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内外情勢の回顧と展望(平成19年1月

第3 平成18年の国内情勢


 1  オウム真理教


(1)    観察処分の期間更新(第2回目)決定。その後も,危険性を保持するオウム真理教
  ― 公安審査委員会は,麻原への傾斜が一層強まっていると指摘するとともに,新たに教団の収益事業に関する報告事項を追加―
  ― 教団は依然として麻原を崇拝するなど危険性を保持,施設・構成員数も維持―


公安審査委員会が観察処分の期間更新(第2回目)を決定〉
教団に対する観察処分の経過など  松本・地下鉄両サリン事件などの凶悪事件を引き起こしたオウム真理教(教団)は,麻原逮捕後も,なお麻原及び麻原の説く教義を絶対視し,その影響下にあるなど危険性を保持していたことから,公安審査委員会(公安審)は,平成12年1月,「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律」(団体規制法)に基づき,同教団を公安調査庁長官の観察に付する処分を決定し,平成15年1月には同処分の期間が更新(第1回目)された。この間,公安調査庁は,教団施設への立入検査などの観察処分を実施してきたが,平成16年1月以降も,教団の体質に変化はなく,麻原の危険な説法を収載した教材を相次いで発行して,これを信徒に教学させ,麻原に対する帰依を強調するなど,依然として無差別大量殺人行為に及ぶ危険性が認められたため,平成17年11月,同処分の第2回目の期間更新を請求した。公安審は,公安調査庁の調査結果のとおり,麻原の影響力について「前回の期間更新決定当時に比べ,麻原及び麻原の説く教義への傾斜が強まっている」旨認定した上で,「教団には現在も無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認められる」,「一般社会と融和しない独自の閉鎖社会を構築し,欺まん的な組織体質がいまだ改善されたとは言い難い」旨指摘して,1月23日,観察処分期間を3年間更新(平成21年1月31日満了)したのに加え,教団構成員が違法行為を行うなどして多額の収益を上げ,重要な資金源としていることが明らかになったことなどを受け,公安調査庁の請求どおり,新たに,教団の収益事業の概要,各事業に関する会計帳簿を備え置いている場所などを報告事項として追加する決定も行った。
 公安調査庁は,1月以降11月末までの間,17都道府県,延べ64か所の教団施設に対して立入検査を実施するとともに,平成18年中4回にわたり,教団から3か月ごとに組織や活動の現状に関する報告を徴取したが,教団の収益事業の概要などが報告事項として追加されたこともあり,新たな収益事業の存在も明らかとなった。
 これら教団からの報告内容を始め立入検査や調査の結果などについては,同法第32条に基づき,1月から11月末までの間,請求のあった3都県15市区に対し,延べ46回にわたり,必要な情報を提供した。

教団は依然危険性を保持,組織勢力も維持〉
南烏山施設に対する抗議集会  教団は,日本国内に約1,650人(出家信徒約650人,在家信徒約1,000人),ロシア連邦内に約300人(出家信徒約50人,在家信徒約250人)の信徒を擁しているが,日本国内の信徒のうち,出家信徒の約9割,在家信徒の約7割が地下鉄サリン事件以前に入信しており,依然として麻原の強い影響下にある信徒が多数を占める状態にある。また,教団は,麻原及び麻原の説く教義を絶対視し,事件前の組織構造・修行体系を維持している上,今なおサリン事件を正当化する信徒が存在するなど,依然危険な体質を保持している。さらに,教団は,全国の主要都市において,教団名を秘匿したヨーガ教室や占星術鑑定などを行っており,地域情報紙に広告を掲載したり,公共施設を会場に利用するなどして,巧妙な信徒勧誘を続けている。
 教団は,11月末現在,16都道府県下に29か所の拠点施設を確保している。教団は,地域住民に対して不誠実な対応を繰り返すなど,住民との対立が深刻化する中で,教団施設であることを秘匿して契約した施設において,家主側から退去を求められたり,契約期間満了に伴う更新手続を拒否されるなどして退去するケースが相次いだが,中古マンションを購入するなどの方策を講じて,施設維持を図った。
 なお,教団は,年3回の集中セミナー(年末年始,5月連休,夏季)において,高額なイニシエーションを伝授するなどして,合計1億2,000万円以上の資金を獲得した。しかし,立入検査の際に非協力的な姿勢を示すなど,その隠ぺい体質も相まって教団財政の全容は,依然として不透明である。

(2)    麻原の死刑判決が確定するも,麻原への帰依は変わらず。死刑執行が現実的となる中,不法事案じゃっ起の可能性も
  ― 最高裁判所が特別抗告を棄却,麻原の死刑判決が確定―
  ― 公安調査庁は,一斉立入検査の実施など,調査・監視態勢を強化―


9月に最高裁が特別抗告を棄却,麻原の死刑判決が確定〉
麻原の刑事裁判の経過など  松本・地下鉄両サリン事件など13事件で殺人などの罪に問われ,一審で死刑判決を受けた麻原の刑事裁判に関しては,麻原の控訴審弁護団が,麻原に訴訟能力が無く意思疎通ができないとして控訴趣意書の提出を拒否してきたところ,東京高等裁判所は,3月27日,麻原の訴訟能力を認め,控訴趣意書の不提出を理由に控訴を棄却した。これに対し,同弁護団は,東京高裁に異議を申し立て,これが棄却されると,最高裁判所に特別抗告を行ったが,最高裁は,9月15日,特別抗告を棄却し,一審の公判開始から11年目で麻原の死刑判決が確定した。


