜かれたことは,前記のとおりである。

2 交通犯罪

(1)  増加する交通事故
 交通事故の発生件数及び負傷者数は,戦後激増し,昭和45,46年以降いったん減少傾向を示したが,昭和53年以降増加に転じ,平成12年には,発生件数が,前年と比べ8万1,571件増(9.6%増)の93万1,934件,負傷者数が,10万5,300人増(同6.0%増)の115万5,697人と,いずれも前年に引き続き,戦後最高を更新した。
 一方,交通事故による死亡者数は,平成5年以降減少傾向にあり,12年は,前年より60人増加して9,066人となっている。

(2)  交通犯罪の動向と処理状況
 交通事故発生件数の急激な増加に伴い,交通関係業過の検挙人員は,ここ2年間で急増し,平成12年では85万493人(前年比11.2%増)と80万人台を突破した。これに伴い,ひき逃げ事件の検挙件数も1万4,050件となった。
 交通関係業過の起訴人員は,平成12年では,公判請求6,537人,略式命令請求8万6,643人となり,起訴人員総数に占める公判請求の割合も,7.0%(前年比1.7ポイント上昇)となった。
 また,通常第一審における業過の判決について,その言渡し刑期を見ると,懲役・禁錮2年以上の刑期が占める比率が年々上昇している上,同2年を超える刑期の実刑率を見ると,平成10年37.8%,11年42.9%,12年45.3%へと年々上昇している。

(3)  諸外国の交通犯罪の動向

 アメリカ
 アメリカにおいては,交通事故の発生件数,死傷者数,いずれの項目においても,その数値が我が国と比較して格段に高い。我が国とアメリカの人口10万人当たりの事故後30日以内の死亡者数を,我が国で統計を取り始めた1993年以降について比べて見ると,我が国では,1993年には約11人であったが,以後ほぼ一貫して低下し,2000年は約8人であるのに対し,アメリカは約15人から16人で推移している。また,人口10万人当たりの負傷者数は,アメリカは,1988年には1,397人と我が国の約2倍であったが,以後ほぼ一貫して低下し,1999年には,1,187人と我が国の約1.4倍にまで低下している。

 イギリス
 イギリスにおいては,死亡者数及び人口10万人当たりの死亡者数が,1990年代前半において急速に減少し,その後も減少傾向を示している。1999年では,我が国の人口10万人当たりの事故後30日以内死亡者数が8.2人であるのに対し,イギリスのそれは5.9人となっている。また,人口10万人当たりの負傷者数には顕著な減少傾向は認められないものの,1980年代後半から我が国より低い値を示している。

 ドイツ
 旧ドイツ民主共和国分を含む形となった1991年以降,事故発生件数及び負傷者数はほぼ横ばい,死亡者数は漸減となっている。我が国で事故後30日以内死亡者数の統計を取り始めた1993年から1999年までの人口10万人当たりの死亡者及び負傷者数をドイツのそれと比較すると,死亡者数はドイツのが高くなっている反面,負傷者数は低くなっている。

 フランス
 1990年から1999年までの間のフランスにおける交通事故の発生件数及び負傷者数は,我が国の3~4割と少ないが,死亡者数(事故後6日以内に死亡した人員)は約1万人とわが国との差は少ない。

 韓国
 1990年以降,事故発生件数,死亡者数,負傷者数のいずれもほぼ横ばいを続けているが,1999年には,事故発生件数が15.1%,負傷者数が18.3%の増加を示している。人口10万人当たりの死傷者の比率を見ると,負傷者については,我が国とほぼ同じであるのに対し,死亡者(事故後3日以内に死亡した人員)については,わが国の人口10万人当たりの24時間以内死亡者の約3倍となっている。

3 薬物犯罪

(1)  薬物犯罪の動向
 覚せい剤事犯の送致人員は,平成7年以降増加傾向を示し,12年には,前年比3.6%増の1万9,156人となっている。年齢層別人口比で見ると,20歳代と30歳代が高い。
 また,大麻取締法違反や麻薬取締法違反の送致人員は,前年比で横ばいないし微減である。

