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アジアにおけるテロ情勢の特徴

東南アジア等におけるテロ情勢は,各国ごとに事情が異なる面があるものの,全体として,「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)の影響力が拡散・浸透していることが強くうかがわれる状況となっており,今後の被害拡大が懸念される。同地域におけるテロの傾向・特徴は以下のとおりである(第Ⅲ,Ⅳ部及びコラム「フィリピン及びインドネシアにおけるISIL支持勢力の活動」も参照)。

既存のテロ組織が相次いでISILへの忠誠を表明し,引き続き活発に活動

東南アジア等では,かねてから「ジェマー・イスラミア」(JI)や「アブ・サヤフ・グループ」(ASG)などによる組織的テロが発生していたところ,現在も,一部の組織がISILに忠誠を誓った上で,テロ活動を継続的に実施している。フィリピンでは,ASGの一派を率いるイスニロン・ハピロンが2014年にISILへの忠誠を表明し,2016年に入って,拠点とするバシラン島で,国軍などへの襲撃を続発させている。また,ミンダナオ島の一部でも,2016年頃にISILへの忠誠を表明した地元の武装勢力「マウテ・グループ」が,国軍や拘置所を狙った襲撃を続発させているほか,ダバオ市などの市街地で爆弾テロも実行している。

インドネシアでは,JIの関連組織から分派した「東インドネシアのムジャヒディン」(MIT)が2014年にISILへの忠誠を表明し,スラウェシ島中部で治安部隊への襲撃を続発させた。MITは,指導者が2016年7月に死亡したもののテロを継続し,現地では掃討作戦が続いている。また,バングラデシュにおいても,ISILに忠誠を誓った「ジャマートゥル・ムジャヒディン・バングラデシュ」(JMB)関係者とも指摘される犯行グループが,2016年7月にダッカ市内で外国人らが利用するレストランを襲撃するなどしている。

今後,これらの組織・グループは,治安部隊等のハードターゲットへの攻撃に加え,欧米人を含む民間人を狙った組織的なテロを増大させることが懸念される。

ISILに忠誠を表明した既存組織

シリア在住のISIL戦闘員から指示・支援を受けたISIL支持者などによるテロが頻発

上記のような組織・グループによるテロに加え,インドネシアやマレーシアにおいては,地元のISIL支持者らが,シリア在住の東南アジア出身ISIL戦闘員から指示・支援を受けるなどして実行するテロが頻発している。例えば,2016年1月にジャカルタで発生した自爆・銃撃テロでは,インドネシア人ISIL戦闘員からテロ資金の送金があったとされるほか,同年6月にマレーシア・セランゴール州で発生した爆弾テロでは,マレーシア人ISIL戦闘員から指示があったとみられている。

現時点では,これらISIL戦闘員から指示・支援を受けたテロにより多数の死者が発生した事例は皆無である。しかしながら,今後,シリアやイラクで戦闘経験を積んだ約1,000人ともされる東南アジア出身戦闘員が多数帰還するなどの状況が生じれば,高度な手口によるソフトターゲットへの攻撃などにより,被害の大規模化も懸念される。

ISIL戦闘員からの指示・支援

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