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「介護ボランティアを体験して」

愛媛大学教育学部附属中学校 2年 中根 夢乃

「暗くて怖い」

私は今まで老人ホームに対してそんなマイナスイメージを持っていた。幼稚園の頃、近くの老人ホームで交流会があり、その時の強烈な印象がずっと脳裏に焼き付いていた。わけの分からない言葉を大声で叫んでいたご老人、突然席を立って意味もなくうろうろしだしたご老人、目が宙の一点をずっと見つめていて話しかけても視線を合わせてくれず笑顔もなかったご老人・・・・。幼かった私にとって、その光景はとても衝撃的だった。その日の夜は、お年寄りたちの表情が何度も浮かんでは消え、ほとんど眠れなかったのを覚えている。それほど私は、感受性が強く、怖がりで小心者だった。

そんな私の偏見が大きく方向変換される出来事があった。きっかけは、「老人ホームでの介護ボランティア体験」だ。

私の祖父は、介護付有料老人ホームを七年前から経営している。祖父は、行事の手伝いや介護の職場体験に来ないかと、何度も声をかけてくれていたのだが、私は幼き頃の思いを頑固に持ち続け、いつも遠慮し避けていた。

私も中学生になり、ニュースで「認知症」「徘徊」「家族での介護疲れによる殺人や自殺」などを知り、高齢者介護の問題や大変さを頭では少しは理解できるようになった。高齢化社会でもあり、介護の問題は私自身もいずれは避けて通れない現実の問題になる、いつまでも逃げていてはいけないと思うようになってきた。一大決心をして、祖父に自ら「この夏休みに介護のボランティア体験をさせて欲しい。」と願い出た。

体験前に、自分の心を見つめ直し「怖さ」の原因について考えてみた。一つは、高齢者の行動や病気や介護についての知識のなさからくる「怖さ」。二つ目は人とコミュニケーションがとれない、相手のことがよく分からないことからくる「怖さ」。この二つのおばけを退治して恐怖心を克服し、高齢者理解に努めようという私なりの目標を最初に立てた。

老人ホームでの介護体験で特に印象に残っていることは、食事の介助だ。一人ひとり食べる速さが違うので、それに合わせなくてはいけない。私はそれが分からずに、食べている時に食べ物を口の前まで運んだりして、上手に介助できなかった。のどの動きをよく見て、飲み込むのをみてから食べ物を口に運ぶと、介助される側も嫌な気持ちにならないということを教えて頂いた。

一番難しかったのは「会話」。「恐れを前面に出しながら利用者に接すると、相手にも伝わり不安に思われるので、笑顔で自然に振舞うようしてみて。」と教えて頂き、介護士さんが上手に会話されているの見習いたいと思った。私も、まずは、挨拶と自己紹介。自分では結構大きい声を出したつもりだったがほとんど聞こえてなかったようで「近づいて耳元でもっと大きな声で話してみて。」と教えて頂き、勇気を出して再チャレンジ。すると「真っ黒によう焼けとるねえ。何か運動しよるの。」と返してくれた。「はい、テニス部です。ゴキブリみたいに真っ黒になるまで練習を頑張ります。」と言うと、その方は笑ってくれた。私は、ちょっと近づけたようでとても嬉しくなった。施設には、認知症の方も多く、何度も同じ話を繰り返している方もいたが、そのたびにうなずきながら笑顔で聞いておられた介護士さんの姿も印象的だった。職場体験も五日目になると、心を開いてくれる人も増えてきた。私の経験のない、戦争の話やいろいろな職業の体験談など、人生の大先輩のお話は、実体験に基づいた言葉で深く重みがあり、学ぶことがとても多かった。

介護の現場は、本当に大変そうだった。子どものお世話とは違って体重があるので、入浴介助やオムツ交換なども重労働。その際も単に機械的に作業するのではなく、介護する側は、介護される側が恥ずかしさを感じないようにタオルをかけたり、優しい声をかけたりして気を配っていた。介護の仕事は、体力だけではなく、細やかな気配りも必要だと知った。認知症の方、大病で障害の後遺症に苦しんでいる方、寝たきりの方、人それぞれ症状も違い、いろいろな思いや悩みを抱えている。何が好きで、何が嫌で、何に困っていて何を助けて欲しいのか、何が幸せなのかは、人によってさまざまなので、介護の仕方もみんな違う。一人ひとりの思いに気づき、尊重しながら、何もかも全てを手助けしてしまうのではなく、最期までできるだけ自分自身の力で生きることができるように支えていく。それが介護の原点だと学んだが、これは人権問題を考える上でも同じではないだろうか。

「相手の心に寄り添うこと」「一人の人間としての尊厳を大切にすること」。頭では分かっていても行動にうつすことは難しい。私はこの夏、人として一番大切なことを学んだ。

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