(2)  大型・組織的事犯の動向
 覚せい剤の押収量は,昭和63年から平成5年まで,おおむね減少傾向にあったが,6年から増加傾向に転じた上,1年当たりの押収量も数十kgから数百kgだったものが,11年には約2千kg,12年には約1,000kgが押収されている。
 また,麻薬特例法が適用される業として行う不法輸入等は,平成8年に25件と急増した後,20件台で推移し,12年には,過去最高の36件が検挙された。

(3)  薬物犯罪者の処遇
 平成12年では,薬物犯罪の起訴率が軒並み上昇し,覚せい剤取締法違反が90%の大台を超えて90.2%となり,大麻取締法違反が過去20年間で最高の68.2%となったほか,麻薬取締法違反が4年連続の上昇で77.7%となった。また,薬物犯罪のうち,覚せい剤取締法違反の送致人員中に占める再犯者の比率は極めて高く,平成12年は49.8%である。

4 犯罪の国際化と外国人犯罪第34図参照)

(1)  来日外国人による犯罪の動向
 外国人による交通関係業過を除く刑法犯検挙件数・検挙人員を見ると,定着居住者(永住権を有する者等)等は,長期減少傾向にある。しかし,来日外国人(我が国にいる外国人のうち,定着居住者,在日米軍関係者及び在留資格不明の者以外の者)についてみると,昭和55年には867件,782人であったものが,平成12年には,検挙件数では約26倍の2万2,947件(前年比8.7%減),検挙人員では約8倍の6,329人(同6.1%増)と大幅に増加している。
 来日外国人の道交違反等交通関係を除く特別法犯の送致人員について見ると,昭和55年には,2,280人であったが,平成12年にはその約3倍の6,382人と増加している。
 また,来日外国人の主要罪名別動向を見ると,窃盗は,平成5年に急増した後,おおむね増加傾向を示しているが,12年は前年より10.9%減少して1万9,952件となっている。国籍等別状況では,半数以上を中国人が占めている。
 入管法違反は,平成10年をピークに以後減少が続き,12年は5,862件で,内訳は,不法残留3,111件,旅券不携帯等1,725件の順に多い。なお,集団密航事件は,9年に1,360人の検挙人員を数えたが,その後,激減し,12年は103人である。
 薬物関係法令違反は,平成4年に急増した後,1,000件台から1,200件台で推移しており,12年は1,051件である。国籍等別状況では,イランが約4分の1を占め,次いで,フィリピン,ブラジルの順に多い。

(2)  外国人犯罪者の処遇
 平成12年の検察庁における交通関係業過と道交違反を除く外国人犯罪者新規受理人員は,前年比1.2%減の2万1,318人である。このうち来日外国人の罪名別新規受理人員は,入管法違反(44.3%),窃盗(22.1%),覚せい剤取締法違反(4.6%),傷害(4.4%)の順に多く,最近3年間では窃盗と傷害の比率が上昇している。国籍等別では,中国42.1%,韓国・朝鮮15.8%,フィリピン6.1%,ブラジル5.5%の順に多い。
 平成12年の交通関係業過と道交違反を除く来日外国人の検察庁終局処理人員は,1万6,022人であり,外国人全体の終局処理人員のうち,総数の75.4%を占め,罪名別人員では,入管法違反7,082人,窃盗3,574人,傷害738人,覚せい剤取締法違反735人の順に多いが,外国人事件に来日外国人が占める比率では,入管法違反(96.4%),大麻取締法違反(90.3%),売春防止法違反(78.9%),強盗(78.7%),文書偽造(78.3%)の順に高い。
 外国人事件の通常第一審有罪人員は,平成3年以降増加を続け,9年をピークに減少に転じたが,12年では,7,740人と3年の2.7倍の水準であり,外国人事件比は,9.9%である。
 また,成人矯正では,F級新受刑者(日本人と異なる処遇を要する外国人で新たに受刑者となった者)が,過去3年間連続して急増し,平成12年には1,082人と1,000人の大台を超えた。F級新受刑者の罪名別では,窃盗(34.2%),入管法違反(13.2%),覚せい剤取締法違反(12.2%),強盗(11.9%)の順に比率が高い。


● 目次
 
○ 〈はじめに〉
○ 〈第1編〉 犯罪の動向
○ 〈第2編〉 犯罪者の処遇と犯罪被害者の救済
○ 〈第3編〉 少年非行の動向と非行少年の処遇
○ 〈第4編〉 増加する犯罪と犯罪者