公安調査庁が特別調査本部を設置,全国一斉立入検査を実施〉
一斉立入検査(4月18日・南烏山施設)  麻原に対する控訴棄却決定を受け,公安調査庁は,3月30日,「麻原裁判関連特別調査本部」を設置して,教団に対する調査・監視態勢を強化し,その一環として,4月18日,9都道府県に所在する教団施設11か所に,さらに,麻原の死刑判決が確定した翌日の9月16日,16都道府県に所在する教団施設25か所に対して一斉に立入検査を実施するなど,教団による不法事案の未然防止と国民の不安解消に努めた。
 このうち,死刑判決確定の翌日に実施した立入検査では,公安調査官の質問に正大師・上祐史浩自ら「教団としては後追い自殺をしたり跳ね返ったりする者が出ることを懸念している」などと信徒の不穏行動が起きる可能性を示唆した。また,幹部信徒がサリン事件被害者の遺族を傷つけるような言辞を発するなど,依然として凶悪事件を引き起こしたことに対する無反省な態度もみられた。

死刑判決確定後も麻原への帰依は変わらず,不法事案のじゃっ起も懸念〉
 麻原の死刑判決確定を受け,教団は,共犯者の刑事裁判がいまだ係属していることや再審請求の可能性を理由に,麻原に対する死刑執行が相当先となる見込みであるとの認識と期待を示した上で,信徒に対し,麻原の生存・延命を願いつつ,同人への帰依を徹底するよう指導する一方,違法行為などを行わないよう求める役員会名の文書を発出した。
 教団内には,控訴棄却決定を受けて,麻原が死刑になる前に奪還するなどの言動がみられる上,死刑判決確定後も,同死刑判決が覆るとの奇跡を期待する信徒の存在や同人の死刑執行の際の後追い自殺をほのめかす信徒の存在が確認された。また,麻原を神格化し,麻原の死後も麻原への帰依を保持し続けるとする信徒や,「尊師の血を引き継ぐ麻原家の子を中心に立て直していくしかない」などと麻原の家族への期待を表明する幹部信徒も存在するなど,依然として麻原に対する絶対的な帰依が認められ,教団の危険な本質に何らの変化もない。
 死刑判決の確定に伴い麻原の死刑執行が現実的となる中,麻原を盲信するこれら信徒による麻原奪還などの不法事案のじゃっ起も懸念される。

(3)    教団運営をめぐる意見対立から上祐が“新団体”設立構想を表明
  ― 上祐派内で,“麻原隠し”路線の徹底を不安視する信徒もおり,“新団体”設立は先行き不透明―
  ― 反上祐派内で,麻原への絶対的帰依を強力に推進する中堅幹部グループが台頭の兆し―


両派の意見対立が顕在化,施設と財政を分離へ〉
 教団は,平成16年末以降,教団の存続と勢力の拡大を図るため,観察処分逃れをもくろみ,表面上麻原の影響力の払拭を装う“麻原隠し”路線を推進する上祐派と,正悟師・村岡達子,同・二ノ宮耕一を中心に,たとえ教団存続のためであったとしても“麻原隠し”は許されないとして麻原への絶対的帰依を強調する反上祐派との間で意見対立を続けてきた。こうした中,平成17年11月末には,上祐派が大阪施設から反上祐派を排除し,これに対抗して反上祐派が大阪市内に別施設を確保するなど,同一地区に両派の支部・道場が設立された。さらに,年末年始集中セミナー(平成17年12月29日~同18年1月3日)も分裂して開催するなど,両派の確執が顕在化した。
 こうした状況から,上祐は,反上祐派との歩み寄りは困難であるとして,4月中旬,信徒に対し,麻原の死刑判決確定前に“脱麻原”の“新団体”を設立する旨表明した。これを受けて,両派において,施設及び財政分離に向けた動きが進められ,7月には,南烏山施設を構成する2棟のマンションに両派が分かれて居住し,信徒からの布施・会費の徴収,経費等の支払いなどを別立てするに至った。また,両派とも,自派勢力の拡大と資金確保のため,高額布施者など有力信徒の取り込みに努めた。

上祐派は麻原の死刑判決確定前の“新団体”設立に至らず〉
“聖地”で説法する上祐  上祐派は,“新団体”設立に向け,独自性をアピールするため,夏季集中セミナー(8月12~15日)において,上祐が選定した神社や仏閣などを“聖地”と位置付け,これを巡礼しながら修行を行った。以降,上祐派は,全国各地の“聖地”で修行を行うことを「巡礼ツアー」などと称し,定例化するとともに,表向き仏教やヨーガの法則を解説した上祐の説法を教材にしようとするなど,“新団体”設立に向けた取組を進めた。
 しかし,こうした“麻原隠し”路線に対し,上祐派内においても,不安を抱く信徒が少なくない上,一般企業に勤務して収入を得ている出家信徒が少なく,財政基盤に不安を抱えていることなどから,麻原の死刑判決確定前の“新団体”設立には至らなかった。上祐派は,引き続き,“新団体”設立を目指しているものの,その名称や教義など確定していない要素も多く,“新団体”設立は先行き不透明な状況にある。

反上祐派は中堅幹部のグループが麻原への絶対的帰依を強調〉
 反上祐派では,2月ころ,上祐批判の中心だった村岡が上祐に歩み寄る姿勢をみせたことから,これに反発した師クラスの中堅幹部のグループが,上祐派との共存を図ろうとしているとして,二ノ宮を除く村岡ら正悟師の姿勢を強く批判した。同グループは,各集中セミナー(5月連休,夏季)や勉強会などにおいて,麻原をキリストになぞらえるなど麻原への絶対的帰依を強調する指導を行ったほか,“新団体”設立を表明した上祐に対して「宗教団体アーレフ」の代表辞任を要求するなど,上祐派との対決姿勢を強めた。

両派とも,麻原を崇拝する姿勢に変化なし〉
 上祐派は,“新団体”設立構想として,麻原からの脱却を強調しているが,前述の「巡礼ツアー」などの取組は麻原の従来の手法や説法を模倣したものにすぎない。また,同構想表明以降に実施した上祐派施設に対する立入検査においても,従前同様,教団特有の祭壇を設置し,麻原の著書などを多数保管していることなど反上祐派施設と変わらぬ実態が確認された。さらに,上祐派が,麻原が唱えるマントラ(呪文)を流し続けている室内に一定期間保管した「お供物」と称する飲食物を反上祐派から購入して摂取しているなど,両派の協力関係も一部維持されており,反上祐派はもとより,上祐派も,依然として麻原及び麻原の説く教義を絶対視していることに変わりはない。



