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アル・シャバーブ
Al-Shabaab(注1)

ソマリアで活動するスンニ派過激組織。「アルカイダ」に忠誠を誓い,ソマリア政府や同国内の外国勢力を標的としたテロを実行。

別称:
①Shabaab,②al-Shabab,③the Youth,④Shabaab al-Mujahideen Movement, ⑤Mujahidin al-Shabaab Movement,⑥Mujahideen Youth Movement,⑦Mujahidin YouthMovement,⑧MYM,⑨Harakat Shabab al-Mujahidin,⑩Hizbul Shabaab,⑪His'ul Shabaab,⑫al-Shabaab al-Islamiya,⑬Youth Wing,⑭al-Shabaab al-Islaam,⑮al-Shabaab al-Jihaad,⑯Unity of Islamic Youth

(1) 設立時期

2007年1月

(2) 組織・機構

ア 指導者,幹部等

(ア) アハマド・ディリエ(Ahmed Diriye)

別名:
シェイク・アハマド・ウマル・アブ・ウバイダ(Sheikh Ahmed Umar Abu Ubaidah),シェイク・オマル・アブ・ウバイダ(Sheikh Omar Abu Ubaidaha),シェイク・アハマド・ウマル(Sheikh Ahmed Umar),シェイク・マハド・オマル・アブディカリム(Sheikh Mahad Omar Abdikarim),アブ・ウバイダ(Abu Ubaidah),アブ・ディリエ(Abu Diriye)

最高指導者。1972年生まれ。2014年9月,「アル・シャバーブ」指導部が開催した会議で最高指導者に選出された。前最高指導者ズベイルの存命中,同人の副官を務め,幹部であったハンマミ(後述)の殺害に関与したほか,情報部門にも所属していたとされる(注2)

国連安保理決議第751号及び第1907号制裁委員会は,2014年9月,「アル・シャバーブ」の高位幹部であるなどとして,同人を制裁対象に指定した。

(イ) ムクタル・アブディラハマン・アブ・ズベイル(Muktar Abdirahman Abu Zubeyr)(死亡)

本名:
アハマド・アブディ・アウ・ムハンマド(Ahmed Abdi aw-Mohamed)
別名:
ゴダネ(Godane),アハマド・アブディ・ゴダネ(Ahmad Abdi Godane)

前最高指導者。「アル・シャバーブ」の設立者の一人。1977年7月10日生まれ。ソマリア・北ガルベード州ハルゲイサ出身。アブ・ズベイル及びゴダネの通称で知られる。2008年5月,空爆で死亡した最高指導者アデン・ハシ・アイロ(当時)の地位を継承した。「アル・シャバーブ」設立(2007年1月)より前に,アフガニスタンの訓練キャンプで訓練を受けた。生前のオサマ・ビン・ラディンと直接つながりを有していたとされ,2012年2月,「アルカイダ」最高指導者アイマン・アル・ザワヒリとともに「アルカイダ」への合流を宣言する声明を発表した。

幹部間の軋轢などから,イブラヒーム・ハッジ・ジャマ及びオマル・シャフィーク・ハンマミを殺害,また,ムクタル・ロボウを追放したとされる(注3)

国連安保理決議第751号及び第1907号制裁委員会は,2010年4月,「アル・シャバーブ」の高位幹部であるなどとして,同人を制裁対象に指定した。

2014年9月,米軍の空爆により死亡した。

(ウ) マハド・モハメド・アリ(Mahad Mohamed Ali)

別名:
マハト・カラテ(Mahat Karate)

副指導者。情報収集やカウンター・インテリジェンス,秘密作戦などを任務とする同組織の秘密部局「アムニヤト」(Amniyat)において,主要な役割を担っているとされる。ズベイルの後継者として有力視されていたが,後任には選出されず,新しく最高指導者になったアハマド・ディリエと繰り返し衝突しているとされる(注4)。「アフリカ連合ソマリア・ミッション」(AMISOM)に参加するケニア軍は,2016年2月,「アル・シャバーブ」の拠点に対する空爆で,同人を殺害したと発表したが,「アル・シャバーブ」は同発表を否定した(注5)

(エ) アリ・モハムード・ラゲ(Ali Mohamoud Rage)

別名:
アリ・デーレ(Ali Dheere)

