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ボコ・ハラム
Boko Haram(注1)

ナイジェリア北部を主要活動地域とするスンニ派過激組織。近年,攻撃対象は,キリスト教会,警察,政府関係施設などから国連施設にまで拡大。

別称:
「宣教及びジハードを手にしたスンニ派イスラム教徒としてふさわしき者たち」
(Jama'atu Ahlu-Sunna Lidda'awati Wal-Jihad)

(1) 設立時期

2002年頃

(2) 組織・機構

ア 指導者,幹部等

(ア) アブバカル・シェカウ(Abubakar Shekau)(注2)

別名:
アブ・ムハメド・アブバカル・ビ・ムハメド(Abu Muhammed Abubakar BiMuhammed),アブ・モハメド・アブバカル・ビン・モハメド(Abu Mohammed Abubakar Bin Mohammed),シャイク(Shayku),シェフ(Shehu),シェカウ(Shekau)

最高指導者。1969年生まれ。ナイジェリア北部・ヨベ州シェカウ村出身。2010年7月,ビデオ声明の中で,自ら「ボコ・ハラム」指導者に就任したと宣言し,西洋文化の影響を排除する活動を再開する旨表明した。また,同月,2回目のビデオ声明で,「アルカイダ」との連携を表明するとともに,米国に脅威を与える旨宣言した。2013年8月,ナイジェリア軍は,シェカウが死亡した可能性を指摘したが,同年9月の声明において,自身の生存を明らかにした。さらに,2015年8月,「ボコ・ハラム」の指導者が交代したとの報道に対し,同月の声明において,自身の生存及び引き続き指導者であることを明言した。

2012年11月,ナイジェリア政府は,同人の逮捕につながる情報に最大で5,000万ナイラ(1ナイラ0.65円として約3,250万円)の懸賞金を掛けたほか,米国国務省は2013年6月,最大で7万米国ドルの懸賞金を設定した。

国連安保理「アルカイダ」制裁委員会は,2014年6月,「ボコ・ハラム」の指導者であり,同組織のテロ活動を指示したとして,同人を制裁対象に指定した。

(イ) モハメド・ユスフ(Mohamed Yusuf)(死亡)

設立者。1970年生まれ。ナイジェリア北部・ヨベ州出身。ナイジェリア北東部・ボルノ州都マイドゥグリ市のモスクのカリスマ的なイスラム聖職者であった同人は,2002年に同市で「ボコ・ハラム」を結成した。同州のほか,バウチ州,ヨベ州において西洋文化の影響を排除する活動を広めていったとされる。2009年7月,警察との衝突をきっかけに発生したナイジェリア治安当局との戦闘で拘束され,死亡した。

(ウ) アブバカル・アダム・カンバル(Abubakar Adam Kambar)

別名:
アブ・ヤシル・カンバル(Abu Yasir Kambar),アブバカル・カンバル(AbubakarKambar),アブ・ヤシル(Abu Yasir)

1977年生まれ。ナイジェリア北東部・ボルノ州都マイドゥグリ市出身。アルジェリアで「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ」(AQIM)の軍事訓練を受けるなど同組織と密接な関係を有していたとされる。設立者モハメド・ユスフの同志として,2009年7月,ナイジェリア治安部隊との戦闘に参加した。モハメド・ユスフの死亡後,行方不明となり,2012年頃死亡したとの指摘もある(注3)

(エ) ハリド・アル・バルナウィ(Khalid al-Barnawi)

別名:
ハレド・アル・バルナウイ(Khaled Al-Barnawi),ハリド・アル・バルナウイ(Khalid Al-Barnawi),ハレド・エル・バルナウイ(Khaled El-Barnaoui),アブ・ハフサト(Abu Hafsat),モハメド・ウスマン(Mohammed Usman)

1976年生まれ。ナイジェリア北東部・ボルノ州都マイドゥグリ市出身。シューラ評議会の一員であり,アブバカル・シェカウの4人いる参謀の一人とされる(注4)。アブバカル・アダム・カンバルとともにアルジェリアでAQIMの軍事訓練を受けたほか,外国人の拉致などAQIMの戦術を取り入れるよう提案するなど,両組織間の仲介役を担っていたとされる。

(オ) モハメド・ヌール(Mohammed Nur)

別名:
マムマン・ヌール(Mamman Nur)

