フロントページ > 国際テロリズム要覧 (Web版) > 国際テロ組織 > アル・シャバーブ

アル・シャバーブ
Al-Shabaab(注1)

ソマリアで活動するスンニ派過激組織。「アルカイダ」に忠誠を誓い,ソマリア政府や同国内の外国勢力を標的としたテロを実行。

別称:
@Shabaab,Aal-Shabab,Bthe Youth,CShabaab al-Mujahideen Movement,DMujahidin al-Shabaab Movement,EMujahideen Youth Movement,FMujahidin Youth Movement,GMYM,HHarakat Shabab al-Mujahidin,IHizbul Shabaab, JHis'ul Shabaab,Kal-Shabaab al-Islamiya,LYouth Wing,Mal-Shabaab al-Islaam,Nal-Shabaab al-Jihaad,OUnity of Islamic Youth

1 設立時期

2007年1月

2 組織・機構

(1) 指導者,幹部等

ア ムクタル・アブディラハマン・アブ・ズベイル(Muktar Abdirahman Abu Zubeyr)(死亡)

本名:
アハマド・アブディ・アウ・ムハンマド(Ahmed Abdi aw-Mohamed)
別名:
ゴダネ(Godane),アハマド・アブディ・ゴダネ(Ahmad Abdi Godane)

前最高指導者。1977年7月10日生まれ。ソマリア・北ガルベード州ハルゲイサ出身。アブ・ズベイル及びゴダネの通称で知られる。2008年5月,空爆で死亡した最高指導者(当時)アデン・ハシ・アイロの地位を継承した。「アル・シャバーブ」設立(2007年1月)より前に,アフガニスタンの訓練キャンプで訓練を受けた。「アル・シャバーブ」の設立者の1人であるほか,生前のオサマ・ビン・ラディンと直接つながりを有し,2012年2月,「アルカイダ」最高指導者アイマン・アル・ザワヒリとともに「アルカイダ」への合流を宣言する声明を発表したとされる。

幹部間の軋轢などからイブラヒーム・ハッジ・ジャマ及びオマル・シャフィーク・ハンマミを殺害,また,ムクタル・ロボウを追放したとされる(注2)

国連安保理決議第751号及び第1907号制裁委員会は,2010年4月,「アル・シャバーブ」の高位幹部であるなどとして,同人を制裁対象に指定した。

2014年9月,米国の無人機による空爆を受け,死亡した。

イ アハマド・ディリエ(Ahmed Diriye)

別名:
シェイク・アハマド・ウマル・アブ・ウバイダ(Sheikh Ahmed Umar Abu Ubaidah),シェイク・オマル・アブ・ウバイダ(Sheikh Omar Abu Ubaidaha),シェイク・アハマド・ウマル(Sheikh Ahmed Umar),シェイク・マハド・オマル・アブディカリム(Sheikh Mahad Omar Abdikarim),アブ・ウバイダ(Abu Ubaidah),アブ・ディリエ(Abu Diriye)

最高指導者。1972年生まれ。2014年9月,「アル・シャバーブ」指導部が開催した会議で最高指導者に選出された。ズベイルの副官を務め,ハンマミ殺害に関与したほか,情報部門にも所属していたとされる(注3)

国連安保理決議第751号及び第1907号制裁委員会は,2014年9月,「アル・シャバーブ」の高位幹部であるなどとして,同人を制裁対象に指定した。

ウ マハド・モハメド・アリ(Mahad Mohamed Ali)

別名:
マハト・カラテ(Mahat Karate)

副指導者。ズベイルとともに同組織の秘密部局「アムニヤト」(the Amniyat)を指揮していたとされる。

エ アリ・モハムード・ラゲ(Ali Mohamoud Rage)

別名:
アリ・デーレ(Ali Dheere)

報道担当。2010年,ウガンダ兵及びブルンジ兵計約6,000人がアフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM)(注4)の部隊に増強されたことに対し,「新たに派遣された兵士たちは,我々の強い抵抗に遭い,現在(ソマリアに)駐留中の部隊と同様に,全滅することになるであろう。我が国への新たな派兵を許さない」と非難した。2011年8月6日,ソマリア首都モガディシュからの撤退に際して,「撤退は反撃を目的としたもので,軍の戦術をゲリラ戦に変更するためのものである」,2012年9月,ソマリア南部・キスマヨからの撤退に先立ち,「『アル・シャバーブ』の聖戦士たちの軍事司令官は,深夜に戦術的撤退を命じた」と述べた。ズベイルの死後,副指導者に昇格したとされる(注5)

