裁判員制度に関する検討会(第4回)議事録 1 日 時   平成22年11月16日(火)10:00〜12:27 2 場 所   法務省第1会議室 3 出席者 (委 員)井上正仁,大久保恵美子,酒巻匡,残間里江子,四宮啓,    白木功,土屋美明,角田正紀,前田裕司,室城信之,山根香織                            (敬称略) (事務局)西川克行刑事局長,甲斐行夫大臣官房審議官,落合義和刑    事局刑事課長,岩尾信行刑事局刑事法制管理官,西山卓爾刑事    局参事官 4 議 題  (1) 裁判員制度の実施状況等について(報告)  (2) 施行後1年を踏まえた法曹三者の裁判員制度への取組の現状  (3) 裁判員制度の傍聴を踏まえての意見交換  (4) その他 5 配布資料 議事次第 委員名簿 資料1:地検別 裁判員裁判対象事件罪名別起訴件数 資料2:裁判員裁判の実施状況について (制度施行〜平成22年7月末・速報) 資料3:裁判員等経験者に対するアンケート調査結果報告書 (平成22年1月〜4月分) 資料4:裁判員裁判の実施状況等について(要約) 資料5:平成21年における裁判員裁判の実施状況等に関する資料 資料6:平成21年における裁判員裁判の実施状況等に関する資料 (ダイジェスト版) 角田委員説明資料:「施行後1年を踏まえた裁判員制度への取組の現状—裁判所の立場から—」 白木委員説明資料:「裁判員制度の円滑かつ適正な運用に向けた検察における取組について」 前田委員説明資料:「日弁連の裁判員制度への取組状況」 6 議 事 ○西山参事官 それでは,予定の時刻となりましたので,裁判員制度に関する検討会の第4回会合を開会させていただきます。  なお,事務当局からの出席者についてですが,本日,刑事局長は国会出席のため,遅参する予定ですので御了承をお願いいたします。 それでは,井上座長,よろしくお願いします。 ○井上座長 おはようございます。お忙しい中,本日もお集まりいただきましてありがとうございます。お一人少し遅れておられるようですけれども,始めさせていただきます。  まず,本日の配布資料について御確認をお願いしたいと思います。 ○西山参事官 刑事局参事官の西山でございます。  本日の資料は,議事次第,配布資料目録,インデックス付きの資料が1から6まで,それから,後ほど角田委員,白木委員,前田委員からの御発表で使用されます各資料でございます。資料の1から6については後ほど詳しく御説明申し上げます。 ○井上座長 どうもありがとうございます。それでは,議事に入りたいと思います。  本日は,まず裁判員制度の実施状況等について事務当局の方から御説明を頂きます。  では,お願いします。 ○西山参事官 それでは,裁判員制度の実施状況等につきまして,お配りした資料に基づき御説明いたします。  まず,本日お配りしているインデックス付きの資料の1から6までについて,まず,どのような資料かを簡単に御説明した上で,各資料を御覧いただきながら,裁判員制度の実施状況等を御説明したいと思います。  資料1「地検別 裁判員裁判対象事件罪名別起訴件数」は,昨年5月21日の裁判員制度施行後,本年10月末までの約1年5か月間における,地検別,罪名別の起訴件数をまとめたものです。  資料2と資料3は,最高裁判所作成に係る裁判員裁判の実施状況等に関する資料です。いずれも最高裁判所で行われた裁判員制度の運用等に関する有識者懇談会において公表されたものです。  資料2は,制度施行から本年7月末までの裁判員裁判の実施状況に関する各種統計資料です。  資料3は,本年1月から4月までの間に実施された裁判員裁判を対象とし,その裁判員等に対して行ったアンケート調査の結果を集計したものです。  続いて,資料4「裁判員裁判の実施状況等について(要約)」は,ただいま御説明いたしました最高裁判所から公表された資料2と3の主な内容を法務省において要約して1枚にまとめたものです。  資料5「平成21年における裁判員裁判の実施状況等に関する資料」は,裁判員法第103条において,最高裁判所が,毎年,裁判員裁判対象事件の取扱状況,裁判員及び補充裁判員の選任状況その他裁判員法の実施状況に関する資料を公表すると定められていることに基づき,最高裁判所が公表した資料です。制度施行から平成21年12月末までの間の裁判員裁判対象事件を対象にしており,本年7月に公表されたものです。  最後に,資料6は,ただいま御説明いたしました資料5の主な内容をダイジェスト版としてまとめたものであり,最高裁判所が公表したものです。  続いて,それぞれの資料の内容について,更に御説明いたします。  まず,裁判員裁判の起訴件数・判決人員等について御説明します。  資料1を御覧ください。  左から2番目の列に,赤字で,罪名別起訴件数が記載されており,その一番下が合計欄で,本年10月末までの全国の起訴件数は,合計2,703件となっています。前回,本年5月20日までの全国の起訴件数を1,881件と御報告いたしましたが,その後約5か月間で822件が新たに起訴されたということになります。  罪名別では,多い順に,強盗致傷658件,殺人571件,現住建造物等放火252件となっており,この順序は,前回の検討会で報告させていただいたところと変わりはございません。また,検察庁別に,比較的件数の多いところを見ますと,千葉が273件,東京が242件,大阪が230件などとなっております。  一方,裁判員裁判の判決人員については,資料1の右にある2つの青枠の下の方を御覧いただきたいと思いますが,10月末までで判決言渡し人員は,合計1,337人となっています。判決言渡し人員を件数に直しますと,1,444件になります。人員数と差が出るのは,一人の被告人が複数の事実について起訴されている場合があるためです。起訴件数は2,703件ですので,判決件数と比べてみますと約53%について判決まで至っていることになります。  次に,資料2に基づき,裁判員裁判の実施状況について御説明いたします。  これは,先ほども申し上げたとおり,本年7月末までの統計です。  まず,裁判員候補者の選任については,資料2の5頁の表4に掲載されております。裁判員候補者名簿に登録された方約35万人の中から,実際に個別の事件で裁判員裁判を行う段階で選定された裁判員候補者の数は,表4の上段にあるとおり,7万7,924人となっています。そして,調査票の回答により,欠格事由等がある方や辞退が認められる方を除いた5万8,385人に呼出状が送付され,さらに,呼出状の送付後に辞退が認められたなどで,実際に選任手続期日に出席された方は,3万1,711人となっています。  出席率は82.2%となっており,この出席率は,前回報告のとおり,本年3月末まででは82.8%でしたので,ほぼ横ばいの状況と言えます。  次に,5頁の表3によりますと,選定された裁判員候補者のうち,辞退が認められた候補者数は4万120人であり,辞退が認められた割合は,51.5%となっています。本年3月末までの辞退率は,52.2%であり,大きな変化はありません。  また,6頁の表5によれば,辞退の理由については,70歳以上などの定型的辞退事由を除くと,辞退が認められた事由として,「事業における重要用務」,「疾病傷害」,「介護養育」の順に多くなっています。この順序も前回御報告した本年3月末までと同様です。  次に,選任手続となりますが,資料2の7頁の表7を御覧いただきますと,本年7月末までで選任された裁判員は5,224人,補充裁判員は1,935人となっています。一方,6頁の表6を見ていただきますと,不選任決定がされた方は,2万4,240人となっています。  続いて,裁判員裁判のために要する期間等について,資料2の7頁と8頁を御覧ください。7頁の表9では,公判前整理手続期間が自白否認別にまとめられており,本年7月末現在で,公判前整理手続の平均期間は全体で4.7か月,自白事件で4.2か月,否認事件で5.9か月となっています。  前回御報告した本年3月末までの平均期間は,全体で4.2か月,自白事件で4.0か月,否認事件で4.8か月であったことと比較すると,特に否認事件について平均期間が大きく延びていることが分かります。  また,公判前整理手続期間が6か月を超えている事件が179件ありますが,この中で最も長いものは,379日,すなわち約1年であるとのことです。  開廷回数については,7頁の表10にあるとおり,本年7月末現在の平均開廷回数が全体で3.6回となっており,開廷回数が3回又は4回の判決人員数が全体の約85.3%を占めています。本年3月末までの平均開廷回数は3.5回でしたので,全体としては少し延びております。なお,自白否認別の平均開廷回数を見ますと,自白事件では3.4回,否認事件では4.1回となっております。  資料2の8頁では,表11−1が受理,すなわち起訴から終局までの期間である審理期間,表11−2が第1回公判から終局までの期間である実審理期間,表12が評議時間について,それぞれ自白否認別にまとめられています。  表11−1によりますと,本年7月末現在の平均審理期間は,全体で7.2か月であり,自白事件につき6.8か月,否認事件につき8.1か月となっています。前回御報告した本年2月末では,全体で6.0か月であり,自白事件につき5.8か月,否認事件につき6.8か月でしたので,いずれも長くなっていることが分かります。  また,表11−2によりますと,本年7月末現在の実審理期間は,最も多い3日が378人で約41.8%,次に多い4日が280人で約31%となっています。この順位は,本年3月末までのものと変わっておりません。  さらに,表12によりますと,評議時間については,本年7月末現在,全体の平均評議時間が451.1分,すなわち約7時間半であり,前回御報告した本年2月末現在では,全体の平均評議時間が425.7分,すなわち約7時間でしたので,全体的に少し長くなっていると言えます。  最後に,資料2の9頁,表13に,「罪名別・量刑分布別(終局区分別を含む。)の終局人員及び控訴人員」が掲げられています。これによりますと,本年7月末までで,終局人員が930人であり,うち,無罪となった者が1人となっています。また,右から2列目に「その他」とありますのは,公訴棄却決定や移送決定がなされたものです。有罪判決では,死刑判決はなく,無期懲役が15人となっております。  なお,先般,東京地裁の裁判員裁判で初の死刑求刑がなされましたが,11月1日,無期懲役の判決が言い渡されました。有罪判決の内容としては,7年以下5年超が一番多く,214人となっています。  次に,裁判員等経験者のアンケート結果について,御説明いたします。  資料3の1頁を御覧ください。このアンケート調査は,平成22年1月4日以降,同年4月末までに行われた342件の裁判員裁判に関わられた裁判員及び補充裁判員並びに裁判員候補者に対し,裁判所において,アンケートの協力をお願いし,1万1,641名から回答が得られたものです。  まず,6頁を御覧いただきますと,問3「審理内容の理解のしやすさ」については,68.6%の方が「理解しやすかった」と回答されています。  次に,7頁に移っていただき,問6「評議における話しやすさ」については,77.6%の方が「話しやすい雰囲気」であったと回答され,問7「評議における議論の充実度」については,70.9%の方が「十分に議論ができた」と回答されています。  問11「裁判員として裁判に参加した感想」を見ると,「非常によい経験と感じた」と回答された方が55.9%,「よい経験と感じた」と回答された方が40.2%であり,合計96.1%の方が積極的な回答をされています。  資料3の10頁から13頁には,補充裁判員及び裁判員候補者に対するアンケート結果の要約も掲載されています。  以上の実施状況,アンケート結果については,資料4において主な内容をまとめておりますので,こちらも御参照いただければと思います。  続いて,最高裁判所が裁判員法第103条に基づき公表した資料について,御説明いたします。  資料5を御覧ください。  4部構成となっており,まず,9頁までの第1において,裁判員裁判対象事件の概況の他,裁判員の負担に関わるデータが示されております。35頁までの第2においては,裁判員の選任手続の流れに沿って,裁判員候補者名簿記載通知,調査票回答,呼出状送付,裁判員等選任といった各手続の実施状況に関するデータが示されています。  74頁までの第3においては,公判前整理手続から上訴に至る裁判手続の流れに沿って,公判前整理手続,公判審理,評議,判決,控訴といった各種の実施状況が示されております。これらのデータの中には,これまでの公表データには見られないような,証拠の数や証拠調べ時間などに着目した分析もなされております。  最後の第4においては,弁護人や通訳翻訳人に関する統計などが示されております。  資料5は,大部の資料であり,また,データ自体は平成21年12月末までのもので,これまで御報告したデータより古いので,分析方法として新たな方法をとっている主なもののみを御説明いたします。  