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福島県人権啓発活動ネットワーク協議会
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優秀賞 「ぼくの考える人権問題」

郡山市立郡山第一中学校二年 鈴木 秀宗

「こんにちは。」

ぼくは、杖をついて道を歩いていたひとりの老人に声をかけた。その老人は、
「はい、こんにちは。」
と、やさしく穏やかな口調で返事をしてくれた。その老人の目は見えないらしい。杖もただの杖ではなく、盲人専用の杖だった。(目が見えないってたいへんだろうな)と思っていたぼくの心とは裏腹に、その老人の歩く姿は生き生きとしていた。少し、たどたどしい歩き方ではあったが、目が見えるふつうの人と同じように歩いていた。

ぼくは最近、学校で「目の見えない体験」を学習した時のことを思い出した。ふたり一組になり、片方の人は目をつぶって廊下や階段を歩き、教室の自分の席にもどる。もう片方の人は、目をつぶった人が安全に歩行できるように言葉で誘導するのである。ふつうに何でも見えるぼく達にとって、たとえ疑似体験とはいえ、目をつぶっての歩行はかなり困難だった。ぶつかりそうでこわいという感覚である。言葉で説明しながら誘導するのもなかなか容易ではない。その場の状況を的確に相手に伝えるのは難しいとわかった。

そんな体験をした後だっただけに、(たいへんだな)という気持ちが先行したのだと思う。目が見えない人といっても、生まれつきの人もいれば、何かの原因でそうなった人もいる。いずれにせよ、健常者とは違うことはまちがいない。ただ、最近ぼくが思うことは、たとえ目が見えなくても、その人たちもぼくたちと同じく生活しているということだ。盲人は視覚以外の感がかなりいいのだそうだ。それに、目の見えない人のためにもいろいろな工夫がなされている。たとえば、横断歩道で信号が青になったときの「通りゃんせ」、歩行者専用道路のでこぼこ、エレベーターや缶ジュース等、気をつけて見ると、盲人用の点字がついているものが意外にたくさんある。

バリアフリーという言葉をよく耳にする。身体障害者や高齢者が生活を営むうえで支障がないように商品を作ったり建物を設計したりすること。また、そのように作られたものと、広辞苑にはのっている。でも一番大切なことは、言葉を本当に理解し、自分たちの心の中をバリアフリーにすることだと思う。

「五体不満足」という本を書いた乙武さんをはじめてテレビで見たとき、本から伝わる何倍もの生きているパワーを感じた。「障害は不便だけど、不幸ではありません。これもひとつの個性です」という言葉が心に残った。

人間としてこの世に「生」を受け、生まれてきた、そして生きている。一番基本的な見方をすれば、一番大切な点から考えれば、人間はみな平等だし、同等に生きる権利を持っている。でもぼくは、以前に街中であるポスターを見た。「人権保護」という文字、そしておりの中にいる肌の黒い人。その黒人が生きながらにしてとても悲し気な、何かを訴えているような目がやけに印象的で、いつまでも脳裏から離れなかった。肌の色が黒いということで、生きる権利と価値のある人間が、おりの中に入れられているなんて……。これこそまさに差別だと憤りさえ感じた。髪の色・目や肌の色・顔形・体格等、いろいろな違いや特徴があっても、人間としての生きる権利と価値は何ら変わらない。

少し前に、母が台所の野菜の袋から数個のジャガイモを取り出し、ぼくの前に並べてこんなふうに言った。
「この中から一つ選んで名前をつけて、形の特徴を言ってみて。」
ジャガイモなんてそんなによく見たことのないぼくだったが、適当に手に取ったジャガイモをまじまじとながめ、思いつくままに特徴をあげた。説明をだまって聞いていた母は、その後、ぼくのジャガイモを他の十数個のジャガイモの中に入れ、かきまぜた後、ぼくにさっきのジャガイモを探させた。それまではどれも似たような形に見えていた十数個のジャガイモだったが、ぼくは何なく自分のジャガイモを見つけ出すことができた。母は、
「ジャガイモだって、同じように見えても一つ一つ形が違うよね。人間もそうじゃない。クローン人間じゃないんだから、同じ人間なんていないよ。じゃあ、ジャガイモと人間の違いは何?」
変な質問、と思いながらも、よく考えてみた。そして気づいた。ジャガイモは、結局食べられる運命、でも、人間は生きる。それぞれの違い、特徴、個性、障害、いろいろなものを背負い、生きていく。
「よく気づいたね。まさにそのとおり。」
と、母は言った。ぼくは、ジャガイモからとても価値あることを学んだような気がして、これからはもっとありがたく、ジャガイモを食べさせてもらうことにした。人間として生きる権利と価値をあらためて考えながら…。

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