本文へジャンプメニューへジャンプ
福島県人権啓発活動ネットワーク協議会
ここからメニューです

ホーム > 主な活動 > 全国中学生作文コンテスト > 平成18年度全国中学生作文コンテスト福島県大会入賞作品 >

ここから本文です

| 前の作品へ | 一覧 | 次の作品へ |

福島民友新聞社賞 心の成長

喜多方市立第三中学校 3年 武藤 愛子

差別をする人を私は最低な人だと思っています。もちろん私は絶対にそんな人間ではないと思っていました。信じていました。しかし、実際はそうではなかったのです。私も最低な人だったのです。

それに気づいたのは、中学校二年生の時に職場体験学習で特別養護老人ホームに行った時です。しかも、初日の朝のことでした。もちろん目的は、福祉について学び少しでも進路の参考にすることと、高齢者の方々とのふれ合いでした。張り切って事業所へ向かい、緊張の中で朝礼会を終えてから、仕事を開始しようと入所者の方々に挨拶をしに行きました。その時私は、自分にも差別の心があったことを初めて知ったのです。自分が今、挨拶をしようとしている高齢者の姿を見て、私は近寄るのをためらいました。目からは涙が出ていて、目やにが固まっていたり、鼻水も出ていて、緩んだ口元からはよだれも垂れていました。相手が好意的に近寄ってくるわけでもないのに、自分から声をかけ、自己紹介をし、握手をするなんてできませんでした。というより、したくありませんでした。軽蔑するような目でしか見られなかったからです。

私は愕然としました。そんなはずではなかったのに、一生懸命に心から入所者のことを思って介護のお手伝いをするはずだったので、自分自身が信じられませんでした。まともに仕事をするのにもかなりの努力が必要で、神経がすり減る思いでした。私は初めて、人間はその場になってみないと本来の自分の姿を知ることはできないのだと思いしりました。

その後の活動では少しでも心をこめて行えるように自分に言い聞かせたのですが無駄でした。自分の感情を抑えこもうとして無意識のうちにおもいっきり作り笑顔で仕事を行っていたのです。それに、テーブルをふく手つきや、コップを持つ手はどこかぎこちなく、汚い物を持っているような動きをしていました。そして、食事の時のことです。多くの入所者の方は、歯や胃が弱っているので食べ物はペースト状になっています。私はその食事の様子を見守っていました。あちこちでカチャカチャとスプーンを動かし、もくもくと食べ物を口に運ぶ入所者の方々。そこまでは良かったのです。時間がたってくると、口からダラダラとこぼし出し、しまいには吐き出してしまう人もいました。それを見ていた私はその場から逃げ出したくなりました。気持ち悪く、その臭いに、とてもたえられませんでした。結局、私にとっての職場体験学習は学習どころではなく自分自身との戦いになってしまいました。入所者の方々への差別や偏見は最後まで消えることはありませんでした。

しかし、後から冷静になって考えました。あの時は必死に二日間をやりすごすことだけで精いっぱいだったので、入所者の方々を外見でしか見ていませんでした。今は体が不自由になってあたりまえのことができなくなってしまっているけど、私たち健常者と何ら変わりない人間だということを忘れてしまっていたのではないか。外見だけの判断で、人間を差別し、相手の心を分かってあげられなかったのではないか。そう思うと心が痛み、自分の人間としての心の弱さをとがめました。入所者の方々にだって、一人の人間として人権が保障されなければならないはずです。楽しみや悲しみといった感情があり、社会に生きる人間として、いつまでも不平等で不利な扱いをされない権利があります。それを少しでもさまたげようとする私のような弱く寂しい心の持ち主がいるから、差別や偏見によって傷つく人々が絶えないのだと思いました。実際、社会の中で健常者に冷やかできついまなざしを向けられ、不快な思いをしている障害者は少なくないと思います。そう考えると、私が出会った入所者の方々も、私一人のちょっとしたしぐさから不快を感じていたのではないかと思います。そう思ったころには、もうすでに手遅れだということにも気づきました。

今、高齢社会となった日本でお年寄りと出会う機会が増えています。当然、これからの人生でお年寄りの方を介護しなければならなくなる時が必ず来るはずです。しかし、私の心が未熟な以上、同じ過ちを繰り返すかもしれません。私は自分に自信が持てなくなりました。しかし、現代は頭で考えることより、実行することが求められています。今後は、思っているだけでなく行動に移し、少しずつ差別や偏見の心をなくし心から成長した大人になるために努力していきたいと思います。少しでも多くの健常者が平等の心を持つことができれば、世界中の多くの障害者も健常者も幸せを感じることができると私は思います。

このページの先頭へ