平成15年度司法試験第二次試験論文式試験問題と出題趣旨
【憲法】
第1問
以下の場合に含まれる憲法上の問題点について論ぜよ。
1 再婚を希望する女性が,民法の再婚禁止期間規定を理由として婚姻届の受理を拒否された場合
2 女性のみに入学を認める公立高等学校の受験を希望する者が,男性であることを理由として願書の受理を拒否された場合
(出題趣旨)
本問は,憲法第14条第1項の「法の下の平等」に関する一般原則を踏まえて,性別に基づく異なる処遇の合憲性について,再婚禁止期間規定(民法第733条)と公立女子高等学校の事例をあげて論じさせる問題である。
第2問
政党が民主政治において重要な役割を果たしていることにかんがみ,政党助成金の交付を受けるためには「党首を党員の選挙によって選出しなければならない」との条件を法律で定めたと仮定する。この法律の合憲性について論ぜよ。
(出題趣旨)
憲法には政党に関する規定がないが,政党は政治のなかで重要な役割を果たしており,憲法学でも統治に関する重要な論点となっている。本問は,法律による政党規制,特に政党助成金交付の条件として党内民主主義を要求することの是非を問うものである。
以下の場合に含まれる憲法上の問題点について論ぜよ。
1 再婚を希望する女性が,民法の再婚禁止期間規定を理由として婚姻届の受理を拒否された場合
2 女性のみに入学を認める公立高等学校の受験を希望する者が,男性であることを理由として願書の受理を拒否された場合
(出題趣旨)
本問は,憲法第14条第1項の「法の下の平等」に関する一般原則を踏まえて,性別に基づく異なる処遇の合憲性について,再婚禁止期間規定(民法第733条)と公立女子高等学校の事例をあげて論じさせる問題である。
第2問
政党が民主政治において重要な役割を果たしていることにかんがみ,政党助成金の交付を受けるためには「党首を党員の選挙によって選出しなければならない」との条件を法律で定めたと仮定する。この法律の合憲性について論ぜよ。
(出題趣旨)
憲法には政党に関する規定がないが,政党は政治のなかで重要な役割を果たしており,憲法学でも統治に関する重要な論点となっている。本問は,法律による政党規制,特に政党助成金交付の条件として党内民主主義を要求することの是非を問うものである。
【民法】
第1問
酒屋を営むAは,飼育している大型犬の運動を店員Bに命じた。Bが運動のために犬を連れて路上を歩いていたところ,自転車で走行していたCが運転を誤って自転車を犬に追突させ,驚いた犬はBを振り切って暴走した。反対方向から歩いてきた右足に障害のあるDは,犬と接触しなかったものの,暴走する犬を避けようとして足の障害のために身体の安定を失って転倒し,重傷を負った。
DがA,B及びCに対して損害賠償を請求できるかについて,それぞれに対する請求の根拠と,A,B及びCの考えられる反論を挙げ,自己の見解を論ぜよ。
(出題趣旨)
動物占有者責任(民法第718条)の成立とその責任者である占有者の意義及び損害の発生に加功した者の責任の在り方を問うとともに,被害者にも損害の発生ないし拡大に係る要因がある場合における法的評価を問う問題である。複数の責任者が存在するときの責任関係を整理・分析し,事案を全体的に眺めて公平な結論を導く能力があるかをみた。
第2問
Aは,Bから登記簿上330平方メートルと記載されている本件土地を借り受け,本件土地上に自ら本件建物を建てて保存登記を行い,居住していた。Aは,本件建物を改築しようと考え,市の建築課と相談し,敷地面積が330平方メートルならば希望する建物が建築可能と言われたため,本件土地を売ってくれるようBに申し込み,Bは,これを承諾した。売買契約では,3.3平方メートル当たり25万円として代金額を2500万円と決め,Aは,代金全額を支払った。
以上の事案について,次の問いに答えよ(なお,各問いは,独立した問いである。)。
