CONTENTS
《特集記事》
- 京都コングレスの開催について
- 第68回”社会を明るくする運動”について
- 日本・ネパール司法制度比較共同研究
- 世界人権宣言70周年・人権擁護委員制度70周年
- 子どもの人権SOSミニレター及び強化週間の実施について
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ネパールレストランが増えており,ネパールに興味をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
ネパールは,中国やインドと国境を接する西北から東南方向に細長い内陸国です(海はありません)。約60もの民族がおり,多様な文化が入り混じっています。
地球上で最も標高が高く,美しいヒマラヤ山脈があり,お釈迦様(ブッダ)が生まれたのもネパールです。
朝日に照らされたヒマラヤ山脈(人気スポットのサランコットの丘からの景色)
ネパールには,1853年に制定された「ムルキ・アイン(国の法)」法典が存在します。その内容は,人々の間の権利・義務やその紛争解決のための裁判手続を定める民事法,犯罪・刑罰やその手続を定める刑事法と広い範囲にわたり,長い間,社会の基本法となっていました。しかし,時代が変わり,社会が変容するのに伴い,より使いやすく時代に即した新しい法律の整備が検討されるようになり,2017年にムルキ・アイン法典が解体されて整理された新たな5つの法律が生まれました。新法は,2018年の8月から施行される予定です。
ネパールに対する刑事司法分野の法制度整備支援として,法務総合研究所国際協力部が,2010年から日本での研修を始めました。アジ研は,2013年以降,ネパールとの比較共同研究を国際協力部から引き継ぎ,2018年3月5日から16日にかけて,アジ研での5回目の比較共同研究を行いました。
ネパールから,検察官6名,国家司法学院教官(裁判官や検察官への研修を担当)1名,警察官2名が参加し,ネパール改正法の下で刑事司法実務に生じ得る問題点の分析と実務の改善を目的とする比較共同研究を行いました。改正法には,多岐にわたる事項が盛り込まれているのですが,ネパール側の要望を受け,特に,①公判前の争点整理及び立証計画策定,②犯罪の成否を判断する事実認定手続と刑の重さを決める量刑手続を区分した審理,③罪を犯した人が再び罪を犯さない生活ができるような社会内処遇の在り方に焦点を当てました。
日本の刑事司法制度の運用実務の理解を深めるため,アジ研教官による講義に加え,最高検察庁,東京地方検察庁,東京地方裁判所,警視庁,更生保護施設(くにたち安立)の見学も行いました。
西川克行検事総長(前列の右から3人目)を表敬訪問しました
赤れんが棟前で記念撮影
ネパールにない更生保護施設の説明を熱心に聞いています
週末はお台場でネパールにはない海を楽しみました
2018年8月からネパールの新たな法律が施行される予定であり,そのための準備が進められています。アジ研は,ネパールのイニシアティブを尊重しつつ,新法を円滑に施行していけるよう今後も協力していきます。
(国連アジア極東犯罪防止研修所教官 平野 望)
比較共同研究の最後に、ネパール研究員代表者からこれから何をすべきかについてのアクションプランの発表がありました