検察の在り方検討会議 第3回会議 議事録 第1 日 時  平成22年12月24日(金) 自 午後1時35分                        至 午後4時52分 第2 場 所  法務省20階 第1会議室 第3 議 題    1 議事の公開について 2 最高検察庁による検証結果についての概要説明等 3 視察等の結果報告 4 その他 第4 出席委員等 千葉座長,石田委員,井上委員,江川委員,郷原委員,後藤委員,佐藤委員,嶌委員,高橋委員,但木委員,龍岡委員,原田委員,宮崎委員,吉永委員 第5 その他の出席者 黒岩法務大臣政務官,事務局(神,土井,黒川) 第6 説明者 最高検察庁 伊藤次長検事,池上刑事部長,三浦検事 第7 議 事 ○千葉座長 検察の在り方検討会議の第3回会合を開会させていただきます。   本日も御多用の中,御出席をいただきましてありがとうございます。   なお,本日,諸石委員におかれましては,所用により欠席されています。また,吉永委員におかれましては,所用により少々遅れて御出席の御予定と伺っております。   まず,配布資料の確認をさせていただきます。事務局から確認をお願いいたします。 ○事務局(黒川) 本日皆様のお手元にお配りしております資料は合計11点でございます。こちらのインデックス付きの資料のつづりでございます。資料1は本日の議事次第,資料2及び3は委員の皆様による御視察の結果概要を記載した資料になります。また,資料4及び5は前回座長から御指示がありました証拠開示制度に関する資料や条文,資料6から10までは,前回の会合において委員から御要望いただいた資料でございます。資料6は証拠品管理のルール等に関する資料,資料7は検察官認知・直受事件の処理状況等に関する資料,資料8は検察官の人事評価基準に関する資料,資料9は法務省幹部職員への検事の任用状況に関する資料になります。さらに,資料10は大阪地検等の御視察時に委員から御要望いただいた高検管内別の刑事事件の処理状況等に関する資料でございます。資料11は民主党の法務部門会議からの当検討会議に対する御要望であり,座長の御指示により今回配布させていただくこととなったものでございます。   なお,本日は最高検察庁の伊藤次長検事により検証結果の概要について御説明をいただくことが予定されておりますが,検証結果報告書などの説明資料につきましては,後ほどの御説明時に配布を予定しております。 ○千葉座長 ただいま事務局からも話がございましたように,後ほど午後1時50分頃から最高検察庁の次長検事より,検証結果の概要について御説明いただくことになっております。ただ,次長検事ほか最高検の皆様は,午後3時30分から記者会見が予定されているとお聞きをいたしておりますので,検証結果の概要についての御説明は午後3時15分頃までとなります。そのため,この後,議事の公開に関する御協議をいただくことになりますが,その御協議については,午後1時50分頃までには終わりたいと思いますので,御了承いただきたいと思います。 1 議事の公開について ○千葉座長 それでは,議事の公開について改めてお諮りをさせていただくことがございます。 今般,民主党の法務部門会議から,国会議員にも別室における議事の傍聴を認めてほしい旨の御要請がございました。もっとも,この本検討会議における議事の傍聴等の在り方につきましては,第2回の会議において,傍聴していただく方の範囲も含めて御論議をいただきました結果,報道関係の方々を対象に別室に設置したモニターで傍聴していただくという結論に至っているところでございます。別室の収容人数の問題等もございます。また,出入りされる方の把握,管理にも物理的制約がございますので,このような点も含めて御議論をいただきまして,現在の形で広くオープンにさせていただいているということでございます。   これによれば,本検討会議といたしましては,今後も報道関係の方々を対象に傍聴していただくということになろうかと思いますが,この点について何か御意見がある方はいらっしゃいますでしょうか。もしございますればお出しをいただきたいと思います。 ○宮崎委員 座席スペースがどの程度あるかどうかというのは,ちょっとよく我々は分からないのですが,記者の席が今空いている,あるいは傍聴可能であれば,国会議員の傍聴を断るという理由はなかなか見いだしにくいのではないかというように思うのですが,いかがでしょうか。 ○佐藤委員 今,座長が言われたのは,既に決めたこと以外に,別の,今お話のあった人たちの傍聴を認めるようにするかどうかについてのお諮りですか。 ○千葉座長 基本的にここで傍聴の在り方について,既に御議論をいただきました。そして,今のような形で別室でモニターでメディアの方に傍聴いただくという形になっておりますので,この原則をもう一度考え直す必要があるかどうかということでございます。 ○佐藤委員 それでしたら,先ほどお話がありましたように,座長のいろいろな配慮をされた上での采配によって,ここの議論が行われて決したわけですので,よほどの事情変更があるなら別ですけれども,そうでない限りは一度決した方針を変更するのはいかがかと私は思います。 ○郷原委員 原則,もう既に決められているとおりでいいと思うのですけれども,ただ,今後の議論の中身によって,ある程度,公開性を確保した方が国民に対して理解が得られるというものもあるような気がするんです。例えば,今後のヒアリングの中で,むしろちゃんと世の中に分かるように話をしたいと思われる方もいらっしゃるかもしれないです。えん罪被害者とか,そういう立場の方。そういう方々のヒアリングなどをやるときに,この検討会議でも最初に委員が意見を出し合うときには公開されていましたよね。ああいう扱いを特別にするかどうかということは,ちょっと今までの原則とは違った扱いをしてもいいのではないかと思うのです。それと,そう考えると,原則はもう決まったとおりなんですけれども,そういう原則を決めた理由が物理的な制約というのが主だとすれば,この委員の中で了解が得られる場合に例外を認めることは別に適切ではないとは言えないと思うのですけれども。 ○石田委員 できる限り公開をするというのがやはり原則ではないかと私は思っています。報道関係に限られたのは,言わば技術的環境の問題だけと認識しているのですが,何も報道関係者が国民の,あるいは市民の代表でもなければ,代理でもないわけですから,国会議員の方々が傍聴をされたいというのであれば,公開するのは,全く問題はないのではないかと思います。 ○井上委員 私はちょっと違う意見を持っています。郷原さんがおっしゃった件については,要するに公開するのは何のために公開するのかといいますと,ヒアリング対象者が国民に訴える,その場とするということではなくて,あくまでこの会議が公明公正に行われている,それを国民の目にオープンな形で進める,そのための公開だと思うのです。ですから,ちょっと趣旨が違うのではないかと思います。それから,確かにこの会議はできるだけオープンにして国民の方々の理解を得ながらということですけれども,逆に国会議員の方々だから特別扱いするというのもちょっとおかしいのではないかという感じがするのです。そのような扱いをするとすると,一般の方々で希望する人をなぜ排除するのかということになりますので,それはやはり物理的制約ということもあるのですけれども,マスコミの方というのはやはり国民の代表ではないのですけれども,国民の知る権利に奉仕する立場にあって,広く報道していただけるということで,そういう形で公開をしているというのが今の趣旨ではないかと思うのです。それに,政務官が出席していらっしゃいますので,立法府との関係では,政務官が窓口になって,必要なことにはお応えしていただくというのが一つの在り方かと思いますので,私は,公開が原則だから,この際,特別にという議論はちょっと筋が違うような感じがします。 ○郷原委員 誤解がないように申し上げておきたいのですけれども,私はこの場を公開する目的がえん罪被害者の方のアピールのために出されるべきだと言っているわけではなくて,原則公開でやはりある程度の公開性を保っておかないと,世の中から何か本当に隠れてこそこそやっているように見られるので,本当にオープンにできる場があればオープンにすることも必要ではないか。そういう場合に,むしろそういったことを希望されるような方々のヒアリングが適しているのではないかという意味で申し上げただけです。 (吉永委員入室) ○江川委員 井上先生がおっしゃったように,オープンにするのはできるだけほかの人たちも含めてオープンにするのが一番望ましいと思うのです。ただ,今,場所を見てきましたけれども,確かに狭くて,34席ありましたけれども,あと入れるとしても椅子を三つぐらいが精一杯という状況ではあるのです。ですから,誰もがお入りくださいというような物理的な状況ではないわけです。   ただ,やはり先ほどいろいろな方がおっしゃったように,国会議員の人を排除するというのもまた変だなと思うわけです。それと同時に,民主党だけ入れるというのもまた変な感じがするわけです。ですから,こういった議論の内容を与党の方にも野党の方にも聞いていただいて,いろいろなところに反映していただくというのは意味のないことではないと思うので,野党の方も含めて国会議員の方だったらどうぞというのも一つの選択肢ではないかなという気がします。 ○嶌委員 僕はマスコミだけでいいと思います。つまり,マスコミの代表を通じて国民に知らせるという趣旨で良いと思うのです。それは国会議員を入れるというと,何か特別の特権を持っている人に聞かせているというふうに見えるし,今は民主党から要請が来ているんですか。民主党が来れば当然自民党だって公明党だって共産党だってみんな来たいと言うと思うんです。それから,それだけではなくて,例えば,いろいろなえん罪事件というのは東京だけで起こっているわけではなくて,鹿児島とかいろいろなところで起こっている。もしそうした事件のヒアリングなどを行うとしたら,その地域の議会だって県議会の人も聞いてみたいとか,いろいろな話が出てくると思うんです。だから,どこかで線引きをしないと僕はこれはまずいのではないかなと思います。そういったときに,やはりメディアを通じて広く国民に知らせるという原則を固めたら,原則を曲げない方がいい。そして議事録も後で公開するわけですから,僕はそれが何か一番良いのではないのかなと,どこかで原則を外すと,どんどん無原則化が広がっていってしまうという感じがしますけれども。 ○千葉座長 今,いろいろ御意見をいただきました。冒頭に申し上げましたように,基本的には皆さんにいろいろな条件の下にどのような公開をということをお諮りをし,メディアを通じて公開にするという原則でこの検討会議を進めさせていただいておりますので,今日いただきました皆さんの御意見は一度私も引き取らせていただきまして,先ほど御意見がありましたように,どうしてもこれはその原則をもう一度考え直さなければいけないのかどうか,そういう必要がございますれば,また皆さんにお諮りをさせていただくということにいたしまして,当面というか,今日の時点では基本的な原則で議論,会議を進めさせていただくということにさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。 (一同了承) ○千葉座長 ではそのように取り計らせていただきます。   それでは,ここで次の議事に入る準備をさせていただきますので,少々お待ちいただきたいと思います。 (伊藤次長検事,池上刑事部長,三浦検事入室) 2 最高検察庁による検証結果についての概要説明等 ○千葉座長 それでは引き続き,議事次第2の最高検察庁による検証結果についての概要説明等に移らせていただきます。   最高検察庁におきましては,今般の大阪地検特捜部における一連の事態を受けて,次長検事を座長とする検証チームを設けられ,厚生労働省元局長の無罪事件の捜査・公判上の問題点等について,検証を行ってこられたものと承知いたしております。また,このような検証に当たり,最高検察庁におきましては,検証アドバイザーとして外部の第三者の方にも御意見をいただき,それを踏まえて検証作業を進めてこられたものとお聞きしております。この度検証結果が取りまとめられ,本日公表する運びとなったとのことでございますが,本日は最高検察庁の伊藤鉄男次長検事から検証結果の概要を御説明いただき,質疑応答を行うことといたしたいと考えております。   皆様のお手元には,今回の大阪地検における一連の事態に関する最高検察庁の検証結果報告書を配布いたしております。これから伊藤次長検事に御説明をお願いしたいと思いますが,その前に私から何点か申し上げたいことがございます。   この度の最高検察庁の検証は,公判係属中の前田元検事による証拠隠滅事件や大坪元部長らによる犯人隠避事件に関する内容をも含むものであると聞いております。そのような部分については,現段階においては刑事訴訟法47条の趣旨からして,原則として公にしてはならないものと考えられますが,本検討会議において検察の再生及び国民の信頼回復のための抜本的な検討を行うという目的の限りにおいては,本検討会議に御報告いただく必要性及び相当性が認められるものと考えられます。もっとも,そのような内容を現段階で広く一般に明らかにすることについては,先ほども申し上げましたように,刑事訴訟法47条との関係で問題がありますし,本検討会議に御報告をいただいた内容を踏まえて議論し,その成果を公表することとすれば,国民の皆様にも十分に納得がいただけるものではないかと思われます。   そこで,これからこの度の証拠隠滅事件及び犯人隠避事件に関する内容をも含めて御説明をいただきたいと思いますが,それらの部分につきましては議事を非公開とさせていただき,議事録にも可能な限りの内容を掲載するにとどめることとさせていただきたいと思いますので,御了承をお願いいたします。   それでは伊藤次長検事から御説明をお願いいたします。 ○伊藤次長検事 最高検察庁次長検事の伊藤でございます。   厚生労働省元局長のA氏に対する事件におきましては,無罪判決を受けて控訴を断念する事態に至り,A氏に多大な御労苦をおかけしました。また,この事件の主任検察官が重要な証拠物であるフロッピーディスクのデータを改ざんした上,その事実を知った当時の上司らもこれを隠蔽したという正に前代未聞の事実が判明し,最高検察庁において,主任検察官を証拠隠滅罪により,当時の上司らを犯人隠避罪によりそれぞれ逮捕し,公判請求するという事態に至っております。このような事態に至りましたことは誠に遺憾であり,A氏や国民の皆様に改めて深くおわび申し上げます。   最高検察庁といたしましては,今回の事態を真摯に受け止めて反省し,このような事態に至った原因等を究明するとともに,明らかになった問題点を踏まえて思い切った改革策を講じ,検察の在るべき姿を取り戻すため,本年9月以降,検証チームにおいて徹底的な検証を行ってまいりました。   この検証におきましては,座長である私以下合計18名の検事が関与して,本件の確定記録その他の資料の検討,関係者の事情聴取等の調査を行ってきました。また,柳田前法務大臣からの御指示により,外部の第三者の方の御意見も伺うこととし,刑事実務に精通された3名の検証アドバイザーの方々に,事実認定も含め報告書の全般にわたり御検討をお願いして,忌憚のない様々な御意見をいただき,その内容をも十分に盛り込んで検証結果を報告書に取りまとめました。   本日,検証結果報告書が完成いたしましたので,まずは検察の在り方検討会議に御報告させていただくことといたしました。本検証結果は最高検察庁の総力を挙げて取りまとめたものであり,今後の御議論の基礎としていただくに足りるものであると考えております。   本日はお手元にお配りした詳細な検証結果報告書の内容に沿って,主にA氏に対する事件の捜査・公判の経過とその問題点,証拠隠滅・犯人隠蔽事件の概要とその問題点,これらの問題点を踏まえた再発防止策の3点について順次御説明させていただきます。このうち証拠隠滅・犯人隠避事件に関連する説明部分につきましては,刑事訴訟法47条との関係から公にすることに問題があると考えておりますので,議事を非公開としていただけますようお願いいたします。   