法制審議会国際扶養条約部会             第7回会議 議事録 第1 日 時  平成18年9月19日(火)  自 午後1時31分                        至 午後4時28分 第2 場 所  法曹会館 富士の間 第3 議 題  「子及びその他の親族に対する扶養料の国際的な回収に関する条約草案」について 第4 議 事 (次のとおり)                議        事 ● それでは,時間になりましたので,法制審議会国際扶養条約部会の第7回会議を開催いたします。 (委員,幹事の異動紹介省略)   それでは議事に入ります。   まず事務局から,配布資料の説明があります。 ● それでは,お手元にあります,今日お配りいたしました配布資料目録に基づきまして,資料の中身をご説明いたします。   まず,38-1,2番,それから39番でございますが,これは,昨年10月にプレリミナリー・ドキュメント №16として作成,配布されておりました条約草案,これは後ほどご発表いただきます○○委員の御報告書では「2005年10月草案」と称しておられますが,これにつきまして第4回特別委員会での前半の議論に基づきまして,起草委員会で改訂の上,6月下旬に配布された最新の条約草案,これを報告書では「現草案」と称しておられますが,「現草案」がこの38-1番のフランス語版と,38-2番の英語版でございます。   それから,○○委員の御尽力によりまして,その仮訳を作成させていただきました。これが39番でございますが,若干の語句の修正等がございましたので,差し替え版を席上配布させていただいております。   それから,40番でございますが,これは後ほど○○委員の方から御報告いただきます第4回特別委員会の内容につきまして取りまとめいただきました報告書でございまして,これも若干語句の修正等がございましたので,最終版を席上配布させていただいております。   続きまして41番でございますが,これは今年5月付でフォームワーキンググループが作成いたしました書式案を含むレポートでございます。   続きまして42番でございますが,これはこの条約と他の条約や国際的協定との調整につきまして,常設事務局の○○という方から提出された,本年6月作成のペーパーでございます。この資料につきましては,○○委員の御報告書の中でも,28ページで記されておりまして,また,そこで提示されております条文案が「現草案」の42条として,ブラケットに入っておりますが,挿入されているところでございます。   続きまして43番でございますが,これはやはり今年6月付で行政協力ワーキンググループが作成したレポートでございます。   続きまして,44番でございますが,これは準拠法に関する規定の形式につきまして,本条約の附属議定書の形式とするか,あるいは条約本体の中のオプショナルな部分とするか等につきまして,最終条項のあり方も含めて常設事務局の考え方をサジェストした今年6月付の文書でございます。   続きまして45番でございますが,これは「2005年10月草案」に基づきまして,その主要な争点を常設事務局の方が取りまとめたものでございます。   46番でございますが,これも準拠法ワーキンググループが提示したレポートでございまして,○○委員の御報告書の末尾の方,28ページでその内容が説明されているところでございます。   続きまして47番でございますが,これは「2005年10月草案」に対しまして,法制審議会でも御議論いただきましたとおり,各国から今年の5月1日までに提出されたコメントを集めたものでございます。各国といいましても,実は7カ国だけでございますが,そのようなものを取りまとめたもので,日本から提出した意見書もそのまま添付されているところでございます。   次に,48番でございますが,これは本日御発表いただきます○○委員の報告書の中で引用されているワーキングドキュメントを抜粋して事前にお送りしたものでございます。ワーキングドキュメント自体はかなりの大部なものでございますので,報告書で引用しているものに限って事前配布させていただいたものでございます。   それから,ただいま配布させていただいたものでございますが,○○委員の御報告書の中で,フォームについてどのようにするかという問題がございまして,それにつきまして,i Supportというシステムが常設事務局の方で作成されたということでございます。それで,今日の御報告を拝聴するに当たりましても,このi Supportというものがどのようなものかというイメージがわかった方がいいのではないかと考えまして,急で恐縮でございますが,机上配布させていただいたという資料でございます。   あと,あわせまして本日は「2005年10月草案」,これは前回お配りしました部会資料32,33でございますが,それについても使用する予定であるということを資料目録の最後に言及させていただきました。   配布資料につきましては以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   去る6月19日から28日まで,ヘーグ国際私法会議の扶養に関する第4回特別委員会が開催されまして,日本からは○○委員が代表として出席されました。また特別委員会の会期中に,○○委員がメンバーとなっておられます準拠法に関するワーキンググループと行政協力に関するワーキンググループとが開催されておりまして,これらについても○○委員が出席されています。   そこで,今回の会議では,○○委員から第4回特別委員会の結果について御報告をいただくとともに,2つのワーキンググループの作業予定等についても御説明いただくことにしたいと思います。そしてその後,質疑応答を行い,御議論いただくことにしたいと思っております。   なお,区切りの良いところで,休憩を取りたいと考えておりますので,よろしくお願いいたします。   それでは○○委員,報告者席にお移りいただけますでしょうか。   それではご説明をお願いいたします。 ● それでは少しお時間をいただきまして,今御紹介のありました第4回の特別委員会につきまして御報告を申し上げたいと思います。事前にお配りしてあります報告書なんですが,今日差し替えで若干文言を変えたところがございますが,実はちょっと私の見落としで,4カ所ばかりまだ修正しなければいけないことがございますので,恐縮ですがちょっと今簡単に修正をお願いできますでしょうか。   差し替えの方で見ていただければ結構ですが,まず5ページ目の本文の3行目に「法律扶助」というのがございますが,ここは訳を後で変えました関係で「援助」,「法律扶助」のかわりに「援助」というふうにしておりますので,「援助」とお書き直しいただければと思います。   それから9ページの2段落目「これに対して,」から始まるところですが,2段落目の2行目に「申立人が居所を有する締約国」というのがございますが,これも翻訳をちょっと変えました関係で,「申立人が居住する締約国」というふうにお直しいただければと思います。   あと2カ所ですが,24ページの3段落目と申しますか,「3項は,」というところから始まる段落の下から2行目のところに「年」というのがございますが,これは平仮名で「とし」とお直しいただければと思います。「柔軟な解決をとることとし」というのが「年」になっておりまして,申しわけありません。   それから,もう1カ所ですが,これもエディトリアルなのですが,次のページ,25ページ目の「なお,」から始まります2段落目の2行目に「「適切な措置」と言う」がありますが,「と言う」というのは平仮名の「という」に直していただければと思います。   