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無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律の施行状況に関する報告(平成12年5月16日から同年12月31日までの間)

2001年4月1日 更新

 無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律第三十一条の規定に基づき,平成十二年五月十六日から同年十二月三十一日までの間における同法の施行状況を左記のとおり報告いたします。

一  観察処分の実施等

 1  観察処分の決定に基づく調査等
 「麻原彰晃こと松本智津夫を教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め,これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体」(以下「当該団体」という。)に対する公安審査委員会の平成十二年一月二十八日付け観察処分(以下「当該観察処分」という。)の実施のため,公安調査庁長官は,当該団体に関し,公安調査官に無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(以下「団体規制法」という。)第七条第一項に定める調査をさせたことに加え,同条第二項の規定に基づき,同年五月二十五日から十二月二十六日までの間,合計十回にわたり,当該団体が所有し又は管理する土地又は建物延べ十九箇所(実数十七箇所)に公安調査官を立ち入らせ,設備,帳簿書類その他必要な物件を検査させた。
 関係都府県警察は,公安調査官による立入検査に際し,立入先周辺の警戒警備を実施した。
 公安調査庁長官は,団体規制法第五条第三項の規定に基づき,同年八月十五日と十一月十五日の二回にわたり,当該団体から,役職員及び構成員の氏名,住所,当該団体の活動の用に供している土地及び建物の所在,用途,資産等の事項について報告を受けた。なお,同長官は,同条第六項の規定に従い,これらの報告内容を警察庁長官に通報した。
 2  調査結果の提供
 公安調査庁長官は,団体規制法第三十二条の規定に基づく都県及び市区町の長の請求を受け,平成十二年六月七日から十二月二十七日までの間,合計三十一回にわたり,延べ四十(実数二十二)のこれら地方公共団体の長に対し,当該観察処分に基づく調査の結果を提供した。
 3  観察処分の取消しを求める行政訴訟等
 当該団体が平成十二年二月八日付けで東京地方裁判所に提起した当該観察処分の取消しを求める行政訴訟については,同年六月十五日から十二月十四日までの間に,同裁判所において,第一回ないし第五回口頭弁論が行われ,団体規制法の合憲性や同処分の要件の存否等が争点となっている。なお,同訴訟の提起と同時に行われた当該観察処分の執行停止の申立てに対する裁判所の判断はいまだ示されていない。
 また,当該団体は,団体規制法第六条第二項の規定に基づき,平成十二年五月十六日,公安審査委員会に対し,その職権による観察処分の取消しを促す申立てを行ったが,同委員会は,同年七月十日,その申立てに係る職権を発動しないこととした。
 4  罰則の適用
 団体規制法第六章に規定する罰則が適用された例はなかった。