また,同様の観点から,最高検察庁におきましては,証拠隠滅・犯人隠避事件に関連する記載の大部分を削除し,事件関係者についても基本的に仮名により記載するなどして,公表用の検証結果報告書を作成することとしております。   お手元にお配りしました詳細な検証結果報告書につきましては,この検討会議における議論にのみお使いいただくこととし,特に証拠隠滅・犯人隠避事件に関連する部分につきましては,公にされることのないよう御注意いただくとともに,事件関係者の実名の取扱いについても御配慮いただけますようお願いいたします。   まず,A氏に対する事件の捜査・公判上の問題点等について御説明申し上げます。この事件や別件郵便法違反事件等の概要等につきましては,既に第2回の会合において,法務省刑事局から説明がなされたと聞いておりますので,本日はその点については重ねて申し上げません。お手元の報告書の49ページ(公表版46ページ)にありますとおり,本件については,「凛の会」が心身障害者用低料第三種郵便制度を悪用するなどした郵便法違反等事件の捜査の過程において,「凛の会」が日本郵政公社に提出していた公的証明書が不正に作成されたものであると判明したことが捜査の端緒となりました。この公的証明書は厚労省の社会・援護局障害保健福祉部企画課長名義で作成されたものでしたが,厚労省内にその作成に関する決裁文書も発番号も存在せず,その一方で,企画課長の印影は正規のものであったことから,虚偽公文書作成等の嫌疑が浮上したものであります。この公的証明書の作成当時の企画課長がA氏でありました。   この点に関して,「凛の会」のD元会長を取り調べましたところ,報告書の同じページにありますとおり,平成21年4月21日までに元会長から,平成16年2月25日頃,厚労省を訪ねてA氏らに本件公的証明書の発行をお願いし,同年6月初め頃にもA氏を訪ねてその発行を再度お願いした上,その後,A氏から直接本件公的証明書を受け取った旨の供述が得られ,その旨の供述調書が作成されました。このD元会長の供述は,当時取調べ検察官において把握していなかったA氏の外見的描写等を含むものであり,また,D元会長の手帳の記載とも整合するものでありました。これを受けて,大阪地検特捜部においては,前田検事を主任検察官として,本件に関する捜査を開始し,「凛の会」発起人のE氏からもD元会長の供述に沿う供述調書が作成されました。その頃,大坪部長は前田検事に対し,「何とかAまでやりたい。前田君,頼むな。これが君に与えられたミッションだからな。」などと述べたことが認められます。   これらの捜査結果を踏まえ,大阪地検特捜部におきましては,地検内部の決裁や,大阪高検及び最高検への報告を経て,まずは本件に関連する稟議書等の偽造等の事実により,平成21年5月26日に厚労省のC係長及びE氏を逮捕するとともに,厚労省関係者等の取調べを開始しました。その結果,E氏やH氏から,D元会長の供述におおむね整合する供述調書が作成され,また,厚労省関係者からA氏の関与を示す内容の供述調書が作成されたほか,報告書の56ページ(公表版53ページ)にありますとおり,当時のA氏の上司であったG部長からも,平成16年2月下旬頃,I議員から電話で凛の会への公的証明書の発行について協力を依頼され,A氏に対し,I議員からの依頼を告げて,その対応を指示したなどとする内容の供述調書が作成されました。さらに,逮捕当初は,本件公的証明書の発行はA氏の指示によるものでなく,自らが独断で行ったものである旨供述していたC係長からも,平成21年5月31日以降,A氏の指示に従って本件公的証明書を作成し,A氏が「凛の会」関係者にこれを手渡した旨及びその詳細な状況に関する供述調書が作成されました。   これらを踏まえ,大阪地検特捜部では,地検内部の決裁や大阪高検及び最高検との協議を経て,同年6月14日,稟議書等の偽造についてC係長らを処分保留で釈放した上,同日,A氏,C係長,D元会長,E氏の4名を本件により逮捕しました。   A氏は本件公的証明書の作成等に関する自らの関与を全面的に否認しましたが,大阪地検特捜部におきましては,引き続きC係長ら関係者らから供述調書を作成するなどの捜査を行い,同年7月4日,A氏ほか3名を本件により起訴しました。   本件公判の経緯はお手元の報告書3ページに記載したとおりであり,本年5月26日に検察官が取調べ請求していた関係者の供述調書のうち,相当数を却下する決定がなされ,本年9月10日,A氏に対する無罪判決が下されました。大阪地検においては,判決内容を精査した結果,判決結果を受け入れるべきとの判断に至り,大阪高検及び最高検の了解を得て,同月21日に控訴を断念し,直ちに上訴権を放棄する手続をとり,無罪が確定しました。   次に本件捜査・処理の問題点でありますが,検証の結果,このような捜査の経過に関して,主な問題点として次のようなものがあったと考えております。   まず,いわゆるフロッピーディスクの問題です。大阪地検特捜部においては,C係長の逮捕後,その自宅からフロッピーディスクを押収しており,そのフロッピーディスクの中には報告書7ページのエ及び11ページ(公表版10ページ)のアに記載しましたとおり,本件公的証明書と同一内容のデータを含むファイルが記録されておりましたが,そのプロパティ情報を見ますと,そのデータの作成日時が2004年6月1日午前1時14分,更新日時が同じ日の午前1時20分となっておりました。この点,郵便局の担当者の供述等により,同担当者が「凛の会」側に公的証明書の提出を求めたのはその年の6月8日頃,「凛の会」側が本件公的証明書を郵便局に提出したのは,その年の6月10日頃であることが判明していました。そのため,D元会長の供述等を併せ考慮いたしますと,6月8日頃から同月10日頃までの間に,D元会長からA氏に対する本件公的証明書の発行要請,A氏からC係長に対する指示及び本件公的証明書の発行が行われたと考えられました。しかし,C係長の平成21年6月7日付けの供述調書においては,A氏から作成を指示され,その日のうちに本件公的証明書の作成に取りかかって,深夜にデータを作成して印刷し,翌日の早朝に公印を押なつして完成させた上,A氏に手渡したとされていました。   したがって,本件公的証明書がフロッピーディスク内のデータを用いて作成されたとすれば,その作成日時は平成16年6月1日頃となり,先ほどの郵便局の担当者の供述等と整合しないこととなるという問題がありました。しかしながら,前田検事は,A氏を逮捕,起訴する段階においては,フロッピーディスク内のデータが本件公的証明書の元となったデータと断言できるものではなく,また,印刷日と文書作成日が同一とは限らないところ,関係者の供述等の証拠関係から,A氏の関与を揺るがすものではないなどと判断していたものであり,供述調書と客観的証拠との整合性を冷静かつ慎重に吟味・検討するという捜査の基本を軽視したものであったと言わざるを得ないと考えております。   二点目は,犯行の動機及び理由についてです。本件において,前田検事らは,本件をI議員からの依頼に基づく議員案件と位置付け,それがA氏の犯行動機になったものと考えておりましたが,報告書の9ページのオ及び13ページのエに記載いたしましたとおり,議員案件であるとされながら,C係長が独断で虚偽の稟議書等を作成し,その後,A氏の指示により本件公的証明書を作成したという経過は自然なものとは言い難いと考えられます。また,議員案件だというだけで申請書及び資料の提出も受けず,決裁手続も経ないまま本件公的証明書を発行するという犯罪に至った理由ないし動機として十分であると考えられるかについても疑問があります。これらの点に関して,なお慎重な捜査・検討が必要であったにもかかわらず,これが尽くされていなかったという問題があったと言わざるを得ません。   三点目は,公的証明書の授受の点に関する捜査が尽くされていなかった点です。すなわち,報告書12ページ(公表版11ページ)のイに記載いたしましたとおり,D元会長はA氏から直接本件公的証明書を受領したと供述しておりましたが,その際の連絡状況や受領後の本件公的証明書の流れについては関係者の供述が曖昧であり,証拠上明らかになっていませんでしたから,この点についても授受の事実自体に疑問を生じさせるものとして,慎重な検討が必要でした。   四点目は,I議員の取調べについてです。報告書12ページのウに記載いたしましたとおり,I議員につきましては,その公判段階の証言により,D元会長と面会して本件公的証明書の発行に関する協力の要請を受けたとされる平成16年2月25日に千葉県内のゴルフ場でゴルフをしており,D元会長の供述する日時に同人と面会したと認定することは困難であることが明らかになりましたが,総選挙前との事情があったとはいえ,D元会長やG部長の供述の信用性を吟味するため,起訴前にI議員を取り調べることを検討する必要があったと考えられます。   このような証拠上の問題点があったにもかかわらず,本件においてはA氏を逮捕し,起訴するに至ったものであって,逮捕に当たって必要な捜査が十分に尽くされていなかったという意味で問題があったと言わざるを得ませんし,これらの証拠上の問題点を解決しないまま,A氏を起訴するという判断をすべきではなかったものと考えております。   次に,本件の捜査に関しましては,そのほかにも取調べの問題や決裁の問題を指摘しております。まず本件におきましては,公判段階で捜査段階の供述を翻した関係者のうち,C係長,H氏,D元会長の3名の供述調書について,検察官調書の特信性が否定されるなどし,相当数の供述調書が却下されました。報告書3ページの1にも記載しましたとおり,本件においてはA氏が本件公的証明書の作成等に関与したことに結びつく客観的証拠は存在しなかったため,このような事案の真相を解明するためには,取調べにより関係者の供述を得ていく捜査手法が中心とならざるを得ません。その場合,供述中心の証拠構造のはらむ問題点を十分に意識して,できる限りの客観的な証拠を収集・検討し,その過程にも十分な配慮をしながら取調べを進める必要があります。   しかし,本件においては報告書14ページの(1)に記載しましたとおり,相当とは言い難い誘導等により客観的証拠や客観的な事実と整合しない供述調書が作成されたのではないかと疑われるものが少なからず存在し,その取調べについては反省すべき問題があったと考えております。また,H氏の取調べに関しては,弁護人からの取調べ状況に関する申入れを受けて,内部で調査が行われた際,P1検事により依命通達の趣旨に反する対応が行われた点でも問題がありました。   本件捜査・処理の節目節目においては,大阪地検内部の決裁のみならず,大阪高検及び最高検に報告がなされ,その方針等につき了承がなされておりました。   しかしながら,報告書18ページ(公表版17ページ)の(3)に記載したとおり,まず本件において前田検事は決裁を受けるに当たり,本件フロッピーディスクの問題を始め,本件捜査上の問題点を上司に報告していませんでした。また,特捜部内において,大坪部長は検察官を集めて捜査会議を開くこともなく,佐賀副部長には実質的な関与をさせず,重層的ないし組織的な検討やチェックを行わない上,主要な証拠物の報告や提示を求めることもありませんでした。   さらに,大阪地検内における検事正や次席検事の決裁においても,詳細な証拠関係や客観的証拠の有無・内容,消極証拠の有無・内容等を十分に報告させていませんでした。大阪高検における検討についても同様の問題があり,最高検においても担当検事が大阪高検の担当者から報告を受けて,検事総長等に対して,一,二枚程度にまとめた資料を用いて報告していたに過ぎないなど,必要な助言・指導等がなされたとはいえない点がありました。このような点については率直に反省すべきところがありますし,同様の事態の再発を防止するため,適切な指揮・指導等を行う体制を構築する必要があるものと考えております。   このように本件捜査には多岐にわたる問題が認められましたが,その背景につきましては,報告書21ページ以下において分析を加え,次のような点を指摘できると考えております。   まず本件においては,前田検事において,大坪部長からの指示を踏まえ,A氏の検挙を最低限の使命として,それを達成しなければならないと考えながら捜査を進めたものである上,C係長の逮捕後,C係長がA氏の指示を否定する供述をしたことについて,検事長を始め多くの幹部から,C係長が独断で作成することは考えられない旨の指摘がなされたことも加わり,証拠に基づく捜査・処理という基本がおろそかにされ,A氏が本件に関与しているとの見立てについての十分な吟味・検討がなされなかったことが挙げられます。   さらに,先ほど述べたとおり,大阪地検特捜部内において,重層的ないし組織的な検討やチェックがなされていなかった上,大坪部長が,部下検察官から消極的な意見が述べられることを好まず,その意向に沿わない検察官に対して理不尽な叱責を加えることもあったことから,消極証拠や問題点を上司に言い出しにくい状況にあったことなど,当時の大阪地検特捜部の運営の在り方にも大きな問題がありました。   また,大阪及びその周辺においては,大阪を中心とした異動を希望する検察官も多く,一定の限られた人材の中から適任者を選定してきたという実情があり,しかも幹部職員と部下職員との間において,比較的親密な人間関係が形成されやすく,そのような人間関係のために適材適所の人事を行うことが困難となり得るという問題なども考えられ,このような人事配置等の在り方に関し,率直にこれらを反省する必要があると考えております。   次に,本件の公判遂行をめぐる問題点につきましては,報告書24ページ以下に記載してございます。本件におきましては,公判遂行過程におきまして,後ほど御説明するとおり,大阪地検内部において,前田検事による証拠隠滅事件が発覚したわけですが,その後の公判部の対応につきましては,前田検事による証拠隠滅事件及び大坪部長らによる犯人隠避事件の内容をも踏まえて御説明する必要がございます。これらの御説明に当たりましては,冒頭にお願いしましたとおり,議事を非公開としていただけますようお願いいたします。 ○千葉座長 御説明の途中ではございますけれども,これから先の部分につきましては,議事を非公開とさせていただきます。今後,議事の公開を再開する場合には,改めてお知らせいたします。そのようにお取り計らいをお願いします。 (別室への音声送信を中断) ○千葉座長 それでは引き続き伊藤次長検事から御説明をお願いいたします。 ○伊藤次長検事 証拠隠滅事件の経緯及び問題点について御説明いたします。   御承知のとおり,これから説明を申し上げます事件につきましては,公判係属中であり,検証結果報告書におきましても,今回の捜査調査結果を踏まえ,最高検として認定した事実を記載したものですので,その点についての御理解をいただきたく存じます。   まず,証拠隠滅事件について御説明いたしますが,報告書99ページ(公表版96ページ)以下にありますとおり,この事件は前田検事がA氏を起訴した後の平成21年7月13日,本件の証拠品につき,早期還付すべきものの有無について検討を行った際,C係長方から押収したフロッピーディスクについて,ファイルデータの順序を入れ替えたほか,本件公的証明書と同一内容のデータのプロパティ情報の更新日時について,2004年6月1日1時20分となっていたものを平成16年6月8日以降にA氏から指示を受けて本件公的証明書を作成した旨のC係長の供述等に整合させるため,2004年6月8日21時10分に変更するなどの改ざんを行ったとされるものです。その後,前田検事は平成21年7月16日に本件フロッピーディスクをC係長の家族あてに郵送し,還付しました。 (略)   報告書28ページ以下に記載しましたとおり,前田検事によるこのような行為は刑事司法の根幹を揺るがすものであり,断じて許されない行為でありますし,本件公判を不当に混乱させ,A氏の防御権を侵害する極めて重大な問題でした。