報道担当。執行評議会のメンバーでもあるとされる。2010年,ウガンダ兵及びブルンジ兵計約6,000人がAMISOMの部隊に増強されたことに対し,「新たに派遣された兵士たちは,我々の強い抵抗に遭い,現在(ソマリアに)駐留中の部隊とともに,全滅することになるであろう。我が国への新たな派兵を許さない」と非難した。2011年8月,ソマリア首都モガディシュからの撤退に際して,「撤退は反撃を目的としたもので,軍の戦術をゲリラ戦に変更するためのものである」と主張したり,2012年9月,ソマリア南部・キスマヨからの撤退に先立ち,「『アル・シャバーブ』の聖戦士たちの軍事司令官は,深夜に戦術的撤退を命じた」と主張したりするなどした。ズベイルの死後,副指導者に昇格したとも報じられた(注6)

(オ) ムクタル・ロボウ(Mukhtar Robow)

別名:
アブ・マンスール(Abu Mansour)

元上級軍事司令官,元報道担当。1969年10月10日生まれ。エリトリア国籍。「イスラム戦士のニュース・チャンネル」が,2010年7月に配信したビデオ映像(注7)の中で,「世界中のウガンダ及びブルンジの大使館を攻撃する」などと発言した。

2013年6月,ソマリア南部・下シャベレ州バラウェイ町で,ズベイルと衝突し追放され,ロボウ自身の拠点である南西部・バコール州に逃れたとされる(注8)

(カ) バシール・ムハンマド・マハムード(Bashir Mohamed Mahamoud)

別名:
バシール・ムハンマド・マフムード(Bashir Mohamed Mahmoud),バシール・ヤレ(Bashir Yare),バシール・クルガブ(Bashir Qorgab)

軍事司令官。主要指導者の一人。1982年生まれ。ソマリア首都モガディシュで,2009年6月,暫定政府施設を迫撃砲により攻撃した。「アルカイダ」幹部であるともされる。国連安保理決議第751号及び第1907号制裁委員会は,2010年4月,2008年の後半時点で「アル・シャバーブ」の執行評議会メンバー約10人のうちの一人であるなどとして,同人を制裁対象に指定した。

(キ) アブ・ムサ・モンバサ(Abu Musa Mombasa)

治安・訓練担当責任者。パキスタン出身。

(ク) フアド・ムハンマド・カラフ(Fuad Mohammed Khalaf)

別名:
フアド・ションガレ(Fuad Shongale)

資金調達担当幹部兼軍事司令官。ソマリアとスウェーデンの二重国籍。ソマリア北東部・プントランド(1998年に自治領宣言)のダロッド氏族出身(注9)。「アル・シャバーブ」内の強硬派イデオローグで,2004年にソマリアに帰国してイスラム主義反政府連合組織「イスラム法廷連合」(UIC)に参加するまでは,スウェーデン首都ストックホルムのモスクで約12年間イマームを務めていた。ソマリア南部・キスマヨのモスクで,2008年5月,資金集めのためのイベントを開催した。同年4月,首都モガディシュに駐留するAMISOM基地に対する自動車爆弾テロ事件を指揮し,同年5月,モガディシュでの警察本部占拠事件に参加した。

国連安保理決議第751号及び第1907号制裁委員会は,2010年4月,同人を制裁対象に指定した。

2012年6月,米国国務省が同人を含む「アル・シャバーブ」幹部7人(注10)を「司法のための報奨」リストに追加した直後,これに反発して,オバマ米国大統領の居住に関する情報にラクダ10頭,クリントン米国国務長官(当時)の居住に関する情報に鶏20羽を報奨として用意している旨の声明を発出した。

追放されたムクタル・ロボウらとともに,ズベイルと衝突していたとされ,ズベイルの死後,「アル・シャバーブ」の組織改革を訴える声明(注11)を発出した。

(ケ) イブラヒーム・ハッジ・ジャマ(Ibrahim Haji Jama)(死亡)

別名:
アル・アフガーニー(Al-Afghani)

設立者の一人。キスマヨの責任者との指摘もある。アフガニスタンの「アルカイダ」キャンプで訓練を受けた。

ズベイル最高指導者(当時)が外国人戦闘員を排除しているなどと主張し,同指導者の独裁的な行動を非難していたとされる。こうした中,2013年6月,「アル・シャバーブ」報道担当のアブドゥラジズ・アブ・ムサブを名のる者は,ジャマら幹部を殺害した旨公表した(注12)

(コ) ハッサン・アブドッラー・ヒルシ・アル・トルキー(Hassan Abdullah Hersi Al-Turki)(死亡)

別名:
ザカリヤ・イスマイール・アハマド・ヒルシ(Zakariya Ismail Ahmed Hersi)

元軍事司令官,情報部門責任者。1944年生まれ。エチオピア・オガデン地方出身のソマリア人。1990年代半ばから,武装組織幹部として,武器密輸に関わってきた。UICによるモガディシュ占拠(2006年)を支援し,「アル・シャバーブ」と連携している武装組織の指導者として頭角を現した。同人は,ケニアとの国境に近い地域で軍事訓練キャンプを設置し,「アル・シャバーブ」を含む多くの武装組織に訓練を施した。アル・ジャジーラは,2007年9月,同人が軍事訓練を行う様子を報じた。

