検察の在り方検討会議 第2回会議 議事録 第1 日 時  平成22年11月25日(木) 自 午後1時32分                        至 午後4時55分 第2 場 所  20階 大会議室 第3 議 題    1 議事の公表等の在り方について  2 検察制度,事件概要等の説明 3 今後の検討事項等についての意見交換 4 その他 第4 出席委員等 千葉座長,石田委員,井上委員,江川委員,郷原委員,後藤委員,          佐藤委員,高橋委員,但木委員,龍岡委員,原田委員,宮崎委員,          諸石委員,吉永委員 第5 その他の出席者 小川法務副大臣,黒岩法務大臣政務官,事務局(神,土井,黒川) 第6 説明者 甲斐法務省大臣官房審議官 第7 議 事 ○千葉座長 それでは,予定の時刻を若干過ぎておりますけれども,検察の在り方検討会議の第2回会合を開会させていただきたいと存じます。   本日も御多用の中,御出席をいただきまして,誠にありがとうございます。   本日は,嶌委員が所用により御欠席になっておられます。また,事務局の神先生は,所用により後ほど遅れてお見えになりますので,御承知おきをいただければと思います。   それでは,冒頭に小川法務副大臣から御挨拶がございますので,よろしくお願いいたします。 ○小川法務副大臣 副大臣の小川敏夫でございます。会議への御出席,御参加,本当にありがとうございます。去る22日,法務大臣の交代がございまして,皆様に御心配をお掛けいたしましたことを深くおわび申し上げます。また,本来であれば,仙谷法務大臣がこの場に出席して皆様に挨拶を申し上げるところでございますが,国会の都合上出席できませんので,私から挨拶をさせていただきます。   この検討会議は,柳田前大臣の提案により設けられたものでございますが,もとより,前大臣が個人としてお願いしていたものではなく,法務省の方針として開催しているものでございます。この度大阪地検の問題等によって明らかになりました検察が抱える問題に対して,しっかりと向き合い,国民の信頼を得られる検察として立て直さなくてはいけない,これは政府挙げての使命でございます。そして,この検討会議に対する国民及び政府の期待もまた大きなものでございます。   したがいまして,この検討会議は,今後も当初の予定どおり進めていただき,国民の皆様の期待に応えられるような検察の在り方を是非議論していただきたい,でき得れば本年度末までに結論を出していただきたい,このような気持ちでございます。   仙谷法務大臣も是非よろしくお願いしたいという皆様への感謝の言葉を述べておられます。このことを報告させていただきまして,私からの皆様への挨拶に代えさせていただきます。よろしくお願いいたします。 ○千葉座長 ありがとうございました。   本日は,前回御都合により御欠席でございました原田委員に御出席をいただいておりますので,恐縮でございますが,自己紹介をお願い申し上げます。 ○原田委員 今御紹介にあずかりました原田国男と申します。前回よんどころのない事情から出席できませず,大変申し訳ないことをいたしました。私は,現在慶応義塾大学の法科大学院の客員教授として,刑事法を担当しております。裁判官としては40年余り,ほとんど刑事裁判官として過ごしてまいりました。ただ,その間の6年間,法務省の刑事局付として勤務し,刑法の全面改正に関わりました。今回の大変な出来事で,私自身も大変ショックを受けておりますけれども,何とか検察が立ち直るといいますか,再建されるように少しでもお役に立てれば有り難いと思っております。   よろしくお願いいたします。 ○千葉座長 ありがとうございました。   それでは続きまして,本日も配布資料がございますので,その確認をさせていただきます。   事務局から説明をお願いいたします。 ○事務局(黒川) 本日皆様のお手元にお配りしております資料は,各委員の方々から寄せられた資料が5点,役所からの資料が18点ございます。委員の方々からの資料は,本日御欠席の嶌委員を始めとして,石田委員,江川委員,後藤委員,宮崎委員から,それぞれ本日の議論の中心となります検討課題に関するペーパーが寄せられておりますので,御確認ください。   続いて,役所の資料は,赤いインデックス付きでまとめられているもの18点でございます。資料1は本日の議事次第,資料2から資料15までは,本日の法務当局からの御説明の際に用いる資料でございます。資料16は委員から御要望いただいておりました,この検討会議の検討事項について,国会の審議で取り上げられました主なものをまとめた資料でございます。また,資料17,18についても委員の御要望でございますが,法務省が本年6月に公表しました取調べの可視化に関する中間取りまとめの報告書及びそのうちの今後の検討方針に関する部分を中心とした概要版でございます。資料16から18は今後の御議論の参考としていただきたいと思います。   なお,資料16の国会審議で取り上げられました資料については,昨日までに審議録が公表されたものについてのみ取りまとめたものでございます。   以上です。 ○千葉座長 皆様,漏れはございませんでしょうか,御確認いただければと思います。   それでは,議事に移りたいと思いますが,その前に,議事進行に関しましてお願いがございます。この検討会議は,多くの先生方に参加をいただいているところでございますが,時間の制約がございますので,なるべくそれぞれの皆さんに御発言をいただきたいと,こういうことから一回一回の御発言につきましては,簡潔にお取りまとめをいただきながら御発言をいただければ幸いに存じます。これは,それぞれの皆様の御意見をできるだけ出していただくという趣旨でございます。これは余り考えておりませんけれども,どうしてもというときは,何分以内でというようなこともお願いをすることがあるかもしれませんが,そこはどうぞ御理解をいただきたいと思っております。   また,発言につきましては,挙手をしていただきまして,私から御指名をさせていただくという取り計らいをさせていただきたいと思いますので,御協力をいただければと思っております。   また,御発言がちょっと途絶えておられるときには,できるだけ御発言が少ない方にも御発言をいただこうということでお願いをすることもございますので,よろしくお願いをする次第でございます。 1 議事の公表等の在り方について ○千葉座長 それでは,議事に移らせていただきます。   今日は最初に,前回に引き続きまして,議事の公表等の在り方について改めて御確認,御協議をいただきたいと思っております。前回御協議いただいた内容を確認させていただきますと,議事録につきましては,発言者の氏名を特定する形で作成,公表をするということで,皆様におおよその合意をいただいたところでございます。また,その中では,今後の捜査,公判への影響,あるいは関係者の名誉,プライバシー等の観点から公表に適さないと考えられる内容にわたります場合には,その都度,公表する議事録に掲載しない措置を採ることとするということで,皆様におおよその合意をいただいたものだと思っておりますが,よろしゅうございましょうか。 (一同了承) ○千葉座長 ありがとうございます。御異論がないようでございますので,今後,そのような形で取扱いをさせていただきたいと思います。   次に,議事の傍聴等につきましても,原則として公開とするという方向でおおむね皆さんから御意見をいただきました。それから,議事録と同様に,公表に適さないと考えられる内容にわたる場合には議事を公開しない,そこで公開を止めるということも,皆様から合意をいただいたものだと承知いたしております。   その上で,議事の公開の具体的な方法でございますけれども,私なりに整理をさせていただきまして,この第2回の会議において皆様にお諮りさせていただくということで引き取らせていただいたと考えております。そこで,具体的な方法につきまして,皆様からいただいた御意見も踏まえながら,傍聴の方法として次のようなことを私なりに整理をさせていただきました。   いただいた御意見としては,会場で傍聴を認める方法があるではないか,それから別室でのモニターでの傍聴を認めたらどうかと,こういう御意見がございました。大方の皆様の御意見では,別室のモニターでの傍聴を認めるのが,ここでの議事の進行等を考えた上でふさわしいのではないかということであったかと思っております。また,どの範囲の方を対象に傍聴を認めるかということについては,報道機関の方を対象にする,あるいは報道機関以外の一般の方も対象としてもいいのではないかと,こういう御意見もございました。この点は報道機関の方々を対象とするという御意見が多いように私は受け止めさせていただいたところでございます。こういうことで,報道機関の方々を対象に別室に設置したモニターで傍聴していただけるようにするというのが,皆様のおおよその合意できる一致点ではないかと考えます。ほかに更なる御意見がなければ,今申し上げましたような,おおよそ合意が整っております,報道機関の方々に対して別室に設置したモニターでリアルタイムで傍聴していただくという取扱いでいかがかと存じますけれども,いかがでございましょうか。 (一同了承) ○千葉座長 ありがとうございます。   できるだけこの議論がオープンにされるということを念頭にして,今申し上げましたような形で公開をしていくということにさせていただきますので,どうぞよろしく御承知おきをいただきたいと思っております。 ○石田委員 報道機関というのはどういう意味ですか。記者クラブの方という意味なのか,それとも一般のジャーナリストの方も含むという趣旨でおっしゃったのでしょうか。 ○千葉座長 記者クラブの方に限るものではございません。 ○宮崎委員 報道機関といった場合,一社当たりの人数が限定されるようなことになるのでしょうか。数の限りはあろうかと思いますけれども,席がきっと空いてくると思いますので,そのようなときまで一社一人というのではなくて,私どもも聞いているのは論説委員の方だとか,そういう興味をお持ちの方,傍聴したいというような御希望も聞いておりますので,そこの一社当たりの人数は柔軟に席が空いている限り認めるような運用をお願いしたいと思いますが。 ○千葉座長 キャパシティーがございますので,多くのメディアの方がそれぞれおいでのような際には,一社一人でお願いをするということもあろうかと思いますが,そのような場合でなければ,数の制限を特段に設けるということではございませんので,御理解をいただければと思います。   このような形で公開をさせていただくのですが,モニターに映し出される様子を録音録画するとか,あるいは直接ネット上に動画配信をするということは御遠慮いただきたいと思っておりますので,その点についても御理解をいただきたいと思っております。   なお,公表に適さないと考えられる内容にわたる場合には,モニターをいったん切って議事を非公開にするということも当然予想されることでございますので,そのような際には適切な措置を採らせていただくことにさせていただきたいと思います。   傍聴につきましては以上のような基本で進めてまいりたいと思いますが,よろしゅうございましょうか。 (一同了承) ○千葉座長 それでは,早速これ以降の議事は,公開をするということにさせていただきたいと思います。   モニターは地下1階の会議室に設けてございます。これからその接続準備をさせていただきますので,5分程度休憩にしたいと思います。 (休     憩) (小川副大臣退室) (甲斐官房審議官入室) ○千葉座長 皆様,席にお着きのようですので,再開をさせていただきたいと思います。   ここからは議事を公開した形で進めさせていただきます。 2 検察制度,事件概要等の説明 ○千葉座長 議事次第の二番目でございます,検察制度,事件概要等の説明に移らせていただきます。   この会議は,今般の大阪地検特捜部における一連の事態を踏まえて,検察の在り方について抜本的な検討を加えることという使命をいただいております。そこで,今後の議論,検討のまず一番の基本的な前提になります検察官制度や特捜部の活動を含む検察庁の仕組み等,それから今般の大阪地検における一連の事件の概要,これらについて皆様に共通認識をお持ちいただくということが必要であると考えております。そこで,今回これらの点につきまして御説明をする機会を設けさせていただきました。本日は,法務省の甲斐行夫大臣官房審議官に御出席をいただきまして説明をいただくことといたしました。   なお,御承知のとおり,現在最高検でも検証チームにおきましてD元課長の無罪事件の捜査,公判上の問題点等を中心に検証を進めておられると聞いております。また,これに関連する証拠隠滅,犯人隠避事件につきましても最高検の検証対象となっているほか,両事件ともに公判係属中の事件でございます。加えて,本日の議事は報道関係の方々に公開をさせていただいておりますので,本日の御説明には多少制約もあろうかと思いますが,その点は御了承をいただき,御説明を受けてまいりたいと思っております。   それでは,甲斐審議官,よろしくお願いいたします。 ○甲斐官房審議官 刑事局担当の大臣官房審議官の甲斐でございます。   今般の大阪地検特捜部に係る一連の事態につきましては極めて遺憾でございまして,大変申し訳なく思っております。   本日は,今座長からもお話がございましたけれども,大きく分けて二つの観点から御説明をさせていただきたいと思います。一つは,検察庁の組織に関するもの,もう一つは,今般の大阪地検特捜部における一連の事件の概要に関するものでございます。座長からもお話がございましたように,現在最高検において検証作業中でございまして,本日は今後の議論のための言わば外枠について御説明をさせていただければと思っております。   資料につきましては,資料2から15までが今回の御説明に関するものでございますので,適宜御参照いただければと思います。   まず,検察組織について御説明を申し上げます。資料2を御覧ください。全部御紹介する時間もございませんし,皆様御承知のところも多いかと思いますので,かいつまんで御説明をさせていただきます。   初めに,まず検察庁あるいは検察官の職務について申し上げます。検察庁法1条は,検察庁は検察官の行う事務を統括するところとすると規定しておりますが,この規定自体が通常の行政機関とはやや違っております。普通の何々省というところでは主任の大臣がその長とされておりまして,その職員はその事務を順々に分掌補助するという形をとっているところでございますが,検察庁は,まず個々の検察官が権限を有する官庁であるという建前になっておりまして,検察庁は,そういった個々の検察官が行う事務を統括するという組立てになっております。また,国家行政組織法上は,検察庁は特別の機関という位置付けがなされています。   検察官の種類,あるいは検察庁の種類等は,ここに記載したとおりでございますが,最高検の長が検事総長,その次が次長検事,それから全国8か所に置かれた高検の長が検事長,その次が次席検事,それから地方検察庁の長が検事正等々ということになっております。   次に,検察官の権限につきましては,検察庁法4条,6条に規定がございます。   なお,資料の中で資料7というものがございますが,これは検察庁法,それから刑事訴訟法の関連部分を抜き出したものでございますので,一々申し上げませんけれども,御参照いただければと思います。   検察官の権限として,一つは,刑事について公訴を行うということが掲げられておりまして,この権限の中には当然の前提として,捜査を行うこと,あるいは起訴・不起訴の決定を行うことも含まれていると解されております。それから二つ目の●として,公益の代表者として刑事に関する法の正当な適用の請求,裁判の執行の監督等を行うものとされているところでございます。   