もっとも,その犯行動機については,前田検事はA氏の事件の公判の紛糾及び上司からの叱責を避けるため,C係長に本件フロッピーディスクを還付することにより証拠開示の対象とならないようにしたと認められるところであり,前田検事において,A氏の関与がなかった,あるいはその関与がなかったかもしれないと現実に考えていたものと認めることは困難であると判断されました。   さらに,これまで検察庁において電子データの保管・管理に当たり,電磁的記録媒体の原本そのものを利用して内容の解析等を行ってきたという取扱いにも問題があったものと考えております。   次に大坪部長らによる犯人隠避事件について説明いたします。 (略)   大坪部長及び佐賀副部長は,まずP1検事らに対して他言を禁じた上,前田検事に対してデータの改変は過誤によるものとして説明するよう指示するとともに,平成22年2月8日頃,前田検事に対し,本件データの改変が過誤だと説明できるような話を考えておくよう重ねて指示し,同月10日頃,前田検事から提出された上申書案を基本的に了承するとともに,より合理的な説明内容とするよう指示するなどし,本件データが過誤によって改変された可能性はあるが,改変の有無を確定できず,改変されていたとしても,過誤に過ぎない旨,事実をすり替えて,自ら又は特捜部所属の検察官らを指揮して捜査を行いませんでした。   また,大坪部長,佐賀副部長は同年2月2日頃,大阪地検次席検事に対し,また,翌3日頃,検事正に対し,それぞれ前田検事が本件フロッピーディスクを書き替えたと公判担当の検事が騒いでいるが言いがかりであり,問題はないなどと虚偽の報告をし,同次席検事及び検事正をして,捜査は不要と誤信させて,自ら又は大阪地検所属の検察官らを指揮して捜査を行わないようにさせたものであります。 (略)   報告書31ページ(公表版30ページ)以下に記載しましたとおり,大坪部長らにおいて,その職責に違背し,巧妙かつ組織的な隠蔽工作を行ったことは極めて重大な問題でした。 (略)   また,検事正及び同次席検事においては,少なくとも本件公判の担当検事が前田検事によるフロッピーディスクのデータの書き替えを指摘していると報告を受けたにもかかわらず,証拠の改変という問題の重大性を軽視し,大坪部長らからの「問題がない」との結論のみを安易に受け入れたものと言わざるを得ず,庁務を掌理する職責を担う者らの対応として大きな問題がありました。   A氏に対する事件に話を戻しますが,このような経緯を踏まえますと,少なくとも大阪地検内部で前田検事による証拠改ざんが発覚した後の公判の対応には問題があったものと言わざるを得ません。   まず,改ざんが発覚した後の段階について申し上げますと,報告書25ページに記載しましたとおり,検事正らに改ざんの事実が正確に報告され,また,検事正らにおいて適切な対応がなされていれば,この問題に対する徹底的な調査,捜査が行われていたものと考えられ,その場合にはそれら調査等の結果を踏まえて,本件の公判に関してもA氏の弁護人に対し,証拠改ざんの事実を明らかにし,あるいは場合によっては公訴を取り消すことが検討されたものと考えられますが,実際にはそのような調査等や適切な対応はなされませんでした。 (略)   また,本件においては改ざんの内部的な発覚後,証拠関係に最も通じた前田検事をして,本件公判に立ち合わせましたが,これは適切な公判活動が期待できないという疑問を生じさせるものであり,検察の対応として許されないものであったと考えております。   次に論告の段階について見ますと,報告書26ページに記載しましたとおり,その段階におきましては,多くの証人が捜査段階の供述と異なる証言をし,D元会長,C係長らの供述調書の特信性が否定されて,却下されていたほか,I議員の証言によりD元会長の供述の信用性が揺らいでおりました。この段階においても検察官がA氏の有罪を主張することを支える証拠はなお相当程度存在していたとも考えられますが,それまでの間に先ほども申し上げたような徹底的な調査等が行われておれば,その結果等を踏まえ,A氏に対して有罪を求めないことを含め,論告段階における適切な対応の在り方も検討されたものと考えております。   以上がA氏に対する事件の捜査・公判上の問題点及び証拠隠滅・犯人隠避事件の概要や問題点であります。   なお,このような検証結果を踏まえ,証拠隠滅・犯人隠避事件に関する前述の人事上の処分に加え,本日,大阪地検公判部長,P1検事が戒告処分とされました。   その他の事件等についてですが,本検証におきましては,前田検事が東京地検及び大阪地検特捜部に在籍した間に関与した41の事件について,本件と同様に証拠の改ざんが行われていなかったか調査いたしました。その結果,報告書34ページ(公表版32ページ)に記載しましたとおり,本件以外の事件について,前田検事が証拠の改ざんを行った事実は認められませんでした。   この後の御説明部分につきましては,議事の公開に支障がないかと考えておりますので,公開の措置をお願いいたします。 ○千葉座長 それではここからの御説明に関しては議事の公開に支障がないということでございますので,公開の措置をとらせていただきます。 (別室への音声送信を再開) ○千葉座長 それでは引き続きまして,伊藤次長検事から御説明をお続けいただきたいと思います。 ○伊藤次長検事 再発防止のための方策について御説明いたします。   以上のような検証の結果明らかとなった問題点を踏まえ,検察におきましては,報告書39ページ(公表版36ページ)以下に記載しましたとおり,以下のような再発防止のための方策を講ずることといたしました。まず特捜部の事件の捜査・処理の適正化のため,今般開始する方策といたしましては,次のものを実施することといたしました。   一点目として,特捜部の独自捜査事件の重要性に鑑み,上級庁のより効果的な指導・監督の体制を構築し,適切な検察権の行使を確保するため,平成23年2月から高検の検事長の指揮事件とするとともに,高検及び最高検に特別捜査係検事を配置して,証拠関係の十分な検討等を行うことといたします。   二点目として,本件において相当数の供述調書について特信性が認められなかったことを踏まえ,検察として今後より一層取調べの適正確保に努める所存ですが,特捜部が行う独自捜査の身柄事件に関し,自白の任意性,信用性等に関わる取調べ状況について,裁判所の公正な判断に資する立証方策の在り方を検討する必要があることから,平成23年2月頃までに試行方針を策定した上,その後,速やかに取調べの録音・録画の試行を開始することといたします。   三点目として,特捜部の独自捜査事件に関し,上司及び上級庁が消極証拠を含む証拠関係を十分に把握・検討することができるようにするため,主任検察官は上司に対し,全ての証拠書類及び主要な証拠物の写しを提出し,証拠上の問題点を報告するとともに,高検に対してもこれらの報告を義務付けるものといたします。   このほか,次のような方策を講じることとしております。特捜部の独自捜査事件において,複雑な事件等の捜査を行う場合には主任検察官を総括的に補佐する検察官を配置し,この検察官はその職務として証拠の分析・整理を行って,把握した消極証拠や証拠上の問題点を主任検察官だけでなく,上司等に報告する義務を負うべきとするなど,捜査体制の在り方を周知徹底いたします。   特捜部の独自捜査事件において,部長等の監督者は主任検察官と同様に証拠を直接把握して,問題点の検討を行うことや,当初の見立てに固執することなく,証拠に基づきその見立てを変更し,あるいは引き返す勇気を持って,捜査から撤退することも含め,適切な指導及び決裁の在り方を周知徹底します。   公判活動に従事する検察官は,捜査段階とは別個の観点から,先入観に捕らわれず,記録や証拠物を精査しなければならないことや,その過程で重大な問題点が判明し,最終的に有罪判決を得ることが著しく困難であると認められる場合等には,公判段階においても引き返す勇気を持って,公訴取消しを検討することなど,公判活動の在り方を周知徹底します。   電子データの証拠物の原本を検察官が直接手元に保管することは,過誤防止という観点からも不適切であることから,平成23年4月から,順次,電子データの証拠物を押収した場合は遅滞なくその複写物を作成した上で,その原本を封印・保管する扱いとします。   次に,継続的な検証及び指導の充実強化のため,次の方策を講じることといたします。過去の検証結果を含め再発防止策の実施状況の検証を継続するとともに,検察官等に対する指導を充実強化するため,平成23年4月を目途に,最高検に,これを担当する部署を設置します。平成23年2月上旬を目途に,公正な検察権行使に関する基本原則ないし心構えの案を作成し,その後,全国検察長官会同において議論を深めるなどした上でこれを公表し,その周知徹底を図ります。   検察庁職員による犯罪,その他の違法な行為については厳正に対処しなければならないことから,その適正な対応をとるべきことは当然でありますが,今回の事態に鑑み,改めてこの点について周知徹底を図ります。これらに加え,全国的視野に立って適材適所の人材配置を実現するための措置について,平成23年のできる限り早い時期に結論を得るよう検討することとします。   また,取調べメモの保管・管理の在り方については,検察官の取調べ状況を効果的に立証する方策を検討するという問題もあり,近時の取調べメモの証拠開示等に関する裁判例なども分析の上,平成23年3月までに結論を得るよう検討することとしております。   最高検としては,今後,この検証の結果について,各般の御意見を承り,それらを真摯に受け止めて,引き続き,再発防止のための方策を着実に実施するものであります。また,この検察の在り方検討会議におきましては,検察の在り方に関して幅広い観点から抜本的な御議論をいただいているところでありますので,その御議論等をも踏まえ,国民の負託に応える検察活動の実現のため,最大限の努力を続けてまいりたいと考えております。 ○千葉座長 ありがとうございました。   これから,ただいまの伊藤次長検事による御説明の内容に関しまして,御質問等があればお伺いしたいと思います。   なお,伊藤次長検事ほか最高検の皆様におかれては,この後,この検証報告の公表のための記者会見を予定されているとお聞きしております。そのため,質疑の時間は午後3時15分頃までとさせていただきたいと思いますので,あらかじめ御承知おきいただきたいと思います。   また,このように本日のところは質疑の時間に限りがありますことから,一巡目はお一人1問ずつということで,なるべく多くの皆様に質問の機会が行きわたりますよう御協力をお願いいたします。   また,御覧のとおり,最高検察庁による検証結果は非常に大部なものとなっております。また,証拠隠滅・犯人隠避事件に関連する質疑応答につきましては,先ほどと同様の理由により,議事を非公開とさせていただく必要があると考えております。これらの事件の内容につきましては,委員の皆様におかれましても初めて説明を受けられたところではないかと思われます。そういう意味で,委員の皆様方において検証結果報告書をじっくりと読んでいただいた後も改めて十分な質疑の時間をとらせていただくようにしたいと考えておりますので,本日のところは,まずは証拠隠滅・犯人隠避事件に関連する部分以外,議事を非公開にしないで済む部分について質疑をしていただければと思いますので,御協力をよろしくお願いします。委員の皆様の中には,証拠隠滅・犯人隠避事件に関連する御質問が中心だという方もおられるかと思いますが,それは次回などにまとめて御質疑いただく形をとりたいと思いますので,どうぞよろしくお願いします。   それでは御質問がございましたら,お手を挙げていただければと思います。 ○郷原委員 前提事項について質問させていただいた上で,若干の意見を申し述べさせていただきます。   この検証の性格なんですが,一般的に具体的な事件について消極判決などの問題があったときに,検察内部の検証といいましょうか,問題点を明らかにするための調査などを行うことは検察の中での調査としてあると思うのですけれども,今回はそうではなくて,先ほどおっしゃったように,大臣からも第三者のアドバイザーを入れろという指示もあってというふうにおっしゃっていましたし,対外的に公表するということも含めて考えると,もともと性格自体が部内的な措置のためというよりも,対外的にこの事件の中身を検証して原因を究明して,社会に対して信頼回復するための再発防止措置をとるためものと,こういう性格のものと考えていいのでしょうか。そうだとすると,むしろ検察庁法との関係で言えば,検察庁法14条本文の法務大臣の一般的な指揮監督権にも関連する検証が行われたというふうに理解してよろしいでしょうか。 ○池上刑事部長 検察内部におきまして,具体的事件,無罪になったでありますとか,再審の結果,無罪になったような事件につきまして,検証した例は,いわゆる氷見事件,志布志事件,最近では足利事件があります。これらの事件は,検察内部でその記録等に基づいて様々な調査を行って検証結果を作成し,それを公表しつつ,部内の指導にも活かしてまいりました。   本件については,9月21日に本件の大阪地裁の無罪判決を受け入れて控訴を断念し,上訴権放棄をするという措置を講じたところでございますが,その際に,この事件については足利事件と同様の検証をする必要があるというふうに判断しました。ただ,その一方で,同じ日に前田検事の証拠隠滅事件の強制捜査にも着手しました。その段階では,検察庁独自の調査が捜査と並行して行われるという関係にあったものでございます。   その後,当時の法務大臣が,9月28日に第1回の検証チームの会合に御出席になりまして,しっかりと検証してほしいということと,有識者の意見を入れて検証をまとめて公表しなさいという御指示をいただきました。これを法的に整理すると,検察庁法14条の問題になるのかもしれませんが,いずれにしても行政的な問題ですので,我々は法務大臣の指示に従って,11月の段階からは刑事実務に精通した3名の方に検証アドバイザーをお願いして,その方々の御意見を取り入れ,あるいはいろいろ議論を交わしながら,今回の検証結果を取りまとめたというものでございまして,そうした意味では,今回の検証方法は検察としては初めてではないかと思っております。 ○郷原委員 今の御説明を前提に考えますと,私はそういう意味では,今回の検証というのは社会に対して,正に法務省と検察が一体となってこの問題の原因を明らかにして,再発の防止措置をとって,信頼を回復するためのもの,客観性を持ったものというふうに理解してよろしいということですよね。 ○池上刑事部長 我々最高検の検証チームとしましては,御指摘のように社会に,そして国民の皆様に御理解をいただき,また,その方々にお約束するものとして再発防止策等を策定したものでございます。 ○郷原委員 そうだとすると,ちょっとここで完全に私の意見になるんですけれども,私はこの報告書は,今御説明いただいた内容からすると,非常に一方的な見方がなされているのではないかという気がいたします。取り分け,本件の原因について,大坪前特捜部長の個人的な資質によるものというところが,非常に色濃く強調されている。そして,一方で,それは,その前の特捜部長時代には,大阪地検特捜部においてはそういうものは余りなくて,まして東京,名古屋の特捜部もそういうことはなくて,正に大坪という特捜部長の変わった個人的なキャラクターによって起きた事件で,前田検事は上司の叱責を受けることも恐れて,それが犯行動機になったというようなことまで書かれているわけですね。   こういったことを,客観性を持って検証した結果として世の中に公表することが,果たして適切なのかどうかという点について私は非常に疑問があります。取り分け,まだ,公判を控えている時期で,もちろん,具体的な事実として公判で立証する事項ではないかもしれませんけれども,世の中の印象,取り分け裁判官の心証にも大きな影響を及ぼすものだと思われますので,果たしてこういう内容を現時点で公表することが適切なのかどうかということについても私は疑義があります。   委員の中には刑訴法の学者の委員も入られておりますので,是非,御意見を伺いたいところです。