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福島県人権啓発活動ネットワーク協議会
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優秀賞 「私の弟」

ならは町立ならは中学校三年 松本 瞳

私には、八歳の弟がいます。名前は、宏樹といいます。明るく元気で、喜怒哀楽のはっきりとした元気な子です。しかし、宏樹は他の八歳の子たちと比べて、少しだけ言語能力の発達が遅く生まれてきました。一つ一つの言葉がはっきりとせず、自分の気持ちを言葉で伝えることが、みんなより上手にできないのです。そのために、学校では辛い目にあうことも、しばしばあるようです。

ある天気の悪い日の朝、時間も遅かったために、私と弟は車で学校に行くことにしました。途中で弟の通学班に追いついたので、弟が車を降り、通学班の中に入ろうとした時です。高学年の女の子に、弟は傘でたたかれていました。車に乗っていた私は、「宏樹かわいそう…。」と言い、運転席の方を見ると父はもうそこにはおらず、女の子のところに行って必死に注意をしていました。そんな父の姿に、「すごいなあ」と感心しながらも、「朝からこんなんで、大丈夫なのかなあ」と心配な気持ちでいっぱいになりました。

自分の気持ちを、うまく言葉で伝えられない弟は、何かされてもただ泣きべそをかくだけです。そんな弟を、蔑さげすむような偏見の目つきでいじめる人がいます。そういう人達には、「自分が私の弟のような立場だったら、どんな思いをするか」「自分の兄弟が、そんなふうにいじめられていたらどう思うか」よく考えてほしいです。みんなよりも発達が少し遅れているというだけで偏見の目で見られてしまう辛さ。私は弟を見ていて、時々感じます。
しかし、もしかしたら私自身も心のどこかで弟を偏見の目で見ていたのかもしれません。私は、この作文を書くことに最初は迷っていました。それは、弟が他の子たちよりも少しだけ言語能力の発達が遅れているということがこの作文を読んだ人達に知られてしまったら、弟はもっと偏見の目で見られ、辛い思いをしなくてはならないのではないか、と思っていたからです。

そんな時、私は前に読んだことのある一冊の本をふと思い出しました。その本は、障害者の妹を持つ姉の結婚式で、妹からの手作りのプレゼントをもらったことを、姉が大勢の人達の前で、紹介するという話でした。この本を読んで、私は「このお姉さんは、本当に優しい人だ。こんなお姉さんを持っている妹は、きっと幸せなんだろうな」と思いました。そのことを思い出し、私もこのお姉さんのように、明るく元気な弟を、みんなに自慢していいことに気づきました。それが、私から弟への本当の優しさなのだと思います。

弟が外に遊びに行こうとするとき、私はいつも止めようとします。外に出ても、また仲間外れにされるだけだと思い、心配でたまらなかったからです。外から聞こえてくる楽しそうに遊ぶ近所の子たちの声。それが、弟を誘い、「外でみんなと遊びたい」という気持ちにさせます。そんな弟を、私は無理やり家の中へと引っぱり、大声で泣きじゃくる弟に、「宏樹はみんなに仲間外れにされるんだよ!そんなのイヤでしょ。お姉ちゃんは心配してるんだよ!」とどなったことがあります。今では、このときの私は、弟のことを考えすぎて頭がおかしくなっていたのではないかと思います。

私は間違っていました。今まで弟に辛い思いをさせないことが、弟にとって良いことだと思っていました。しかしそれは、弟にとっては、ただの余計なお節介にすぎなかったのです。純真な弟は、何度仲間外れにされても、みんなと楽しく遊びたい一心で、自分から声をかけてがんばっていこうとしているのに、私はそれを妨げていたのです。ただ逃げているだけの私よりも、自ら困難なところに立ち向かっていこうとしている弟の方が、ずっと強く、えらいと思います。また、辛い思いをしても、自分から勇気を出して立ち向かうことが大切だということを、私は弟から教わりました。これから私は、どんなに辛いことがあっても、弟に教わったことを思い出し、がんばって乗り越えていこうと思います。

私の弟宏樹は、今はみんなよりも言語能力の発達が遅れているけれど、明るくて、元気で、喜怒哀楽がはっきりしていて、私よりもずっと強い、とてもいい子です。偏見の目で見られることなんかに、決して負けてはいません。私の自慢の弟です。

いつか、宏樹のことを偏見の眼差しではなく一つの個性と見てくれる良い友達がたくさんできるように、私は願い、見守ることにします。そして、偏見の目で見られている人の辛さを、一人でも多くの人に知ってもらい、この現代社会から偏見いじめなどという人権を侵害するようなことが、一日も早くなくなってくれることを強く祈っています。

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