1 本件土地の売買契約締結直後に,本件土地建物を時価より1000万円高い価格で買い受けたいというCの申込みがあったため,Aは,Cとの間で本件土地建物の売買契約を締結した。しかし,専門業者の実測の結果,本件土地の面積が実際には297平方メートルであることが判明し,面積不足のためにCの希望していた大きさの建物への建て替えが不可能であることが分かり,AC間の売買契約は解除された。
Aは,Bに対してどのような請求ができるか。
2 数年後,Bは,Aへの移転登記が未了であることを奇貨として,本件土地をDに売却しようと,「Aはかつて賃借人だったが,賃料を支払わないため契約を解除した。」と虚偽の事実を告げた。Dは,事情を確かめにA方に出向いたが,全く話をしてもらえなかったため,Bの言い分が真実らしいと判断し,本件土地を買い受け,移転登記をした。
AD間の法律関係について論ぜよ。
(出題趣旨)
本問は,数量不足の担保責任と二重譲渡に関する問題である。小問1は,数量指示売買の定義と本件への当てはめ,契約解除の可否,代金減額請求による不当利得返還請求,責任の性質と損害賠償の範囲など,基礎的知識を事案に即して展開する能力を問う問題である。小問2は,背信的悪意者排除を含めて,対抗要件による問題処理の基本構造を正確に理解しているかをみた上で,所有権の取得を対抗できない賃借人を保護する必要性と方法を考えさせるものである。
酒屋を営むAは,飼育している大型犬の運動を店員Bに命じた。Bが運動のために犬を連れて路上を歩いていたところ,自転車で走行していたCが運転を誤って自転車を犬に追突させ,驚いた犬はBを振り切って暴走した。反対方向から歩いてきた右足に障害のあるDは,犬と接触しなかったものの,暴走する犬を避けようとして足の障害のために身体の安定を失って転倒し,重傷を負った。
DがA,B及びCに対して損害賠償を請求できるかについて,それぞれに対する請求の根拠と,A,B及びCの考えられる反論を挙げ,自己の見解を論ぜよ。
(出題趣旨)
動物占有者責任(民法第718条)の成立とその責任者である占有者の意義及び損害の発生に加功した者の責任の在り方を問うとともに,被害者にも損害の発生ないし拡大に係る要因がある場合における法的評価を問う問題である。複数の責任者が存在するときの責任関係を整理・分析し,事案を全体的に眺めて公平な結論を導く能力があるかをみた。
第2問
Aは,Bから登記簿上330平方メートルと記載されている本件土地を借り受け,本件土地上に自ら本件建物を建てて保存登記を行い,居住していた。Aは,本件建物を改築しようと考え,市の建築課と相談し,敷地面積が330平方メートルならば希望する建物が建築可能と言われたため,本件土地を売ってくれるようBに申し込み,Bは,これを承諾した。売買契約では,3.3平方メートル当たり25万円として代金額を2500万円と決め,Aは,代金全額を支払った。
以上の事案について,次の問いに答えよ(なお,各問いは,独立した問いである。)。
1 本件土地の売買契約締結直後に,本件土地建物を時価より1000万円高い価格で買い受けたいというCの申込みがあったため,Aは,Cとの間で本件土地建物の売買契約を締結した。しかし,専門業者の実測の結果,本件土地の面積が実際には297平方メートルであることが判明し,面積不足のためにCの希望していた大きさの建物への建て替えが不可能であることが分かり,AC間の売買契約は解除された。
Aは,Bに対してどのような請求ができるか。
2 数年後,Bは,Aへの移転登記が未了であることを奇貨として,本件土地をDに売却しようと,「Aはかつて賃借人だったが,賃料を支払わないため契約を解除した。」と虚偽の事実を告げた。Dは,事情を確かめにA方に出向いたが,全く話をしてもらえなかったため,Bの言い分が真実らしいと判断し,本件土地を買い受け,移転登記をした。
AD間の法律関係について論ぜよ。
(出題趣旨)
