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無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律の施行状況に関する報告(平成15年分)

2004年4月1日 更新

 無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律第三十一条の規定に基づき,平成十五年一月一日から同年十二月三十一日までの間における同法の施行状況を左記のとおり報告いたします。

一  観察処分の期間の更新決定等

 公安審査委員会は,平成十二年一月二十八日,無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(以下「団体規制法」という。)第五条第一項により,「麻原彰晃こと松本智津夫を教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め,これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体」(以下「当該団体」という。)について,三年間公安調査庁長官の観察に付する処分(以下「当該観察処分」という。)を行い,当該観察処分決定は同年二月一日,官報で公示されてその効力を生じた。同長官は,引き続き当該団体の活動状況を継続して明らかにする必要があると認め,平成十四年十二月二日,同法第十二条第一項後段及び第二項の規定に基づき,警察庁長官の意見を聴いた上,同委員会に対し,当該観察処分の期間の更新を請求した。
 右請求を受けて,公安審査委員会は,右請求に係る更新が予定される処分の内容,更新の根拠となる法令の条項及び更新の理由となる事実並びに陳述書の提出先及び提出期限を官報で公示し,これを当該団体に通知するなどした上,団体規制法第二十六条第三項の規定に基づき,当該団体から陳述書及び証拠書類等の提出を受けた。
 これら一連の手続きを経て,公安審査委員会は,平成十五年一月二十三日,右請求に理由があると認め,当該観察処分の期間を更新する旨決定した。同決定は,同月二十九日,官報で公示され,その効力を生じた。また,同委員会は,当該団体が平成十四年十一月六日,団体規制法第六条第二項に基づき,当該観察処分の取消しの職権発動を促す書面を同委員会に提出したのに対し,平成十五年一月二十三日,右職権を発動しないこととした。
 なお,当該団体は,平成十五年三月二十七日,当該観察処分の期間の更新決定の取消しを求める行政訴訟を東京地方裁判所に提起した。同訴訟については,同年六月十二日から同年十二月十八日までの間に,同裁判所において,第一回ないし第四回口頭弁論が行われ,団体規制法の合憲性や同処分の要件の存否等が争点となっている。

二  観察処分の実施等


 1  観察処分の決定に基づく調査等
 当該観察処分の実施のため,公安調査庁長官は,当該団体に関し,公安調査官に団体規制法第七条第一項に定める調査をさせたことに加え,同条第二項の規定に基づき,平成十五年一月十六日から同年十二月十八日までの間,合計二十一回にわたり,当該団体が所有し又は管理する土地又は建物延べ二十六箇所(実数二十二箇所)に公安調査官を立ち入らせ,設備,帳簿書類その他必要な物件を検査させた。
 関係都道府県警察は,公安調査官による立入検査に際し,立入先周辺の警戒警備を実施した。
 公安調査庁長官は,団体規制法第五条第五項において準用する同条第三項の規定に基づき,平成十五年二月十四日,五月十五日,八月十五日及び十一月十七日の四回にわたり,当該団体から,役職員及び構成員の氏名,住所,当該団体の活動の用に供している土地及び建物の所在,用途,当該団体の資産等の事項について報告を受けた。
 なお,同長官は,同条第六項の規定に従い,これらの報告内容を警察庁長官に通報した。
 2  調査結果の提供
 公安調査庁長官は,団体規制法第三十二条の規定に基づく関係都府県及び市区の長の請求を受け,平成十五年一月九日から同年十二月二日までの間,合計三十回にわたり,延べ四十一(実数十七)の地方公共団体の長に対し,当該観察処分に基づく調査の結果を提供した。
 3  罰則の適用
 公安調査庁長官の命を受けた公安調査官が,平成十五年七月二十九日,団体規制法第七条第二項の規定に基づき,大阪施設(大阪府大阪市西成区中開所在)に立ち入り,帳簿書類その他必要な物件の検査を行おうとした際,同施設内において,当該団体の構成員一名が,所要事項を記入した入会申込書等の書類を同施設内備付けの裁断機を用いて裁断して破棄し,同書類の検査を不可能ならしめ,もって検査を忌避した。これを受け,近畿公安調査局長は,同日,司法警察員たる大阪府西成警察署長に対し,右構成員を団体規制法第三十九条及び同法第七条第二項違反(立入検査拒否等の罪)により告発した。
 右告発を受けて,大阪府西成警察署においては,平成十五年七月二十九日,右大阪施設に対する捜索を行い,関係証拠物を差し押さえるとともに,同年八月一日,同罪により,右構成員を逮捕した。さらに同警察署長は,同月二日,書類及び証拠物とともに同構成員を大阪地方検察庁検察官に送致した。
 右送致を受けた同庁検察官は,平成十五年八月二十一日,大阪地方裁判所に対し,右構成員を同罪により起訴した。同事件については,同年十月二日から同年十二月十五日までの間に,同裁判所において,第一回ないし第四回公判が行われ,同日の論告求刑公判において,懲役八月の求刑がなされた。
 なお,同裁判所は,平成十六年一月二十日,右構成員に対し,同罪により,懲役八月,四年間執行猶予の判決を言い渡した。

