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平成16年版犯罪白書のあらまし <第1編> 平成15年の犯罪の動向

<第1編> 平成15年の犯罪の動向

 刑法犯の概況図表1図表2図表3参照
 (1)  概説
     認知件数・発生率
   平成15年における刑法犯認知件数は,364万6,253件(前年比4万7,675件減),一般刑法犯(交通関係業過を除く刑法犯)認知件数は,279万444件(前年比6万3,617件減)であった。これらの認知件数が減少したのは9年ぶりであるが,戦後全体を通じて見るとなお高い水準にある。罪名別に見ると,窃盗が14万1,644件(6.0%)減少しており,これが全体を減少させた大きな要因となっている。
 15年の刑法犯認知件数を罪名別に見ると,窃盗(61.3%)が最も多く,次いで,交通関係業過(23.5%)となっており,この両者で全体の約84%を占めている。
 15年における刑法犯発生率(人口10万人当たりの認知件数)は2,857件,一般刑法犯発生率は2,187件であった。

     検挙人員
   平成15年における刑法犯検挙人員は126万9,785人(前年比5万221人増),一般刑法犯検挙人員は37万9,910人(前年比3万2,030人増)であった。刑法犯検挙人員を罪名別に見ると,交通関係業過(70.1%)が最も多く,次いで,窃盗(15.1%)となっており,両者で全体の約85%を占めている。

     検挙率
   検挙率は,近年低下傾向が続いていたが,平成14年からはやや回復の兆しを見せ,15年は,刑法犯全体で41.3%,一般刑法犯で23.2%となった。これは,刑法犯認知件数の6割以上を占める窃盗の検挙率が回復したことによるものであり,窃盗を除く一般刑法犯の検挙率は,15年も低下傾向が続いている。

 (2)  窃盗を除く一般刑法犯の動向図表4参照
   平成15年における窃盗を除く一般刑法犯の認知件数は55万4,600件で,戦後初めて50万件を突破した。
 検挙件数は21万4,709件(昭和46年以降最多),検挙人員は18万8,507人(同47年以降最多)であったが,認知件数がそれ以上のペースで増加しているため,検挙率は低下しており,平成15年は戦後最低の38.7%であった。
 主要罪名について見ると,殺人の認知件数は,横ばいないし微増傾向が続いており,15年は1,452件であった。また,検挙率は,94~98%台で安定しており,15年は94.1%であった。強盗は,近年増加が著しく,15年における認知件数は7,664件(前年比9.7%増),検挙率は50.3%(同0.8ポイント低下)であった。
 その他の罪名について,認知件数を見ると,暴行,強姦,強制わいせつ,住居侵入及び器物損壊は,増加を続けているが,恐喝は,2年連続して減少した。また,横ばいないし減少傾向にあった詐欺は,ここ2年連続して大幅な増加を見せた。その要因の一つは,いわゆるオレオレ詐欺の急増である。

 (3)  窃盗の動向図表5参照
   平成15年における窃盗の認知件数は223万5,844件,検挙率は19.4%であった。窃盗は,認知件数の急増,検挙率の急落という傾向がここしばらく続いていたが,15年は,認知件数が9年ぶりに14万件余りの減少を記録し,検挙率も2年連続して若干回復している。
 治安情勢を観察する際に一つの指標とされる重要窃盗犯(侵入盗,すり,ひったくり及び自動車盗)について見ると,15年における認知件数は,46万9,148件(前年比9,328件減)で窃盗全体の21.0%を占め,検挙率は30.0%(同2.0ポイント上昇)であった。

 特別法犯の概況
   平成15年における特別法犯の検察庁新規受理人員総数は,前年より5万8,538人(6.0%)減少して91万7,694人となった。この減少は,道交違反(道路交通法違反及び保管場所法違反)の減少によるところが大きい。
 罪名別では,道路交通法違反が79万5,009人(86.6%)で最も多く,次いで,覚せい剤取締法違反2万2,087人(2.4%)となっており,両者で特別法犯の9割近くを占めている。

 各種犯罪の動向
 (1)  交通犯罪
   交通事故の発生件数及び負傷者数は増加傾向にあり,平成15年は,発生件数が94万7,993件(前年比1万1,272件増),負傷者数が118万1,431人であった。他方,死亡者数は,5年以降減少傾向にあり,15年は7,702人であった。
 15年における交通関係業過及び危険運転致死傷による検挙人員は,89万183人(前年比2.1%増)であった。

 (2)  薬物犯罪
   平成15年における覚せい剤取締法違反の検挙人員は,1万4,797人(前年比2,167人減)であった。
 15年における薬物押収量は,覚せい剤が約487キログラム(前年比約45キログラム増),大麻が約932キログラム(前年比約311キログラム増)であった。近年,MDMAなどの錠剤型合成麻薬の押収量が増加しており,15年は過去最多の39万3,757錠であった。

 (3)  財政経済犯罪
   平成15年における税法違反の検察庁新規受理人員は,法人税法違反が271人(前年比49人増),所得税法違反が43人(同7人減),地方税法違反が39人(同54人減),相続税法違反が11人(同6人増),消費税法違反が8人(同8人減)であった。
 15年における金融事犯の検察庁新規受理人員は,いわゆるヤミ金融事犯が多数検挙されたことを反映し,出資法違反が1,092人(前年の約2.7倍),貸金業規制法違反が587人(同3.4倍)と大幅に増加し,いずれも過去10年で最多であった。

