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ヨルダン川西岸地区で活動を活発化させるパレスチナ武装勢力

「イスラエルとパレスチナ自治区(提供:共同)

イスラエルとパレスチナ自治区(提供:共同)

イスラエルでは、2022年3月から5月、パレスチナ人やアラブ系イスラエル人によるテロが立て続けに発生し、計19人のイスラエル人が死亡した。このような短期間での多数の死者の発生は、2015年10月から2016年2月頃にかけて同国でテロが多数発生し、計30人以上のイスラエル人が死亡して以来であった。こうした事態を受け、イスラエル軍は、パレスチナ武装勢力の拠点となっているパレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区での取締りを強化したものの、その後も同武装勢力との銃撃戦が度々発生するなど、緊迫した情勢が続いた。


【「パレスチナ・イスラミック・ジハード」(PIJ)の活発化】

多数のパレスチナ武装勢力が活動するヨルダン川西岸地区では、2022年5月、米国等からテロ組織に指定されている「パレスチナ・イスラミック・ジハード」(PIJ)(注1)が、イスラエル軍に対する攻撃を実行するなど、同地区における存在感を高めた。これに対し、イスラエル軍は、同年8月、同地区のPIJ指導者を拘束するとともに、ガザ地区のPIJ幹部を殺害するなどしたものの、同年10月、同組織は、ガザ地区において軍事パレードを挙行し、健在ぶりを誇示した。

【新たな組織「獅子の巣窟」の台頭】

ヨルダン川西岸地区ナブルスでは、2022年8月頃、「獅子の巣窟」を称する新たな組織が台頭した。同組織は、若者を中心とした組織構成で、一部にはPIJ等の既存の武装組織の関係者もいるとされる(注2)。同組織は、イスラエル軍及びイスラエル人入植者を攻撃対象に掲げてテロを実行するとともに、テロ実行の映像等をSNSに掲載し、活動状況を頻繁に宣伝することで、支持者を急速に増やしたとされる(注3)

同組織の台頭に対し、イスラエル軍は、同年10月、掃討作戦を実施し、同組織本部兼爆発物製造拠点を急襲するとともに、設立者の一人を殺害するなどした。同組織は、その直後、活動が見られなかったものの、同年12月、公開で集会を開催したり、テロの実行を主張する動画を発出したりするなど、活動を再開した。

【今後の動向】

2022年12月に発足したイスラエルのネタニヤフ政権は、占領地での入植活動の拡大やヨルダン川西岸地区のイスラエルへの併合を訴える政治家が重要閣僚に就任するなど、これまでで最もパレスチナに対して強硬な政権であるとされている(注4)。このため、今後も緊迫した情勢が続く中、ヨルダン川西岸地区における武装勢力の動向が注目されている(注5)

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