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内外情勢の回顧と展望(平成19年1月)

第1  平成18年の公安情勢の概況

1  国際情勢
 2006年(平成18年)の国際情勢をみると,まず,北朝鮮の核実験実施が,世界を震かんさせたのみならず,国際的核拡散問題に禍根を残しかねない最も深刻な出来事として特筆される。同時に,先進国内で大規模テロ計画が次々と発覚するなど,イスラム過激派らによる国際テロの脅威が更に拡散したほか,イラン核開発問題やイラクの治安悪化など中東諸国の諸問題も混迷状態にあり,情勢は総じて困難化・複雑化の様相を呈した。
 とりわけ,北朝鮮が国際社会の懸念を無視してミサイル発射に続き核実験まで強行したことは,我が国を取り巻く北東アジアの緊張を著しく高めた。これに対し,我が国は直ちに対応措置を打ち出し,国連安保理が全会一致で「制裁決議」を採択,中国も従来になく厳しい対応姿勢を示した。その後,北朝鮮は,6者協議復帰を表明したものの,「核保有国」との立場を強調し,我が国に対しても,「拉致問題は解決済み」との主張に固執して安倍政権非難を始めるなど,頑なな対応に終始している。また,国内では,金正日訪中で「経済改革」への意欲を示したが奏功せず,むしろ「金融制裁」などもあって経済低迷が続き,それを背景に食糧難,外部情報流入,社会統制弛緩など体制不安定化要因が増大しており,同国の動向には特段の注視を要する。
 中国は,増大する経済力・軍事力を背景に,胡錦濤国家主席自らの訪米などで「対米協調」に努める一方,胡錦濤主席のロシア,インド訪問やアフリカ諸国首脳を招いての会議開催などにより,国際社会における影響力拡大を図り,対日関係では,安倍政権発足を機に首脳会談再開に応じて関係改善をアピールした。国内では,「和諧社会」構築を提唱し,江沢民派とされる上海市トップを解任するなど胡錦濤政権の権力基盤を固めたが,所得格差の拡大など多くの問題が山積したままとなっている。
 ロシアは,初の議長国としてのG8サミット開催などで国際的な存在感を誇示し,我が国には,北方領土問題などで厳しい対応を続けた。また,国内では,プーチン後継体制を視野に入れた動きも活発になった。
 中東地域では,イラクは新政権発足後も宗派間抗争の激化やテロの頻発などで治安情勢は相当深刻な状況にある。また,イランは,国連安保理の警告決議などを無視して核開発を推進し,これをめぐる関係各国の対応も複雑なものとなった。さらに,イスラエル・パレスチナ,アフガニスタンなどでも,武力衝突,治安悪化などで,不安定な情勢が続いた。
 国際テロに関しては,「アルカイダ」が世界各地での攻撃強化を盛んに扇動する中,その影響を受けたイスラム過激派などがイラク及びその周辺国などを始め,世界各地でテロ事件を多発させた。また,カナダ,英国など先進国内では,「ホームグロウン(自国内育ちの)・テロリスト」らによる大規模テロ計画が相次いで発覚し,その脅威が強く印象付けられた。このように拡散するテロの脅威に対し,我が国を含む先進諸国は,関連法制・機構の整備などの対策強化を更に進めた。

 2  国内情勢
 オウム真理教は,公安審査委員会による観察処分の期間更新(第2回目)決定(1月23日)を受けた後も,依然として,麻原及び麻原の説く教義を絶対視し,教団名を秘匿した信徒勧誘を続けるなど,危険な体質を保持しながら組織勢力の維持に努めた。また,最高裁が特別抗告を棄却(9月15日)し,麻原の死刑判決が確定したが,教団は,麻原の生存・延命を願い,一層麻原への帰依を徹底するよう指導しており,死刑の執行が現実的となる中,麻原を盲信する信徒らによる不法事案のじゃっ起も懸念される。他方,教団内では,“麻原隠し”路線を推進する上祐派と,麻原への絶対的帰依を強調する反上祐派との確執が顕在化し,上祐が,“新団体”設立構想を表明したが,両派とも,麻原を崇拝する姿勢に変化はなかった。
 共産党や過激派は,在日米軍再編計画の日米合意に反発し,在日米軍基地を抱える自治体の反対派住民と共に反対運動を推進し,自衛隊イラク派遣や北朝鮮の核実験を取り上げて反戦・反核運動に取り組むとともに,国民投票法案,教育基本法改正案などの重要法案をめぐり,政府批判を展開した。
 他方,右翼は,外交・領土問題などを中心に活発に活動し,とりわけ,小泉総理の靖国参拝に反対した国会議員宅への放火事件をじゃっ起するなど過激な行動に走ったほか,北朝鮮の核実験,日本人拉致問題などで緊張が高まる中,国会前で抗議の手首切断,朝鮮総聯中央本部へ切断した小指と脅迫文の送付,北朝鮮への禁輸品輸出疑惑が持たれた企業への街宣車突入などの数々の不法事案などを引き起こした。

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