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愛媛県人権啓発活動ネットワーク協議会
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一人じゃない

西条市立西条西中学校 3年 河野 菜香

中学一年の二学期の頃、私は不登校になった。友達が信じられなくなり、「学校に行くのが怖い。」という思いが芽生えた。私を心配して、友達や先生がわざわざ家に来てくれたが、私はひたすら部屋に閉じこもった。友達は「私で良かったら話を聞くよ。学校で待っているからね。」と言ってくれた。それでも、私はかたくなに学校を拒んだ。

そんな日が続いたある日のことだ。「しばらく大阪の姉ちゃんのところに行ってみないか?」と父が言った。母と相談して、気分転換をさせようと考えたのだ。次の日、私は一人でフェリーに乗った。つかの間の姉との生活の中で、姉は自分の中学校や高校の時の話をたくさんしてくれた。そして、「今は信じられなくても、きっと支えてくれる友達がいるよ。徐々に心を開いていけばいいんだよ。」と言った。少し勇気が湧いた。姉のところから帰ってきた私に、兄は「学校行けよ、サボリ。」と茶化して私の負けん気に火をつけようとした。

本来負けず嫌いの私は、いつしか「どんな形でもいい。学校に行こう。」と思い始めた。そして、先生と相談し、保健室登校から始めることにした。そこには私と同じように、保健室登校をしているM先輩がいた。ともに過ごす時間の中で、私は先輩に、あったこと全てを話した。先輩はうなずきながら私の思いを聞き、先輩もまた、自分のことを話してくれた。肩の荷が少し軽くなった。しかし、教室は私にとってまだまだ遠い存在だった。何より、クラスのみんなが受け入れてくれるかが不安でたまらなかった。

クラスでは文化祭の合唱コンクールに向けて、歌の練習が始まっていた。友達は保健室まで足を運び、私のために合唱コンクールの曲を歌って聞かせてくれた。それでも、なかなか初めの一歩を踏み出せない私に、ある日クラスの友達からの手紙が届いた。「文化祭で一緒に歌おう」「早くよくなって一緒に勉強しよう」紙いっぱいに綴られた寄せ書き。私を心配してくれている気持ちが痛いほど伝わってきた。私は教室に戻ろうと決めた。本当はとても怖かった。でも、私はできるだけ教室に入り、みんなと一緒に授業を受けた。合唱の練習にもできるだけ参加したが、まだまだ歌詞は十分ではなかった。

「伴奏してあげるから、一緒に歌の練習をしよう。」ある日、伴奏をしているNさんが声をかけてくれた。二人の放課後練習が始まった。時には、他の友達も加えながら、放課後練習は進み、私はかなり歌えるようになってきた。でも、クラス全体の練習には出たり出なかったり・・・私はまた不安になってきた。他のみんなはこんな私をどう思っているのだろう。不安はどんどん焦りへと変わっていった。

文化祭を一週間後に控えたある日、いつものように放課後練習を終え、ピアノを片付けているNさんに私はぽつりと言った。「あのね、私、文化祭当日は出ないかもしれん。」Nさんは驚いた顔をした。「よく分からないけど、本番でみんなと気持ちを合わせられるか不安なんよ。出たいけど、出たくない気持ちがする。」すると、Nさんは言った。「自分が歌える範囲でいいよ。大事なのはクラス全員で出ることよ。一人でも欠けたらいかん。みんなで、いい思い出作ろうよ。」私の中の不安や焦り、自分に対するいらだたしさが一気に和らいだ。私はやっと一歩踏み出す決心をした。

文化祭当日。どんどん私たちの出番が近づいてくる。私の不安と緊張はピークに達していた。「次は一年二組のみなさんです。」私はできるだけ胸をはって、みんなと壇上に上った。スポットライトが眩しい。指揮者の指が動き、ピアノの伴奏が始まった。息を合わせて、私は歌い始めた。ハーモニーが気持ちいい。いつのまにか私とみんなと心が一つになっていくのを感じた。そして、歌は終わった。三学期になると同時に、私は完全に教室に戻った。私の生活に再び笑顔が戻った。

それまで普通に友達と仲良く過ごしてきた私が、不登校になるなんて考えもしなかった二年前のある日。苦しかった。辛かった。しかし、不登校を経験したからこそ、私は今、辛い思いをしている人の気持ちが分かるようになった。友達の相談にのった後に、「話を聞いてくれてありがとう。とても楽になったよ。」と言われると、少しでも人の役に立ててよかったと思える。

「大丈夫。一緒にがんばろう。」と私に勇気を与え、いつも私の味方になってくれた家族。そっと背中を押してくれた友達や先輩、先生たち。「私は一人じゃない」と信じることができたからこそ、今、私はここにいる。これからもいろんなことがあるだろう。でも、今の自分なら大丈夫。きっと乗り越えていける。だって、私は一人じゃないから。

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