裁判員制度に関する検討会(第17回)議事録 1 日 時   平成25年3月15日(金)14:47〜15:27 2 場 所   東京地方検察庁総務部会議室 3 出席者   (委 員)井上正仁,大久保恵美子,菊池浩,合田悦三,酒巻匡,      残間里江子,四宮啓,島根悟,土屋美明,前田裕司,山根香織                              (敬称略)   (事務局)稲田伸夫刑事局長,岩尾信行大臣官房審議官,      久木元伸刑事局刑事課長,上冨敏伸刑事局刑事法制管理官,      東山太郎刑事局刑事法制企画官 4 議 題  (1)取りまとめのための検討  (2)その他 5 配布資料   議事次第   委員名簿   着席図   資料1:地検別 裁判員裁判対象事件罪名別起訴件数   資料2:裁判員裁判の実施状況等について(要約)   資料3:裁判員裁判の実施状況について       (制度施行〜平成24年12月末・速報)   資料4:「取りまとめ報告書(案)」 6 議 事 ○東山刑事法制企画官 それでは,予定の時刻となりましたので,裁判員制度に関する検討会の第17回会合を開会させていただきます。   それでは,井上座長,よろしくお願いいたします。 ○井上座長 本日もお忙しい中,皆様には御参集いただきましてありがとうございます。   まず,事務当局から本日の資料についての説明をお願いします。 ○東山刑事法制企画官 本日お配りさせていただいております資料は,議事次第,配布資料目録のほか,配布資料としてインデックス付きのもの3点及びファイルとじのもの1点でございます。まず,資料1として,「地検別 裁判員裁判対象事件罪名別起訴件数」と題する横置きの表のもの,資料2といたしまして,「裁判員裁判の実施状況等について(要約)」と題する円グラフ等を記載したもの,資料3として,「裁判員裁判の実施状況について(制度施行〜平成24年12月末・速報)」と題する最高裁判所の公表に係る資料,そして資料4といたしまして,「取りまとめ報告書(案)」と題するファイルとじの資料を配布させていただいております。   以上でございます。 ○井上座長 それでは,本日の議事に入りたいと思います。   本日から本検討会の取りまとめに向けた議論を行っていただくことと予定しておりますけれども,前回御了承いただきましたように,取りまとめの議論のために,事務当局において,先ほど事務当局の説明がありました「取りまとめ報告書(案)」と題する資料を作成し,お手元に配布させていただいております。   まず,この資料を作成した趣旨やその内容等について事務当局の方から御説明願いたいと思います。 ○東山刑事法制企画官 それでは,御説明申し上げます。   「裁判員制度に関する検討会」においては,平成21年9月開催の第1回会合以来,裁判員裁判の実施状況の把握及びそれに基づく検討等を行ってまいりました。そして,前回の第16回会合で,検討すべき論点についての議論が終了いたしましたことから,これまでの検討状況をまとめることといたしました。この「取りまとめ報告書(案)」の「第1 はじめに」のところにも記載がありますように,当検討会における議論は,裁判員裁判に関わる法曹関係者のみならず,広く国民との間でもこれを共有することが,裁判員裁判が将来にわたり確固として定着していくことにも資すると考えられることから,その内容等を公表することが適切であると考えました。   もとより当検討会は,裁判員法附則第9条により,法務省が行う検討作業について,委員の皆様に法務省事務当局と密接に意見交換を重ねながら,その作業に必要な協力をしていただくために開催してきたものでありまして,例えば多数決によって何らかの意思決定を行ったり,答申等の形で意見を取りまとめることが求められているものでもございません。そこで,事務当局といたしましては,ただ今述べましたような当検討会の性格に鑑みまして,これまで頂いた御意見,御議論等を幅広く掲載することが適切かつ有意義ではないかとの観点から,この「取りまとめ報告書(案)」を作成させていただきました。   「取りまとめ報告書(案)」の内容は,冒頭,目次のところにございますように,本文が大きく第1から第5の項目から成り,資料1ないし資料7が末尾に添付された形となっております。   それでは,その概要を順次御説明申し上げます。   