2014年12月27日,ソマリア治安当局に自首した。2015年5月,「アル・シャバーブ」は声明を発出し,トルキーが「慢性的な病気」が原因で死亡したことを発表した。

(サ) アブドゥルラヒ・ヤレ(Abdullahi Yare)

前最高指導者ムクタル・アブディラハマン・アブ・ズベイルの副官,メディア・オペレーション責任者。

(シ) オマル・シャフィーク・ハンマミ(Omar Shafik Hammami)(死亡)

別名:
アブ・マンスル・アル・アムリキ(Abu Mansour al-Amriki),ファルーク(Farouk,Farouq)

元司令官。1984年5月6日,米国アラバマ州でシリア系の父と米国人の母の間に生まれた。2006年にソマリアへ入国し,「アル・シャバーブ」から戦闘訓練を受けた後,同組織に加入した。2012年3月に公表されたビデオ声明の中で,「シャリーア及び戦略に関する事柄について我々の間に相違が生じたことから,私の命が『アル・シャバーブ』に脅かされる可能性がある」と述べた。「アル・シャバーブ」は同年12月,同人を事実上除名する声明を発表した。2013年9月,ソマリア南西部・ベイ州で,英国人メンバーオサマ・アル・ブリタニとともに,「アル・シャバーブ」の秘密部局「アムニヤト」により殺害された旨報じられた。同人は,殺害される前,メディアのインタビューに対し,ズベイルが独裁的な体制を敷いている旨批判していた。

(ス) モハムード・ムジャジル(Mohamoud Mujajir)

自爆テロリストのリクルート責任者。スーダン出身。

(セ) イーサ・オスマン・イーサ(Issa Osman Issa)

別名:
アブドッラー・アット(Abdullah Atto),アブドッラー・ブル(Abdullah Bur),アブダラ・スーダニ(Abdala Sudani),アファディ(Afadey),ムーセ(Musse)

軍事司令官。1973年生まれ。ケニア国籍。ソマリア及びケニアでのテロ活動に関与したと指摘される。

(ソ) マアリム・サルマン(Maalim Salman)

ソマリア人を除くアフリカ系外国人戦闘員の指導者。1979年頃の生まれ。ケニア首都ナイロビ出身。ソマリア国内において,ソマリア人を除くアフリカ系外国人戦闘員に訓練を施し,テロ実行のためソマリア国外に送り込んでいるとされる。また,主にソマリア国外での観光客や娯楽施設,教会を標的にしたテロに関与しているとされる。

国連安保理決議第751号及び第1907号制裁委員会は,2014年9月,同人を制裁対象に指定した。

(タ) アダン・ガラール(Adan Garaar)(死亡)

元ナンバー3。秘密部局「アムニヤト」の上級幹部だったともされる。ナイロビ・ショッピングモール襲撃テロ事件(2013年9月)に関与したとされる。

2015年3月,米軍の空爆により死亡した。

(チ) モハメド・モハムド・クノ(Mohamed Mohamud Kuno)(死亡)

別名:
ドゥルヤディン(Dulyadeyn),ガマデレ(Gamadhere)

ソマリア南部・中ジュバ州及び下ジュバ州における元軍事司令官。ケニア・ガリッサ県出身のケニア系ソマリア人。2007年までガリッサ県のイスラム神学校の指導者だったとされるが,その後,ソマリアに渡ったとされる。ガリッサ大学襲撃テロ事件(2015年4月)を首謀したとされる。2015年12月,「アル・シャバーブ」のメンバー約200人とともに,同組織から離脱し,ISILに加わったとの指摘がなされた。

2016年5月,ジュバランド自治政府軍の急襲を受けて死亡した(注13)

イ 組織形態,意思決定機構

意思決定機関は,ほぼ全ての幹部により構成される執行評議会(代表は最高指導者)である。同評議会は,個別の作戦行動には関わらず,組織の戦略立案,地域指導者や軍事司令官の指名などを司っているとされる。

各地域では,地域指導者並びに財政担当者,説法担当者及びその他統治に関する事項の担当者が統治評議会を組織し,同評議会が地域の統治に当たる。各地域の統治評議会は,独自に治安部隊を保有し,軍,警察などの機能を有している。また,個別の作戦行動については,大幅な裁量権を有し,独自に実行するとされる(注14)

