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第31回全国中学生人権作文コンテスト島根県大会
松江地方法務局・島根県人権擁護委員連合会
最優秀賞(全国大会「日本放送協会会長賞」受賞)
生きるということ
島根県・浜田市立浜田東中学校 2年
山田 明香(やまだ はるか)
私は、職場体験学習で県内の病院に行きました。母が看護師をしていることもあり、看護や介護などの人の役に立つ仕事とは、実際どのようなものなのか知りたかったし、そこで働いている人たちの姿を見てみたかったからです。
職場体験学習の日、私はとてもわくわくしていました。頭の中にはナース服を着た看護師さんとお医者さんが、患者さんのことについて話していたり、看護師さんが点滴を交換したり、血圧を測ったりする場面を思い浮かべていました。しかし私が訪れた先は、私が想像していた病院ではなく、おじいちゃんやおばあちゃんの介護施設と病院とが一緒になったようなところでした。建物の中を、車椅子に乗ったおじいちゃんが移動していたり、看護師さんがおばあちゃんに栄養食を食べさせたりするところを見たとき、私はここは本当に病院なんだろうか、と思いました。名前はそうでしたが、どう見ても入院しておられるのは高齢者の方ばかりだし、看護師らしき人も、ナース服ではなく、動きやすいズボン姿だったからです。私は驚きました。私は看護の仕事をしたくてやってきたのに…とも思いました。
そして私はそこで高齢者の方のおむつ替えを目の当たりにしました。それは私にとって初めてのことでした。正直、心の中では戸惑っていました。そんな場面に遭遇するとは思っていなかったし、私みたいな立場の人間が見ていいのだろうかと思ったからです。目の前のおばあちゃんは何も言われませんでしたが、もし自由にしゃべれる人だったとしたら、「見ないで」と言われるんじゃないかなという気がしました。
そんな私の気持ちとは関係なく、看護師さんはてきぱきとおむつ交換をされました。そして患者さんの便や尿が目に入ったとき、正直に言うと、私の心の中には汚いなあという気持ちが沸き起こっていました。すると、それが顔に出ていたのでしょうか。おむつ替えをしておられた看護師さんが私にこう言われました。
「便や尿が出ないと病気になって死んでしまうんだよ。」
私はそれを聞いたとき、えっと思いました。確かに便や尿はきれいなものではありません。だから私は汚いなあと思ってしまったけれど、患者さんにとって便や尿を出すこと、出せることは、命に関わることだったのです。私たちが当たり前にやっていることをできない人がいて、それをそのままにしておけば、その人は死んでしまうんだと思うと、なんだか信じられないような気がしました。
家に帰って、母に患者さんのおむつを替えたことがあるかと聞くと、あると言いました。初めておむつ替えを目の前で見たことがとても印象に残っていた私は、母にどんな気持ちでやっているのか、また、汚いと思わないのか聞いてみました。すると母は、こう言いました。
「逆に嬉しいよ。」
そして母は続けてこう言いました。
「患者さんの身体の中に、便や尿がずっとあるのって辛いことなんだよ。それをおむつに出せたってことは、楽になったってことでしょう。そのほうが安心なんだよ。」
私は、昼間、看護師さんがおっしゃったことを思い出していました。あの看護師さんたちも、きっと母と同じように便や尿の状態を見て、患者さんの体を案じておられたのだと気付きました。私がただ「汚い」と思って見た排泄物は、患者さんの健康状態を知ることのできる大切なものだったのです。
そして、そのときになってようやく、おむつを替えてもらう患者さんの気持ちも想像することができました。お年寄りの方は、毎日のことだからか、それとも伝えることができないのか、表情には表しておられませんでしたが、自分の排泄物をお世話してもらうことは、嬉しいことではないと思います。ありがたいという気持ちはあっても望んでそうしている人は少ないと思います。そんな中、「汚い」と思いながらおむつ替えをする人がいたら、高齢者の方たちは嫌な思いをされると思います。私達の身体から出る排泄物は、きれいなものとは言えません。でも、それこそが「生きている証」であると、私は今回の体験学習を通して学びました。
そして、将来看護師になりたいという私の思いは強いものになりました。私達はみんな年を取り、今、当たり前にできていることもできにくくなっていきます。その時、周りの人たちがどんな気持ちでどのように手を差し伸べるかが重要だと思います。目の前の人の「生きている証」は決してきれいなものばかりではないだろうし、時には嫌な思いをすることもあるけれど、そういうことから逃げず、その人と向き合い、相手の気持ちになって身体をいたわることのできる人になりたいです。
島根県人権啓発活動ネットワーク協議会E-mail:matsuhou@web-sanin.co.jp