ナイジェリア北東部・ボルノ州都マイドゥグリ市出身。2009年7月の治安部隊との戦闘では,モハメド・ユスフ,アブバカル・シェカウに次ぐ地位にあり,戦闘後,ソマリアに渡り,「アル・シャバーブ」の軍事訓練を受けたとされる。2011年にナイジェリアへ戻り,同年8月,首都アブジャの国連施設に対する自爆テロ事件を首謀したとされる。2012年当初,「ボコ・ハラム」による自爆テロ,襲撃及び暗殺などのテロ活動や,簡易爆弾の製造について指揮を執り,同年4月,同組織の自爆テロ要員に活動資金を渡したとされる(注5)

(カ) ムスタファ・チャド(Mustapha Chad)

チャド出身。シューラ評議会の一員であり,「ボコ・ハラム」の活動に,資金,物資及び技術など多方面から支援を行ったとされる。また,2013年にはナイジェリア北東部・ヨベ州での活動を指揮していたとされる。

イ 組織形態,意思決定機構等

「ボコ・ハラム」は,約30人のメンバーで構成されるシューラ評議会(Shura Council)で運営されているとされる。多くの活動は同評議会の同意を得て実行されるが,指導者アブバカル・シェカウが,独断で実行する場合もあるとされる。

(3) 勢力

数千人のメンバーを擁するとされるが,正確な人数は特定できていない(注6)

(4) 活動地域

主な活動地域は,ナイジェリア国内でイスラム教徒が多数を占める同国北東部のボルノ州,アダマワ州,ヨベ州,北部のカノ州などであるが,北部のイスラム教徒と南部のキリスト教徒が拮抗する中部のプラトー州及び首都アブジャでも活動がみられる。

一方,国外においては,2013年2月にカメルーン北部で,フランス人の拉致を実行した(注7)ほか,2015年7月には,同国北部・極北州で相次いで自爆テロを実行した。また,これまで,「ボコ・ハラム」によるテロが確認されていなかったチャドやニジェールにおいてもテロを頻発させ,同年6月,チャド首都ンジャメナで初めて爆弾テロを実行したほか,ニジェール南部でも村落への襲撃を繰り返すなど,ナイジェリアの近隣国にもテロ活動を拡大させている。

(5) 活動目的・攻撃対象

ア 活動目的

設立者モハメド・ユスフは,@ナイジェリア政府の打倒,A(「ボコ・ハラム」発足地である)ボルノ州におけるシャリーア施行,B西洋式教育の否定-などを標榜した。また,アブバカル・シェカウは,2012年4月,ナイジェリアのジョナサン政権打倒を宣言した。

イ 攻撃対象

ナイジェリア北部及び中部の地方自治体,軍,警察,政府関係者及び施設を主な攻撃対象としているほか,酒場,キリスト教徒,キリスト教会,イスラム教シーア派(注8),「ボコ・ハラム」に批判的なイスラム教徒,イスラム指導者,モスク及びイスラム神学校などに爆弾攻撃や銃撃を行っている。特に,警察に対しては,2015年に同組織メンバーによる自爆テロをナイジェリア(7月,10月)及びチャド(6月,7月)で実行しており,いずれも警察を標的とした「作戦」を実行したとの声明を発出し,犯行を自認している。そのほか,市場やバスターミナルなど人が多く集まる場所での自爆テロや,村落への襲撃も頻繁に行っている。

また,「ボコ・ハラム」報道担当は,2010年3月,「米国は,第一の攻撃目標である」,「米国は,イラクやアフガニスタンなどを迫害しているほか,パレスチナの同胞を殺害するイスラエルを盲目的に支援している」として,米国も攻撃対象であることを強調した(注9)

(6) 沿革

「ボコ・ハラム」の前身組織は,1990年代中頃に設立されたイスラム教学習グループであるとされる。設立者モハメド・ユスフは,2002年頃,これらグループの分派組織として「ボコ・ハラム」を設立したとされる。「ボコ・ハラム」は,設立後,ナイジェリアの「タリバン」を自称した。