ムクタル・アブ・ズベイル前最高指導者及びマハド・モハメド・アリ副指導者が指揮していたとされる秘密部局「アムニヤト」は,中央司令部,地方司令官,財政及び物資支援の部隊,情報収集部隊,爆弾攻撃及び暗殺の部隊,自爆実行部隊などで構成され,首都モガディシュには,司令官などの幹部のほか,約200人の工作要員が配置されているとされる(注15)

(3) 勢力

総勢約5,000人の戦闘員を有しており,そのうち核となる者は約3,000人(注16)で,その多くはハウィエ氏族(注17)出身とされる。このほか,イエメン,スーダン,ケニア出身の外国人戦闘員約300人が存在するとされる(注18)

(4) 活動地域

ア ソマリア国内

「アル・シャバーブ」は,その設立の経緯により,当初からソマリア首都モガディシュなど中部・南部の地域を支配していたが,2008年8月には南部の重要な都市キスマヨを占拠した。しかし,ソマリア(暫定)政府(注19)部隊等の攻撃により,主要都市・町を次々に失った。

しかし,依然として中部及び南部の村落部における広範な地域を支配しているほか,政府側に奪還された地域においても,自爆テロなどを実行したり,奪還された地域を孤立させる戦術を採っているとされる。また,政府軍等による掃討作戦から逃れるため,ソマリア北東部・プントランドに活動の比重を移す方針を採っているともされる(注20)

イ ソマリア国外

(ア) ケニア

「アル・シャバーブ」は,近年,同組織が活動するソマリア南部と広く国境を接するケニアで,活発にテロ活動を行っており,2013年9月には,首都ナイロビでショッピングモール襲撃テロ事件(60人以上が死亡)(注21)を,2015年4月には,東部・ガリッサで大学襲撃テロ事件(148人が死亡)を引き起こしている(注22)

また,「アル・シャバーブ」は,多くのソマリア難民が収容されているケニア北東部のダダーブ難民キャンプをケニアにおける活動の拠点にしているとされ,ナイロビ・ショッピングモール襲撃テロの計画も,同難民キャンプで練られたとの指摘がある。

(イ) ウガンダ

「アル・シャバーブ」は,2010年7月,ウガンダ首都カンパラで,自爆テロを実行(76人が死亡)している。

(ウ) ジブチ

「アル・シャバーブ」は,2014年5月,ジブチ首都ジブチで,自爆テロを実行(1人が死亡)している。また,2015年1月には,首都ジブチのメネリク・スクエアでのテロを企図したとされる(注23)

(エ) エチオピア

「アル・シャバーブ」は,これまで,エチオピアではテロを実行していないものの,過去,同国首都アディスアベバでのテロを企図している。2014年10月,駐エチオピア米国大使館は,同組織が,アディスアベバのボレ地域でのテロを計画しているとして警告を発出した。同組織は,約20人のメンバーをアディスアベバに送り込んだとされるが,同警告が発出されたため,計画を中止したとされる。

(5) 活動目的・攻撃対象

ア 活動目的

①イスラム国家の樹立,②ソマリア政府の打倒,③アフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM)部隊など外国勢力の排除。

イ 攻撃対象

米国の支援を受けるソマリア政府を「背教政府」と非難し,同政府及び軍を主要な攻撃対象と位置付けているほか,同国に駐留するAMISOM部隊など外国勢力に対するテロを継続している。

(6) 沿革

ソマリアでは,1991年に内戦状態に突入した後,混乱が続いていた。2005年,周辺国の仲介により暫定政府が成立し,ソマリア北東部のプントランドの「大統領」アブドゥラヒ・ユスフ・アフメドが大統領に選出された。同年,ユスフ大統領が混乱する首都モガディシュからバイドアへ避難すると,イスラム国家樹立を目指すUICが暫定政府に対する攻勢を強め,2006年6月,モガディシュを占拠した。同年12月,隣国のエチオピア政府がソマリア暫定政府支援のため軍を派遣し,UICやそれを支持する武装勢力と激しく衝突した。2007年1月,UICはモガディシュからエリトリアへ拠点を移したが,UICの中で武装闘争路線を主張するアデン・ハシ・アイロ(元最高指導者,2008年5月死亡)が率いる青年軍の勢力がソマリアに残って「アル・シャバーブ」を設立した。アイロを始めとする「アル・シャバーブ」幹部の多くは,アフガニスタンにおいて「アルカイダ」の軍事訓練を受けたとされることなどから,同組織は設立当初から「アルカイダ」に近いとみられていた。「アル・シャバーブ」は,2008年8月に南部キスマヨを制圧した後,2009年1月には,暫定政府を支援していたエチオピア軍の撤退により更に攻勢を強め,同国中部及び南部地域の広範囲を統治下に置いた。