それから三つ目の箱で,検察権の任免について記載しておりますけれども,検察庁法におきましては,検事総長,次長検事,検事長については内閣が任命することとされております。それから,そのほかの検事,副検事は法務大臣が任命することとされております。他方で,検察官につきましては,身分保障が認められており,検察官は,一定の場合を除き,その意思に反して官を失い,職務を停止され,又は俸給を減額されることはないという規定になっております。その例外としては,定年,検察官適格審査会の議決による罷免,懲戒処分というものが掲げられているところでございます。   次に,資料2の右側に移りたいと思います。検察権及び検察官の独立性とそのチェックの体制についてでございます。   御承知のとおり,そもそも検察権は司法権と密接な関係を有することから,司法権の独立に準じた独立性が求められていると解されているところでございます。検察官は,独任制官庁と言っていますが,逮捕,捜索,差押えなど,刑事訴訟法の様々な権限につきまして,自ら単独でその意思決定あるいは表示ができるということになっております。検察官が起訴をする起訴状にも,検察官個人の名前を署名するということになっております。   他方で,検察権行使に当たっては,検察官がばらばらに好き勝手にやるというわけにはまいりませんで,国家の正しい行政意思が統一的に反映される必要があります。それから全国的な均一性も確保する必要があるということから,全国の検察官を,機能上,いつでも一体のものとして活動し得るような仕組みということが必要とされていて,これを検察官同一体の原則と呼んでおります。その具体的な在り方として,検事総長,検事長,検事正等のそれぞれの検察庁の長においては,部下職員を指揮監督する権限を有するという規定がございますし,また二つ目の●にありますように,事務引取移転権と言っていますが,いったんある検事にやらせていた事件について,いろいろな事情から別の検察官にこれをやらせるというようなこともできるということになっております。こういったことを通じて,検察官同一体の原則の実現が図られております。   以上は検察庁内部の仕組みということになりますが,外部的なチェックとして裁判所等によるチェック等がございます。検察権を積極的に行使する場合,特に逮捕でありますとか,そういった判断をするに当たっては,裁判所において強制捜査について令状審査というものが行われます。逮捕,捜索等の強制捜査については裁判所の裁判官の令状を得る必要があって,検察官が勝手にこれをすることはできないということになっております。それから公判請求した場合には,公判審理を通じて裁判所において有罪・無罪の判断がなされるということになります。   他方で,権限行使の消極面,起訴しなかったというものについてのチェックにつきましては,ここに二つ例を挙げておりますが,準起訴手続と検察審査会という二つのものがございます。準起訴手続と申しますのは,職権濫用に当たる犯罪につきまして,検察官が不起訴にした場合,告訴人,告発人が裁判所に審判の請求をすることができ,裁判所において理由があると認めたときは起訴されるというものであります。それからもう一つの検察審査会は,これは昨今話題になっておりますので御承知かと思いますが,検察官が不起訴にしたものについて審査をし,二度起訴議決がなされるという手続が行われた場合には,起訴が強制されるということになっております。   三点目でございますが,法務大臣の指揮権というものがございます。これは検察庁法14条に規定がございますが,検察庁,検察官もいわゆる行政機関でございますので,議院内閣制の下におきまして,内閣が行政の長として責任を負うこととなります。そして,法務大臣は検察に対しても一般的な指揮権を有するというのが大原則でございます。ただ,個別の事件の捜査処理につきましては,検察権の独立との調和を図るという観点から,同条ただし書において,法務大臣は個々の事件の取調べ又は処分については,検事総長のみを指揮することができるという規定になっております。逆に言えば,個々の検察官に対して法務大臣が指揮をするということはできないということになります。   次に,資料3を御覧いただければと思います。これは特捜部の事件を中心に刑事手続の流れを記載させていただいたものでございます。   上の段が捜査でございますが,通常の事件は警察その他の司法警察職員が第一次捜査機関として捜査を行い,捜査が一定程度進んだ段階で検察庁に送致がなされます。そして,在宅事件であればその事件について検察庁においても捜査をし,起訴・不起訴の判断をします。身柄事件になりますと,逮捕された者について,必要があれば勾留を行って,最大20日という期間内に何らかの判断をするのが通例であろうかと思います。   それ以外に特捜部の関係では,直受事件と認知事件という二つの類型がございます。直受事件と申しますのは,国税庁等,証券取引等監視委員会,公正取引委員会等の犯則調査機関の告発によって検察庁において捜査が始められるというものが一つ類型としてございます。このほかに,被害者その他事件関係者,一般人から告訴・告発を受けるというものがございます。これらにつきましては,警察等を経ることなく,検察庁において在宅事件,あるいは身柄事件として捜査を行うということになります。若干御注意いただきたいのは,件数としては直受と認知と合わせて7,000件と書いていますが,一般人からの告発というのが相当たくさんあります。そういうものがかなりの部分を占めているという実態は御理解いただければと思います。   もう一つ,認知事件と申しますのは,検察庁が自ら事件の端緒を得て捜査に乗り出すというものを指します。これにつきましては,検察庁において内偵捜査を行い,在宅で,あるいは逮捕・勾留して捜査を遂げるという流れになります。   資料3の中間のところが起訴後の手続でございますが,起訴されたものについて,公判請求をした場合には,公判前整理手続を必要に応じて行った上で公判審理をし,有罪・無罪が言い渡されることとなります。それから,略式命令請求というのは,罰金刑が相当と考えられるような事件について,被疑者の同意がある場合には,書面審理だけで裁判所の判断を求めて略式命令を出すようお願いするというものでございます。そのほか,かなりの事件数になりますが,不起訴処分というものがございます。   次に,検察組織について申し上げます。資料4を御覧いただければと思います。   資料4は,検察庁の全国の組織図でございます。   先ほど申し上げたように,最高検の下に全国に8つの高等検察庁,それから50の地方検察庁がございます。地検のうち,大規模庁には部というものが置かれ,中小のところには部が置かれていないわけですが,部が置かれている地検の中でも東京地検,大阪地検,名古屋地検の3つの地検には特別捜査部が置かれております。   なお,このほかに横浜,さいたま,千葉など,全部で10の地検に,特別刑事部というものが置かれています。特別刑事部と申しますのは,特捜部の所管事項であります財政経済事件等に加えて公安労働事件についても捜査処理を行うということになっておりまして,そういう意味では,特捜部と公安部を一緒にしたような組織ということになろうかと思います。   次に,資料5を御覧いただければと思いますが,大阪地検の組織図でございます。大阪地検の長が検事正で,その次に次席検事が置かれ,事務局,そして総務部,刑事部,交通部,公安部,特捜部,公判部というそれぞれの組織が置かれております。   特捜部を見ますと,特捜部には部長,副部長が置かれ,その下に検事,副検事,検察事務官が置かれております。特捜部において事件の捜査を行う場合には,決裁官であります部長あるいは副部長において当該事件の主任検察官を指名いたします。主任検察官というのは,個々の事件の担当の検察官という意味でございまして,その事件の処分を自らの名前で行うほかに,複雑あるいは大規模な事件におきまして,複数の検察官が関与する場合に,中心となって捜査方針を立てたり,あるいは各検察官の役割分担を定めて,全体を取りまとめるといった仕事を行います。主任検察官に事件を割り振ることを,内部的には配点と言っております。事件の処分時においては,主任検察官において方針を立て,副部長,部長,それから次席検事,検事正という順に決裁を受けて,起訴あるいは不起訴の処分を行うということになります。   次に,資料6を御覧いただければと思います。特捜部の歴史等に関するものでございます。もうちょっと古いことなので,詳細は私どももよく分かりませんが,昭和22年に東京地検に隠退蔵事件捜査部というものが設けられていて,これが特捜部の前身と言われております。この隠退蔵事件捜査部というのは,戦後の混乱期に隠されていた旧日本軍あるいは政府関係機関の保有物資をめぐる不正事件を摘発するために設けられたようでございます。その後,昭和25年に現在の名称に改められ,財政経済事件をも所管するに至っております。また,その後の昭和32年に大阪地検に特捜部が設けられ,また,平成8年には名古屋地検にも特捜部が設けられているということでございます。   特捜部の所管事務につきましては,検察庁事務章程という法務大臣訓令に規定されているところでございまして,財政経済関係事件及び検事正があらかじめ指定する事件などを所管することになっております。   一般に被害申告のない事件でございますとか,汚職事件,脱税事件等の高度に専門的な法律知識と捜査技術を要する事件等につきまして,適切に対応する必要があるということから,こういった特捜部というものが設けられているものと考えております。   次に,大阪地検の一連の事件の概要について御説明を申し上げます。資料8以下を御覧いただきたいと思います。   資料8は時系列でございまして,資料9以下が個別の事件に関するものでございます。一連の事件,複数ある上にそれぞれが相当複雑でございますので,適宜資料8を御覧いただきながら,それぞれの個別のところを見ていただければと思います。   今回の事件のそもそもの発端は,郵便割引制度というものについて,これを不正に利用した郵便法違反というものでございました。資料8にありますように,平成21年2月に郵便法違反の事件で捜査が開始され,それ以降,17名について起訴をするに至っております。   この郵便法違反事件の構造といいますか,仕組みの前提として,資料10を見ていただきたいのですが,郵便物は御承知のように第一種,第二種,第三種といった種別がございまして,郵便料金に差がございます。普通の郵便であれば80円,はがきであれば50円ということになるわけでございますが,一定の定期刊行物については,その郵便料金が低減されております。その第三種郵便物の中でも,低料第三種郵便物というカテゴリーがあり,さらに,その中に心身障害者用低料第三種郵便物というものがございます。これは心身障害者団体が心身障害者の福祉を図ることを目的として発行する定期刊行物について,この認定がなされますと,通常80円とか120円とかというその郵便料金が8円という極めて低額の郵便料金で発送することができるという仕組みになっております。その承認を受ける要件につきましては,その下の方の枠に書いているところでございますが,心身障害者用低料第三種郵便物につきましては,ここに記載したような性質のものであることがまず必要であるとされています。それから,承認手続といたしまして,承認請求書等のほかに厚生労働省等が発行する公的証明書の提出が必要であるということになっております。   それで,この郵便法違反事件というのは,こういった低額で発送することができるという仕組み,郵便割引制度を不正に利用いたしまして,自称心身障害者団体でございましたX団体などの団体が,実態は心身障害者団体と言えないものであるのに,不正にこういった割引制度を利用する目的で会を設立して,企業から広告,ダイレクトメールの発送依頼を引き受ける,また,広告企業側もこれを不正に利用するという形で割引制度を不正利用したというものでございます。   資料9を御覧いただければと思いますが,ここに記載しましたのが郵便法違反事件の概要ということで,2で公訴事実の概要を書いておりますが,その実態としては今申し上げたようなところでございます。判決結果等につきましては,判決確定済みが9名,一審係属中が5名,控訴審係属中が1名となっております。   こういった郵便法違反事件を捜査する過程におきまして,厚労省側が公的証明書の発行に関する内容虚偽の決裁文書を作成するという事案があるということが発覚をいたしました。ここもちょっとややこしいところなんですが,この文書には二つの種類の文書がございまして,二つの事件があるということになります。   資料11を御覧いただきたいと思います。これは虚偽有印公文書作成等事件の概要でございますが,2の公訴事実の概要に,ローマ数字で�Tとそれから�Uと書いたものの二つを掲げております。この�Tというのは,要するに平成16年5月ころに,公的証明書そのものではなくて,公的証明書を作成するための決裁文書,そういう途中経過を示すような文書を作成したという事件でございます。これはどうもそのX団体側から公的証明書を早く出してくれとせっつかれて,今こんなところまで進んでいますということを書いたというものでございます。それから�Uと申しますのが,これは公的証明書そのものの作成ということになります。このX団体については,心身障害者団体ではないのに,そういうものであるという内容虚偽の証明書を作成したというものでございます。   先ほどの資料8の時系列に戻っていただきますと,二段目にありますように,平成21年5月の段階で,最初のローマ数字の�Tの方の決裁文書の作成罪についてB元係長,この人がどうも作成したということですが,それからCという発起人の方,この二人を逮捕いたしました。更に捜査を進めていったところ,公的証明書自体について虚偽有印公文書作成等が認められるであろうということで,平成21年6月14日にD元課長,当時B元係長の上司でございました企画課長でございますが,このほかのC発起人,A元会長を逮捕するに至り,捜査の後,平成21年7月4日に起訴をするに至っております。   その後,これらの事件については公判になりまして,それぞれ証人尋問等々が行われました。裁判結果につきましては,資料11の下の方を御覧いただければと思いますが,X団体側のA元会長は,郵便法違反では有罪になっておりますが,この虚偽有印公文書作成等�Uについては無罪となっております。これは確か虚偽のものと認識していなかったというような理由であったかと思います。それから,Cという発起人は有罪判決を受けております,B元係長はまだ裁判係属中,D元課長については御承知のように無罪判決が確定したというところでございます。   資料12はD元課長の判決概要でございます。この事件の中身自体も非常に複雑でございまして,一々ここで御紹介する余裕がございませんので,ポイントだけ御説明をします。   2の無罪理由の骨子でございますが,検察官の主張事実の中核についてというところがございます。アとして,本件が国会議員から社会・援護局部長に要請されて,X団体の実態がいかなるものであれ,公的証明書を発行することが企画課内で決まっていた議員案件であったという点,イとして,D元課長がA元会長に公的証明書を交付したという点であるという,そういう整理がされました。アについて,判決においては,議員案件だったとは認められないという認定がされました。それからイの点について若干申し上げますが,2ページの真ん中の辺りでイの点が触れられております。何でここの点が問題になるかというと,A元会長は,公的証明書について最終的にD元課長から直接受け取ったということを捜査段階でも言い,公判段階でも証言をしております。