以上でございます。大変申しわけありませんでした。   それで,御報告に当たりまして,基本的にはこの報告書の内容に沿いまして申し上げたいと思いますが,報告書で触れていないことも幾つかございますので,それについても補充しながら申し上げたいと思います。   触れてないことの主なことは,日本の対処方針の中で,こういうふうに言うようにというのがありましたのですが,それについて,対処方針に書かれていることはおおむね席上で発言はしたのですけれども,余りはかばかしい反応が得られないものが結構ありまして,それについて報告書の中で特に書いてないところがございますので,そこも補充しながら申し上げたいと思います。   御報告に当たりまして,準備の段階でもう一度報告書を見直して見ましたところ,多分ずらずらと申し上げると,長い報告書でもありますし,メリハリがなくなるだろうと思いまして,ポイントが幾つかあればと思ってポイントを書き出していったのですけれども,結局その作業をしてみてわかったことは,今回は特に大きな変更といいますか,大きな改正というのはなくて,幾つか議論があった点はございますけれども,全体としては何かじわじわっと進んでいるという感じで,ここがポイントですというのが余りないのですね。   まあそうは申しましても重要なポイントが,私は大中小とポイントを書き出してみたのですが,とりあえず今後の議論にとって重要かな思われるポイントが4つありますので,それをまず列挙してから,それから後,報告書の順番に御報告申し上げたいと思います。   それで,現草案の条文番号で申しますと,ポイントが4つあると申しましたが,それぞれ条文番号で11条,13条,19条,25条というのが,変更は余りなかったところもあるのですけれども,今後の議論にとっては重要なポイントがいろいろ含まれているところなのではないかという気がいたしますので,その4つをとりあえず挙げさせていただきたいと思います。簡単に今のポイントに触れた後,報告書の順番に沿って申し上げたいと思います。   ポイントのうちの1つの11条というのは,書式をどうするかという問題で,義務的な書式にするか,それとも任意的な書式にするかという話なんです。これについてはまた後で申し上げますが,簡単に申しますと,義務的書式にすべきだという意見が非常に強くなっておりまして,日本としては義務的ではない方の,任意的な書式でやったらどうかということであったわけですけれども,そうでない意見の方が非常に強くなっているということでございます。内容についてはまた後で申し上げます。   それから13条は,これはアクセスと呼ばれている条文なんですが,条文のタイトルは「手続の実効的な利用」と訳しておりますけれども,これは要するに扶養権利者が国境を越えて扶養料を回収するためには,できるだけ容易にその人たちがその権利を実現できるようにしなければいけないということで,いろいろな形で援助を与えなければいけない,容易に回収ができるようにしなければいけないというためのいろいろな法則を決めてあるところなんですけれども,これにつきまして,なぜこれが大きなポイントかといいますと,この点は日本は比較的各国の国内事情に合わせて,余り条約で強い義務を課するようなことはしない方がいいのじゃないかという立場なんですが,そうではない立場,つまり非常に強い義務を各国に課して,ともかく弱者である扶養権利者が容易に実効的に扶養料を回収できるようにすべきである,そのための方策を条約上用意すべきであるという意見が,これは非常に強くなっているという点でございます。具体的には後で申します。   それから,19条ですけれども,これは承認・執行のための手続なんですが,これにつきましても,基本的には日本の立場は,承認・執行の手続等は各国の,その承認・執行する国の民事手続に基本的には任せて,統一するとしてもその最低限のところで統一すべきであるという基本的なスタンスなんですけれども,これについても,この条約上迅速でそして権利者にとってフレンドリーな手続を強制的なものとして導入すべきであるという意見が非常に強くなってきているということでございます。これも具体的には後で申し上げます。   それから,もう1つ最後のポイントですが,25条ですが,これはまだブラケットに入っているのですけれども,「公正証書及び私的な合意」という表題のタイトルで,これは承認・執行する対象として,裁判所が出した決定・判決とか,あるいは行政庁が出した決定・判決は承認・執行の対象となるというふうな前提で進んでいるわけですが,それとは別に,それ以外に私的な合意とか,あるいは公正証書によるもの,扶養料を払えというものですね,をこの承認・執行等の条約のルートに乗せて実現させるという,そういう考え方でつくられている条文でございます。   これは結局,まだ括弧に入っていることからもわかりますように,決まってはいないのですが,ただ日本としては,公正証書といってもいろいろある,それから私的な合意などは特に外国判決と同じように扱うだけの保証はない,適正につくられているという保証がないということで,比較的消極的な立場をとっているわけですけれども,これについては賛否いろいろまだあるところですけれども,特に家族法の分野で,裁判所によらない,つまり当事者の話し合いによる解決を主としてプロモートして,それを実現させるのが適切であるという世界の家族法の潮流を背景にいたしまして,当事者の合意,それを公正証書にしたものもあるし,あるいは単なる私的合意もあるわけですけれども,をこの条約のルートに乗せて実現させるのが適切であるという意見がかなり発言力の強い国から強力に出されているという状況でございます。   この4つが今回の条約の特別委員会で,特に日本の立場との関係で今後検討すべき重要な課題になるのではないかと思われる4点でございます。   あと,中小のポイントは幾つかあるのですけれども,それは言っていますとまた全部網羅してしまうことになりますので,報告書の順番で申し上げるときに適宜触れていきたいと思います。   それでは,一応お手元の報告書に沿いまして,ポイントを取り上げて適宜御説明を申し上げたいと思います。   まず,条約の1章でございますが,「適用範囲及び定義」のところです。これは2条のところ,「適用範囲」のところで若干組み換えといいますか,構成の変更がございました。これについては報告書の4ページのところで触れてありますけれども,2005年10月の草案では,扶養料を払えという対象,扶養の対象として,子に対する扶養,子を扶養するというものと,それから配偶者間で扶養を行う,あるいは元配偶者間も含めてですが,配偶者間で扶養を行うというものと,それからその他のもの,例えば姻族とか,あるいは公的機関の償還も含めてですけれども,その3つに分けて一応考えていくことができるわけですけれども,2005年の草案では一応全部適用対象とした上で,子に対するものは必ずこの条約に含めなければいけないということにした上で,あとは適用しないものを留保できるという形にしていたのですが,その原則,例外を逆にいたしまして,現草案では,子に対する扶養義務について条約のすべての章が適用される,それから配偶者間の扶養については2章,3章以外の章が必ず適用されるという2段階で必ず適用されるものを決めた上で,残りについては各締約国が適用したいのであればそれを宣言するということにいたしました。つまり,最低限適用されるものをコアとして決めておいて,そのほかのものは宣言で適用範囲を拡張するということにしたわけです。   