立入検査実施施設





 2  共産党・過激派等


(1)    共産党,過激派は,在日米軍再編計画の日米合意に反発し,反対活動を活発化
  ― 在日米軍基地を抱える自治体の反対派住民と共に反対運動を推進―
  ― 米軍普天間基地代替施設建設に対し,「実力阻止」を掲げた取組を展開―


 共産党や過激派は,5月,日米両政府が在日米軍再編計画に合意したのを受け,「関係自治体や住民の意向を無視した強権的決定」と反発し,「在日米軍再編・基地機能強化反対」を訴える活動を活発に展開した。

自治体や周辺住民への働き掛けを重視〉
共産党が支援した住民団体のビラ  共産党や過激派は,在日米軍基地を抱える自治体首長の多くが再編計画に反対姿勢を示したことに注目し,“自治体・住民ぐるみの反対運動の推進”を掲げ,地元の住民らと共に,関係自治体への要請行動などを展開した。なかでも,共産党は,3月,山口県岩国市での米空母艦載機部隊受入れの賛否を問う住民投票の実施に際し,受入れ反対を訴える住民団体の活動を支援するため,大量の運動員を動員した。住民投票で受入れ反対票が約9割を占めたことに勢い付いた共産党は,翌4月の岩国市長選に向け,受入れ反対の立場を採る現職市長を「自主的に支援する」と表明した。再編計画の日米合意後も,7月,志位共産党委員長が再編計画に反対する広島・山口両県の自治体首長を訪問し,“自治体との連携”を強くアピールした。
 年後半は,関係自治体首長の多くが相次いで再編計画の受入れ容認に転じる中で,共産党や過激派は,これら首長への「容認の撤回」を求めた抗議申入れ行動を繰り広げるとともに,地元住民団体と連携し再編計画反対の集会・デモや署名運動に取り組んだ。

沖縄では,普天間基地代替建設案に抗議,知事選で野党統一候補を支援〉
 在日米軍再編の最大焦点とされた米軍普天間基地代替施設建設をめぐり,共産党や過激派は,日米両政府が合意した再編計画に盛り込まれた名護市辺野古沿岸部への建設案について,名護市長が政府との事前協議で受入れを表明(4月),沖縄県知事が政府と「在沖米軍に係る基本確認書」を交わした(5月)ことに対し,「名護市長の受入れは公約違反」,「県知事の姿勢は県民への裏切り」と強く反発した。
 共産党などは,平成17年に続き名護市辺野古で反対派住民と連携して現地座込み行動を継続する中で,代替施設の建設予定地で名護市教育委員会が行った埋蔵文化財調査(9月)を「基地建設のための調査」,米軍嘉手納基地へのパトリオットミサイル配備(9~10月)を「米軍基地機能の強化」と,それぞれ決め付け,反対派住民らと抗議行動を実施し,文化財調査やミサイルの輸送作業を妨害した。
 11月の沖縄県知事選では,共産党が他の野党と結束して「県内の基地機能強化・新基地建設反対」を掲げた糸数慶子候補(前参議院議員)の選挙支援活動を展開したほか,中核派なども「糸数支援」を呼び掛けた。選挙戦は,事実上,糸数候補と自民・公明両党推せん候補との一騎打ちとなり,糸数候補の落選となった。

米軍横須賀基地への原子力空母配備計画反対運動を展開〉
 共産党や過激派は,米軍横須賀基地への原子力空母配備計画を「米軍基地を半永久的に固定化するもの」と批判し,在日米軍再編計画の一環と受け止めて反対活動に取り組んだ。特に,共産党は,「原子炉事故が起これば首都圏に被害が及ぶ」と訴え,7月,神奈川を始め東京,千葉などから1万人を集めて反対集会を開催し,反対気運の醸成に努めた。さらに,9月,地元住民団体が,原子力空母配備計画の賛否を問う住民投票条例制定を目指し署名運動を提起すると,大衆団体を動員してこれに呼応した取組を展開した。

再編計画の具体的な実施に合わせ,反対運動の拡大・強化を目指す〉
 共産党や過激派は,沖縄県知事選での“敗北”を「選挙結果は新基地建設を容認するものではない」とし,対決姿勢を堅持しており,平成19年も,沖縄での基地建設反対運動を基軸に据えながら,岩国市,横須賀市など各地で「在日米軍再編・基地機能強化反対」の運動に取り組むとみられる。当面,在沖縄米軍機訓練の自衛隊基地への移転実施などに際し,基地周辺住民らを取り込みつつ反対活動を展開することが予想され,移転に伴う作業などへの妨害活動も懸念される。

(2)    共産党,過激派は,自衛隊イラク派遣や北朝鮮核実験を取り上げて反戦・反核運動を実施
  ― 陸上自衛隊撤収後も,航空自衛隊撤退を掲げて反対活動を展開―
  ― 海外団体と連携して核兵器廃絶運動を推進する中,北朝鮮の核実験に強く反発―


陸上自衛隊のイラク派遣時に出発地周辺などで抗議行動を実施〉
陸上自衛隊練馬駐屯地周辺での抗議集会  共産党や過激派は,平成17年に続き,イラク人道復興支援特別措置法に基づく自衛隊派遣に反対する取組に力を注いだ。特に,第9次(1~2月)のイラク復興支援群が東京・練馬駐屯地,第10次(5月)が群馬・相馬原駐屯地の部隊を中心に編成されたことをとらえ,「首都治安部隊に戦場を体験させるもの」と決め付け,それぞれの駐屯地周辺で,地元の市民団体と共闘して抗議集会・デモに取り組み,防衛庁に「派遣中止」を申し入れた。また,3月のイラク開戦3周年に合わせ,全国約50か所で反戦集会・デモを行い,「自衛隊派遣反対,即時撤退」を訴えるとともに,在日米軍再編や憲法改正問題も取り上げて,反戦運動の盛り上げを図った。