それが事実かどうかという点が争われたわけでございますが,2ページの中段辺りからありますように,B元係長方から発見されたフロッピーディスクの中に公的証明書のデータが保存されていたと。そのデータの作成日時は6月1日午前1時20分6秒であったと。それで,ちょっと飛ばしますが,B元係長は1日の午前8時ごろに本件公的証明書を作成したと認定できると。それに基づき厚労省側からX団体側に公的証明書が交付されたのは6月1日であると強く推認されると。他方で,A元会長の手帳によれば,A元会長は,6月1日は,関西に滞在していたと認められ,公的証明書の交付を受けることは不可能であったということになっておりまして,D元課長がA元会長に公的証明書を渡したというところは認められないという結論になっております。こういった意味で,フロッピーディスクの関係が非常に大きい意味を持ってくるということになります。   また,資料8に戻っていただければと思いますが,この公的証明書の虚偽有印公文書作成罪等につきまして,今年9月10日にD元課長に対して無罪判決が言い渡されました。検察当局におきましては,この判決について種々検討をした上,9月21日に上訴権放棄をいたしまして,事件としては無罪が確定しました。他方で,この間,この事件の主任検察官でありました前田検事が,問題のフロッピーディスクのプロパティ作成年月日を変えたのではないかという疑いが発生いたしまして,9月21日に最高検察庁が前田検事を証拠隠滅罪により逮捕をするという事態になりました。さらに,その捜査の過程において,部長,副部長にその証拠隠滅の事実が報告されていたのではないかという問題になりまして,10月1日に大坪,当時の大阪地検特捜部長,それから佐賀,当時の大阪地検特捜部副部長を犯人隠避罪で逮捕するという事態に至りました。最終的に,10月11日に前田については証拠隠滅罪により公判請求,それから10月21日に,この大坪,佐賀両名について犯人隠避罪により公判請求したところでございます。   両事件の正確な公訴事実につきましては,資料13と14に記載をしたとおりでございます。細かくなりますので,御覧いただければと思います。   最後に,人事上の処分につきまして御説明を申し上げます。資料15の表を御覧いただければと思います。   まず,主任検事であった前田検事につきましては,証拠隠滅事件と同一の問責事実により懲戒免職処分,大坪特捜部長,佐賀副部長についても,犯人隠避事件と同一の問責事実により懲戒免職処分に付されました。それから,前田検事の証拠隠滅事件当時,大阪地検検事正でありました甲検事正,その後福岡の検事長に転出をいたしておりますが,減給1か月の処分に付され,処分後に辞職しております。その後任の乙検事正につきましても,犯人隠避事件当時の監督職責等で減給4か月という処分となり,処分後に辞職しております。また,丙大阪地検次席,これは事件当時でございますが,この方についても減給6か月に付され,処分後に辞職しております。それから,当時大阪高検次席でありました丁次席検事につきましては戒告,最高検の次長検事でありました戊次長検事については訓告とされております。さらに,大阪地検の己検事につきましては,前田検事からフロッピーのデータを改変したということを告げられていながら,その報告が遅れたという事実について減給1か月の処分を受けたということでございます。   なお,ここに出ていない者,当時の大阪高検の検事長,それから検事総長は,もう既に退職されているということでございます。   駆け足になりましたが,以上でございます。 (黒岩大臣政務官退室) ○千葉座長 ありがとうございました。   今,甲斐審議官から御説明をいただきましたが,この点について御質問がございますればお出しいただきたいと思います。ただ,今最高検の検証が続いている,あるいは公判手続が進んでいるという,そういうものも含まれておりますので,どの程度までお答えをいただけるかはなかなか難しいところもあろうかと思いますが,できるだけ対応をいただければと思っておりますので,よろしくお願いをいたします。 ○江川委員 質問が三点あります。今後の議論にも関係するところなので,できるだけお答えいただきたいんですけれども,まずそのD元課長の事件は大阪地検だけではなくて高検,最高検にまで決裁が上がっているということを伺っています。上級庁に決裁が上がるというのは,どういうものは決裁が上がるという,何か基準みたいなものがあるのでしょうか。それとも全事件がそういう決裁に上がっていくのでしょうか,このケースだったらどうだったのかということがまず一点。   それから二点目が,資料13に前田元検事の起訴事実,公訴事実が書いてありますけれども,ここに犯行日時,その7月中旬ころとなっていて,日が特定されていないのです。これは公判になったら特定がきちんとされるということなんでしょうか,それとも特定されないとすると,どうして特定できないのかと。つまり証拠の出し入れとか,そういうのがやはりきちんと記録が残っていないからとか,そういうことがあるのかなと思うんですが,そこのところは特定できない理由を教えてほしいのが二点目。   それから三点目に,今回の場合は,フロッピーディスクはその還付されて,そしてそのプロパティが記録された捜査報告書が証拠開示されているわけですけれども,何を還付するかとかそういうのはもう主任だけの権限になっているのか,あるいはどういう証拠を開示するかとか,そういう判断は誰が関わってやるのかということを教えてください。 ○甲斐官房審議官 お答え申し上げます。   まず一点目でございますが,御指摘のように,D元課長の事件の処理に当たって地検だけの判断ではなくて,高検,最高検まで決裁を了していると聞いております。ただ,どんな事件だったらどこまで決裁を取れという一般的な基準があるわけではないと承知をしております。決裁の段階につきましては,それこそ事件の内容でありますとか重大性,複雑性等によって様々変わってまいります。通常の事件であればもちろん地検内で済むわけでございますが,社会的な耳目を集めるような大きな事件ということになれば,上級庁の決裁を要するということになるのが普通であろうと思います。   それから二点目の犯行日時について,私も詳細を承知しているわけではありませんが,当然裁判で問題になれば,証拠関係等に照らしてそこは争点になるだろうと思います。具体的にどうなっているのかというのは,私もちょっと承知しておりませんけれども,特定という意味では証拠の範囲でできる限り特定はされるのだろうとは思います。   それから三点目につきましては,還付については原則は他人の物を持ってきているわけでありますので,不要であるということであれば,なるべく早めに還付するというのが大原則です。その判断につきましては,通常一般はその主任検察官が判断すれば足りるということになっていると思います。証拠開示につきましては,これも公判を担当する検察官において普通は対応するということになろうと思います。ただ,これは全く自由裁量というわけではもちろんなくて,証拠開示の手続なり範囲というのは,平成16年に法改正がなされまして,かなり幅広に開示をするという規定が設けられておりますので,その規定に照らし合わせて判断をすることになります。それから,弁護人との間で開示するしないの争いが生じるということになれば,裁判所において裁定の手続をとって裁判所が最終的に判断するということになろうかと思います。 ○江川委員 上級庁まで決裁を上げるかどうかというのは,社会的耳目を集める事件のときにはというようなことをおっしゃいましたけれども,上に上げるか上げないかを決めるのは誰なんでしょうか。 ○甲斐官房審議官 これは特に決まっているわけではなくて,それこそ地検サイドが高検の判断も仰いでおこうという場合もありましょうし,地検の方で,報告の必要はないだろうと思っていたら,高検の方でこういう事件があるそうだけれども,報告してくれということになる場合もあるんだろうと思います。 ○千葉座長 審議官,今のお答えの中であった平成16年の法改正で,証拠開示の基準について,大分詳しく明確になったというお答えでした。その規定は今日はどこかに載っておりますか。 ○甲斐官房審議官 今日の資料には確か載っていなかったと思います。   物凄く長い条文になっていまして,非常に事細かに規定をしております。大まかに申し上げると,まず検察官が取調べ請求しようとする証拠はもちろん開示をする。それから一定の類型証拠といって,被告人の供述調書でありますとか,そういうものについてこちら側で証拠請求するつもりはなくても,裁判所に出すつもりはなくても,それは弁護士さんの側に開示しなさいということになっています。   それから,弁護士さん側から,こういう点を争点として提起したいということになりますと,それに関連する証拠として,また争点関連証拠として開示しなければならないということになっています。そういった手続の進行具合と争点との関連で,開示すべき範囲というのが決まってくるということになります。 ○千葉座長 皆様のところにも六法全書がございますので,見ていただければ分かるわけですけれども,もしあれでしたら条文,分かりやすいものをまた後ほど皆様に御紹介を,事務局の方からいただければ幸いかなと思います。 ○吉永委員 現在,最高検の検証チームが検証しているということなんですけれども,どういうメンバーがどのようにしてこの検証をしているのでしょうか。我々はこういうふうな形で全部公開をしているんですけれども,何かこの検証チームって一体何をやっているんだろうか,誰がやっているんだろうかということは,私だけが分からないのか,見えにくくなっているような気がするんです。それで,実際に12月にここの検証チームからの結果が来て,そこを基に私たちがまた考えていくということになると,ここの部分がとても重要なんですけれども,今どういうふうな検証がなされているのでしょうか,もしお伺いできれば有り難いなと思いますが。 ○甲斐官房審議官 検証に関しましては,座長として次長検事が対応するということになっており,全部で最高検の検事が12名関与して作業を行っております。実際の検証は,私もそばで見ているわけではもちろんないわけですが,本件の記録を精査するなり関係者から話を聞くなりして,事実関係をトレースしていくということになると思います。   他方で,法務大臣からの御指示もございまして,外部の方にも入ってもらうということになりました。最高検におきましては,検証アドバイザーという言い方をしているかと思いますが,外部の第三者として3名の実務家の方にお願いをしたと聞いています。これは裁判官出身の方,検察官出身の方,それから弁護士の方,いずれも現在は弁護士でございますが,そのお三方にも入っていただくと。最高検の非常勤職員として採用をし,検証の事実認定の部分についても意見を述べていただくということになっていると聞いております。 ○郷原委員 一点目は,この資料の内容と先ほどの御説明の内容を検討会議での議論の前提にすることについてちょっと若干の意見に近いものなんですけれども,資料�Aの検察官の独立性という記載なんですが,ここに司法権の独立に準じた独立性が求められると書いてありますし,先ほど審議官からもそういう説明がありました。教科書的にというか,検察の従来の常識的に考えるとそういうことだと思うんですが,これは裁判官の独立と違って,検察官の独立というのは法律に明確に規定されたものではないということ,それから正にこの独立性をどこまで認めるかということは,この検察の組織の在り方そのものにも関わると思いますので,余りこれが何か当然のようにここに書かれ説明されているというのは,この議論が公開されているということも含めてちょっといかがなものかという感じがいたしますので,ちょっとここは留保をつけた方がいいんではないか。この点は正にチェックの在り方,検察権の行使へのチェックの在り方の点も含めて検討すべき事項ではないかと思います。   それからもう一点は質問なんですが,資料14のこの犯人隠避事件の概要です。このまず法律構成というのは,この公訴事実(1)で書いていること,まずその前半部分は自首告白をしないよう働きかけたということと,それとその後に書いてあることは,検挙をしなかったという不作為と考えていいのかということを確認なんですが,その確認と,もしその検挙しなかったという不作為が隠避行為と捉えられているんだとすると,これは特捜部の部長とか検事であるから,独自捜査を行うべき立場にあるからこの不作為が犯人隠避に当たるという趣旨であるのか,それとも検察官であればあまねく捜査権限があるんだから,目の前に犯人がいることが分かったら逮捕をしないといけないのに逮捕しなかったというような意味なのか,これは(1)も(2)も同じなんですが,ちょっと考え方を御説明いただければと思います。 ○甲斐官房審議官 一点目については,郷原先生もおっしゃったように,教科書的に御説明をしたということでございますので,その趣旨について更に御議論されるということであれば,それはそれでそのときの御議論次第ということになろうかと思います。   二点目につきましては,これはむしろ公判でどういう争い方がされるのか,あるいは検察官がその点について釈明されたときに,どういう主張をするのかということに関わることでございますので,私から説明はしにくいということを御理解いただければと思います。 ○千葉座長 今御指摘いただきましたこの独立性の問題については大変重要な御指摘だと思います。多分従来の教科書と言いましょうか,言われている独立性という御説明を審議官がなさったものだと,それ以上のものでもないというふうだったかと思いますが。 ○井上委員 委員の御意見なので,後で議論すればいいのかもしれませんが,確かに法律に正面からは書かれていないのですが,先ほど法務大臣の具体的な事件についての指揮権の規定,そのほかのいくつかの規定などにそういう趣旨が表されていますし,検察官は公益の代表者として刑事事件以外にもいろいろな場面で公正な立場で行動することを求められており,そういうことから,裁判官ほどの非常に強い独立性ではないけれど,独立性が確保されなければならない。これは社会のため,国民のためであり,そう考えられて広く承認されていることなのです。その程度とかあるいはそれに対するコントロールの在り方については,議論の余地があるところですけれども,検察官の独立性それ自体は学者が勝手に教科書に書いているだけということではないということは申し上げておきたい。 ○千葉座長 それぞれから大変適切な御指摘をいただきました。ありがとうございます。   二番目につきましては,確かに甲斐審議官が起訴したということではありませんので,どういう趣旨かというのは,また公判等で明らかになっていくのかと思います。 ○後藤委員 問題のフロッピーディスクの還付の経緯について確認させていただきたいのですけれども,先ほど還付は主任検事の判断でするとおっしゃいましたね。この事件では,還付の時にはすでに起訴しているわけですね。前田さんはこの公判段階でも主任であったのですか。 ○甲斐官房審議官 記憶だけで申し上げますが,公判段階では公判部が立会をするということになったと承知しております。ただ,途中から再び前田検事が公判の立会にも関与するようになったと聞いております。 ○後藤委員 公判では,公判部の方が主任という位置付けになっていたのですか。 ○甲斐官房審議官 一応公判の立会という意味では,公判部の方に移ります。もっとも,これは事実上の話になるのかもしれませんけれども,起訴直後においては,まだ証拠の整理なり記録の整理なりという事務は残っており,起訴検事から公判部に記録を移して引き継がなければいけませんので,そのタイムラグというのあるんだろうと思います。 ○石田委員 資料3に直受事件と認知事件のことが記載されておりますが,この認知事件というのは現在1年間でどのくらいの件数があるのか,統計資料があるのでしょうか。   