裁判員等の負担に関し,8頁の図表9を御覧ください。  これまでの公表統計は,裁判員の職務従事日数別の分布のみでしたが,ここでは,職務従事時間別の分布が示されており,職務従事時間の平均は17.8時間となることが分かります。なお,職務従事時間の意味ですが,資料5冒頭の用語説明にありますとおり,選任手続期日に要した時間と開廷時間と最終評議に要した時間の合計であり,審理の合間に行う中間評議の時間を含まないことに御留意ください。  次に,20頁の図表16を御覧ください。  実審理予定日数別に,選定された裁判員候補者数,呼出状を送付した裁判員候補者数,選任手続期日に出席した裁判員候補者数,出席率などが示されております。選定された裁判員候補者数の平均を比較してみますと,実審理予定日数が2日以内では94.4人であったものが,実審理予定日数が5日以上となると,114.4人となっており,実審理予定日数が長い場合には,より多くの裁判員候補者を選定していることが分かりますが,出席率を比較してみますと,いずれも83%を超えており,このデータを見る限り,出席率と実審理予定日数との間の相関関係は特に認められないようです。  また,35頁の図表27を御覧いただきますと,実審理予定日数別の辞退率が示されております。実審理予定日数が2日以内の場合には51.5%であった辞退率が,実審理予定日数が5日以上の場合には58.1%に上っており,実審理予定日数が長いほど辞退率が高いことが分かります。  続いて,公判段階の状況については,55頁の図表46−2を御覧いただきますと,証人尋問を行った証人数の平均が出ており,全体が1.6人,自白事件が1.4人,否認事件が2.4人となっております。  次に,72頁の図表70を見ていただきますと,控訴の状況が記載されています。これによりますと,昨年12月末までで,47人が控訴し,控訴率は33.1%となっています。控訴したのは全て被告人側となっていますが,本年10月末の時点では,3件の判決に対して,検察官から控訴しています。  また,74頁の図表72によりますと,控訴審が終局したのは3人で,控訴棄却1人,控訴取下げが2人となっています。このように,昨年12月末までの時点では,控訴審で第一審判決が破棄されたものはありませんでしたが,本年9月末までで見ますと,控訴審で破棄されたものが8人で,そのうち,7人が量刑不当,1人が事実誤認となっています。  最後に,76頁の図表74を御覧ください。  図表74によれば,全体の14.8%の事件に通訳翻訳人が付いたこと,中でも覚せい剤取締法違反事件については,その81.3%に通訳翻訳人が付いたことが分かります。覚せい剤取締法違反事件について,通訳翻訳人が付く確率が高いのは,裁判員裁判の対象となる同法違反の行為が覚せい剤の営利目的での輸出入と製造に限られており,外国人によって犯されることが多いためだと思われます。  以上で私からの御説明を終わらせていただきます。 ○井上座長 どうもありがとうございました。  ただいまの説明につきまして何か質問等ございますでしょうか。  一点確認ですけれども,資料の中で「自白事件」,「否認事件」という言葉が使われていますけれども,この「否認」というのは一部否認も含むということですよね。 ○西山参事官 はい。 ○井上座長 一部でも否認していれば,「否認事件」の方に入るということですね。 ○西山参事官 そうですね。全部,又は一部を争うということです。 ○井上座長 一方,「有罪」か「無罪」かという方は逆で,一部無罪とか,あるいは縮小認定といいますか,罪名を軽いものにして認定した場合は全て「有罪」に分類されている,つまり,結論として有罪となったものは資料では「有罪」の方に入れられているということですね。 ○西山参事官 はい,そうです。 ○井上座長 御質問でも感想でもいいのですけれども,どなたか御発言はございませんか。  それでは皮切りに私から発言させていただきますと,最近,ソウルに行って,最高裁判所からいただいた7月末までの裁判員裁判の実施状況のデータやそれ以前の資料などを使って講演をしたのですけれども,その準備をする過程で気付いた点の1つは,終局判決まで至る数がかなり増えてきているということです。新聞報道でも,7月は起訴件数より判決が出た件数の方が多かったというような記事がありましたけれども,確かに前回配られた5月末までの数字と比べると,6月,7月というのはかなりの数,月平均で被告人数でいうと160とか170人ぐらいだったと思うのですけれども,判決が出ていますね。  今回の10月末までのものを見ましても,8月という夏を含んで8,9,10の3か月で月平均160人ぐらい出ているので,かなりスピードが上がってきたかなという印象を受けますね。  また,審理期間が延びている,特に否認事件では延びているということですけれども,実審理期間を見るとそれほどでもないですし,公判開廷回数もそれほど増えているわけではないですね。実体としては,公判前整理手続の期間が,難しい事件が多くなっているために長くなっているということだと思うのですが,これも公判前整理手続期日の回数を見ると,1回分増えているかどうかという程度ですから,回数というより期日と期日の間隔が長くなっている,つまり,難しい事件が増えているので,当事者が準備するのに時間がかかっている,そういうことなのかなと思います。  もう一つは評議時間については,最終評議の時間だけをとってみると平均約7時間ということでしたが,恐らく中間評議を入れると,もっと長い時間を使っていると思うのですね。中間評議は,いろいろな形の中間評議があるので,正確に時間を把握することはできないですから。この点,例えばアメリカの陪審の場合は,公判の審理が1日だと評議時間は大体1時間,2日だと2時間というのが,向こうのローヤーの間では相場とされていると聞いたことがあります。無論ずっと長い場合もありますけれども,通常はそのくらいだとされているようで,それに比べますと,わが国の裁判員裁判の場合,相当時間をかけて議論されているんだなという印象を持ちました。 ○前田委員 1日の法廷だと1時間の評議があるというのは,アメリカの話ですか。 ○井上座長 そうです。評決結果が出るまで大体どのくらい待っていないといけないかというのを,弁護士さんなんかがそれまでの経験からそう言っているのです。難しい事件の場合はもっと長くかかりますけれども,一般的にはそんなふうに言われているようです。 ○四宮委員 もちろん,ケースによっていろいろありますね。 ○山根委員 公判日数が長い予定になっているものに関してですけれども,これに対応するために,通常の取扱いの他に何か用意されていることというのはあるのでしょうか。補充裁判員の方を多く選任するというのは聞くのですけれども,それ以外に何か,例えば呼出状の段階で何か注意事項が書いてあるとか,何かあるのか教えていただければと思います。 ○井上座長 角田委員,いかがですか。 ○角田委員 基本的には呼出しの段階で職務従事予定期間がどのぐらいかかりますということをきちんと明示して,それで呼出しをしますので,受け取った方は,これが1週間かかるのであれば,仕事でどうしても駄目だとか,1週間ぐらいなら大丈夫と,こういう判断はできるようにはしてあります。  あとは,一番最初に選定する候補者数を長ければ長いほど増やします。普通,3日ぐらいの事件ですと,今は60人ぐらいの選定でやりますけれども,1週間を超えるというようなことになると,多分100人とか,100人をちょっと超えるような事例も最近ありまして,そんな対応をしているということです。 ○井上座長 新聞報道では確か,横浜地裁や大津地裁で最近始まった殺人等の事件では最初に選定されたのが180人,さらに鹿児島地裁で今公判が進行中の強盗殺人被告事件では候補者が2回にわたって450人選定されたということですね。 ○角田委員 あれは,審理予定期間が40日ぐらいですので,それぐらいの数で呼出しをかけないと,ちょっとうまく回らないだろうということだったかと思います。 ○前田委員 私自身が担当した事件は,9日間でしたけれども,呼出しはやはり100人でしたね。 ○井上座長 9日というのは実日数ですか,延べ日数でしょうか。 ○前田委員 選任から判決までです。実質はもう少し短いですけど,評議も含めてです。 ○井上座長 これから,法曹三者の方々から実情について,更に御説明いただきますが,この数字も考慮して,また御質問,御意見をいただければと思うのですが,よろしいでしょうか。  それでは,次に,裁判員法施行後1年半を経たことになるのですけれども,この間の法曹三者の取組につきまして,三者の委員の方々からそれぞれ御説明いただきたいと思います。  時間の関係で,お三人の委員の御説明をまとめてお聴きしたうえで御質問あるいは御意見を頂きたいと思います。  まず,角田委員からお願いします。 ○角田委員 それでは,裁判所の立場からということで,15分程度時間を頂いて報告いたします。  レジュメを事前配布していただいておりますので,項目はこれに沿ってお話ししたいと思います。  まず,去年8月に裁判員裁判の第1号事件が東京地裁で審理・判決されてから1年半余り経過しまして,裁判員裁判は,比喩的に言うと,離陸の時期から巡航速度を目指してといいますか,安定的な飛行を目指す時期に入ってきていると思います。  裁判所の取組状況について御報告しますけれども,私が正確に把握できるのは,東京地裁の実情,事情ということでありますので,報告は,基本的にはこれをベースとしたものになるということを御了承いただきたいと思います。  まず,「裁判員裁判の動向」ということでありますが,裁判員対象事件全体の動向,これは先ほど事務局の方から詳細に御報告いただいたとおりですが,東京地裁の実情も,ほぼこれの縮図のような状況にあると思います。  統計的な数字を申し上げますと,東京地裁本庁における裁判員対象事件の新受件数は,昨年5月21日の施行後,本年11月1日までで,248件ということになっております。これは事件ベースの数字です。  既済件数は,やはり11月1日までの期間で見ますと,133件となっており,既済率が53.6%ということになります。つまり過半数の事件が判決まで至ったということであります。  この既済率について,ちょっと興味深い数字ですので,今年4月末から2か月単位で数字を拾ってみますと,本年4月末の既済率は,東京地裁本庁は25.2%,つまり4分の1しか処理できていなかったということであります。これが2か月後の6月末の時点では34.9%の事件が既済になりました。それから,さらにその2か月後の8月末の時点では44.1%ということで,過半数に迫ってきた割合であります。 これを流れで見ますと,公判期日が次第に順調に開かれるようになってきたと評価できると思っております。  また,11月1日現時点において,既済事件と期日指定済み,あるいは具体的な期日指定が予定されるに至った事件が新受事件の累計に占める割合,これが65.7%です。分かりやすく言いますと,東京地裁が11月1日までに受理した事件のうち,既に判決が終わった事件,それから確実に終局が見込まれるという事件の割合が65.7%ということで,全体の約3分の2がそういう状況になっているということであります。  先ほど座長の方からも御紹介がありましたけれども,今年7月に代表されますように,裁判員裁判事件については,新受件数を上回るペースで終局に向かっているというふうに評価できると思っております。  詳細は後ほど申し上げますけれども,これについては,法曹三者の取組というものもかなり寄与しており,その成果だと言えると思います。  ところで,基本的かつ重要な問題として,事件が処理できているというだけでなくて,裁判員経験者がこの制度をどういうふうに受け止めているかという点が非常に大きな問題になると思います。この検討会でも紹介されております経験者のアンケート結果によりますと,これはいろいろなところで指摘されますが,裁判員に選任される前は,半分を超える方ができればやりたくないということで参加に消極的であったということが数字で出てくるわけですけれども,裁判員として職務を終えた後の気持ちとしては,「非常によい経験だった」,あるいは「よい経験だった」ということで,積極的評価をしていただく方の割合が実に約97%,先ほど約96%と紹介がありましたけれども,これは時期によって若干のずれはありますけれども,つまり96〜7%の方がそういう非常に肯定的な評価を述べておられるということです。  さらに,判決直後,裁判員経験者のうち記者会見に応じていただける方には記者会見をやっていただいているわけですが,これも総じて,制度に対する肯定的評価を述べられる方が多いということがあります。さらに,裁判員候補者の出席率,つまり,本来来ていただかなければいけないという方の出席率がどの時点でも優に80%を超えているというようなこともあります。これは,実は東京でも全国的にも同じような傾向,数字になっているわけですが,以上申し上げましたようなことに照らして,裁判員制度はおおむね順調なスタートを切っただろうというふうに評価して,ほぼ間違いないのではないかと考えております。  