ホーム > 活動紹介・各種行事 > 秋田地方法務局・秋田県人権擁護委員連合会の活動紹介 > 全国中学生人権作文コンテスト 秋田県大会 > 第26回全国中学生人権作文コンテスト(平成17年度) >

平成17年度最優秀賞 秋田地方法務局長賞 母からの贈りもの
大館市立田代中学校一年 小坂 夏実
平成5年5月 7月14日
夏実の上の前歯が生えました。
9ヶ月頃,1・2歩アンヨしました。
10ヶ月頃,アンヨ上達。
平成5年8月8日 1歳になりました。
歩くのが速くて,長い時間お散歩するとご機嫌です。ベビーカー,自転車に乗りたがりません。自分で食べようと必死です。お話の語尾をまねして,少しずつおしゃべりが・・・。
平成6年3月2日。1歳6ヶ月。
・パパ,ママ,お兄ちゃんの名前,ぶーぶー,チョウチョウ,赤ちゃん語ですが,ずいぶん言葉が増え,まねっこが大好きです。
・猫や犬をみると「おいでおいで」といってだっこしたがります。
これは,わたしの母が残してくれた,わたしの赤ちゃんの時の記録です。私の母子手帳の記録はここで終わっています。
わたしの家族は,祖父母・父・兄・妹,そして,わたしの6人家族です。今お話したことからおわかりだと思いますが,わたしには母がいません。
わたしが幼い頃,わたしは東京に住んでいました。母はそこで,事故に遭い,亡くなりました。当時赤ん坊だったわたしには,母の記憶がほとんどありません。でも,わたしや兄の小さい頃の様子がびっしり書かれたノートを見ると,わたしたちのことを事細かく見てくれていたんだなあと,とてもうれしく思いました。
こんなことを思い出したのは,夏休みを通じて連日放送される多くの事件がきっかけでした。その一つは「幼児虐待」です。
親が自分の子供を傷つけ,あるいは最悪の場合には殺してしまう,こんなことがあっていいのでしょうか。殺すくらいなら初めから生まない方がいいと思います。人間は殺されるために生まれてくるわけではないのです。
もう一つは,私たちと同じ世代の若者が起こした数々の事件でした。何がそうさせるのかはわかりませんが,私たちと同じ中学生が,自分の親や兄弟,周りの人を傷つける事件が後をたちませんでした。
これらのことに共通していえることはなんでしょうか。わたしは,自分の周りの人が,自分にとっても,だれかにとっても,かけがえのない存在だ,という気持ちが足りないのではないかと思います。そしてまた,周りの人にとってその人自身も,かけがえのない存在であるという自覚がないのだと思います。
わたしは,わたしにとってたった一人の母を失いました。母の記憶はありません。母がいないことで大変だったことはたくさんありました。ですが,その大きな壁に突き当たる度に,母という存在の大切さを知り,壁を乗り越えるために,家族や周りの人たちの手を借り,その人たちの大切さを感じてきました。母も周りの人たちも,みんなわたしにとってかけがえのない宝物なのです。
わたしの母が今,この世に存在する人であったら,わたしのことを一番に考えて,優しく接してくれると,わたしは信じています。そして,将来,わたしが母親になったとき,わたしも自分の子どものことや周りの人を思いやり,子どもからも愛される母親になりたいと思います。
詩人相田みつをさんの作品に次のような詩を見つけました。
いのちのバトン
父と母で2人 父と母の両親で4人
そのまた両親で8人
こうして数えていくと
10代前で,1,024人
20代前では,なんと100万人を超すんです
過去無量の いのちのバトンを受け継いで
いま,ここに自分の番を生きている
それがあなたのいのちです
それがわたしのいのちです
母はここにはいません。でも,わたしは母からいのちのバトンを受け取りました。虐待や不登校,傷害事件など多くの問題で悩む人達も,数多くのいのちのバトンを受けついで,今生きていることを感じて下さい。理解して下さい。あなたがそこに存在するために,数百万の人達が,あなたを今そこに送り出すために一生懸命生きたのです。その証があなたなのです。
そのいのちのありがたさをかみしめながら,そのいのちを慈しみながら,今度は,私たちがそのいのちを伝えていく番なのです。