それから,この大阪の今回の事件は認知事件であったと理解してよろしいんでしょうか。その二点です。 ○甲斐官房審議官 この資料3の下の方に参考1として,受理状況の内訳というものを記載しております。全ての事件の認知件数というのはちょっと分からないんですけれども,刑法犯,特別法犯においては1,890件という数字が掲げられているところでございます。   それから,後段の御質問ですが,これは御指摘のとおりだと思います。先ほども申しましたけれども,結局,郵便法違反の事件を捜査する過程において別事件を認知したということになろうかと思います。 ○石田委員 その郵便法事件そのものも,認知事件だったということなんですか。 ○甲斐官房審議官 漠とした記憶ですが,そうであっただろうと考えております。 ○江川委員 証拠の扱いについて伺いたいんですけれども,捜査の主任検事が集めた証拠というのは,全部公判部の主任に渡るんでしょうか。それとも主任検事あるいはその捜査チームの判断で,公判部の検事に引き継ぐ証拠が精査されるというか,取捨選択されるのかどうか,特にこの事件ではどうだったのかということ。   それからもう一つ,今の表の受理状況の内訳のところです。この検察官認知1,890件とありますけれども,これのうち立件して起訴に至ったのはどれぐらいなのかと,もし分かれば教えてください。 ○甲斐官房審議官 まず証拠につきましては,公判部に全部引き継がれます。もちろん途中段階,捜査段階においても,もう要らないということになれば還付されたりすることはありますけれども,これ公判部に渡すのは嫌だから取っておこうということはないわけでありまして,それは引き継がれる。むしろ引き継がれるというより,証拠品,特に証拠物については番号を振りますので,それは検察庁にそのまま保管されるか還付されるか,どちらかしかないということになろうかと思います。   それから,認知事件の起訴件数につきましては,手元に資料がございませんので,またもし分かりましたら何らかの形で御報告するようにいたします。 ○千葉座長 大分いろいろなことを皆さんにもお知りになりたいという部分があろうかと思います。そろそろ時間も大分経過をしてまいりました。決してこれで御疑問のところ,もう終わりということではございませんので,もし更にこういう点を聞いておきたいということがございますれば,後日事務局を通じてまたお問い合わせいただければと思いますし,また,いろいろ議論の過程で御説明をいただくということもあろうと思われますので,今日のところはこの辺りで甲斐審議官からの説明と,それからそれに対する質疑,一応区切らせていただきたいと思いますが,よろしゅうございましょうか。それでは,甲斐審議官,どうもありがとうございました。今後ともまたいろいろ御協力をお願いをいたしたいと思います。 (甲斐官房審議官退室) ○千葉座長 ここで10分程度,少し息継ぎの時間を入れたいと思います。約10分程度,どうぞ一休みをお願いいたします。 (休     憩) 3 今後の検討事項等についての意見交換 ○千葉座長 休憩前に引き続きまして議事に移らせていただきたいと思います。   今日の議事次第の第三番目でございますが,今後の検討事項等についての意見交換ということで,皆様からいろいろな御意見をいただきたいと思います。この会議の検討事項等は年内に出される予定の最高検による検証結果も併せて踏まえながら,改めて確定をしていかなければならないものだと思いますが,今の段階で皆様からこの会議で検討対象とすべき事項はどんなことがあるのだろうかと,こういうことについて忌たんのない御意見をお出しをいただき,また皆さんと意見交換をすることが大切ではないかと考えております。   改めて申し上げることではございませんけれども,本検討会議に大臣から御諮問をいただいているその役割は,今般の大阪地検特捜部における一連の事態を踏まえて,幅広い観点から検察の在り方について抜本的な検討を行い,検察の再生のための有効な改善策を提言してほしいということでございます。そこで,本検討会議の検討事項としては,今般の一連の事態の原因等を踏まえながら,検察の在り方を見直すに当たって必要な事項についての御議論,御検討が中心になろうかと思っております。その点も念頭に置いていただきまして御意見をいただければと思っております。   いつも時間の関係と申し上げて大変恐縮でございますが,今日限りでということではございませんので,そこは御理解をいただきつつ,お一人大体5分程度でおまとめいただいて,今後の検討課題,こんなことが必要ではないかと,こんな御意見がございましたら,それぞれお出しいただきたいと思います。また,一巡をいたしまして許す限りで相互の意見交換もできればと考えておりますので,よろしくお願いをしたいと思います。   今日はまた前回と少し配置替えをさせていただいておりますので,今日はこちらの諸石委員からぐるっと回ったらいかがかと思います。諸石委員から順次御発言をお願いをしたいと思います。 ○諸石委員 この会議で何を議論するかということにつきまして,その対象になる話というのはほぼ共通認識が出てきているのではないかと思います。一つには,捜査,取調べについて,その可視化ということが言われております。それから証拠の開示の問題,それから検察の組織の在り方として,チェック・アンド・バランスが保たれる組織が必要ではないかというようなことが言われている。それから人事の面では,検察倫理だとか検察官に対する教育だとか,そういったことが言われている。ほかにもまだあると思いますが,共通して言われているのがそんな問題かと思います。それらについて一方で必要であるけれども,しかしそれが全てではないし,また一方で手間がかかり弊害もあると,それについてどういう順番で最終目的,目標はここで,それに向けてどういうところからどうやっていくのかという議論をしていきたいなと思っております。   それから一つ,言葉の使い方で今私は,可視化と申しました。可視化という言葉がよく皆さん使われていると思うんですが,これは英語のビジュアライゼーションを可視化と。元々これは抽象的なものを分かりやすい形で表すのをそう言ったと思うのです。その「視」ということから,ビデオで見るということと直結しているのではないかと考えます。私はそういう生データをチェックするという意味においては,ビデオで撮るというのとテープで聞くというのとでは,ビデオの方がより大きいわけですが,手間だとかいろいろなことを考えると両方あり得ると考えます。それから言葉として使うときに可視・可聴化というような言葉にしておかないと,何となく思い込みでビデオと直結しそうな気がしまして,その上でやはりビデオだと,だから可視化だと,これはもうそれでいいわけですが,頭から何となく見える,目に見える形ということイコール,ビデオと直結する議論にならない方がいいんではないかと,これは付け加えでございます。   以上です。 ○原田委員 私の申し上げることは,あるいは小さな問題かもしれませんが,私もずっと裁判官をやっておりまして,結構無罪とか逆転無罪を出しております。その原因というのは二つなのです。一つは,客観的証拠との符合の検討がないということです。それからもう一つは,被告人が言っていることが本当かもしれないと,一回は考えてほしいのに考えていないということです。これがD元課長の事件にも表れていますが,そのような有名でない事件でも,この二つはいつもついてきます。これはこれでどう改善すべきかということがありますが,私が裁判官をやっていていつも思うのは,主任検事が誤った判断をしても,結局是正されないで,決裁ということがあるのに,そのままいってしまう。要するに最初の主任の人が決めたことを,その一つ上の決裁官まではよく見ていると思うのですが,そこから先が,もう下できちんとやっているということで,中身を見ないで判を押しているとは全然思っていないのですけれども,そういうふうに決裁が一方的に流れているために,複眼的に見ることがないのではないか。   特に,私も40年裁判官をやっていましたけれども,御承知のように裁判所にいろいろ批判はありましょうが,地裁では3人の目で,あるいは裁判員を入れますと9人の目で,対等に複眼的に同じことについていろいろ考えています。それで,高裁に行くと3人,さらに最高裁は5人あるいは15人という形で,常にいろいろな目でいろいろな角度から検討するというシステムができています。これに対して,検察が一本筋で行ってしまうために,結局は最後の最後に至るまで正しい道に戻れないということが,どうも裁判官から見ていて疑問に思っているのですね。これはもちろん取調べの可視化のような問題から比べると小さなことですが,やはりその決裁あるいは事件処理の体制の組み方について再検討をした方がいいのではないかということを思っています。   もう一点は,これはいろいろな御提案の中にもありますけれども,人事評価の問題であります。例えば具体的なことを申し上げますと,検察官調書の任意性を否定されているような検事はやはり明確なデメリットを与えるとか,あるいはもっと言うと,起訴して犯人性で完全無罪になっちゃったというような場合も同じです。他方では,すばらしい検事がいまして,被告人のために無罪の証拠すら一生懸命集めてくる検事がいるのです。大したものだと思います。こういう点は恐らく人事で反映されていないのではないかと思います。やはりいい検事と悪い検事というのをきちんと見分けて,良い検事を伸ばしていく,悪い検事はある程度しようがないというような体制がとれないだろうか。以上の二点について現在のところ関心を持っております。   以上です。 ○但木委員 私は前回申し上げたように,一連の事件に自分もその責任の一端を負っていると思いながら,その後自問自答してまいりました。それで,是非この会議では,事実を入口にして,恐れることなく広がりを持ち,また深さを持つ問題について,皆さんの御議論をいただきたいなと思っております。   私が自問自答してきた幾つかの問題を言いますと,例えば,誤った筋書というのは一体どうしてできたんだということがあります。その筋書を決定するに当たって,中央官庁の現職局長を逮捕し起訴したいという主観的な願望,あるいは功名心というものがあって,証拠を超えて判断されたのではないかという疑問を持っています。   それから,捜査中に客観証拠を二人の検事が見たわけですけれども,それにもかかわらず筋書を変えようとしなかった。それはやはり,供述中心で証拠を集めていくという姿勢の表れではないか,客観証拠あるいは真実に対する畏敬の念が足りないのではないかと思うわけであります。   三番目は,なぜ間違った筋書に従って同じような内容の調書が作成されたのかということです。特に,極めて詳細な事項についてまで供述が一致したとすれば,なぜそんなことが起きたのか,なぜそれが可能だったのかということも検証されるべきだと思います。   それから四番目に,本件ではフロッピーディスクの存在を隠して決裁を得たとされています。しかも,この存在を知っていた検察官は一人ではないわけです。それなのに,その客観的な事実を隠して決裁を得たとすれば,一体どうしてそんなひずみが心の中に生まれたんだろうかということについて,やはり検証をする必要があると思います。   それから,決裁の在り方ですけれども,少なくとも現在の文化の程度を考えると,変造された文書があれば,その文書のデータがどこにあるんだという疑問を誰もが持つと思いますし,そのデータが消されたとすれば,その痕跡を探すことができるというのは誰もが知っていることだと思います。それなのに,決裁のときに,そうしたことについてなぜ指摘がなかったのか。あるいは,非常に重要な日にちについて特定しているものがあって,それについての裏付け証拠がないのはなぜなのかという点について,決裁過程でなぜ問題にされなかったのか。それは,やはり事件についての決裁の問題というのがあるのではないか。なぜそんな決裁になってしまったのかという,もう少し奥に踏み込んだ観察が必要ではないかと思います。   それから,起訴後の改ざんということが行われたわけですが,起訴後の改ざんをするということは恐ろしいことで,こんなことをなぜ検事としてずっとやってきた人間が思い付いたのか,なぜそんなことをやったのか。私はむしろ,彼はそれが正義だと思っていたのではないか,とんでもない正義の誤り,正義感の誤りがあったのではないかと思っています。そこに何か,やはり検察が陥りやすい,自分が正義だ,自分が考えていることが正義だという思い上がりがないんだろうかという問題があろうと思うのです。   それから,改ざん後の上司の問題ですけれども,フロッピーディスクの問題が明らかになった段階で,なぜ本当に調査しようとしなかったのか。特に証拠構造上,非常に重大な打撃を受けたわけですから,それについてなぜ調査しようとしなかったのかというのは,極めて疑問であります。まして改ざんを知ったとするならば,その段階で公訴維持をそのまま続けるべきかどうかということを,まずその庁が考えなければならない話だったのではないかと考える次第であります。一体,そのときに決裁系統の人たちは公判についてどのように考えて,どのような行動をとろうとしたのかということについて,是非解明する必要があるんだと思っています。   そういう問題の中の奥底にあるのは,検察官の公益の代表たる検察官というものと,当事者たる検察官という問題もあるのではないかと思います。そのときに検察官は一体どっちを採るべきだったのかという問題についても,是非検討をすべき必要があるのではないかと思います。   それから,本件では,複数の検事がいろいろな場面でいろいろなことをすれば,こうしたところまではならなかったと思います。検察官の独立というのは,検察官の良心の独立であると思います。その良心,個々の良心がどうしてこういう一連の流れの中で働かなかったのか,そういう問題があるように思います。   また,捜査構造について,現在のように供述中心の捜査構造がこのまま維持されるのは正しいのかどうかというような問題も含んでいると思います。   そういう意味で,本件につきましては,非常に広い範囲について検察のあらゆる問題がやはり出てきているのではないかなと思っておりまして,是非検証をきちんとやって事実に基づいて今後の検察を立て直していき,国民の信頼を回復すべきだと思っております。   以上です。 ○佐藤委員 私は今のところ三点論じていただきたいテーマがございます。   まず第一点ですけれども,今回の問題はいわゆる独自捜査の結果生じた問題であり,すなわち捜査をしている者と起訴,公訴を提起する者とが同一人ないしは同一組織であるという,そういう手続で行われたわけですが,そうであればこそ,検事正,検事長,そして検事総長,この三者がどういう役割を分担して事件捜査の適正遂行を支えていたのだろうかと。分担が非常に不明確だなと思います。チェックの働きようがないという一面がありはしないか。すなわち,逮捕について上級庁が承認をするということが行われ,その逮捕を承認した以上,起訴についての判断をその上級庁が厳正に行えるかという問題が潜んでいるのではないかと思うんです。これをどのように分担をして適正を図るようにするかというのは,なかなかそうは言いながら難しいなとは思いますけれども,ここのところは是非この際考えていただくべきことではないか。特にその3庁の共通するものはターゲットが高い地位にあるものであればあるほど捜査意欲が高まり,公訴提起をしたいという意欲が強くなる,そういう共通した意識を持っているんだろうと思うんです。またそうでなければいい捜査はできないと思いますけれども,そこは逆に言うと落とし穴があり得る,そういうところであるだけに,今申し上げたことを考えていくべきではないのかということが一つ。   二つ目は,こういう難しい捜査をやり抜いていくためには,ある種のヒロイズムというのは必要だし,なければなかなかやり抜けない,そういう性格の捜査だろうと思います。