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福島県人権啓発活動ネットワーク協議会
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優秀賞 「あの日の私から」

須賀川市立仁井田中学校三年 冨岡 和起

私の家の近くには、障害者の人達が自立訓練するための施設があり、時々グループで街を散歩しているのを見かけます。

それは、僕が小学生の頃でした。公園で友達と遊んでいる時、その人達がたまたまやって来ました。散歩の休憩をするためにやって来たのでしょう。私達の座っているベンチにも一人やってきました。その人は、こちらの方をずっと見ていたので、声を掛けようと思った時です。友達がこう言ったのです。
「この人達来たから、何か嫌だよ。」
と。そして、公園を去る様、私に促してきました。一瞬、私は迷いました。そんな事を言ってしまっていいのか、そんな事で去っていいのかと。しかし、その時の私は、まったくもって心が幼かったのか、友達と一緒になって、その場を逃げる様に去ってしまいました。するとその時、私の耳には、ある言葉が入ってきました。
「気にしないで、さっ、もう行きましょう。」
施設の先生でしょうか、とても悲し気に聞こえた事を今でも鮮明に記憶しています。この言葉を聞いて、自分自身の情けなさと言うか、心の中に、何か霧がかかった気がしてなりませんでした。さっと去っていく私達の姿を、あの人達は、寂しい目で見ていたのだと思います。それから何日経ても、この前にした事で、もし自分が逃げられてしまった施設の人だったらと考えると、悔しさや悲しさを感じ、心の奥にしまい込んだはずの、もやもやした気持ちが呼び覚まされて、心の中の霧が晴れることはありませんでした。

一週間ほど経てからだったと思います。また友達と遊んだ帰り、施設の人達が道路の向こうから歩いて来るのが見えました。その瞬間にまた、小さな、しかしとても冷たい差別する心が生まれている事に気づきました。その為に、私の心の中に霧がますます深くかかっていったのです。その霧を払う為にも、私は一生懸命自分に言い聞かせていました。
また、逃げるのか? 同じ人間なんだ

段々施設の人達が近づいて来ます。勇気をふりしぼって言いました。
「こんにちは。」
声が勢いよく飛び出している自分に気がつきました。すると、多くの人達から、「こんにちは」という声が、明るい笑顔と一緒に返ってきました。前回、公園で悲し気な声で生徒に言葉を掛けていた先生も、笑顔だったと思います。言葉は少したどたどしく、精一杯という感じでしたが、それはとてもあたたかな響きに聞こえました。文章であの言葉を表すとするなら、それはたった五つの文字から成る言葉です。しかし、冷たい行動をとった私に対して、あんなに優しい力をもつ言葉をかけてくれるなんて、私の幼さと、心の器の狭さに気づかされた瞬間でした。

今思えば、人間、誰にでも違いがあることは当然の事で、例えば、背の高い人、低い人、やせている人、太っている人、眼鏡をかけている人、そうでない人、言い出したらきりが無いほどです。そして、これらはすべてその人の「個性」であって、決して「変」ではないのです。人がすべて同じであることは在りえませんし、考えてみれば、その方がよっぽど「変」なのです。それでも、私を含めて、あの時は無意識のうちに、「普通」というものをつくりあげて、それ以外は「変」だと決めつけていたのだと思います。きっとそれが、私自身の中にあった差別の意識や、世の中に今もなお存在する差別へと、つながっていくのではないでしょうか。

あれから、施設の人達を今も時折見かけます。最近、近所のスーパーで一人、買い物をしている施設の人を見かけました。一生懸命自立しようと努力しているのだと思います。一人一人、外見や能力には個人差があるし、その中で、確かに劣っているところもあるでしょう。それでも、心の中は私達よりも、はるかに豊かな人達であると感じました。小さな体験かもしれませんが、その事を通して、私は、誰にでも何か輝く部分が、どこかにあるのではないかと、考えられる様になりました。私達の心の中から、差別というものをなくすには、まだまだ時間がかかるのではないかと思います。小さないじめから世界で起きている戦争まで、今も絶える事なく続いている現状があるからです。私にそういう今を一人で変える事など、とうてい出来る事ではありません。ただ、これから大人になっていく中で、その様な現状に加担する人間にならない様に、差別のない方向に目を向けていく事は出来る事なのです。この様に考え、行動すれば、差別をなくす力の一つになれると思います。

当たり前に、同じ目線で接することのできる人間。そういう人間へと成長したいと、私は思っています。

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