オ ムクタル・ロボウ(Mukhtar Robow)

別名:
アブ・マンスール(Abu Mansour)

上級軍事司令官,報道担当。1969年10月10日生まれ。エリトリア国籍。「イスラム戦士のニュース・チャンネル」が,2010年7月,配信したビデオ映像(注6)の中で,「世界中のウガンダ及びブルンジの大使館を攻撃する」などと発言した。

2013年6月,ソマリア南部・下シャベレ州バラウェイ町で,ズベイルと衝突し追放され,ロボウ自身の拠点である南西部・バコール州に逃れたとされる(注7)

カ バシール・ムハンマド・マハムード(Bashir Mohamed Mahamoud)

別名:
バシール・ムハンマド・マフムード(Bashir Mohamed Mahmoud),バシール・ヤレ(Bashir Yare),バシール・クルガブ(Bashir Qorgab)

軍事司令官。主要指導者の1人。1982年生まれ。モガディシュで,2009年6月,暫定政府施設を迫撃砲により攻撃した。「アルカイダ」幹部であるともされる。国連安保理決議第751号及び第1907号制裁委員会は,2010年4月,2008年の後半時点で「アル・シャバーブ」の執行評議会メンバー約10人のうちの1人であるなどとして,同人を制裁対象に指定した。

キ アブ・ムサ・モンバサ(Abu Musa Mombasa)

治安・訓練担当責任者。パキスタン出身。

ク フアド・ムハンマド・カラフ(Fuad Mohammed Khalaf)

別名:
フアド・ションガレ(Fuad Shongale)

資金調達担当幹部兼軍事司令官。ソマリアとスウェーデンの二重国籍。ソマリア北東部に位置するプントランド(1998年に自治領宣言)のダロッド氏族出身。「アル・シャバーブ」内の強硬派イデオローグで,2004年にソマリアに帰国してイスラム主義反政府連合組織「イスラム法廷連合」(UIC)に参加するまでは,スウェーデン・ストックホルムのモスクで約12年間イマームを務めていた。

国連安保理決議第751号及び第1907号制裁委員会は,2010年4月,同人を制裁対象に指定した。

2012年6月,米国国務省が同人を含む「アル・シャバーブ」幹部7人(注8)を「司法のための報奨」リストに追加した。

追放されたムクタル・ロボウらとともに,ズベイルと衝突していたとされ,同人の死後,「アル・シャバーブ」の組織改革を訴える声明(注9)を発出した。

ケ イブラヒーム・ハッジ・ジャマ(Ibrahim Haji Jama)(死亡)

別名:
アル・アフガーニー(Al-Afghani)

設立者の1人。キスマヨ市の責任者との指摘もある。アフガニスタンの「アルカイダ」キャンプで訓練を受けた。

ズベイル最高指導者が外国人戦闘員を排除しているなどと述べ,同指導者の独裁的な行動を非難していたとされる。こうした中,2013年6月29日,「アル・シャバーブ」報道担当のアブドゥラジズ・アブ・ムサブを名のる者は,ジャマら幹部を殺害した旨公表した(注10)

コ ハッサン・アブドッラー・ヒルシ・アル・トルキー(Hassan Abdullah Hersi Al-Turki)

別名:
ザカリヤ・イスマイール・アハマド・ヒルシ(Zakariya Ismail Ahmed Hersi)

軍事司令官,情報部門責任者。1944年生まれ。エチオピア・オガデン地方出身のソマリア人。1990年代半ばから,武装組織幹部として,武器密輸に関わってきた。UICによるモガディシュ占拠(2006年)を支援し,「アル・シャバーブ」と連携している武装組織の指導者として頭角を現した。同人は,ケニアとの国境に近い地域で軍事訓練キャンプを設置し,「アル・シャバーブ」を含む多くの武装組織に訓練を施した。アル・ジャジーラは,2007年9月,同人が軍事訓練を行う様子を報じた。国連安保理「アルカイダ」及び「タリバン」制裁委員会は,2004年7月,「アルカイダ」及び「アル・イッティハード・アル・イスラミア」(AIAI)(注11)の活動を支援していたとして,同人を制裁対象に指定した。また,国連安保理決議第751号及び第1907号制裁委員会は,2010年4月,同人を制裁対象に指定した。2014年12月27日,ソマリア治安当局に自首した。