本問は,数量不足の担保責任と二重譲渡に関する問題である。小問1は,数量指示売買の定義と本件への当てはめ,契約解除の可否,代金減額請求による不当利得返還請求,責任の性質と損害賠償の範囲など,基礎的知識を事案に即して展開する能力を問う問題である。小問2は,背信的悪意者排除を含めて,対抗要件による問題処理の基本構造を正確に理解しているかをみた上で,所有権の取得を対抗できない賃借人を保護する必要性と方法を考えさせるものである。
【商法】
第1問
次の各事例において,商法上,A株式会社の取締役会の決議が必要か。ただし,A会社は,株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律上の大会社又はみなし大会社ではないものとする。
1 A会社の代表取締役BがC株式会社の監査役を兼任する場合において,A会社が,C会社のD銀行に対する10億円の借入金債務について,D銀行との間で保証契約を締結するとき。
2 A会社の取締役EがF株式会社の発行済株式総数の70パーセントを保有している場合において,A会社が,F会社のG銀行に対する1000万円の借入金債務について,G銀行との間で保証契約を締結するとき。
3 ホテルを経営するA会社の取締役Hが,ホテルの経営と不動産事業とを行うI株式会社の代表取締役に就任して,その不動産事業部門の取引のみを担当する場合。
(出題趣旨)
本問は,株式会社の行う取引又は取締役の行為について,取締役会の決議を要求する商法規定の適用範囲に関する問題である。具体的には,事例として挙げられている取引・行為が,多額の借財その他の重要な業務執行(商法第260条第2項),取締役・会社間の利益相反取引(同法第265条)又は取締役の競業取引(同法第264条)に該当するか否かについて,各規定の趣旨,適用対象に関する判例・学説の状況を理解した上で,整合的に論述することが求められる。
第2問
甲山一郎は,有名なテレビタレントであるが,同人の高校時代からの友人であるAは,洋服店を開業することを計画し,その商号を「ブティック甲山一郎」としたいと考えた。そこで,Aは,甲山に電話で,「今度,洋服店を始めたいが,その際に君の名前を使ってよいか。」と尋ねたところ,甲山は,「自分の名前が広まるのは大歓迎であり,どんどん使ってほしい。」と答えた。Aは,「ブティック甲山一郎」の商号で洋服店を開業したものの,その後半年もしないうちに,持病が悪化したため,営業から引退することを考え,洋服店の営業を知人のBに譲渡することにした。Aから営業譲渡を受けたBは,「甲山一郎ブティック」の商号で洋服店を開業した。
1 Aの債権者であるCは,甲山又はBに対して弁済を請求することができるか。
2 Bの債権者であるDは,甲山に対して弁済を請求することができるか。
(出題趣旨)
本問は,商法総則に規定されている名板貸人の責任及び営業譲渡において営業譲渡人の商号を続用する営業譲受人の責任について,知識及び応用力を見る問題である。具体的には,問題に示された事例への当てはめを通じて,両責任制度の趣旨についての理解に基づき,名称使用の許諾,第三者の誤認,商号の続用等に関する判断を的確に論述することが求められる。
次の各事例において,商法上,A株式会社の取締役会の決議が必要か。ただし,A会社は,株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律上の大会社又はみなし大会社ではないものとする。
1 A会社の代表取締役BがC株式会社の監査役を兼任する場合において,A会社が,C会社のD銀行に対する10億円の借入金債務について,D銀行との間で保証契約を締結するとき。
2 A会社の取締役EがF株式会社の発行済株式総数の70パーセントを保有している場合において,A会社が,F会社のG銀行に対する1000万円の借入金債務について,G銀行との間で保証契約を締結するとき。
3 ホテルを経営するA会社の取締役Hが,ホテルの経営と不動産事業とを行うI株式会社の代表取締役に就任して,その不動産事業部門の取引のみを担当する場合。