しかし,実際にはそれが講じて,皆さんからも御指摘がありましたように,ある意味の傲慢さというものが生まれてきている。それがどこから生まれてきたのかということは,この際追及すべきではないのかなと。教育システムの問題もありましょうし,あるいは採用,登用の問題もあるかもしれません。例えば経済事件,企業に関する事件をやるというときには,産業なりその企業なりがどういう状況の中で,またどういう社会的な役割を果たしながらそこで必死に生産活動なり企業活動を行っているかということを,捜査する側の者として承知をしておいた上で不正を糺していくという,そういう社会常識を併せ持つということが必要だろうと思いますけれども,いいターゲットをものにするということに集中し過ぎていく,その原因がどの辺にあるかということを考えていくべきではないかなと思います。   三つ目は,内部の不正ないし何かおかしいという疑問を内部の職員が抱いたときに,その意見を上司なり上級庁が吸収する,そういうシステムないしは雰囲気,そういうものがあるのか無いのか。もし無いのだとすれば,この際そのようなシステムを構築していく必要があるのではないか。私はこれを仮に作るとしても検察外の者が入ってできるとは思いません。なぜならば,本当に中の実情を知らなければ,そのことを吸収すること,酌み取ることはできないし,正すことはできないと思うからです。また,内部でそれを剔抉できないということでは外部の不正を剔抉する資格はないと言うべきでしょうから,是非内部においてそのような体制を作っていくべきではないかと。   以上三点ですけれども,いずれにいたしましても,この会議に大臣が諮問されたことは「検察の再生と国民の信頼回復」ということでありますので,是非その趣旨に沿って議論をしていくべきだと,このように思っております。   以上です。 ○郷原委員 私はこういう問題が,今回のような問題が起こった背景・構造という面から幾つか検討すべき問題を指摘したいと思います。   私は,今回の検察の問題の背景には,検察の捜査手法,決裁システム,組織の在り方などが現在の社会に適合できなくなっている現実があるのではないかと思います。従来からの伝統的な犯罪,殺人,強盗,放火のような犯罪,悪いことであることが明々白々な事案については,これは証拠がある限り犯人を捕まえて起訴して有罪立証をするという,言ってみれば一方向で直線的に努力をしていけばいい。従来の検察のシステムはそういうような伝統的な犯罪の処罰に対応する捜査の手法,決裁のシステム,そして組織の在り方が基本的に維持されてきたと思います。   しかし,このところ社会の複雑化・多様化に伴って検察がその違法行為に対するペナルティーとして刑事罰を科すことが求められる領域が非常に増えている。そういう意味で,検察が活躍すべき範囲が広がって,伝統的犯罪以外のところでも,いろいろな犯罪行為の処罰を行うことが求められているわけです。こういった部分については,伝統的な犯罪と違って違法行為があれば直ちに罰すべしということではなくて,その中でどういうようなものを悪質・重大と考えて刑罰の対象にするのかということについて,一定の価値判断が必要になります。こういうような新たなタイプの犯罪に対しては,やはり社会に対して開かれた感覚,そして組織の内部におけるそういった社会の実情に対する理解力,内部でのしっかりした議論という一般社会の組織と同じようなものが求められてくるのだと思うんですが,検察の組織には残念ながら従来の伝統的な犯罪に対応するというような観点がやはりずっと強く残ってきたために,そういう努力を怠ってきたのではないか。検察に説明責任があるのかないのかということはよく議論されるのですが,この説明責任も伝統的な犯罪については,検察は裁判所に対して立証責任を負っているだけで,説明責任はないということで全く問題はないと思いますが,そういう社会に向けられた犯罪に対しては,社会に対しても基本的な考え方について説明責任があると言わざるを得ないと思います。そういった認識をベースに持って,改めて検察の捜査手法,決裁システム,捜査の在り方,人事評価,あらゆるものを見直していく必要があるのではないかと思います。   とりわけ,特捜検察は伝統的な犯罪が,言ってみれば社会の周辺部分の社会的に余り影響のない行為として犯罪者の世界として起きた問題であったのに対して,社会の中心部で活躍する政治家とか経済人を対象にするものであるだけに,余計にその捜査手法とか,それに対応できる決裁システム,組織の在り方を変えていかなくちゃいけなかったのに,それができてこなかったところに大きな問題があるのではないかと思います。そういう観点で,先ほど但木委員が御指摘された今回の事件に関する問題なども,改めてそういったところとどう関係しているのかという観点から考えるべきではないかと思います。   そしてもう一点,ちょっとこの点も是非今回の検討会議で検討すべきではないかと思うんですが,今申し上げた検察の新たな犯罪に対する説明責任の問題を考えるときに,刑事訴訟法47条との関係は,この際是非検討すべきではないかと思います。先般辞任された柳田前大臣の辞任の原因になった発言も,「個別具体的な事件については答弁を差し控える」ということがなぜ今までずっとまかり通ってきたかといえば,これは刑事訴訟法47条によって,それは法律上できないという解釈が前提になってきたわけですが,しかし,その背景には伝統的な犯罪を中心に検察が刑事司法の正義を独占してきた,それを誰も疑わなかったということがあるのではないかと思います。それが正にその正義が揺らごうとしているときであるだけに,本当にその刑事訴訟法47条による,説明できない,書類を公開できないという制約はどこまで及ぶのかというところをしっかり整理してみる必要があるのではないか,この場は正にそういう法律の専門家がたくさん入られている場ですから,議論をする場としても適切なのではないかと思います。   以上です。 (神事務局入室) ○井上委員 前回申し上げたとおり,今回の一連の事態については,様々な情報やあるいは憶測に類するようなものが非常に入り乱れている状況ですので,まず何よりも,正確な事実の確認というか認識に基づいてどこに問題があるのかを見極めることから始めなければ,方向が大きく間違ってしまうと思っています。そのためには,先ほどからお話が出ております検察における検証というものが,徹底した形でスピード感を持ちながらも十分になされることをまず要望したいと思います。   本日は,先ほど甲斐審議官から事件の概要について一通りの御説明がありましたが,これからどういう点を取り上げ,どういう順序で検討していくのかについて議論し整理していくためには,やはり,最高検察庁における詳しい検証の結果を伺って,それをも踏まえた上で議論をするべきであると思いますので,本日の段階では先走った議論は差し控えたいと思います。   ただ,そういう点を留保した上で一般的に申し上げれば,我が国の検察官は,先ほど甲斐審議官が概要を説明されましたが,裁判に至る前の段階では二つの役割を負ってきた。一般の事件では捜査の結果に基づき最終的に起訴・不起訴を決定するということですが,その場合も,他国の検察官に比べますと,単に警察等の捜査機関による捜査の結果を受けて,それをチェックするというだけではなく,多くの場合,自らも被疑者や主要な参考人等の取調べなどをして,十分な証拠固めをして有罪の確信が得られた場合にのみ起訴をするというやり方を行ってきました。そういうやり方は,「綿密な捜査と慎重な起訴」と言われていますが,他国に類を見ないほど高い有罪率をもたらしている主因になっているものと認識しています。それに加えて,検察官は,特捜に最もよく表れているように,自らも捜査機関として告訴・告発を受け,あるいは犯罪の徴表を得たときに,警察等とは別の立場,視点で独自に捜査をするという役割があります。その立場では,真相を解明し,犯人を検挙することに精力を注ぐという,言わばアクセルを踏む役割を負っていると同時に,同じ機関が適正かつ十分な捜査がなされているかどうか,確実な証拠が得られているかどうかについて自らチェックし,もし問題があれば,ブレーキを踏むとか,あるいはリバースギアを入れなければならない。そういう両方向を一般の事件にも増して適切に行っていかなければなりませんし,またそういうことができる装置になっていないといけない。そういうことがきちんとなされているか,備わっているのかどうかを点検してみなければなりません。   そういう視点から,今回の事件の中身についても,改ざんされたとされるフロッピーディスクのデータと関係者の供述調書の中身が食い違っているということがあったようですけれども,その点を含めて,捜査段階で行われるべき捜査が本当に十分なされたのかどうか,それがまず検証されるべきではないかと思います。もしそれが十分に行われていないと,十分行われていなかったとすれば,どうしてそうなのか,その原因はどこにあったのか,また,それに対するチェック,先ほどから何人かの方がお話になっていますが,検察官は独任制ではあるのですけれども,検察官同一体ということで決裁のシステムがきちんとしているはずなのに,そこで適切なチェックがなされていなかったとすれば,その原因がどこにあったのかを明らかにし,それを踏まえて,再発しないようにするにはどのような手当てを講じていくべきかを考える必要があるだろうと思います。   また,この事件では,まだはっきりしませんけれども,公判の段階でその食い違いが出てきて,立証上支障が生じていたように見えるのですけれども,仮にそうだったとして,検察官として撤退する判断がどうしてできなかったのか,そういったことを今後繰り返させないようにするためにはどういう方策があり得るのか。これは決裁の仕組みだとか,そういったことを見直すということになるのかもしれませんが,そのような検討を最低限行わないといけないと思います。   この他,検察官個々に対する教育や指導・監督,倫理・綱紀の維持,あるいは,証拠管理体制の問題,さらには,他の方々がこれまで一部指摘され,あるいは,これからされるであろう様々な問題がありますが,この点については最初にお断りしたとおり,最高検察庁における検証結果を待って,改めてまた意見を申し上げる機会を与えていただければと思っております。   以上です。 ○石田委員 この度の事態は,よく報道では前代未聞などと言われております。しかし,本質的な問題は,これが特に例外ということではないと認識しております。とりわけ特捜事件におきましては,令状主義に完全にもとる捜索,差押え,関係資料がトラック何杯分捜索,差し押さえられたといったようなことがよく報道されますが,そういった捜索,差押えが行われています。そして,それが弁護人に開示されずに,被告人に有利な客観的証拠の隠蔽が頻繁に行われたと認識をしております。   現在の事態は,特捜事件に限らず検察組織の構造的な,そして組織上の問題あるいは取調べの手法,そして供述調書を過度に重要視する現状に由来していると考えます。とりわけ,先ほども御指摘ありましたように,一定のストーリーを作り上げて,それに沿う供述調書を強引に作成するという捜査手法,それに加えて刑事訴訟法321条1項2号書面を拡大解釈して,有罪立証のための証拠として採用するといった,それを無批判的に容認してきた現状自体も問われているのではないかと思います。   このような不当な取調べによるえん罪事件が後を絶たないのは,様々な要因が考えられるのではないかと思います。一つは,長期勾留あるいは起訴前の保釈が認められないという法制度,それから先ほど言いました刑事訴訟法321条の拡大解釈などにも問題がありますが,やはり最大の問題は,取調べやこれに基づく起訴がリアルタイムに検証されていないという点にあるのではないかと思っております。もちろんこれまでにも,供述調書の信用性あるいは任意性が否定された事案も多くあります。しかし,従来は公判における事後的検証しかなされておりません。それが明らかになるためには,おびただしい労力と時間とを要したということが,今までの先例にも表れています。   私が弁護に携わった事件でも,その調書の任意性,信用性が否定され,被告人が無罪になるために一審だけで9年もかかった事件もあります。審理のほとんどが調書の任意性あるいは特信性についての証人の取調べでした。これを回避するためには,まず取調べや起訴の過程について,リアルタイムに外部的な検証が行われる必要があると考えております。その第一が,先ほども議論がありましたが,取調べの全面的な可視化,つまりそれはいろいろな方法があると思いますが,取調べの全過程を録音あるいは録画をすることであるとか,取調べに弁護人の立会権を認めることなどであると考えております。   この可視化問題につきましては,今日法務省内の勉強会の報告書などが提出されていており,この報告書を読みますと,平成23年6月以降のできるだけ早い時期に検討結果を取りまとめたいとされています。しかし,これらの問題は,もう既に長期間にわたって議論されてきております。したがって,この会議では海外の制度などを参考とした上で,早急に制度実現に向けた具体的方策を提示すべきであると考えております。法務省の方でも現在海外での状況等を調査されていると聞き及んでおりますが,その報告書の内容を速やかに明らかにしていただきたいと考えております。   また,特に直告事件に関しては,拘置所における無制限な取調べ,長期間の取調べが実態化されていると私の経験からしても認識しています。ここでは,警察での取調べ,代用監獄における取調べと同様の弊害が生じているのではないかと思いますので,この点についても調査していくべきではないかと思っております。   あと細かいことですが,供述調書は,現在いわゆる独白式で作られております。そうではなくて,調書の作成過程を書面上でも明らかにするためには,供述調書は独白形式ではなく,簡潔でかつ順を追った問答形式にするなどの工夫もされるべきではないか。あるいは起訴時点においても内部あるいは外部からの監査システムを考慮すべきではないかと考えております。   次に,二番目の検察組織の問題でございます。検察組織の組織的疲労が現在問題とされている様々な状況を生み出しています。そしてこれが,個々の検察官にも様々な影響を与えているのではないかと考えられます。この問題を解き明かすためには,まず現在の検察官の倫理意識であるとか,検察官の身分の特殊性あるいは組織に内在する問題を徹底的に洗い出す必要があると考えます。このような作業を行うことによって,適正な人事評価あるいは倫理規範の確立を行うことが必要であると思います。その前提として,現状を認識するために,今度現地に行ってインタビュー等を行うことも予定しておりますが,検察組織のどこにどのような問題点があるのか,あるいは人事評価,配属,配転の基準が現在どのようになっているのか,どのような問題がそこにあるのかといったような問題,それから検察官の個々人につき,仕事,職場,上司,組織などに対して満足感があるのか,あるいは負担感があるのか,そしてそれが意識にどのような影響を与えているのかといったことを分析することがまず必要と考えます。通常の民間の企業などではいわゆる不祥事が行われた場合には,そういった問題を解明するために社員に対してインタビュー,あるいはサーベイ等が行われますが,そういった調査を行うことが必要不可欠ではないかと思っております。   検察官の倫理規範の問題については,私はこれまで当然に内部的には何らかの形で文書化されたもの,あるいは形のあるものがあるのではないかと思っておりました。今般意見を述べるに当たって,事務局の方に資料を見せていただきたいということをお願いいたしました。ところがそういった倫理規範なるものというのは特にないという御回答だったので,ちょっと驚いているところであります。