サ アブドゥルラヒ・ヤレ(Abdullahi Yare)

前最高指導者ムクタル・アブディラハマン・アブ・ズベイルの副官,メディア・オペレーション責任者。

シ オマル・シャフィーク・ハンマミ(Omar Shafik Hammami)

別名:
アブ・マンスル・アル・アムリキ(Abu Mansour al-Amriki),ファルーク(Farouk,Farouq)

司令官。1984年5月6日,米国アラバマ州でシリア系の父と米国人の母の間に生まれた。2006年にソマリアへ入国し,「アル・シャバーブ」から戦闘訓練を受けた後,同組織に加入した。2012年3月に公表されたビデオ声明の中で,「シャリーア及び戦略に関する事柄について我々の間に相違が生じたことから,私の命が『アル・シャバーブ』に脅かされている可能性がある」と述べた。「アル・シャバーブ」は同年12月,同人を事実上除名する声明を発表した。国連安保理決議第751号及び第1907号制裁委員会は,2011年7月,同人を制裁対象に指定した。2013年9月,ソマリア南西部・ベイ州で殺害された旨報じられた(注12)

ス モハムード・ムジャジル(Mohamoud Mujajir)

自爆テロリストのリクルート責任者。スーダン出身。

セ イーサ・オスマン・イーサ(Issa Osman Issa)

別名:
アブドッラー・アット(Abdullah Atto),アブドッラー・ブル(Abdullah Bur),アブダラ・スーダニ(Abdala Sudani),アファディ(Afadey),ムーセ(Musse)

軍事司令官。1973年生まれ。ケニア国籍。ソマリア及びケニアでのテロ活動に関与したと指摘される。

(2) 組織形態,意思決定機構

意思決定機関は,ほぼ全ての幹部により構成される「執行評議会」(代表は最高指導者)である。同「評議会」は,個別の作戦行動には関わらず,組織の戦略立案,地域指導者や軍事司令官の指名などを司っているとされる(注13)

各地域では,地域指導者並びに財政担当者,説法担当者及びその他統治に関する事項の担当者が「統治評議会」(注14)を組織し,同評議会が地域の統治に当たる。各地域の「統治評議会」は,独自に治安部隊を保有し,軍,警察などの機能を有している。また,中央からの指示に従い,個別の作戦行動については,大幅な裁量権を有し,独自に実行するとされる。

ムクタル・アブ・ズベイル前最高指導者及びマハド・モハメド・アリ副指導者が指揮していたとされる秘密部局「アムニヤト」は,中央司令部,地方司令官,財政及び物資支援の部隊,情報収集部隊,爆弾攻撃及び暗殺の部隊,自爆実行部隊などで構成され,首都モガディシュには,司令官などの幹部のほか,約200人の工作要員が配置されているとされる(注15)

3 勢力

総勢約5,000人の戦闘員を有しており,そのうち核となる者は約3,000人(注16)で,その多くはハウィエ氏族
(注17)出身とされる。主に,イエメン,スーダン,ケニア出身の外国人戦闘員約300人が存在するとされる(注18)

4 活動地域

「アル・シャバーブ」は,その設立の経緯により,当初からソマリアの首都モガディシュなど中部・南部の地域を支配していたが,2008年8月には南部の重要な都市キスマヨを占拠した。しかし,ソマリア(暫定)政府(注19)部隊等の攻撃により,主要都市・町を次々に失った。

ただし,依然として中部及び南部の村落部の大半を支配しているほか,政府側に奪還された地域においても,自爆を含むテロを実行している。

ソマリア国外では,2010年7月,AMISOMに参加したウガンダの首都カンパラで自爆テロを実行した。このほか,ケニアにおいても,首都ナイロビ及び港町モンバサ並びにソマリアとの国境地帯において,テロやリクルート活動を行っており(注20),2013年9月には,外国人60人以上が死亡したナイロビ・ショッピングモール襲撃テロ事件を引き起こした。また,2014年5月には,ジブチ首都ジブチで自爆テロを実行した。