(出題趣旨)
本問は,株式会社の行う取引又は取締役の行為について,取締役会の決議を要求する商法規定の適用範囲に関する問題である。具体的には,事例として挙げられている取引・行為が,多額の借財その他の重要な業務執行(商法第260条第2項),取締役・会社間の利益相反取引(同法第265条)又は取締役の競業取引(同法第264条)に該当するか否かについて,各規定の趣旨,適用対象に関する判例・学説の状況を理解した上で,整合的に論述することが求められる。
第2問
甲山一郎は,有名なテレビタレントであるが,同人の高校時代からの友人であるAは,洋服店を開業することを計画し,その商号を「ブティック甲山一郎」としたいと考えた。そこで,Aは,甲山に電話で,「今度,洋服店を始めたいが,その際に君の名前を使ってよいか。」と尋ねたところ,甲山は,「自分の名前が広まるのは大歓迎であり,どんどん使ってほしい。」と答えた。Aは,「ブティック甲山一郎」の商号で洋服店を開業したものの,その後半年もしないうちに,持病が悪化したため,営業から引退することを考え,洋服店の営業を知人のBに譲渡することにした。Aから営業譲渡を受けたBは,「甲山一郎ブティック」の商号で洋服店を開業した。
1 Aの債権者であるCは,甲山又はBに対して弁済を請求することができるか。
2 Bの債権者であるDは,甲山に対して弁済を請求することができるか。
(出題趣旨)
本問は,商法総則に規定されている名板貸人の責任及び営業譲渡において営業譲渡人の商号を続用する営業譲受人の責任について,知識及び応用力を見る問題である。具体的には,問題に示された事例への当てはめを通じて,両責任制度の趣旨についての理解に基づき,名称使用の許諾,第三者の誤認,商号の続用等に関する判断を的確に論述することが求められる。
【刑法】
第1問
甲は,自宅で,知人Aと口論になり,激高してとっさに殺害することを決意し,部屋にあったクリスタルガラスの花瓶でAの後頭部を力任せに殴打した。Aは,頭蓋骨を骨折する重傷を負い,その場にこん倒した。甲は,ぐったりとして動かなくなったAの様子を見て,Aが死亡したものと考えた。その直後,友人乙が甲方を訪ねてきたので,甲は,事情を説明し,Aの死体を山中に埋めることに力を貸してもらいたいと頼み,乙もこれを承諾した。そこで,甲及び乙は,甲の自動車の後部座席にAを運び入れ,甲が運転し,乙がAの横に座り,山中に向かった。その途中,Aが一度身動きをしたことから,乙は,Aが生きていることに気付いたものの,日ごろからAを快く思っていなかったので,このまま生き埋めにして殺してやろうと考え,甲にはAが生きていることを伝えなかった。そして,山中で,甲及び乙は,一緒に穴を掘り,その中にAを投げ込み,土を掛けて埋めたため,Aは,窒息して死亡した。
甲及び乙の罪責を論ぜよ。
(出題趣旨)
本問は,当初の殺害行為によっては相手方を死亡させるに至らなかったものの,死亡したものと誤信し,他の者と一緒に行ったその後の行為によって実際に殺害の結果が実現したという事例を素材として,因果関係の存否・錯誤等についての理解を問うとともに,その場合の殺人既遂の成否及び後の行為に殺意を持って関与した者の罪責並びに両者の共犯関係について,首尾一貫した論理的思考力を問うことを意図している。
第2問
甲は,20年以上前から乙という名前で社会生活を営み,運転免許証も乙の名前で取得していた。ところが,甲は,乙名義で多重債務を負担し,乙名義ではもはや金融機関からの借入れが困難な状況に陥った。そこで,甲は,返済の意思も能力もないにもかかわらず,消費者金融X社から甲名義で借入れ名下に金員を得ようと企て,上記運転免許証の氏名欄に本名である「甲」と記載のある紙片をはり付けた上,X社の無人店舗に赴き,氏名欄に「甲」と記載し,住所欄には現住所を記載した借入申込書を作成した。次いで,甲は,この借入申込書と運転免許証とを自動契約受付機のイメージスキャナー(画像情報入力装置)で読み取らせた。X社の本社にいた係員Yは,ディスプレイ(画像出力装置)上でこれらの画像を確認し,貸出限度額を30万円とする甲名義のキャッシングカードを同受付機を通して発行した。甲は,直ちにこのカードを使って同店舗内の現金自動支払機から30万円を引き出した。
