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福島県人権啓発活動ネットワーク協議会
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優秀賞 「だってみんな同じ人間だから」

福島大学教育学部附属中学校三年 村松 彩菜

「ボツボツ」
私は小学校低学年の時、クラスの男子にそう呼ばれていた。理由は、私がアトピー性皮膚炎だったから。私がアトピー性皮膚炎と診断されたのは、三歳の時だった。その時の事はよく覚えていないけれど、小学校に入るまではそんなにひどくはならなかった。でも、小学校に入って一年が経つ頃には、私の体はボロボロになっていた。夜はかゆくて眠れず、学校ではボツボツと呼ばれストレスが溜まり、それに伴いひどくなるアトピー。私は限界だった。
「なんで私だけがこんなに辛い思いをしなきゃいけないんだろう」
そう何度も思った。でもアトピーからは逃げられなかった。二年生の時私はある決心をした。それは、高知にある病院に入院するという事だ。夏休みが始まる前、私が入院する事を先生が皆に言った。仲の良い友達は、「頑張って」と私を励ましてくれた。誰かに呼ばれた気がして振り返ると、いつも私をボツボツと呼んでいる男の子がいた。
「頑張れよ。」
彼は私にそう言うと、走り去って行った。私は嬉しくて、走り去る彼に向かって言った。
「ありがとう。」
これが私の精一杯だった。そして私は高知へ行った。

病院へ行くと、あまりのアトピー患者の多さに驚いた。私よりひどい人も大勢いた。何よりも驚いたのは、その人たちの表情。皆笑顔だった。なぜ笑顔でいられるのか、その時は分からなかった。でも、生活していく中でだんだん分かった。それは多分、仲間がいたからだと思う。私たちは皆、同じ病気で同じ目的でそこにいた。アトピーを治す、という同じ目的で。夜かゆくて眠れない苦しさも、アトピーが良くなった時の嬉しさも、それを体験した人でないと分からない。それを分かちあえる仲間がいたから、皆笑顔でいられたのだと思う。入院して一週間も経つと、アトピーが目に見えて良くなってきた。嬉しさと同時に、少し寂しくなった。入院は長くても二週間だと聞いていた。退院はもちろん嬉しい。でも、せっかく出会えた人たちと別れたくなかった。そして私の退院が決まった。退院する前日、私は二つ年上の千代ちゃんと、私のお母さんと千代ちゃんのお母さんで近くの海へ行った。海水はしみるから手でしか触れなかったけれど、その代わりに千代ちゃんと二人で貝殻を拾った。白やピンクの貝殻を夢中で拾った。ふと見た海は、なんだか寂しそうに見えた。すると千代ちゃんが、
「お互いにアトピーが良くなるように頑張ろうね。約束だよ。」
と言った。その時、貝殻は私たちの約束の証になった。退院の日、お世話になった人や仲良くなった人たちに別れを告げて、私は福島へ帰った。八歳の夏、私は少しだけ大人になった。

あれから七年目の夏が来た。私のアトピーはまだ完治していないけれど、夜は眠れるし、ひざの裏が切れて歩けないという事もない。でも私は、成長するにつれて気付いた事がある。それは、大人の人の冷たい目である。

私は、無理をして疲れたり、ストレスが溜まったりすると、すぐにアトピーがひどくなってしまう。ひざや手にできたボツボツは、隠せなくてどうしても目についてしまう。電車に乗っていたり、道を歩いていても、すれ違う人の目は冷たく、まるで自分と違う生き物を見るような目で私を見る。以前の私は、そういう目で見られる度に俯いて、自分がアトピーである事を恥ずかしく思ってしまっていた。でも私は気付いた。アトピーに一番偏見を持っているのが自分だという事に。私は今まで、
「何でみんなは私のようなアトピーの子と仲良くしてくれるんだろう。」
と思ってしまう事があった。でもそれは、仲良くしてくれる友達にも、頑張ろうと約束した千代ちゃんにも、いつでも私を応援してくれた家族にも失礼なのだとやっと気付いた。

私は皆と同じ人間。アトピー性皮膚炎という以外は皆とどこも変わらない。人は私を「可哀相」だとか「大変だ」とか言うけれど、私は可哀相なんかじゃない。むしろ私は幸せだと思う。神様は私に、アトピー性皮膚炎という形でチャンスをくれたんだと思う。「みんな同じ人間だ」という事に気付かせてくれるチャンスを。普通の人なら出来ないような出会いを、私は沢山してきた。辛い事も沢山あったけれど、嬉しい事も沢山あった。だから私は、不幸でも可哀相でもない。

この世の中には、障害者だから、外国人だから、という理由で偏見の目で見られる人が大勢いる。そういう人に出会った時に、人間の真価が問われるのだと思う。私は、人を差別なんてしない。私は、誰に対しても同じ笑顔で話しかけたい。だって皆同じ人間だから。

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