5 活動目的・攻撃対象

(1) 活動目的

@イスラム国家の樹立,Aソマリア政府の打倒,Bエチオピア軍,アフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM)部隊など外国勢力の排除。

(2) 攻撃対象

米国の支援を受けるソマリア政府を「背教政府」と非難し,同政府及び軍を主要な攻撃対象と位置付けているほか,同国に駐留するAMISOM及びエチオピア軍に対するテロを継続している。

6 沿革

1991年に内戦状態に突入し,混乱が続いていたソマリアでは,2006年6月,イスラム国家樹立を目指すUICが首都モガディシュを占拠した。同年12月,隣国のエチオピア政府がソマリア暫定政府支援のため軍を派遣し,UICやそれを支持する武装勢力と激しく衝突した。2007年1月,UICはモガディシュからエリトリアへ拠点を移したが,UICの中で武装闘争路線を主張するアデン・ハシ・アイロ(元最高指導者,2008年5月死亡)が率いる青年軍の勢力がソマリアに残って「アル・シャバーブ」を設立した。アイロを始めとする「アル・シャバーブ」幹部の多くは,アフガニスタンにおいて「アルカイダ」の軍事訓練を受けたとされることなどから,同組織は設立当初から「アルカイダ」に近いとみられていた。「アル・シャバーブ」は,2008年8月に南部キスマヨを制圧した後,2009年1月には,暫定政府を支援していたエチオピア軍の撤退により更に攻勢を強め,同国中部及び南部地域の広範囲を統治下に置いた。

しかし,その後,暫定政府部隊,AMISOM,エチオピア軍,親政府系武装組織「アフル・スンナ・ワルジャマー」(ASWJ)などが攻撃を強化したことなどを受けて,「アル・シャバーブ」は,2011年8月,「戦術的理由」によりモガディシュから撤退した。その後,ケニアが2011年10月,同国内でのテロ活動を阻止するためにソマリアに派兵したことなどから,「アル・シャバーブ」は更に劣勢に追い込まれ,南部及び中部の主要都市を相次いで失った。

米国国務長官は2008年3月,「アル・シャバーブ」を「外国テロ組織」(FTO)に指定した。また,国連安保理決議第751号及び第1907号制裁委員会は,2010年4月,政治的プロセスを脅かす行動及び国際的な平和維持活動を脅かす行動に留まらず,直接的又は間接的にソマリアの平和,安全,安定を脅かす行動に関与してきたなどとして,同組織を制裁対象に指定した。

7 最近の主な活動状況

(1) 概況

「アル・シャバーブ」は,軍事的には劣勢に立たされているものの,首都モガディシュなどにおいて,政府関係機関やAMISOMに対するテロを継続している。

また,2012年2月,「アルカイダ」への合流を表明し,テロを強化する姿勢を示した。2014年には,ソマリア首都モガディシュにおいて,政府機関及び職員を標的とするテロを多発させた。特に,同年9月,最高指導者ズベイルが死亡した後,モガディシュにおいて,その報復とみられるテロを実行した。

国外では,2013年9月,ケニアでナイロビ・ショッピングモール襲撃テロ事件(注21)引き起こした後も,同国南部等を中心に襲撃テロを実行した。また,2014年5月,ジブチ首都ジブチで自爆テロを引き起こした。

(2) 他勢力との連携

ア 「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)

2014年6月,「カリフ国家」の設立を表明した「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)に対し,支持などを表す内容の声明等は確認されていない。同組織は,同年9月,ディリエ新指導者の就任を発表する声明で,「アルカイダ」及びザワヒリへの忠誠を改めて表明した。