二  当該団体の現状

 1  活動の概況
 当該団体は,団体規制法制定の動きが高まっていた平成十一年九月二十九日,いわゆる「休眠」宣言を行ったが,その後,同法が成立し,同年十二月二十七日,公安調査庁長官が,その施行に合わせて,当該団体に対する観察処分を請求したことを受け,同月二十九日に広島刑務所を出所した最高幹部上祐史浩(以下「上祐」という。)主導の下,観察処分下での存続を図り,同十二年一月十八日,松本サリン事件及び地下鉄サリン事件等一連の事件に関する麻原彰晃こと松本智津夫(以下「松本」という。)らの関与を認めてこれらの事件の被害者に対する補償計画を明らかにするとともに,被害者補償の必要等を理由に団体の存続を図ることを宣言し,次いで,当該観察処分決定直後の同月二十九日,前記「休眠」宣言を撤回した。
 当該団体は,右「休眠」宣言の撤回後も,上祐を中心として,同年二月四日に「宗教団体・アレフ」の発足を公表し,さらに組織を改編して,上祐及びその側近らが統括・管理する「総務部」,「経理部」,「法務部」,「広報部」及び「渉外部」等の部署を擁する中央機構と仙台,東京,名古屋,大阪及び福岡等の支部機構を構築するとともに,上祐の提唱する「サイバー教団」化構想に基づき,組織内の指示・伝達システムとして,上祐居住の施設と各中央部署及び支部等を結ぶインターネット及びテレビ会議網等を整備し,この組織を中核として活動を継続している。
 その活動内容をみると,破産財団「オウム真理教」の一連の事件の被害者に対する補償債務を「アレフ」名で引き受け,その一部を履行して被害者補償を進める姿勢をみせる一方,これを隠れ蓑にしながら,組織を強化するなどの動きを強めている。特に,信徒の管理・教化等の面においてその動きが顕著であり,テレビ会議網等を用いた上祐による説法会の開催のほか,出家信徒を対象とした集団集中修行や在家信徒を対象とした「集中セミナー」等を頻繁に実施し,同年八月末には,平成七年五月以降長く停止していた信徒の出家承認制度の運用を本格的に再開し,次いで,平成十二年九月,在家信徒についても五段階の位階制度を導入するなどし,また,新規加入者の勧誘や脱会信徒に対する復帰の働き掛けも活発化させている。そして,このようにして組織化した出家信徒等を使い,パソコン関連企業等十三の事業体を運営して営業利益を得ているだけでなく,出家信徒をこれらの関連企業その他で稼働させ,これによって信徒が得た収入を布施等の名目で上納させ,他方,在家信徒に対しては,「集中セミナー」等の際に行う秘儀の伝授(イニシエーション)時に高額の布施を求めたり,法具や修行用音楽CD等を販売して売上げを得るなど,積極的な資金獲得活動を行い,前記被害者補償に必要な金額を超える資金を集めているものとみられる。しかも,このような活動の範囲を海外に広げる動きも見られる。
 このような活動経過の中で,当該団体の構成員数は,同年十二月三十一日現在,出家信徒が約六百五十人に達し,在家信徒は千人を超えている。また,その所有し又は管理する土地又は建物としては,同日現在,中央部署や出家信徒の修行場となっている枢要施設二十一箇所及び支部・道場に用いられている施設八箇所を合わせた拠点施設が合計十三都府県下二十九箇所で確認されているほか,出家信徒用の居住施設約二百箇所が設けられている。
 2  危険な体質
 当該団体は,松本の説く教えを根本とし,すべての生き物を涅槃の境地に導くことを最終目的として,主神であるシヴァ神の化身とされる松本への絶対的帰依と,同人がその説法で殺人をも容認すると説いた衆生救済の最速の道である「タントラ・ヴァジラヤーナ」の修行等を主な内容とする教義の信奉と実践を信徒に徹底し,絶対者である松本の決定と指示に基づき,無差別大量殺人行為に当たる前記両サリン事件等一連の事件を実行したものであるが,当該観察処分の実施後,当該団体の施設内で毒性物質やその原材料,製造施設等の危険物が発見された例はないものの,当該団体の危険な体質には,左記のとおり変化はない。
  ①  松本に対する絶対的帰依・崇拝
 当該団体は,今もなお両サリン事件の首謀者松本の説いた前記教義を信奉し,同人の定めた位階制度や修行方法等を維持している。具体的には,前記上祐体制下で,松本への絶対的帰依を説き,同人が両サリン事件等一連の事件に係る刑事責任の追及等を受けていることさえ,信徒の悪業(カルマ)を背負って苦難を受けることにより真理(教義)を実践し,信徒のカルマ落としをしているものであるなどとする内容の説法会を部外者の目を遮断して度々開催しており,その多くの施設において,松本の写真を掲示し,同人の説く「タントラ・ヴァジラヤーナ」を登載した「尊師ファイナルスピーチ」等の説法集や著書を教本として保管し,修行に使用していることなどの事実が確認されている。
  ②  役員及び構成員
 両サリン事件当時当該団体の役員であった松本及び上祐は,依然として当該団体の役員であると認められる。また,両サリン事件の前後に刑事事件の被疑者として逮捕・起訴された信徒百七十五人中数十人が当該団体に復帰し,その大半が逮捕時と同じ位階のままであるかより上位の位階につくなどしているが,これらの復帰者の中には,無差別大量殺人行為の準備行為であるサリン製造施設の建設にかかわって殺人予備の罪に問われた者等六人が含まれている。
  ③  修行の実態
 当該団体における修行は,松本が定めた修行方法等に従い,「教学」,「瞑想」及び「マントラの唱和」等を基本的な内容としている。いずれの修行も,松本を絶対視し同人の説いた危険な教義を信奉する意識を信徒に植え付けるためのものである。
  ④  閉鎖性
 当該団体は,従来から,松本の説いた前記教義に基づき,「信徒以外の者との接触は煩悩を生じる。」として,出家制度を維持して一般社会との接触を禁じ,また,親族との面会等も制限している。説法会等を部外者の目を遮断して隠密裏に行う姿勢も変わっていない。これに加え,最近では,上祐の提唱する「サイバー教団」化構想に基づき,前記のとおり,信徒の管理・教化及びこれに対する指示・伝達システム等の分野において,インターネットやテレビ会議網等の通信システムを活用して組織運営の秘匿化を図っており,通信網の整備とともに暗号システムを導入するなどして同団体の閉鎖性をさらに強めている。
  ⑤  欺瞞性
 当該団体は,対外的には,松本の影響力を否定し,危険な教義を破棄したと称しながら,説法会等において,同人への絶対的帰依を説き,右の措置は対外的なものであって教義に変更を加えるものでない旨説明し,また,出家信徒に信徒以外の者との接触を制限しながら,被害者補償を口実にして関連企業や民間企業等で稼働することを奨励するなどしており,その欺瞞的体質に変化はない。

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