しかし,その後,暫定政府部隊,AMISOM,エチオピア軍,親政府系武装組織「アフル・スンナ・ワルジャマー」(ASWJ)などが攻撃を強化したことなどを受けて,「アル・シャバーブ」は,2011年8月,「戦術的理由」によりモガディシュから撤退した。その後,ケニアが同年10月,同国内でのテロ活動を阻止するためにソマリアに派兵したことなどから,「アル・シャバーブ」は更に劣勢に追い込まれ,ベレドウェイン(同年12月),バイドア(2012年2月),アフゴイ(同年5月),アフマドウ(同年5月),バラド(同年6月),キスマヨ(同年10月),バラウェイ(2014年10月)などの南部及び中部の主要都市を相次いで失った。

米国国務長官は,2008年3月,「アル・シャバーブ」を「外国テロ組織」(FTO)に指定した。また,国連安保理決議第751号及び第1907号制裁委員会は,2010年4月,政治的プロセスを脅かす行動及び国際的な平和維持活動を脅かす行動に留まらず,直接的又は間接的にソマリアの平和,安全,安定を脅かす行動に関与してきたなどとして,同組織を制裁対象に指定した。

(7) 最近の主な活動状況

ア 概況

「アル・シャバーブ」は,最高指導者ズベイル(2014年9月死亡)を始め幹部を相次いで失っているほか,2015年に入ってからは,下シャベレ州バルデレやバイ州ディンソールなど同組織が長く占拠してきた町から撤退するなど,軍事的にも劣勢に立たされているものの,首都モガディシュなどにおいて,政府関係機関やAMISOM,国連機関,政府要人がよく利用するホテルなどに対するテロを継続している。また,国外では,特に隣国ケニアでの活動を活発化させており,2013年9月,首都ナイロビでショッピングモール襲撃テロを実行したのに続き,2015年4月,北東部・ガリッサ県で大学襲撃テロを実行するなど,高いテロ実行能力を誇示している。

同組織は,「アルカイダ」の「支部」組織として活動しているものの,2015年以降,「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)を支持するメンバーの動向及びそれを抑え込もうとする指導部の動向が報じられている。

イ 他勢力との関係

(ア) 「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)

2015年3月頃,ISILの支持者で同組織の「使者」とも指摘されるハミル・アル・ブシュラが,文書声明(2月24日付け)を発出し,「アル・シャバーブ」最高指導者アハマド・ディリエにISILへの忠誠を表明するよう呼び掛けた。それ以降,「アル・フラート州」や「シナイ州」,「ニナワ州」など,ISILの各「州」が,「ソマリアのムスリム」に向けて,ISILへの参加を呼び掛けるビデオ声明を発出した。

ISILから「転向」の働き掛けを受ける中,「アル・シャバーブ」の幹部からは呼応する動きも見られ,同組織の宗教的指導者とされるシェイク・ハッサン・フセイン・アブ・サルマンがISIL支持の発言(2015年3月)を行ったほか,「アル・シャバーブ」幹部でプントランドを拠点とする精神的指導者とされるアブドゥル・カディル・ムミン(注24)も,ISILへの忠誠を表明し,離脱(同年10月)するなど,ソマリアへのISILの影響力拡大がうかがわれる事案が相次いだ。こうした動きに対し,「アル・シャバーブ」は,報道担当アリ・モハムード・ラゲが,「結束は義務であり,分裂は大罪であり,ムスリムへの裏切りへと繋がる」などとISIL支持の動きを牽制する声明(同年11月)の発出やISILを支持したとされるメンバーの殺害を行ったとされる。

2016年に入ると,アブドゥル・カディル・ムミン率いる一派とは異なるとみられる,組織内のISIL支持勢力が「東アフリカ戦線」(JEA)なる分派の結成を発表したほか,「ISILソマリア」名の声明が発出されるなどした(いずれも同年4月)。10月には,ムミン率いる一派が,プントランドの港湾都市カンダラを占拠したが,12月,プントランド治安部隊により奪還された。

(イ) 「アルカイダ」

「アルカイダ」最高指導者アイマン・アル・ザワヒリと「アル・シャバーブ」最高指導者ズベイル(当時)は,2012年2月,「アルカイダ」のメディア部門「アル・サハブ」が作成した録音及びビデオ声明で,「アル・シャバーブ」の「アルカイダ」への合流を発表した。同声明において,ザワヒリは,ソマリアに進攻した「エチオピア十字軍」及び「ケニア十字軍」に対する「アル・シャバーブ」の戦いを称賛し,ソマリアから両軍を一掃するよう呼び掛けた。また,ザワヒリは,同年9月12日発出の声明において,「アル・シャバーブ」を「アルカイダ」の「支部」組織として名指しした(注25)。なお,「アル・シャバーブ」は,ズベイルの死後,ディリエ新指導者の就任を発表する声明で,「アルカイダ」及びザワヒリへの忠誠を改めて表明した。