ただ,全然問題がないということはもちろんないわけで,多くの課題があるわけですが,そのうちの一つ,「公判前整理手続の遅延傾向とその対策」ということについて触れたいと思います。本年の初頭に公判前整理手続の遅延というか,少し遅れているのではないかということが報道等で取り上げられる状況がありました。裁判所としても,データは当然集積しておりますので,このデータに基づいて滞留原因の分析を行いました。  その結果,裁判所の方の進行管理の甘さということが裁判所側の問題点として,非常に大きなものとして意識されるということになり,また,検察官,弁護人の方も,必要以上に慎重になっていて,やはり時間をかけ過ぎるということで,この点を改善していく必要があるということが法曹三者の共通認識になったと思います。  ただ,一方で,どんな事件でも急いでやればいいということでないのは自明のことで,争点が多岐にわたるというような事件については,相応の時間をかけて,適正な審理をしなければならないということもあります。  以上の点を踏まえて,裁判所としては,対策をとらなければいけないということだったわけですが,事実関係に争いがなく,あるいは追起訴もないような事件,これは標準的自白事件というような言い方をされる場合が多いと思いますが,標準的自白事件に焦点を当てて,そのような類型の事件について,公判前整理手続を適正・迅速にするためにはどうしたらいいかということで対策を考え,検察庁あるいは弁護士会,東京では3会あるわけですが,3会とも協力して運用改善の努力をしました。  一つだけ例を挙げますと,東京地検と連携して,手続のスタートとなる証明予定事実記載書面の提出期限を起訴から2週間ということで設定させていただき,否認事件を含めてほぼ例外なく出していただくことで協力を得ることができました。 検察の方にそれだけ無理を言って努力をしていただくということですので,弁護サイドにも,それに対応して迅速な書面の提出をお願いして,一時期よりもかなり順調に書面の提出,手続の進行が図れるようになってきていると,現場の裁判長からは聞いております。  強調しておきたいのは,こういった課題に対応するのに法曹三者の連携に意を用いているということです。項目だけ申し上げますが,制度実施前から,東京地検,東京三会と東京地裁は,裁判員協議会とか法曹三者協議会とかといったことで双方向の議論をしておりましたが,これを引き続き2か月に1回ずつ開催して,毎回熱心な討論・議論をしております。  さらに,今年の4月からは,裁判所側と各弁護士会の刑事弁護担当の副会長,それから法テラスにも協力していただく必要がありますので,法テラス東京の副所長との間で,2か月に1回のペースで協議会,懇談会を開催していて,毎回,公判前整理手続の運用・改善を含む裁判員裁判の適正な運用について議論を深める努力をしています。どの程度成果が上がっているかというのはいろいろ評価があると思いますが,努力をしているということであります。  冒頭御紹介した改善された数字というのは,こういった取組の成果と見ていいのではないかとも思っております。  最後にですが,レジュメでは「正念場を迎えた裁判員裁判」と書いてありますが,複雑困難な事件がいよいよ公判前整理手続を終了して公判審理に入るという段階になっておりまして,本当の正念場を迎えていると思います。東京地裁でも刑事責任能力の有無が正面から問題になるような事案,あるいは間接事実積み重ね型の否認事件,これは職業裁判官にとっても非常に判断の難しい類型の事件になるわけですが,こういった否認事件,更には極刑求刑が予想される事件などが審理・判決される,こういった段階になっており,これは全国的にも共通の状況であります。  例えばということで申し上げますと,間接事実積み重ね型の否認事件について,当事者の主張が複雑で,裁判員にとっては心証形成が非常に難しいという事件でありますので,特に審理計画の策定に工夫が要求されるだろうということで,次のような工夫がされた例があります。否認事件が2件,それから自白事件が1件,要するに事件の多い固まりになったような類型の事件の審理について,8日間の日程の公判審理の計画を立てた事件がありますが,法曹三者の話合いで前半の4日間で否認事件2件を審理して,それが終わった段階で,若干変則的ですけれども,検察官,弁護人に中間的な意見を述べてもらい,その後自白事件である事件の審理を行って,量刑判断につなげていくという工夫をした事例があります。  否認事件に関しては,どうもDNA鑑定の証拠も含んでいたようで,難しい面があったと思いますが,この事件は,私も判決後の記者会見を傍聴させてもらいましたけれども,裁判員経験者の方は,非常に分かりやすい,進行について分かりやすかったと,こういうことを述べられる方が多かったと思います。  さらに,もう一点だけ申し上げますと,極刑求刑の事件というのは一番深刻で困難だということであります。11月1日に東京地裁でも判決がありましたが,無期懲役という結論でしたけれども,その内容等は報道のとおりであります。この類型の事件については,審理の在り方,その前提になる公判前整理手続の運用の在り方,更には裁判員の負担感の軽減,あるいは事後の精神面のケア,こういった多岐にわたる課題があると思われます。  こういったことについては,もちろん裁判所の方もいろいろ検討しておりますが,更に検討を深めていきたいと考えております。  最後になりますけれども,裁判所としては,このような事件において直面する多くの課題について,裁判所の組織としての性質上,個別事案の処理の実績を参考にしながら,内部でよりよい運用に向けての意見交換を進めております。最終的には,国民の側から納得してもらえるような運用実績を積み重ねることで,制度の定着につなげていければと考えております。  簡単ですけれども,以上です。 ○井上座長 どうもありがとうございました。  では,続いて,白木委員の方からお願いします。 ○白木委員 それでは,私の方からお手元のレジュメに沿って御説明させていただきます。  昨年5月21日にいわゆる裁判員法が施行されて約1年半が経過いたしました。この間,昨年8月に,全国で初めて東京地方裁判所で裁判員裁判が行われて以降,全国各地の地方裁判所において,多数の裁判員裁判が行われました。  本年10月末時点での裁判員裁判対象事件の起訴件数や裁判員裁判による判決を受けた者の数につきましては,先ほど事務当局から御紹介がございましたが,全般的に見れば,これまで裁判員裁判はおおむね順調に実施されていると考えております。  裁判員の方々が主体的に審理に参加し,その感覚が裁判に適切に反映されていると受け止めており,裁判員の方々が真摯かつ誠実に職務に取り組まれたことに対し,深く敬意を表したいと思います。  また,検察としても,これまで裁判員制度の円滑かつ適正な運用に向け,様々な取組をしてまいりました。そこで,この場をお借りして,裁判員制度の円滑かつ適正な運用に向けたこれまでの検察における取組について,御紹介したいと思います。  まず,最初に,裁判員裁判への組織的な取組について御紹介いたします。  検察におきましては,裁判員法の成立直後の平成16年6月,最高検察庁に裁判員制度等実施準備検討会を設け,制度の実施に向けた検討を行ってきました。そして,裁判員法の施行まで1年を切った平成20年7月には,最高検察庁に臨時の部として,裁判員公判部を設置し,検察の組織を挙げて裁判員制度の円滑かつ適正な運用を図るための体制を整備しました。  この裁判員公判部の所管事項は,裁判員裁判の遂行を円滑かつ適正に行うための事件の捜査及び公判の遂行の支援に関することなどでございまして,全国各地の地方検察庁に対し,裁判員制度が円滑かつ適正に運用されるよう,必要な助言,指導等を行っております。  また,最高検察庁におきましては,昨年2月,それまで模擬裁判等において行ってきた様々な試みをも踏まえ,裁判員裁判における検察の基本方針を策定し,これを全ての検察官に周知・徹底しました。  この基本方針の内容等につきましては,本年2月に行われたこの検討会の第2回会合において,当時の稲葉委員から御紹介させていただきましたので,詳しい説明は省略させていただきますが,例えば適正かつ緻密な捜査により,事案の核心と全体像を解明すべきことや,公判において裁判員にも分かりやすく,迅速でしかも重要な点を漏らさない的確な主張,立証を行うべきことなど,捜査,公判活動のみならず,執務態勢の在り方や研修の在り方を含め,裁判員制度の下での検察の在り方全般について,その基本的な方針を明らかにしております。  この基本方針につきましては,委員の方々には前回の会合の際にお配りしていますが,検察庁のホームページにも掲載しており,一般に公開しています。  さらに,裁判員法施行後は,運用上生じる個々の問題に対し,組織的に統一して適切な対応を図ることに努めています。そして,このような対応方策を含め,全ての検察官が他の検察官が有する知識・経験等の有用な情報を共有することができるよう,様々な方策を講じています。  具体的には,例えば全国各地で行われる個々の裁判員裁判において生じた具体的な問題点等を踏まえ,反省すべき点や留意すべき事項を抽出・分析した上で,裁判員裁判に関わる全ての検察官や検察事務官に対し,これを迅速に伝達するということを行っています。  また,執務上参考になると考えられる裁判例や冒頭陳述メモ,論告メモの例,立証上の工夫をした例などの情報につきましても,同様に関係する全ての検察官等に提供しています。  次に,裁判員裁判に対応した捜査,公判等の実践について御紹介いたします。  裁判員法施行後,検察におきましては,先ほど申し上げた基本方針に従い,裁判員裁判を見据えた捜査を遂行するとともに,公判では分かりやすく迅速で,しかも重要な点を漏らさない的確な主張立証活動を行うよう努めてきました。  まず,捜査段階においては,いたずらに枝葉末節的な事実にこだわることなく,事案の核心と全体像を解明することに努めるとともに,例えば簡にして要を得た供述調書を作成することや,簡潔で抄本化に適する構成,様式の実況見分調書や鑑定書等が作成されるよう,警察や鑑定人に要請するなどしています。  具体的には,例えば精神鑑定書については,鑑定の結果等を記載した本文の分量は2枚程度にとどめ,鑑定の経過等の詳細については別紙に譲るという方式を考案し,鑑定人がこのような書式を検察庁のホームページからダウンロードして利用することができるようにしています。  このように将来の公判において裁判員にも分かりやすく,かつ的確な主張,立証が必要とされることを見据え,捜査段階からこれに備えた証拠の作成・収集を行うよう努めてきました。  次に,公判前整理手続においては,適切な争点と証拠の整理のため,立証事実を適切に選定した証明予定事実記載書面を早期に作成して提出するとともに,誠実かつ迅速な証拠開示に努めており,例えば検察官請求証拠については,できる限り速やかに開示するとともに,弁護人からの証拠開示請求に対しては,その請求が法律上の要件を満たすか若干疑問なしとしないような場合であっても,開示による弊害がなく,かつ開示することにより裁判の迅速化に資することとなると思われるような場合には,任意に証拠を開示することとしています。  また,公判に提出する証拠書類につきましても,これを厳選し,必要な部分に限って証拠調べ請求を行うよう努めており,例えば複数の捜査報告書中に立証上必要な部分と不要な部分がある場合には,弁護人の意見も聞きつつ必要な部分のみを統合した一つの捜査報告書を作成して,証拠として提出するなどの工夫も行っています。  さらに,公判においては裁判員が法廷で容易かつ適正に心証を形成することができるよう,主張,立証の方法について様々な工夫を行ってきました。具体的には,例えば冒頭陳述,論告では,検察官が主張,立証する事実の内容や,その事実と証拠との関係を分かりやすい表現で明確に示すとともに,口頭による主張を補うため,通常A3用紙1,2枚程度の簡潔な内容のメモを作成・配布しています。  また,証拠調べでは,供述調書については全文を朗読し,図面や写真についてはディスプレイに表示しています。また,例えば犯行状況などが録画された防犯ビデオなどが存在する場合には,これを映写するなど,映像による立証も活用しています。  さらに鑑定を行った専門家の証人尋問の際には,裁判員の理解に資するよう難解な専門用語の解説資料を作成して配布したり,あるいは従来のような一問一答式の尋問方法の他,いわゆるプレゼンテーション方式,すなわち,まず証人が自らが行った鑑定の経過と結果を取りまとめて説明し,その後,検察官が補足的な質問をするという形態での尋問方法を試みることも行っております。  次に,検察における被害者等への配慮について御説明します。  裁判員裁判においても被害者等の権利・利益が適切に保護されることが重要です。