 (4)  選挙犯罪
   平成15年は,4月に統一地方選挙,11月に衆議院議員総選挙がそれぞれ行われており,同年における公職選挙法違反の検察庁新規受理人員は5,040人であった。

 (5)  ハイテク犯罪
   ハイテク犯罪のうち,ネットワーク利用犯罪の検挙件数は増加が続いており,平成15年は1,649件(前年比178件増)であった。罪名別では,詐欺(521件)が最も多く,次いで,児童買春・児童ポルノ禁止法違反(371件)が多い。また,不正アクセス禁止法違反の検挙件数は,145件であった。

 (6)  銃器犯罪
   平成15年における銃器発砲事件数は139件(前年比19件減)であり,これによる死亡者数は35人(同11人増)であった。けん銃の押収丁数は785丁(前年比38丁増)であり,うち644丁が真正けん銃であった。前年に引き続き,暴力団以外の者からの押収(451丁)が,暴力団構成員等からの押収(334丁)を上回った。

4 各種の犯罪者による犯罪の動向
 (1)  暴力団犯罪
   平成15年12月31日現在の暴力団構成員等(暴力団構成員及び準構成員)は約8万5,800人(前年比500人増)で,そのうち暴力団構成員は約4万4,400人(前年比800人増),準構成員は約4万1,400人(前年比300人減)である。
 15年における暴力団相互の対立抗争事件の発生回数は44回(前年比16回増)で,銃器使用率は72.7%であった。
 交通関係業過及び交通関係法令違反等を除く暴力団構成員等の検挙人員は,平成元年以降3万人台で推移しており,15年は3万550人(前年比274人減)であった。これを罪名別に見ると,覚せい剤取締法違反が最も多く,19.7%を占め,以下,傷害15.2%,窃盗11.1%,恐喝10.1%の順となっている。

 (2)  外国人犯罪
   外国人による一般刑法犯検挙件数・人員を見ると,来日外国人以外の外国人は長期減少傾向にあるのに対し,来日外国人は,昭和55年以降大きく増加しており,検挙人員において平成3年から,検挙件数において平成5年から,来日外国人がその他の外国人を超えている。15年における来日外国人一般刑法犯の検挙人員は8,725人(前年比1,035人増),検挙件数は2万7,258件(前年比3,000件増)で,いずれも昭和55年以降最多であった。
 来日外国人による特別法犯(交通関係法令違反等を除く。)の送致件数及び送致人員も増加傾向にあり,15年は,それぞれ1万3,357件(前年比2,869件増),1万1,282人(前年比2,760人増)で,いずれも昭和55年以降最多であった。
 来日外国人被疑事件の検察庁終局処理人員(交通関係業過及び道交違反を除く。)は,増加傾向にあり,15年は2万4,060人(前年比3,430人増)であった。これを罪名別に見ると,一般刑法犯では,窃盗(54.9%)が最も多く,次いで,傷害(9.8%),横領(遺失物等横領を含む。)(5.7%),強盗(5.5%)の順となっており,特別法犯では,入管法違反(79.6%)が最も多く,次いで,覚せい剤取締法違反(4.9%)となっている。

 (3)  公務員犯罪
   平成15年における公務員犯罪の検察庁新規受理人員は,2万7,652人(前年比601人)であり,そのうちの84.0%が交通関係業過であった。起訴人員は,前年より85人増の3,307人で,起訴率は,12.1%(前年より0.5ポイント上昇)であった。

 (4)  精神障害者の犯罪
   平成15年における一般刑法犯の検挙人員のうち,精神障害者は999人,精神障害の疑いのある者は1,655人であり,両者を併せると,一般刑法犯検挙人員に占める比率は0.7%であった。また,罪名別検挙人員に占める比率を見ると,放火の14.3%,殺人の8.4%が特に高くなっている。
 平成15年に検察庁で不起訴処分になった被疑者のうち,精神障害のため心神喪失者と認められた者は324人,心神耗弱者と認められた者は280人であった。
 心神喪失により不起訴処分になった324人の罪名を見ると,殺人(71人)が最も多く,次いで,放火(58人),傷害(41人)の順であり,精神障害名は精神分裂病(統合失調症)が225人と最も多い。また,不起訴処分になった者のうち心神耗弱者と認められた280人について見ると,罪名は傷害(73人)が最も多く,精神障害名は精神分裂病(統合失調症)が148人と最も多い。
 通常第一審で心神喪失を理由に無罪となった者は3人,心神耗弱を理由として刑を減軽された者は86人であった。


 諸外国の犯罪動向との対比
   フランス,ドイツ,英国,米国及び日本における2002年の主要な犯罪の動向について対比すると,認知件数は,すべての国において前年を上回っている。我が国の認知件数及び発生率は,同年まで増加・上昇しているものの,他の4か国を大きく下回っている。検挙率は,ドイツを除く4か国において,やや低下傾向にあったが,2002年は,前年を上回っている。
 殺人については,我が国は,5か国中,認知件数・発生率ともに最も少なく,検挙率は,ドイツとともに,9割を超える高い水準を維持している。


● 目次
 
○ <はじめに>
○ <第1編> 平成15年の犯罪の動向
○ <第2編> 犯罪者の処遇
○ <第3編> 犯罪被害者の救済
○ <第4編> 少年非行の動向と非行少年の処遇
○ <第5編> 特集-犯罪者の処遇