航空自衛隊の活動範囲拡大や派遣期間延長問題をとらえて取組を継続〉
 共産党や過激派は,6月,政府が陸上自衛隊のイラク撤収を決定する一方で,航空自衛隊による輸送活動の継続と活動範囲の拡大を表明したことに対し,「本格的な戦闘行動に突入させるもの」との批判活動を展開した。特に,過激派は,同月に米国で行われた日米首脳会談を「空自の活動拡大を伝える場」ととらえ,「小泉首相訪米阻止」を掲げた抗議行動を実施した。
 共産党や過激派は,陸上自衛隊のイラク撤収が完了した7月以降も,9月の米国同時多発テロ事件5周年や12月の航空自衛隊派遣期間の延長問題をめぐり,各地で「自衛隊撤退,派遣延長阻止」を訴える抗議行動に取り組んだ。

原水禁大会への海外代表招請などを通じ,国際連帯の強化を提唱〉
 共産党や過激派は,平成18年を,被爆60周年(平成17年)で切り開いた核兵器廃絶の国際連帯を更に強める年と位置付け,海外団体との連携・交流と青年層の結集に重点を置いて核兵器廃絶運動を展開した。このうち,共産党系の「原水爆禁止日本協議会」(原水協)は,6月,カナダ・バンクーバーで開催された「第1回世界平和フォーラム」(主催者発表約100か国・3,000人)に約150人の代表団を派遣し,フォーラムでの独自企画として「被爆体験の継承」を目的に「青年のつどい」を開催したほか,各国のNGO活動家らと核兵器廃絶に向けた取組について意見交換した。さらに,8月の原水爆禁止世界大会では,非核兵器国政府の代表ら21か国70人の海外代表を招請し,国連及びすべての加盟国に対して核兵器全面禁止条約の締結に向けた交渉開始を求める大会決議を採択した。また,北朝鮮やイランの核開発問題を取り上げて,「いかなる核兵器開発・保有も認められない」と主張しながらも,「米国の核先制攻撃戦略による圧力と日本の米国追随姿勢が原因」と指摘し,批判の矛先を日米両政府に向けた。
 このほか,中核派は,8月,広島,長崎で恒例の反戦・反核闘争に取り組み,韓国人被爆者団体代表やイラク人医師らを招き,「国際連帯を発展させて核と戦争を放棄させよう」と呼び掛けた。

北朝鮮核実験をめぐる抗議行動を実施し,日米両政府への批判も〉
 北朝鮮が10月に核実験の実施を表明したことを受け,原水協は,各地で「国際社会に敵対する暴挙」と北朝鮮を非難する街頭活動に取り組み,広島では,被爆者団体などと抗議行動を実施した。また,国連安保理の制裁決議をめぐり,日本政府・与党は,周辺事態法発動など軍事的対応を議論しているとして,「平和的外交的解決を台無しにしかねない対応」と批判した。
 一方,過激派は,機関紙などで,「北朝鮮の核実験は絶対に容認できない」と主張しつつも,「核実験をめぐる戦争危機の根源は日米帝国主義」(中核派),「日米政府は北朝鮮核実験を口実に戦争体制づくりを進めている」(革マル派)との批判を展開した。

自衛隊問題や日米の核政策を焦点に反戦・反核運動を推進する構え〉
 共産党や過激派は,平成19年も,航空自衛隊のイラク撤退を訴える取組を継続しながら,自衛隊海外派遣の恒久化法制定の動きや集団的自衛権の解釈問題をとらえて政府抗議・要請行動などに取り組むとみられる。また,核兵器廃絶運動の高揚に向け,非核兵器国政府への働き掛けや海外の反核・平和団体との連携に力を注ぐとともに,日米両国の核問題に関する政治姿勢を批判する活動に取り組んでいくとみられる。

(3)    共産党,過激派は,国民投票法案,教育基本法改正案,「共謀罪新設」法案などの重要法案をめぐり,政府批判を展開
  ― 国民投票法案が改憲に直結するとして重大視―
  ― 教育基本法改正の狙いは戦争をする人づくりであるなどと批判―
  ― 「共謀罪新設」阻止に向け,法案の「危険性」を強調―


国民投票法案の国会提出を批判し,反対運動を展開〉
国民投票法案反対デモ(共同)  共産党や過激派は,憲法改正の手続を定める国民投票法案の国会提出が憲法改正につながるなどと批判し,様々な反改憲運動を展開した。
 共産党は,第24回党大会(1月)で,「憲法をめぐるたたかいは21世紀の日本の進路を左右する歴史的闘争」であり,「国民的多数派を結集するために,党の存在意義をかけて総力をあげてたたかう」との強い決意を示すとともに,当面,国民投票法案への反対運動が重要であると強調した。その上で,憲法9条擁護を訴えて活動する「九条の会」の支援や,労組などで組織する「憲法改悪反対共同センター」との連携強化に努めた。また,社民党に対して反改憲運動での共闘に向けた党首会談を申し入れ,志位委員長が福島党首と意見交換を行った(3月)。憲法記念日には,平成17年に続き,朝日新聞に全面広告を掲載し反改憲運動への結集を呼び掛けた。自民・公明の与党,民主党がそれぞれ国会に提出した(5月)国民投票法案に対しては,「9条改憲に直結する法案」などと強く反発し,廃案を訴える批判活動を展開した。さらに,憲法公布60周年(11月)に際しては,「憲法9条は日本国民の宝であり,アジア諸国民の共有財産」などと,改めて憲法改正反対を訴えた。
 過激派は,憲法記念日の反改憲集会への参加を始め,市民団体などが主催する集会や学習会でビラ配布や宣伝活動を行った。なかでも,中核派系の「とめよう戦争への道!百万人署名運動」は,「憲法9条を変えるな」,「戦争のための憲法改悪に反対」などと訴える新たな署名運動を開始した(5月)。