これは実質としては余り変わらないわけですけれども,このようにした方がいろんな国がこの条約に入る上で柔軟性が高まるのではないかというような考慮からそういうことがなされたのだろうと考えられます。   それから,適用範囲の今の子に対する扶養義務に関しまして,子に対する扶養とは一体何かということについて若干の議論がございました。結局はっきりした結論は出なかったのですけれども,問題になりますのは18歳未満にするか,あるいはそれ以上の者,例えば21歳未満にするか,あるいはそれ以上であっても,例えば大学教育,大学院教育等の高等教育を受けている者については子に対する扶養として取り扱うかという問題でございまして,これについては結局,いろいろな意見が出たのですけれども,結論は出なかったのですが,ただ,議長のまとめとしては,一応21歳を境として,それについては入れる方向で草案を起草したらどうかということが言われまして,それに基づいて一応今回の2条は書かれているわけです。   ちなみに,申し上げるのが遅くなりましたが,今回の委員会も,議長としては○○さんというイタリアの代表の方が選ばれているわけですけれども,○○さんはほかの職務がお忙しくて,今回は一度もおいでにならなかったわけです。そこで,副議長のうちの1人であるハンガリーの○○さんという女性の方ですが,彼女がずっと議長をされておりました。○○さんというのは,ハンガリーの法務省のお役人の方で,こういう関係の仕事を長年やっておられる方のようでして,大変有能な方だったと思います。   どういうふうに有能かというと,まとめの仕方が非常に上手というか,効率的というか,多少少数意見があっても,大多数が賛成のようであれば一応書いておきましょうと。まあ注をつけましょうという形で,とにかくできるだけ前の草案についていたブラケットを取っていくということをしようとされておりまして,それはかなり成功されたというか,ある意味で成功されたのではないかと思います。   それで最後の謝辞で,謝辞がいろいろの国から述べられるわけですけれども,ブラケットをたくさん取ったので,ミセス・ブラケットと呼ばれていまして,とったブラケットを数えて,幾つとったというのを謝辞の中に混ぜ込んでいる方がいるぐらいでございました。そういう形で,大変有能な方でしたけれども,かなりブラケットを取ろう,取ろうという方向で進んでおりました。今回もこの21歳未満というのも,合意ができたわけではないのですけれども,一応こういう形で起案してはどうかということが起草委員会に対して指示として議長から出されたという,その結果でございます。   それから,あとちょっと細かいことはありますが,報告書全部触れていますと時間がなくなると思いますので,主要なポイントだけ触れさせていただくということにしたいと思います。   3条「定義」でございますが,これについてはc号のところの法律扶助のところですが,これが幾つか並んでいるわけですけれども,これが単なる例示列挙なのか,それとも必ず法律扶助にこれが含まれるべきなのかということについて若干議論がございました。しかしその点は結局13条の,先ほど申し上げましたアクセスのところとの関係で最も重要な話なので,そちらで議論しましょうということになって,この点については結局詳しい議論は先送りということになりましたので,いまのところ括弧に入れたまま残っているという状態でございます。   それからd号で,これは居所か常居所かという話なんです。レジデンスかあるいはハビチュアルレジデンスかという話なんですけれども,これは報告書の5ページの真ん中あたりに少し書いてございますけれども,常居所というのを外しまして,そして前の草案では括弧がついていたのですけれども,括弧も外したということにしたわけです。これは9条でどういう人が申立てができるのかという話との関係で出てくるところでありまして,9条で居所を有するという要件を課するということにしましたのとセットでECから提案がなされて,それが通ったというものでございます。   それで,また後でちょっと出てきますけれども,常居所という概念を使うことについては,全般的にアメリカが反対をしておりまして,これは前回の法制審でも申し上げたかと思いますけれども,ということの状況も考慮した上で,ここでは常居所というのをやめにして居所にするということにしたわけです。ただ,後で触れますように,常居所が全くこの条約から消えたわけではないということでございまして,ここでは居所になったということです。   それから,翻訳のことで,レジデンスを一応ここでは居所と訳しております。この点の翻訳の仕方についてはまたご意見がいろいろあろうかと思いますので,住所と訳すやり方もあるかもしれませんけれども,その点についてもご意見を伺えればと思っております。   以上が1章のところでございます。   2章の「行政協力」のところですが,ここの中では6条のところをごらんいただければと思います。6条は,いわゆる中央当局がどういう任務を負うかということのスペシフィックなものを幾つか挙げたものなんですけれども,このうちの2項のところに,現草案ではこのような規定があるわけです。柱書が「中央当局は,そのような申立てにつき,次に掲げることのためにあらゆる適切な措置をとらなければならない。」というので,aから,一応括弧に入っているものも入れますとJまでの号が列挙されているわけです。   まずこの柱書につきましては,前の草案ではこの「あらゆる適切な」というのと,それから「採り得る最も実効的な」という2つの修飾句が「措置」の前に括弧で2つの案として挙げられていたわけですが,これについては結局「あらゆる適切な措置」の方を選ぶということになりました。日本もそういう意見だったわけですけれども,これは実質は余り変わらないのですけれども,ニュアンスとして,ほかの条約で,例えば子奪取条約でこの文言が使われていて,それなりの実績があるということと,それからできるだけ改善の努力を各国がするというモチベーションをこの言葉からくみ取ることがより多くできるのではないかということで,「あらゆる適切な」という方を選んだという趣旨でございます。   それで,前回からの繰り返しになりますが,この形容句で示していることは,報告書の6ページの真ん中ぐらいに①,②,③とありますように,各国が実務的に可能であって,法的に問題がなくて,人的・財源的な資源が許す範囲でやれることをやればいいという趣旨であるということは繰り返し確認されているところでございます。   これについては,アメリカはこういうような考え方にむしろ実質的には反対なわけで,つまり決めたことは全部ちゃんとやれという考えなわけですけれども,しかし,この文言によってこういう①,②,③のできるだけのことをやればいいということであることはアメリカも認めているという状況でございます。   それから,2項で列挙されている幾つかの項目につきまして,若干の変更がございました。   それで,まずc号ですが,これは情報収集の話なんですが,これについては幾つかの国が非常にセンシティブで,つまりプライバシー保護とか個人情報保護との関係で余りここで立ち入ったことを書かれては困るというニュアンスのことが発言されまして,その関係もありまして,一応「必要な場合には」という文言を入れるということになりました。   ただこれも,先ほどの柱書との関係で,各国の法制等で許される範囲でやればいいということですので,必ずしも必要ではないのではないかという意見もあったのですが,一応「必要な場合には」というのが必要であるという意見があったので,入れても大して変わらないだろうということで,結局入れたという状況でございます。   