大阪地方検察庁 玉置 俊二 刑事部長からみなさんへのメッセージ
捜査における検察官の役割
刑事部の検察官は,殺人,強盗等の凶悪事件や窃盗,詐欺,横領などの財産犯といった,いわゆる一般刑事事件,さらに,様々な特別法違反事件について,主として警察から送致される事件を捜査し,起訴・不起訴の判断とその手続を行っている。その責務は極めて重い。
警察送致事件の捜査は,もちろん警察が主体的に捜査を実行するが,検察官は,法律の専門家として,また,公訴を維持する立場にある者として,警察の捜査をチェックし,事件の実態についての判断に誤りがないか,証拠は十分に収集されているかなどを検討し,自ら事件の捜査方針を策定して警察捜査を主導したり,さらには直接関係者や被疑者の取調べ・証拠の検討を実施するなどの捜査を行っている。その際,検察官が必要があると考えれば,犯罪の現場に出向いて直接その状況を確認したり,死体の解剖に立ち会ったり,会計帳簿と首っ引きでその内容を精査検討するなど,単なる判断者の役割を超える,積極的・能動的な役割を果たしている。
大阪地検は非常に多忙な検察庁である。当刑事部には,多数の検事・副検事が配置されているが,その担当する事件数も大変に膨大な量であり,被疑者が逮捕・勾留されている事件だけでも相当な件数に達する。一人の検察官が数十件の事件を並行して抱え,その全てに適切な目配りをしながら,このような積極的な捜査活動を行うことが期待されているのが実情である。
そのため,どの検察官も極めて忙しく,厳しい環境の中で職務に従事していると言っても過言ではない。彼らのうち,半数以上は任官5年目までの若手検事であるが,彼らも,先輩・上司の指導を受けつつ,熱心に職務に取り組んでいる。
各検察官の,この熱意を支えているものは一体何だろうか。それは,犯罪を許せないという素朴な正義感であったり,「被害者のために」という気持ちであったり,証拠により真実を明らかにしていくという作業それ自体が好きでたまらないという気持ちであったり,その全てであったりするかもしれない。いずれにしても,各検察官は,寝食を忘れ,家族からの冷たい視線にも耐え,あるいは家族からの温かい励ましを受けながら,事件に没頭しているのである。
最近,私にも,法曹を志す若い人たちと話す機会がたまにある。その際,「検事に必要なものは何か」と聞かれることが多い。法律知識や正義感など,必要な素養は多いが,私は,まず健全な社会常識,次に柔軟性と真相に迫るための想像力,そして真実を知りたいという熱意だろうと考えている。
厳しい職務の中で,こうした素養を常に自分で意識して磨き続け,向上させていくことは容易ではない。多様な事件に,様々な被疑者に,思いもかけない真実に振り回されながら,継続して自己のこうした能力を向上させる熱意のあるものだけが検事になる資格がある,そう考えている。一人でも多くの,熱意ある有能な方が検事を志されることを期待する。