組織設立当初の2002年頃には,ナイジェリア北東部・ボルノ州で警察との小規模な衝突を繰り返していた。2003年12月,北部・ヨベ州の警察署3か所を襲撃した。

「ボコ・ハラム」は,2009年7月26日,警察による取締りをきっかけに,バウチ州の警察署を襲撃,その後,カノ州,ヨベ州,ボルノ州においてナイジェリア治安部隊との間で戦闘を激化させた。この戦闘に際し,モハメド・ユスフや同組織戦闘員等800人以上が死亡した。その後,同組織は約1年間活動を停止した。しかし,2010年7月にアブバカル・シェカウが新指導者に就任した後,同年8月,警察や政府関係施設などに対するテロを再開し,同年12月,簡易爆弾を用いてキリスト教会を攻撃した。2011年6月には首都アブジャで,警察本部に対し自動車を用いた自爆テロを行い,同年8月には,国連施設に対しても自爆テロを実行した。近年,「ボコ・ハラム」の簡易爆弾及び自爆等によるテロは増加傾向にある。こうした背景には,同組織が,爆弾製造の能力を有する者や自爆テロを希望する者を数多く取り込んでいる可能性が指摘されている(注10)

米国国務長官は,2013年11月,「ボコ・ハラム」及びその分派組織とされる「アンサール」(後述)を「外国テロ組織」(FTO)に指定した。その際,「アンサール」が,2012年11月に首都アブジャの警察署を襲撃したほか,ナイジェリア国内に滞在する外国人の拉致に関与している旨指摘した。また,国連安保理「アルカイダ」制裁委員会は,2014年5月,「ボコ・ハラム」を制裁対象に指定した。

(7) 最近の主な活動状況

ア 概況

アブバカル・シェカウが2010年7月1日,「ボコ・ハラム」の指導者に就任して以来,同組織の活動は,2011年,自動車を用いた自爆攻撃へと過激化し,活動地域も北部地域から首都圏にまで及んだが,2012年には当局による取締りが強化されたことから,首都圏におけるテロは一時的に収束した。2013年5月,ジョナサン大統領は,「ボコ・ハラム」が北東部のボルノ州,ヨベ州,アダマワ州の一部を占拠しているとして,非常事態宣言をした上で,これらの州に空軍を投入するなどの掃討作戦を開始した。一方,同組織は,政府・軍に協力的な地元の自警団や民間人等に対する報復以外にも,学校に対する攻撃を活発化させ,2014年2月,ヨベ州で寄宿学校を襲撃したほか,同年4月にはボルノ州で200人を超える女子学生を誘拐した。同組織は,首都圏においても,首都アブジャで複数件の爆弾テロ(同年4月及び6月)を実行したほか,同年8月には同国北東部の一部を占領し,「シャリーアによる統治」(注11)を宣言するなど,同地域を支配する姿勢を示した。

ナイジェリア政府は,同年10月,「ボコ・ハラム」との停戦合意を発表したが,同月,同組織は,同合意を否定する声明を発出した。同政府は2015年2月以降,近隣国のニジェール,カメルーン及びチャドなどと共同で掃討作戦を実施したが,「ボコ・ハラム」はそれらの国々を非難し,テロを実行した。同年3月には,シェカウのものとされる録音声明で,「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)の最高指導者アブ・バクル・アル・バグダディに忠誠を誓う旨表明し,同声明発出以降,ISILの「西アフリカ州」を自称した。同年5月,「ボコ・ハラム」の撲滅を掲げるブハリ大統領が就任すると,就任当日から連日,北東部・ボルノ州を中心にテロを頻発させた。

イ 他勢力との連携

(ア) 「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)

アブバカル・シェカウは,2010年7月,インターネット上に掲載されたビデオ声明の中で,同年4月に死亡したISI(当時)最高指導者アブ・ウマル・アル・バグダディ及び同幹部アブ・アイユーブ・アル・マスリを追悼した。また,2014年7月,ビデオ声明の中で,「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)最高指導者のアブ・バクル・アル・バグダディ,「アルカイダ」最高指導者のアイマン・アル・ザワヒリ,「タリバン」最高指導者のモハンメド・オマルを列挙し,「アッラーのご加護がありますよう」などと呼び掛けたほか,同年11月にもビデオ声明で「イラクとシリアのカリフ国家」に言及し,「カリフ国家に住む全ての者に挨拶を送りたい」などと述べた。2015年3月7日,録音声明により,ISIL最高指導者アブ・バクル・アル・バグダディへの忠誠を表明し,同月12日,ISILもこれを受け入れる声明を発出した。同表明以降,「ボコ・ハラム」はISILの「西アフリカ州」を自称し,同年10月にはビデオ声明の中で,再度,ISIL最高指導者への忠誠を表明した。