それからf号ですが,これは扶養料の回収と送金に対する便宜供与ですけれども,これについてはブラケットに入っていたわけですけれども,これは括弧を外すということになりました。これは2項全体が,先ほどの繰り返しになりますけれども,何回も言っていますようにできるだけのことをやればいいということなんだから外してもいいのじゃないかというのが,例えばアメリカから非常に強く言われまして,余り反対する国も多くなかったために,議長がブラケットを取るということにしたということでございます。   それからh号ですが,これは親子関係の成立の話です。日本は当初から親子関係の成立についてはこの条約の範囲に入れることに消極的ないしは反対であったわけですけれども,これまでの情勢から,扶養料回収のためであれば,その前提として親子関係の成立に関して援助を行うということが入ってもやむを得ないであろうということに大体方向としてはこの法制審でなったかと思いますけれども,それから議場の状況その他を考えまして,これについては強くは反対しないということにいたしました。ただし,「扶養料の回収のために必要な場合に」という文言,限定は必ず入れるということをお願いして,一応括弧は外して,親子関係の成立を入れる。ただし「扶養料の回収のために必要な場合」という文言も入れるということになったわけでございます。   6条については一応以上でございます。ちょっと細かいことがございますが,また必要であれば後で報告書に書いてあることを触れたいと思います。   それから7条で,これは「特定の措置の要請」というものですが,これは正式な申立てとともに,先ほどの6条にいろいろ列挙してあるものを中央当局がいろいろ便宜供与等をするというのではなくて,申立てが係属していないけれども,特別に6条に列挙されているようなものうちの一部を中央当局がやってあげることを求めるというのが特定の措置を要請するということなわけです。これにつきましては,結局若干の修正がありましたけれども,おおむね前の草案のとおり括弧も残ったままということになっております。   1項につきまして,特定の措置としてどういう項目を要請できるかということにつきまして,アメリカから,先ほどの6条2項のg号とh号,つまり証拠収集の関係とそれから親子関係成立の援助といいますか,これについてもこちらの「特定の措置」に列挙してほしいという提案がございました。これは,アメリカの立場からいうと,こういうものも入れておけば使いやすい条約になるということでございますが,これについてはそこまで入れる必要はないのじゃないかという意見もございました。それから証拠収集については,別の条約との関係も考慮する必要があるのじゃないかという意見もありまして,結論は結局出なかったのですが,一応議長のまとめでg,h号も括弧に入れておいて,ブラケットをつけて入れておいて,後日検討するということになりました。   それから2項ですが,これは嘱託国ですから,要するに例えば日本に係属している事案につきまして,別の締約国に今の特定の措置を要求するというもので,先ほどの1項は一応まだ係属していない事案についての要求ではあるのですけれども,その結果,要請を受けていろいろ調べてもらった結果,その国に申請を出すということが一応前提とされているわけですけれども,2項の方はそうではなくて,もう別の国に,要請をする国の方に既に国内事案として,国内事案としてというのは正確じゃありません。要求する嘱託国の方に事案として係属しているものについて,一定の財産の探索とかその他のことをほかの国に要求するということができるかという問題でございます。これについては,そもそもそういうことをこの条約で決めておくのが必要であるか,適切であるかという疑問もありまして,そういう疑問も,日本も含めてですけれども,幾つかの国から出されたわけです。   それからもう1つは,1項においては,6条2項の何号,何号と項目を列挙しているわけですけれども,2項についてはそういう列挙はございませんので,それはしなくてもいいのかという疑問も出されたところでございます。   これについては,結局結論は出ないままで,括弧に入れたままで文言も変えないままということになりました。例えばアメリカは,こういう必要性は非常に高いということを言っておりまして,かつ,これはあくまでも受けた側が裁量でそういう手伝いをしてあげるかどうかを決められるので,入れておいても有害ではないじゃないかという意見が例えばアメリカからは出されておりまして,それも一定の支持がございますので,この点についてはどちらとも結論が出ない状況で先送りということになっております。   それから8条「中央当局の諸費用」でございますが,これについては前の草案の8条2項には,報告書の8ページの上の方に小さい字で書いてありますような条約草案が入れられていたわけですけれども,これが削除されました。これは何を決めていたかというと,一定の場合には有償で費用をとっても構いませんという例外を決めていたわけですね。一定の場合というのはどういうのかというと,要するに6条2項でいろいろ列挙されているわけですけれども,通常行う業務プラスエクストラで何かやってあげる場合,それより高いレベルのことを行って上げる場合には費用を取ってもいいですよという規定があったわけですけれども,これはいろいろ混乱のもとだろうということもございまして削除されました。   それで,基本的な原則は変わってないのです。つまり基本は無償である。しかし特別のサービスについては有償とすることはあり得るという,その考え方自体は変わってないのですが,その表現の仕方として,前の草案の8条2項のような規定があると,6条の方は先ほど申しましたように各国がいわば裁量でどういうサービスをするかのレベルを決められるわけですので,そこをわざと低くしておいて,ほかの国は普通無償でやっているようなことをうちは有償ですということにする,そういう根拠を前の草案の8条2項が与えることになってしまっても具合が悪いのじゃないかということで,この点はそこを削除して,基本的な考え方は変わらないけれども,そういう有償化のきっかけになりそうな文言は一応削っておいた方がいいのじゃないかということで削ったということでございます。   しかし,じゃ具体的に何が有償でなにが無償になるのかということについては,これは一律にはもちろん決められないわけですけれども,解説レポートの中で大体の相場といいますかというものを考えて説明しておくべきではないかということで,おそらく解説レポートの中で少しこの点については具体的説明がなされるのではないかと思われます。   以上が2章の関係でございます。   次,3章ですが,これはタイトルが「中央当局を介する申立て」というふうに,「中央当局を介する」という文言を付加する形で変更されました。これは,3章が決めている申立てが中央当局を経由して,介してなされる申立てであるということを明示するためにこういう文言を入れたということで,内容,実質を変えたという趣旨ではない,今まで考えていたことを明らかにするという趣旨でこういう変更が加えられたということでございます。   それから,新しい条文案として13条bisという,13条の後にある条文が加えられました。これは,この条約でいろいろな申立ての仕方その他手続が決められているわけですけれども,これとはほかに,各国の国内法に基づいて手続を行うことをこの条約が排除するわけではないということを注意的に規定したということでございます。   それで,幾つかの条文につきまして簡単に触れておきたいと思いますが,9条につきましては先ほど嘱託国の定義の話でお話をちょっと申し上げましたけれども,これは実質は変わらないのですが,書き方を少し変えているということでございます。   