秋田県人権啓発活動ネットワーク協議会
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平成16年度最優秀賞 秋田地方法務局長賞 父の生き方と共に

大森町立大森中学校二年 栗原 研

「あ,危ない」ここは病院前のゆるい傾斜の道路。僕を乗せた車いすが,勝手に動き出します。ブレーキはどこだ,どうやって使うんだ,向こうから車が来る,次の瞬間母が駆けて来て,ハンドグリップを強く握り,渾身の力を込めて止めてくれました。

二年前の夏休み,僕は母と二人,車いすで自分の住んでいる町の病院やスーパー,図書館,役場などを歩いてみました。僕が車いすに乗り,自分で動かして移動しました。このとき感じたのは,車いすでの移動には,想像以上に腕の力が入り,とても疲れるということです。操作に慣れていないのと,外の環境が車いすで移動しやすいものになっていないのが原因でした。少しの段差や道路の傾きがあれば移動できないし,傾いている方向に走ってしまいます。そばには母がついていて,進めない時や勝手に車いすが進んでいく時には助けてくれたので,どうにか移動することができました。もしこれが自分一人だったらどうでしょうか。きっと思うように進むこともできず,大事故になっていたかもしれません。苦労しながら,様々な施設を回ってみると,建物の前には駐車場がありました。車いす用のある所,ない所と,様々でした。せっかく用意されている車いす専用の駐車スペースに,障害者でもない人が車を止めているのを見た時には,腹立たしくなりました。

駐車場などの状況は,建物が立てられた時期と関連があり,古い施設ほど車いすへの配慮が不足していました。最近建てられた施設はスロープやエレベーター,トイレ,カウンターの高さや幅など,車いすでも利用しやすいような気配りがされていました。

車いすに乗って施設や道路を移動中,すれ違う人たちの「観察」するような視線を感じました。いたたまれない気分でした。明らかに,車いすに乗っている自分を特別視しているのです。同時に,はっとしました。僕もきっとこれまで,車いすに乗った人や障害を持つ人と出会った時,そんな視線を送っていたのだ,そう思ったからです。それだけではありません。スーパーに入った時,陳列棚の上の方には手が届かない,品物を持ったまま移動する時,ひざの上に荷物を置くと崩れ落ちそうになるし,車いすもうまく動かせない。でも,周りの人は見ているだけ。手を貸してくれる人は誰もいませんでした。僕は決心しました。不自由な思いをしている人に出会ったら,じろじろ見ない,そっと手伝う,と。

僕の父は二年前,突然亡くなりました。心臓から血栓が飛んで脳塞栓を起こしたのです。父から教わったことは数え切れないほどたくさんありますが,中でも,障害のある人への接し方についてが強く心に残っています。父は養護学校の教師でした。父が生きていた頃は,養護学校の生徒が時々,家に遊びに来ていました。父の夢は自分で農業経営をして,高等部を卒業した生徒と働くことでした。

父がなぜ彼らが好きかというと,生きることに計算がなく純粋だからです。今の世の中は高学歴社会で,幸せを感じる感度が鈍くなっている。そんな中で,彼らは,自分のできることを一生懸命がんばり,それを幸せと感じることができる人々だからだ,父はそう語っていました。また,父と一緒に読んだ詩。それも,今の僕を支えてくれています。「あの子のそばに行くと病気が移るよ,小さい時に何気なく私の耳に入った言葉。私の病気は脳性麻痺。うつる病気じゃないけれど,今はがんばって体を鍛え,負けない心と明るい笑顔をうつすことができるようになったよ。」ある養護学校の生徒の卒業生の詩です。

正直なところ,父が養護学校に勤務する以前は,障害のある人を「恐い,変だ」と思うことがありました。でも,今は,そんな感情を持った自分がとても恥ずかしいです。なぜなら,自分だって欠点だらけの人間だからです。僕の知能は正常で,体に不自由なところもありません。でも,他人の目が気になり不安で自信を持てずにいる僕がいます。僕と彼らの間に,違いも,壁もないのです。

人は,生まれた時から,人間として生きる権利があります。この権利を脅かすのも,守ることができるのも人間です。自分の心の壁がとれた時,障害のある人やお年寄りの人たちなど,社会的に弱い立場の人を優しく受け止めることができました。心のバリアフリーを実感した瞬間です。障害のある人は,自分ができることを一生懸命がんばり,自立と社会参加を目指していきます。そんな姿から,自分には健康な体があるのだから,障害のある人以上に努力し,向上しなくてはならないのだという勇気をもらっている気がします。

障害を持つ人たちをしっかりと受け止め,心のバリアフリーを実践した父の生き方。僕もそれを見本に,これからの生活の中で,心のバリアフリーを実践し,自分たちや障害を持つ人たちが共に手を取り合って生きていける社会を目指します。

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