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今村 智仁 検事 (横浜地検公判部 平成8年度任官)

裁判員裁判の公判立証

 私は,現在,横浜地検公判部第6検察官室に所属し,裁判員裁判の公判を担当しています。
 裁判員裁判はかつての裁判とかなり様相を異にします。かつてはちょっとした規模の事件だと膨大な数の証拠を取り調べたり証人尋問に時間をかけたりして審理が長期化することがしばしばありました。しかし,裁判員裁判では短期間で審理を終わらせなければなりません。そのため,検察官は,事件の核心部分を見極めてその立証に必要にして十分な証拠を厳選するとともに,核心部分を取り巻く部分についてはその立証を大胆に省かなければなりません。
 もっとも,事件の核心部分の見極めは容易ではありません。事件の核心部分は事件ごとに異なるからです。
 かつての裁判では,検察官が,事件の核心部分とそれを取り巻く部分を網羅的に立証し,裁判所は,その中から必要な部分をピックアップして判決を下すのが通常でした。立証する範囲が広かったので,結果的に,検察官が事件の核心部分を立証し忘れるなどということはありませんでした。しかし,今は,検察官は,裁判が始まる前の段階で,事件の核心部分を線を引いて切り取らなければならず,また,証拠の射程範囲を厳密に見極めて立証に用いる証拠を厳選しなければならないのです。事件の核心部分の切り取り方や証拠の選定の仕方がまずいと,無罪や縮小認定(殺人未遂罪が傷害罪になるなど)という結論に至ったり,適切な量刑が得られかったりする場合があり得るのです。
 事件の核心部分を厳選した証拠で立証する裁判員裁判は,いわゆる「精密司法」からの脱却であるなどと言われることがあります。しかし,立証責任を負う検察官は,事件や証拠の見極めという点で,以前とは比較にならないほどの「精密さ」を逆に要求されるようになったと言えるでしょう。ストライクゾーンのどこかにボールを投げられるコントロールでは勝負にならず,外角低めにビシッと投げて見逃し三振をとれるコントロールまで要求されるようになったという感じでしょうか。
 このように,裁判員裁判時代の検察官は以前より高い技量を要求されるようになったと言えるわけですが,それだけやりがいや充実感は増したと言えるでしょう。
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