教育基本法改正案の廃案を目指し,法案成立阻止運動を強化〉
 共産党や過激派は,教育基本法改正案が初めて国会審議に付されたことから,様々な阻止運動を展開した。
 共産党は,同法改正を「海外で戦争をするという国策に従う人間づくりを狙いとしている」と決め付け,「教育基本法改悪反対闘争本部」を設置し(5月),取組を本格化させた。通常国会に際しては,志位委員長が同法改正案の「問題点」を指摘して追及したほか,党国会議員が各種集会に出席するなどして反対運動の盛り上げを図った。臨時国会の際には,教組などが開催した「10・14集会」(主催者発表約2万7,000人)で志位委員長が連帯のあいさつを行ったのに加え,いじめ,必修科目の履修不足,タウンミーティングにおける「やらせ質問」などの問題に関する徹底審議を求めた。また,同法案が衆議院で採決されると,これを「歴史的暴挙」と批判し,他の野党と連携して参議院審議への出席を拒否した。
 過激派は,同法改正を「国家に忠誠を誓い戦争を賛美する愛国心教育が一般化する」などと批判して,阻止運動に取り組んだ。このうち中核派は,超党派組織の「全国集会」に活動家が参加したのを始め,国会会期中に国会前座込み,街頭宣伝,デモ行進などを実施した。同法案の衆議院通過に対し,「怒りの大反撃を」と訴え,阻止運動への結集を呼び掛けた。

共謀罪を「現代版治安維持法」と決め付け,新設阻止闘争を展開〉
 共産党は,「国際組織犯罪防止条約」の批准に向けた「共謀罪新設」法案を,治安維持法と同様の「思想そのものを取り締まる弾圧法規」と主張して立法化に強く反対した。通常国会に際しては,党国会議員が各種集会に参加して共謀罪の「危険性」を訴え,野党共闘による採決阻止を呼び掛けるなど,反対世論の盛り上げに努めた。その後,臨時国会での審議阻止を狙って,「条約批准のための新立法は必要ないことが明らかとなり,政府の論拠は崩れた」として,廃案に向けた取組強化を呼び掛けた。
 過激派は,同法案を「現代版治安維持法」と決め付け,阻止闘争を展開した。とりわけ,中核派が関与する「破防法・組対法に反対する共同行動」は,署名運動のほか,共謀罪に反対する法曹関係者やジャーナリストなどと集会や街頭宣伝を相次いで実施し,廃案に向けた世論喚起に取り組んだ。

改憲阻止は,引き続き最重要課題〉
 共産党や過激派は,引き続き,改憲阻止を最重要課題として,国民投票法制定をめぐる動きを注視しながら,反対運動を強化していくものとみられる。

(4)    内部対立などを抑えつつ組織基盤の強化に努めた過激派
  ― 主要三派は,流動的要因を抱えながら,労働者・市民へ働き掛け―
  ― MDSは,市民層への浸透・拡大に主眼を置いた取組を推進―


中核派は,内部混乱の収拾を図り,労働者中心の組織建設に注力〉
11・5全国労働者総決起集会でのデモ行進  中核派は,労働運動を重視する「新指導路線」の方針の下,年初から,東京,大阪などで「日の丸・君が代」反対,憲法・教育基本法改正阻止の活動を展開し,これら運動に賛同する市民団体や労働組合への働き掛けに努めた。
 こうした中,8月の政治集会(東京,兵庫)では,関西組織で3月に発生した内部対立を取り上げ,組織内混乱があったことを公表し,労働者主体の組織建設に向け,指導部人事などを刷新する姿勢を示した。その後,同派中央は,内部にくすぶる動揺を抱えながら,重要課題に位置付けてきた「四大産別」(教組,国労,自治労,JPU=日本郵政公社労組)への浸透に一段と力を注ぎ,これら労組の定期大会会場付近での宣伝活動などに取り組んだ。
 しかし,年間活動の総決算の場として11月開催の「全国労働者総決起集会」(東京)では,約2,500人の参加者(平成17年は約2,700人)にとどまり,いまだ組織内混乱が尾を引いていることをうかがわせた。
 なお,同派は,成田空港暫定平行滑走路の北側延伸問題で,反対同盟結成40周年の節目に当たる平成18年を「着工阻止決戦の年」と位置付け,7月,5年振りに開催された反対同盟北原派主催の夏季全国集会で「延伸絶対阻止」を訴えるとともに,9月の延伸工事着工に際しては,緊急現地抗議集会・デモに取り組んだ。さらに,10月の全国集会では,「延伸弾劾の労農学の意気込みを示そう」と労働者らにも参加を強力に呼び掛けた結果,平成17年を上回る動員を確保し,成田闘争では一定の盛り上がりをみせた。
 同派は,今後も,武装闘争路線を堅持しつつ,「新指導路線」に基づく「労働者党建設」を目指し,組織の拡大・強化に努めていくとみられる。

革マル派は,創始者・黒田前議長の死去に伴い“黒田理論”の継承を徹底〉
 革マル派は,憲法改正阻止及び郵政分割民営化阻止などの各種取組を通じて,基幹産業労組や市民層への働き掛けに力を注いだ。6月,同派創始者・黒田寛一前議長(78歳)が死去したことを受け,「同志黒田が提唱した革命的共産主義思想を受け継ぐ」として,“黒田理論”の継承を訴え,組織の引締めを図った。10月には,「追悼同志黒田寛一」と銘打った政治集会(東京)を開催し,黒田前議長の功績を改めて称賛し,組織の結束を呼び掛けた。
 また,同派は,週刊誌に連載されたJR総連・東労組への革マル派の浸透問題に関する記事を,「革マル派を『テロリスト』呼ばわりする悪らつなデマ宣伝」,「フレームアップ攻撃を断固粉砕する」と批判した。こうした中,9月から10月にかけ,JR東労組の元幹部組合員らが記者会見で,同労組内の革マル派組織の存在などについて初めて公表した。
 革マル派は,黒田前議長の提唱した革命理論を受け継ぎ,組織の引締めを図りつつ,反改憲運動を始めとした大衆運動の高揚と労働戦線での勢力拡大に努めるとみられる。

