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無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律の施行状況に関する報告(平成16年分)

2005年4月1日 更新

 無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律第三十一条の規定に基づき,平成十六年一月一日から同年十二月三十一日までの間における同法の施行状況を左記のとおり報告いたします。

一  附則に基づく見直しの結果

 無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(以下「団体規制法」という。)については,その附則において,施行の日(平成十一年十二月二十七日)から起算して五年ごとに,その施行状況について検討を加え,その結果に基づいて廃止を含めて見直しを行うものとされているところ,政府においては,平成十六年十一月十二日に「オウム真理教対策関係省庁連絡会議」を開催するなどして同見直しを行い,「麻原彰晃こと松本智津夫を教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め,これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体」(以下「当該団体」という。)については,依然として無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認められ,今後も団体規制法に基づく規制を継続して実施する必要性が高いと判断されたことから,団体規制法を廃止せず,現状のまま存続させることを確認した。また,法務省及び公安調査庁においては,関係地方公共団体から団体規制法第三十二条の規定に基づく調査結果の提供内容の充実を求める意見が強いことを踏まえ,団体規制法施行規則を改正し,関係地方公共団体に提供する調査結果の範囲を拡大することとした。

二  観察処分の実施等

 1  観察処分の決定に基づく調査等
 公安調査庁長官は,当該団体に対する公安審査委員会による平成十二年一月二十八日付け観察処分(平成十五年一月二十三日同観察処分の期間更新決定。以下「当該観察処分」という。)の実施のため,当該団体に関し,公安調査官に団体規制法第七条第一項に定める調査をさせたことに加え,同条第二項の規定に基づき,平成十六年一月二十二日から同年十二月二十一日までの間,合計二十三回にわたり,当該団体が所有し又は管理する土地又は建物延べ三十九箇所(実数三十三箇所)に公安調査官を立ち入らせ,設備,帳簿書類その他必要な物件を検査させた。
 関係都道府県警察は,公安調査官による立入検査に際し,立入先周辺の警戒警備を実施した。
 公安調査庁長官は,団体規制法第五条第五項において準用する同条第三項の規定に基づき,平成十六年二月十六日,五月十七日,八月十六日及び十一月十五日の四回にわたり,当該団体から,当該団体の役職員及び構成員の氏名及び住所,当該団体の活動の用に供されている土地及び建物の所在及び用途並びに当該団体の資産等の事項について報告を受けた。
 公安調査庁長官は,同条第六項の規定に従い,これらの報告内容を警察庁長官に通報した。
 2  調査結果の提供
 公安調査庁長官は,団体規制法第三十二条の規定に基づき,関係地方公共団体の長の請求を受け,平成十六年一月十九日から同年十二月二十八日までの間,合計四十一回にわたり,延べ四十九(実数十七)の関係地方公共団体の長に対し,当該観察処分に基づく調査の結果を提供した。
 3  観察処分の取消しを求める行政訴訟
 当該団体が平成十五年三月二十七日付けで東京地方裁判所に提起した当該観察処分の期間更新決定の取消しを求める行政訴訟について,同裁判所は,平成十六年十月二十九日,当該団体の請求を棄却する判決を言い渡し,同判決は同年十一月十三日に確定した。
 4  罰則の適用
 公安調査庁長官の命を受けた公安調査官が,平成十五年七月二十九日,団体規制法第七条第二項の規定に基づき,当該団体の大阪施設(大阪府大阪市西成区中開所在)に立ち入り,帳簿書類その他必要な物件を検査しようとした際,同施設内において,当該団体の構成員一名が,当該団体への入会申込書等の書類を同施設内備付けの裁断機を用いて裁断して破棄し,同書類の検査を不可能ならしめ,もって検査を忌避した事件につき,公安調査官の告発に基づき捜査が行われ,同構成員は逮捕・起訴された。同事件について大阪地方裁判所は,平成十六年一月二十日,同構成員に対し,団体規制法違反(立入検査拒否等の罪)により,懲役八月,四年間執行猶予の判決を言い渡し,同判決は同年二月四日に確定した。

