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平成16年度司法試験第二次試験論文式試験問題と出題趣旨

【憲法】

第1問
 13歳未満の子供の親権者が請求した場合には,国は,子供に対する一定の性的犯罪を常習的に犯して有罪判決が確定した者で,請求者の居住する市町村内に住むものの氏名,住所及び顔写真を,請求者に開示しなければならないという趣旨の法律が制定されたとする。この法律に含まれる憲法上の問題点を論ぜよ。
(出題趣旨)
 前科に関する情報を公表されない個人の利益と子供の安全のためにその情報を得る利益が対抗関係に立つような法律が成立したと仮定して,当該法律の憲法上の問題点につき,それぞれの利益の性質やその重要性等を踏まえながら,その立法目的や具体的な利益調整手段の在り方を論理的に思考する能力を問うものである。
第2問
 公職選挙法第10条は,被選挙権を有する者を,衆議院議員については年齢満25年以上の者,参議院議員については年齢満30年以上の者と定めている。この規定の憲法上の問題点を論ぜよ。
 また,同条を改正して,衆議院議員及び参議院議員のいずれも年齢満35年以上の者とした場合は,憲法上どのような問題が生じるか,論ぜよ。
(出題趣旨)
 衆議院議員及び参議院議員の各被選挙権の年齢要件に関する公職選挙法の規定の合憲性につき,被選挙権の性質,憲法第44条,第47条等の趣旨を踏まえた理解を問うとともに,それを前提に,両議院の議員の各被選挙権の資格年齢をさらに引き上げた上,それを同じにする改正をした場合に生じる憲法上の問題点につき,両院制との関連等を踏まえた論理的思考力を問うものである。

【民法】

第1問
 AはBとの間で,A所有の土地上に2階建住宅を新築する工事について,請負代金を2000万円とし,内金1000万円は契約締結時に,残金1000万円は建物引渡し後1か月以内に支払うとの約定で請負契約を締結した。この事案について,以下の問いに答えよ。なお,各問いは独立した問いである。
1  Aは,Bが行ったコンクリートの基礎工事が不完全であるとして,Bに工事の追完を求めたが,Bは基礎工事に問題はないと主張してその後の工事を進めようとしている。AはBとの契約関係を終了させるためにどのような主張をすることができるか。
2  Aは,Bに内金1000万円を支払い,Bは約定の期日までに建物を完成させてAに引き渡した。ところが,屋根の防水工事の手抜きのため,引渡し後1週間目の大雨によって建物の2階の書斎に雨漏りが生じ,書斎内のA所有のパソコン等が使い物にならなくなってしまった。雨漏りによるパソコン等の損害を50万円,屋根の補修工事に要する費用を100万円とした場合,AはBの請負残代金請求に対してどのような主張をすることができるか。
(出題趣旨)
 本問は,請負契約における債務不履行責任と瑕疵担保責任の関係を踏まえ,目的物に瑕疵がある場合等に当事者が主張すべき法的主張を事案に即して展開する能力を問うものである。小問1は,目的物完成前の債務不履行に基づく解除及び641条による解除についてその要件効果を問い,小問2は,目的物完成後の634条による瑕疵担保責任等と請負代金債務との同時履行の抗弁及び相殺の主張の可否,効果を問うものである。
第2問
 Aは,Bに2000万円の金銭を貸し付け,その担保としてBの父親Cが所有する甲不動産(時価2500万円)に第1順位の抵当権の設定を受け,その旨の登記をした。Bは支払期限までにその債務を弁済せずに行方をくらませた。
 そこで,Cは,この抵当権の実行を避けるため,Aに対して複数回に分けて合計800万円をBに代わって弁済するとともに,残りの債務も代わって弁済する旨繰り返し申し出たので,Aはその言を信じてBに対して上記貸金債権について特に時効中断の手続をとらないまま,支払期限から10年が経過した。他方,その間に,Cに対してDが1000万円,Eが1500万円の金銭を貸し付け,その担保として,甲不動産につきそれぞれDが第2順位,Eが第3順位の抵当権の設定を受け,いずれもその旨の登記を了した。
 以上の事実関係の下で(Cが無資力である場合も想定すること),Aが甲不動産に対して有する第1順位の抵当権設定登記の抹消を請求するため,Eはいかなる主張をし,他方,Aはこれに対していかなる反論をすることが考えられるかを指摘し,それぞれについて考察を加えよ。
(出題趣旨)
 時効制度に関するいくつかの論点の検討を求めるものである。すなわち,時効援用権者の範囲(後順位抵当権者は先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用できるかなど),時効援用権に対する債権者代位権の行使の許否(債務者が物上保証人であり援用により抵当権の負担が消滅する場合),及びその要件,並びに物上保証人による債務承認行為は時効中断事由かなどである。