それで,申立人の居住する締約国の中央当局を介して申立てをするというのが,これが原則であるということがここで書かれているわけでございます。嘱託国という言葉はここではもう使わないということになりました。ただし,ほかのところで嘱託国という言葉はなお条文中に残っております。   それから10条なんですが,これは前の草案と少し体裁を変えております。前の草案は,1項,2項の2項立てになっていたかと思いますけれども,それぞれの中で受託国の,受け取る側の管轄規則に従うこととか,あるいは受託国の法律に従うことという限定,制約をそれぞれの項の中で書き込むということにしていたわけです。しかし,規定の体裁からいうとどうもすっきりしないということもございまして,今回の草案では,3項の方に今の2つの制約を独立させて置くということにいたしました。つまり3項では,「この条約に別段の定めのない限り,第1項及び第2項の申立ては,受託国の法律に基づいて決せられ,」それからここに列挙してある申立てについては,受託国の管轄規則に従うということを書いたということでございまして,実質は基本的には変わっていない,体裁の問題であるということだろうかと思います。ただ,前の草案ですとちょっとあいまいなところがございましたので,ここで一応この形式を変えたということでございます。   それで,10条は申立ての種類を列挙してあるわけですが,これにつきましては,まずa号ですけれども,これは前の草案では締約国でされた決定の承認又は承認・執行ということだったわけですけれども,この締約国でされたという文言を削除しております。   これにつきましては,前の草案のドキュメントの脚注6というところに問題が提起されていたわけですけれども,この辺と関係するわけですが,ちょっと時系列に沿って申しますと,報告書10ページのところですけれども,これについてはアメリカが扶養権利者をできるだけ援助するというスタンスを非常に強くとっておりまして,その観点から非締約国の決定もこのa号の対象にすべきだということをおっしゃったわけですね。   しかしこれにつきましては,どうもアメリカの側に誤解があるのではないかということが指摘されて,それは何かというと,もしここで非締約国の決定を入れたとしても,この条約で16条1項で,ごらんいただくとわかりますけれども,承認・執行をこの条約に基づいて,スキームに乗せて決定・判決の承認・執行をするというのは締約国の決定に限られているわけですので,非締約国の決定をこうやって中央当局を介して申立てをしても,これはこの条約に基づく承認・執行の対象になるわけではないということだったわけですね。   アメリカはその点ちょっと誤解をしていたようなんですけれども,それでもということで,それはわかったけれども,とにかく転達だけでも,単なる転達だけであっても扶養権利者を手伝う,援助するという観点からはそれもやってほしいということを再び主張されまして,それについては幾つかの国が賛成するということで,若干疑問を提起する国もあったのですが,結局議長はこれは入れておくということにされまして,ここに入っている。入っているというのは,要するに締約国に限定しないという形の条文のつくりになっているわけです。   それから,あとはg号ですが,「未払金の回収」というのですが,そもそも未払金の回収というのはもともとの決定の中に書かれているはずなので,というか,それの執行の一部であるはずなので,別の項目立てをする必要はないし,あまり適切ではないのではないかということで,これは日本もそういう意見だったと思いますが,それが日本以外からも少し出ました関係で,結局括弧に入れて,ここは珍しく括弧をとるのじゃなくて入れるということになって,あとは起草委員会でちょっと検討するということになっております。しかし,実質は余り変わらない。変わらないというか,未払金の回収についても申立ての対象となる。それは本体の決定の承認・執行としてなのか,あるいは特別の独立の項目としてなのかは別として,実質は変わらないということになるのだろうかと思います。   以上が10条関係です。   それから11条です。11条は先ほど申し上げました4つのポイントのうちの1つでございますが,これは先ほどごく概略のことを申し上げましたけれども,申立ての仕方といいますか,内容につきまして,書式を決めて,その書式によって申立てをさせるということにしようということなんですが,その申立ての書式を必ず使用すべきマンダトリーなものにするか,それとも任意的なものにするかということについて,前回の委員会では意見が半々ぐらいですかね,分かれていたところなんです。   ところで,これにつきましては,フォームに関するワーキンググループというのがございまして,それが今日お手元にお配りしていると思いますけれども,プレリミナリードキュメントの17というものを出しております。ちょっと見ていただきたいのですが,資料番号でいきますと41番になりましょうか。41番,この英語版がお手元にいっていると思いますが,フォームのワーキンググループは実際のフォーム案も含めましてこういう報告書を出されているわけです。   それで,フォームのワーキンググループの意見は,ここで決めるフォームについては,もちろん全部というわけじゃありませんけれども,主要なものについてはマンダトリーな,つまり義務的に使うものにすべきであるという意見をかなり明確に出しております。   その理由といいますか,背景なんですけれども,これも今日席上で配っていただきましたけれども,i Supportという,インフォーメーションドキュメントというのを今日,番号がついてないものでお配りいただいたかと思いますけれども,左上にインフォーメーションドキュメント№1と書いてあるものです。恐縮ですがちょっと今見ていただけますでしょうか。   開いていただきますと,コンピュータの画面らしきものが幾つか出ていると思うのです。特に最後のページあたりですかを見ていただくと,i Supportというしゃれた名前のシステムを,これはヘーグの事務局と,それから事務局にセコンドメントというのが来ているのだと思いますが,カナダから来ているITの専門家がいらっしゃるそうで,その方が協力してこういうものを開発中であるということでございます。   これがなぜ書式と関係するかといいますと,要するにへーグの事務局が考えていますのは,この条約ができた暁には,各中央当局間でケースマネージメントを1つのコンピュータといいますか,1つのシステムに載せて,各国が協力してそのコミュニケーションのやり取りも含めて,1つのシステムの中で動かそうということを考えているわけですね。例えばある国が,こういう申立てがうちの居住者からありましたというときに,それを自分のところのコンピュータに打ち込んで,このi Supportに載せると,そのあて先の国の中央当局に瞬時にそれが伝わって,もちろんそのときにどういう内容がどういうふうに伝わるかというのが重要なわけですけれども,それをフォーマットとしてつくっておいて,それが瞬時に伝わる。それを受けて,受けた側の中央当局が必要な措置をして,それがリアルタイムでお互い中央当局間のやり取りをしながらこのケースをマネージメントするということを考えておられるようで,それについてのi Supportという,このケースマネージメントシステムが,まだ開発途上なんですけれども,かなり具体化してきているということのようでございます。