三  当該団体の現状


 1  組織の概況
 当該団体は,平成十五年十二月三十一日現在,国内に出家信徒約六百五十人,在家信徒約千人,ロシア連邦内に信徒約三百人を擁し,また,国内に十七都道府県下二十六箇所の拠点施設及び約百二十箇所の信徒居住用施設,ロシア連邦内に数箇所の拠点施設を確保している。
 右拠点施設のうち,南烏山施設(東京都世田谷区南烏山所在)は,当該団体の実質的な本部であり,同施設には,幹部信徒をはじめとする出家信徒約百三十人が居住し,中央部署の大部分が配置されている。
 2  活動の概況
 (一 )松本の影響力
 当該団体は,当該観察処分の期間の更新決定の際,公安審査委員会から無差別大量殺人行為である「松本サリン事件」及び「地下鉄サリン事件」(以下「両サリン事件」という。)の首謀者である麻原彰晃こと松本智津夫(以下「松本」という。)が依然として絶対的ともいえる影響力を有している旨指摘されたことを受けて,平成十五年二月中旬以降,当該団体の主幹者である上祐史浩(以下「上祐」という。)主導の下,いわゆる「教団改革」を推進して松本の影響力を払拭している旨装った。しかし,松本への帰依が強い有力信徒の一部が反発したため,同年八月中旬には,事実上,同「改革」は撤回され,その後,当該団体においては,上祐が指導部から離れ,村岡達子ら幹部信徒五人による集団指導体制に移行し,これと相前後して,あからさまに松本への絶対的帰依の必要性を強調し始めている。
 (二 )危険な教義
 当該団体は,平成十四年十二月に殺人を肯定する松本の説法等を収載した説法集「尊師ファイナルスピーチ」を回収したと発表し,これに代わるものとして「パーフェクトスピーチ」を作成したなどとして,公安審査委員会に対し,松本の説く危険な教義を破棄した旨主張したにもかかわらず,依然として右「尊師ファイナルスピーチ」を施設内に保管するなど,今なお松本の説く危険な教義を保持していることが確認されている。
 (三 )閉鎖的・欺まん的体質
 当該団体は,立入検査の際,松本の説法を録画したビデオテープを隠匿したり,パソコンに保存された文書ファイル等の開示要求に応じないなど,非協力的姿勢を示してきた。特に,前記のとおり,当該団体の構成員が立入検査拒否等の罪を犯して以降は,その活動実態を秘匿しようとする閉鎖的体質を一層強めている。
 また,当該団体は,前記のとおり,松本を絶対的帰依の対象とし,同人が説く殺人を肯定する危険な教義を保持しているにもかかわらず,対外的にはその事実を否定している上,団体規制法第五条第五項において準用する同条第二項及び第三項の規定に基づく「報告書」には,当該団体の主宰者かつ代表者である松本を役員・構成員として掲載せず,新たに獲得した信徒についても,構成員として掲載しないなど,その欺まん的体質も改善されていない。
 (四 )組織拡大に向けた諸活動
 当該団体は,当該観察処分の期間の更新決定以降も,組織拡大に向けた活動に取り組み,国内においては,当該団体名を秘匿した上で施設を多数確保し,同施設にヨーガ教室を開設するなどして,信徒の獲得に向けた勧誘活動を展開し,ロシア連邦内においては,上祐を始めとする幹部信徒が,ロシア人信徒に対する説法会を開催するなど,信徒の指導・教化を強めている。
 また,当該団体は,対外的には専ら被害者補償のためと称し,コンピューターソフト開発会社等十を超える事業体を設立して,出家信徒をこれら事業体の運営に従事させる一方,特に平成十五年八月ころからは,拠点施設等で修行に専念してきた出家信徒を「財施ワーク」と称して一般企業等で就労させ,これによって得た給与等を上納させるなどして資金獲得に努めた。また,在家信徒に対しては,高額な布施を徴収する「集中セミナー」を年三回(年末年始,五月連休,夏季)実施し,これにより,多額の資金を獲得した。
 (五 )松本の公判状況
 松本は,両サリン事件など十三事件で殺人罪等に問われているところ,平成十五年四月二十四日,東京地方裁判所において論告求刑公判が開かれ,検察官から死刑を求刑された。松本の公判は,平成八年四月二十四日以降合計二百五十六回に及び,平成十五年十月三十一日をもって結審した。
 なお,同裁判所は,平成十六年二月二十七日,松本に対し,求刑どおり,死刑判決を言い渡した。松本の弁護人は,同日,同判決を不服として控訴した。

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