(ウ) 「アラビア半島のアルカイダ」(AQAP)

「アル・シャバーブ」は,2010年1月,アデン湾を隔てて近接するイエメンの「アラビア半島のアルカイダ」(AQAP)に向けて,「全てのイスラム教徒に,イエメンの兄弟(AQAP)を支援することを求める。我々『アル・シャバーブ』は,既に応援を送る準備を整えている。我々は米国に勝利するであろう」との声明(注26)を発出した。AQAPは,同年2月,同声明に対し「その気持ちに感謝する。世界規模の不信仰者の長である米国との来る戦闘に際し,協力しようではないか」との声明を発出した。これ以降,両組織の連携がうかがわれるようになった。

このほか,イエメン内務省によると,「アル・シャバーブ」は,2012年3月,戦闘員約300人をAQAPに派遣したとされる。なお,イエメン軍のカタン少将暗殺事件(2012年6月)では,ソマリア人容疑者が自爆テロを実行したが,同容疑者と「アル・シャバーブ」との関係などは明らかにされていない。

(エ) ソマリア海賊

「アル・シャバーブ」は,ソマリア海賊との関係を否定しているが,ソマリア海賊の拠点都市の一つであるムドゥグ州ハラルディーレ町を占拠した(2010年5月)後,2011年2月,同町の海賊との間で,身代金配分に関する協定を結んだと伝えられる(注27)

ウ 資金獲得活動

ソマリアの氏族主義を背景に,世界各国に居住するソマリア人支援者から資金援助を受けているとされる。特に,ケニアにおいては,首都ナイロビ及び北東部のダダーブ難民キャンプ内に住むソマリア人から寄附を集めているとされる。国連ソマリア監視団は,2010年3月10日付け報告書において,「アル・シャバーブ」が2009年8月にインターネット上で世界中のソマリア人に対し資金援助を求めるキャンペーンを展開し,2週間で4万米国ドル以上を集めたことを明らかにした。

このほか,主要都市を奪還されるまでは,首都モガディシュ市内のバカラ市場及び南部の港町キスマヨ並びに中・南部の支配地において「税金」として金銭を徴収していたほか,国境地域における密貿易,木炭の輸出などによって収益を上げていたとされる(注28)。最近では,ケニア国内の密輸業者と結託して,ケニアへの砂糖の密輸に関与しているとされ,砂糖を積んでケニアに向かうトラックから,1台当たり約1,000米国ドルの「通行料」を徴収しているとされる(注29)

エ リクルート活動

国連ソマリア監視団は,2012年7月13日付け報告書において,「アル・シャバーブ」が外国軍部隊からの軍事的圧力の高まりを背景として,2011年以降,ますます活発にリクルート活動を展開し,日常的に11歳程度の子供を徴用していることなどを明らかにした。また,2013年7月12日付け報告書では,リクルート活動に協力的でない地域から,若者を誘拐するケースがあることが指摘された。

このほか,多数のソマリア人が流入しているケニアでは,「アル・シャバーブ」支援ネットワークが形成されており,モスクなどを通じてリクルートが行われているとされる。国連安保理決議第751号及び第1907号制裁委員会は,2012年7月及び同年8月,「アル・シャバーブ」に資金,物資,ロジ又は技術的支援を行ったとして,ケニアを拠点として活動するイスラム教指導者アボウド・ロゴ・ムハンマド(同年8月死亡),及びソマリアでの暴力的軍事活動を実行するイスラム系ケニア人青年層の指導的な世話人であるアブバク・シャリフ・アハマド(2014年4月死亡)を制裁対象に指定した。