この機会に現状の問題認識を踏まえて,倫理規範を確立すること,そしてその実行を担保できるような組織を構築することが求められるのではないかと思います。   いろいろな関心点を申し上げましたが,その中でやはり第一に考えていくべきことは,取調べの全面可視化の問題,それから検察の組織,人事評価あるいは倫理規範の確立といったところからまず手をつけて優先的に議論すべきではないかと思っております。   以上です。 ○江川委員 前回私が関わった行刑改革会議というのがあるのですが,これは明治時代の監獄法で運営されていた刑務所を何とか今の時代の要請,人権感覚に合うものにするというのがテーマでした。検察の問題,今回の問題も実は同じだと思います。今の検察の前時代的な状況を変えなければいけないと,これがやはり大前提であり大きなテーマであると思います。前回但木さんが文化とおっしゃいましたけれども,そこの問題が大きいと思います。では,前時代的な状況とは何なんだろうかということは,こういうふうに私は思っております。検察官は,我々は誇りを持って正しいことをきちんとやっているのだから大丈夫だと,我々に任せておけばいいんだという,そういうお上意識がありはしないか。そしてそこから来る閉鎖性や密室性というのが問題なのではないでしょうか。人間というのは過ちを犯すかもしれません。それを放置していればその過ちが組織全体に及んでしまいかねません。外部の目や空気も入らなければ組織が腐っていくということも可能性としてあるわけです。実際,日本の社会の様々な組織は,そういう失敗をたくさん積み重ねてきて,ルールをきちんと作る,そして常にチェックをして情報はできるだけオープンにするという方向に社会の傾向は変わってきていると思います。なのに検察にはそういう発想がまるでない。強大な権限を持つのに,それにふさわしいルールやチェックの仕組みがない,あるいはとても不鮮明だと思います。   例えば,今,石田先生もおっしゃいましたけれども,検察には倫理綱領すらないわけです。それは一人一人の検察官,検事さんの倫理観を信頼してということなのでしょうけれども,結局公益の代表者として何をやっていいのか,何をやってはいけないのかということが個々に預けられている,任せられていることで,何をやっていいのかいけないのかが曖昧にされ,軽視され,そして無視されてはいないだろうかということです。そこのところをきちんと明確化するということは,組織が暴走しかけたとき,例えば今回のように特定の個人について何が何でも起訴して有罪を取るということで,それが目的化してしまい,そのためには手段を選ばないという状況に陥ったときに,ストップをかけるためのブレーキになるのではないかと思うわけです。もちろんそういう何か規定があるだけでは駄目で,そういった倫理綱領に沿った行動,判断をしているかどうかをチェックする監察制度というのが必要だと思います。警察にもこれが十分機能しているかどうかは別として,倫理規程や監察制度はあります。なのになぜ検察にはないのでしょうか。検察適格審査会があるという方もいらっしゃるかと思いますが,これはその検察官が職務を執るに適しないかどうかを審査するものであって,個々の行為や判断についてチェックする仕組みというのはまるで欠落しております。民間企業の取組も参考にしながら,外部の目,外からの風を入れつつチェックするという仕組みが必要だと思います。   そのチェックという観点では,捜査過程のチェックということも必要だと思います。取調べの密室性というのは前時代的な検察のある種の象徴のようなもので,もう可視化は必須だと思います。これは特捜部に限ったことではありませんし,そして可視化をするからには,その取調べの過程がきちんとチェックできなければいけないので,全過程の可視化ということが必要だと思います。   この問題に関しては,えん罪の被害者やあるいは社会の期待も高くて,私たちはやはり可視化を前提にしてもっとその先,つまり対象事件をどういうふうにするのかとか,どのようにやっていくのかという議論に入るべきだと思います。例えば任意の段階の捜査,これに関しては千葉座長が大臣のときに,記者会見の席上で,これは任意だから当然調べられている側が録音をとるのもありではないかというようなことを指摘していただきましたけれども,ではその任意の段階は個人の取り調べられる側の記録に任せていくのか,あるいは,それとも検察自身がきちんとむしろ記録を取っておいた方がいいのではないかとか,そういうような具体的な話に入るべきだと思います。それから,取調べに関連していうと,検察事務官の役割と責任が非常に不明確で,検察官の経験のある方に聞いてみると皆さん言うことが違うので,実際この検察事務官の役割と責任というのはどういうものかというのを私はやはりきちんと知っておきたいなと思います。   それから,捜査に関しては証拠の管理にきちんとしたルールがあるのかどうか。前田検事によるフロッピーディスクの改ざんだけではなくて,例えば小沢氏の政治資金をめぐる捜査の過程で押収されたパソコンが返ってきたときには,ウイルス感染していたなんていう話も報道されています。特にデジタル証拠の管理の仕方がどういうルールになっているのか,あるいは,どういうルールを作らなければいけないのかということがとても必要だと思います。   それから,証拠に関連していいますと,やはり証拠開示が十分なのかという問題もあると思います。先ほど説明があったように,以前に比べれば随分改善されたとはいえ,被疑者,被告人に有利な証拠がオープンになりにくい仕組みというのはあると思います。国民の税金を使って集めた証拠が検察官だけの判断で退蔵・隠匿されていいのかということを考えると,証拠の全面開示ということについても言及する必要があるのではないかと。それによって捜査の過程もきちんとチェックされるのではないかと思います。   それから,前時代的な組織の問題ということで言うと,人事評価のシステムはどうなっているのかという問題もあります。検事さんの出身者にお話を聞くと,どうもこれといったはっきりした人事評価のシステムがなくて,何か先輩が気に入った後輩を引き上げていくというようなことがあるんだと聞きます。それを聞いて,だからこそ主任検事,つまり先輩検事が欲しがるような調書を若手の検事が無理にでも作っていくのではないかなということも感じました。公正な人事評価のシステムを入れて,真実発見,これは何も検察に有利ということだけではなくて,被疑者,被告人にとって有利な結果も含めて,とにかく真実の発見にきちんと貢献した者はプラスに評価するというシステムが必要だと思います。それに加えて,組織の問題でいうと,例えば法務省,法務行政の重要な部分を検察出身者が担っているという問題,あるいは判検交流など,旧司法省の名残を引きずっているのではないかというような問題もあって,例えば検察側の必要とする法制度はどんどんさくさくとできていくのに,人権の問題に関してはどうも置き去りにする傾向はありはしないかというようなことも,検討する必要はあると思います。   こういう前時代的な体質というのは,情報発信の仕方にまで及んでいます。記者会見はようやくオープン化にはなりましたけれども,非常に限定的でありますし,録音や写真撮影すら駄目だと。それだけではなくて,記者会見ではなるべく重要な情報を伝えずに記者クラブの方々との個別の関係,つまり誰も見ていない密室状況の中で情報が伝わっていくという問題もあります。こうした前時代的な体質というのは,いろいろ説教をしたり教育をするということでは変わっていかないと思います。システムを変えるということによって変えていくしかないので,そこのところをやっていかなければいけないのが私たちの役割だと思います。   もろもろ申し上げましたけれども,可視化,証拠の全面開示,倫理規程の制定と監察制度,公正な人事評価のシステム,それに併せて先ほど郷原委員もおっしゃいましたけれども,もっと今の社会や犯罪に合わせた形に組織を変えていく。果たして特捜検察を今までのまま存続させていくのかどうかと,こういうことについてもやっていかなければいけないと思います。そのためにはいろいろな聞き取りやアンケート調査などが必要で,先ほど石田委員が検察官への聞き取りあるいは調査ということをおっしゃいましたけれども,それだけではなくて,事務官も含めてやらなければいけないなと思います。   前時代的なシステムを変える,システムを変えていくというときには,やはりあまねく実行可能なものでなければならない。特別な優秀な人ではなくてもあるいは都会ではなくても,全部でできるようなシステム作りというのをやはり視野に入れて議論を進めていきたいと思います。   以上です。 ○後藤委員 現在,私が理解している限りでの事情を前提として,私の問題意識を申し上げたいと思います。   五つの大きな項目に分けて,A3のものに書いてみました。   まず,検察捜査の在り方を見直す必要があろうかと思います。今回の事件には,現在の検察捜査の基本的な問題点が表れているのではないかと思います。つまり検察官が立てた仮説に合うような内容の供述調書,例えば自白であったり共犯者の供述だったりしますけれども,それを積み上げることによって有罪を立証しようとする方法です。そのために取調室という密室で無理な取調べが行われがちになります。これはいわゆる特捜事件に限られる問題ではなくて,もっと一般的な問題だと思います。それが言わば極端になって,証拠物までも供述調書に合わせて変えてしまったというのが,今回の前田元検事の行為であると見ることができるのではないでしょうか。   このような密室での取調べによる調書作成を中心とする捜査方法を見直して,もっと透明度の高い公明正大な捜査にすることが重要な課題になると思います。そのためには,今までも言われておりますように,例えば取調べの可視化があります。その中には,弁護人の立会いや,あるいは参考人の取調べについても可視化することが入ります。これは供述の過程を客観的に残すという意味で,非常に重要であると私は思います。   それから,逮捕,勾留という身体拘束が自白させるための手段にならないようにする方策が必要だろうと思います。具体的には逮捕・勾留の要件を厳格に運用する。取調べの時間について,先ほども指摘がありましたけれども,それを制限する必要があるのではないか,あるいは保釈の運用を見直す必要があるのではないか,こういった問題点があり得ると思います。   それから,やや技術的ですけれども,現在の法律だと検察官の作った調書は,証拠としてかなり優遇された条文になっております。それがいわゆる伝聞例外の規定で,検察官の面前調書は特別な扱いを受けているわけですけれども,それがそのままでよいのかどうか,条文ないしその運用を見直す必要がないかということも課題になると思います。   それから,証拠物の管理方法がしっかりできているのかどうか,それを改善する必要がないのかも問題でしょう。証拠開示につきましては,2004年の改正でかなりの前進がありました。今回このフロッピーの件が発覚した一つのきっかけも,その証拠開示であったと思います。その意味ではこの事件では,言わば司法改革の良い効果が現れてきたと見ることもできると思うのです。ただそれでも例えば被告人に有利な証拠が埋もれてしまうことがないのかどうか,それを防ぐためにはどんな方策があり得るかについては,やはり考える必要があろうかと思います。   二番目に検察官の倫理を確立することが必要であろうと思います。弁護士には弁護士職務基本規程という条文化された規範があるわけですけれども,他方の当事者法曹である検察官にはそういうものがない。ここに基本的な問題があるのではないか,検察官のための倫理規範を明文化することが必要ではないか。しかも,それは実効性のあるものにしないといけない,そのための方策を考える必要があると思います。倫理については,教育の過程でも重要であって,私ども法科大学院で教えている者にとっては,一つの課題がここに示されていると思います。   三番目が検察の組織の問題です。例えば,特捜部をどうするかという問題です。さらには,検察全体の人的組織の問題,この中にはすでに多くの方が御指摘になった決裁の仕組み,あるいは検察官の数や配置が合理的であるかなど人事の在り方の問題があると思います。また,検察と法務省との関係,これは江川委員もおっしゃいましたけれども,検事の方々が法務省の幹部を占めるという現在の体制はどうか。これは検察の現場をよく御存じの方が法務行政を担当するというよい面もあると思いますけれども,逆にいうと,法務省と検察の間の緊張感を薄くする,弱くするという,問題がありはしないか。こういった問題意識も必要ではないかと思います。   四番目が,ソフト面の問題,つまり検察官の意識,役割意識の問題です。日本の検察官は,非常にまじめで,強い責任感を持って働いていると思います。ただ,それが自分たちが刑事司法の中心であるというような,やや過剰な責任意識になってはいないだろうか。もちろん検察官には責任感がなければいけないのだけれども,それが過剰になってしまったために,いったん起訴をしたら最後まで有罪をとらなければいけないというふうに,頑張らなければいけないと,かえって制約的に働いている面がないか,言ってみればもう少し肩の力を抜いた方がいい部分がありはしないか。それから,今まで検察官は捜査に非常に力を入れられているわけですけれども,公訴官といいますか,法廷で活動する法曹へともう少し軸足を移していくことを考えたらどうかというようなことを考えております。   最後に,検察・法務以外の人々の問題です。私たちに与えられた課題は,検察の在り方を見直す,検討することですから,直接には検察が対象になります。しかし,健全な検察の在り方を維持するためには,周りのアクターの行動が非常に重要だと思うのです。周りから常に助けるとかあるいは監視することがなければ,検察の健全な在り方は維持できないと思います。例えば裁判所のことだけ少し申しますと,取調べの可視化について,もし裁判所が,「全面可視化していなければ自白の任意性は認めません,調書は採用しません」と言ってしまえば,可視化はすぐにも実現できるはずです。そういう意味では,決して裁判所に責任がないわけではない,すべてを検察の責任にして済む問題ではないと思います。このように警察,裁判所,弁護士会あるいは報道などに対して,私たちが直接に注文はつけられないにしても,私たちの期待を発信すること,つまり検察を支えるために,こういうふうにしてほしいという期待を発信することは考えてもいいのではないかと思っております。   以上です。 ○高橋委員 皆様方と余りかぶるところはもう時間ももったいないですから,どんどん飛ばしていきたいんですが,基本的な認識を最初にまず申し上げますと,やはり自己完結的な組織というのはほかの官庁に比べても,ほかの官庁は随分人事交流しているところも出ていますし,例えば金融庁であればやはり証券監視するためにはITとか金融の専門家が必要だから中途採用するとか,随分あると思うんですが,これほど外からの人材が入ってこない組織は官庁でも珍しいなと。そんなこともあってだろうと思うんですが,やはり世の中の変化についていけていないということです。今,民間企業でもみんなそうなんですけれども,本当にITだったり金融だったりだけではなく,それぞれの分野が非常に専門化してきています。その専門的な知識を全員が持つことはできませんけれども,概念的でもいいから専門的なものをしっかり持っていない人は,高度な意思決定を行うような仕事もできないと,はっきり言って。ですから,ゼネラリストとスペシャリストという区分の仕方そのものが崩壊していると。専門性を持たないゼネラリストは全く存在価値がないという分野が今非常に増えていると私は思うんです。   