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福島県人権啓発活動ネットワーク協議会
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最優秀賞(全国大会・法務省人権擁護局長賞)
「心の痛み」

滝根町立滝根中学校三年 白土 玲子

「また、 話そうね。」
この言葉を聞くと、私は胸を締めつけられたような気持ちになります。なぜこんな風になってしまうかというと、小学生のあの時の事を思い出してしまうからです。

その時、私は小学五年生。そして、その日は待ちに待った「スキー教室」の日でした。泊まりがけでの行事だったので、私はとてもどきどきしていました。その泊まっていた施設には、他校の人達もたくさんいました。その中でも、私の目にとまったのは、「養護学校」の人達でした。

一日目、スキー教室を終え、施設に戻った時、私の目の前に一人の女の子が立っていました。この女の子のジャージで、すぐ「あー、養護学校の人だ。」と気付き、
「こんにちは。」
と声をかけ、女の子の側に駆け寄りました。その時の私は、「友達になろう。せっかく、他校の人達と会えたんだから…。」と、思っていました。すると今度は、その女の子の方からにこっと笑い、
「こんにちは。あなたの名前は?」
と聞き返してきました。私はすぐに、
「白土玲子です。よろしくね。」
と答えました。その後、話がどんどん盛り上がり、いつの間にか消灯時間になりました。もう部屋に戻ろうとした時、彼女は、
「また、話そうね。」
そう言って部屋に戻って行きました。
二日目の朝、食堂でみんなと食事を終え、部屋へ行こうとした時、大声で、
「玲子ちゃーん。」
と呼ぶ声がしました。あの女の子の声でした。すると、側にいた私の友達が言いました。
「ねえ、あれって知的障害の人でしょ?玲ちゃんのこと呼んでるよ。」

「知的障害……。それって、普通の人じゃない人のことだよねえ。それじゃあ、あの子も……。」こんな気持ちが、心の中に、こみ上げてきたのです。さらに、
「あの子と友達なの?」
と、その友達に聞かれると、「私とあの子が友達?知的障害の人となんて恥かしい。」という気持ちに変わって、ついに、
「友達なんかじゃない……。」
と言ってしまったのです。そして、ふり返ろうともせずに、食堂から出て行ったのです。

心臓がギュッとして、ノドの奥が痛かった。本当に苦しかった。悪いことをしたとは、分かっていました。呼ばれて、手をふろうとしました。だけど、私は手をふることができませんでした。「ごめんね、声、かけようと思ったんだけど……。ごめん……、ごめんね、ごめんね……。」後に残ったのは、結局後悔だけでした。

私は今まで、口では、
「差別はだめだ。」
と、自信をもって言ってきたのですが、自分がどんな人間なのかが、この事でよく分かったような気がしました。本当は弱くて、表面だけの人間。そしてなにより、差別していたのは私自身だったこと。今まで私が批判してきた人達は、実は自分自身だったこと。「人権。」それは一人の人間として当然与えられる権利。それなのに、あの子の存在を無視することで、私はあの子の人権を踏みつぶしたのです。顔さえ、あの時は見ようともしなかった。それを悪いと知りながら、謝りもしなかった。そして、今までこの事を反省して、その気持ちを行動に移すことさえもしなかったのです。

けれど今、やっと行動する勇気が湧いてきたのです。この「人権作文コンテスト」に、作文を送ることで。だってそれは、この私の作文を読んで、誰かが私のした事をいけないと思い、一人でも差別することをしなくなってくれたら良いと思うから。

そしてあの子に、今の私の気持ちを、作文を通して伝えたいと思うから。

「私はあなたのおかげで、前より少し強くなれたよ。けれど、あの時の事は人として許せない行為だったよね。あなたは私のことを許してくれないかもしれない。本当にごめんね。だから、この気持ちを味わった以上、一人でもいいから、差別することは、自分も相手も苦しいことだ、ということに気付いてくれるといいと思う。私の作文を読んだことによって……。」

私はまだ、「人権」を守るにはどうしたらよいか、ということは分かりません。自分自身が何度も間違い、悩み続けているのですから。けれど、これだけは言えます。人としての権利を踏みにじったことは、私にとって、耐えることのできない痛みだった。……ということだけ。

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