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東南アジアにおけるISIL 支持者による宣伝活動

インドネシア人やフィリピン人の「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)(注1)支持者は、テレグラム等のSNS上でグループを形成し、ISILに関連する独自の宣伝活動を行っている。この中には活発に活動しているグループも存在しており、例えば、あるグループは、2022年3月から約半年間で、約100件の画像、約380件の音声、約530件の映像をそれぞれ発出し、「暴力的ジハード」への参加を呼び掛けるなどしている。

【東南アジアにおけるテロ活動の称賛】

「テロの成果」として称賛された警察署での自爆テロの現場付近の様子(写真提供:Algi Febri Sugita/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)

「テロの成果」として称賛された警察署での自爆テロの現場付近の様子(写真提供:Algi Febri Sugita/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)

グループの宣伝活動には、東南アジアで発生したテロを称賛するものが見られる。例えば、2022年12月にインドネシア西部・西ジャワ州バンドンの警察署で自爆テロが発生した際、「テロの成果」として死傷者数を記載した上で、実行犯とされる人物の顔写真を掲載して「殉教者」として称賛する画像が発出された。

また、フィリピンにおけるISIL関連組織の摘発が続く中で、同組織メンバーが銃器を携えながら攻撃を行っている画像が継続的に発出されるなど、組織の健在性をアピールするものも見られた。

【宣伝活動で取り上げる地域の拡大】

フィリピンにおけるISIL関連組織や同組織メンバーの動向を主に宣伝してきたグループは、2022年5月、タイ深南部で発生した分離主義武装組織によるものとされる爆発等を宣伝してきたグループと統合した旨発表し、これ以降、タイにおける事件をも捉えた宣伝活動を行うなど、タイへの関心も示している。

【ISILの指導部との関係が指摘される支持者の存在】

グループによる宣伝活動の中には、ISILのアラビア語週刊誌「アル・ナバア」の記事を引用したものも見られる。例えば、2022年11月発出の同週刊誌第366号において、国際サッカー連盟(FIFA)ワールドカップカタール2022を捉えて、アラビア半島からキリスト教徒等を駆逐するよう呼び掛ける記事が掲載された後、これをインドネシア語に翻訳した画像が発出された。

また、インドネシア首都ジャカルタや西部・バンテン州で、ISILを支援したとして2022年3月に逮捕された5人は、閲覧者に「ジハード」実行を促すことを目的として、テロ関連画像をSNS上に拡散していたグループに参加し、ISILの指導部からの直接的な管理及び指示に基づき、宣伝活動の素材をインドネシア語及び英語に翻訳した上で発出していたとされる(注2)

【フォロワーによる拡散と英語翻訳による発出を通じた閲覧者の拡大】

東南アジアでは、治安当局の取締りの強化等によってISIL関連組織の摘発が続いているが、依然として支持者が存在している。

こうした中で、グループが発信する過激思想は、グループのフォロワーや一般の閲覧者によって更に拡散され、インドネシア語やタガログ語に加えて英語で発出されるものもあることから、閲覧者の拡大につながっている状況もうかがわれる。

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