甲の罪責を論ぜよ(ただし,運転免許証を取得した点については除く。)。
(出題趣旨)
本問は,長期間使用していた通称に代えて,実名を用いて借入申込書等を作成するなどした上,自動契約受付機を介して金員を借り入れたという事例を素材として,事例を的確に把握してこれを分析する能力を問うとともに,文書偽造の罪における偽造の意義等の基本的要件に関する理解力並びに偽造文書行使罪,詐欺罪及び窃盗罪の各犯罪構成要件の整合的な理解力を問うものである。
甲は,自宅で,知人Aと口論になり,激高してとっさに殺害することを決意し,部屋にあったクリスタルガラスの花瓶でAの後頭部を力任せに殴打した。Aは,頭蓋骨を骨折する重傷を負い,その場にこん倒した。甲は,ぐったりとして動かなくなったAの様子を見て,Aが死亡したものと考えた。その直後,友人乙が甲方を訪ねてきたので,甲は,事情を説明し,Aの死体を山中に埋めることに力を貸してもらいたいと頼み,乙もこれを承諾した。そこで,甲及び乙は,甲の自動車の後部座席にAを運び入れ,甲が運転し,乙がAの横に座り,山中に向かった。その途中,Aが一度身動きをしたことから,乙は,Aが生きていることに気付いたものの,日ごろからAを快く思っていなかったので,このまま生き埋めにして殺してやろうと考え,甲にはAが生きていることを伝えなかった。そして,山中で,甲及び乙は,一緒に穴を掘り,その中にAを投げ込み,土を掛けて埋めたため,Aは,窒息して死亡した。
甲及び乙の罪責を論ぜよ。
(出題趣旨)
本問は,当初の殺害行為によっては相手方を死亡させるに至らなかったものの,死亡したものと誤信し,他の者と一緒に行ったその後の行為によって実際に殺害の結果が実現したという事例を素材として,因果関係の存否・錯誤等についての理解を問うとともに,その場合の殺人既遂の成否及び後の行為に殺意を持って関与した者の罪責並びに両者の共犯関係について,首尾一貫した論理的思考力を問うことを意図している。
第2問
甲は,20年以上前から乙という名前で社会生活を営み,運転免許証も乙の名前で取得していた。ところが,甲は,乙名義で多重債務を負担し,乙名義ではもはや金融機関からの借入れが困難な状況に陥った。そこで,甲は,返済の意思も能力もないにもかかわらず,消費者金融X社から甲名義で借入れ名下に金員を得ようと企て,上記運転免許証の氏名欄に本名である「甲」と記載のある紙片をはり付けた上,X社の無人店舗に赴き,氏名欄に「甲」と記載し,住所欄には現住所を記載した借入申込書を作成した。次いで,甲は,この借入申込書と運転免許証とを自動契約受付機のイメージスキャナー(画像情報入力装置)で読み取らせた。X社の本社にいた係員Yは,ディスプレイ(画像出力装置)上でこれらの画像を確認し,貸出限度額を30万円とする甲名義のキャッシングカードを同受付機を通して発行した。甲は,直ちにこのカードを使って同店舗内の現金自動支払機から30万円を引き出した。
甲の罪責を論ぜよ(ただし,運転免許証を取得した点については除く。)。
(出題趣旨)
本問は,長期間使用していた通称に代えて,実名を用いて借入申込書等を作成するなどした上,自動契約受付機を介して金員を借り入れたという事例を素材として,事例を的確に把握してこれを分析する能力を問うとともに,文書偽造の罪における偽造の意義等の基本的要件に関する理解力並びに偽造文書行使罪,詐欺罪及び窃盗罪の各犯罪構成要件の整合的な理解力を問うものである。
【民事訴訟法】
第1問
訴訟手続の進行に関する民事訴訟法の原則と当事者意思の反映について論ぜよ。
(出題趣旨)