革労協解放派は,組織基盤の強化に全力〉
 革労協解放派の主流派,反主流派は,武装闘争路線を堅持しながら,疲弊した組織の再建・強化に取り組んだ。特に,反主流派は,3月,同派幹部が不審死した直後に最高幹部・山田茂樹が拠点事務所から姿を隠し,非公然指導体制へ移行した。その後,同派は,組織分裂以降,全学連大会を初めて開催し,学生戦線の強化に乗り出すとともに,「革命軍アピール」を発表して,革命軍への志願を訴えた。

MDSは,「無防備地区宣言」運動などを通じ市民層への働き掛けを強化〉
 社会主義社会の実現を目指す「民主主義的社会主義運動」(MDS)は,「政府の戦争路線を阻む」として,ジュネーヴ諸条約追加議定書に基づく「無防備地区宣言」条例の制定運動に力を注ぎ,東京・大田区など5自治体で,地元住民らによる運動体を立ち上げるなどして,条例制定の直接請求のための署名運動に取り組んだ。さらに,8月,これら運動体の代表らを集めた会議で,同運動を100自治体にまで広げていくとの方針を打ち出し,以降,東京・目黒区,大阪・堺市など4自治体で署名運動を実施した。
 また,MDSは,イラクの反米・非イスラム勢力代表を招いた支援集会やイラクの被災児童の現状を紹介した写真展を各地で開き,参加した市民に対し,同勢力への支援運動の賛同を呼び掛けるとともに,同勢力が計画する衛星テレビ局開設のためのカンパを訴えた。
 MDSは,「無防備地区宣言」運動と反米・非イスラム勢力の支援活動を軸に取り組み,市民層を中心に勢力を拡大しつつある。

(5)    自民批判層・無党派層への浸透に努めた共産党
  ― 第24回大会を開催し,トップの若返りを印象付け―
  ― 「たしかな野党」を訴え,アジア重視の姿勢をアピール―


第24回大会で不破議長が退任〉
 共産党は,1月,平成19年の統一地方選や参院選に向けた自民批判層・無党派層への浸透を図るための態勢づくりを目指し,第24回大会を開催した。大会では,不破哲三議長(76歳)が高齢などを理由に最高ポストの議長を退任した。後任の議長は置かず,志位和夫委員長(52歳)が共産党のトップに座ることとなった。この人事は,規約(平成12年),綱領(平成16年)の改定に続いて,“新しい共産党”を印象付けるためとみられるが,不破議長が常任幹部会委員として指導部に残っており,同人の影響力に変化はないといえる。
 また,活動方針では,自民党と民主党の関係を「事実上の大連立状態にある」と指摘し,「たしかな野党」としての責任を果たすとして,(1)自民党政治と対決する,(2)野党外交を推進する,との方針を提起するとともに,党勢拡大に力を注ぐことを決定した。

自民党政治との対決姿勢をアピール〉
 通常国会では,焦点となった国民投票法案や医療制度改革関連法案,在日米軍再編問題を取り上げて,「平和と国民生活を破壊するもの」と指弾して政府を追及した。また,9月に発足した新政権に対して,「危険なタカ派政権」とみなして対決姿勢をあらわにし,臨時国会で新政権が教育基本法改正を最優先課題としたことから,同法改正の点では,民主党案を「右寄り」と批判したことを棚上げし,民主党と共闘して政府案の成立阻止を図った。
 他方,民主党に対する批判にも力を注ぎ,「国政の基本問題では民主党の立場は自民党と変わらない」と強調し,民主党が自民党政治との対決軸とはなり得ないと訴えた。さらに,民主党が呼び掛けた参院選での野党協力については,7月の第2回中央委員会総会で,全選挙区に候補者を擁立するとして否定し,「たしかな野党」を訴えていくことを確認した。

中国を始めとするアジア諸国と積極的に交流〉
 国際交流活動では,アジア諸国との緊密な関係を図ることで政府との対応の違いや党の外交能力をアピールすることに努めた。5月,不破前議長が中国共産党の招待で訪中し,2回目となる日中両党のマルクス主義・理論会談や中国社会科学院での講演を行い,10月には,中国のマルクス主義研究院代表団を招請して同代表団との理論会談を行った。こうした両党間の交流について,共産党は,「信頼関係が前提となっている」(不破前議長の第2回日中理論会談での発言)として,緊密な関係を誇示した。
 他方,志位委員長は,9月,韓国とパキスタンを相次いで訪問した。韓国訪問は,共産党党首として初めてであり,アジア政党国際会議に出席したほか,林采正国会議長や与野党5政党の代表らとの会談などを通じて,専ら歴史認識問題で韓国側と一致する立場にあると強調した。また,パキスタン政府の招待で実現した同国訪問では,アジズ首相を始め政府要人らと会談し,イスラム教と共産主義との共存を唱えて共産党への理解を求めた。こうした一連の交流活動について,共産党は,「相互理解で心通う交流ができた」(志位委員長の韓国・パキスタン訪問報告会での発言)と評価した。

党勢拡大を強調するも伸び悩み〉
 党勢拡大では,統一地方選が行われる平成19年4月までに「党員50万人,『しんぶん赤旗』230万部」の達成を目標に掲げ,地方組織の担当者を党中央に招集したり,中央幹部を各地に派遣して会議を開催し,党勢拡大が選挙での躍進のみならず党財政の安定からも重要である旨周知徹底して,全党を挙げて取組強化に努めた。しかし,党員の高齢化に伴う活動力の低下もあり,「しんぶん赤旗」部数(約160万部)が減少したほか,党員数(約40万人)も伸び悩み,党勢拡大は全般的に停滞した。

年初から統一地方選,参院選に総力を挙げて取り組む構え〉
 共産党は,平成19年の年初から,統一地方選及び参院選に向け,支持拡大活動に総力を挙げて取り組む構えにある。とりわけ,参院選については,「国政選挙で本格的前進に転じる選挙」と重視し,「たしかな野党」をキャッチフレーズにして,与党及び民主党への批判を強めると予想される。

