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アフリカ(サハラ以南)における過激化の要因

サハラ以南のアフリカでは,「ボコ・ハラム」が活動する西アフリカ,「アル・シャバーブ」が活動する東アフリカなどでテロが多発しており,2011年から2016年までの間に,数万人がテロで死亡したとされる。こうした国際テロ組織は,政府の統治が行き渡らない辺境地域を主な活動拠点とし,政府への反感を募らせる住民を多く取り込んでいるとされる。そのため,こうした地域の出身者が過激化し,テロを実行する例が多く見られるようになっている。

こうしたテロの脅威は,アフリカの発展の阻害要因ともなっていることから,国連開発計画(UNDP)は,2017年9月,サハラ以南のアフリカにおける過激化の要因に関する初めての報告書を発出し,問題解決に向けた取組への提言を行った。UNDPは,ソマリア,ナイジェリア,ケニア,スーダン,ニジェール及びカメルーン(注1)で,イスラム過激組織に自発的に参加した495人(以下,「自発的参加者」という。),強制的に参加させられた78人,イスラム過激組織に参加したことがない145人(以下,「不参加者」という。)の計718人に行ったアンケートの結果に基づき,過激化要因を分析しているところ,同報告書の概要は次のとおりである。

生まれ育った環境も過激化の要因に

自発的参加者の大半は,開発が進まない辺境地域出身であり,総じて,不参加者に比べて子供時代の幸福度が低い(注2)。 また,自発的参加者は,不参加者に比べ,他部族の子供と接した経験を有しない者が多い傾向にある(注3)

参加動機を「宗教」としつつも宗教知識は乏しい傾向

イスラム教に関する知識のグラフ

自発的参加者の51%が,参加動機として「宗教的思想」を挙げたものの,そのうち57%がコーランを十分には理解していないなど,実際には,イスラム教に関する知識は乏しい傾向がある(右グラフ)。

なお,その他の参加動機としては,「何か大きなものの一部になりたかった」,「雇用」などが挙げられる。

雇用環境が不安定な者は過激化しやすい傾向

失業状態にある者は,組織に参加しやすく(次ページ左グラフ),組織参加までに要する期間が短い傾向がある(同右グラフ)。なお,欧米など他の地域に比べ,インターネットを介したリクルートは少ないとみられる。

組織参加以前の雇用状況グラフ リクルート開始から参加までの期間グラフ

当局への不信感

自国政府への信頼度グラフ

自発的参加者は,不参加者よりも,当局への不信感が強い傾向がある。さらに,自発的参加者の71%が,テロ組織参加への最後の引き金として,当局により近親者や友人を殺害されたことなど,「当局の行動」を挙げている。

UNDPの提言

UNDPは,サハラ以南における過激化の要因などについて,本報告書において,①アフリカの辺境部出身で,幼少期から不遇な環境に置かれた若者が,経済的にも社会的にも機会に恵まれないまま,政府への不満を募らせる中で,近親者が当局により殺害・拘束されるなどの事案を引き金として過激化する傾向があること,②過激化した者の多くが,動機として宗教を挙げているにもかかわらず,実際には,宗教的知識を欠いていること,を強調している。

また,UNDPは,本分析の結果を踏まえた提言として,①辺境部での経済の強化や雇用の創出,②寛容な教えを説く宗教指導者への支援,③アフリカ諸国によるイスラム過激主義者に対する取締りに関し,人権に配慮した公正な法執行を行うこと,などの必要性を主張している。

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