しかしながら,特に,いわゆる性犯罪の事件の被害者の中には,裁判員裁判で名誉やプライバシー等が守られるかどうか不安を抱いている方も多いと思われますが,一方で,被害者は犯人が刑事裁判で適正に処罰されることも望んでいることと思います。  そこで,検察においては,そのような被害者の方々の名誉やプライバシーを保護するため,様々な対応を行っております。まず,捜査段階においては,例えば被害の状況を聴取する際などに,被害者の不安の有無,内容を確認した上で,それに応じてこれから述べますような裁判員裁判において,被害者の名誉やプライバシー等を保護するために採り得る方策について十分に説明し,その不安を解消するよう努めております。  また,裁判員等選任手続においては,例えば裁判員候補者の中に被害者の知人等の関係者がいる場合には,被害者の希望も踏まえつつ,法律上許される範囲内で不選任請求権を行使することとしています。  具体的には,あらかじめ裁判員候補者の中に知人等と同姓同名の者がいるか否かを被害者に確認してもらい,仮に知人等である可能性がある者がいる場合には,被害者からその候補者が実際に知人等であるか否かを特定するために必要な情報を提供していただいた上で,選任手続期日における候補者に対する質問等の結果,その候補者が実際に被害者の知人等であることが判明したときは,不選任請求権を行使することとしています。  また,被害者自身はその候補者のことは知らないものの,候補者の方は被害者を知っているという場合も考えられることから,例えば被害者と同一の地域に居住する人や,同一の職場に勤務する者などについても,選任手続期日における候補者に対する質問等の結果を踏まえ,該当する者について不選任請求権を行使することとしています。  さらに,公判においても,例えば冒頭陳述や証拠調べなどの際に,法廷で被害者の氏名や住所などが明らかにならないような措置を採ることや,法廷に出席する被害者への付添いや遮蔽の措置,あるいはビデオリンク方式による証人尋問や意見陳述を求めるなど,法律上定められている各種の被害者保護のための措置が適切に講ぜられるよう努めています。  また,被害の状況が記載された供述調書の証拠調べに際しては,その内容の全部をそのまま法廷で朗読するのではなく,激しい被害の場面等につきましては朗読を差し控え,該当部分の調書の写しを裁判官や裁判員に配布して,法廷で黙読してもらうなどの方策も講じております。  最後に,裁判員等への配慮について御説明いたします。  先ほども話したように,検察におきましては,裁判員が法廷で容易かつ適正に心証を形成することができるよう,冒頭陳述等の内容を簡潔にまとめたメモを作成・配布したり,鑑定人等の証人尋問に際して,尋問方法を工夫するなどしておりますが,それ以外にも,裁判員の精神的な負担等をできる限り軽減するような配慮も行っています。  具体的には,例えば刑事裁判においては,適正かつ妥当な事実認定と量刑を得るため,被害者の御遺体の写真などの証拠調べが必要な場合があり,また,御遺族からこれを裁判の証拠とすることを強く望まれる場合もあります。しかしながら,一方でこのような証拠を目にすることは,一般の国民から選ばれた裁判員にとっては,精神的にも大きな負担になると思われます。そこで,そのような負担をできる限り軽減するため,検察においては,あらかじめそのような写真を証拠として取り調べるべき必要性の有無,程度や,これが裁判員に与える負担の程度などを考慮し,証拠調べの要否やその分量,内容を慎重に検討した上で証拠調べを請求することとしています。  また,証拠調べの具体的な方法につきましても,例えばカラーではなく白黒の写真の取調べを求めたり,裁判員がいきなり写真を目にすることがないよう,裁判員の目の前のモニターに表示するのではなく,あらかじめ写真に表紙を付けたものを準備しておき,裁判員が表紙をめくる前に配布した証拠の内容について注意を喚起するなどの配慮も行っています。  また,例えば包丁などの危険な凶器の証拠調べを請求する場合には,透明なケースに収納した状態で提出することにより,安心して手に取って見てもらえるような配慮もしております。  さらに,裁判員制度の下では,視覚や聴覚に障害を有する方が裁判員や補充裁判員に選任されることもあり得るところであり,実際にも,これまでそのような方が裁判員や補充裁判員となったことがありました。これらの事例では,視覚や聴覚に障害を有する方にも検察官の主張,立証を十分に理解していただけるよう,例えば視覚に障害を有する方が裁判員となった際には,法廷で配布する冒頭陳述メモなどにつきましては,あらかじめ点字のものを準備したり,証拠に含まれている写真や図面につきましては,その内容を言葉に置き換えて,分かりやすく丁寧に説明することとしました。  また,聴覚に障害を有する方が裁判員となった際には,証拠調べにおいて供述調書を朗読するときに,朗読する供述調書を裁判員等の席上のモニターに表示するとともに,朗読している箇所に合わせて,画面上の供述調書の該当部分にアンダーラインを表示することとしました。  以上,裁判員制度の円滑かつ適正な運用に向けたこれまでの検察における取組について御紹介いたしました。  裁判員制度は,これまで我が国にない全く新しい制度であり,引き続き裁判の迅速化に努めることや,犯人性がし烈に争われる事件や凶悪・重大事件を含め,同時並行的に行われる多数の裁判員裁判に適切に対処すべきことなど,今後とも裁判員裁判を実施していく中で,検討・解決していくべき様々な課題が生じてくるものと思われます。  いずれにいたしましても,検察としては裁判員制度が国民の理解と信頼の下に確固たるものとして定着していくようにするためにも,引き続き組織を挙げて,裁判員制度の円滑かつ適切な運用に努めていきたいと考えております。  以上です。 ○井上座長 どうもありがとうございました。  それでは,前田委員からお願いします。 ○前田委員 それでは,日弁連の裁判員制度の取組状況に関しまして,お話をさせていただきます。  あらかじめレジュメが出ておりますが,3点,御説明させていただきます。  一つは,現状の裁判員裁判に対する私個人の感想でございます。  二番目が,裁判員裁判に関する日弁連の最近の取組状況でございます。  三番目が,裁判員制度に関する日弁連での検討を始めておりますので,その検討状況について少し触れておきたいと思います。  まず,現状の裁判員裁判に対する私自身の感想でございます。  既に1年半近く経過しておりまして,先ほど角田委員の説明の中にも,自白事件のみならず,本格的な否認事件も入ってきているという御説明がありました。その中には犯人性を争って間接事実の積み上げで認定しなければいけないという事件もあるわけでございますけれども,それら難しい事件を含めまして,私自身は,個々にはなかなか難しいものもあったかもしれませんけれども,全般的には,比較的,非常に順調に審理が進められているのではないかと,今考えております。  これは,裁判員裁判を定着させたいという法曹三者の協力,あるいは創意工夫もありますけれども,何よりも裁判に参加されました裁判員,あるいは裁判員候補者の皆さん方の真摯な取組が最大の要因ではないかと思っております。  先ほど記者会見の話が出ましたが,私自身は,この記者会見に参加される方は,余り多くないのではないかという予測もしていたのですけれども,かなり多くの方が積極的に記者会見に臨んでおられるということです。初めて死刑が求刑された事件でもそうでございました。その発言自体,私自身も非常に感心させられる内容が多いわけでございます。  報道された内容でそっくりそのまま引用させていただきますと,死刑求刑事件で裁判員となった方は,「これまではニュースを見る程度で,深く事件について考えることはありませんでした。しかし,今回は人の命の重さについて,とても深く考えました。世の中のみんながそれを深く考えれば,犯罪はなくなるのになあ,と。」と述べたと報道されているわけでございます。  これらの報道に接するにつけまして,被告人の権利を踏まえた上で,市民の感覚や常識をもって,的確な判断を導いていこうとする,この裁判員制度の目的が生かされているのではないかと,私自身思っております。  それから,三つ目は,先ほどの報告の中にもございました。資料4の真ん中の段にございますけれども,法廷での説明の分かりやすさという点について,最高裁がアンケートを取られています。検察官は77.2%が分かりやすかったとされており,一方で弁護人は47.0%しか数字がない。これは弁護人の立場からいたしますと,真摯に受け止めなければならない数字であると感じています。  やや弁解めいたことを言わせていただきますと,弁護人は飽くまで被告人の援助者という立場でございますので,被告人自身の意向を離れては主張が組み立てられない。被告人自身の主張が理解を得にくいとか,あるいは裁判員の皆さんの立場からすると,共感を得にくいようなものも中にはあるのではないかと思います。しかし,それに基づいて主張しなければならないという,この弁護人の立場からの説明の中身の難しさがあるということは,御理解をいただきたいと思っております。  ただ,それを離れても法廷の弁護技術としての分かりにくさもあるということは感じております。そこには検察庁という組織で対応できる検察官と,しょせんは個々の弁護士の力量に頼らざるを得ない弁護士との差が出てきているのだなという気はいたしますが,そうとはいえ,被告人の代弁者として,きちんとした法廷弁護活動をしなければならないというのは,法律家として当然のことでございまして,どこに問題があるのかということを弁護士会として更に検討し,研修していかなければいけないと考えているところでございます。  二番目は,それらの実情を踏まえまして,日弁連での最近の取組状況について御説明させていただきたいと思います。  日弁連といたしましては,全国の単位会から推薦を得て参加している委員を抱える裁判員本部という組織と,日弁連の執行部に直属しております裁判員対応室という組織を立ち上げております。  主として,裁判員本部での活動状況について御説明いたします。  研修はそれなりにやってまいりました。方法としては,全国に裁判員本部の講師などが出掛けていきまして,各地で研修するというキャラバン方式と呼んでいる方式と,もう一つは,東京の会場で講義,あるいは講演等をやりまして,それを全国各単位会でビデオの映像等で見るというサテライト研修と呼んでいる研修の方式と,大きく分けて二つの方式を採っております。  前者のいわゆるキャラバン方式と呼んでいるものは,主として法廷弁護技術の研修でやっております。これは,冒頭陳述,証人尋問,弁論,これらの課題を具体的に与えて,その実践をして,その場で講師がコメントを加えるという,実践教育でやってまいりました。  そうした法廷弁護技術とは別に,どういう弁護戦略を立てていくか,裁判員裁判の中でどうしたら裁判員の方に分かりやすい方針を立てることができるか,そういう観点の弁護戦略研修と呼んでいる研修は,主としてサテライト研修という方式でやってきております。  もう一つ,弁護人として基本的に知っておかなければならない他の分野の知識,例えば精神医学の領域の知識ですとか,法医学における知識ですとか,そういうものについてもサテライト研修という形で実施しているわけでございます。  実は,今日の午後もそのサテライト研修で,裁判官の目から見た法廷弁護活動,あるいは検察官における裁判員裁判における活動というのを御講演いただくということになっておりまして,そういう意味で,他の皆さん方からの弁護人に対する厳しい批判等も受け入れた研修をしたいと考えているところでございます。  それから,次は経験交流でございます。裁判員裁判を経験いたしました弁護人が集まって,それぞれの経験を述べることによって,それぞれの弁護人としての活動の幅を広げ,方針の確立に役立たせようと,そういう観点から実施してまいりました。全国的な経験交流というのはなかなかできないわけでございますけれども,少なくとも年に1回,あるいは2回ぐらいはやるということで,これまで2回実施してきております。  前回のテーマは量刑傾向についてということでやりました。来年1月には責任能力をめぐる問題に絞って経験交流しようと考えているところでございます。  そういう形で全国的に弁護人の成果なりを報告し,意見交換を行うという形で経験交流を重ねてきております。  それから,先ほど死刑求刑事件の話も出ておりましたけれども,死刑に関しましては,死刑求刑が予想される事件においてどういう弁護活動をするかという点について,特別のプロジェクトチームを作りまして,10月30日に経験交流会を持ちました。これも組織的な対応をしていこうということで始めたものでございます。  それから,これは従前からやってきているところでございますけれども,市民向けの広報活動も重要と考えておりまして,日弁連としてはパンフレットなどを作ってきております。これが弁護士会の作っております「あなたが支える裁判員制度」というパンフレットでございます。これを改訂などいたしまして,市民に配布しております。