私は率直に申しまして,その検証の中身が十分に客観性を持ったものと考えておりませんし,詳細バージョンの中の若干ポイントとなるところを拝見した限りでは,例えば前田検事がどういうことをすべきだったかということは書いてあるんですけれども,それが決裁の段階で是正されなかったということが書いてありますが,それでは,これだけ問題があるのに,前田検事がここのところをきちんと注意しなかったのかということが,なぜ,決裁のプロセスで指摘されなかったのか。決裁のプロセスの実質的な問題はほとんど指摘されていない。客観的な検証としては不十分極まりないのではないかと私は考えています。そういう意味で,現時点でこのような内容のままで検察が組織として再発防止策はこれで当面,十分だというようなものを打ち出すというのは,かえって国民の信頼を損なうことになりかねないのではないかというのが私の意見です。 ○千葉座長 御意見ということでお出しをいただいたと承知をいたします。 ○江川委員 まず,感想からですけれども,問題点を非常に小さく小さく見せようとしているという感じがしてなりません。というのは,例えば,報告書の14ページですけれども,調書の特信性を認められて否定されたということで書いてあるわけですけれども,5人の特信性を肯定し,3人を否定したと書いてありますけれども,これは実際上,43通中34通が否定されています。この記述ですとむしろ肯定された方が多いような感じを受けますけれども,全く実際は逆なのでありまして,そういうところの認識が足りないのではないかと思います。   あるいは,報告書の24ページですけれども,いろいろ問題点が出てきたけれども,被告人としての立場を有していたC,Dらを取り調べることは慎重にしなければならないうんぬんとありますが,実際問題,Iさんの証言の後にDさんを調べて,Iさんに頼んだのは別な日だったかもしれないという調書を作っているじゃないですか。つまり,検察官の筋書きを維持するための補充はやるけれども,そうでないものはやらないということではないかという疑念があります。   質問なんですが,一番最初に130名に上る関係者の事情聴取を行ったというふうにありますが,その内訳はどういうことなのか,なぜ,Aを事情聴取しなかったのか。Aさんはもう裁判が終わっていますのに。そして,記者会見の席で私がその質問をしましたら,伊藤次長検事は,Aさんは終わっているから話を聞くことを考えるとおっしゃいましたけれども,Aさんに事情をお伺いになっていないのはなぜなのかということ。それから,先ほど過小にというふうに申し上げましたけれども,130人にも聞いた割には,大事な問題点が裁判所の判断はこうなっているとかという感じで書かれていて,最高検の評価が出ていないんですね。   例えば,報告書の16ページに供述調書全体が検察官による押し付けによるものではないかとの疑念を生じさせたとありますが,最高検としての評価は調書の押し付けだったのかどうか,どういう認識でいるのかということを聞きたいと思います。あるいは,報告書の17ページにも必ずしも相当とは言い難い誘導により,客観的証拠や客観的事実と整合しない供述調書が作成されたのではないかと疑われるものが少なからず存在しと,この部分についても,誘導のために問題のある調書が作られたというふうにはっきり判断をしているのかどうかということ。あるいはP1さんと,それから,P2さんの供述の問題,これは報告書の15ページですけれども,これについて,裁判所の方はP1さんとP2さんの証言の内容について,非常に信用性に疑問を持っているとコメントしておりますけれども,P1さんとP2さんは偽証したという認識でいいのかどうか。あるいはP2さんの場合は副検事ですけれども,彼自身が自分の判断でこういう事実に非常に疑問符をつけられるような証言をしたのかどうか,この辺をお答えください。 ○三浦検事 まず,事情聴取を行った約130名の内訳ということでございますが,詳細な報告書でいいますと,34ページ(公表版32ページ)に前田検事が関与したその他の事件という部分がございます。これは前田検事が東京地検,大阪地検のそれぞれ特捜部に在籍した当時,関与したA氏の事件以外の事件,41件ございますが,それの関係で証拠の改ざん等がなかったかという調査をしております。その関係で事情聴取をした者が100名程度でございます。それを含んで130名程度と記載したものでございまして,A氏の事件だけでいいますと,30名くらいから事情聴取したということでございます。   それから,A氏の事情聴取をしなかったという点でございますが,今回の検証は,この事件について我々の捜査・公判活動にどのような問題点があったのかということを,主として検察内部における決裁等の手続の在り方等を中心に解明する必要があるというふうに考えていたということがまず一つございます。   それから,A氏から見た捜査の問題点,あるいはA氏の弁護人から見た捜査の問題点というのは,公判の過程で様々御主張され,あるいはA氏自身,法廷でも発言されているところでございまして,もちろん,それも含めて我々の検証の基礎にさせていただいておりますが,私どもとしては今回の検証を進める上では,そういった公判におけるA氏あるいは弁護人の御主張を勘案するということで,あえてA氏のお話を伺うことまでは必要ないだろうと判断したところでございます。A氏以外にも関係者はおられるわけですが,その多くは公判中ということもありまして,私どもとしては,判決が確定しているA氏だけから別個にお伺いするということまでは必要ないのではないかというふうに考えたところでございます。   それから,取調べの問題点について,最高検としてどう判断したのかというお尋ねでございますが,確かに報告書の記載は裁判所の証拠決定なり,判決で指摘されていることをベースにしている書き方のところが多いのも事実でございます。その事情と申しますと,決定自体が,特信性を判断する限りで,特に取り調べられた方々の主張を排斥できないということで,特信性を否定するというような理由の書き方をしていることがありまして,他方で,今,御指摘のありましたように取り調べた検察官は,取り調べられた側の話とはやや違う証言をしているということがございます。   具体的に申しますと,取り調べた検察官としては相手が言うほどのことはしていないとか,部分的にはそうだけれども,そういう趣旨ではなかったとか,いろいろな形で証言をしているところでございまして,我々としては改めて検証の過程で,そういう取調べ検察官も事情聴取いたしましたが,基本的に公判で証言した内容と同様の供述をしているという状況でございます。そういうことでありますので,私どもとしては証拠の決定で言われたように,相手方の主張を排斥できないという限度で,私どももそれを尊重できるものではありますけれども,それを更に超えて取調べ検察官の証言が誤りであって,あるいはうそであって,虚偽であって明確なそういった取調べが行われたというところまで認定できるだけの証拠は得られなかったということでございます。   そういう前提で考えますと,証拠決定などで言われておりますような取調べの方法というものについては,その内容自体はやはり適切でないし,現にそういう指摘を排斥できない,あるいは疑いを持たれる取調べであったという意味で,我々としては反省しなければならないというふうに考えたということでございます。 ○伊藤次長検事 一点,付け加えますと,もともとA氏のおっしゃり方が,とにかくしっかりと説明してもらいたいんだということだったものですから,昨日までに説明するようにということで,弁護士を通じて連絡をとったんですけれども,弁護士から,27日までは都合がとれないので27日に聞く,その後,必要ならまたA氏にも説明してくれというふうに承ったものですから,それでということでかえさせてもらったわけです。ですから,説明はしっかりとさせてもらうというふうに考えています。 ○江川委員 被害者から出発した検証でなければやっぱり駄目だと私は思いました。そこのところは意見として言っておきます。 ○佐藤委員 一点,お尋ねですけれども,これまでの特捜部が行った独自捜査において,証拠の整理でありますとか,証拠関係の検討を独自に行う検事を配置してきたのかどうかということ,それとの関連で,この度の改善策の一つに,高検に担当検事を置いて,その検事が証拠関係を検討するようにし,それを踏まえて高検が指揮をするというような記載がございますけれども,その場合に,その証拠の検討を担当する検察官と特捜部との間で,逮捕するなり,起訴するなりについての判断が食い違ったときの決定は,どこにおいて行うこととするのかということをお尋ねしたいと思います。   なお,その関連で,本件のフロッピーディスクの存在を上司が知らなかった理由が,前田検事が報告しなかったからということでありますけれども,押収品目録を上司が検討すれば,それぞれの証拠の内容についての説明を求めるなりして,フロッピーディスクの内容に関する情報を知ることはできたと思われますけれども,その辺りの検討はどうであったのかということについて,お尋ねしたいと思います。 ○伊藤次長検事 最初の点ですけれども,東京地検特捜部は,主任の上に副部長がいまして,それから部長という形で,基本的に3人が同じ証拠を見るようにしています。ですから,相互にチェックが利くという形でずっとやってきました。難しい事件になれば,非常に重要な証拠は次席あるいは検事正にも上げるという方法で東京はやってきました。   それから,二点目の高検と地検で判断が食い違った場合ですが,今,我々が考えているのは,検事長の指揮事件とするということですので,起訴・不起訴は最終的には高検の判断で決めるということになります。 ○佐藤委員 それは逮捕についてもですか。 ○伊藤次長検事 いや,逮捕は,これは一つは決裁を充実するということと,もう一つは,捜査の権限と公訴の権限を分けた方がいいのではないかという議論が随分新聞等に出ていましたけれども,それの一つの反映という意味と,両方の意味で高検の指揮事件というふうにしている。繰り返しますけれども,決裁の強化というものと,捜査と公訴の分離ということ,この両方を兼ね備えてという趣旨のものですから,そういう関係で,逮捕は地検の判断で逮捕できる,起訴・不起訴は,最終的には高検で決めるという発想でございます。   それから,押収品目録を見れば分かるということですが,東京では当然,押収品目録なども見ていますが,この事件のときはそういうのはない……。 ○三浦検事 本件では,そういった押収品目録を部長なりが見るということはなかったということでございます。 ○嶌委員 まだ,これを全部詳しく読んでいないから分かりませんけれども,これから高検が起訴・不起訴の指揮をするということになるということですね。この事件の検証に関して高検とか最高検のことも多少書いてあるようですけれども,今日の説明では主に地検内部でどういうふうに事件処理を行ったかということが中心だったわけです。高検や最高検に送られた後,それをどう処理して,そこでの判断に問題はなかったのかという点についてはどうなんでしょうか。今後は,事件の統轄を地検より一段上の高検が指揮をすれば大丈夫だというような書き方になっており,これだけを見ていると高検がみればチェックはできるという印象を受けるんですけれども。 ○伊藤次長検事 そういう趣旨で申し上げているのではなくて,チェックが一段階だった,しかも,その一段階目のチェックも機能しなかった。極端に言えば主任検事だけが全てを知っていて,副部長も部長も知らない。ですから,当然,地検の次席も検事正も知らない,高検も知らない,最高検も知らないという形になったものですから,地検内部においては重要なものを上げる,しかも難しい事件の処理については,それと同じものを高検にも上げるということで,段階的・重畳的に二段階のチェック機能が働くようにしようという発想でやっておるわけです。   先ほど来の話で,責任を小さく小さくしようとか,責任を本人に押し付けようという話がありましたが,そんなつもりも全くないわけでして,それぞれの問題はそれぞれのところにあるというふうに我々は考えています。ですから,決裁についても最高検にももちろん問題があったことは当然考えていますし,信じてだまされてしまったような格好になっているものですから,昔,河井信太郎先生は,「信ずるより確かめろ。」とおっしゃったんですけれども,そういうふうに改めようということでございます。 ○石田委員 先ほどの江川さんの質問にも関連しますが,本件は,やはり,特信性が否定されるような取調べが行われた,そして,その取調べは当初の検察官の見立てに沿うような調書を作成しようとしたというところに,問題の本質の一つがあるのではないかと考えております。そこで,なぜ,複数の検察官が特信性を否定されるような取調べをして,見立てに沿うような検察官調書を作成したのか,その基本的な,根本的な原因はどこにあるのか。改ざんの問題については前田検事,あるいはその上司などの問題点が指摘されていますが,こういった検察官の見立てに沿う調書が作られるというのは,この事件に限らず,特捜事件においては私の感じでは日常茶飯事で行われているのではないかというふうに思っています。その根本的な原因がどこにあるのかという点について,検討された方々はどのようにお考えになっているのでしょうか。   それに関連して,取調べの録音・録画について,ここでは裁判所の公正な判断に資する立証方策の在り方を検討する必要という観点に立って述べられておりますが,それに加えて,取調べの録音・録画の問題は,特信性が否定される根拠となったような不当,あるいは違法な取調べの防止というような観点からの考慮はされていないのかどうか。こういう観点から質問させていただきたいと思います。 ○伊藤次長検事 捜査で見立てを立てて,それに沿った調書をとっていくというのは,今,石田先生がおっしゃったように昔からあるかないか,それはちょっとよく分かりませんが,昔の裁判でも,例えばロッキードでもそうでしょうし,リクルートでもそういう形で争われてきたことは間違いないと思います。その原因がどこにあるかと,こう言われても,しょっちゅう議論しているんですけれども,はっきりこれというのはなかなか出てこないわけであります。ただ,それを防ぐ方法はあるのではないかと考えております。   つまり,我々も若い頃から特捜事件というのは一定の絵を描きまして,いろいろな証拠を収集して,それが間違っていれば直して,直してと,そういう形で客観的な証拠に合うような最終的な絵を作っていくというのが我々の考えている捜査だと思っているんですけれども,最近の若干の傾向としては,最初に絵が相当太い絵で描いてしまっているものですから,修正が利きにくくなっているところがあるのではないか。それに,取調べで本当のことを言わせるために時間をかけてということが少なくなったり,いろいろな原因がありますけれども,我々としてはとにかくもう一回,どういうのが正しい捜査の在り方であるかと,あるいは検事というのはどういう仕事をするのが正しいのかということを,ここにも書きましたように検事の心構えであるとか,検事の捜査の在り方とか,そういうものを教えることによって,皆さんに理解していただける検察あるいは在るべき捜査というものをやっていこうということです。   確かに一言で原因はこれだと言えれば,こんな簡単なことはないんですけれども,我々がいろいろな人といろいろな場面で話しても,ある人はこうだと言い,ある人はこうだと言い,いろいろなことを言って,なかなかまとまり切らないものですから,その議論ばかりしてもしようがないので,間違わないようにする方策を一生懸命考えようということで,こういうふうにしております。   それから,もう一点の録音・録画の関係ですが,これはおっしゃるような趣旨が前提に,あるいは土台にあることは間違いないんですけれども,直接の目的はということで,こういうふうに書いた,そういうふうに理解していただければと思いますが。 ○宮崎委員 私も先ほど石田委員がおっしゃったように,結局,客観的事実と違う内容の調書が膨大に,しかも一定の設計図どおりとられていると。これは全てのえん罪事件に共通しているという具合に思いますので,それが根幹ではないかと思っているわけです。