ですから,私は是非これは本当に検察に対する期待も込めてなんですが,やはり検察がただ弱くなる方向ばかりで縛っていくと,これは世の中全般に困る人,喜ぶのは悪人だけだということになりますので,一方でこれは正に今までのような延長線上の自白重視のような古い手法で新しい,先ほど郷原委員が言われましたけれども,犯罪をどんどん要するに使命感だけは強いという形で突っ込んでいけば,これはえん罪を生むことになると。えん罪を生まないようにすることと同時に,やはり悪人がただ喜ぶだけという結果にならないようにするために何が一番欠けているのかというと,私はやはり高度プロフェッショナル人材の育成ということがあるんだろうなと思っています。   ちょっとざっと七つぐらい今日はまだこれ仮説段階なので紙にして配りませんが,また変わってくるかもしれませんが,ざっと今の段階での私の問題意識を言いますと,いわゆるプロでなければいけないんですよね,検察。つまり,医師とか弁護士もそうです。コンサルタントも私はやっておりましたが,プロでなければいけない。プロフェッショナルというのはスペシャリストとは違いますから,例えば仮説志向でいわゆるよくファクトベースといわれましたけれども,事実を最も尊重するとか,でも最初に仮説をもって,でもやはり聞いていると私は今の検察の問題の一つは仮説形成能力そのものが非常に低下していると。つまり最初の筋立てが余りにも陳腐だと。申し訳ないですけれども,何でそんな仮説設定能力,形成能力がというと,これはもう専門性がないとか世の中のこと全般の新しい動きについていけていないと。つまり人材開発,能力開発がついていっていないという問題が非常に大きいと。   それで,もう一つの実際にあるやってみて間違っていたら変えようよと,ファクトを重視してそれは内部のカルチャーの問題だと思うんです。それを変えなければいけないと。これは非常に大きな二つの柱,風土の改革となってくると思うんです。   私もコンサル会社に昔長くおりましたが,例えばファクトベースというのはたたき込まれるわけで,仮説で分析してきたんですけれども,やはりそこで何か分析したらこんな結果しか出ませんでしたと言うと,これは違うな,このシナリオ全部なしだと言ってひっくり返るんですよ,簡単に。それをずっとその先輩・上司がやって見せるわけですよね。その経験の中からそれが当たり前だということが刷り込まれてくる。仮説なしにやっちゃいけない,でも仮説が間違っていたら簡単にそれをひっくり返すことが当たり前なんだというものを組織の中で育てていく過程でずっと刷り込まれてくるんです。だからそういう刷り込みをどうやったら組織の中で行うことができるのかという仕組みをたくさん考えていく必要があるんだろうなと思います。それでこそ高度プロフェッショナル人材で,そういうプロフェッショナル的な働き方を持っていて,かつ専門性,だから全部は無理だと思うんですよ。法律以外にもう一つずつでもいいですから,皆さん専門分野を持ってくださいと。それについてはきちんと勉強するようにしましょうというようなタイプの人を育てていく必要があるのではないのかなと。   それからもう一つすごく大きいのが,幹部の役割定義とリーダーシップ開発だと思うんです。今回の部長,副部長の問題というのは,百歩譲って本当に証拠改ざんの本人の問題以上に,ある部分問題が深刻かもしれない。ただこれも事実関係もまだこれがよく分からない部分もありますけれども,更に言えば,そうやって重層的なチェック機能が機能しなかったばかりか,逆にそれを場合によっては隠していたということさえ指摘されているわけでありまして,どうも私はその検察の独任制官庁という部分の独走を,要するに間違いをチェックする機能として組織階層を重層的にすることによってチェックするという発想自体がもう明らかに陳腐化していると思うんです。これは民間企業でも起きていることなんですが,上司は部下のことが分からないわけですよね。お前,何で落ちないんだと,昔,俺の頃は落とせたんだよというのが,今相手にしている人の頭の良さも違うわけですよね,はっきり言って。ですから,昔の手法のときの経験をベースにチェック機能を働かせようとしても,もうそもそもそれ自体に無理があると。要らないと言っているつもりはないですけれども,更に言えば,上司と部下というのはある部分では利益相反する部分がありますので,そういう意味で,それをチェックすることに対して自分にはね返ってくる部分もありますから,そういう意味も含めて,必ず第三者というのは外部という意味とは限らないんですけれども,横からのチェックを入れるような形でチェックすべきであって,むしろ幹部の役割というのは,新しい時代に即応して我々検察というのは,例えば特捜というのは,何の捜査を手掛けるかというのは自分たちで決められる組織ですから,正に戦略ですよね。世の中の流れに対してどんな事件をやるべきなんだと。そのためにはどんな人材を開発し,どんなスキルを内部に持っていないとできないんだということをトップがばんと戦略を決めて人材育成を徹底してやるとか,そういうリーダーシップこそがむしろ幹部に求められているのであって,一個一個の案件のチェックはむしろ横からの別の体制で,より担保するような仕組みにしていかないと現実的ではないのではないかと思うんです。   それで,リーダーシップ教育も今,民間ではいろいろあります。例えば多面評価,本人の上司,部下,全部含めて多面評価する。これをやると出るんですよ,すごく。大体これも今日こんなお話ししていると長くなってしまうんですけれども,例えば老人病院なんかで見ていないと要するに誰も見ていないときの夜中とかに虐待するようなやつがいたりするわけです。そういう人間をどうやったら一番はねられるかというと,多面評価をやると大体そういう人というのは,上からの評価なら覚えがよくて,周りからとか下からが悪いんですよ。このギャップのある人が非常に危険なんです。ですから,あぶり出す手法はいろいろあります。かつ,それはあぶり出すだけではなくて,御自分自身も気付いていただいて,ここを変えなければいけないといって自己変容していくようなプログラムを幹部に,まず上から変えなければいけないので,上の人たちの行動特性,思考特性を変えていただくためにも,そういうプログラムをやっていただいたらいいのではないかとか。   あとはもう時間もあれですけれども,皆さんもおっしゃっているような人事考課と登用の仕組みも,これも明らかにもっと多面的な評価を取り入れるとか。   それからもう一つ申し上げたいのは,今回の例でもそうですけれども,やはり組織的にもっとスキル,ノウハウを開発する仕組みも必要だろうなと思います。例えば別に自白を引き出すスキルは一切要らないというつもりは全然ないんですが,例えば,ではどういうものが望ましいやり方なのかということを,それこそ可視化すればいいと思うんですよ。それは外にという意味ではなく,正に海保でいえば,あのビデオは教育用に撮ってあったわけですよ。ですから例えばこういうやり方をしたのはこういう例があるんだよと,周りの若い人たちが見てビデオで見て,ああ,こうやって取り調べるんだといって,はい,ではあなたやってみなさいといってロールプレイでやって,ロールプレイでやった自分の姿をビデオで見せて,もう一回先生と一緒に自分の姿を振り返ったときに,自分が効果的な尋問ができているかどうかを一人一人が研修で学ぶような場とか,どうして作らないんだろうなと。どうして個人技に頼るんですかねと。個人技に頼るからおかしなことが起きていても分からないだけではなくて,もしそこですばらしいことをやっている人がいても,そのスキルが周りに伝承できないんですよ,全然。非常にもったいないですよね。組織として能力開発をしていく仕組みをもっともっと探っていくべきではないのかなと,こんなふうに思います。   他にもいろいろございますけれども,今日時間がありますので,またどこかで詳しく提案させていただきたいと思います。 ○龍岡委員 もういろいろな事項について御指摘があって,付け加えることもそうないかもしれませんが,私なりに考えているところをお話しさせていただきます。   検察に対する信頼をいかにして回復するか,それがこの検察の在り方検討会議のメインテーマ,究極的な目的であることと思います。刑事裁判に裁判員制度が導入され,司法制度改革が進められる中で,どうしてこのようなことが起こったのか,事実関係をまず明らかにし,可能な限り真相を解明するとともに,原因を究明し,再発防止に万全を期することによって,速やかに検察に対する信頼が回復されなければならないと私は思います。検察に対する信頼を回復するための検討事項としてはいろいろな考えや御指摘の点,多々あるわけですが,様々な角度から多角的な検討がやはり必要であろうと思います。私は次の三点を考えており,議論の混乱を避けるためにも,その三つの基本となる主要な事項について三つの段階に分けて議論してみたらどうであろうかと考えております。   まず第一は,今回の一連の事態について可能な限り事実関係を明らかにして,真相を解明することによって,真の問題の所在を明確にすることであると思います。第二に,これを踏まえてこのような問題が発生した原因,背景事情,問題状況を究明する必要があると思います。そして第三に,それらの原因や背景事情等の検討を踏まえて,より信頼される検察組織に再生させるために実効性のある現実的な対応をすることが検討されなければならないと思います。   以上の三点,大きなところですけれども,これについて若干付言をさせていただきますと,第一の真の問題の所在を明確にするということは,今回の一連の事態について,これは別途最高検で検証,検討がされているというところのようでありますので,その結果を踏まえてということになると思いますけれども,まずは事実関係と実態,真相ができる限り明らかにされる必要があると思います。これが明らかにされることによって,初めて真の問題の所在を的確に把握することができるし,問題解決の現実的な糸口も見えてくるのではないかと思います。その上での議論,検討でなければ議論が混乱し,方向性も見いだせず,抜本的な改革にもつながっていかないのではないかと思います。   第二の原因,背景事情の解明については,第一の真の問題の所在が明確にされればおのずと明らかになることと思われますが,そこから更に踏み込んで真の原因なり背景事情,問題を掘り下げて解明することが求められると思います。これには今回のような事態が特定の検察官の属人的な事情に起因する問題なのか,組織的な問題状況があったのか,構造的な問題があったのか,これに起因するのか,それともその双方によるものかなどが明らかにされる必要があろうかと思います。組織的な問題状況として考えられるのは,しばしば指摘されておりますとおり,決裁制度は的確に機能していたんだろうかという点であります。この点の問題意識に関連して今回の事態が当該特捜部の在り方に関する言わば特有の問題なのか,あるいはそうではなく,より一般的な問題状況なのかについてもやはり検討をされなければならないと思います。これらの点に関しては,更に検察官の人事制度,あるいは人事政策も関係してくるかと思われます。   第三の実効性のある現実的な対応策については,取調べ,捜査の在り方,殊に供述調書の録取,作成の在り方について改めて議論がされるべきであり,この中で取調べの可視化やあるいは証拠開示の在り方などが主たる論点になることであると思います。また,取調べ,捜査の在り方に密接に関連する問題として,決裁制度の在り方,あるいは特捜部の組織・制度の在り方,人事政策などが検討されなければならないと思います。特捜部についてはいろいろな議論があるわけですけれども,まずは,特捜部の組織の体制,独自捜査の在り方,あるいは決裁制度その他によるけん制,チェックの体制の強化などの改善あるいは改革によって,その機能と役割を確実かつ十分に果たしていくことが可能かどうか,その具体的な方策を検討すべきではないかと考えます。人事制度,人事政策については,検察官倫理を含む教育研修制度の在り方などが関連問題として指摘されると思います。   このほかいろいろな問題がありますけれども,以上の点について検察の信頼を回復するための前向きな議論,検討がされ,具体的な提言ができればと思っております。   以上です。 ○宮崎委員 まず初めですが,私の方はペーパーを出させていただいております。一応基本的にはそれによるところになります。   今回の厚労省の元局長事件並びにそれに関連する証拠隠滅事件は決して特異な事件ではない。今までの多くのえん罪事件に共通していたのは,警察,検察に日常的に存在する無理に有罪あるいは無理に自白を取りにいく姿勢であり,その背景には調書裁判,人質司法と呼ばれてきた我が国の刑事司法の抱える病理現象があった。そして今回の事件もその延長線上にある,起こるべくして起こった事件である,このように考えています。今回の事件を深く掘り下げて本件の特殊性あるいは本件の事案を解明するという姿勢も別段否定はしませんけれども,今までの数多くのえん罪事件に共通している,やはり無理に自白を取りにいく,あるいは被告人に有利な証拠を隠す,こういう体質は全く変わっていないわけでありまして,この点,従来のいわゆる文化といいますか,姿勢を正さなければならない,このように考えています。   是正されるべき姿勢とは,警察にも当然共通でありますけれども,この会議に即して言えば,検察捜査の適正化,検察官倫理の確立,そして検察組織の改革の三つを上げることができます。   まず一番目の検察捜査の適正化でありますけれども,独自捜査と警察捜査のチェックとしての捜査の双方が適正化されなければならないと考えています。そして,検察捜査を適正化するためには,何よりも相手方当事者と裁判所が捜査を実効的にチェックすることができる仕組みが必要不可欠であります。捜査を実効的にチェックする仕組みとして,取調べ全過程の録画・録音の義務化が直ちに実現されなければなりません。今回の厚労省元局長えん罪事件でも,今までの数多くのえん罪事件と同様に検察官の不適正な取調べが明らかとなっています。不適正な取調べを予防するとともに,裁判所が供述調書の作成過程を客観的・事後的に検証する仕組みとして,取調べ全過程の録画・録音の義務化は必須であります。また,証拠開示の拡充も不可欠であります。今回の厚労省元局長えん罪事件では,主任検察官によって証拠改ざんが行われたほか,取調べを担当した検察官が不適切な最高検の補足説明によって取調べメモを全て廃棄しております。このような証拠改ざんや取調べメモの廃棄は,相手方当事者である弁護人に,捜査の過程でどのような証拠が作成・収集されたかをチェックする機会が保障されていないからこそ起きたものであります。そこで,証拠の改ざんや廃棄ができないように,証拠リストの作成・交付と証拠の原則的全面開示を義務付ける必要があります。そして,証拠の原則全面開示が制度化されれば,検察官が無罪を示す証拠を隠しながら公判を維持することはできなくなります。したがって,証拠開示の拡充は公訴提起や公判遂行の過程に違法ないし不適正な点がないかにチェックを及ぼす仕組みとしても重要であります。   第二の課題は,検察官倫理の確立であります。検察官はその権限の大きさに見合った強い高い倫理が求められるはずであります。今までの委員の数多くの方も御指摘されています。そして検察官の倫理を確立するためには,まず大前提として世界の多くの国と同様に倫理規範が制定されなければならないと思います。倫理規範においては公益の代表者としての責任,すなわち被告人を有罪とすることが検察官の職責ではないことが明確にされるべきであります。今回の厚労省元局長えん罪事件では,元局長の無罪を示す検察官手持ち証拠が存在したにもかかわらず,公訴が提起され判決まで公判が維持されました。その結果,元局長は1年3か月もの間,被告人の地位に置かれました。無罪を示す証拠があることを認識しながら公訴を提起し,公判を維持するような職務遂行の在り方は,正さなければなりません。