イ 「アルカイダ」

「アルカイダ」指導者アイマン・アル・ザワヒリと「アル・シャバーブ」最高指導者ズベイル(当時)は,2012年2月,「アルカイダ」のメディア部門「アル・サハブ」が作成した録音及びビデオ声明で,「アル・シャバーブ」の「アルカイダ」への合流を発表した。同声明において,ザワヒリは,ソマリアに進攻した「エチオピア十字軍」及び「ケニア十字軍」に対する「アル・シャバーブ」の戦いを称賛し,ソマリアから両軍を一掃するよう呼び掛けた。また,ザワヒリは,同年9月12日発出の声明において,「アル・シャバーブ」を「アルカイダ」の「支部」組織として名指しした(注22)なお,「アル・シャバーブ」は,ズベイルの死後,ディリエ新指導者の就任を発表する声明で,「アルカイダ」及びザワヒリへの忠誠を改めて表明した。

ウ 「アラビア半島のアルカイダ」(AQAP)

「アル・シャバーブ」は,2010年1月,アデン湾を隔てて近接するイエメンの「アラビア半島のアルカイダ」(AQAP)に向けて,「全てのイスラム教徒に,イエメンの兄弟(AQAP)を支援することを求める。我々『アル・シャバーブ』は,既に応援を送る準備を整えている。我々は米国に勝利するであろう」旨の声明(注23)発出した。AQAPは,同年2月,同声明に対し「その気持ちに感謝する。世界規模の不信仰者の長である米国との来る戦闘に際し,協力しようではないか」との声明を発出した。これ以降,両組織の連携がうかがえるようになり,AQAPは,ズベイルの死に際して,2014年9月,追悼声明を発出した。

このほか,イエメン内務省によると,「アル・シャバーブ」は,2012年3月,戦闘員約300人をAQAPに派遣したとされる。

エ ソマリア海賊

「アル・シャバーブ」は,ソマリア海賊との関係を否定している。しかし,「アル・シャバーブ」は,ソマリア海賊の拠点都市の一つであるムドゥグ州ハラルディーレ町を占拠した(2010年5月)後,2011年2月,同町の海賊との間で協定を結んだと指摘される(注24)

オ 「オガデン民族解放戦線」(ONLF)

「オガデン民族解放戦線」(ONLF)は,ソマリア南部・下ジュバ州及び北東部・スール州等の国境地域において,「アル・シャバーブ」と共闘関係にあり,西部でも共同して軍事施設を襲撃したとされる(注25)。なお,「アル・シャバーブ」及びONLFは,それぞれ共闘を否定している(注26)

(3) 資金獲得活動

ソマリアの氏族主義を背景に,世界各国に居住するソマリア人支援者から資金援助を受けているとされる。特に,ケニアにおいては,首都ナイロビ及び北部のダダーブ難民キャンプ内に住むソマリア人から寄附を集めているとされる。国連ソマリア監視グループは,2010年3月10日付け報告書において,「アル・シャバーブ」が2009年8月にインターネット上で世界中のソマリア人に対し資金援助を求めるキャンペーンを展開し,2週間で4万米国ドル以上を集めたことを明らかにした。

このほか,主要都市を奪還されるまでは,首都モガディシュ市内のバカラ市場及び南部の港町キスマヨ並びに中・南部の支配地において「税金」として金銭を徴収していたとされるほか,国境地域における密貿易,木炭の輸出などによって収益を上げていたとされる(注27)

(4) リクルート活動

ア ソマリア及び周辺国での状況

国連ソマリア監視グループは,2012年7月13日付け報告書において,「アル・シャバーブ」が外国軍部隊からの軍事的圧力の高まりを背景として,2011年以降,ますます活発にリクルート活動を展開していることなどを明らかにした。また,2013年7月12日付け報告書では,リクルート活動に協力的でない地域から,若者を誘拐するケースがあることを指摘した。

このほか,多数のソマリア人が流入しているケニアでは,「アル・シャバーブ」支援ネットワークが形成されており,モスクなどを通じてリクルートが行われているとされる。国連安保理決議第751号及び第1907号制裁委員会は,2012年7月及び同年8月,「アル・シャバーブ」に資金,物資,ロジ又は技術的支援を行ったとして,ケニアを拠点として活動するイスラム教指導者アボウド・ロゴ・ムハンマド(2012年8月死亡),及びソマリアでの暴力的軍事活動を実行するイスラム系ケニア人青年層の指導的な世話人であるアブバク・シャリフ・アハマド(2014年4月死亡)を制裁対象に指定した。