その観点で,検証できる方法として録音・録画というのは極めて重要だと思うのですが,このいわゆるまとめでは裁判所の公正な判断に資するという形で,何か裁判所が悪かったみたいにとれるようなというのか,裁判所がきちんと判断しなかったというようにもとれるような,そういう任意性立証の方法として書かれているんだけれども,本当は取調べが正しく行われたかどうかという観点からの録音・録画でなければならないと思います。   今回,稟議とか上司の決裁というのを強くするということですが,それがどうしても調書の形でしか検証できないわけですから,取調べが妥当かどうかという検証のためにも,やはり録音・録画,上司のそういう決裁を担保するためにも,やはりそういうことが必要なのではないかなと思いますので,この点は意見を述べます。   私の質問は,政治家を今回調べなかったわけですけれども,これを大阪地検が判断したと。それを大阪高検も最高検も了承したと,こう言うんですが,これは私としては信じがたいなという思いなわけです。というのは,政治家を調べるか調べないか,これも私の思い込みだと言われればあれですけれども,現場は聞きたいに決まっている,政治家を聞きたいに決まっている。その現場が取調べを自粛するというような決断をするんだろうかと。これはきっと高検とか最高検の御指導を得て,きっとそういう結論を出したのではないのかなと,こう思わざるを得ないわけです。現場がこういう政治家の調べをやらないことを決断したという,この経過とか,そういうものは詳しく載っていないわけですけれども,その辺りについて,一体,どういうことなのか。それでは,そういう決断まで高検,最高検は一切関与しなかったのか,相談もなかったのか。こういう点についての質問です。 ○伊藤次長検事 今,先生のおっしゃったことで,どこかの新聞に最高検が調べをさせなかったんだと出たものですから,記者会見の中で,そんなことを最高検は言っていませんよという話をして訂正したことがあるんですけれども,これは間違いなく地検で決めました。地検の検事正というのは私と同期の者が当時していたわけで,そういう判断は十分にできる者が大阪地検の検事正をしているわけですから,そういう人たちが今,そういうことをやるべきかどうかというのは当然,大阪くらいの規模になればやります。ですから,この件で最高検なり高検なりに自分たちの意見がないまま上へ上げて,上の方でやるなというようなことを言ったことは全くありませんけれども,これは信じる信じないの話ですが。 ○宮崎委員 やれとも言わなかった。 ○伊藤次長検事 普段は,現場で今はやらないと言えば,ああそうですかという話で終わったんですけれども。 ○後藤委員 再発防止策のところで触れられております取調べの録音・録画,それから,取調べメモの保管について,ほかの委員の御意見にもありましたが,これを表面的に拝見すると,「任意性の立証のために効果的だから」という観点で書かれているように見えてしまいます。それは検察官の当事者的な立場ではそういう見方になるのだと思いますけれども,違う観点が必要ではないでしょうか。今回,この調査をされた結果,先ほどおっしゃったように,調べられた者と調べた者とでは言うことが違う。そのために取調べの実際が本当にどうだったかが突き詰められない。調査に当たられた方は,そのもどかしさを感じられたのではないでしょうか。だから,事後的にそういうことが検証できるようにするために,やはり客観的な記録を残すことが必要だという観点で書いてくだされば,もっと説得力があったのではないか。そういう書き方になっていないのが残念です。以上は,私の意見でございます。   私の質問は,Aさんに目が向けられたきっかけがDさんの供述から始まっているようですが,最初にDさんが「Aさんに証明書の発行を頼んだ。」という供述をしたときの取調べで,どういう経過でその供述が出たかという点は確かめられましたか。 ○三浦検事 どういう経過と申しますと,報告書にも書いていることでございますが,別件の郵便法違反の事件で使われた証明書というのがあって,それがA氏が当時,企画課長を務めていたその名義であって,それを厚労省に確認したところ,決裁書類がない,それから,発番号もないということがある一方で,使われている公印が正規のものと同一であるということがあったので,そこから考えると,通常は内部の人が誰か不正に作成したということが疑われるわけですが,その関係についてD元会長から,この証明書はどういうものなんだというふうに聞いたところ,それはA氏にお願いをして,A氏から直接受け取ったものであるというような供述が出たと,そういう経過でございます。 ○後藤委員 Dさんが,御自分からそういうふうに話されたのですね。 ○三浦検事 はい,そこについては,そのような経過であったということでございます。 ○井上委員 中身についての感想等はじっくり読ませていただいてからにしますが,事実関係ないし記述の趣旨についてお聞きしたいのですけれども,問題のフロッピーディスクのデータが虚偽の証明書作成の基となったものであるとすれば基本的な非常に重要な事実と齟齬してくるという記述がなされていると同時に,他方で,起訴ないし公訴維持の段階では,それが虚偽の証明書作成に直接用いられたものでない可能性もあり,そういう一定の推論が可能であったと,こう書かれている。その趣旨なのですけれども,ほかの媒体ないしほかのパソコンによりその証明書が作成されたのであって,そのどこかの過程でこのフロッピーディスクにこういうデータが記録された可能性もあるという意味なのかなと読んだのですが,そうであるのかどうか。そして,そうであるならば,素人考えでも客観的に役所のPCとか,そういうものを調べれば確認できたのではないかと思うのですけれども,その辺の事実関係がどうであったか,御説明いただけますか。 ○三浦検事 これは,捜査が行われたのが平成21年で事件が平成16年と,5年前の事件ということになっておりまして,C係長が当時,厚労省内で仕事で使っていたコンピューターについては,リースの関係で,既に捜査段階で存在しないということが前田検事らによって確認されていたという状況でございました。そういう意味でいいますと,フロッピーディスク以外の可能性としては,存在したであろうパーソナルコンピューター本体で作成した可能性というのは,可能性としてはあり得るということでございます。 ○井上委員 それで,その点についてもっと突っ込んで捜査をすべきであったという趣旨で書かれている。そうしないまま起訴し,公訴も維持したところに問題があったということですか。 ○三浦検事 もちろん,その点もそうですし,もともとC係長の供述調書というのは,ほかの関係者の証拠と合わせていくと,フロッピーディスクのプロパティの日付と異なる日時頃に作成をしたという供述になってしまうものであり,そういう意味では,フロッピーディスクという客観的証拠と矛盾する供述調書の内容になっているものですから,そういう意味でいうと,もともと問題が詰め切れていないという問題があったということだと思っています。 ○但木委員 事は大阪の事件なので,大阪中心に検証しているんですから,仕方がない面もあるんですけれども,大阪地検特捜部,しかもある時期にこういう人と,こういう人と,こういう人がいたので,こういうことが起きましたと。だから,今後,こういうことが起きないように,こういう対策をしたいと思いますというように,概略をいえば,まとめられているように思うんですが。恐らく書いている方も余り推論を書いてはいけないということで控えているんだと思うんですけれども, やっぱりちょっと気になるのは,検察あるいは検察の特捜部というものが抱えている,あるいは伏在している危険性みたいなものがあるように思うんですね。   常にそんなことが行われていたら大変なことになるんですが,ただ,実際には非常に世の中の注目を集めて,メディアからもたくさんの報道が流される。ある意味では,メディアが次のターゲットはこういう高いところに置くべきだというようなもので,いろいろな期待感を特捜部が負ってしまうために,特捜部が筋書きを描くときに,証拠から描くのではなくて,むしろ,そういう望みからというかな,こういうふうな事件になったらば,最も優れた捜査だと言われそうだというところにターゲットを持っていってしまう危険性というのがあるように思うんですね。   それから,内部的な意味では,特捜検事に選ばれたということで非常にそれを名誉だと思い,また,そういう特捜部の検事でずっといたいというようなものもあるがために,どうも検察官の独立あるいは良心というものも少し薄らいで,むしろ,やっぱり上司の言われたとおりの調書をとらなければいけないのではないかという,何か,そういう検察官の良心よりも,そちらの方にむしろウエートがいってしまうような危険,あるいは検察のメンツとか特捜部のメンツとかいうものがだんだん大きくなってきて,途中で,公正な判断,あるいは公益の代表者としての判断をして後戻りしようというような勇気に,やっぱりなかなか難しい状況がある。それを克服してきちんと検察をやるためには,相当強い倫理観を持ってくれないとぐらぐらするときがある。   そういういつも顕在化する話じゃないんですけれども,そういう危険が内在していて,それがある人が指導者になったときに現われてしまうような,そういう危険性というのが何か検察あるいは特捜部というのがやっぱり持っているのではないか。そういうものがあるので,再発防止策というのもかなり真剣に考えなければいけないのではないかと,そういうお考えというのは,これを作る中で皆さん方にはなかったのでしょうか。 ○伊藤次長検事 おっしゃったようなことは当然,みんな,考えておるわけです。一歩間違えばどこかへ飛んでいってしまうというようなことは,いつもあるということも自覚はみんなにあるわけです。だからこそ,そういう者がいても間違わないようなシステムをとにかくつくっておこうという発想で,一つは検察官のいろいろな心構えというものをしっかりと作って,それを教えていこうということで一つ書いております。もう一つは,間違えていたときには捜査段階にせよ,公判段階にせよ,引き返す勇気を持ってやろうと,公訴取消しだっていいじゃないかということも,少なくとも今までの検察はそういうことを言ってこなかったと思うんですけれども,明言しております。   それから,検察官の独立という問題と一体の原則という,いろいろなバランスがあるんですけれども,とにかく,そういう特捜部の事件なんかについては個人個人の独立性も大事だけれども,とにかく,間違ってはいけないからということで,検事長指揮事件としたということは,やはりこの問題がたまたま出てきた前田とか大坪の話ではなくて,ほうっておけば,またそういう者が出てきてしまうかもしれないという自覚と反省の上に立って,我々としてはこういうことを書いたというふうに思っておりますけれども,表現が足りなかったのかもしれませんが。 ○千葉座長 まだまだ質問が尽きるものではないと思いますけれども,更に御質問がございましたら,次回,また,質疑の時間はつくらせていただきたいと思いますので。 ○江川委員 すみません,次回にはこのメンバーは3人とも出てきていただけるんですか。つまり,いろいろ伊藤次長検事がお辞めになるという話もありますけれども,今回の検証のリーダーは伊藤次長検事だったわけですし,これについて,本当は実は,今日,もっと伺いたいことがあるんですよね。伊藤次長検事がどういう考えで,どういうことを指示したのかということも含めて伺いたいので,次回は出てきていただけますか。 ○伊藤次長検事 私は出てこられないと思いますけれども。 ○千葉座長 検証についてはいずれにしても,それにしっかりと責任を持った方に出ていただくことは当然だと思います。どなたというのはなかなか組織的に問題があるのかしれませんが,江川委員の御趣旨はよく分かりますので,承っておきます。 ○郷原委員 それと,今日,報告していただいた趣旨なんですけれども,別にこの会議で了承するような話じゃないと思いますけれども,ただ,何かこうやってここで報告を受けて,それから記者会見で公表されると,何となくそれなりに納得してもらった上で公表されているような感じがするんですよね。ただ,最初に私が申しましたように,これは非常に問題があると思います,公表すること自体にも。本当に印象という面では,大坪前部長などに対しても非常に影響があるのではないかという懸念も持っていますので,そういうような懸念が表明されたということも十分踏まえた対応をしていただきたいと思います。 ○千葉座長 今,御指摘がありますように,ここで質疑の上,了承するとか,そういうことではございません。あくまでも,今日,御発表になられるということでございますので,私どもも一つの参考にさせていただくということで,御報告をいただいているということでございます。ただ,この検証についての質疑については,次回,引き続いて必要な範囲でやらせていただきたいと思いますので,御承知おきいただければと思います。お正月休みは,皆様,お忙しいのではないかと思いますけれども,大部でございますので,改めて熟読していただいて,更なる御質問等がございますれば,年明けにということでよろしくお願いをしたいと思います。   それでは,本日の質疑はこの程度で終わらせていただきます。伊藤次長検事,ありがとうございました。お疲れさまでございます。 (伊藤次長検事,池上刑事部長,三浦検事退室) ○千葉座長 それでは,10分間の休憩とさせていただきます。 (休     憩) (吉永委員退室) ○千葉座長 それでは休憩をいただきましたが,議事を再開したいと思います。 3 視察等の結果報告 ○千葉座長 次に,議事次第第3の視察等の結果報告に移らせていただきます。この度,検討会議として12月7日,8日に大阪地検,12月15日,16日に札幌地検をそれぞれ御視察いただき,検察官のヒアリング等を実施していただきました。全ての委員の皆様に少なくともいずれかの御視察には御出席をいただき,いろいろな観点からの御視察をしていただけたものと思っております。   もっとも,御都合によりいずれか片方の御視察しか参加できなかったという方,あるいは行程の一部にしか参加できなかった方もおられたと思いますので,この機会に各御視察の概要につきまして報告をいただき,その成果を共有することにしてはいかがかと考えております。   そこで,大阪地検等の御視察については事務局の土井先生,札幌地検等の御視察については事務局の神先生から,それぞれ視察の概要を報告していただいた上,各御視察に参加された委員の皆様からも視察の成果等について補充して御発言をいただければと考えておりますので,よろしくお願いをしたいと思います。   それでは,まず大阪地検等の視察につきまして,土井先生お願いいたします。 ○事務局(土井) それでは,去る12月7日及び8日の2日間にわたって行われました大阪地検等における視察の概要について御報告を申し上げます。お手元の資料2を御覧ください。   1日目の12月7日は,午後から大阪高検・地検において視察を行い,千葉座長及び10名の委員が参加をされました。2日目の12月8日は,午前中に大阪拘置所における視察,午後からは大阪高検・地検において視察を行いました。午前中の大阪拘置所における視察には,千葉座長及び6名の委員が,午後の大阪高検・地検における視察には4名の委員がそれぞれ参加をされました。   まず,1日目及び2日目の午後に行われました大阪高検・地検における視察の状況について御報告をさせていただきます。資料2の第2を御覧ください。1日目の冒頭には,黒岩法務大臣政務官及び千葉座長からそれぞれ御挨拶がございました。その内容は別紙1及び別紙2に記載されているとおりでございます。   次に,両日とも,大阪高検次席検事から,大阪地検を中心とする大阪高検管内の概況について説明があり,その後,質疑応答が行われました。概況説明の主な内容を紹介させていただきますと,大阪高検管内の犯罪率は,東京や名古屋高検管内よりも高く,特に大阪地検管内の犯罪率は,全国の50地検管内のワーストワンで,また,被疑者,被告人の否認率も高いとの印象があるほか,裁判員裁判への対応等の業務の増大も重なりまして,検察官,検察事務官に対する負担が重くなっているとの説明がございました。   