【商法】

第1問
 P株式会社の代表取締役Aは,第三者割当ての方法で,取引先Q株式会社に対し,発行価額50円で大量に新株を発行した。P社株式の株価は,過去1年間1000円前後で推移していたが,この新株発行により,大幅に下落するに至った。ところで,この新株発行は,取締役会の決議を経てはいたが,株主総会の決議を経ないままされたものであった。
 P社の株主Bは,商法上どのような手段をとることができるか。新株発行事項の公示(商法第280条ノ3ノ2)がされていなかった場合はどうか。
(出題趣旨)
 本問は,株式会社において違法な新株発行が行われた場合に,不利益を受ける旧株主には,商法上どのような救済手段が存在するかを問う問題である。具体的には,株主総会の特別決議を経ることなく,株主以外の者に対し特に有利な価額で新株が発行された場合に,旧株主は,当該新株発行の効力を争うことができるか,関係者の民事責任を追及することができるか,当該新株発行事項の公示がされていなかった場合はどうかについて,判例・学説の状況を理解した上で,整合的に論述することが求められる。
第2問
 A株式会社の取締役である甲は,A社の代表取締役ではないにもかかわらず,代表取締役であった父親が死亡した際に,取締役会の決議を経ることのないまま,議事録を作成して,A社の代表取締役に就任した旨の登記をした。
 甲は,振出人を「A株式会社代表取締役甲」とし,受取人をBとする約束手形をBに対して振り出した。さらに,Cは,この手形を裏書によりBから取得した。
 Cは,どのような場合に,だれに対して手形金の支払を請求することができるか。
(出題趣旨)
 本問は,自ら代表取締役である旨の虚偽の登記をした取締役がその会社の代表取締役の名称で振り出した約束手形の効力について,不実登記の効力,表見代表取締役等の表見法理による第三者保護規定との関係において整理された論述をすることができるかどうかを見る点に主眼がある。手形行為と表見代理,代理権の瑕疵と手形の転得者の保護等についての基本的理解を踏まえて類似事例を処理する応用力が試されるが,それとともに,裏書人の担保責任,無権代理人の責任についての言及も求められる。

【刑法】

第1問
 甲は,交際していたAから,突然,甲の友人である乙と同居している旨告げられて別れ話を持ち出され,裏切られたと感じて激高し,Aに対して殺意を抱くに至った。そこで,甲は,自宅マンションに帰るAを追尾し,A方玄関内において,Aに襲いかかり,あらかじめ用意していた出刃包丁でAの腹部を1回突き刺した。しかし,甲は,Aの出血を見て驚がくするとともに,大変なことをしてしまったと悔悟して,タオルで止血しながら,携帯電話で119番通報をしようとしたが,つながらなかった。刺されたAの悲鳴を聞いて奥の部屋から玄関の様子をうかがっていた乙は,日ごろからAを疎ましく思っていたため,Aが死んでしまった方がよいと考え,玄関に出てきて,気が動転している甲に対し,119番通報をしていないのに,「俺が119番通報をしてやったから,後のことは任せろ。お前は逃げた方がいい。」と強く申し向けた。甲は,乙の言葉を信じ,乙に対し,「くれぐれも,よろしく頼む。」と言って,その場から逃げた。乙は,Aをその場に放置したまま,外に出て行った。Aは,そのまま放置されれば失血死する状況にあったが,その後しばらくして,隣室に居住するBに発見されて救助されたため,命を取り留めた。
 甲及び乙の罪責を論ぜよ(特別法違反の点は除く。)。
(出題趣旨)
 本問は,殺害行為に及んだ者が翻意して被害者を救助しようとしたが,別の者が殺意をもってその救助を妨害して被害者を放置したという事例を素材として,事例を的確に把握してこれを分析する能力を問うとともに,中止犯の成立要件に関する理解及びその事例への当てはめの適切さ並びに不作為を含む殺人の実行行為に関する理解を問うものである。
第2問
 甲は,Aとの間で,自己の所有する自己名義の土地を1000万円でAに売却する旨の契約を締結し,Aから代金全額を受け取った。ところが,甲は,Aに対する所有権移転登記手続前に,Bからその土地を1100万円で買い受けたい旨の申入れを受けたことから気が変わり,Bに売却してBに対する所有権移転登記手続をすることとし,Bとの間で,Aに対する売却の事実を告げずに申入れどおりの売買契約を締結し,Bから代金全額を受け取った。しかし,甲A間の売買の事実を知ったBは,甲に対し,所有権移転登記手続前に,甲との売買契約の解除を申し入れ,甲は,これに応じて,Bに対し,受け取った1100万円を返還した。その後,甲は,C銀行から,その土地に抵当権を設定して200万円の融資を受け,その旨の登記手続をし,さらに,これまでの上記事情を知る乙との間で,その土地を800万円で乙に売却する旨の契約を締結し,乙に対する所有権移転登記手続をした。
 甲及び乙の罪責を論ぜよ。
(出題趣旨)
 本問は,土地の二重売買,その後の抵当権設定及び更なる売却に関わる事例を素材として,売主及び情を知って買い受けた者の罪責を問うものである。ここでは,横領罪,詐欺罪等の成立要件の理解,横領後の横領に関する的確な考察が重視されるとともに,事例を法的に分析して論理的に首尾一貫した論述を行うことが求められる。

