薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律案要綱

第一 趣旨

   この法律は、薬物使用等の罪を犯した者が再び犯罪をすることを防ぐため、刑事施設における処遇に引き続き社会内における処遇を実施することにより規制薬物等に対する依存を改善することが有用であることに鑑み、薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関し、その言渡しをすることができる者の範囲及び猶予の期間中の保護観察その他の事項について、刑法(明治四十年法律第四十五号)の特則を定めるものとすること。(第一条関係)

第二 定義

 一 「規制薬物等」とは、大麻取締法(昭和二十三年法律第百二十四号)に規定する大麻、毒物及び劇物取締法(昭和二十五年法律第三百三号)第三条の三に規定する興奮、幻覚又は麻酔の作用を有する毒物及び劇物(これらを含有する物を含む。)であって同条の政令で定めるもの、覚せい剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)に規定する覚せい剤、麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)に規定する麻薬並びにへん法(昭和二十九年法律第七十一号)に規定するへん及びけしがらをいうものとすること。(第二条第一項関係)

 二 「薬物使用等の罪」とは、次に掲げる罪をいうものとすること。(第二条第二項関係)

() 刑法第百三十九条第一項若しくは第百四十条(へん煙の所持に係る部分に限る。)の罪又はこれらの罪の未遂罪

() 大麻取締法第二十四条の二第一項(所持に係る部分に限る。)の罪又はその未遂罪

 () 毒物及び劇物取締法第二十四条の三の罪

 () 覚せい剤取締法第四十一条の二第一項(所持に係る部分に限る。)、第四十一条の三第一項第一号若しくは第二号(施用に係る部分に限る。)若しくは第四十一条の四第一項第三号若しくは第五号の罪又はこれらの罪の未遂罪

() 麻薬及び向精神薬取締法第六十四条の二第一項(所持に係る部分に限る。)、第六十四条の三第一項(施用又は施用を受けたことに係る部分に限る。)、第六十六条第一項(所持に係る部分に限る。)、第六十六条の二第一項(施用又は施用を受けたことに係る部分に限る。)の罪又はこれらの罪の未遂罪

() へん法第五十二条第一項(所持に係る部分に限る。)若しくは第五十二条の二第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪

第三 刑の一部の執行猶予の特則

薬物使用等の罪を犯した者が、その罪又はその罪及び他の罪について三年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合において、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、刑事施設における処遇に引き続き社会内においても規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときは、一年以上五年以下の期間、その刑の一部の執行を猶予することができるものとすること。(第三条関係)

第四 刑の一部の執行猶予中の保護観察の特則

   第三の者に刑の一部の執行猶予の言渡しをするときは、猶予の期間中保護観察に付するものとすること。(第四条第一項関係)

第五 その他所要の規定の整備を行うこと。

第六 附則

 一 この法律は、刑法等の一部を改正する法律(平成二十三年法律第   号)の施行の日から施行するものとすること。(附則第一条関係)

 二 この法律の施行に関し必要な経過措置を定めること。(附則第二条関係)