第1は,「はじめに」という緒言でありまして,当検討会の経過を簡単に振り返るとともに,ただ今申し上げたような取りまとめ報告書を作成することとする趣旨について記載しております。   第2は,「『裁判員制度に関する検討会』設置の趣旨及び検討事項等」として,当検討会が裁判員制度の施行3年後の検討を定めた裁判員法附則第9条の趣旨に基づいて設けられたことや,検討すべき事項や検討の進め方など,当検討会に関する基本的な事柄を記載しております。そして,この記載に関連して,資料1として現時点における委員の皆様方の名簿,資料2として当検討会の開催状況の概要をそれぞれ添付しております。   続いて,3ページになりますけれども,第3は,「裁判員制度の実施状況の把握及び論点整理等(検討状況その1)」です。裁判員制度施行3年経過前の段階では,裁判員制度の実施状況の把握及びそれに基づく意見交換を中心に検討を行っていただきましたところ,ここではその経過を記載しております。すなわち,当検討会では,これまでの間,裁判員制度の実施状況について,配布資料によるほか,法曹三者の委員による裁判員裁判のための取組等の御紹介,裁判員裁判の法廷傍聴,裁判員裁判の運用状況等に関する報告及びヒアリングといった様々な方法によって,これを把握してまいりました。そこで,その経過についても取りまとめの上,本報告書に盛り込むことが有益であろうと考えまして,その概要を項目ごとに資料3ないし資料5にまとめて記載しております。   なお,資料3は,複数回にわたって行われました法曹三者の委員による裁判員裁判のための取組等の紹介をまとめたもの,資料4は,当検討会で行った裁判員裁判の法廷傍聴について委員の皆様方から頂いた御意見・御感想を記載したもの,資料5が,裁判員裁判の運用状況等に関する報告及び各種ヒアリングの状況をまとめたものであります。   また,当検討会では,第9回会合から第12回会合までの間,論点の抽出・整理のための検討が行われました。その過程では,法制上・運用上の改善に関する御意見や裁判員裁判の運用の実情に関する質疑応答を含め,活発な意見交換を行っていただきましたことから,その概要を資料6に記載した次第でございます。   そして,第13回会合において,資料7にあります「論点整理(案)」のとおり論点が整理されたことを踏まえ,前回の第16回会合までの間,4回にわたって各論点についての検討が行われました。当検討会の趣旨に照らしますと,ここでの検討の内容が特に重要であると考えられることを踏まえまして,4ページ以降になりますが,「第4 各論点についての検討(検討状況その2)」として,まず本文におきまして各論点ごとに委員の皆様からお示しいただいた御意見はもとより,これに関連してなされた運用状況の説明や様々な御指摘などを含め,幅広く記載しております。その上で,特に法制上の措置の要否につきましては,本報告書の中において簡潔な形で取りまとめを行っておくのが適切であろうと考え,27ページ以下になりますが,「9 法制上の措置の要否に関する検討のまとめ」の項にこれを記載しております。   そして,最後になりますが,29ページに「第5 終わりに」として締めくくりの記載をしております。   以上が「取りまとめ報告書(案)」の説明でございます。 ○井上座長 ありがとうございました。   それでは,御意見等がございましたら,どなたからでも結構ですので御発言願いたいと思います。 ○前田委員 「取りまとめの報告書(案)」を,まだじっくり読み込んではいないのですが,おおむねこの取りまとめに異論はございません。ただ,二つほど私の気が付いた点を言わせていただきたいと思います。   一つは,私の意見の中には,日弁連の提案を踏まえて意見を述べた箇所が相当あるわけでございますが,その取りまとめの内容が間違っているとかでは決してございませんけれども,ややあっさりまとめ過ぎてあるのかなという箇所がありまして,その理由付けについては多少肉付けをさせていただくことができないかというのが1点でございます。   もう一つは,対象事件の中で極めて長期に及ぶ事件については除外する方向で法制化を図ることについては,おおむね意見が一致していることに関して,9ページ以降で議論が紹介されており,その9ページの議論の状況は全くこのとおりで異論はありませんが,最後の取りまとめ,27ページにその取りまとめがなされていますけれども,ここは表現を付加していただけないかということです。