これらも継続的に行っていこうという考えでございます。  最後に,今,日弁連で裁判員制度について検証していこうという取組をしておりますので,そのことについて御説明したいと思います。  この会自体が制度改革も含めて検討する会でございますけれども,日弁連では既に3年経過後の検証に向けまして取組を始めました。裁判員本部の中に裁判員検証プロジェクトチームというのを作りまして,約半年かけてどういうことを論じていかなければならないかという論点整理をいたしまして,そのプロジェクトチームは一応解散いたしました。現在,3年後の検証小委員会というのを裁判員本部に設けまして,それで,具体的な論点に沿って話を始めました。  この3か月間でようやくワンクールが終わりまして,第2クール,第3クールぐらい議論を重ねていこうと思っているのですけれども,今までのところ,まだ意見交換ではございますけれども,ある程度方向性が出てきている課題もございます。  一つは,裁判員の守秘義務に関する議論でございまして,これは制度設計の段階からいろいろ議論はあったところでございますけれども,守秘義務の現在の制度はそのまま維持しつつも,罰則をもって禁止される内容については再考すべきではないかということです。もちろん評議の中において,裁判員の方が自由に発言するということが保障されなければなりませんので,基本的には,特定の裁判員がどういう発言をしたとか,特定の裁判官がどういうことを発言したなどということが明らかになるようなものであっては,決していけないとは思っておりますけれども,評議でどういうことが中心に議論されたか,どういうところが裁判員として一番難しい判断を迫られたかというような評議の経過などについては,誰が発言したかという特定をしない範囲で,これを罰則をもって禁止するということは外していいのではないかという,そういう議論をしてきております。  もう一つは,評決の要件についても再考する必要があるのではないか,有罪,無罪の判決について,いわゆる特別多数決といいますか,単なる過半数ではなくて,より重い要件で評決を加えるということではどうだろうかというような議論が出ております。  裁判官の過半数プラス裁判員の過半数というような案も出ておりまして,もちろんまとまってはおりませんけれども,そういう評決に関する要件の変更をしたらどうかという議論も出てきております。  それから,公判前整理手続の中で,やはり一番問題になってくるのは証拠開示の手続ではないかということで,証拠開示に関しましては検察官の手持ちのリストの交付を前提として,全面的な開示につながるような,そういう制度改革をすべきではないかというような議論があります。具体的にどうするかということまで全然詰まっておりませんけれども,方向性としては,従来から日弁連が主張しておりますが,リスト開示を実現していくべきではなかろうかという議論も重ねているところでございます。  いずれにしても,まだ議論が煮詰まっている段階ではございませんので,どうなるか分からないのでございますけれども,日弁連として意見がまとまるものであれば,2013年3月ぐらいまでには,ある程度の方向性を出したいと考えているところでございます。  いずれにいたしましても,日弁連全体としては,現在の裁判員裁判の制度を肯定的に評価して,よりよい制度にしていこうということで各人が努力しているところでございます。  以上です。 ○井上座長 どうもありがとうございました。  それでは,ただいまの3委員の御説明につきまして,御質問,あるいは御意見がございましたら,どなたからでも御発言願います。 ○甲斐官房審議官 弁護士会の関係で2点ほど教えていただければと思うのですが,一つは,弁護人の選任の関係です。裁判員裁判は,非常に弁護士の方に負担が大きいということもありますし,また,被疑者段階でも国選弁護人が付くようになって,そういう意味でもまた負担が非常に大きいと思います。 以前,弁護士会でいろいろ努力をされても,一部の単位会では,非常に選任に時間がかかるというようなこともあったんですが,今現在でどういうふうになっているか,選任に困難な状況は,全国的に見ておおよそないような状況になっているかというのが一つでございます。  もう一つ,被害者の関係で,もちろん裁判員裁判でも被害者参加というのはあるわけで,その被害者参加の方に弁護人が付かれるということもあろうかと思うのです。それについて弁護士会で,そういう活動とか態勢とかについてどんな取組をされているのかということについて,もし分かれば教えていただければと思います。 ○前田委員 弁護人の選任に関しましては,日本全国,いろいろな弁護士会がございまして,各地の実情で全くばらばらではございますけれども,スタート時点までに何とか態勢としては整えることができた,つまり,人の配置は一応できるということでスタートをしております。これは被疑者国選への対応が主でございますけれども,裁判員裁判の対応という観点からも検討いたしまして,人の配置はできているということでございます。  ただ,裁判員裁判になりますと複数で受任をしなければならないような重大事件が多いわけでございまして,複数の態勢をどう採っていくかというのが,今一番大きな弁護士会の課題になっています。  受任した後の弁護の中身については,先ほど私が申し上げました問題があるわけですけれども,一応態勢として一通りはできているということで,問題になっているのは,裁判員裁判における複数選任のときの二人態勢の組み方という点で,一番議論をしているところでございます。  それから,被害者参加人の代理人弁護士の関係につきましては,日弁連の被害者委員会がありまして,これも各地でいろいろ事情は違うのですけれども,被害者参加人の弁護士のリストなどを作りまして,被害者参加人代理人弁護士の研修とか,被害者参加人の弁護士がスムーズに付けるように態勢を組んでやっておりますので,こちらの方で,特に弁護士の態勢ができていないという話は,今のところ聞いておりません。  ただ,意外に国選ではなくて私選の依頼が多いと聞いているところでございます。 ○土屋委員 角田委員からちょっとお話がありましたけれども,判決後,裁判員経験者らの心理的な負担に対するケアの話ですが,今は裁判所の方ではどういうふうな態勢をとっていらっしゃいますか。 ○角田委員 次第に求刑の重い事件なども増えてきて,その問題は大きな課題になっています。基本的には,まず,裁判体の方で意識して対応するようにということで,裁判官の方では,いろいろな議論をし,工夫をしています。  それから,判決後しばらく経ってから不安感が高じてというようなことも当然考えられますので,これは前回ちょっと話題に出たメンタルヘルスケアということで,最高裁の方で24時間対応の専門家の電話相談に応じられるような態勢を組んでおります。  また,その連絡先のカードを渡しますが,これを紛失したような場合には,東京地裁であれば裁判員調整官という役職がありますけれども,彼のところに24時間いつでも電話をかけてきていただければ,メンタルヘルスケアにつなぐなり,対応できることは相談に乗りますという態勢は組んでおります。  ただ,それで十分かと言われると,なかなかそうではないと思いますので,いろいろ議論しているところです。 ○土屋委員 具体的な相談件数などが分かりますか。 ○角田委員 これは最高裁の方で対応していることですので,私は数字を正確に把握しているわけではありませんけれども,やはり事例はあるようです。  東京地裁では,夜中の時間帯に調整官のところに電話がかかってきたというような事例も,まれですけれどもあるようです。 ○四宮委員 裁判所と検察庁について教えていただきたいと思います。裁判所のメンタルヘルスケアの点ですけれども,報道によると大変利用する方が少ないとのことでした。実際に裁判員をお務めになった方に伺うと,一人でそこに電話したり伺ったりするのが,なかなか大変だという声もあるようにも聞いておりますが,何かそういう点での改善等の取組が今予定があるのかというのが1点です。  それから,弁護士会などでは経験交流集会というようなことをやっていて,また,裁判所の方でも,確か東京,大阪,名古屋でそれぞれ裁判員裁判を御担当になった裁判官の方々の意見交換会があったと。それはメディアにも公開されたということを伺っておりますが,そういった運営等のノウハウなどについての意見交換は,その後いかがでしょうかということです。  それから,三番目は,先ほど御紹介いただいたケースで,大変私が関心を持ったのは,間接事実の積み上げで判断しなければならないケースで,否認している事実が二つあって,自白している事実が一つあるというケースの御紹介を頂きました。 前半で否認ケースについて審理して,そこで中間的な意見を当事者,つまり検察官と弁護人が述べて,その後自白事件の審理に入ったということでした。私はこういうやり方は非常にいいことだと個人的には考えているのですけれども,このケースで,中間的な当事者の意見後にいわゆる中間評議,争いのある事件の事実関係についての評議に裁判官と裁判員が入ったのかどうか。あるいは評議はまとめて後で行われたのかなど,もし分かれば教えていただきたいというのが3点目です。  それから,検察庁については,被害者の保護の関係で,裁判員候補者の中に知っている人がいないかということで不選任請求をなさっているということだったのですが,具体的にはどのように被害者の方にその情報を見ていただいているのかということと,本当に知り合いだということになると,不公平な裁判をするおそれがあるということで,裁判所の職権での不選任というようなことは,実例があるのかどうかを教えてください。たくさんで申し訳ございません。 ○角田委員 それでは,簡潔に結論だけお答えしていきますけれども,まず,メンタル面のケアの関係です。これは,基本的には裁判員と合議体を組む裁判官の役割が非常に大きいと思います。要するに,例えば1週間の事件であれば1週間ずっと一緒に過ごすわけで,その中で9人で判断することなので,自分一人だけで抱え込む問題ではないと声をかけるとか,あるいは,例えばショッキングな写真の証拠等で体調が悪くなった場合は,無理しないで補充裁判員もいるからと声をかけるというようなことで,これは私が担当裁判官をやればこうするという例ですけれども,多分そのようにずっとケアしていると思うのです。  その中で,最高裁のメンタルヘルスケアへの電話なども,遠慮なく使いやすい形で使ってくださいと説明するということで対応しているのではないかと思います。  それから,意見交換会の関係ですけれども,おっしゃるとおり裁判官を対象とした意見交換会というのをやりました。この情報は全国裁判所に全て流されて,共通の情報になっているわけです。これを利用していると思います。  それから,最後に,否認事件についてのまず中間的な意見を伺ったという事件についてですが,やはり中間的な意見を聞いた後で,その罪体に対する評議をやっているはずです。直接確かめていませんけれども,これはやっていると思います。というのは,全ての事件がそうですけれども,中間評議というか,その時点その時点の心証を断続的に議論しながら積み重ねていくわけなので,結論までは出さないと思いますけれども,恐らく議論はしていると思います。 ○白木委員 被害者の方に事前に裁判所から頂いた裁判員候補者の名前のリストを見ていただいて,氏名で確認していただいています。  職権による不選任があったかどうかというのは,実例として承知はしていませんが,もとより不公平な裁判をするおそれがあると認められれば,裁判所も職権で不選任にすることもあると思います。 ○四宮委員 ありがとうございました。 ○大久保委員 角田委員に御質問ですけれども,参加制度を利用した裁判員制度に参加する被害者の方についてですが,裁判員の方にはきちっとした精神的なケア制度ができておりますけれども,被害者の方も同等以上のいろいろなダメージを受けておりますので,何か参加制度を利用した被害者の方へのケア態勢というものを考えていらっしゃるのかどうなのかということが一つと,前田委員にですが,先ほど私選の弁護士が被害者参加弁護士の場合は多いとおっしゃいましたけれども,これは公的に弁護士を付けるときには資力要件が厳し過ぎるものですから付けられないという現状もあるので,そのあたりのところも御理解を頂きたいと思いました。  そして,もう一つは,被害者参加制度を使う方に付いた弁護士さんですけれども,今,被害者の方たちの間で問題になっているのが,弁護士さんが前面に出てしまって,被害者の意向をあまり理解することなくやってしまうということで,被害者の方自身が参加制度を利用して,自分もそれなりの役割を刑事裁判の中で果たすことができたという実感を持てない場合が多いわけなのです。被害者が回復するときには,その実感を持てるということがとても大切なことで,そのあたりの目的がなかなか理解されていないということもあります。研修とか何かで皆さんにお伝えするようなときがありましたら,そういうあたりのところも是非お願いしたいと思いました。  