三  当該団体の現状

 1  組織の概況
 当該団体は,平成十六年十二月三十一日現在,国内に出家信徒約六百五十人,在家信徒約千人,ロシア連邦内に信徒約三百人を擁し,また,国内に十七都道府県下二十六箇所の拠点施設及び約百箇所の信徒居住用施設,ロシア連邦内に数箇所の拠点施設を確保している。
 同拠点施設のうち,南烏山施設(東京都世田谷区南烏山所在)は,当該団体の実質的な本部であり,同施設には,幹部信徒を始めとする出家信徒約百三十人が居住し,中央部署の大部分が配置されている。
 2  活動の概況
 (一 )松本の影響力
 当該団体は,当該観察処分の期間更新を免れるため,主幹者である上祐史浩が中心となっていわゆる「教団改革」を推進し,無差別大量殺人行為である「松本サリン事件」及び「地下鉄サリン事件」(以下「両サリン事件」という。)の首謀者である麻原彰晃こと松本智津夫(以下「松本」という。)の影響力の払拭を装ってきたが,平成十五年十月に上祐史浩が指導部を離れて以降,村岡達子ら幹部信徒五人による集団指導体制に移行し,いわゆる「麻原隠し」の組織運営から「麻原回帰」の組織運営へと方針を転換した。平成十六年二月二十七日の松本に対する死刑判決に際しては,信徒の動揺を抑えるため,幹部信徒が,松本への絶対的帰依を強調する説法を繰り返し行ったほか,その後も松本の説法を収録したビデオテープの視聴を義務付けたり,不眠不休の修行により信徒の意識をもうろうとさせて松本への帰依を誓わせるなど,松本への帰依心の扶植にも努め,また,地震や台風等の自然災害が多発したことを利用し,松本の説くハルマゲドンや天変地異等の終末思想を再び持ち出して,信徒の不安感や危機感をあおるなど,「麻原回帰」の姿勢をより一層鮮明にしている。
 両サリン事件等十三事件で殺人等の罪に問われた松本に対して,東京地方裁判所は,平成十六年二月二十七日,全事件で首謀者と認定した上,死刑の判決を言い渡したが,これに対し,松本の弁護人が,直ちに控訴したことから,松本の公判は,東京高等裁判所に係属中である。
 (二 )危険な教義
 当該団体は,平成十四年十二月に殺人を肯定する松本の説法等を収載した説法集「尊師ファイナルスピーチ」の回収を発表し,松本の説く危険な教義を破棄した旨主張したにもかかわらず,いまだに同「尊師ファイナルスピーチ」を施設内に保管して活用しているほか,平成十六年八月には,在家信徒を対象にした新教学システムを導入し,殺人をも肯定する教義である「タントラ・ヴァジラヤーナ」に言及した松本の説法ビデオの視聴を義務付けるなど,当該観察処分を免れるため破棄したように装っていたかつての危険な教義の教学を復活させる兆しも現れている。
 また,平成十六年六月から八月にかけて,幹部信徒野田成人を始めとする信徒等十六人が,劇薬に指定されているステロイドを含む塗り薬を無許可で販売したとして薬事法違反等の事実で逮捕され,うち十四人が起訴されたほか,同年十月から十一月にかけて,分派グループのいわゆる「ケロヨンクラブ」のリーダーら信徒八人が,「カルマ落とし」と称して同グループのメンバーを竹刀で殴打して死亡させたとして傷害致死等の事実で逮捕され,うち七人が起訴されるなど,依然として,当該団体が組織的に違法行為を行っており,人の生命や身体の安全を軽視する体質を保持していることが明らかになっている。
 (三 )閉鎖的・欺まん的体質
 当該団体は,立入検査に対し,パソコン内のファイルを暗号化したり,信徒名簿等をコンパクトフラッシュ等の小型記憶媒体に保存したりして対抗措置を講ずるなど,立入検査の実効性を阻害しているほか,施設近隣住民の度重なる施設公開の要請を拒否するなど,依然として活動実態を秘匿しようとする閉鎖的体質を保持している。
 また,当該団体は,団体規制法第五条第五項において準用する同条第三項の規定に基づく報告においても,当該観察処分の期間更新決定取消請求訴訟の判決で認定されているとおり,松本が当該団体の構成員であることは明らかであるにもかかわらず,松本を構成員として掲載していない上,ロシア人信徒についても,数十人を掲載するにとどまり,さらに,当該団体の活動の用に供されている施設を信徒の居住用施設として報告するなど,その欺まん的体質も改善されていない。
 (四 )組織拡大に向けた諸活動
 当該団体は,当該観察処分の期間更新決定以降も,組織拡大に向けた活動に取り組み,国内においては,全国各地の主要都市でヨーガ,自己啓発セミナー等の教室を仮装したり,ヨーガ講習会や瞑想講座等のサークルを開設したりするなどして,当該団体名を秘匿した勧誘活動を展開しており,ロシア連邦内においても,日本から派遣された幹部信徒が,ロシア語に翻訳した松本の説法集を経典として布教活動をするなどしてロシア人信徒の指導・教化に努めている。
 また,当該団体は,対外的には専ら被害者補償のためと称し,出家信徒をコンピューターソフト開発会社等十を超える事業体の運営に従事させるとともに,在家信徒からは,幹部信徒による説法会において参加費や布施を徴収したり,「集中セミナー」を年三回(年末年始,五月連休,夏季)実施して高額な布施を徴収したりするなどし,これにより,多額の資金を獲得した。


※ 昨年のオウム真理教の活動概況等については,平成17年「内外情勢の回顧と展望」を参照して下さい。

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