そこでは「公判審理の期間が極めて長期間に及ぶ事案」と書いてあるので,「極めて長期」との記載で,その趣旨を表現しておられることは分かりますが,先日,新聞を見ましたら,今まで行われた100日とか75日とか60日かかった裁判員裁判,これらが極めて長い審理であって,それを除外するような議論が検討会の場で行われたという趣旨の,そう読める記事が出たからです。この検討会の中では,それらを除外する前提で議論はしてなかったと思います。私は,それを除外すべきとする積極的な意見はまずなかったと認識しておりますので,そのような議論ではなかったことが分かるような形で取りまとめしていただくと,誤解を招かないと思います。   前者の方は,本日は,どのように修正したらいいかという案まで用意しておりません。申し訳ございませんが,もう少し時間を頂いて,事務当局の方には,理由付けの部分をこのように少し膨らませていただくことは可能かという御提案をさせていただきたいと思っております。   以上でございます。 ○井上座長 最初の点については,私から言うのも何ですが,この案を手元に頂いたのは直近でありましたので,お気付きの点があれば,指摘してくださり,より良いものとしていければと思いますが,ただ,皆さんそれぞれが,それぞれの思いがありますから,皆さんが自分の関心のある部分を膨らませたりしていくと,結局,議事録をつないだようなものになってしまいかねません。ですから,ほどほどにしていただき,全体としてバランスがとれる限りで修正すべき点があれば修正の意見を出してくださるようお願いしたいと思います。 ○前田委員 私の修正案どおりにせよとは申しません。御指摘の点を踏まえて修正するつもりです。 ○井上座長 他の方も同様の御意向があるかもしれませんが,合理的な期間内に出していただければと思います。 ○酒巻委員 今の前田委員の御発言に関連してですが,現在頂いているドラフトでは,日弁連での議論ではという部分が「周囲の弁護士の間の議論では」というふうに書き換えられているところがあるように認識しておりますけれども,前田委員は日弁連の意見を代表していろいろと御議論をされ,御提言をされたと思いますし,先ほどのお話では,日弁連の意見を加筆・補正されるということでありますと,現在のドラフトで「周囲の弁護士の間の議論では」というふうになっている部分については,一体どうされるおつもりなのかをお聞かせいただければと思いますが。 ○前田委員 正確に申し上げますと,意見が正式に取りまとめられているものについては,日弁連の提案として私は議論をしてまいりました。また,まとまった提案はなされていないけれども議論をした事項については,私は日弁連でこういう議論がなされましたと,その議論の経過を報告する形でお話ししました。一応,私は区分けをしてしゃべったつもりでして,提案になっているものとそうでないものとを分け,そうでないものについては日弁連の議論状況を御説明しました。それを意識して私は発言をしておりますので,多分,議事録を見ていただければそうなっているはずでございます。そこはそのように御理解をいただきたいと思います。 ○酒巻委員 分かりました。ありがとうございました。 ○井上座長 他の方はいかがですか。 ○合田委員 細かい点なのですけれども,今回の「取りまとめ報告書(案)」の中に出ている数字につきまして,以前述べた内容の訂正をさせていただき,「取りまとめ報告書(案)」の方の修正をしていただきたいところがあります。   それは,第4の1(6)ア(イ)の部分,今日配られた案ですと10ページになります。確か第13回のときだと思いますが,これまでに職務従事予定期間が長かった裁判に関して,さいたま地裁のケースとか鳥取地裁のケースにつきまして,何名の候補者が選定され,辞退が何名認められたかといったようなことを私の方で御報告をいたしましたが,この10ページの数字はそれに基づいて書かれていると思います。   そのとき申し上げたのはこの数字のとおりでございますけれども,実はこの中の鳥取地裁で行われました職務従事予定期間75日の裁判員裁判については,選定された候補者が700名というのはそのままなのですが,辞退が認められた候補者は,そのときには609名と把握していたんですが,今の段階では,それよりも3名少ない606名と把握しておりますので,訂正させていただきます。ちなみに,パーセンテージは87%ですので変わりません。 ○井上座長 「606名」と改めるということでよろしいのですね。 ○合田委員 そういうことです。 ○井上座長 先ほどの前田委員の御発言の2番目の点ですが,この案の表現で十分ではないかと私自身は考えますし,この議論の経過を見れば明らかなことだと思うのですけれども,もし御心配ならば,具体的な修文の提案をしていただければと思います。 ○前田委員 分かりました。前の方を読めばちゃんとその趣旨は伝わることは分かっております。ただ,このまとめの方だけが注目されると,誤解を生むのではないかと思い意見を述べました。 ○井上座長 期間の長短だけではないという点も入っていますので。 ○前田委員 もちろんそういう議論であることは分かります。 ○井上座長 一律にはちょっと言えないと思うのですが。 ○前田委員 私の考えは期間で考える説,私の考え自体はそうですね。 ○井上座長 他の方,どうぞ。 ○四宮委員 まず最初に,事務局の方で大変に多岐にわたった議論をこのように集約していただいたことに感謝したいと思います。私自身もこの「取りまとめ報告書(案)」の基本的な構成と基本的な内容については特に根本的な異論があるわけではありません。   ただ,2点ほどちょっと申し上げようと思いますが,今,前田委員などからもあったように,意見の紹介のところで,できれば,特に少数であった意見ですけれども,この「取りまとめ報告書」が我が国の裁判員制度施行3年を経て初めて広範に検証された報告書ということになると思いますので,後々いろいろ参照されることもあるであろうと。少数意見は結論部分が中心に紹介されているんですけれども,やっぱりその意見の理由を簡潔かつ合理的な範囲で紹介していただけたらと思います。そこについては私の方でもちょっと合理的な時間を頂戴して,このようにしていただけないだろうかという提案をさせていただこうと思っています。   2点目は,紹介ということとちょっと離れるんですけれども,意見の対置の仕方ですね。こういう意見もあったけれども,これに対してこういう意見がありましたという表現が随所にあります。私がちょっと気になったのは,守秘義務の意見の対置のところです。この今日の案で言うと24ページですね。これを拝見しますと,アのところでは守秘義務の範囲について三つの意見が紹介されております。そして,イのところでこれに対するものとして意見が紹介されているんですけれども,私の理解では,守秘義務の存在そのものについて,つまり守秘義務の趣旨とかその存在理由については,この検討会ではほぼ意見の一致を見ていたのではないかと思います。ただ,意見が分かれたのは,その範囲をめぐってであったように思います。ですから,まず守秘義務の趣旨とか存在理由について,これを簡潔にまとめていただいて,この点については,「おおむね」という言葉を付けるかどうか分かりませんが,意見の一致を見ていたということをまず確認をしていただけたらと思うんです。   その上で,範囲についてはいろいろこういう意見があったということになるわけですけれども,その意味で,今申し上げた点で言うと,片仮名のイの「これらの意見に対し」として対置するものとして紹介されている意見の中には,そもそも守秘義務は必要なんだという意見が,この最初の,守秘義務の範囲を限定する意見に対置する形で幾つか載せられているように思います。だから,そこの部分は,アの意見の論者たちも別に反対はしていなかったのではないかと思いますので,そういう意見の対置の仕方について,特に私が気付いたのはこの守秘義務ですけれども,そこを御配慮いただけないかと思いました。   以上でございます。 ○井上座長 今の四宮委員の御発言の2番目の点について,他の方は御意見いかがでしょうか。 ○前田委員 私は守秘義務の範囲を少し変えた方がよいという意見です。ただ,守秘義務が二つの観点で必要であり,一つは事件関係者のプライバシー保護,もう一つは評議の自由を確保する意味でも必要だという,その必要性については何の異論もないですので,その前提で話が進んでいたのではないかと思います。 ○井上座長 今の御意見を踏まえて,事務当局の方で検討してもらうということでよろしいですか。また何か具体的な案があれば提案していただければと思うのですけれども。   どうぞ土屋委員。 ○土屋委員 今の守秘義務のところなんですけれども,一つだけ。私の意見と思われるものが,このアのマルの三つの最後のところに書いてあります。実はこの内容,「3つの事項」というのは,この検討会では余り具体的に言ってこなかった内容なんです。