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刑事事件の動向

 我が国の犯罪情勢については,刑法犯の認知件数が平成15年以降減少傾向にありますが,凶悪重大事犯や生活関係事犯は後を絶たず,薬物事犯や暴力団等による組織犯罪事犯等も深刻な状況にあり,また,悪質な経済・汚職事犯の摘発も相次いでいます。さらに,犯罪の国際化の傾向も進んでおり,特に注意すべき傾向として次の事項が挙げられます。

凶悪重大事犯
    殺人事件等の起訴は,平成17年以降おおむね減少傾向にありますが,依然として高い水準で推移しております。近年も多数の通行人等に対する無差別殺傷事件やパチンコ店における現住建造物等放火・殺人事件等,社会を震撼させる事件が次々と発生していますが,このような事件の発生は,国民の治安に対する不安を増大させる大きな要因の一つであると考えられます。
    平成21年5月に始まった裁判員制度においては,凶悪重大事犯がその対象とされているところ,検察庁では,裁判員の方々に分かりやすい立証活動を心掛け,裁判の中で真相を明らかにし,適正な量刑が実現されることを目指し,国民からの期待にこたえられるよう努めています。

生活関係事犯
    近年,食品の表示に関する偽装関係の事件のほか,ヤミ金融事件,リフォーム詐欺等の悪徳商法事件,振り込め詐欺等組織的に不特定多数の者を標的とする事件が相次いでおり,大きな社会問題となっています。
    検察庁では,関係諸機関とも連携して犯罪主体である組織の全容を明らかにするなど事案の解明に努めるとともに,犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律等の法令を適用して,犯人からはく奪した財産によって被害回復の手続を進めるなど,被害者の救済にも積極的に取り組んでいます。

薬物事犯
  薬物事犯の現況は,近隣諸国からの薬物大量密輸入事犯等が相次いで発生する中で,覚せい剤事犯の件数が高水準で推移しているほか,青少年については,覚せい剤のみならず,大麻や,MDMA等の合成麻薬が乱用されている状況がうかがわれます。政府は,「第三次薬物乱用防止五か年戦略」を策定して薬物乱用の根絶に全力で取り組んでいますが,なおも深刻な状況が継続しています。また,薬物犯罪組織の壊滅を図るため,検察庁では,関係機関と連携し,様々な捜査手法を活用するなどして徹底した捜査・検挙を行い,厳正な科刑の実現と薬物犯罪収益のはく奪に努めています。

暴力団等による組織犯罪事犯
  暴力団等による組織犯罪については,けん銃等を使用し,一般市民をも巻き込む殺傷事犯を敢行するなど,社会の安全に重大な脅威を与えているばかりか,覚せい剤等の密輸入・密売,ヤミ金融,振り込め詐欺等の犯罪により不正な資金を獲得し,その資金を使って組織の維持を図っているという状況にあります。検察庁では,この種事犯の撲滅のため,関係機関と連携・協力しつつ,様々な捜査手法を活用するなどして,迅速・確実な犯人の検挙と厳正な科刑の実現を図るとともに,これらの組織が得た資金のはく奪にも努めています。

悪質な経済事犯や汚職事犯
    近年,脱税事犯においては,社会・経済状況を反映し,国際取引に絡む事案,金融・証券に関連する事案が多数発生し,そのほ脱の手段・方法についても悪質・巧妙化しています。また,経済活動に関係する事件としては,金融商品取引法違反等市場のルールに違反する事件のほか,競売入札妨害事件や談合事件も多数発生し,それに関連した汚職事件も後を絶ちません。
  検察庁では,公正かつ健全な経済秩序を維持し,税負担の公平に対する納税者の信頼を確保するため,関係諸機関とも緊密に連携しつつ,この種事犯に対する厳正な捜査・処理に努めています。
   
外国人関係事犯
  来日外国人による犯罪は,依然として高水準で推移しており,外国人集団による窃盗事件など,組織化の傾向も顕著で,社会問題にもなっています。このような外国人関係事犯については,悪質事犯に対し厳正に対処するとともに,有能な通訳人の確保等に配慮して,適正な捜査に努めています。

犯罪の国際化
  近年,国境を越えた人や物の移動がますます多くなるに伴い,外国にある法人等を利用した脱税事件や,収益を外国に隠した組織的なヤミ金融の事件が発生するなど,犯罪の国際化が進行しています。
  検察庁では,個別の事件において,外国に所在する証拠を収集し,外国に逃亡した犯罪人の引渡しを求めるなど,積極的に外国の捜査機関と協力して国際化した犯罪への対応に取り組むなど様々な施策を行っています。