(イ) 「アルカイダ」

「アルカイダ」の元最高指導者オサマ・ビン・ラディンは,スーダンに滞在した際(1992〜1996年),同国首都ハルツームのイスラム大学に留学していたナイジェリア人のモハメド・アリ(ボルノ州マイドゥグリ市出身)に対し,ナイジェリア国内で「アルカイダ」細胞を組織するよう依頼し,約300万ドルを手交したとされる。モハメド・アリは,2002年,ナイジェリア帰国後,同国内のサラフィー主義組織に資金提供を開始したが,その中には,モハメド・ユスフも含まれていたとされる。

また,2009年7月,ナイジェリア治安当局が実施した取締りを受け,アフガニスタンに逃亡した「ボコ・ハラム」メンバーの一部は,「アルカイダ」から爆発物製造訓練を受けたとの指摘もある(注12)

(ウ) 「アンサール」(Ansaru)

2012年1月,「ボコ・ハラム」から分派して設立された組織。指導者はアブ・ウワマトゥル・アル・アンサリとされる(注13)。活動目的は,ナイジェリア及び西アフリカ地域におけるイスラム法国家の樹立であるとされる。同年6月,報道担当アブ・ジャファールは,ビデオ声明において,「ナイジェリア政府高官やキリスト教徒はイスラムの敵であり,我々は彼らを標的にし殺害する」旨表明した。

英国内務省は,同年11月,「アンサール」がナイジェリアを拠点とするイスラム・テロ組織で,ナイジェリア政府及び西側諸国に対する攻撃を活動目的とし,また,「アルカイダ」と幅広く連携している組織である旨指摘し,同省資料(Proscribed Terrorist Organaisations)にテロ組織として掲載した。

米国国務長官は,2013年11月,「ボコ・ハラム」及びその分派組織として「アンサール」を「外国テロ組織」(FTO)に指定した。その際,同組織が,2012年11月に首都アブジャの警察署を襲撃したほか,ナイジェリア国内に滞在する外国人の拉致に関与している旨指摘した。

また,国連安保理「アルカイダ」制裁委員会は,2014年6月,同組織が「ボコ・ハラム」の分派組織であり,「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ」(AQIM)とも関係を有しているとの認識を示した上で,制裁対象に指定した。

(エ) 「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ」(AQIM)

a 最近の動向

「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ」(AQIM)最高指導者アブデルマレク・ドルークデルは,2010年2月,「我々は,あなた方の息子たち(『ボコ・ハラム』戦闘員)に武器の操作に関する訓練を施すほか,人員,武器,銃弾その他装備などのあらゆる支援を行う用意がある」などと述べた(注14)

また,AQIM最高指導者ドルークデルは,2010年6月,中東の衛星テレビ局アル・ジャジーラとのインタビューで,「(AQIMの)影響力をサブ・サハラ(サハラ以南)地域に拡大するために『ボコ・ハラム』を支援する」などと述べ,支援の用意を再び強調した。

このほか,アブバカル・シェカウは,2010年10月,同年4月に死亡した前述のAQI幹部を追悼する声明を再度発出したが,同声明は,AQIMのメディア部門「アル・アンダルス」により作成されたものとされる。

AQIM及びその関連組織がマリ北部を支配下に置いていた間,「ボコ・ハラム」は,同地域にメンバーを派遣しており,2012年4月にマリ北部ガオ市で発生したアルジェリア外交官誘拐事件(第U部 3「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ」〈AQIM〉参照)では,同組織メンバーが関与したと報じられている
(注15)。2011年以降,「ボコ・ハラム」によるテロの手段は,従来の銃や刃物,簡易爆弾を用いた攻撃から自動車を使った自爆テロへとエスカレートしたほか,その攻撃対象は国連施設にまで拡大した。こうした背景としてはAQIMによる影響や支援の可能性が指摘されている。

b 政府関係者等の指摘

カーター・ハム米国アフリカ軍司令官(当時)は,2011年9月,「AQIMと『ボコ・ハラム』が,共同訓練や共同作戦に関心を示している」との懸念を表明したほか,別の米国国防当局関係者も,「これら(組織)が(テロの)技術,戦術,手法などで相互交流していることは確かである」と述べた。