民事訴訟手続の進行につき,現行法は裁判所にその主導権を認める職権進行主義を採用しているとされているところ,その採用理由や訴訟指揮権等の具体的内容についての基礎的知識の有無を試すとともに,各種の申立権,責問権,当事者の意見聴取等,当事者の意思を反映させる仕組みの具体的内容及びその趣旨につき,職権進行主義との関係を踏まえた理解を問うものである。
第2問
甲は,乙に対し,乙所有の絵画を代金額500万円で買い受けたとして,売買契約に基づき,その引渡しを求める訴えを提起した。
次の各場合について答えよ。
1 甲の乙に対する訴訟の係属中に,乙は,甲に対し,この絵画の売買代金額は1000万円であるとして,その支払を求める訴えを提起した。
(1 ) 甲は,乙の訴えについて,反訴として提起できるのだから別訴は許されないと主張した。この主張は,正当か。
(2 ) 裁判所は,この二つの訴訟を併合し,その審理の結果,この絵画の売買代金額は700万円であると認定した。裁判所は,甲の請求について「乙は甲に対し,700万円の支払を受けるのと引換えに,絵画を引き渡せ。」との判決をすることができるか。一方,乙の請求について「甲は乙に対し,絵画の引渡しを受けるのと引換えに,700万円を支払え。」との判決をすることができるか。
2 甲の乙に対する訴訟において,「乙は甲に対し,500万円の支払を受けるのと引換えに,絵画を引き渡せ。」との判決が確定した。その後,乙が,甲に対し,この絵画の売買代金額は1000万円であると主張して,その支払を求める訴えを提起することはできるか。
(出題趣旨)
同時履行関係に立つ請求に関する手続上の諸問題についての問題である。1(1)では,反訴を提起しうる場合の別訴提起の可否を審理の重複の回避等の観点を踏まえて論ずべきである。(2)では,同時履行の抗弁の主張の要否を論じた上で,甲・乙の各請求についての一部認容判決の可否を処分権主義の観点を踏まえて論ずべきである。2では,引換給付判決に生ずる既判力の範囲及び紛争の蒸し返しの防止の可否について論ずべきである。
訴訟手続の進行に関する民事訴訟法の原則と当事者意思の反映について論ぜよ。
(出題趣旨)
民事訴訟手続の進行につき,現行法は裁判所にその主導権を認める職権進行主義を採用しているとされているところ,その採用理由や訴訟指揮権等の具体的内容についての基礎的知識の有無を試すとともに,各種の申立権,責問権,当事者の意見聴取等,当事者の意思を反映させる仕組みの具体的内容及びその趣旨につき,職権進行主義との関係を踏まえた理解を問うものである。
第2問
甲は,乙に対し,乙所有の絵画を代金額500万円で買い受けたとして,売買契約に基づき,その引渡しを求める訴えを提起した。
次の各場合について答えよ。
1 甲の乙に対する訴訟の係属中に,乙は,甲に対し,この絵画の売買代金額は1000万円であるとして,その支払を求める訴えを提起した。
(1 ) 甲は,乙の訴えについて,反訴として提起できるのだから別訴は許されないと主張した。この主張は,正当か。
(2 ) 裁判所は,この二つの訴訟を併合し,その審理の結果,この絵画の売買代金額は700万円であると認定した。裁判所は,甲の請求について「乙は甲に対し,700万円の支払を受けるのと引換えに,絵画を引き渡せ。」との判決をすることができるか。一方,乙の請求について「甲は乙に対し,絵画の引渡しを受けるのと引換えに,700万円を支払え。」との判決をすることができるか。
2 甲の乙に対する訴訟において,「乙は甲に対し,500万円の支払を受けるのと引換えに,絵画を引き渡せ。」との判決が確定した。その後,乙が,甲に対し,この絵画の売買代金額は1000万円であると主張して,その支払を求める訴えを提起することはできるか。
(出題趣旨)