(6)    パレスチナ問題に再び重点を置き始めた日本赤軍
  ― 重信房子がハマス政権の正当性を主張―
  ― 「パレスチナ解放人民戦線」(PFLP)との共闘関係を再構築か―


重信が,ハマスによる政権掌握と武装闘争路線への支持を表明〉
 日本赤軍最高幹部・重信房子(第一審判決公判:2月23日,東京地裁,懲役20年,弁護側検察側控訴)は,2月に開催された重信裁判闘争支援集会に寄せたメッセージの中で,パレスチナ自治評議会選挙(1月25日実施)で誕生したハマス政権を「公正な平和をもたらす政治勢力」と評し,また,武装闘争についても,「イスラエルの暴力があるかぎり公正な平和の実現の道具を手離さないという意志にすぎない」と主張した。その後も,重信は,イスラエル軍によるサアダトPFLP議長らの拘束やレバノンへの攻撃など世界の目が中東に向く中,3月,7月,9月と,状況に対応した「パレスチナ連帯」を繰り返し関連機関紙で呼び掛けた。
 こうした中,日本赤軍は,同軍の公然面での後継組織「ムーブメント連帯」(「連帯」)活動家が主導する「日本-パレスチナプロジェクトセンター」を通じ,8月ころ,パレスチナ現地に関係者を派遣して情報収集に当たらせ,ホームページに現地レポートを掲載しパレスチナ情勢のけん伝に努めた。

依然として「リッダ闘争」を評価し,再びPFLPとの共闘関係を構築か〉
 日本赤軍メンバーの7人が,依然逃亡中であり,そのうち,岡本公三は,依然として,ベイルートに居住し,ヒズボラのひ護下にあるといわれている。
 我が国内でも,同軍支援者らは,テルアビブ空港乱射事件(1972年〈昭和47年〉5月30日発生)を「リッダ闘争」と称し,かねてよりその記念日の活動を実施してきており,平成18年も,集会を開催した。同記念日に向け発行された「連帯」機関紙には,同軍メンバーがパレスチナに赴き,「日本赤軍旗」を掲げて,PFLPと「リッダ闘争記念国際連帯集会」を開催したことが掲載されており,「オスロ合意」(1993年〈平成5年〉)に伴いパレスチナから撤退した同軍がPFLPとの共闘関係を再構築したことをうかがわせている。こうした動きは,日本赤軍の危険な体質に変化がないことを示すものである上,「パレスチナ連帯」に加え反米を標榜する同軍が,パレスチナ建国に向け,武装闘争を展開しているハマス,ヒズボラ,PFLPなど中東の諸勢力と共闘する可能性も否定できず,今後の動向に注意を要する。

(7)    各国団体との交流に力を注ぎ,運動基盤の強化に取り組んだ反グローバル化勢力
  ― 「第6回世界社会フォーラム」は世界3か所で分離開催―
  ― 国内団体は,反WTO行動で共闘した海外団体との連携を重視―


「世界社会フォーラム」は,地域での運動強化を目指し3か所で開催〉
 世界の反グローバル化勢力は,例年,一堂に会して経験交流などを行う場としてきた「世界社会フォーラム」を,各地域での運動強化などを主眼に世界3か所で分離開催し,総勢約13万人(主催者発表)が参加した。日本からは,JRCL(旧第四インター派)主導の「ATTAC-Japan」が,ベネズエラ・カラカス及びパキスタン・カラチでのフォーラムに活動家を派遣し,「経済のグローバル化」をテーマとするセミナーなどで,各国団体と交流した。

国内では,各国団体代表を招き,反グローバル化運動の推進策を協議〉
 「ATTAC-Japan」などは,6月,各国の政財界要人が参加して東京で開催された「世界経済フォーラム東アジア会議」を「アジア人民を脅かすグローバル化推進会議」と批判し,同会議に合わせて,世界貿易機関(WTO)第6回閣僚会議(平成17年12月,香港)現地抗議行動で共闘した韓国,タイなどの団体代表を招き,「グローバリズムに対するアジアの課題と運動」に関するシンポジウムを開催したり,同会議議長あてに国内外約50団体連名の抗議文を提出した。さらに,京都などで,これら海外団体代表との交流・討論会を開催し,アジアでの自由貿易協定がもたらす影響について意見交換した。

次回「世界社会フォーラム」にも活動家を派遣し各国団体と交流を計画〉
 「ATTAC-Japan」などは,平成19年1月の「第7回世界社会フォーラム」(ケニア・ナイロビ)に活動家を派遣し,アフリカ諸国の貧困問題をテーマに各国団体との意見交換を計画している。また,アジア各国との自由貿易協定交渉をめぐり,韓国などの団体との連携を強化することが予想される。
コラム

<世界の反グローバル化勢力とは>

 先進諸国及びWTOなどの国際機関が進めている貿易自由化などを柱とする新自由主義的経済政策を,諸国間の経済格差や紛争などの元凶と決め付け,これに反対している各国の左翼団体,一部過激な労組や市民団体などの総称。これら勢力は,毎年,世界の政財界の要人らが出席して開催される「世界経済フォーラム」(通称:ダボス会議)に対抗し,「世界社会フォーラム」を開き,活発に交流している。



 3  右翼団体


    外交・領土問題などを中心に活動する中で,凶悪事件をじゃっ起した右翼団体
  ― 北朝鮮のミサイル発射・核実験,日本の竹島近海海洋調査の中止などに反発―
  ― 小泉総理の靖国参拝に反対した国会議員宅への放火事件をじゃっ起―


 右翼団体の組織勢力は,ここ数年横ばい傾向にあるものの,暴力団系団体が増加傾向にあり,なかでも,右翼陣営内にも影響力拡大を狙う山口組系団体の増加が顕著となった。こうした中,多くの団体は,新たな資金源開拓を目指しながら,国民の関心が高い外交・領土問題を中心に活動を展開した。