また,米国連邦議会下院国土安全保障委員会テロ対策・インテリジェンス小委員会は,2013年9月公表の報告書において,「AQIMと『ボコ・ハラム』の関係は,一般的に知られ,認められている」,「(『ボコ・ハラム』報道担当を自称する)アブル・カカ(注16)は,2011年11月,『ボコ・ハラム』が『アルカイダ』(AQIMを指すとみられる)からの支援を受けていることを認めた」などと指摘した。国連安保理「アルカイダ」制裁委員会は,2014年5月,「ボコ・ハラム」を制裁対象に指定するに当たり,同組織が,軍事訓練,物資援助を目的としてAQIMと関係を有しており,爆発物製造の知識を得たほか,戦闘員がマリでのテロに参加したと指摘した。

このほか,バズム・ニジェール外相(当時)は,2012年1月,モーリタニアの首都ヌアクショットで開催されたアフリカ地域の治安関係会議で,「『ボコ・ハラム』メンバーが,サヘル地域のAQIM拠点で爆発物の訓練を受けたとの情報がある」,「『ボコ・ハラム』がAQIMと関係を持っているのは間違いない」などと述べた。

(オ) 「アル・シャバーブ」

カーター・ハム米国アフリカ軍司令官は,2012年6月,「『ボコ・ハラム』,『アル・シャバーブ』及びAQIMが一緒に軍事訓練を行う一方,活動資金及び爆発物を共有している兆候がある」と述べた。「ボコ・ハラム」幹部マムマン・ヌールは,2009年7月,ナイジェリア治安当局との戦闘後,ソマリアへ渡り,「アル・シャバーブ」の訓練を受けたとされる。2015年10月,「ボコ・ハラム」は,「アル・シャバーブ」に対し,ISIL最高指導者バグダディに忠誠を誓うよう呼び掛ける声明を発出した(注17)

ウ 資金獲得活動

「ボコ・ハラム」は,メンバーや同組織支持者から寄附などを集める一方,他国のイスラム慈善団体などからも資金提供を受けている可能性がある(注18)。また,襲撃での略奪や,誘拐による身代金で資金調達を行っているとの指摘もある(注19)

エ テロ手法の傾向

(ア) 女性や子供の利用

ナイジェリアでは,2014年6月,北東部・ゴンベ州で,同国初とされる女性による自爆テロが発生したのを皮切りに,同年中に国内各地で女性による自爆テロが発生した。2015年には市場やバスターミナルなどで女性や子供が自爆する事件が急増し(注20),さらに,カメルーン北部・極北州で少女による自爆テロが相次いで発生(7月,9月,10月)したほか,チャドでもチャド湖周辺で女性による連続自爆テロが発生(11月,12月)するなど,近隣国にも同じ手法によるテロが拡大した。こうした自爆テロについては,「ボコ・ハラム」が子供達を誘拐し,「自爆テロ要員」として利用しているとして国際社会から強く非難された(注21)。なお,2014年以降,少なくとも2,000人以上の女性や子供が「ボコ・ハラム」によって誘拐されたとされる(注22)

また,自爆テロ以外にも同組織のリクルート要員とみられる女性が逮捕されており,それらのリクルート要員は,諜報活動にも関与していたとの指摘もある(注23)。2014年4月に北東部・ボルノ州チボクから誘拐された200人以上の女学生の一部が「ボコ・ハラム」によって「洗脳」され,キリスト教徒を殺害したり,「アッラーの戦いに参加しなければならない」と語っていたなどと報じられた(注24)

(イ) 占領地域の統治

「ボコ・ハラム」は,2014年8月,ナイジェリア北東部の一部の占領と,シャリーアによる統治を宣言した。同組織はそれまで,標的を襲撃した後,治安部隊が到着する前に撤退するという「ヒット・アンド・アウェー」戦術を用いてきたが,同月以降,ボルノ州,ヨベ州等の町村を襲撃,占領するようになり,同年11月には,同年4月に200人以上の女子学生を誘拐したチボク町を占領した。同組織は,ナイジェリアの町村約20か所を占領し,極端な解釈によるシャリーアの適用を行い,喫煙者や麻薬密売人等に対して厳罰を科していたとされる(注25)。しかし,2015年2月以降,ナイジェリア軍と近隣国の軍による掃討作戦により,それら占領地域は奪還され,同組織の拠点も制圧されている(注26)

