CONTENTS

法制度整備支援の現場から ~相手を知り,己を知る~

みなさんは,東南アジアの次のような習慣をご存知でしょうか。カンボジアでは,挨拶をするときに合掌をします。相手との関係性により,手を合わせる位置が変わってきます。インドネシア人は,一日に数回お祈りをしますが,お祈り前に体を清めるため,顔や手や足まで洗い流します。ベトナムでは,昼食後に昼寝をする習慣があります。私は,こうした文化や宗教,習慣の違いを,国際協力部に勤務するようになり初めて知りました。

私は,裁判官の職務経験を経て,平成29年4月に国際協力部教官になりました。国際協力部は,主に東南アジアの国々を対象に,社会の基盤となる法律・制度の整備や法律家を育成する支援をしています。これまで,国際協力部の教官として,現地で開催されるセミナーで講師を務めたり,日本に対象国の司法関係者を招いて研修を実施したりしてきました。

東南アジアの国々といっても,それぞれ社会や文化,経済発展の程度が異なるように,司法が抱えている問題も様々です。その国の状況に応じて,相手国の法律家と議論しながら,問題の核心を探り,一緒に解決方法を考えていくところに教官の仕事の面白さがあります。

また,研修等で日本の法制度を紹介する機会が多くありますが,当然の前提としていた事柄についても,相手国の研修員から素朴に疑問をぶつけられ,改めて法律の沿革や制度の趣旨に立ち返り,その意義を考えさせられることがあります。実は,日本の法制度の仕組みそのものよりも,なぜ日本ではそのような法制度が採用されているのか,世界的に見て日本の法制度がどのように位置づけられるのかといった縦断的,横断的な視点を提供することのほうが,これから自国の法制度を構築していく相手国にとって役立つのです。

これからも,相手国のことを知り,異なる価値観を尊重しながら,日本の来し方を見つめ直し,支援を通じて相互に協力し合える関係を築いていきたいと思います。

  • 法務総合研究所国際協力部教官の写真

    ベトナム現地セミナー(平成30年3月)で講師を務めました

  • ベトナム現地セミナーの写真

    同セミナーには、たくさんのベトナムの裁判官が参加しました

(法務総合研究所国際協力部教官 梅本 友美)