また,大阪地検特捜部の業務の概要や,近年の受理件数等について説明があり,これまで特捜部は民主主義,経済秩序の維持に関わる事件の摘発に大きな役割を果たしてきたと考えられるとの認識が示されていました。その後の質疑応答の要旨は,別紙3に記載されているとおりでございますので,この場での紹介は割愛をさせていただきます。   概況説明の後,両日とも大阪地検の庁内,具体的には特捜部及び公判部検察官の各執務室や,刑事部及び公判部の各決裁官の執務室,取調べの録音・録画を行う取調室,証拠品の保管場所等を視察いたしました。その際,刑事部の決裁官からは,被疑者を逮捕した身柄事件を例にして,事件の受理後,主任検察官は副部長等の決裁官と何度も協議を重ね,最終的に複数の決裁官の決裁を受けた上で処分を決めることになるという説明がございました。   また,取調べの録音・録画を行う取調室においては,現在,裁判員裁判対象事件において行われている録音・録画の方法について,証拠品の保管場所においては,証拠品の保管・管理の体制について,それぞれ説明がございました。   さらに,両日とも,大阪地検に勤務している6名の検事の皆さんからヒアリングを行いました。任官して20年目の決裁官から,数年目の若手検事,また,現在特捜部に所属されている方,裁判員裁判対象事件の捜査・公判を担当されている方,あるいは,以前に特捜部や法務省での勤務経験がある方など,様々な経験をお持ちの方に出席をいただきました。このヒアリングにおきましては,参加されたほとんどの委員から,幅広い事項にわたって様々な質問がなされ,検事の皆さんも日頃の信念を率直に御発言いただくなど,活発な質疑が行われました。   ヒアリング結果の要旨は,別紙4に記載されているとおりですが,その主な内容を紹介いたしますと,委員からは今回の証拠隠滅事件の原因等についての質問が多く出され,これに対してあくまで推測であるとの前提でしたが,主任検察官としてのプレッシャー等の様々な要因があったのではないかと思う,あるいは,大阪地検に独特の風土等が事件の原因になっているようなことはないと思う等の意見がございました。また,仮に自分が証拠改ざんの事実を知ったとすればどうするかとの質問に対しては,当然上司に報告し,上司に対応を求めるとの回答がございました。   さらに,委員からは,特捜部における捜査の在り方等についての質問も多く出され,例えば消極証拠の取扱いに関連する質問に対しては,捜査を開始したから必ず立件して起訴しなければならないという考えではなく,捜査の途中で立件を断念する事件が大半であり,着手後に新たな事実が判明すれば,それに応じて捜査方針を変更することがあり得るとの回答がございました。また,取調べの可視化についても委員の関心が高く,取調べの可視化に対する現場の受け止め方を問う質問に対しては,取調べの可視化は会社や組織についての供述を得る環境を害すると思う等の意見がございました。そのほか,捜査部と公判部の判断が異なる場合にどう対応するかとの質問に対しては,証拠を吟味した結果に基づき,訴因変更等をすることはままあるとの回答がございました。   検事の皆さんからのヒアリングに引き続き,両日とも大阪高検又は大阪地検に勤務している5名の検察事務官の皆さんからヒアリングを行いました。検察事務官の皆さんにつきましても,管理職的な立場の方や,立会事務官として勤務している方,特捜部や法務省での勤務経験がある方など,勤務年数及び経験部署ともに多様な方に集まっていただき,全員の皆さんからそれぞれの経験に基づいた発言をしていただきました。検察事務官には検察官とペアになって職務を行う立会事務官という特殊な勤務形態がございますことから,委員からは主に検察官と立会事務官との関係等について質問がございました。これに対しては,検察官から意見を聞かれることはよくあり,お互いに意見を言い合っているとの回答があり,また,仮に検事の不正を事務官が知った場合には,上司の事務官に申し出るなどの対応方法があるとの回答がございました。そのほか,検察事務官の勤務状況については,忙しいときには終電の時間まで仕事をすることもあるし,土日に出勤することもある,1か月から2か月ぐらい休みなしというようなこともあったなど,業務が極めて多忙であるという御説明が多数ございました。   最後に,2日目の午前に行われた大阪拘置所における視察の状況について御報告いたします。資料2の第3を御覧ください。   大阪拘置所におきましては,まず,大阪拘置所長から,施設の沿革や概要,拘置所の役割,大阪拘置所に収容されている未決拘禁者の処遇状況など,施設の概況に関する説明がございました。その後,検察官取調室,一般面会室,弁護人面会室,未決拘禁者の居室等を視察し,引き続いて委員との間で質疑応答が行われました。その要旨は,別紙6に記載されているとおりでございます。この質疑応答の中では,検察官による夜間の取調べについて,原則として午後9時までとされていることや,大阪拘置所の職員につきましても,年次休暇をほとんど取得できないなど,厳しい勤務状況にあるとの説明がございました。   なお,両日の視察終了後,視察に参加した委員におかれましては,大阪弁護士会の主催による弁護士からのヒアリングにも参加をされました。   大阪地検等における視察についての御報告は以上でございます。 ○千葉座長 それでは,次に札幌地検等の視察に関して,神先生からお願いいたします。 ○事務局(神) 札幌地検等における視察の概要について御報告いたします。   お手元の資料の3を御覧ください。この資料の第1に記載されているとおり,札幌地検等における視察は,本年12月15日及び16日の2日間にわたって行われました。1日目の12月15日は午後から札幌高・地検における視察を行うとともに,同地検の検察官等に対するヒアリングを行いました。2日目の12月16日は,午前中の札幌拘置支所における視察,午後からは札幌高・地検において,札幌高検管内の他の地検の検察官に対するヒアリングを行いました。両日とも千葉座長及び6名の委員が参加されました。   まず,1日目に行われました札幌高・地検における概況説明及び庁内視察等の状況について報告いたします。資料3の第2を御覧ください。この日の視察の冒頭には,黒岩法務大臣政務官及び千葉座長からそれぞれ御挨拶がありました。その内容は別紙1及び別紙2に記載されているとおりです。その後,札幌高検次席検事から,札幌地検を中心とする札幌高検管内の概況について説明があり,引き続き質疑応答が行われました。札幌高検次席検事からは,札幌高検管内の特徴として,管轄区域の面積が広い上に交通の便が悪い地域も多く,裁判員候補者が地方裁判所の呼出しに応じるには大きな負担がかかるとの説明がありました。札幌高検管内の犯罪情勢については,札幌高検管内の犯罪率は全国平均を下回っているとの説明がありました。また,札幌地検特別刑事部の業務等について,特捜部が取り扱うような財政経済事件等のほかに,公安労働事件の捜査処理も行っているという説明がありました。さらに,札幌地検特別刑事部が最近扱った事件についても説明がありました。その後の質疑応答の要旨は,別紙3に記載されているとおりですので,この場での紹介は割愛させていただきます。   概況説明の後,札幌地検の庁内視察を行いました。具体的には,特別刑事部の検察官及び決裁官の各執務室,裁判員裁判対象事件を担当する検察官の執務室,取調べの録音・録画を行う取調室,証拠品の保管場所等を視察いたしました。その際,取調べの録音・録画を行う取調室においては,裁判員裁判対象事件を担当する検察官により,弁解録取における録音・録画のデモンストレーションが行われました。また,証拠品保管場所においては,違法薬物等の特殊証拠品の保管状況等について説明がありました。   次に,両日に行われました検察官等に関するヒアリングについて報告いたします。1日目の庁内視察が終わった後,札幌地検に勤務している5名の検察官の皆さんからヒアリングを行い,また,2日目の午後には札幌高検管内の札幌地検本庁以外の地検等に勤務している5名の検察官の皆さんからヒアリングを行いました。この10名には,任官して20年以上のベテランから数年目の若手まで,幅広い世代が含まれており,札幌地検の決裁官,小規模地検や地検支部の決裁官,裁判員裁判対象事件の捜査・公判を専門に担当している方,小規模庁において,捜査・公判全般を行っている方など,様々な立場の検察官に集まっていただきました。これらのヒアリングにおいても大阪と同様,参加されたほとんどの委員から質問が出され,検察官の皆さん全員から発言をしていただき,多くの意見を聞くことができました。これらのヒアリングにおける意見等の要旨は,別紙4に記載されているとおりであります。   そのうち,主な内容を紹介いたしますと,1日目は,今回の証拠隠滅事件の原因等について,上司に相談するなどして,自分のプレッシャーを分散することができなかったのではないかとの意見や,検察官の人数が十分でないような場合でも,個人の犠牲において必要な捜査を行わなければならないので,そういった要素も影響しているのではないかとの意見があり,2日目には,検察官の信頼回復を日々の仕事を通じて図るしかないとの意見がありました。また,捜査・公判における負担について,無実の人間を起訴してはならないという点で完璧を求められる一方,被害者の思いなどにも配慮しなければならず,その意味でのプレッシャーも大きいとの意見や,以前に比べて参考人などの協力も得られにくくなってきており,立証のため必要な供述を得るのがますます困難になっているとの意見など,現場の苦労についての率直な意見が出されました。   さらに,大阪と同様,委員からは取調べの可視化に関する質問が多く出され,検察官の皆さんからも多くの意見が出されました。例えば,取調べの全過程を録音・録画することについては,被疑者との間の人間関係を築くことが難しくなると思うとの意見や,本音を聞き出すのが難しくなると思うとの意見があった一方,否認から自白に転じた事件については,供述経過等を記録しておくことは,検察官の立証にとって有効な面もあると思うとの意見がありました。また,2日目には,取調べが劇場化し,被疑者の改善更生という取調べの刑事政策的な役割が果たせるか疑問であるとの意見もありました。   なお,2日目には,証拠開示の在り方についても話題に上り,現行の公判前整理手続における証拠開示制度について,弁護人とのトラブルとなった経験はない,積極的に開示をしているなどの実情についての説明がありました。   検察事務官のヒアリングですが,1日目の検察官の皆さんからのヒアリングに引き続き,札幌高検又は札幌地検に勤務している5名の検察事務官の皆さんからヒアリングを行いました。この5名の皆さんは,いずれも勤続20年以上のベテランであり,立会事務官の経験もあるということで,豊富な経験に基づいて多くの意見が出されました。このヒアリングについても大阪と同様,委員からは検察官との関係についての質問が多く出され,これに対しては,人によってはムッとされることもあるが,検察官には言いたいことを言うようにしているとの回答や,検察官の取調べに立ち会っていて気付いた点は,検察官に伝えているとの回答がありました。また,委員からは,簡易な方法によって取調べの全過程を録音しておくことについての意見を求める質問があり,これに対しては,被疑者と心を通わせて真実を話してもらうという取調べができなくなるのではないかと思うとの回答や,わいせつ事犯においては,録音された状況で動機や具体的な犯罪状況を話すのは抵抗があるという被疑者もいると思うとの回答がありました。   次に2日目の午前に行われました札幌拘置支所における視察の状況について報告いたします。資料3の第3を御覧ください。まず,札幌刑務所長による札幌拘置支所の概況説明が行われ,施設の沿革や概要,未決拘禁者の面会や取調べなどについての説明がありました。その後,検察官取調室,面会室,未決拘禁者の居室等を視察いたしました。施設の視察を終えた後,質疑応答が行われましたが,その要旨は別紙6に記載されているとおりであります。この質疑応答の中で,検察官による夜間の取調べについて,午後9時までとされているとの説明がありました。また,大阪拘置所と同様,職員は厳しい勤務状況にあるとの説明がありました。   札幌地検等における視察についての報告は以上であります。 ○千葉座長 ありがとうございました。大阪地検,札幌地検等の視察に関しまして,補充して御発言があればお願いをしたいと思います。   まず,大阪,札幌のいずれの視察の際も,視察の正式な日程とは別に,宮崎委員の御尽力によりまして,弁護士の方のヒアリングの機会を設けていただきました。その点につきまして,宮崎委員から御発言があればお願いをいたします。 ○宮崎委員 大阪地検あるいは大阪拘置所の視察の後,両日にわたって大阪弁護士会で特捜事件を多く扱っている弁護士の方に出席していただいて,ヒアリングを行いました。初日には千葉座長を始め,9名の方の委員が御参加いただき,2日目は江川委員を始め,2名の委員の御参加をいただきました。その中で,弁護士からは幾つかの報告が行われました。まず,今回のCさんの弁護人である鈴木一郎弁護士や下村弁護士から,事件についての説明がありました。平成21年5月26日に逮捕され,単独犯行を供述していたけれども,5月30日にAさんとの共犯だと虚偽自白をしてしまったと。その後は,虚実交じり合った調書の作成,しかしながら彼の言い分は一切取り上げられない調書の作成が続き,無抵抗状態になっていったと,こういうことであります。   それからフロッピーディスクと捜査報告書の食い違いを発見した経過につきましては,最初そのプロパティが異なるフロッピーディスクを発見したときに,弁護団としてはいろいろな疑念が渦巻いたと。まず,これはひょっとすればCさん自身が自分のうその供述に都合のいいようにフロッピーディスクを書き替えたのではないかという疑いを含め,フロッピーディスクが2枚存在するのではないか。捜査報告書がそもそも間違っているのではないか。あるいは検察官が改変したのではないか。しかも通常あり得ない,保釈後数日してからの全証拠品の本還付ということで,これは一体何をねらいにこういうものを返してきたのかなどなど,非常に悩んだと。Cさん自身による変造というのは,被疑者ノートをずっとCさんがつけていたために,被疑者ノートの中に取調べの際6月1日のプロパティがあるフロッピーを見せられた,見せて取調べを受けたと,こういう記載があった。それはなぜかというと,実はこの6月1日のデータをプリントアウトの後で,Cさんが証明書の日付をバックデートしているわけですね。そういう事実確認のために,そのフロッピーを示している,プロパティを示しながら取調べを受けたという経過が載っていましたので,それはないなと。そうすると,一体何がねらいなんだろうかということで,随分迷ったし,裁判所からの釈明等についてはどう答えようか,ずっと公判の間ひやひやしていたと,こういうようなことを言っていました。   それから,取調べについては,強引なストーリーの押し付けがなされ,単独犯行という調書を作成してくれなかった。弁解に耳を傾けなかったというようなことで,非常にCさんは精神的に圧迫をされ,精神的にも追い詰められた状況だったと。こういう中で,なぜ弁護人は検事に対する抗議書を出さなかったのかということについて,きっとこれは抗議書などを出すと弁護人解任ということを本人にプレッシャーをかけるだろうということがあったので,そういう抗議書も出せなかったというようなことを言っておられました。   それから高見弁護士からは,今マスコミでも話題になっております貝塚の放火事件につきまして,公訴取消しに至った経過を報告いただきました。本人の誘導ではない供述の中には,アリバイだとかあるいは本人の無実を示す様々な供述あるいは証拠があったのに,それらを一切無視した取調べが行われたと,また,自白後の一部録画のDVDでは,検察官の誘導による自白であることが見て取れました。ただ,終わったときに検察官が本人にフリーな答えをさせると,それまでの供述と全く違った供述をするということで,一目瞭然,本人の自白が自らの任意でないということが分かった内容だった。