山形地方法務局及び山形県人権擁護委員連合会では、時代を担う子どもたちに人権尊重の重要性、必要性について理解を深め、豊かな人権感覚を身につけてもらうことを目的として、第33回全国中学生人権作文コンテスト山形県大会、ならびに平成25年度山形県小学生人権書道コンテストを実施しました。
作文には84校から3,439編、書道には242校から10,993点の応募があり、審査の結果、次の皆さんが入賞されました。
★第33回全国中学生人権作文コンテスト山形県大会
「かわいそう。なんだか怖い。」
私は、今まで、障がいのある方達を、このように感じてきました。しかし、ある出来事がきっかけで、私の、障がい者に対しての考え方が百八十度変わりました。
私は、地域のボランティアサークルに所属しています。地域のお祭りの手伝いや、保育園訪問など、様々な活動に参加して来ました。その日は、「特別支援学校の生徒とのふれあい」ということで、輪投げやカーリング、玉入れなどを通して、交流をしました。私は、正直不安を感じていました。障がいのある方々のことは、テレビなどでしか見たことがなく、実際にふれあうのは初めてだったからです。いよいよ、特別支援学校の生徒達と対面するとき、私は驚きを隠すことができませんでした。突然、「わあっ。」と大声を上げたり、床をバンバンたたいたりする生徒達。私の母は、
「障がいのある子は、誰も障がい者になりたくてなったわけじゃないんだよ。世界には、いろんな人がいるんだよ。」
とよく言っていました。私も、頭では十分分かっていました。頭では分かっているのに、いざ障がい者を前にすると、「怖い」と思ってしまう自分がいたのです。
私達は二つのグループに分かれて、それぞれの競技を行うことになりました。私達のグループは、最初、輪投げをしました。同じグループには髪を一つ結びにした特別支援学校の女の子がいました。その子は、腕の筋力がないため、一人で輪投げをできないでいたのです。なんとかしてあげたい。そう思って近付いてみると、いきなり「うわあっ。」と叫び出し、口をあけて私を見つめていました。その目は鋭く、どこか寂しげで。私は自分の心を見透かされたようでした。その子は、私の「怖い」という感情を、感じ取っていたのでしょう。私は急に、自分がとても恥ずかしくなりました。いくら障がいがあっても、私達と同じ人間です。もちろん、みんな「心」を持っています。障がいはあの子のせいじゃないのに。私は、本当にひどいことをしてしまったと、自分が女の子に近付くのをためらったことを、本当に後悔しました。その子は、私をまだじっと見つめています。私は、にこっとその子にむかって笑い、勇気を出して近付きました。
「輪投げの輪はこうやって持つんだよ。」
と教えてあげたり、輪投げの台を近づけてあげたりと、その子が少しでも投げやすいように工夫をしました。私は、一番近くにある‘八番’の棒を指して、
「じゃあ、あそこに入れてみよう。」
と声をかけると、その子は力をふりしぼって輪を投げました。輪は、ゆっくりと回りながら、見事棒を通りました。その子は、棒が通ったのを喜ぶかのように、「あーうー。」と声を上げています。さっき、私を見つめていた 鋭く寂しげな目は、優しく、穏やかな目に変わっていたのです。それと同時に、「あの時、勇気を出してよかった。」と、心の底から思いました。
その後も、玉入れで一緒に玉を入れたり、カーリングをするあの子に、「がんばれー。」と声をかけたりと、自分から積極的にコミュニケーションをとりました。自分の声があの子に届いていたかどうかは分かりません。でも、少しでも優しさを伝えたかったので、自然と思いやりの声が出ていました。また、一つ一つの言葉に、「ごめんね。最初のあなたに対しての態度を許してほしい。」という思いを込めました。
最後に、特別支援学校の生徒達の前で読み聞かせをしました。みんな、嬉しそうに拍手をしてくれたので、やりがいがありました。あの子も、筋力のない手で拍手をするのは大変なのに、ゆっくりと、一生懸命手を叩いてくれていたのです。
障がいのある方は、なぜ床をたたいたり、大声で叫んだりするのでしょうか。限られた言葉しか話すことができない彼らは、私達に、自分ができること、床をたたくなどを精一杯やって、自分の思いを知ってほしかったのだと思います。あの女の子が、「わあっ。」と叫んだりする行為は、私に対してのメッセージだったのです。初めての人は、どうしても「怖い」と思うかもしれません。でも、それは彼らの「自分の思いを伝えたい。認めてほしい。」という、ありったけの思いが詰まったメッセージなのだということを、私は忘れないでほしいのです。私自身、今回の体験を通して、「怖い」という感じ方から、「私達は皆同じ人間で、彼らは私達に何かを伝えたいがために、あのような行為をするのだ。」という感じ方に変わりました。これからも、彼らのメッセージに、真剣に耳を傾け、広い心、優しい心を養っていきたいです。
★平成25年度山形県小学生人権書道コンテスト