引用はこれで構わないと思うんですけれども,そのときに私が発言したことを一言冒頭に入れていただけないかと思うのです。というのは,自分の意見を述べるのは本来自由ではないかということを一言だけ言っておるんですが,実はそういう意見があったことを残しておくのは大事なことなんじゃないかと,自分の発言なのでちょっとせん越なんですけれども,そう思うのです。   守秘義務についての考え方というのはいろいろあると思うんですが,大きく分けると二つの方向があって,一つは評議の内容は一般的に禁止されるべきであるというところからスタートする立論ですね。その禁止をどういう部分で解除するのかという議論の方向が一つある。それからもう一つは,本来意見を述べるのは自由だけれども,制度の趣旨から鑑みて,こういう発言は禁じるべきであるという逆の方向の議論があるので,その逆の方向の議論というのはこの検討会でほとんど述べられていなかったような気がするのです。   その議論は議事録を見れば分かりますけれども,このまとめの中で一言そういう意見もあったということを残しておいていただきたいというのが希望です。残す場所としては,24ページの上から三つ目のマルの冒頭に,「自分の意見を述べるのは本来自由であり」とかしていただけたら非常にうれしいと思います。   以上です。 ○井上座長 その点も,具体的な修文案を出していただければ助かるのですが。 ○土屋委員 でも,今言ったことに尽きています。冒頭にちょっと一言挿入していただければ,それで十分です。 ○井上座長 他の方はいかがでしょうか。 ○山根委員 まだ十二分に検討する時間がなくて申し訳なかったんですけれども,細かいところで恐縮です。1点ですね。25ページ,守秘義務の範囲うんぬんのところの下の方のマルですね。「人には,のぞき見的な高揚感があるため」うんぬんの文章なんですが,高揚感があるため,注目されている事件に関わったことを他人に話したいという心理が働くことがある,そのため,守秘義務があるから話せないということで対応できるのは,裁判員にとって楽な側面もあるのではないかと。これは発言された方のそのままの正しい記述なのかもしれないんですが,個人的には「のぞき見的な」という言葉自体も抵抗がございまして,もうちょっと良い言い方がないかなと思います。具体的に言えないですが,この文章自体を工夫できないかなというふうに思っているということがあります。   それと,これは事務局の方にもちょっと御相談をして,難しいかなということではあったんですが,最後のまとめのところは割と淡々にというか,短めに終わっているという印象を私は持ったんですが。例えば,今後,定期的にまた見直しをする必要があるのではないかとか,そういうような提案のようなことはできないのかどうかということをもう一度伺いたい,難しいのであれば,その説明をいただければというふうに思います。 ○井上座長 二つ御意見を言われたのですけれども,まず最初の点については,他の方,御意見いかがですか。 ○大久保委員 私が発言した内容がここに書かれておりますので。私も品が悪い言葉だということをすごく自覚しておりますが,他にどういう言葉でそれを表現をすればいいのかということがなかなか思い当たりませんで。被害者支援の現場では,いつも事件・事故があると,そこに被害者支援をする人間がその場に行くんですね。そのとき,きちっと訓練はして,守秘義務なども教育はしてはいましても,どうしても人に話をしてしまいがちになるということが,実は被害者支援の現場でもとても問題にもなることでもありまして。そういう辺りのところを実は精神科医の先生が,のぞき見高揚感というものが人にはあるというようにNHK出版のある本で書いていらっしゃるんですね。それで,適切な言葉かどうかということを考えながら,他に思い当たりませんでしたので。心理的な面で,もっと適切な言葉があるということを皆さんから今出していただければ,それに変えることは十分可能です。私自身も実はひっかかっていますが,でも,別の側面から見ると一番分かりやすいという面もあると思いまして,それは事務局の方に一任しても全然構わない問題です。 ○井上座長 山根委員,何かアイデアがありますか。 ○山根委員 いえ,すぐには私も浮かびませんので,ちょっと考えさせていただければと。 ○井上座長 そうですね。 ○山根委員 皆さんにも是非。 ○井上座長 思い付きですけれども,かぎ括弧でくくるというのでは……。 ○残間委員 これは「のぞき見的」が駄目だと思うんですね。のぞき見高揚感とおっしゃったでしょう。 ○大久保委員 そうです。 ○残間委員 それをかぎ括弧にすればいいんじゃないですか。 ○井上座長 そうですね。一つアイデアですね。 ○大久保委員 「的」というのは私が勝手に付けた言葉でして,その方が分かりやすいかと思うので。 ○四宮委員 あるいは,「高揚感も」とか。 ○井上座長 あんまり手直しすると御発言の主の御趣旨が……。 ○大久保委員 いや,主は全然。気になっておりますので。 ○井上座長 そうですか。それでは,またアイデアがあれば教えていただき,検討してもらうということでよろしいですか。   2番目の点については,事務当局の方は何か御意見ありますか。 ○東山刑事法制企画官 事務当局といたしましては,御承知のように,本検討会においては,これまでの間,裁判員法附則第9条に基づきまして,裁判員制度の施行3年後の検討のために,御議論を行っていただいているものと考えております。したがいまして,そのような本検討会の趣旨を超えて,今後の将来の検討等の在り方に触れるというのは,本検討会の守備範囲を超えるものであると考えております。 ○井上座長 その点は,私もそのように認識しております。もちろん,新しい制度ですので,定期的に見直していくということはなければならないと思いますし,なされるだろうと思うのですが,それは政府なり国会なりあるいは法曹三者なりでなされることになるでしょうし,そういうところの意思決定を待つべき事柄ではないかと思います。そういう御意見があったということは議事録にも残りますので。 ○菊池委員 表現ぶりについてのコメントになってしまって恐縮なんですが,「終わりに」のところの30ページの2行目で,「今後も一層の努力ないし留意が重ねられ,裁判員制度がより良く運用され」という言い方になっているんですが,努力は重ねるものであっても,留意は重ねるものじゃないんじゃないのかなと思います。   資料3は,法曹三者の取組についてまとめたものですけれども,この中で度々出てくる言葉に「工夫」という言葉があります。これまでもいろんな工夫をしてきたし,今後も更なる工夫が必要なんだろうと思われますので,「留意」ではなくて「工夫」などとした方がよろしいのではないかと思います。 ○井上座長 若干意味が違ってきますけれども。この点,事務当局の方の御意見はいかがですか。 ○東山刑事法制企画官 菊池委員の御発言を踏まえて検討させていただきます。 ○井上座長 留意をすることによりよく運用されるというのは,何となく変ではありますね。 ○東山刑事法制企画官 工夫とか配慮とかいろんな言葉があると思いますので,こちらの方でもう一度検討させていただきます。 ○井上座長 他に御意見ございますか。 ○土屋委員 先ほど前田委員がおっしゃった審理の長期化の話なんですけれども,私も前田委員と同じように感じています。特に新聞記事を読んだとき,「あれっ」という感じで,例えば,さいたま地裁の事件などが対象になりそうな,そういう読まれ方もしかねない報道の仕方があったものですから,そこのところの誤解を招かないような書きぶりというのは,もうちょっと工夫してもいいのかなと思いまして,いろいろ考えてみたんです。余り思い浮かばないんですけれども。   例えば,27ページのまとめのところに,下から2行目のところですけれども,「他方,公判審理の期間が極めて長期間に及ぶ事案につき」というところのその真ん中辺ですね,「公判審理の期間が」の後に,「現在行われている審理期間の長さをはるかに超え」とか,書き加えたらどうでしょうか。「長期間」という言葉とこれもまたダブる表現になってしまうのではないかといえば,そういう懸念もあるんですけれども,前に述べた事情も踏まえると,もう少し補足して,「例外的に」と書いてある後の意味合いがきちんと伝わるように,ちょっと余分な表現かもしれませんけれども,言葉を挿入したらどうかと考えます。 ○井上座長 しかし,そもそもこの表現ぶりでそのような誤解を生むものでしょうか。私は,その新聞記事を見てちょっと驚いたのですけれども。検討会の議事録も読んでいただければ,そういうふうな意味合いでないということは分かると思うのですよ。ですから,この「取りまとめ報告書(案)」自体に問題があるのか,それとも,誤解された方に問題があるのかですね。