北朝鮮問題で緊張が高まる中,一部の右翼が,自らの手首を切断するなどの事案をじゃっ起〉
北朝鮮のミサイル発射で朝鮮総聯中央本部に抗議する右翼団体  右翼団体は,北朝鮮問題に関し,「日本人拉致や核問題に具体的な進展がみられない」として,年初から朝鮮総聯関連施設に抗議したり,政府関係機関に経済制裁の実施を求める活動を活発に展開した。
 2月には,福岡高等裁判所が,熊本朝鮮会館課税減免措置取消訴訟で,「公益のために利用された形跡はなく,減免措置は違法」との判決を出したのに続き,総務省が朝鮮総聯関連施設に対する課税減免措置見直し通達を発出した(4月)ことを受け,各地で課税減免措置の撤回を求める抗議・要請活動に取り組んだ。
 また,マスコミ代表団(23社)の訪朝(4月)についても,「拉致被害者家族の心情を踏みにじる行為であり,断じて許されない」として,同代表団に参加したマスコミに対して抗議活動を行った。
 北朝鮮のミサイル発射(7月)については,「日米に対する宣戦布告」などと一斉に反発を強め,各地の朝鮮総聯関連施設に街宣車で押し掛け,同施設内に入り込むなどして,「ミサイル発射は日本へのどう喝行為であり,断固として許すことはできない」とする抗議文を提出するなどの活動を行ったほか,政府関係機関には,北朝鮮船舶の入港禁止や北朝鮮への送金禁止など経済制裁の発動を求める活動を展開した。さらに,北朝鮮が核実験を実施した(10月)際にも,「傍若無人な挑発行為」などと非難し,ミサイル発射時と同様,各地の朝鮮総聯関連施設付近で,「国際社会を愚ろうする蛮行。北朝鮮は即刻核兵器を廃棄し,日本国民に謝罪せよ」などと訴えた。
 北朝鮮との間で緊張が高まる中,右翼は,経済制裁の発動などを求める総理あての抗議文を所持して国会議事堂前で自らの手首を切断(3月),外務省の北朝鮮外交姿勢を批判して同省正門柵に赤ペンキを散布(7月),切断した小指と脅迫文を朝鮮総聯中央本部に送付(9月),「禁輸品の北朝鮮輸出疑惑」が持たれていた精密測定機器会社への街宣車突入(10月)など,北朝鮮の動きに敏感に反応し,相次いで不法・過激な行動に走った。

小泉総理の靖国参拝に反対した国会議員宅への放火事件をじゃっ起〉
右翼による放火で全焼した加藤紘一議員宅(共同)  右翼団体は,小泉総理の公約である終戦記念日の靖国神社参拝を求める一方,これを外交問題として批判したり,国立追悼施設建設構想や「A級戦犯」分祀を主張する政財界関係者への抗議活動などを活発に展開した。さらに,「A級戦犯」の靖国神社合祀を批判したとされる「昭和天皇御発言メモ」を掲載した(7月)新聞社に対して「総理の参拝を中止に追い込む策略」などと抗議する動きもみられた。
 また,小泉総理が靖国神社を参拝した終戦記念日の夕刻に,総理の参拝に反対してきた加藤紘一自民党元幹事長に反発した右翼団体構成員が,山形県鶴岡市所在の同元幹事長の実家に放火し,同家と棟続きの事務所を全焼させる事件を引き起こした上,包丁で割腹自殺(未遂)を図った。右翼内では,同事件を「義挙」として,これを称賛・支援する全国集会を東京で開催するなど,一定の盛り上がりをみせた(11月)。なお,右翼が国会議員宅に放火するという凶悪事件は,河野一郎建設大臣私邸放火事件(昭和38年)以来である。

日本の竹島近海海洋調査の中止などをめぐる日韓両政府の対応を批判〉
 右翼団体は,日本の領土である竹島の領有権を主張し,同島を不法占拠している韓国及び日本政府の対応を批判する活動を展開した。島根県の「竹島の日」制定から1周年となる2月22日,同県主催の「竹島の日の集い」に参加したり,東京,大阪など各地で「竹島奪還」を訴える活動を展開した。また,竹島近海における海洋測量調査(4月)が,日韓両国政府の話合いで中止されたことについて,「韓国政府は国際法上認められている調査に文句を言うな」,「日本が正当な権利である調査を中止したのは国辱外交」などと訴える抗議活動を各地で繰り広げた。さらに,6年振りに再開された日韓両国の排他的経済水域画定交渉(6月)や韓国による竹島近海海流調査(7月)の際にも,「竹島の即時奪還」を主張して在日韓国公館への抗議活動を展開した。

皇室典範改正案の国会上程に反対〉
 右翼団体は,皇室典範改正問題を「日本の伝統,文化の根幹である皇室の崩壊を招く重大な問題」と受け止め,改正反対を重点課題に挙げて取り組んだ。「皇室典範に関する有識者会議」(有識者会議)の女性・女系天皇容認及び第一子優先などを骨子とした答申(平成17年11月24日)に反発し,「女系天皇を容認すれば,万世一系の天皇家の系譜・伝統が崩壊する」旨の主張を繰り返すとともに,改正法案の国会上程阻止に向け,有識者会議委員や国会議員,政府・関係機関などに対して,「皇室典範改正には慎重な議論が必要であり,拙速な改正案の国会上程には反対する」との抗議・要請活動を展開した。こうした動きは,秋篠宮妃殿下御懐妊発表(2月),親王殿下御誕生(9月)により徐々に沈静化したものの,右翼団体の大半が“男系・男子継承”に固執していることから,同改正問題には,引き続き注目していくものとみられる。

外交・領土問題に加え,憲法改正などの重要政策にも関心〉
 右翼団体は,引き続き,核実験,日本人拉致事件を始めとする北朝鮮問題や中国,韓国との領土,歴史認識などの外交問題を中心課題に据えつつ,国内問題では,皇室典範改正の行方を注視し,憲法改正の実現を求める活動などを展開していくものとみられる。今後,北朝鮮の動きなどによっては,右翼団体が従前以上に過激な行動に出る可能性もあり,その動向には一層の注意が必要である。
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