また,高見弁護士は,公訴を取り消した検察庁の記者会見についても,犯人性に疑いはないと,逮捕してから放火事件は起きていないと,こういうふうに言ったけれども,事実は放火事件はその後も起きていた。こういうことを隠して犯人性に疑いはないということを記者会見をするのは極めて問題だという具合に言っておられました。   それから後藤貞人弁護士は,これは特捜事件,大阪で一番扱っている弁護士として,特捜事件の10の特質という形で言っておられました。1,強制捜査に踏み切ると,必ずターゲットは必ず起訴する。2,強制捜査に踏み切ったときは,既に検察のストーリーがかなり詳細に出来上がっている。3,私が知っている限り,強制捜査後に起訴をあきらめたのは,京都地検特別刑事部の京大教授を逮捕した件以外は知らない。4,特捜のチームは主任が全てを知っているけれども,それ以外の多くの検事は単なる兵隊で,仲間で議論をして真相を究明するというシステムではない。5,特捜事件は午前中及び午後の早い時間の取調べはほとんどなく,夕方から始まり,深夜に及ぶ取調べが多い。6,否認している間は調書を作らない。7,任意性の立証のために検察官が出てきても,違法・不当な捜査をしたと認めた検事は誰もいない。8,密室の中で何があったかという証拠資料は調書以外は残さず,取調べメモも含めて全て廃棄する。9,特捜部出身の弁護士は特捜事件をほんの少しの例外を除くと,余り争わない。10,検察の事件は必ずマスコミへのリークがある。取調べ内容が正確に表に出る。検察は否定するが,密室の取調べ状況が新聞に出るのは検事以外に漏らす人はいない。こういうことですが,ただ,これらの10の特質は二,三を除けば何も特捜事件に限られるものではない。様々な事件でも起きていると,こういうことでありました。   それから,質疑応答で幾つかはありましたが,時間もありますのであれですけれども,取調べの可視化を前提として,これで真相究明,組織犯罪や会社事件など,真相究明ができにくくなるのではないかという委員からの幾つかの質問に対しては,もうイギリスの視察などの結果報告も含めまして,そういうことはあり得ないということ,それから暴力団事件の弁護の経験ある後藤弁護士などからは,暴力団事件でも子分はよくしゃべるもんだと,こういうことで,ただむしろそういう可視化と,それから秘密の証言をした人をどう守るかというのはこれは別だと。これはこれで別に組み立てればいいのであって,そういうことがあるから,例えば例外を除いてあるからといって可視化を妨げる理由にはならない。それはそれで証人保護の制度を考えればいいのではないかと,こういうような答弁がありました。   また,そういう録画をしたテープについてはどのような刑事訴訟法上,どのような扱いにするかということについて,若干専門的な質疑応答がありました。だんだんとそういうことは実質的な証拠という形にもなっていたのではないかと,こういうことでありました。   それからあと,可視化をしなくてもそれ以外の方法で今回は特殊な事例であって,可視化しないでもそういう事件が防げるのではないかということに対して,今回の件は何も個人の何とか検事とか何とか部長が悪いからということではないと。今回のAさんの事件でも,改ざんの事実を知っていた検事は多数いた。しかしながら,法廷で誰もその事実は言わずに訴訟を遂行していたと,こういう組織的な点が,隠蔽していたということが問題なんだと,こういうことでありました。もちろん,全ての事件がこういう無茶をしているというわけではなく,多くの事件はそうではないけれども,一旦そういうことになった場合,後戻りできないというシステムが問題なんだとこういうようなことを言っておられました。後戻りできるシステムをつくるためにはどうするかと,こういうことでございました。 ○千葉座長 ありがとうございました。   それでは,ほかにこの視察につきまして,こういう点を共有しておいた方がいいという御意見がありましたらお願いします。 ○江川委員 何点かあるんですけれども,大阪についてです。一つは,この大阪についてのその資料2の別紙4の2ページ目,●の三つ目,任意性に関する証言の経験についてということなんですが,それの○の1番目のケースなんですけれども,私は2日目にヒアリングをしましたので,1日目に聞かれた方の話を踏まえて,更に深い話を聞くことができました。早目にメモをきちんと作成をしてくださった事務局の方には感謝したいと思います。   その話の内容なんですけれども,この検事さんに裁判所の判断について今どういうふうに思うか,あるいは取調べについて反省するところがあるのかというふうに聞きましたら,今でも任意性はないとは思っていない,と。高齢だということで,夜中の12時ぐらいまで取り調べたり,大きな声を出したりしたことで任意性がないというふうに言われたけれども,自分は問題ないと思っているということでした。実はこの方は70代の心臓に何か病気のある方なんですけれども,そういう取調べをしたことについては全然問題ないと思っていると。はっきり言って,反省していないという感じがすごく印象的でした。   そして,しかもちょっと驚いたのは,裁判所に任意性を否定された後に,例えば上司などから問い合わせや指導があったかということを聞きましたら,そういうものはまるでなかったということなんです。つまり検察として裁判所に任意性を否定されるということについて,余り重大視していないという実態が分かって,私はすごく衝撃を受けました。それからその同じ方なんですけれども,ページをめくって3ページ目の●の1個目,捜査と公判の判断が異なる場合の対応についてということに関連してなんですけれども,今回の公判をいつまでも続行したということについて,問題は感じないのかということを聞きましたら,改ざんしたフロッピーで有罪を立証したわけではないと,こういうことをおっしゃったので,だったらいいのかということを非常に私としてはびっくりいたしました。この辺を補足しておきたいと思います。   それからもう一つ,ちょっとページは戻りますけれども,別紙3の2ページ目,堺支部管内における放火事件の公訴取消しについてと。多分,これは1日目に出ていなかったと思うんですけれども,先ほど宮崎先生の方からもお話のあった放火事件のこと,公訴取消しになった事件のことです。なぜこれを問題にしたかというと,こういうケースを起訴にしたのはどういう判断なのか,あるいは公訴を取り消したというのは,つまり公判に至らないで,一応そこでストップをかけたのだとすれば,勇気を持って立ち止まると先ほど話がありましたけれども,そういう面でもどうしてこれが立ち止まれたのか,あるいはもうちょっと早く立ち止まれなかったのかということを教訓とするために,とても参考になるケースだと思ったからいろいろ聞いたわけです。   ところが,その次席検事からの回答はこの別紙に書いてあるとおりで,中身のある話は出てこなかったということで,特に公判段階の話ですね。公訴取消しに至るまでどうしてだったのかということを聞いても,もうほとんど答えないという状況でした。非常にがっかりして帰ってきたわけですけれども,その後,ついこの間,公判担当の検事が被告人の捜査段階でのアリバイが書いてある捜査報告書を書き換えるようにという,アリバイ部分を削除して作り直すようにという指示をしたということが明らかになっているわけです。これは,前田検事が証拠を改ざんしたのと同じ流れの出来事ではないか。つまり検察が立てた流れに反するものをなるべく削除していこうという,そういうことで証拠にも手を加えたという意味では,やはり同類項に入るのではないかというふうに思って,この事件については,もう少しやはりきちっと調べる必要があるのではないかと思います。これが大阪地検特有の現象なのか,それともそうではないのか,あるいはほかにいろいろな原因があるのかどうか。例えばこの堺支部というところは物すごく忙しいらしくて,本庁からどんどん応援が行かないと回らないと。だから,この事件も公判前の整理手続に4人の検事が関わっているんですね。9か月ぐらいの間に4人も替わっている。つまり,応援に行った人が担当する。また次の応援に行った人が担当するというようなことだったようで,やはりそういう実態が背景にあるとすれば,やはり検察官の勤務実態なども含めて,きちんと検証する必要があると思います。   ただ,皆さんでもう一回行くというわけにはいかないでしょうから,例えば私自身が行って話を聞いてくる,あるいは,ほかにも日程が合う方がいらっしゃれば,是非と思いますけれども,もう一度大阪の方に行ってこの問題についてきっちり事実関係を確かめてくるということを必要性を感じていますので,座長としてもその御許可といいますか,御判断をいただきたいと思います。 ○千葉座長 ほかに視察につきまして,何か付言しておくことはありませんか。 ○井上委員 宮崎さんの方の御報告について,ちょっと私の記憶とは違うところがありまして,取調べの録音・録画を全面的にやった場合のその録音・録画の証拠上の取扱いについて,私が後藤弁護士に質問したのですけれども,それを弁護士会の公的なお考えでは,任意性,信用性に関する補助証拠にとどめるということになっているのですが,理屈で理論的に考えると,それを実質証拠,つまり供述調書と同じように,犯罪事実の有無の証拠として使うということがどうしてできないのか分からないといった質問をしまして,いろいろな考え方があるけれども,詰めていけば実質証拠として使うことについて理論的障害があるとは言えないというお答えだったと思います。その点,宮崎さんの要約の仕方とはちょっと違うように聞こえました。それは私,メモを取っていますので,それは記憶は間違いないと思います。 ○宮崎委員 時間がなかったので要約しましたが,私が今準備中の報告書では,井上さんのおっしゃったような点を含めて要約をしています。結局,実質証拠にするというと,テープの映し方いかんで情状面でどうか,弊害も生じてくるという,そういう議論が後藤弁護士と井上委員の間で行われたということで,それについても報告書では記載しておりますので,また見ていただければと思います。 ○郷原委員 その弁護士会でのヒアリングの件なんですけれども,私,非常に参考になったと思います。非常に印象に残ったのが,先ほどの鈴木弁護士,C氏の弁護人の話でして,ちょっと今日,それに関連して,これは私が中央公論に書いたものをお配りしていますので,後日読んでいただければと思います。   この今日の最高検の検証結果の報告書では,前田検事のフロッピーの改ざんの動機が,上司に叱責されたくなかったから,証拠物を還付をしようとした。そのときにつじつまが合わなくなると後で公判が紛糾するという程度のものという認定になっているんですけれども,鈴木弁護士の話からすると,全く印象が違うんですね。鈴木弁護士が,いかにこのフロッピーの改ざんで弁護活動が実質的に影響を受けてかく乱されたかということを,非常にリアルに語ってくれたと思います。その辺り,私が当初報道ベースで出ていた話を前提に考えていたことと大体一致していたものですから,ちょっとこういう見方についてお読みいただければと思います。   それともう一つは,C氏の取調べの状況について,抗議はしなかったけれども,非常に問題のある任意性のない調べが続いていて,本当だったら抗議をしたかったところだけれども,そうすると解任されてしまうかもしれないからやらなかったんだということを言ってくれていまして,それなのに今回のその最高検の検証の報告書では,連日接見していて,その中でも供述を維持していたから,その供述はあたかも問題がなかった,信用できるかのように書いてあるんですね。そういうことからしても,やはり反対側の,本人は無理でも弁護人から意見を出してもらうとか,そういうことをしないと客観的な検証というのは全然できていないに等しいと思うんですね。ということを非常に強く感じましたので,付け加えておきます。 ○江川委員 それに関して,補足を一個だけ。   鈴木弁護士なんですけれども,その捜査当時,一番心配をしたのは自殺をするのではないかと。それぐらい非常に追い詰められていて,そういう状況の中での取調べが続いていたんだということを強調していたことが私は印象に残りました。 ○千葉座長 ほかによろしゅうございましょうか。   それでは,大阪・札幌それぞれの視察につきまして,御報告とそれに対しての補足をしていただきました。ありがとうございます。 4 その他 ○千葉座長 次に,今後の本検討会議の進行に関連いたしまして,御提案をさせていただきたいと思います。本日,御報告がありました大阪地検及び札幌地検の御視察におきましては,一部の検察官からヒアリングを実施していただいたかと存じますが,検察を取り巻く実情を踏まえた検討を行うとの観点から,本検討会議として更にヒアリングを実施することを考えてもよいのではないかというふうに私も考えております。   そこで,現段階でこの点について皆さんから御意見,御要望を承りたいというふうに思っております。ヒアリングの対象者あるいは実施方法等につきまして,御意見がございましたら今後事務局宛に書面を提出していただくなどの方法によってお寄せいただければというふうに思っております。仮に1月下旬頃にヒアリングを実施するということを考えると,早期に,対象者を選定してお願いをするなどの準備も必要になろうかと思いますので,年をまたぐ時期で大変恐縮でございますけれども,御意見がある場合には次回の会合までにお寄せいただければと思います。   また,何か本日の段階で御意見をお出しいただけるような方がいらっしゃれば,それはまた今日出していただいても結構でございますが,何せ今,皆さんに御提起をさせていただいたことであり,皆さん,直ちにということにはならないかと思いますので,お出しいただいた上で改めてヒアリングの計画について,あらあらは私の方でまとめて,また皆さんにお諮りをするような形にしたいと思いますがいかがでしょうか。 ○石田委員 2回のヒアリングに参加させていただいたのですが,ヒアリングに出てこられた方は,その検察庁によって厳選された検察官が出てこられて,当たり障りのない回答をされているという印象を受けました。結局,集団で集団をヒアリングしているわけですから,本音は聞けないという面も否定できないのではないかと思いました。ですから,そういった厳選された方々の検察官の人を聞いても,今抱えている問題について,検察官の多くの,2,000人ぐらいいらっしゃる人の意見を代表するものとは,私自身の経験からしても思えません。もちろんヒアリングをするということについては必要だとは思いますが,やはり何らかの形で,全検察官を対象にしたいわゆる意識調査,サーベイといったようなものをすることが,今検察が抱えている問題を見出す一つの方法ではないかと思っております。ですから,そういうような形の調査も,時間もなく,あるいは費用も掛かるかもしれませんが,検討すべきではないかというのが私の意見です。 ○千葉座長 今,御意見をいただきました。十分,それも念頭に置かせていただきたいと思います。 ○江川委員 今回の最高検の調査というのが,被害者の方の視点とか,そういったものが全くない調査になっています。これをたたき台にというふうになると,やはり相当偏ったところからスタートするのではないかと思いますので,やはり被害者サイドのヒアリングをやるということは大事だと思います。特にこの件ですと,この報告をAさんも説明を受けるということですので,Aさん及び弁護人がこれを見た後で,どんな御意見を持たれるかというのは,やはり聞いた方がいいと思いますし,あるいはこの事件が特殊なのかというと,いろいろな方に聞くとそうではないということのようでありますので,今まであった幾つかの問題のあった事件ですね。例えば枚方市の副市長の事件ですとか,あるいは名古屋市の道路の清掃に関する事件がありましたけれども,そこで無罪になった局長の方ですとか,そういう何人かの大阪,名古屋,東京と,三特捜部のやはりそういう事件で何か問題が提起された事件の関係者を呼んでヒアリングをするということは,非常に意味があることだと思います。 ○郷原委員 被害者サイドからのヒアリングもまず必要だと思いますし,これができるかどうかは御検討いただきたいんですけれども,先ほどから私申し上げているように,今回の検証結果が一方的に最高検側の見方に偏っているという点を考えると,何らかの形で大坪氏の側がこういうものに対してどう見ているのか,これは本当にこういうふうに見られて納得できるのかということも,この検討の資料とすべきではないか。こういう大坪特捜部は極めて特殊な特捜部であったという見方なんですね。個人的なキャラクターで部下を押さえつけて,もうがんがん前に進ませていたと。ほかの特捜にはほとんど問題がなかったかのような書かれ方をしている。そういう見方について,もう少し客観的に検証する必要があるのではないかと思います。   それからそういう立場の人の後の問題ですけれども,現職の検事から幾ら聞いても,本音ベースの話はまず出てこないと思いますので,OBですね,特捜のOBでそれなりに率直に特捜部にいたときにどう思ったかということを話してくれる弁護士がいると思うんです。具体的にはまた名前は後ほどお出ししますけれども,こういった人たちからもヒアリングをすべきではないかと思います。 ○高橋委員 先ほどの御報告に対するときにはちょっとお話ししなかったので,その印象も兼ねてちょっとお話ししたいんですが,端的に言いますと,先日あるコンプライアンスの専門家と話していて彼が言った言葉でもあるんですが,多くのコンプライアンスの現場で見聞きすることは,不正と失敗の混同であると。不正は悪意によって起こり,失敗は無能によって起こる。この事件は明らかに外から見ていても無能の問題,つまり失敗の問題だと。結果,最後に不正が起きたんだというふうに彼も指摘していましたし,私も全くそういう気がするんですね。   今回のお話,ずっとレポートをお聞きしていますと,この不正がどうして起きてしまったのかという検証なんですよね。その視点ではしょせん,根本の原因の究明は限界があるというふうに私は思います。例えば,今回の報告書の22ページの,私もすごくこれ引っかかったんですが,上から4行目(公表版21ページの下から4行目)ぐらいからありますよね。A氏の指示によるものではなく,自らが独断で本件公的証明書を作成した旨を供述したが,前田検事が大阪地検及び大阪高検の幹部に報告した際,検事長らから,一様に,Cが独断で本件公的証明書を作成することは考えられない旨の指摘等がなされたとありますよね。つまり,上司が決裁するなり指導するときに,仮説形成を含めて的確な指示ができる能力がもう完全にないということをこれは言っているわけですよね。つまり,係長レベルで忙しいから,分かりませんよ,本当の原因は分からないけれども,何かほかの原因でこういうことをねつ造してしまうということが起こるという現場が,今官庁のこの忙しい状況の中で人によっては起こり得るんだというような実態を,全く分かっていない上司が判断しても的確な指示はできません。ですから,重層的な仕組みで不正を防ごうという発想そのものが,いや不正を防ぐのではなく,重層的な上司も含めて,世の中の動きについていけていない。だから,重層的な仕組みで根本的に問題を解決しようとすること自体が,そもそも視点として極めて不十分だと思います。もちろん,不正を防ぐ仕組みは必要ですけれども,たまたま今回の大阪の事件というのは,先ほどの郷原さんのお話ではないですけれども,その特殊性だけにしていいのかといったら,それは,例えば,一種のがん細胞みたいなものだとすれば,がんというのは,私も医療専門ではありませんけれども,その人の体全体がものすごい強烈なストレスを受ければ,一番弱い患部に出るんですよね。それを切ってがんが治るかどうか分かりませんが,でも,そのがんが起きてしまった体質そのものが変わらなければ,また再発する可能性があって,たまたまどこに出たかという問題なので,外科的にがんを切除しましたということだけで問題は解決しないだろうというのは,ここの文章なんかでも明らかだと思うんですよね。   ということを考えてみると,これがいわゆる組織能力のやはり限界だと。どんな組織と似ているのかなと思って考えたんですが,私の友人なんかにおります例えば自衛官とか,あるいは警察とか,それこそ佐藤委員おられますけれども,そういうところとの大きな違いは,ああいうところはもともとキャリア組みたいな人たちがいて,いいかどうかは別にして,マネジメントの専門職として育てられるんですよね,最初から。現場からたたき上げてきた人が本当に上になるケースというのは非常に少ないですよね。一方で検察というのはほとんど全員がたたき上げてきたプロフェッショナルのキャリアみたいな人たちが,プロフェッショナルとしての仕事をしながらいつか決裁官になっていくというやり方を採るので,そういう意味からすると,マネジメントというものの教育とか,知見とかというものを受ける環境そのものが欠落しているというような話が,すごく大きい話として一つあるんだろうと思います。一方で,だからといって,キャリア制度が必ずしもいいと言っているわけではないんですが,私が一番近いなと思っているのは,医療現場なんですよね。医療現場というのは大きな問題が起きています。忙し過ぎて医療過誤が起きているというのは,堺の話と近いのかもしれないし,例えば医師と看護師の関係は,検察官と検察事務官の関係かもしれないし,それから結果が重大だという意味で同じですよね。ただ,例えば,一つ違うのは,医師というのはかなり上のレベルになっても自分で患者を持つんですよね。ところが,検察の方々は決裁官になったら決裁することが主たる仕事ですよね。だから,マネジメントでもないし,自分が現場を持ちもしないという中で,的確な指示をし続けることがキャリア上可能なのかというのは,そもそも常識的に考えてあり得ないんですよね。だから,人事の構造そのものに根本的な欠陥があるのではないかなという印象を受けます。   逆に病院の場合でも問題なのは,いい医師イコールいい病院長ではないんですね。ですから,そこは今すごく問題が起きている。その問題も当然あるんだろうというふうに思うんですよね。ですから医師と検察官の類似性ということを考えても,例えばあと唯一違うのは何かというと,病院は経営が悪いとつぶれるんですよ。競合もありますから。検察はつぶれないんですよ,競合関係では。そういう意味で,マネジメントというものを嫌が応にも必要とされてこなかったという部分がすごくあって,例えばこの一文を読むだけでも,これが完全に組織的な能力不足として出ているなということがすごく分かるんですね。もうこれ以上,お話ししていますと長くなりますけれども,ほかの話がずっとほかのところにもそういうところがたくさんあります。   ですから,是非そういうふうに,例えばそもそもああいうリーダーシップが特殊なリーダーシップとして大阪にあったとしても,それがどうして見逃されたのかということとか考えてみると,体全体の体質の問題なので,先ほどの話に戻りますと,一つのこのがん細胞がどうしてできてこんなことになってしまったのかというだけではない,全体の今のストレスの状況がどうなっていて,たまたまそれがどういう形でこういうふうな結論が出たのかというのは,印象論で議論していても,ここに書けるようなものにはならないので,石田委員が言われたようなサーベイをするとか,そういったものをやって,あるいは定量的なサーベイもありますし,テーマごとに匿名で好きなことを言ってください,委員が受け付けますよというような形のサーベイもあるかもしれませんし,私もサーベイを随分やりましたけれども,定量的なアンケート調査でも,本当に組織に問題があるときには,匿名で延々と手紙が3ページ,4ページついてくるケースというのはやはりあるんですよね,結構。ですから,そういう意味でも先ほどの石田委員が言われたような,何らかの病巣を客観的,包括的に見られるような何かは,いずれにしても何らかの形でできないかなという感じはいたします。 ○郷原委員 今,高橋委員が言われたことは,長年検察の現場にいた人間としては全くおっしゃるとおりだと思っておりまして,この22ページ(公表版21ページ)のところに書いてあること,こういうような一つの自分の思い込みに基づく指摘,多くの決裁官の立場にある高検の立場の人が言って,一方で,この前に前田検事がこういったことも十分考慮して逮捕すべきかどうかを判断すべきだと言っているような,消極事実がいっぱいあるんですね。背景にあるものが。こういったものはなぜこの人たちは全然考慮していなかったのかということを書いていないんですね。結局,これから先の決裁の問題は,証拠を見なかった,証拠が見られない,事実上,証拠を見ることが困難な状況だったということだけで済ませてあって,だから高検に証拠を見る検事を配置すれば,それが再発防止策だという,物すごく単純な話にされてしまっているんですね。ですから,これは本当にそういう視点が全く欠けていると思いますし,この大坪個人悪玉説というのはそこから来ていると思うんです。   もう一つお配りしているこの日経ビジネスオンラインのこの去年,私,4月末に出したこの論稿,4月27日というのは,郵便不正事件の障害者団体や企業関係者が逮捕された後なんです。これは大坪氏にも連絡して読んでもらっています。この事件の見方というのは,巨額な詐欺事件的なものというよりも,郵政民営化が行われたのに,価格が硬直的で,マーケットに対応できていない。そこでいろいろそういう不正のようなことが恒常化することにつながっている。そういう実態を暴いたという意味で,今回の大阪地検の捜査はそれなりに意味があるんだから,だからここでやめておけ,無理をするなということを書いていますし,それは大坪氏もその話を電話でしたときには,非常によく分かってくれていたんです。ですから,彼にはある程度そういう認識もあったと思いますし,このストーリーの中で,私は大坪氏一人が悪者になるというのは,ちょっと理解できないので,ちょっとそこに少しこだわっているというところをお話ししておきたいと思います。 ○千葉座長 今,皆さんからこれまでのヒアリングあるいは今日の検証結果等を踏まえた今後のヒアリングや,あるいはサーベイの問題などを含めて御意見をいただきました。それで,今日直ちにまだ皆さんのお考えも全部お聞きできないということになりますので,決めることはできませんけれども,サーベイの問題,それから少なくともこれまで検察のヒアリングはしたものの,もっと別な観点から,あるいは本当に体質を含めて話をお聞きをするということも大事であろうと思いますので,そのような観点でこういう方のヒアリングをしたらどうだろうか,あるいは先ほどの調査の件もこんな具合でやってみたらどうかということも含めて,できれば本年中くらいに皆さんの御意見を事務局に御提起をいただき,でき得る限りそれを参考に,そして皆さんのこれからの議論にできるだけ役に立つような形で行いたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○江川委員 それに加えて,先ほどのサーベイというのも全体的に広くですよね。先ほど私が申し上げた事件,具体的な事件というのは,やはり一つか二つかの事件の中から,それを広げて具体的にしていくということなので,事件が係属しているものは恐らく難しいと思うのですけれども,事件がもう一応終結していると,公訴取消しにしろ,判決が確定にしろ,そういう幾つかの事件を関係者含めて,検察の関係者も含めて調査をするということをやらせていただきたいなというふうに強くお願いします。 ○千葉座長 では,それもまた御提出いただければと思います。   それでは,皆さんから御意見をいただきまして,それを整理をさせていただいて,幾つかのメニューなりをまた皆さんにお示しをして議論をいただければと思います。   次に,本日の議事録及び配布資料の取扱いについて確認をさせていただきたいと思います。本日は議事の途中を一部非公開としておりましたが,公判係属中の刑事事件との関係で,公表することが相当でないと考えられる部分につきましては,議事録にも掲載しないことといたしまして,どの部分を不掲載とするかについては,ひとまず私に御一任いただいた上,後ほど皆様にも御確認をお願いをしたいと思います。   それから,先ほど次長検事からも御説明がありましたとおり,最高検察庁におきましては,詳細な検証結果報告書から,刑事訴訟法47条との関係から公表に適さないと考えられる部分等を削除し,事件関係者の氏名については適宜仮名とする処理を施したものを公表用の検証結果報告書とするものと伺っております。そこで,法務省のホームページにおいても,本会合の配布資料として,同様のものを掲載することとさせていただきたいと考えております。委員の皆様におかれましても対外的に何らかの情報発信をされる場合には,検証結果報告書の表紙に貼付しました留意事項をお守りいただけますようにお願いをしたいと思っております。   また,今日の御議論の中で,委員の皆さんから係属中の事件の証拠関係に及んでいる部分があったかとも思われますので,その点については議事録上の処理について,当該委員の方と御相談をさせていただいて,適切な処理をしたいと思いますので,御了解いただければというふうに思っております。 ○江川委員 その議事録に関してなんですけれども,一つだけいいですか。   前回の議事録が,今朝見てもまだアップされていなかったようなんですよね。やはり注目されていて,まだかまだかという問い合わせもありますので,そういった作業をすると非常に手間のかかることでもあるとは思うんですが,議事録のアップというのはなるべく早くしていただけるようにお願いしたいと思います。 ○千葉座長 大変ですけれども,事務局の方でどうぞできるだけスピードアップしていただくように,私からもお願いいたします。   それ以外の議事録及び配布資料につきましては,いずれも公表することとさせていただきたいと思います。 ○宮崎委員 今日,ちょっと配布資料で私の方から配布させていただいているのが,検察官倫理を考える国際的な倫理規程の動向と我が国の現状という,指宿教授の資料を配布させていただいております。これは日弁連の「自由と正義」という機関誌に,1月号及び2月号の記事として載せる予定のものを,ゲラが上がってきましたので今日配布させていただいております。検察官倫理については今日の検証報告書でも出ておりましたので,御参考になるかと思いまして配布させていただきました。よろしくお願いいたします。 ○千葉座長 それでは,本日の議事録及び配布資料の取扱いについては以上でございます。   最後に,本日は議事の大部分を公開で行いましたけれども,報道関係者からそのような場合であっても簡潔なブリーフをお願いをしたいというふうに要請をいただいております。そこで,私においてこれに対応させていただきたいと思いますが,委員の皆様のどなたかで同席を御希望される方がおられますでしょうか。特においででなければ,私の方で簡潔なブリーフをさせていただきたいと思います。 ○郷原委員 お任せしますけれども,是非今日の最高検の検証結果に対しては,いろいろ強い異論があったということを,指摘があったということを是非強調していただきたいと思います。 ○千葉座長 分かりました。それとここで特段了承したり,そういう趣旨のものでは決してないということもきちっとお伝えをしておきたいと思います。   それでは,以上,本日予定しておりました議事はこれで全て終了いたしましたので,これにて本日の会合を終了したいと思います。事前に事務局の方で皆様の日程を調整させていただきましたが,次回の日程につきましては,平成23年1月13日を予定をさせていただきます。午後1時30分から3時間程度ということですが,延長もこれからは多少ありということになろうかと思いますので,どうぞお含みをいただきたいと思います。   基本的に,今後の日程につきましては,原則木曜日の午後1時30分ということでよろしいでしょうか。では,そのような原則でやらせていただきたいと思います。それから,次回の場所は本日と同じ第1会議室ということになりますので,よろしくお願いいたします。   それでは,これで本日の会合を終わらせていただきます。   本日はどうもありがとうございました。 —了—