この文章で本当にそんな誤解を生むものなのか疑問だというのが,私の率直な感想です。他の方は受け止め方が違うかもしれませんが。 ○酒巻委員 私は多分この中で一番暇人なので「取りまとめ報告書(案)」は精読してきました。先ほどからどこかの新聞の記事との関係で長期係属が見込まれる事件の問題について,表現についてのお話が出ていますが,そもそもそんなものは関係ないのであって,正にこの「取りまとめ報告書(案)」で表現・表示されていることが文章として不明確かどうかと,そういう観点から,修文の要否を考えるべきであろうと思います。それから更に今,井上座長がおっしゃったように,議事録があるわけですね。基本資料はそれなのであって,それを併読して誤解するということは,私も一応文章の専門家ですけれども,到底考えられないと思いますので,修文の必要はないと思います。   それから,先ほどどなたかが少数意見になった部分について更にその理由付けを付加したいという御意見もありましたけれども,私はこの「取りまとめ報告書(案)」は,多数意見も少数意見も含めて,非常に正確に議事録を踏まえて紹介してある文章だと理解しています。その上で,全体のバランスから少数意見の部分についてだけその意見を述べた人が理由付けを付加するということをすると,バランスが明らかにおかしくなります。ですから,一部の手を加えるということは,基本的には適切ではないのではないか。   もし手を加えるのであれば,ちょうど最高裁判決ができるときに,多数意見と補足意見と少数意見がそれぞれ,恐らくドラフティングの際には相互にドラフトを見て,更に反論を付け加えるなり補充するなりという文章練り上げの作業が行われているはずなので,これは非常に基本的な文書であるわけですから,一部の委員の方が少数意見を付け加えるのであれば,多数意見の人間についてもその少数意見を見せていただいて,更にそれに対して補充をするなり意見を言うという機会がなければ,適切ではないように私は思うんですね。ですから,その辺のところも事務当局としてはお考えいただいて対応されるのが筋ではないかと思います。   二つのことを言いましたけれども,特に最初の異常に長期係属見込みの事件について,一部の新聞記事などを前提にしてこの基本文書の内容について何か修正を加えるというふうなこと自体が,基本的におかしなことではないかというのが私の意見です。 ○井上座長 最初の点については,そういう御意見もあったことから,なお検討させていただくということでよろしいですか。   2番目の点は,当然のことだと思うのですね。こういうふうな意見があったのでこういうふうに修正するとしても,正におっしゃったような点がありますので。最初に私が申し上げたように,そういうことを重ねると,物すごい膨大なものになってしまいかねませんので,簡潔かつ合理的な範囲でということでお願いできればと思います。どのような修正の御意見があったといった情報は随時各委員に伝えていただいて,意見を言うべきところがあれば言っていただくという,そういう形で調整していくということに当然なると思います。そういうことでよろしいですね。   他の方はいかがですか。他の点でもよろしいですけれども。皆様にはもう一度,是非精読してくださり,こういうふうに改めた方が良いと思われる点があれば,次回を待たずに事務当局の方に申し出ていただければと思います。   他に特に御意見がないようでしたら,今回はこれで実質的な議事は終わらせていただきたいと思いますけれども,よろしいでしょうか。  (「異議なし」との声あり)   どうもありがとうございました。   当検討会としては,基本的にはこの「取りまとめ報告書(案)」に事務当局において修正等を加えてもらった上で,あと1回会合を開催して,「取りまとめ報告書」の成案として採択することができれば,我々の使命は終えることができると思いますけれども,そういう運びでよろしいでしょうか。  (「異議なし」との声あり)   ありがとうございます。   それでは,最後に事務当局の方から次回の会合の予定の確認をお願いしたいと思います。 ○東山刑事法制企画官 それでは,次回でございますけれども,平成25年6月21日金曜日午後4時からとさせていただきます。場所等につきましては,追って御案内申し上げたいと思います。 ○井上座長 どうもありがとうございました。   裁判員制度に関する検討会の第17回会合をこれで終了いたします。 −了−