年月日 主要テロ事件,主要動向等
02  「ボコ・ハラム」設立
03. 12. 31
〜04. 1. 1
 ナイジェリア北東部・ヨベ州の警察署3か所を襲撃
09. 7. 26
〜7. 30
 ナイジェリア北東部・バウチ州都バウチ市の警察署を襲撃後,北部・カノ州,北東部・ボルノ州及びヨベ州の各地でナイジェリア治安部隊との戦闘が発生。設立者モハメド・ユスフは拘束され,その後死亡
10. 7. 1  アブバカル・シェカウが「ボコ・ハラム」の新指導者就任を表明
10. 9. 7  バウチ市で,拘置所を襲撃し,収容者759人が脱走。兵士と警察官ら4人が死亡
10. 12. 24  ナイジェリア中部・プラトー州ジョスのキリスト教会に対し,簡易爆弾を用いた攻撃を実行
11. 4. 23  ナイジェリア東部・アダマワ州ヨラで,収監されていたメンバーの奪還を図って,刑務所を襲撃し,囚人14人が脱走
11. 5. 29  ナイジェリア北部・ザリアの酒場などに対する連続爆弾攻撃を実行し,少なくとも16人が死亡
11. 6. 16  ナイジェリア首都アブジャで,警察本部に対し自動車を用いた自爆テロを実行し,2人が死亡
11. 8. 26  アブジャの国連施設に対し,自動車を用いた自爆テロを実行し,23人が死亡
11. 11. 4
〜11. 5
 ボルノ州都マイドゥグリ市で,イスラム神学校などに対する4件の連続爆弾攻撃を実行し,約150人が死亡
11. 12. 22
〜12. 23
 ヨベ州ダマトゥル及びポティスクム,ボルノ州都マイドゥグリ市で,キリスト教会や民家などに対する連続テロを実行し,約100人が死亡
11. 12. 25  アブジャ近郊のマダラとジョス,カノ州,ヨベ州のダマトゥルとガダカで,キリスト教会,警察署,治安機関に対する爆弾攻撃を実行,少なくとも40人が死亡
12. 1. 20  カノ州カノ市で,警察署,治安当局,入国管理事務所などの政府関連施設8か所を銃や爆弾で攻撃。約200人が死亡
12. 2. 15  ナイジェリア中部・コギ州で,刑務所を襲撃し,看守1人を殺害,囚人119人が脱走
12. 4. 8  ナイジェリア北部で,キリスト教会に対する自爆テロを実行し,38人が死亡
12. 6. 17  ナイジェリア北部・カドゥナ州で,キリスト教会3か所に対し,自動車を用いた自爆テロを実行し,少なくとも19人が死亡
12. 6. 18  ヨベ州ダマトゥルで,警察や軍施設に対する爆弾攻撃を実行し,少なくとも25人が死亡
12. 6. 24  ヨベ州ダマトゥルで,刑務所を襲撃し,囚人40人が脱走
12. 7. 7
  〜8
 プラトー州で,キリスト教徒の村12か所を襲撃し,国会議員1人及び州議会議員1人を含む65人が死亡
12. 11. 25  カドゥナ州ジャジで,軍施設内のキリスト教会前で自動車爆弾テロを実行し,少なくとも30人が死亡
13. 2. 16  バウチ州で,レバノン系建設会社を襲撃し,レバノン人4人,英国人,イタリア人,ギリシャ人各1人を拉致。「アンサール」が犯行を自認
13. 2. 19  カメルーン北部で,フランス人の一家7人を拉致。「ボコ・ハラム」が犯行を自認
13. 3. 22  アダマワ州で,飲食店や銀行で放火,また,刑務所を攻撃し,少なくとも25人が死亡
13. 5. 7  ボルノ州で,刑務所を攻撃し,囚人100人以上が脱走。その後,政府及び軍関連施設を攻撃し,少なくとも40人が死亡
13. 7. 6  ヨベ州で,寄宿学校に対する襲撃テロを実行し,教師及び生徒が少なくとも20人が死亡
13. 7. 29  カノ州で,飲食店などに対する爆弾テロを実行し,少なくとも20人が死亡
13. 8. 15  ボルノ州で,軍兵士及び民間人に対し銃撃し,少なくとも40人が死亡
13. 9. 17  ボルノ州で,民間人に対し銃撃し,少なくとも140人が死亡
13. 9. 29  ヨベ州で,大学学生寮に対する襲撃テロを実行し,少なくとも学生40人が死亡
13. 11. 13  米国国務省は,「ボコ・ハラム」及び「アンサール」を「外国テロ組織」(FTO)に指定