それから,白木委員の方から,性被害の方には被害者対応としてしっかり対応しているというお話はありましたけれども,もちろん性被害もそうですけれども,他の犯罪被害者遺族あたりにもそのような配慮が必要だということが抜けているように感じることがよくありますので,被害者は皆同じだというあたりの視点も是非持ち続けて,対応を考えていっていただきたいと思いました。 ○井上座長 御質問は一番最初の1点ですね。角田委員,分かる範囲でお願いします。 ○角田委員 裁判員裁判について,被害者参加制度を利用して参加してこられるというケースは,東京地裁でもかなりあります。そして,被害者あるいは被害者参加人専用の待合室は,東京地裁では準備されております。検察官からの申出,あるいはその他の情報があればこれを利用していただきます。先般の極刑求刑のあった事件の被害者遺族についても,この部屋を利用していただいております。  それから,訴訟指揮の中で,例えば優先傍聴席の配置について,被告人側と被害者が別の場所になるようにとか,そういった形で裁判所としてできる限りのことはやるようにはしております。ただ,基本的に被害者保護の問題は検察官の方で基本的には対応していただくという仕組みになっておりますし,そもそも裁判所は中立的な判断者の立場にありますから,被害者側のいわば肩を持つように外から見えることはできないという限界もあるという点はやはり理解していただく必要があるかなと思います。ただ,裁判所としてやるべきこと,あるいはできることについては,いろいろ工夫はしているということであります。 ○大久保委員 どうもありがとうございました。 ○山根委員 裁判員経験者の方が後で連絡を取り合って交流するということをよく聞きますけれども,これは必ず必要ではないかもしれないですけれども,心のケアにもつながると思うし,制度の改善とか社会貢献みたいなことにもつながるかなということも思います。  こういった集まりは広がっているのでしょうか。それから,集まるときに何か法曹の方もタッチするのかなということです。例えば,終わってから連絡を取りたいのだけれども連絡先を教えてほしいというような問い合わせがあった場合などには,どういうふうに対応するのかなと思って質問しました。 ○角田委員 結局,裁判員,あるいは裁判員候補者の名簿の管理の問題になるわけですけれども,裁判員法の101条というのがありまして,名簿の目的外使用が厳格に禁じられています。裁判員としての役割が終わった後でも,御本人の同意があれば別ですけれども,そうでない場合には駄目だという仕切りになっておりますので,基本的に裁判員経験者の方が集まりたいのでということで照会が来ても,それはお答えしないということで対応することになると思います。 ○山根委員 そういう交流会は広がっているというか,増えているのでしょうか。 ○角田委員 何日も一緒にやるわけですから,名刺交換をしたりして,御本人たちが任意にやられるということは恐らくあるだろうと思いますけれども,それは,裁判所は関与できないし,していませんので,詳細は把握しておりません。 ○酒巻委員 今のお二人の問答に関連して,東京地裁,大阪地裁等で裁判員を経験された方の意見交換会が行われ,これはマスコミにも公開されたという報道を見ました。  そこで,今言及された裁判員法101条との関係ですけれども,どういうふうな形でそのような御経験の方に来ていただいたか,法律との関係でどういうふうに整理されているかというのを御説明ください。 ○角田委員 東京地裁では,10月12日に裁判員経験者の意見交換会を実施いたしました。このときにも,今の101条との関係はかなり意識して議論しましたけれども,名簿を使うわけにはいかないだろうということで,将来の,つまりこれからやろうと決めた時点より先に行われる裁判員裁判の裁判員の方に,個別に裁判長の方から声をかけていただいて,同意のいただける方の中から抽選で選ぶという方式にさせていただきました。  つまり,過去の名簿を使ってということが許されないと考えましたので,それを使わないで,これから先のものということで,実際にそれから行われる件について,個別に裁判長を通じてお願いして,了解いただけた,つまり同意をいただけた方だけの範囲内で抽選をするという形にしました。 ○大久保委員 先ほど角田委員の方から,被害者保護は検察で対応というお話が出ましたけれども,それでは検察の白木委員にお尋ねしたいのですけれども,先ほど説明で,ビデオリンクとか,その他様々に被害者保護ということで本当に努力してくださっていることはとてもよく分かっています。でも,もう一歩踏み込んで,この裁判員裁判で参加した被害者の方に,裁判員の方と同じような精神的なケアとして,その後の電話相談,面接相談,例えば時には治療が必要な方もたくさんいらっしゃいますので,そういうあたりのところまで,是非視野を広げて実践につなげていただけないものでしょうか。 ○白木委員 恐らく,法曹三者が被害者参加人に対してそれぞれの立場で援助するのだと,そういうことで被害者参加制度ができたのだと理解しておりますけれども,検察におきましては,御存知のとおり,被害者支援員という者がおりまして,いろいろ相談に乗っていると思います。  直接医療まで提供するという設備も人員もございませんけれども,被害者支援員の方からいろいろなことを紹介するということもあるのだろうと思います。限られた人員ではございますけれども,特に近年は,被害者の方々のためのサポートというのを検察においても組織を挙げてできる限りやっていこうというふうになってきております。 ○大久保委員 時代も変わりましたし,法律も変わってきたものですから,支援員の方だけでは,やはり足りない部分がかなり多くなってきていると思いますので,被害者の方が回復できるような制度がどのようにあればいいのかというあたり,是非検討して実践につなげていただけるようにお願いいたします。 ○土屋委員 実際の扱いはどうなっているのかというのを裁判所の方で教えていただきたいのですが,法廷を傍聴していますと ,裁判員が一生懸命メモをとったり,配布された資料に目を通したり,いろいろやっているのですけれども,裁判員が取ったメモなどの扱いはどうなっているのですか。確か持ち帰りできないのですね。 ○角田委員 事件の起訴状ですとか必要なものを初日にお渡ししてありますけれども,多分4日程度であれば,家に帰られる際は裁判所に置いていってもらって結構ですといって,基本的には持っていかないことにしていると思います。ただ,例えばメモなどは,どうしてもお持ち帰りになりたいということであれば,それは多分止めないと思います。 最後,判決宣告後は,全て回収しているはずです。 ○井上座長 それでは,そろそろ後の御予定がある委員もおられますので,先に進めさせていただいて,また,その中で御意見等を伺っていきたいと思います。  前回の検討会後,皆さんお忙しい中お繰り合わせいただいて,実際の裁判員裁判を傍聴していただいていると理解しております。御覧になっての感想や御意見など,是非お伺いしたいと思います。  あいうえお順で大久保委員からお願いできますか。 ○大久保委員 私が傍聴させていただきました二つの事件とも,社会の既存制度を利用したり相談機関に早めに相談に行っていれば,未然に防ぐことができたのではないかということをまず思いました。  それと,法曹三者の方に対する感想ですが,実は,先ほどの統計と同じように,私自身も感じました。裁判官の方は公判全体への目配り,気配りが行き届いていて,裁判員の方に質問してもらうために,評議の時間だけではなくて休憩時間も適宜適切に取っていました。そのため,傍聴していました私にも,疲れたと思うときには休憩時間が入りましたので,その後,また集中して傍聴するということができました。 また,時々検察官や弁護士の方に対して注意したり,質問したりするという,その内容も,市民感覚に大変通じているということを感じました。  検察官の方は,資料やビデオ機器等を最大限利用して,とても分かりやすく主張,立証している上に,数人で役割分担をしていらっしゃいましたので,めり張りも効いてとても分かりやすかったです。  弁護士さんは,分かりやすいというのがアンケートの統計でも低かったのと同じように,私は,地方の地裁の方も見ましたが,何か従来の手法ではないかと思われるような,おかしいという主張を延々と続ける姿勢に,裁判員も困惑してうんざりしている様子が伝わってくる場面が何回かありました。 そして,機器の利用ですとか,配布資料の工夫,弁護士さん同士の連携,そういうものがまだ課題なのではないかということを感じました。  裁判員の方たちは,初めのころはただ前を向いて座っているだけだった方も,時間の経過とともに,メモを取ったり質問するという方が増えていらっしゃいました。真剣な姿勢と緊張感はとても伝わってきましたが,二つの裁判とも,皆さんどちらかというと,とにかく無表情でじっと座っているということは,余り感情を出さないようにということを事前教育として受けているのかしらというようなことも少し思いました。  メディアの方ですけれども,いつもメディアの方がたくさん傍聴席を確保していますけれども,あるとき8人のメディアの方がいました。そのうち4人の方は熟睡していました。1人はこっくり,こっくりという状態で,本当に法廷にそぐわないということを感じました。  裁判員裁判全体に対してですけれども,刑事裁判では,やはり被告人が主役という印象がとても強くて,日の当たる場所に立っている被告人の更生とか社会復帰を,裁判官や裁判員がみんなで応援しているという印象ばかりをとても強く感じてしまいました。また,裁判員経験者の方のメディアのアンケート調査などでも,被告人に更生してほしいという同情する内容が圧倒的に多い反面,被害者への配慮の言葉がとても少ないということが,以前から気になっています。  それから,被告人,被害者双方のプライバシーの保護ですけれども,今回の事件は二つとも家族も寛大な処分を望んで,被告人も反省しているという事件でしたけれども,それでも,公判手続の中では,家族関係ですとか日常生活状況の詳細についての説明もなされました。これは裁判員に理解してもらうためには必要だとも思いつつ,ここまで公にプライバシーがさらされてしまうと,その後の生活に支障が出ないのかしらと,特に地方の場合は,二次被害を受けて,そこに住み続けることができなくなるのではないかということが気になりました。  裁判所の環境の整備ということですけれども,家族間事件であったということで,被害者側,被告人側の待合室を別にしなければいけないというような状況ではありませんでしたが,私は,一般傍聴者としてそこに座っていたのですけれども,評議の時間とかお昼休みにちょっと自分が休もうと思って待合室を利用したとき,そこでは,事件の当事者の人たちがプライバシーに関すること,これからのことをこそこそと話をしているわけです。そうすると,狭い待合室では,それが全部聞こえてしまうので,傍聴人である私は,とてもそこには座っていることができなくて,結局廊下をうろうろとしているしかなかったのです。  この経験からも,裁判というものがもっともっと市民の間に浸透していくときには,一般の傍聴者であっても,安心して座って休憩ができるような場所の確保ですとか工夫が必要なのではないかと思いました。  それから,今回は確かに結果は重大ではあったのですけれども,家庭内トラブルの延長上で起きたというような事件であっても,このように裁判員裁判となって,多額の税金が使われるということに正直,ちょっと疑問を感じた部分もありました。  ただ,一方では,こういう身近なことだからこそ,裁判員裁判で多くの人に知ってもらうということが次の事件を未然に防ぐ意義があるのかとも思いますし,そのあたり,どのように理解すればいいのかということを,私自身が自分の中で結論を出すことができなかったです。  最後に,裁判員裁判での判決についてですけれども,先ほどから死刑求刑があって無期の判決が出たという事件が皆さんの口からも出ましたけれども,被害者遺族の立場になりますと,死刑求刑であって無期が出たとしても,それは職業裁判官が出したということであれば,裁判官が出したから,日本の国として出した裁判の判決なのだからということを,被害者は自分に言い聞かせて,納得はできなくても,致し方がないというような諦めの心情にも何とかなれるのですけれども,これが市民の視点を入れた総意としての結果が無期だったということになってしまいますと,被害者は周囲の人からも理解してもらえなかったということで,裁判員裁判が更に被害者を深く傷付けてしまうという結果にもつながるということでもありますので,これは,裁判所は検察のお仕事だとおっしゃいましたけれども,やはり被害者へのケアも必要なのではないでしょうかということが,二つの事件を通して感じたことです。 ○井上座長 ありがとうございました。  それでは,次に酒巻委員からお願いしたいと思います。 ○酒巻委員 私が傍聴させていただきましたのは,事案としては比較的単純な,被害者が1名の傷害致死事件で,審理と判決合わせて3日間だったと思います。  