【民事訴訟法】

第1問
 弁論主義の下における証明責任の機能について,証明責任を負わない当事者の立証活動の在り方に関する規律に触れつつ,論ぜよ。
(出題趣旨)
 本来的に訴訟の最終段階で機能する(客観的)証明責任と訴訟過程に関する原理である弁論主義との関係についての理解を問うことを第一とする問題である。さらに,弁論主義の下で生じるいわゆる主観的証明責任(証拠提出責任)は,論理的には,証明責任を負担しない当事者の行うべき訴訟活動を規律するものではないが,事案の適切な解決のために,どのような制度や理論が存するかという点についても論ずべきである。
第2問
 Xは,Yに対し,200万円の貸金債権(甲債権)を有するとして,貸金返還請求訴訟を提起したところ,Yは,Xに対する300万円の売掛金債権(乙債権)を自働債権とする訴訟上の相殺を主張した。
 この事例に関する次の1から3までの各場合について,裁判所がどのような判決をすべきかを述べ,その判決が確定したときの既判力について論ぜよ。
1  裁判所は,甲債権及び乙債権のいずれもが存在し,かつ,相殺適状にあることについて心証を得た。
2  Xは,「訴え提起前に乙債権を全額弁済した。」と主張した。裁判所は,甲債権が存在すること及び乙債権が存在したがその全額について弁済の事実があったことについて心証を得た。
3  Xは,「甲債権とは別に,Yに対し,300万円の立替金償還債権(丙債権)を有しており,訴え提起前にこれを自働債権として乙債権と対当額で相殺した。」と主張した。裁判所は,甲債権が存在すること並びに乙債権及び丙債権のいずれもが存在し,かつ,相殺の意思表示の当時,相殺適状にあったことについて心証を得た。
(出題趣旨)
 判決及び既判力の意味内容を正しくかつ深く理解しているかを問う問題である。まず,請求認容判決になるか請求棄却判決になるかとの結論を述べ,その判決主文の判断について生じる既判力の根拠,範囲及び内容を論ずべきである。それを前提として,相殺の主張に関する理由中の判断に認められる既判力について,その制度趣旨と前記既判力に関する基本的理解の両面から,その範囲及び内容を論ずべきである。

【刑事訴訟法】

第1問
 警察官は,被疑者甲及び乙について,Aをナイフで脅迫し現金を奪った旨の強盗の被疑事実により逮捕状の発付を得た。
1  警察官は,甲を逮捕するためその自宅に赴いたが,甲は不在であり,同居している甲の妻から,間もなく甲は帰宅すると聞いた。そこで,警察官は,妻に逮捕状を示した上,甲宅内を捜索し,甲の居室でナイフを発見し,差し押さえた。この捜索差押えは適法か。
2  警察官は,乙の勤務先において逮捕状を示して乙を逮捕し,その場で,乙が使用していた机の引き出し内部を捜索したところ,覚せい剤が入った小袋を発見した。警察官はこれを押収することができるか。
(出題趣旨)
 逮捕に伴う捜索・差押えについて,逮捕着手前に捜索差押えを行うことの可否と,逮捕の原因となった被疑事実以外の事実に関する証拠の捜索差押えの可否を問うことにより,刑事訴訟法第220条第1項が無令状で捜索差押えを認めている趣旨,その要件,捜索の場所及び差押えの対象物の範囲などについて,基本的知識及び論理的思考力の有無並びに具体的事案に対するあてはめの応用力を試すものである。
第2問
 現住建造物等放火の共同正犯として起訴された甲と乙は,公判廷において,いずれも公訴事実を否認している。検察官は,甲が捜査段階で警察官Aに対して「乙と一緒に放火した。」旨を述べた供述調書の取調べを請求した。これに対して,甲乙それぞれの弁護人が異議を述べた。審理の結果,警察官Aの取調べ中,否認していた甲に対して,Aが「甲と乙が火をつけるのを目撃した者がいる。」旨の虚偽の事実を告げたため,甲の上記供述がなされたことが判明した。
1  この供述調書を甲に対する証拠とすることができるか。
2  公訴事実に関する甲の被告人質問が行われる前に,甲が死亡したとする。この供述調書を乙に対する証拠とすることができるか。
(出題趣旨)
 司法警察員が偽計を用いて得た自白調書を例として,自白法則と伝聞法則及びそれらの相互関係について,理解を問う。1は,自白調書に適用される条文の理解と,事例に即した自白法則の適用能力を試すものである。2は,供述者自身に対する証拠としては証拠能力に問題のある自白証書が,共犯者とされる他の被告人に対して証拠となり得るかどうかについて,問題点を整理して分析的に論じられるかどうかを試すものである。
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