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愛媛県人権啓発活動ネットワーク協議会
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つながる心

伊方町立三崎中学校 3年 浅野 武蔵

昨年三月十一日に起こった東日本大震災。学校で待機していた僕は、その後の未曽有の大災害をまだ知るよしもなかった。いつもなら家に帰る時刻をすでに過ぎ、やっと帰ったのは夜の七時半頃だった。「これはただごとではない。」と思い、テレビの電源を入れたその瞬間、画面にくぎ付けになった。黒い波が壁のように高くなって町をものすごい速さで飲みこんでいた。画面の向こう側のニュースキャスターが混乱した様子で今現在の状況を伝えている。この映像は現実なのか、最初は信じられなかった。

毎日ニュースから流れる被災地の痛々しい景色、二万人近くの死者や行方不明の人々。混乱している被災地に何かできないかという思いで、生徒会が中心となり、生徒一人ひとりの家から、布団や毛布、文房具などを集めて送った。

宮城県気仙沼市の大谷中学校と交流が始まったのは、その頃からだ。学校にお礼の手紙が届いて、友達とその手紙に見入った。手紙には、「文房具ありがとうございました。大切に使わせてもらっています。」との心温まる一文もあった。他にも津波の信じられないような被害についてふれられていた。

「おりづるの旅プロジェクト」は、自分たちでそんな遠い友を励まそうと発足した。千羽折れば願いがかなうといわれる鶴に、一刻も早く復興するよう生徒全員が思いを込めて大谷中学校に届けようと取り組んだ。

そんな活動を続けて半年、地元特産のサツマイモを掘り、それを送ることになったのは、昨年の秋のことだった。地元の人たちが、三崎中学校の活動を知り、連携して被災地を支援していこうと持ちかけてくれた。そのように育てられた大切なサツマイモを一つひとつ手作業で慎重に掘り起こしていく。僕は、食卓に並んでおいしく食べてもらえれば何よりもうれしかった。学校に持ち帰り、また一つひとつ手で泥を落としながらイモを磨いた。こんな手間のかかる作業もおいしく食べてもらっている様子を思い浮かべれば、しんどいと感じることもなく、やる気がわいた。全て終わった時には、ものすごく達成感を味わえた。自分の中でもこの体験は、一年が経った今でも忘れられない思い出だ。それに、人の役に立つことができたとき、すがすがしい気持ちになる。

今年の六月には、町の音楽発表会で大谷中学校との交流で得たことをもとにして歌をつくり、それを歌った。この歌もまた、地元出身の歌手が、僕たちの取組と思いに共感し、歌にしてくれたもの。音楽発表会後の反響は、新聞にも載るほどのもので、自分たちの力でこれほど人の心を動かせられたのかと思うと感動した。この誇れる活動を少しでも多くの人に知ってもらい、被災地でがんばっている友にその思いが届くとき、取り組んでよかったと実感できるだろう。

そして感動の音楽発表会から二ヶ月が経った今年の夏、父とともに東北へ行くことになった。ニュースや新聞で見るより、自分の目に焼き付けたいと思ったからだ。「今行かなければもう行くことはないだろう。被災地の現実を知ろう。」という父の言葉も背中を押した。

小高い丘を越え、山道をぬけるとそこには、更地になった気仙沼の町が広がっていた。ところどころにガレキの山があり、その側では、何十台もの重機が作業をしていた。この現実を見て、僕は、あ然とした。最近はテレビなどで被災地に関する放送は少なくなり、復興が進んでいると思っていたからだ。しかし町には、仮設の店が建てられ気仙沼の人たちの希望の光になっていると感じた。

気仙沼市立大谷中学校のグラウンドには、仮設住宅が二百棟という大きな規模で建てられていた。ついに遠い友のいるこの地に来ることができた。三崎中学校生徒会全員で作ったビデオレターと四千羽の折り鶴を大谷中学校生徒会の人たちに手渡すことができた。どの人も明るく元気な表情だった。

しかし、そんな中に今も仮設住宅で暮らしている中学生が十数名いるということを聞いて驚いた。厳しい状況にも関わらず前向きな考えで物事を見ている姿に尊敬の気持ちすらわいてきた。話をされていた中で、「津波の訓練はしていたが予想以上のものがきてどうすることもできなかった。」という言葉が印象に残っている。まさに津波のすさまじさを感じる言葉だった。

大谷中学校との交流で、人とのつながりについて深く考えることができた。人は決して一人では生きていけない。お互いが相手のことを思い、支え合って生きている。遠く離れた友から生きる喜びと勇気を学んだ。これからもがんばっている友のために僕にできることをしていきたい。

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