イ 欧米での状況

各国のソマリア人コミュニティでも,「アル・シャバーブ」によるリクルート活動が活発に行われているとされる。米国ミネソタ州ミネアポリスの連邦地裁は,2013年5月,「アル・シャバーブ」への参加者を募るなどテロ支援を行ったとして起訴されていたソマリア系米国人(注28)対し,禁錮10年の有罪判決を言い渡した。また,スウェーデンでは,「アル・シャバーブ」に傾倒するソマリア人難民が,「アル・シャバーブ」のためのリクルート活動に関わっており,訓練のためにソマリアへ行くことを勧めていたとされる。ソマリアで「アル・シャバーブ」に加わっているスウェーデン国籍者は,約40人とされる(注29)。さらに,英国当局は,100人以上の英国居住者がソマリアで訓練を受けたことがあり,約40人が現地活動しているとみており,こうした者たちが英国に対する脅威となり得ると指摘している(注30)

米国司法省は,2014年7月,「アル・シャバーブ」に資金を送金したとして,米国で女性2人,オランダで女性1人を逮捕したと発表した。特に米国で逮捕された2人は,女性による送金ネットワークのまとめ役で,ケニアとソマリアに資金を送金していたとされる。また,ノルウェーでは,同年9月,「アル・シャバーブ」に対する資金調達及びリクルート活動を行ったとして4人が起訴された。