同時履行関係に立つ請求に関する手続上の諸問題についての問題である。1(1)では,反訴を提起しうる場合の別訴提起の可否を審理の重複の回避等の観点を踏まえて論ずべきである。(2)では,同時履行の抗弁の主張の要否を論じた上で,甲・乙の各請求についての一部認容判決の可否を処分権主義の観点を踏まえて論ずべきである。2では,引換給付判決に生ずる既判力の範囲及び紛争の蒸し返しの防止の可否について論ずべきである。
【刑事訴訟法】
第1問
警察官は,集団による連続強盗事件の犯行グループの一員である疑いの濃厚な甲の容ぼうと,甲宅に常時出入りする者の容ぼうを写真撮影してこれを被害者等に示し,犯人の特定を行おうと考えた。そこで,警察官は,甲宅向かいのビルの一室を借り受け,望遠レンズを装着したカメラを設置するとともに,そこから甲宅出入口付近の監視を継続し,自宅から路上に出てきた甲の容ぼうを撮影した。また,甲宅から出てきて路上を歩行している乙の容ぼうも撮影した。
これらの写真撮影は適法か。
(出題趣旨)
警察官が,既に発生した集団による連続強盗事件の犯人特定のために,被疑者等の容貌を写真撮影したという捜査の適法性を問うことにより,強制処分法定主義の意義,強制捜査と任意捜査の区別,写真撮影の法的性質と適法性の判断基準などについて,基本的知識の有無と具体的事案に対する応用力を試すものである。
第2問
被告人甲及び乙は,強盗罪の共同正犯として起訴され,併合して審理されている。甲は,捜査・公判を通じて否認しており,乙は,捜査段階で甲と共同して犯行に及んだことを自白し,その旨の検察官面前調書が作成されているが,冒頭手続において否認した。この検察官面前調書は,どのような場合に甲に対する証拠とすることができるか。審理経過に言及しつつ論ぜよ。
(出題趣旨)
共同正犯として起訴された共同被告人の一方が捜査・公判を通じて犯行を否認し,他方が捜査段階では自白したものの公判段階で否認したという事例について,後者の検察官面前調書を前者に対する証拠とすることができる場合を審理経過に言及しつつ論じさせることにより,伝聞証拠禁止の原則,公判手続の進行過程に即した同調書取調べ請求の前提となる手続,刑訴法第321条第1項第2号の適用要件などについて,基本的知識の有無と具体的事案に対する応用力を試すものである。
警察官は,集団による連続強盗事件の犯行グループの一員である疑いの濃厚な甲の容ぼうと,甲宅に常時出入りする者の容ぼうを写真撮影してこれを被害者等に示し,犯人の特定を行おうと考えた。そこで,警察官は,甲宅向かいのビルの一室を借り受け,望遠レンズを装着したカメラを設置するとともに,そこから甲宅出入口付近の監視を継続し,自宅から路上に出てきた甲の容ぼうを撮影した。また,甲宅から出てきて路上を歩行している乙の容ぼうも撮影した。
これらの写真撮影は適法か。
(出題趣旨)
警察官が,既に発生した集団による連続強盗事件の犯人特定のために,被疑者等の容貌を写真撮影したという捜査の適法性を問うことにより,強制処分法定主義の意義,強制捜査と任意捜査の区別,写真撮影の法的性質と適法性の判断基準などについて,基本的知識の有無と具体的事案に対する応用力を試すものである。
第2問
被告人甲及び乙は,強盗罪の共同正犯として起訴され,併合して審理されている。甲は,捜査・公判を通じて否認しており,乙は,捜査段階で甲と共同して犯行に及んだことを自白し,その旨の検察官面前調書が作成されているが,冒頭手続において否認した。この検察官面前調書は,どのような場合に甲に対する証拠とすることができるか。審理経過に言及しつつ論ぜよ。
(出題趣旨)
共同正犯として起訴された共同被告人の一方が捜査・公判を通じて犯行を否認し,他方が捜査段階では自白したものの公判段階で否認したという事例について,後者の検察官面前調書を前者に対する証拠とすることができる場合を審理経過に言及しつつ論じさせることにより,伝聞証拠禁止の原則,公判手続の進行過程に即した同調書取調べ請求の前提となる手続,刑訴法第321条第1項第2号の適用要件などについて,基本的知識の有無と具体的事案に対する応用力を試すものである。