年月日 主要テロ事件,主要動向等
07. 1  「イスラム法廷連合」(UIC)の中で,武装闘争路線を主張するアデン・ハシ・アイロが率いる勢力が「アル・シャバーブ」を設立
08. 4. 8  ソマリア首都モガディシュのアフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM)部隊基地で,自動車爆弾による自爆テロを実行し,1人が死亡
08. 5. 8  モガディシュの警察本部を一時占拠。警官8人が死亡
08.10. 6  モガディシュのバカラ市場に迫撃砲が撃ち込まれた後に戦闘が発生し,17人が死亡
08.10.29  北西部のソマリランド(1991年に独立宣言)及び北東部のプントランドで,「アル・シャバーブ」が4件の自爆テロを実行し,28人が死亡
09. 6.18  モガディシュのメディナ・ホテルにおいて開催された結婚式の会場内で自爆テロを実行し,ソマリア暫定政府の治安相を含む参列者50人以上が死亡,100人以上が負傷
09.12. 3  モガディシュのシャモ・ホテルにおいて開催された大学の学位授与式の会場内で自爆テロを実行し,暫定政府の教育相,文化・高等教育相及び保健相の3閣僚を含む15人が死亡
10. 2. 2  「アルカイダ」に忠誠を誓うとともに,オサマ・ビン・ラディンが標ぼうする「グローバル・ジハード」に同調し,東アフリカにおける「ジハード」を宣言する声明を発出
10. 7.11  ウガンダ首都カンパラで,サッカー・ワールドカップ決勝戦をモニター放送中の飲食店及び運動施設を標的に自爆テロを実行し,米国人及びアイルランド人を含む76人が死亡
10. 8.24  ソマリア暫定政府軍の制服を着用した「アル・シャバーブ」メンバーが,モガディシュ市ムナ・ホテルを襲撃し,宿泊中の暫定議会議員6人を含む32人が死亡
11. 3.16  モガディシュで,「アル・シャバーブ」が大統領府やAMISOMの拠点などに向かって迫撃弾を発射した後に戦闘となり,巻き込まれた市民ら35人が死亡
11. 5.30  モガディシュで,武装した3人組がAMISOM駐屯地に侵入しようと銃撃戦を展開し,1人が自爆。兵士3人と犯人3人が死亡。「アル・シャバーブ」は,自爆犯はソマリア系米国人アブドゥラヒ・アハメドであるとの声明を発出
11. 6.10  モガディシュのファラハ内相兼国家治安相の自宅で爆発が発生し,同相が死亡。同内相の姪の自爆とされるが,「アル・シャバーブ」は,仕掛けていた爆弾によるものとの声明を発出
11. 8. 6  モガディシュからの撤退を発表。報道担当のラゲは,「撤退は反撃を目的としたもので,(敗北による)撤退ではなく,戦術をゲリラ戦に変更するためのもの」などと発言
11.10. 4  モガディシュの中心部で,爆弾を積んだトラックによる自爆テロを実行し,地元青年ら100人以上が死亡
11.11.28  「アル・シャバーブ」は,国連,国際人道支援団体などの活動を禁止。これら団体の事務所への襲撃を開始
12. 2. 8  モガディシュ中心部のムナ・ホテルで,自動車を用いた自爆テロを実行し,15人が死亡
12. 2. 9  「アルカイダ」のメディア部門「アル・サハブ」が作成した録音及びビデオ声明で,「アルカイダ」指導者ザワヒリが,「アル・シャバーブ」の「アルカイダ」への合流を発表
12. 3.10  ソマリア・ゲド州ユルクト村で,ソマリア暫定連邦政府部隊及びエチオピア軍の軍事拠点を襲撃し,約100人が死亡。「アル・シャバーブ」は,11日付け文書声明で,(両国の)兵士74人を殺害したほか,エチオピア軍兵士1人を拘束したと主張
12. 4. 4  モガディシュの国立劇場で爆発が発生し,同国スポーツ界幹部など10人が死亡。当局は,女性による自爆と発表したが,「アル・シャバーブ」は仕掛けていた爆弾によるものと主張
12. 5. 9  憲法草案,ソマリア暫定議会議員を採択するためにモガディシュで開催予定の「ソマリア伝統長老集会」に出席しようとした長老約100人を,「アル・シャバーブ」がソマリア中部で拘束
12. 5.29  モガディシュ郊外で,シェイク・シャリフ・アハマド大統領の車列を攻撃。負傷者なし
12. 7.16  モガディシュで,自動車爆弾が爆発し,ガルウェイネ元貿易相・議員が死亡,通行人6人が負傷
12. 9.12  モガディシュで,ハッサン・シェイク・モハムッド新大統領を標的とした自爆テロを実行し,兵士1人が死亡
13. 4.14  モガディシュで,最高裁判所が入る合同庁舎に対する自爆及び銃撃テロを実行し,少なくとも30人が死亡
13. 5. 5  モガディシュで,カタール政府関係者を乗せた車両を標的とした爆弾テロを実行し,市民4人及び兵士1人が死亡
13. 5.25  ケニア北東部・ダマジャレ町で,警察署を襲撃し,警察官2人が死亡