実はこれ,席上で一部,どういうふうに動くかというのを,画面を使って,コンピュータをスクリーンに映してやってくださいまして,結構おもしろかったのですが,実はこの○○さんという一等書記官がヘーグではこの件を担当されているのですけれども,彼と話しましたら,まだ開発途上なんで,先ほど見せた画面というのは偽物である,例えば本当にリアルな名前が,マリアンヌ何とか,幾つもケースが出てきて,本当にやっているのかなと思わせるような状況だったのですけれども,もちろんそれはうそで,仮の例としてつくっているのだけれども,リアルなイメージを持ってもらうためにそういうものをつくっているということで,もしよかったら日本からアクセスして,その関係の皆さんに見せるようにしてあげてもいいですよと言ってくださったのですが,とりあえず今日はその余裕はありませんので,もし必要であればそういうことも,つまりどういうふうに動くか,実物も例としてごらんいただくことは可能だということのようでございます。   こういうふうにi Supportという形で効率的なケースマネージメントをしたいというのがヘーグの事務局,それからこの条約を推進している幾つかの国の希望でございまして,その関係でいきますと,書式を統一しておくというのは非常に重要不可欠になってくるわけですね。そのことが多分一番大きいのだろうと思うのですけれども,今回の委員会ではかなり強い書式義務化の意見というのが出されております。これは例えばアメリカは特にその最右翼なんですけれども,それだけではなくて,ECも,ECというのはヨーロピアンコミッションですね,それからヨーロッパ諸国もカナダも,それからヘーグ事務局ももちろんということで,かなり多くの代表というか勢力がこの義務化の方向で考えるべきであろうということを強く打ち出してきているという状況でございます。   もちろん,義務化するには幾つか問題点があって,大きく分けて2つほど問題点が指摘されているかと思いますが,1つは書式を義務化したときに,つまり条約の一部としたときに,その修正の手続が大変で,柔軟な対応ができないのではないか。柔軟な訂正やアップデートができないのじゃないかというのが1つ。もう1つは,やはり各国に任せるべきところもあって,余り細かいところまで統一してしまうのはいかがなものかという意見と,2点挙げられるかと思います。   そういう意見も日本を含めた幾つかの国から出されたわけですが,しかし最初の方の,つまり修正が容易でなくなるのは問題ではないかという点につきましては,これはヘーグの事務局によると一定のやり方をとればフレキシブルに,柔軟,迅速に書式を改正するということが,義務化をした上でも法的に可能ではないかということで,その方式を今探っているところだということで,何とかなりそうであると。具体的にどういうふうにするのかは説明がありませんでしたけれども,何とかなりそうであるということが言われておりました。   それで,各国に任せるべきだというのは,確かにそういう意見はあるけれども,迅速なケースマネージメントを考えると,そこは一定程度統一することはやむを得ないのじゃないかという意見が強くなっているという状況でございます。ですから,これについては今後どうなるか,ちょっとはっきりはわかりませんけれども,かなり強い方向として書式義務化ということが提案されるという可能性が強いのではないかと予想されるわけであります。   これが書式の話で,ただ現草案としては,今申し上げましたアップデートの仕方等につきまして検討をこれから細かくするということもございますので,結局現草案としては両案併記というままにしております。そしてその上でどういう内容を申立てに含めるべきか,それは義務的であるかあるいは任意的であるかは別としてということですけれども,につきましては,一応第1案に挙げてある,つまり任意的なものであるというときに何を入れなければいけないかということが現草案には出ているわけですけれども,それについて幾つか議論があったところでございます。   それで,これのうちのb号に,申立人の「住所[を含む連絡先]」というのがございます。これも結局今そのままに残っている。ブラケットが残ったままになっているわけですけれども,これは申立人の住所その他の連絡先を書くことで受託国の中央当局が申立人に直接連絡をとることがあるかもしれない。必ずとらなければいけないということはまずないわけですけれども,とることがあるかもしれないときに便宜であろうということからこれに入れられているわけですけれども,ただ,個人情報の保護といいますか,特にドメスティックバイオレンスの関係で申立人,主として子どもとか妻とかだと思いますけれども,の住所や連絡先,特に連絡先というものを明らかに,余りそうやって書いてしまって明らかにするということについては消極的に考えるべきではないかという意見も強かったわけで,結局この点はまた後日検討するということで,括弧を残したままということになっております。   それから,幾つかブラケットを外したものもありまして,これは報告書の12ページの上の方に書いてございますが,1項f号・g号,それから2項c号については括弧を外しております。これらは特に問題がなかろうということだったかと思います。   それから,9条から11条をちょっと見渡したときに,特に全体的な構造の問題として少しわかりにくいところがありますので,その点についてちょっと触れておきたいと思います。   それは,報告書には書いてないのですけれども,ここで言う申立てのあて先がどこかということ,それから申立てをした場合に中央当局がどういうメカニズムで援助をするのかという問題であります。これについては対処方針でこの点について不明確なので,クラリファイを確認,明確化を求めるということで,一応聞いてはみたのですけれども,先ほど申し上げましたように直接のはかばかしい回答はなかったという状況でございます。   しかし全体の雰囲気といいますか,皆さんの漠然とした理解としては,これはこの10条で言います申立てが今幾つかあるわけです。例えば典型的なのは決定の承認あるいは決定の承認・執行なんですけれども,こういう列挙されている申立ては,少なくとも最終的には受託国の権限ある当局,例えば裁判所とか,あるいは行政当局の場合もありますけれども,中央当局そのものではなくて,最終的にその承認や執行を決めることができる権限ある当局に向けられたものという,そういう理解のようでございます。そして,それをしかし中央当局を介して行う,そういう申立てを中央当局を介して行うということなわけですね。そうなると問題は,そういう申立てを受けた中央当局が,先ほど6条で幾つかこういう援助をするというのが並んでいましたけれども,あれをどういうメカニズムで行うのか,つまり,こういうことをしてくださいと中央当局に申立人が頼んだからするというのか,それとも一般的な決定の承認・執行の申立てが出されたら,それを実現するために必要だと考えられる援助の仕方,例えば義務者の住所を探す,どこにいるか探すとか,あるいは義務者の財産がどこにどうあるかを探すとかいうことを,つまり中央当局が職権でといいますか,按配して自分の方でやるということになっているのか,そこがちょっと不明確なんですね。一応全体,ここはまた確かめなければいけないと思うのですけれども,確かめようとしたのですけれどもうまく果たせなかったので大変申しわけないのですけれども,全体の雰囲気としては,今申し上げましたように,申立て自体は最終的には受託国の権限ある当局,裁判所とか行政庁に向けられたものであって,それを中央当局が受け取る。中央当局が転達その他をすると同時に,必要な援助を特にスペシファイされなくてもやってあげるというような雰囲気で皆さんは理解しているのではないかというのが一応私の理解であります。   