さらに,検察官の倫理が遵守されるべきことを確保するために,監察制度などのチェックシステムを創設するとともに,懲戒手続の実効化,透明化を図るべきであります。   第三の課題は,検察組織の改革であります。まず,適正かつ公正な人事が確保されるような仕組みが必要である。検察組織の中で検察官倫理に従った検事が不利益な取扱いを受ける一方で,強引な取調べをし,検察官倫理に反する行動をした検事が出世していくようなことがないようにすることが重要であります。検察官が強大な権限を適正に行使するためには,相手方当事者の立場を理解することが必要であります。現在の検事の他職経験制度について弁護士経験,とりわけ刑事弁護を経験する機会を拡大する方向で検討することを提案したいと思います。また,現在法務省の主要なポストを検事が独占している状況についても,この機会に見直すべきだと思います。   さて,最後にまとめでありますが,検察の在り方を改革すべき以上の三つの大きな課題について,本会議の提言が急がれるならば,まずは取調べ全過程の録画・録音と手持ち証拠とリストの全面開示について優先的に議論し提言すべきであります。捜査の過程を相手方当事者及び裁判所が実効的にチェックする仕組みが整えられなければ,内部組織の在り方だけを改めても捜査,公訴及び公判遂行の適正化を実現することはできないと考えられるからであります。   なお,付言すれば,今やいわゆる取調べの可視化あるいは検察官倫理の制定あるいは証拠開示,これらはいずれも他の多くの外国で既に実現できていることであります。日本でなぜできないのかということが不思議でならないというのが私のまとめであります。裁判員裁判のときも,我が国の国民性に合わないとか,シャイな日本の国民性に合わないとかいろいろなことが言われましたけれども,いざやってみれば日本の文化に適合しないことはない。きちんとできているのではないかと思っています。世界の捜査の中でのグローバルスタンダードであります様々な諸制度についても,この機会に是非とも導入をお願いしたいと,このように考えております。   以上です。 ○吉永委員 皆様方の発言が頭の中でいっぱいになって,最後に今更何か追加するべき点があるのだろうかと思うほどです。私たちこれから大変多くの時間をかけて検討を重ねることになると思いますが,法律家のための改革でもなく司法界だけの改革でもなく,国民のための検察改革であるということ,この原点は決して忘れてはいけないのではないかと思っています。再建と信頼回復ということは,国民のための検察再建でなければいけない。同時に国民の理解を得ることができなければ信頼回復はできないということを肝に銘じながら参加させていただきたいと思っております。   と同時に,やはりどういう検討の順番をしていくのかということが,きちんと問題の在りようとその解決策ということを理解をしていただくには重要なのではないかと思っています。入口は大阪地検の事件です。ここから丁寧に掘り下げていくことから始めるべきだと思います。この過程は,問題をしっかりと認識をする,共有をするということでもあります。ですから,最初に出口を作ってそこから入口と結びつけるのではなく,入口をきちんと掘り下げることによって改革点を明確にしていくという順番が必要なのではないかと思います。   なぜ起きたのか,どこで間違ったのか,なぜ間違いに気が付いたときにモラルが機能しなかったのだろうかという,この三点のところをずっと掘り下げていくと様々な問題が出てくると思います。なぜ起きたのかということであれば,特捜の在り方が問題になるかと思います。やはり極めて強大なエリート意識や特権意識というものがなぜ育ったのだろうかと。特捜は特捜だけで存在しているわけではありませんので,それは検察全体の中で特捜がなぜこのような土壌を育てていったのか,育てていけたのかということがやはり検証されなければいけない部分だろうと思います。どこで間違ったのかというところであれば,これは捜査の問題あるいは取調べの過程の問題というようなことが議題になるかと思います。当然チェック体制ということもここでは議題になるかと思います。閉鎖的な組織が生み出す問題も議論しなければいけない。さらに,間違いに気が付いても事実を曲げて組織を守る判断が生まれたのか,これは体質の問題かと思います。では,体質はなぜ生まれ育っていったのかということ,ここの中にはやはり間違いを認めてはいけない,むしろ間違ったことを間違ったと言う勇気を評価されないという評価体制の間違いがあるのではないかと思う。   部下の証拠の改ざんを知った時に,これを質すのではなくその事実を隠滅することに痛みすら感じない人がなぜ特捜部長に出世ができるのかという,人事の在り方,人事評価の在り方も,厳しく国民が理解できるように検討されなければいけないのではないかと思っています。   それから,やはり検察は正義であるという信頼が地に堕ちたわけですから,やはり倫理というもの,拠ってたつ倫理観というものをどういうふうに培っていくのかということも検討対象になると思います。これは放っておけばできるというものではないのに,構築しようとしてこなかった。空気にさらされないうちに間違った方向にどんどん肥大化していって,我こそが正義,組織を守るのが正義という奢りにつながったように思います。   このようなことを議論した上で,このことが二度と起きないために,きちんとした治療をするために何が必要なのかというところで,改革の具体的な道筋を最終段階で提言するということが順番としては極めて分かりやすい検討の仕方かなと思っております。   以上です。 ○千葉座長 ありがとうございました。   大変限られた時間ではございましたけれども,今の段階でそれぞれの皆さんから大変鋭く,そしてまた多岐にわたることにもなりますが,御指摘をいただいたのではないかと思っております。今日これで何か直ちにまとめをするとかいうことではございませず,まだまだ相互の御意見,お互いに聞いていただいて気付くこと,あるいはまた少しお互いに更に聞いてみたいという点もあろうかと思いますので,もし,今日少し誰々委員に聞いておきたいなというようなことが相互にございますれば,お出しをいただきたいと思います。   なお,本日御欠席でございます嶌委員からは事前に御意見を,書面でお出しをいただいておりますので,どうぞお目通しをいただければと思っております。   なかなか本当に皆さんの御意見,それぞれ私も聞かせていただきながら,これから大変皆さんにいろいろな厳しい御議論をいただかなければと感じたところでございますが,どうでしょうか,今日のところはそれぞれ問題意識,こういうところにあるということを共有をいただくことができたのではないかと思います。また,今後視察あるいは検証の結果等も踏まえつつ,また更に議論を煮詰めていかなければならないと思いますので,この程度で今日はよろしゅうございましょうか。 ○石田委員 今委員の多くの先生方から人事評価の問題についてお話が出たと思います。現在の検察庁の内部の人事評価の基準といった,そうした内規的なものあるいは内部規定的なものは恐らく存在しているのではないかと思いますが,そういった現時点での人事評価がどのように行われているのかといったことを,是非教えていただきたいというのが私の意見です。 ○江川委員 それと併せて,例えば証拠品の管理のルールとか,特にデジタル証拠の扱いは何か規定があるのかどうか,あるとすればどういうものなのかというのも出していただきたい。それからあと法務省に,先ほど法務省と検察の関係というのが出ましたけれども,今何人検察出身者がいらして,例えばどういうポストについていらっしゃるのかというのもできればその資料を出していただきたいというのがお願いです。 ○千葉座長 今の実情の様々な資料の御要請がございました。では,これは事務局に私から指示して必要なものを皆さんにまた御提供するという形にさせていただきたいと思います。では,今の点よろしく整理していただければと思います。   それでは,今日いただきました皆さんの御意見を,もう今日はリアルタイムで公開になっておりますので,多くの皆さんにもまた御関心をいただけているのではないかと思いますが,きちんと議論をこれから進めていくという意味では,また整理をさせていただき,あるいはまた検証結果等も踏まえながら,また皆さんと検討事項の在り方あるいは議論の進め方等々もお諮りをしながら進めてまいりたいと思っております。   また,今日限られた時間でございましたので,多分いやいやまだまだ足りていないと,もっともっと話をすべきところがあるという委員の皆さんも大勢いらっしゃると思いますので,また後日御意見を賜る,あるいはまた書面等で出していただくというようなことも併せて考えたいと思います。もし書面等お出しいただくということがございますれば,どうぞどんどん事務局の方にお届けいただければと思っております。 4 その他 ○千葉座長 それでは,次に12月に予定をしております,皆様からも御要請がございました視察の関係について確認をさせていただきたいと思います。   事前に事務局を通じまして皆さんの御日程など調整させていただきましたところ,12月7日,8日に大阪地検等への視察,12月15日,16日に札幌地検等への視察を予定をさせていただくという方向で今進めさせていただいております。皆さん本当に御多忙のところではございますけれども,現在のところ全ての委員の皆様にいずれかには参加をいただけるという形になっております。本当にありがとうございます。どうぞもしお時間の都合がつくようでございますれば,どうぞこれからもう一方の方もということがございますれば,大いに歓迎でございますので,よろしくお願いをしたいと思っております。   御視察いただく内容ですが,これもそれぞれいろいろな御意見を事務局を通じまして私も聞かせていただきました。各地検におきましては取調室や証拠品の保管場所等を御覧いただくということも考えておりますし,検察官からのヒアリングも予定をいたしているところでございます。そのほか拘置所などにもできれば赴きまして,拘置所の取調室なども御覧いただくということにしたいと思っております。   また,大阪の12月7日の視察終了後の日程に関しまして,宮崎委員より皆様にお伝えしたいことがあると伺っておりますので,どうぞ御発言いただければと思います。 ○宮崎委員 せっかく大阪まで皆様方お越しいただくということなので,大阪地検の本件の弁護人でもある鈴木弁護士とか,あるいは大阪地検特捜部の事件を非常に多く担当しております後藤貞人弁護士などの時間を取りあえず勝手に確保しておりますので,是非ともそのヒアリングの対象として加えていただければ有意義ではなかろうかと,このように考えていますので,是非ともその検察のヒアリングが終わって,5時ぐらいから大阪弁護士会で場所を取っておりますので,そちらに移動していただいてヒアリングをしていただければ,それぞれ45分から1時間ずつぐらいヒアリングしていただければと,このように思っています。   それから,なお,明くる日も鈴木一郎弁護士,後藤貞人弁護士の日程は押さえておりますが,もしどちらかしか,7日しか行けないとか8日しか行けないとかいう方がいらっしゃいましたら,いずれの日でも対応できるようにさせていただいております。一応そういうことでございまして,是非ともよろしくお願いいたします。 ○千葉座長 宮崎委員の方で大変御尽力をくださり,大変貴重なヒアリング,お話を伺う,そういう機会もつくっていただいたということでございますので,是非お時間の許す皆さん,御参加をいただければと思います。これについては,また時間の調整が大丈夫だという皆さんございますれば,事務局にお伝えいただければ,そこはまた時間等の配分ができるのではないかと思っております。 ○宮崎委員 なお,質問ですけれども,ヒアリングはこの機会だけではないですよね。この後もヒアリングの機会というのは提案してもいいですよね。 ○千葉座長 もちろんもうこれは今後もまた皆さんからの御提起,あるいは座長としても様々なヒアリングも是非進めていきたいと思っておりますので,またございますればどうぞ御提案をいただければと…… ○宮崎委員 そうですね。特捜事件で無罪になられた方とか,そういう方のヒアリングもまた是非提案をさせていただければと,このように思っておりますので,よろしくお願いします。 ○千葉座長 よろしくお願いいたします。   どうぞこれは皆さんの方からもまたこういうことが是非やったらどうかということがございますれば,御提起いただければと思っております。   それでは,御視察の当日の具体的な内容等につきましては,今いただきました御意見等も踏まえまして,内容等の調整についてはおおよそ先ほど申し上げましたような場所あるいはヒアリングということでございますが,あとは私に御一任をいただいて,詳細な日程をまた皆さんに御連絡を申し上げるということにさせていただきたいと思います。   それでは次に,本日の議事録及び配布資料の取扱いについて確認をさせていただきたいと思います。   本日は,皆さんの合意,御了解をいただいたところから議事公開をスタートをさせていただきました。議事の途中までを非公開としておりましたが,それ以前の内容も,公表する議事録に掲載しない措置を採るような内容ではなかったかと思います。そういう意味で,皆様に御異存がなければ本日の議事内容は全て公表する議事録に掲載することにいたしたいと存じますが,よろしゅうございましょうか。 (一同了承 ) ○千葉座長 はい,ありがとうございます。   また,本日お配りした資料18点につきましては,いずれも公表をさせていただくことにいたします。   ただし,先ほども申しましたように,議事録,資料とも事件関係者の実名が現れている部分につきましては,必要な部分は仮名等にさせていただくという部分もございますので,その作業は私の下でさせていただきますので,御一任いただけますでしょうか。 (一同了承) ○千葉座長 ありがとうございます。   それでは,本日の議事録及び配布資料の取扱いについては,今申し上げたような形で取り計らわせていただきたいと思います。   以上で,本日予定しておりました議事は全て終了をいたしましたので,これで本日の会合を終了したいと思います。事前に事務局の方で皆様の日程を調整させていただきましたが,次回の日程につきましては,できる限りまた多くの委員の皆さんが御出席可能な日程ということを考えまして,12月24日金曜日の午後1時30分,13時30分を予定させていただきたいと思います。よろしゅうございましょうか。−−では,そのような日程で…… ○宮崎委員 来年の日程も大体ほぼ決まっているということでいいんでしょうか。もうそこのスケジュールを確保,皆さん忙しい方なので…… ○千葉座長 皆様の日程をお立ていただくのに大変難しいところもあろうかと思いますので,事務局の方でも皆さんにお問い合わせをさせていただいております。皆さんからそれぞれの御日程をお聞きして,一番可能な曜日が木曜日の午後1時半という時間帯という状況でございますので,基本的には木曜日の13時30分ということを基本にさせていただきたいと思います。毎週そのところが駄目という方がおられますと,大変御無礼なことになりますが,そういうことは皆さんからお聞きしたところないということでございますので,1月の第2週ぐらいがスタートになるでしょうか。来年には,ほぼ毎週というぐらいの形でお願いをすることになろうかと思いますが,どうぞその御予定をそれぞれの手帳にお書きをいただいておけばと思っております。   それでは,次回も3時間ぐらい必要かと存じますけれども,議論の状況等によりまして少し長くなるあるいはそうでないと,いろいろあろうかと思いますけれども,是非御了解をいただければと思っております。   それでは,今日はこれで終了させていただきます。   ありがとうございました。 —了—