年 月 日  主要テロ事件,主要動向等
07. 1  「イスラム法廷連合」(UIC)の中で,武装闘争路線を主張するアデン・ハシ・アイロが率いる勢力が「アル・シャバーブ」を設立
08. 4. 8  ソマリア首都モガディシュのアフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM)部隊基地で,自動車爆弾による自爆テロを実行し,1人が死亡
08.10.29  北西部のソマリランド(1991年に独立宣言)及び北東部のプントランドで,「アル・シャバーブ」が4件の自爆テロを実行し,28人が死亡
09. 6.18  モガディシュのメディナ・ホテルにおいて開催された結婚式の会場内で自爆テロを実行し,ソマリア暫定政府の治安相を含む参列者50人以上が死亡,100人以上が負傷
09. 7. 3  報道担当のラゲは,「暫定政府及びアフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM)との戦闘において,より殺りく性の高い戦術を採用する」などと宣言
09.12. 3  モガディシュのシャモ・ホテルにおいて開催された大学の学位授与式の会場内で自爆テロを実行し,暫定政府の教育相,文化・高等教育相及び保健相の3閣僚を含む15人が死亡
10. 2. 2  「アルカイダ」に忠誠を誓うとともに,オサマ・ビン・ラディンが標榜する「グローバル・ジハード」に同調し,東アフリカにおける「ジハード」を宣言する声明を発出
10. 7.11  ウガンダ首都カンパラで,サッカー・ワールドカップ決勝戦をモニター放送中の飲食店及び運動施設を標的にした自爆テロを実行し,米国人及びアイルランド人を含む76人が死亡
10. 8.24  ソマリア暫定政府軍の制服を着用した「アル・シャバーブ」の武装集団が,モガディシュ市ムナ・ホテルを襲撃し,宿泊中の暫定議会議員6人を含む32人が死亡
11. 6.10  モガディシュのファラハ内相兼国家治安相の自宅で爆発が発生し,同相が死亡。同内相の姪の自爆とされるが,「アル・シャバーブ」は,仕掛けていた爆弾によるものとの声明を発出
11. 8. 6  モガディシュからの撤退を発表。報道担当のラゲは,「撤退は反撃を目的としたもので,(敗北による)撤退(retreat)ではなく,戦術をゲリラ戦に変更するためのもの」などと発言
11.10. 4  モガディシュの中心部で,爆弾を積んだトラックによる自爆テロを実行し,地元青年ら100人以上が死亡。「アル・シャバーブ」が犯行を自認
11.11.28  「アル・シャバーブ」は,国連,国際人道支援団体などの活動を禁止。これら団体の事務所への襲撃を開始
12. 2. 9  「アルカイダ」のメディア部門「アル・サハブ」が作成した録音及びビデオ声明で,「アルカイダ」指導者ザワヒリが,「アル・シャバーブ」の「アルカイダ」への合流を発表
12. 3.10  ソマリア・ゲド州ユルクト村で,ソマリア暫定連邦政府部隊及びエチオピア軍の軍事拠点を襲撃し,約100人が死亡。「アル・シャバーブ」は,11日付け文書声明で,(両国の)兵士74人を殺害したほか,エチオピア軍兵士1人を拘束したと主張
12. 4. 4  モガディシュの国立劇場で爆発が発生し,同国スポーツ界幹部など10人が死亡。当局は,女性による自爆と発表したが,「アル・シャバーブ」は仕掛けていた爆弾によるものと主張
12. 5. 9  憲法草案,ソマリア暫定議会議員を採択するためにモガディシュで開催予定の「ソマリア伝統長老集会」に出席しようとした長老約100人を,「アル・シャバーブ」がソマリア中部で拘束。「アル・シャバーブ」は,「同集会への参加はイスラムからの逸脱」と非難
12. 7.16  モガディシュで,自動車爆弾が爆発し,ガルウェイネ元貿易相・議員が死亡,通行人6人が負傷。「アル・シャバーブ」が犯行を自認
13.4.14  モガディシュで,最高裁判所が入る合同庁舎に対する自爆及び銃撃テロを実行し,少なくとも30人が死亡。「アル・シャバーブ」が犯行を自認
13.5.5  モガディシュで,カタール政府関係者を乗せた車両を標的とした爆弾テロを実行し,市民4人及び兵士1人が死亡。「アル・シャバーブ」が犯行を自認
13.5.25  ケニア北東部・ダマジャレ町で,警察署を襲撃し,警察官2人が死亡。「アル・シャバーブ」が犯行を自認
13.6.19  モガディシュで,国連開発計画(UNDP)の施設を標的とした爆弾及び銃撃テロを実行し,少なくとも国連治安部隊関係者を含む15人が死亡。「アル・シャバーブ」が犯行を自認
13.7.27  モガディシュで,トルコ大使館関係施設を標的とした爆弾及び襲撃テロを実行し,トルコ治安機関高官1人を含む2人が死亡。「アル・シャバーブ」が犯行を自認
13.9.21 ナイロビ・ショッピングモール襲撃テロ事件
 ケニア首都ナイロビで,武装集団が,ショッピングモールを襲撃し,外国人を含む60人以上が死亡。「アル・シャバーブ」が犯行を自認
13.11.19  ソマリア中部・バラドウェイン市で,警察署を襲撃し,警察官及び民間人の19人が死亡。「アル・シャバーブ」が犯行を自認
14. 3.23  ケニア・モンバサ県で,キリスト教教会を襲撃し,6人が死亡
14. 5.24  モガディシュで,ソマリア議会を標的とした自爆及び襲撃テロを実行し,少なくとも治安要員10人が死亡。「アル・シャバーブ」が犯行を自認
14. 5.24  ジブチ首都ジブチで,自爆テロを実行し,1人が死亡。「アル・シャバーブ」が犯行を自認
14. 6.15  ケニア・ラム県で,警察署,ホテル等を襲撃し,少なくとも48人が死亡。「アル・シャバーブ」が犯行を自認
14. 8.31  モガディシュで,ソマリアの情報機関施設を襲撃し,兵士等5人が死亡。「アル・シャバーブ」が犯行を自認
14. 9. 1  ソマリア・下シャベレ州で,米国の空爆により,ズベイル最高指導者が死亡
14. 9. 8  モガディシュで,ソマリア軍及びAMISOMを標的とした爆弾テロを実行し,少なくとも18人が死亡。「アル・シャバーブ」が犯行を自認
14. 9.13  モガディシュで,ソマリアのテロ対策部隊副隊長を襲撃し,同人が死亡。「アル・シャバーブ」が犯行を自認
14.11.22  ケニア・マンデラ県で,バスを襲撃し,非イスラム教徒28人が死亡。「アル・シャバーブ」が犯行を自認
14.12.27  ゲド州で,「アル・シャバーブ」軍事司令官のハッサン・アブドッラー・ヒルシ・アル・トルキーが同国治安当局に自首

このページの先頭へ

ADOBE READER

PDF形式のファイルをご覧いただくには、アドビシステムズ社から無償配布されているAdobe Readerプラグインが必要です。