ただ,それで本当にうまくいくのかということはなお疑問ですので,この点についてはなお確認その他が必要かと思います。その点余りはっきりしなくて申しわけないのですが,大体以上のような理解ではないかという感じでございます。   これが11条までですね。そして12条ですが,これは中央当局を介する申立て及び事案の転達,受理・処理ということで,中央当局を介して申立てがなされた場合の処理といいますか,中央当局の行う事案そのものについての処理について手続等を決めている状況です。   それで,ここでは4項と8項というのが前の草案では括弧,ブラケットに入っていたわけですけれども,それを外しております。これは余り大きな議論はなかった,詳しい議論はなかったかと思うのですが,事案処理とかあるいは中央当局間のコミュニケーションを迅速,確実にするためには,こういう規定も入れておいた方がいいのではないかということだったろうと思います。   4項は,要するに中間報告といいますか,処理状況を受けた方が報告しなければいけない,つまりほっぽりっぱなしにしてはいけない。一定の期間内に,ここは3カ月ですけれども,処理状況を返答しなければいけないというものなわけですね。これは例えばニューヨーク条約では,運用の段階で受け取った国がそのまま放置してといいますか,要するに何もしないで非常に処理が遅れているということが幾つかの国については行われている状況で,そういう懸念がありますので,一応受け取ったら3カ月以内に一定の報告をせよということで,きちんと処理をするということにしたいということであろうかと思います。   それから12条の8項なんですが,これも括弧から外しております。これについては,8項が要件が満たされていないことが明らかである場合にのみ拒否できるということを言っていて,こちらの対処方針としては,この内容がどういう場合に拒否ができるということであるのかということが明らかではないので,これについて少し確認を求める必要があるということだったわけです。   これについても一応議場で聞いてはいるのですけれども,余りはかばかしい答えがない。外形から判断できるもののみであって,中身について判断をする,例えば承認・執行の要件があるかないかとか,そういうことではないですねという,そういう聞き方をしたのですけれども,恐らくそうだろうというぐらいで,この点については余りはっきりしないのが,申しわけありませんが状況です。   ただ,ほかの議論のところで,中央当局が行える判断の質というか程度というか,というものについて議論があった段階で,中央当局ができることというのは非常に限られている。例えば承認・執行の要件があるかないかというようなことは中央当局が判断できる問題ではないし,判断して適切な部署ではないというのが一応皆さんの考えのまず前提にある考えのようでございましたので,内容にわたって非常に詳しいところまでここで審査できるということではない,明らかに外形からわかるものだけということであろうという一応の理解でございますが,この点についてはなお確認が必要な状況かと思います。   それからあと,この12条に関しましては,2項が転達の話を決めています。これにつきましては,翻訳をしてないのですけれども,条文案の一番最後に転達様式というのが英文でもフランス文でもついておりますので,ちょっとだけ見ていただけますでしょうか。   条文案ですから,資料番号の38-1と2というのがフランス語版,英語版ですが,それらの最後の方,25ページ以降にこの転達様式の案がついております。これは,転達の場合にこういう書式を使って転達をするということで,この様式は必ず使うということに今の条文,現12条でもなっているわけですね。それとあと,3項で受領様式,つまり受け取った側が受け取りましたという受け取りを出すということも,これまでのニューヨーク条約等の運用にかんがみて,そういう書式も決めておいた方がいいだろうということで,その書式も一応つくっております。   それは,今日の資料番号で41番のプレリミナリードキュメントの17,書式ワーキンググループの報告ですけれども,それの8ページにAcknowledgement Formというのがありますけれども,これがこの12条の3項の受領についての,受け取りましたという受け取りの書式の案でございます。これはしかし,今のところは義務的,必ずこれを使わなければいけないか,それとも別の様式で受け取りましたと言えばいいかということについてはなお今後議論するという状況でございます。これが12条ですね。   それから,13条に参りますが,これは先ほど申し上げました幾つかの重要なポイントのうちの1つです。   それで,13条は,先ほど簡単に申し上げましたけれども,要するに扶養権利者が容易・迅速に扶養を受け取れるようにするというためには,要するにこの条約のシステムを絵に描いた餅にしないためにはこういうことが必要であるということで,条約の推進に熱心な,特にアメリカが強く言って入ってきているものでございます。アメリカばかりでなくて,ヨーロピアンコミッションとか,あるいはカナダ等も,この13条というのはこの条約全体の中で非常に重要な条文であるということを強調しております。   それで,前の草案の13条というのもかなり詳しくこの点について決めていたわけです。けれども,それらの国,推進側といいますか,米国,EC,カナダ等に言わせると,前の草案でも不十分である。不十分というのは,権利者の容易な扶養料取得のための援助としては不十分であるということを強調しておりまして,例えば法律扶助のための資産テスト,つまり資産がどれ以上あれば法律扶助をしない,どれ未満であれば法律扶助をしますという資産テストがあるわけですけれども,これを子どもの扶養については一切廃止すべきであるという意見が例えば米国からは出ているわけですね。米国の代表に言わせると,ミーンズテストと言っていますが,資産テストが行われるとすると,アメリカの市民,アメリカに住んでいる人はほとんどの場合,かなり低い所得の人たちであっても,ほかの国でこのミーンズテストに引っかかってしまって法律扶助を受けられなくなるという見込みである。それでは何のためにこの条約をつくるかわからないので,これはミーンズテストを一切廃止するか,あるいは非常に低いバーにするか,とにかく実質的に扶養権利者が楽に扶養料を回収できるような,そういう仕組みをつくらなければ意味がないということを強調されているわけです。   それで,そういう提案が幾つか出たわけですが,それは口頭でなされたものもございまして,そこで議長は,アメリカ,カナダ,それからヨーロピアンコミッション,ECに,そういう提案があるのだったらもう少し具体的にたたき台になるようなものを書面で出すようにということを指示しておりましたが,それは書面は会期中には出てきておりませんので,今後出てくる可能性があるということだろうかと思います。   他方,日本あるいは幾つかの国,中国,イスラエル等,幾つかの国からは,この13条の規定というのは,前の草案についてですけれども,各国の財政事情等とも関係して,それから国ごとにどれだけのことができるかということはかなり違っているので,結局各国の国内法に委ねるべきであって,余り条約で細かいといいますか,強い義務を課すということは適当ではないのではないか。余りそれをしてしまうと,結局条約として受け入れる国が少なくなってしまうのではないかということを述べました。   しかし,これは報告書の13ページにちょっと書いておきましたけれども,議長は,日本がリトンコメント,書いたコメントでそういうことを書いて出していたわけですけれども,これは極めてラジカルな意見であるということ,余り意見を述べない議長で,まとめ役に徹していたのですけれども,珍しく,これは結構はっきりと,ラジカルな意見ですねというのを,半分冗談ですけれども,言っておられました。   