犯罪事実の主要部分,それから致死の経過についても争いはなく,犯行に至る経緯に若干の言い分の違いがあるという,つまり,私のような専門家から言いますと,法律的には比較的単純な,今後問題になる複雑困難事件とは大分性質の違う事件ではありました。  弁護人と検察官の準備は,いずれも裁判員に分かりやすい公判審理のために,一生懸命準備をされたという,そういう努力が非常にうかがわれました。もとより被害者がお亡くなりになっている重大事件であって,単純というのは大変失礼ですけれども,刑事事件としては審理にそれほど困難が感じられない事件でしたが,かつての私が傍聴した刑事裁判と見比べますと,両当事者の大変な準備,その努力が非常によく分かりました。  弁護人も,この事件では量刑に関わる事実の部分について丁寧に立証されて,さらに,それに即した説得的な弁論をされていましたし,検察官も基本的に同じで,特に検察官の準備の徹底と詳密さには,いろいろな意味で感じるところがありました。  このような比較的単純な事件についても,検察官が徹底した準備と,プレゼンテーションの練習もされたということが明らかにうかがわれまして,一つの私の印象は,こういう単純な事件でもこれだけやるということになると,複雑困難事件,例えば先ほど角田委員がおっしゃったような間接事実積み上げによるような事件であると,一層大変なことになるなと思いました。  しかし,他方で,これはプロフェッショナルたる法律家の仕事なのだから,こういう準備をするのは当たり前であると,そういう見方もできるだろうという印象を持ちました。  もう一つは,検察官が立派に準備されている結果として,被告人,弁護人の想定される言い分に対する反論の部分も全部織り込んだ冒頭陳述,それから主張,立証,論告になっているのです。これは,まじめに徹底して立派に準備した結果だと思うのですけれども,これだけやられると,やはり弁護人は大変だなと思いました。それに対して言うべきこととして何を言うかという弁護人の仕事は大変だなと。それから,大学の授業でもよくあることですが,徹底して準備し,相手の言い分も全部織り込んだプレゼンをしますと,かえって話が複雑になるのです。精密・網羅的な準備をしているのはよく分かるけれども,普通の人には,話がかえって分かりにくくなるのではないのかという印象も若干持ちました。  私の印象は以上でございます。 ○井上座長 ありがとうございます。  では,残間委員,お願いします。 ○残間委員 私は,2件見せていただいたのですが,一つは,営利誘拐,監禁,強盗致死,覚せい剤取締法違反,窃盗という,これが被害者は1人ですが,被告人が7人いたという事件と,もう1件は,妻による夫の殺害なのですが,病苦の夫妻が無理心中の果てに,夫だけが死んでしまったという殺人の,この2件を傍聴しました。  この検討会が始まる前に,この制度の検討ということは,廃止も入るのですかということを申し上げたのですが,実際に傍聴してみると,この制度は今のところ非常にうまくいっていると思いましたし,大変有意義であると思っています。今のところというのは,これが慣れてきたときにどうなるかということが,少し懸念としてありました。  二つ感じたことがあるのですが,一つは,前者の案件に関してですが,今,You TubeとかツイッターとかICTの世界が非常に進展が目覚ましいですが,この犯罪の根底には,若い人たちのICTの世界でのサクセスストーリーというものが,大きなきっかけとしてありました。つまり,私たち大人が考えている以上に,一瞬にして大金が手に入り,時代の寵児になりやすい世界なのです。被告も被害者もICTの世界で一攫千金を夢みる青年たちで,ICTの世界で起きていることをどの程度この犯罪を裁く側が知っているのかで,方向性が違ってくるように感じました。率直に申せば,法曹関係者はその辺のことをあまり理解していないような気がしました。裁判員の中にはそのことを分かっている若者らしき人がいたのですが,ちょっと違和感を感じているようなふうもありましたので,裁判員が加われば加わるほど,市民感覚が介入されればされるほど,この辺は大きな課題になってくるのではないかなと,一つ思いました。  それから,先ほどからもお話が出ていますが,裁判は,同じステージで,同じ登場人物によって,何日間かずっとそこで展開されるので,不適切な発言かもしれませんが,やはりある種連続ドラマを見ているような気分になってきて,いろいろなものが見えてくるのです。  裁判長も裁判官も裁判員も検察官も弁護士も,どういう価値観で生きているかというのが透けて見えるということです。そのときに着ている服装,それから言動ですね,特に言葉の使い方は裁判を決定づけるものだと実感しました。基本的なことだと思うのですが,見られているということに対する意識ですね,見られているという意識に対して,過剰に反応している部分と,非常に無防備で鈍感な部分というのが感じられました。  裁判員の方は,総じて非常にまじめで,評議も大変丁寧に行われていたと思いましたし,随時,的確な質問をしておりました。  これは裁判官の人に代弁してもらった方がいいのではないかというようなぎりぎりの質問も,勇気を持ってしているというのが感じられて,大変素晴らしい人たちだなと思いました。裁判員の人たちは,多分日々何回かの裁判を通して,自分自身もすごく大きなものに成長していったのだろうなと思いました。 ○井上座長 慣れについては,今度の制度では裁判員は事件ごとにアドホックに毎回変わりますので,何度もやっているよりは緊張感を確保できるのではないかと思います。注意しないといけないのは,むしろ法曹三者や関係者なのかなという気がしますね。   それでは,四宮委員からもお願いします。 ○四宮委員 私が見たのは,むしろ非常に複雑なケースの一部です。殺人で責任能力が完全に争われているケースでした。しかし,その検察官と弁護人の法廷活動は,どちらも大変に素晴らしかったです。経験もある上に,恐らくは大分訓練を重ねたものだったと思います。  特に私が感心したのは,専門家証人の尋問です。精神科医の尋問を検察官,弁護人,それぞれが大変に分かりやすく,ビジュアルエイドも使いながらやっておられた。先ほど来出ているように,裁判員の皆さんの姿勢が非常に真摯で,もともと私は,裁判員の皆さんには真摯に取り組んでいただけると信じていましたし,現にそのとおりですけれども,そうやって法廷活動を分かりやすくやることによって,一層事件の核心をつかんでいただいて,そして,それが法廷での態度,あるいは質問などに反映していることは,傍聴席にいてもよく分かりました。それで複雑困難な事件でも大丈夫だと思った次第です。  もう一つ,この事件で私は全部は見られなかったのですけれども,報道から見たりしているところでも,証人尋問などがスケジュールどおりに,審理が策定された予定どおりに進んでいるということは,裁判員にとってもプラスであろうと思いますし,公判前整理手続等を経ていることもあるので,大きな変動はないのだろうと思います。  ただ,その評議というのがどのくらい予測可能なのかというのが私は分かりません。ですので,スケジュール管理というのは,ある意味ではとても重要なのですけれども,裁判員の皆さんのためにという視点から,ある程度はフレキシブルに,事案に応じて,状況に応じてなさったらどうかなと思っております。  報道によると,何か弁護人の活動について裁判長が時計を示したというふうなことが報道されていたこともありますけれども,スケジュール管理の目的と現実,実際を踏まえて,柔軟な取扱いをしていただけたらどうかなということをちょっと思いました。 ○井上座長 評議時間については,注目されている大きな事件などを見ますと,実質的に審理時間より評議時間の方が,むしろ延べにすると長いような設定をされている例もあって,相当配慮されているという感じがしますし,実際にも,評議で時計を示して時間だから決をとるというようなことはやっていないのではないかと思います。 ○角田委員 制度施行前にかなりの数の模擬裁判を重ねております。全国で500以上やっていると思いますが,その中で,いろいろな類型の事件について評議がどのくらいかかるかというのは,おおよその目安みたいなものは,把握できているのです。  だから,それを踏まえて,多分難事件になってくれば,少し余裕を持った審理計画を立てていると思います。ですから,評議の中で時計を示して発言を止めるということは絶無であろうと思っております。 ○井上座長 では,土屋委員,どうぞ。 ○土屋委員 私は,裁判員裁判の傍聴というのは,今回の傍聴を含めて,東京地裁だけなのですが,全部で4件傍聴しています。この中には,去年8月3日の第1号事件もありまして,傍聴券を私自身が引き当てたものですから,入らせてもらいました。  全体を通じて感じていることは,司法制度改革以前の法廷と比べると,一言で言いますと,まさに隔世の感があるということです。それは分かりやすさというのもそうなのですが,それは何もビジュアルなものが,機械が使われたり,立証方法がいろいろと変わったりということだけでなくて,傍聴席で聞いていてよく分かるようになったということを,非常によく感じます。  今までですと,事前に冒頭陳述書とか,そういうものを読んで法廷に入らないと,法廷の中で何をやっているのか分からないというような場面が結構あったのですが,そういうことが裁判員裁判の傍聴の中では一つもないということで,そういう意味での分かりやすさ,つまり,法廷の中にいる人に,ここで起きていることが全部分かるという,そういう仕組みができているなということを強く感じます。  特に目立つのは,検察官も弁護人も裁判員を説得しようという意気込みというのでしょうか,気負いではないのですけれども,そういうところに非常に意識を集中させてやっているということがよく分かりまして,私は,これは非常に望ましいと思っているのです。  それを受けた裁判長の法廷の運営の仕方も,いわば全体に目配りの効いたものになっている印象を受けました。それは傍聴席を含めて,傍聴している被害者の方たちへの対応も含めて,随分変わったなということを感じます。  それぞれ法曹三者皆さんに対しては感じる部分はあるのですけれども,特に目立つのは,検察官の手際のよさ,先ほど白木委員からいろいろ工夫されているということを説明がありましたけれども,この工夫というのがよく目に付いております。  それに比べると,弁護人の方はいささか立ち遅れというか,法廷弁護技術も含めてこれでいいのかなと思うようなところが幾つかありました。弁護人の場合,普通だったらここで,例えば異議を申し立てたりするだろうなと思うようなところで異議の申立てがなく,それが結構重要なやり取りなのだなと後になって分かってきたりという場面がありました。  もう一つ,弁護人が主張を展開し始めたところで,裁判長から静止を受けて,公判前整理手続でそこには出ていなかった主張であると指摘されて,なぜ公判前整理手続のところで言わなかったのかと叱られている場面もありました。これは非常にまずいことで,こういう準備不足はあってはならないことだろうと,私は思いました。  そういう意味で,弁護人の方は,もう少し研修などをしていただく必要があるなということを感じました。  それから,目立ったのは裁判官の役割意識の変化みたいなものが,物すごく強く感じられたのです。そういう公判前整理手続で出なかった主張が出てきたときに,裁判官がどういうふうに言われたかということが私には印象的だったのですが,先ほど角田委員も言われましたけれども,裁判所は審判者であるということを感じました。今までの裁判だったら,弁護人に助け船を出したり,検察官の主張が足りなければさらに主張させたり,弁護人にも主張させたり,そういうシーンというのはよく見てきたのですけれども,今回は違う。裁判官は審判者であるということを裁判長自身が法廷で言われる,そういう法廷に変わっているのだということを,もっと当事者の方は,つまり検察官も弁護人も,もっと深刻に意識しないといけないだろうということが,私としては非常に印象的な変化です。  それから,傍聴した一つの事件は,外国人が被告人の事件だったので,法廷通訳が入ったのですけれども,中国人の被告人だったのですが,恐らく中国人の被告人などでもよく分かる優秀な通訳がされたのだろうと思います。  ただ,通訳さんは1日中しゃべりっぱなしなのです。2人の通訳さんが交代しながらやっていましたけれども,この負担は大変重いように私には思えたので,これは裁判所の運営の仕方にもよるのでしょうけれども,裁判員がどれだけの時間,集中できるかというだけでなくて,通訳人の集中,疲労に対する配慮みたいなものも,もっと必要かなというふうに思いました。  それから,判決言渡しのときに感じたのですけれども,言渡しをしているときに,裁判長は,三つに区切って通訳をさせていました。これは,非常に私としてはよかったと思うのです。つまり,言渡しを全部終えた後,通訳しろと言って延々とやらせるのは,通訳さんにとっても酷だし,それから,法廷で傍聴している人,被告人にとってもそうです。