13. 6.19  モガディシュで,国連開発計画(UNDP)の施設を標的とした爆弾及び銃撃テロを実行し,少なくとも国連治安部隊関係者を含む15人が死亡
13. 7.27  モガディシュで,トルコ大使館関係施設を標的とした爆弾及び襲撃テロを実行し,トルコ治安機関高官1人を含む2人が死亡
13. 9.21 ナイロビ・ショッピングモール襲撃テロ事件
 ケニア首都ナイロビで,ショッピングモールを襲撃し,外国人を含む60人以上が死亡
13.11.19  ソマリア中部・バラドウェイン市で,警察署を襲撃し,警察官及び民間人の19人が死亡
14. 3.23  ケニア・モンバサ県で,キリスト教教会を襲撃し,6人が死亡
14. 5.24  ジブチ首都ジブチで,自爆テロを実行し,1人が死亡
14. 6.15  ケニア・ラム県で,警察署,ホテル等を襲撃し,少なくとも48人が死亡
14. 8.31  モガディシュで,ソマリアの情報機関施設を襲撃し,兵士等5人が死亡
14. 9. 1  ソマリア・下シャベレ州で,米国の空爆により,ズベイル最高指導者が死亡
14.11.22  ケニア・マンデラ県で,バスを襲撃し,非イスラム教徒28人が死亡。
15. 2.20  モガディシュで,ホテルを標的に自爆テロなどを実行し,モガディシュの副市長を含む約25人が死亡
15. 3.27  モガディシュで,ホテルを標的に自爆テロなどを実行した上,同ホテルを一時占拠し,駐ジェノバ・ソマリア国連代表部の代表を含む少なくとも24人が死亡
15. 4. 2 ケニア・ガリッサ大学襲撃テロ事件
 ケニア・ガリッサ県で,ガリッサ大学を襲撃し,学生ら148人が死亡
15. 4.20 ソマリア・ガロウェで,国連児童基金(UNICEF)の車両を狙って爆弾を爆発させ,UNICEF職員4人を含む少なくとも7人が死亡
15. 6.24  モガディシュで,アラブ首長国連邦の外交官の乗る車両を狙った自爆テロを実行し,ソマリア軍兵士4人を含む少なくとも12人が死亡
15. 7. 7  ケニア・マンデラ県で,採石場施設を襲撃し,作業員14人が死亡
15. 7.26  モガディシュで,中国などの大使館が入居する高級ホテルを狙った自爆テロを実行し,中国大使館関係者1人を含む17人が死亡,10人が負傷
15. 8.22  ソマリア・下ジュバ州キスマヨで,ソマリア軍兵士の訓練所を襲撃し,少なくとも兵士25人が死亡,30人が負傷
15. 9. 1 モガディシュ郊外で,AMISOMに参加するウガンダ部隊駐屯地を襲撃し,同基地を一時占拠。同国軍兵士12人が死亡。「アル・シャバーブ」は,70人の同国軍兵士を殺害したと主張
15. 9.21  モガディシュで,大統領府を標的にした自爆テロを実行し,少なくとも11人が死亡,23人が負傷
15.11. 1  モガディシュで,ホテルを襲撃し,国会議員や元軍高官を含む少なくとも15人が死亡
16. 1.15  ソマリア西部・ゲド州エル・アッデで,AMISOMに参加するケニア軍部隊駐屯地を襲撃し,少なくとも兵士180人が死亡(死者数については,ソマリアのモハムード大統領の発言)
16. 2. 2  モガディシュに所在するモガディシュ国際空港からジブチへ向けて飛行していたダーロ航空のエアバスA321機内で,爆弾を爆発させ,2人が負傷
16. 2.28  ソマリア南西部・バイ州都バイドアで,レストランを標的にした自爆テロを実行し,さらに,現場から逃げる人々を標的に自爆テロを実行。両事件併せて,少なくとも30人が死亡,61人が負傷
16. 6. 1  モガディシュで,ホテルを襲撃し,国会議員2人を含む少なくとも20人が死亡,60人以上が負傷
16. 6.25  モガディシュで,ホテルを襲撃し,環境大臣を含む少なくとも15人が死亡
16. 7.26  モガディシュで,AMISOMの基地を標的にした自爆テロを実行し,少なくとも14人が死亡,12人が負傷
16. 8.21  ソマリア北東部・プントランドのガルカヨで,地元政府庁舎を標的にした連続自爆テロ攻撃を実行し,20人以上が死亡,30人が負傷
16. 8.30  モガディシュの大統領宮殿や政府庁舎に近いホテル前で,自動車爆弾による自爆テロを実行し,少なくとも15人が死亡,45人が負傷
16. 9.18  モガディシュで,軍高官の乗る車両に対する自爆テロを実行し,同高官を含む6人が死亡
16. 9.22  ケニア・ガリッサ県で,警察の駐屯地を襲撃し,警察官3人が負傷,2人が行方不明に
16.10.25  ケニア・マンデラ県で,宿泊施設を襲撃し,少なくとも12人が死亡
16.11.26  モガディシュに所在する市場で,自動車爆弾を爆発させ,少なくとも20人が死亡,30人以上が負傷

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