平成15年版犯罪白書のあらまし 〈第二編 犯罪者の処遇〉
1 検察 |
(1) | 罪名・処理区分別の検察庁終局処理人員(第2表参照) |
平成14年における検察庁終局処理人員は,220万4,578人(前年比0.7%減)であり,その処理別内訳は,公判請求が6.3%,略式命令請求が38.8%,起訴猶予が40.7%となっている。しかし,刑法犯の公判請求人員は,8年連続して増加しており,特に11年以降は,対前年比5%以上の増加を続けている。 また,起訴率は51.2%,起訴猶予率は47.4%であった(「起訴率」とは,起訴人員/(起訴人員+不起訴人員)×100の計算式で得た百分比をいい,「起訴猶予率」とは,起訴猶予人員/(起訴人員+起訴猶予人員)×100の計算式で得た百分比をいう。)。 一般刑法犯の起訴率は,55.4%(前年比1.5ポイント減),起訴猶予率は,36.0%(同1.8ポイント増)で,道交違反を除く特別法違反の起訴率は,73.5%(同0.4ポイント増),起訴猶予率は,22.8%(同0.4ポイント減)となっている。 14年の終局処理人員を罪名別で見ると,道交違反,交通関係業過が多く,次いで,窃盗,横領,傷害の順となっている。 |
(2) | 検察庁既済事件の逮捕・勾留状況 |
平成14年における検察庁既済事件(交通関係業過及び道交違反を除く。)のうち,被疑者が逮捕された事件の占める比率(身柄率)は32.3%であった。これを罪名別に見ると,身柄率が最も高いのは強盗(74.5%)であり,以下,強姦(73.1%),危険運転致死傷(72.7%),覚せい剤取締法違反(69.7%),殺人(69.3%)等の順となっている。身柄事件のうち,検察官が勾留を請求したものの占める比率(勾留請求率)は94.0%であり,そのうち裁判官によって勾留が却下されたものは0.1%であった。 |
2 裁判
(1) | 通常第一審裁判所の終局処理人員(第3表参照) |
平成14年における地方裁判所,簡易裁判所,家庭裁判所の通常第一審終局処理人員総数は,8万6,630人(前年比6.3%増)であり,うち有罪は8万6,259人,無罪は70人であった。 このうち,地方裁判所による終局処理人員7万4,192人について罪名別に見ると,最も多いのが覚せい剤取締法違反の1万3,286人(総数の17.9%),以下,窃盗9,712人(同13.1%),道交違反8,620人(同11.6%),過失傷害(業務上過失致死傷を含む。)7,789人(同10.5%)の順となっている。 |
(2) | 第一審の量刑 |
平成14年における地方裁判所の有期懲役・禁錮の科刑分布状況を見ると,刑期が1年以上2年未満の者が42.8%で最も多く,次いで,2年以上3年以下(28.3%),6月以上1年未満(12.7%),6月未満(9.0%)となっている。また,10年を超える有期刑を宣告された者は321人であった。裁判確定人員について懲役刑の執行猶予率を見ると,平成5年以降,60%前後で推移しており,14年は61.4%であった。 なお,14年の死刑言渡し人員は18人,無期懲役言渡し人員は98人であった。死刑言渡し人員を罪名別に見ると,殺人12人,強盗致死(強盗殺人を含む。)6人であり,また,無期懲役言渡し人員は,殺人22人,強盗致死傷72人,放火3人,強姦等1人となっている。 そのほかでは,道路交通法改正による罰金額の上限の引上げに伴い,道交違反により20万円以上の罰金に処された者は,平成13年がわずか968人であったのに対し,14年は10万4,455人に増加したことが注目される。 |
3 成人矯正
(1) | 行刑施設の一日平均収容人員の推移 |
行刑施設の一日平均収容人員は,平成5年以降増加しており,14年には,6万7,354人(前年比6.2%増)となった。そのうち受刑者は5万5,132人(同6.7%増),未決拘禁者は1万1,694人(同3.3%増)である。 14年末現在の収容率は全体では106.5%,既決拘禁者では116.5%となり,本所に限ると,行刑施設の9割弱が定員を超える収容となっている。 |
(2) | 新受刑者数の推移 |
新受刑者数は,平成5年以降増加傾向にあり,14年は3万277人(前年比6.4%増)となっている。14年における新受刑者を罪名別構成比の高い順で見ると,男子では,ア窃盗(27.4%),イ覚せい剤取締法違反(22.2%),ウ詐欺(7.1%),エ道路交通法違反(6.8%),オ傷害(6.3%)の順であり,女子では,ア覚せい剤取締法違反(41.8%),イ窃盗(22.2%),ウ詐欺(8.4%),エ殺人(4.3%),オ道路交通法違反(3.7%)の順である。 近年における新受刑者の動向として,60歳以上の者の増加が目立つこと(14年新受刑者の8.6%を占める。),新受刑者に占める初入者(裁判の確定により初めて行刑施設に入所した者をいう。)の比率が上昇傾向にあること(14年新受刑者の50.9%を占める。),刑期が2年を超える者の割合が漸増傾向にあることが挙げられる。 |
(3) | 出所受刑者の再入状況 |
平成9年における出所受刑者について,14年末までの再入状況を出所事由別に見ると,満期釈放者の約6割,仮釈放者の約4割が再入している。 |
4 更生保護
(1) | 仮出獄人員及び仮出獄率 |
仮出獄人員は,平成9年以降増加傾向にあり,14年は1万5,318人(前年比895人増)となっている。仮出獄率は,昭和59年以降55%台から58%台で推移しており,平成14年は56.1%である。 |
(2) | 保護観察事件の受理状況 |
平成14年の保護観察新規受理人員(保護観察処分少年及び少年院仮退院者を含む。)は,7万5,197人で,このうち,仮出獄者が1万5,318人,保護観察付き執行猶予者が5,388人となっている。仮出獄者及び保護観察付き執行猶予者を罪名別に見ると,多い順に窃盗,覚せい剤取締法違反であるが,女子においては,覚せい剤取締法違反が最も多い。 |
(3) | 保護観察中に再処分を受けた者の状況 |
平成14年に保護観察が終了した者のうち,保護観察期間中再度罪を犯しかつ新たな処分を受けた者の占める比率は,仮出獄者が0.9%(134人),保護観察付き執行猶予者が37.2%(1,999人)となっている。 |
- ● 目次
-
- ○ 〈はじめに〉
- ○ 〈第1編 平成14年の犯罪の動向〉
- ○ 〈第2編 犯罪者の処遇〉
- ○ 〈第3編 犯罪被害者の救済〉
- ○ 〈第4編 少年非行の動向と非行少年の処遇〉
- ○ 〈第5編 変貌する凶悪犯罪とその対策〉
- ○ 〈はじめに〉