日本語でしゃべっている内容というのは,被告人には理解がほとんど及ばないという状態なわけです。逆に中国語でしゃべられていると,法廷の傍聴者はほとんど分からない。  そういう時間というのは短い方がいいので,三つに区分してやったというのはいいと思いますが,ただ,もう少し工夫が必要だったかなと思うのです。それはなぜかというと,中国人被告が中国語で通訳されたときに,ぴくんと反応するような場面があったのです。日本語で言い渡されたときには分からないから,何の反応もしなかったのだけれども,中国語で話されたらぴくんと動いたりして,ああ,こういう部分は強く感じたのだなということが,傍聴席からも見てとれました。  そうすると,言渡しも三つに分けるのではなくて,それぞれの論点ごとにというのでしょうか,争点ごとに区切って言い渡すというような言い方をされた方がよかったのではないかなと感じたりしました。  先ほど記者会見の話が出ていました。メディアの関係の話で少ししゃべらせていただきたいのですが,法廷で居眠りしている記者がいるというのは,本当にけしからん話ですが,でも,私は,それはあり得るなというふうに同業者として思ったりもします。  ただ,メディア関係者に言っておかなければいけないのは,裁判員裁判というのは,裁判関係者のやり方だとか考え方だとか,姿勢だとか態度だとかというのが公衆の面前にさらされる。そういうだけではなくて,いわばメディアのやっている内容がさらされているのです。報道内容が正確だったかどうかというのは,裁判員の人から見れば,すぐ分かってしまう。  私が傍聴した記者会見ではないですけれども,本社へ上がってきた地方からの報告によると,ある裁判員の人が,新聞にはこう出ていたけれども,裁判をやってみたら違っていましたよということを記者会見で言ったりもしているのです。メディアも点検を受けるという恐ろしさ,そういう側面もあることを,メディアの方は,もっと真剣に考えなければいけないということを改めて感じさせられました。  それから,先ほど角田委員に質問した内容ですけれども,裁判員が取ったメモですが,これは持ち帰りできるのではないかなと私は前から思っているのです。以前,フランスで参審員の人にインタビューをしたときに,その人は裁判所から許されて,自分が審理した事件のメモを保存して持っていて,そのメモを基にいろいろな話をしてくれました。非常に参考になりました。  守秘義務の関係だとかいろいろあろうかと思うのですが,少なくとも記者会見を聞いている限り,露骨な形での守秘義務違反というのは,裁判員経験者の発言の中からはほとんどありませんし,そういう配慮もしているので,自分が取ったメモの持ち帰りが可能であれば,いろいろな意味で有益な面もあろうかと思いますので,ちょっとお考えいただけたらと思ったものですから,先ほど質問させていただきました。 ○井上座長 ちょっと時間がなくなってまいりましたですけれども,室城委員,いかがですか。 ○室城委員 発言をパスしていただいて結構です。 ○井上座長 分かりました。では,山根委員,お願いします。 ○山根委員 皆さんもおっしゃられていますけれども,本当に裁判員の方々はまじめに自分の果たすべき役割に向き合って,真剣に務めていらして感動しました。  二つ傍聴させていただいたうちの一つは,無理心中を図った殺人事件で,精神鑑定による責任能力というのが争点となっていて,検察側と弁護側の医師との間で判断が分かれていたのですけれども,質問も本当に的を射たもので,皆,大変冷静に役を果たしていらっしゃいました。  ただ,やはり遺体の傷の写真ですとか,凶器となった刃物を間近に見るときは顔をしかめていらして,痛々しく感じました。必要なこととはいっても,やはりきつい作業だろうなと感じました。  そろそろ死刑の判決かということもあったりして,入口やロビーにもたくさんの報道陣が構えているようなこともあって,裁く負担に加えて,激しく注目を集めるという重荷にも耐える必要があるということは,やはり大変だなと思いました。  法曹の方々にとっては日常的なことが,やはり裁判員にとっては特別衝撃的なことで,初めての体験であるということは,制度開始から何年たっても忘れてはならないことだと思っています。  裁判官,検察官,弁護人,皆さんそれぞれ分かりやすい裁判を目指して努力していることは,とてもよく伝わってきました。一部弁護士の方に演出が過剰ではないかなと感じたところもありましたけれども,画面とかボードを使って,ポイントをよく分かりやすく説明して,言葉も分かりやすいもので理解できる裁判でした。  やはり相当の数の模擬裁判を全国で繰り返して,熱心に協議してまとめて進めてきた結果だろうと感じました。  私も模擬裁判に参加したことがありまして,当時,有志で思い付くことを意見として最高裁の方に提出しました。例えばその中身は,呼出状という言い方は好ましくないとか,選任手続において,除外された理由を知る権利もあるのではないか,守秘義務の範囲を具体的に示してほしい,裁判員のプライバシー,身の安全の保護の重視,それから,日頃から市民と裁判官との交流の場も設けるべきではないかといったような内容でした。これらの検証も今後必要かどうかも,個人的には考えていきたいと思っています。  裁判員の方は,作業は相当苦しいとは思うのですけれども,なぜ事件が起きたのか,刑罰とは何か,更生とはどういうことかとか,社会はどう刑を終えた人を受け入れるかとか,いろいろ今まで考えることのなかったことに関心を持って考えるようになるということで,犯罪の抑止とか地域社会への影響などにも,いろいろ期待がされると思っています。  日本の司法制度の仕組みとか抱えている問題などを,いろいろな形で情報提供いただきたいと思っています。死刑制度に関しても,十分な議論が必要だと思います。死刑判決を下すということが,市民にとって過酷過ぎるとなれば,対象とする事件の範囲の見直しも必要となるかなと思っています。  先ほど大久保委員からの発表でもありましたけれども,被害者の側の受け止め方というのも考えて,場合によってはいろいろと判断していくことが必要かなと思いました。  それから,傍聴した裁判では,速記者の方がいるときといないときがありました。証人によっては,声がとても小さかったり,聞き取りにくいこともときどきありましたし,速記録のようなものですぐに証言を確認したい場面もあるのではないかなというふうに感じました。  それから,誰でも参加できる,理解できる制度とするためには,例えば障害のある方の参加について,その程度や特性などを考慮した対応などについて,もっと議論や準備が必要なのではないかと思っています。  保育サービスとかカウンセリングの態勢などは,24時間態勢であったり,各自治体とも連携をしてということを説明いただいていますけれども,より市民が積極的に参加できるように,受入れ態勢を制度化して整備することが必要かなというふうに思っています。 ○井上座長 3点ぐらいコメントをさせていただきますと,1点は,大久保委員が出された,関係者のプライバシーにいろいろ触れ過ぎで詳密過ぎるのではないかという点については,裁判員裁判だからということでは必ずしもなく,被害者の方に限らず,被告人サイドのこともあると思うのですが,従来の日本の刑事裁判が非常に詳密な内容を公判廷で開示するという傾向があった。そういうやり方をまだ引き継いでいるところもあると思うのですね。もちろん事件の立証に必要なときや量刑に影響する限りでは明らかにしないといけないわけですけれども,一般にその範囲を超えて詳細な情報が示されるという傾向にあったと思います。その辺は,この機会に事件の立証に必要な範囲,要点に絞ってもらうということが必要で, だんだんそうはなってきていると思うのですが,まだ徹底されていないのかもしれないですね。  もう一つ,これも大久保委員が言われましたが,一つ一つの事件は被告人にとって,また被害者の方にとっても特別な意味を持っているのですけれども,一般的に言うと,この程度の事件でこれだけの労力をかけるのかという意見もあろうかとは思います。  私が見たのも,60代後半の被告人が90代のお母さんの介護をしていて,疲れて殺してしまったという事件でしたが,被告人は犯行を完全に認め,反省もしていましたので,容易そうに見えたのですけれども,実は量刑が非常に難しい。執行猶予を付けるかどうか限界線の事案のようでしたので。 その事件を傍聴していまして,こういう事件こそ一般の国民の方々に判断していただくということが非常に重要だと私は思いました。20代ぐらいの方から60ぐらいの方まで,裁判員は幅広かったのですけれども,こういう介護に伴う問題は身近な事柄なのですね。それぞれの経験や思いを踏まえてどう判断されるのか注目されました。結果としては,非常に厳しい判決だったのですけれども,それは事件の中身や被告人のことを見てそう判断されたので,そのような意味でまさに裁判員裁判にふさわしい事件だったのではないかと思っています。  先ほどお話が出ました死刑の問題なども,そういうふうに一人一人がむしろ身近な問題として考えていただき,悩みながらみんなで意見を交換して,ある判断を出すということが非常に重要なのではないかと思います。  法廷での両当事者のプレゼンテーションの仕方等については皆さんと全く同感で,裁判員裁判が始まる前と比べますと隔世の感があるというか,本当に大きく変わったと思います。これが裁判員裁判以外の一般事件の裁判にもどういう影響を与えていくのかも,関心のあるところです。  また,私が傍聴した事件は,被告人が犯行を全面的に認めていたこともあり,検察官立証は全て書証で,しかも短い時間でやったのですけれども,短い時間とはいえ,やはり1時間半以上かかる。これは,聞いている方からすると集中力を維持するのが結構つらいのではないかと思います。要点だけに絞ってはいるのですけれども,朗読だけですので,そこのところも一人,二人,人証を入れ,その証人に語らせるなどして,もう少しめり張りを付けるというような工夫もあっていいのではないかなと感じました。  全体としては,証人尋問なども短い間隔で小休止を入れて,裁判員の方々もリフレッシュして臨むことができるよう配慮されていましたし,また,質問しやすい雰囲気を作っておられ,弁護人も非常に見事にやっておられたので,いい印象を持ちました。  いろいろな方の御感想とか記者会見とか,あるいは数字で見るのと大きなそごはないという印象でした。  他の方も,御意見等ございましたら,お願いします。 ○角田委員 御意見を一当たりお伺いしていて,被害者への配慮の問題とか,それから,裁判員が作成したメモの取扱いの問題とか,あるいは裁判官の役割意識の変化の問題とか,本当はある程度お答えした方がいいような問題提起もあったわけですけれども,ただ,現時点でこうですとお答えできるような状況でもありません。  戦前の一時期を除くと,裁判という国家行為の一番中枢の部分に市民が関与するというのは,日本人にとって初めての経験で,それは裁判所にとってもそうなのです。  結局,これが問題だなということは,実は今のような問題を含めて無数にあるわけですけれども,これについて,一つ一つ正面から裁判所の内部でも実例を踏まえて議論して,それで方向性を出していくということになるのではないかと思います。  というのは,この類の問題というのは,従前であれば裁判所の内部で議論して,方向性はこうだということを決めると,大体それで動かないでずっと行けたわけですけれども,裁判員制度が始まってからの課題,問題点というのは,議論して方向性を一応こちらではないかというのを出しても,しばらくたつと全然別の事例が出てきたり,別の観点が出てきたりして,やはり少し方向が違うかなというような議論になる場合も少なくないので,そういう意味では,まだ始まって1年余りということですので,これから徐々に確実なものを積み重ねて,そうなってくれば正面からお答えできるということになるのではないかと,こういうふうに思います。 ○前田委員 土屋委員のおっしゃったメモですけれども,真っ白い紙にお書きになる方ももちろんいらっしゃるのですけれども,当事者が提出した冒頭陳述メモですとか,あるいは尋問事項のメモですとか,そういうものに書いておられる方がいらっしゃると聞くので,そういう当事者が提出したものを裁判員の方がお持ち帰りになるということはどうなのかという問題はあると思っています。 ○井上座長 よろしいでしょうか。今後もまた機会を見つけて裁判所にお運びいただき,傍聴等をしていただければと思います。  次回の検討会では,今後の検討会の議論の進め方等について,皆さんから御意見を伺いたいと考えております。  それでは,議事はこれまでとしたいと思います。  最後に,事務当局から次回の予定の確認をお願いしたいと思います。 ○西山参事官 次回ですが,委員の皆様の日程調整をさせていただきました結果,来年3月1日火曜日午後1時15分からとさせていただきたく存じます。場所等は追って御案内申し上げます。 ○井上座長 それでは,第4回の検討会をこれで終了させていただきます。  どうもありがとうございました。