13. 12. 2  ボルノ州で,空軍基地や国際空港を襲撃し,ヘリコプター2機,空軍機3機が破壊,軍兵士2人が負傷
14. 2. 25  ヨベ州で,寄宿学校の生徒に対し銃撃し,59人が死亡
14. 4. 14  ボルノ州で,女子学生200人以上を誘拐。「ボコ・ハラム」が犯行を自認
14. 4. 14  アブジャで,自動車爆弾テロを実行し,71人以上が死亡。「ボコ・ハラム」が犯行を自認
14. 5. 16  カメルーン北部で,中国系企業を襲撃し,中国人10人を誘拐
14. 5. 20  プラトー州で,爆弾テロを実行し,118人以上が死亡。「ボコ・ハラム」が犯行を自認
14. 6. 2  ボルノ州で,複数の村に対する襲撃テロを実行し,少なくとも200人が死亡
14. 6. 23  カノ州で,大学に対する爆弾テロを実行し,少なくとも8人が死亡。「ボコ・ハラム」が犯行を自認
14. 6. 25  アブジャで,ショッピングセンターに対する爆弾テロを実行し,少なくとも21人が死亡。「ボコ・ハラム」が犯行を自認
14. 7. 16  アダマワ州で,ドイツ人技術講師を誘拐。「ボコ・ハラム」が犯行を自認
14. 7. 27  カメルーン北部で,同国副首相宅等を襲撃し,同副首相夫人等を誘拐
14. 8. 24  ナイジェリア北東部の一部を占領し,シャリーアによって統治していると宣言するビデオ声明を発出
14. 10. 17  ナイジェリア政府,「ボコ・ハラム」との停戦を発表
14. 10. 31  政府との停戦を否定するとともに,今後の交渉も拒否するビデオ声明を発出
14. 11. 28  カノ州で,モスクに対する爆弾,襲撃テロを実行し,少なくとも120人が死亡
14. 12. 14  ボルノ州で村落を襲撃し,女性と子供少なくとも170人を誘拐。民間人35人が死亡
15. 1. 3
   〜7
 ボルノ州で,多国籍軍司令部を襲撃し,少なくとも兵士等11人が死亡。その後,周辺の集落等を襲撃し,約150人が死亡。「ボコ・ハラム」が犯行を自認
15. 2. 7  カメルーン北部・極北州フォトコルで,モスク等を襲撃し,少なくとも100人が死亡
15. 2. 14  ボルノ州で,検問所や警察署に対する襲撃テロを実行。「ボコ・ハラム」が犯行を自認
15. 3. 7  ISIL最高指導者に対する忠誠を誓う旨の録音声明を発出
15. 3. 12  ISILが「ボコ・ハラム」による忠誠を受け入れる旨の録音声明を発出
15. 4. 25  ニジェール南東部・カラムガ島で,同国軍キャンプを襲撃し,少なくとも軍兵士46人と民間人28人が死亡
15. 5. 24  ベヌエ州で,村落を襲撃し,少なくとも30人が死亡
15. 6. 15  チャド首都ンジャメナで,警察本部及び警察学校に対する連続爆弾テロを実行し,少なくとも38人が死亡。「ボコ・ハラム」が犯行を自認
15. 6. 29  チャド首都ンジャメナで,「ボコ・ハラム」の支援組織が,警察による家宅捜索中に自爆テロを実行し,11人が死亡
15. 7. 11  ボルノ州及びチャド首都ンジャメナで,自爆テロを実行し,少なくとも17人が死亡。「ボコ・ハラム」が警察署を標的に作戦を実行したとして,2件の犯行を自認
15. 8. 13  ヨベ州で,村落を襲撃し,50人以上が死亡
15. 9. 3  カメルーン北部・極北州で,市場及び軍関連施設に対する連続自爆テロを実行し,少なくとも42人が死亡
15. 10. 2  アブジャ近郊で,自爆テロを実行し,少なくとも18人が死亡。「ボコ・ハラム」が警察署を標的に作戦を実行したとして犯行を自認
15. 10. 7  ISIL最高指導者に対する忠誠を再び誓う旨のビデオ声明を発出
15. 11. 27  カノ州都カノ近郊で,イスラム教シーア派行事「アーシュラー」の行進を標的とした自爆テロを実行し,少なくとも22人が死亡。「ボコ・ハラム」が犯行を自認

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