それからもわかりますように,全体の雰囲気としては,これは13条を今より低める方向に持っていくというのは,低めるって,義務を低めるですね,方向に持っていくのはかなり難しい状況になっているのではないかという気がしました。むしろ,まだ書面が出ていませんが,ECとかアメリカとかカナダが言っているような,よりアクセスを容易にする,実効的な利用をさらに強めるという方向の意見が強くなってくるということは予想されます。したがって,この点についても少し考えておく必要があるのではないかという気がいたします。   それから,前の条文の5項について,これは確かに変な規定なので,一応意見は日本から出しておきました。というのは,5項なんですけれども,これは決定国で部分的な法律扶助,免除を受けた者について,受託国で最も有利な法律扶助,広範な費用免除をすべきであるというので,もともとが部分的だったのに一番広範なのをしなければいけないというのはおかしいじゃないかという,大変リーズナブルな議論だと思うのですけれども,それを申し上げましたけれども,これは特に反応はなかったという状況でございます。   これが13条関係ですね。   それから,引き続きまして,4章は1条しかございませんが,14条について触れさせていただきたいと思います。   これは扶養義務者が手続を開始するのを一定の場合に制限しますという規定です。つまり,基本的にはある決定があるときに,決定を例えば変更するとか,扶養料を減らすとか,あるいは扶養の義務をなくすとか,そういう方向で義務者の方としては義務は軽くなる方向への修正をしたいということがもちろんあるわけですけれども,それはもちろん状況の変化に応じて当然あり得べき手続なんですが,しかし一定の場合にはそれを義務者がある国で行うことは禁ずる,制限する。どこかほかの国でやるということにすべきだという,そういう規定でございます。   これは,まず全体的な話としては,そもそも,要するに直接管轄の規定がここだけ入っているわけですね。普通の直接管轄の規定はもう入れられないということであきらめたわけですが,義務者からの手続開始の管轄については一定の場合に制限するという意味での直接管轄の規定がここだけ入っているわけです。   これについては,直接管轄の規定をここだけ入れるのはちょっとおかしいのではないかということで,一応意見を日本からは言ったのですが,これについては14ページの2段落目,上の方に書いてあります。という疑問は一応呈したのですけれども,大勢は,これは扶養権利者の保護のためには一定の場合に新規の決定とか決定変更を扶養権利者の常居所地で行うことにして,それ以外の国では行わないということにすることに合理性がある。したがって本条は必要であろうというのが意見としては大勢ということでございます。   日本は,どうしてもこれは削除せよということまでは言わないということでありまして,もしこれがどうしても必要だということであるならば,前草案の脚注20にあったのですけれども,「条約に基づいて当初の決定が承認又は執行され得る他の締約国において」という文言を付加すべきであるということを申し上げましたが,というか,書いたコメントでも出しているわけですけれども,これとの関係で,ちょっと前へ戻って恐縮ですけれども,報告書の13ページのところで,ECから提案が出されまして,それが一応今回の条文に2項のd号として入っています。   これは,1項の方で--すみません,その前にちょっと,条文のタイトルと章のタイトルなんですが,前の草案では,報告書14ページの下の方に書いておきましたけれども,扶養義務者による手続開始の制限,あるいは扶養義務者による手続の制限というタイトルにしていたのですが,実質は変わらないのですが,文言の扶養義務者によるというのは削除されました。これはアメリカがどうしてもそうしてほしいと言った影響でございまして,中身は変わらないのだから余り変わらないのじゃないかと思うのですが,とにかく扶養義務者による手続を制限するというのがタイトルに出ていると,これは被告,原告といいますか,両当事者の平等にセンシティブなアメリカの観点からいうと好ましくないタイトルのつけ方であるということで,タイトルだけでも外してくれ。中身は変わってないので余り変わらないのじゃないかという意見もあったのですけれども,そういうなら,外しても別に中身が変わらないのでというので,「扶養義務者による」というのは削られております。   それは中身と余り関係ないのですが,ちょっと前後して恐縮ですが,報告書13ページに戻りまして,ECの提案として,1項で一定の場合には扶養義務者が扶養権利者の常居所地以外では手続の開始はできない,つまり減額せよとか免除せよということを求めるような,そういう訴えは出せない,訴えというか,そういう手続を開始できないという規定で,その例外として2項に,それができる場合というのを列挙しているわけですね。その中にa,b,c号とあったのですが,d号を今回ECの提案に基づいて入れるということになったわけです。   それで,d号はどういうのかといいますと,「決定国でされた決定が,新規の決定又は決定の変更の手続が求められる締約国において承認又は執行できない場合」というわけです。これは,ある決定国でされた決定が,その扶養義務者が決定を求めようと新たに決定を求めたり,決定を変更してもらいたいということを求めるような国で承認・執行されないような場合には,これはその扶養義務者の申立てというのを認めることに意味があるというか,認めないと不適切であるという観点で,日本も実質としてはそういう同じ意見だと思いますけれども,ということでこういう号が入れられたわけです。   これについては,実はいろいろ議論がありまして,報告書の14ページの上の方にちょっと書いておきましたけれども,承認・執行できないような国では,結局その決定というのは存在しないのと一緒なので,扶養義務者から新たな決定や決定の変更を求めるということは考えにくいのではないか。つまり扶養料を払えということを命じられていない国の中で,新たに扶養料を払わなくていいとか,あるいは少し低い額の扶養料にするということを求めるという,そういう手続をするというのは,実際上余り考えられないのじゃないかという意見が,これはコモンウエルスの代表が○○さんという学者ですけれども,から出されて,ECは確かにそうですねということだったのですけれども,ただ,EUの諸国の中には,裁判を求める権利との関係で,裁判を求める権利を制限する規定についてはセンシティブな国も多いので,実務上余り関係ない,あるいは理論上余り考えにくいじゃないかというのはわかるけれども,とにかく入れておいてほしいということを言っておりました。とにかくそれで強い実質的な反対はなかったので,このd号が入れられたという状況でございます。   それからあと,文言上の修正で,先ほど申し上げました「扶養義務者による」というのをタイトルから削ったということと同時に,もう1つ,これは日本語の翻訳では反映してないのですが,英文,フランス文,両方とも,扶養義務者が手続を開始できないという,前の草案ではそういう文構造の文を使っていたのですね。これについてはECの代表から,扶養義務者があたかも条約の名宛人であるかのようなニュアンスでおかしい。むしろこれは国が条約の名宛人なので,受動態にすべきであるという意見が出まして,英文,フランス文とも受動態に直しております。ただ日本語ではなかなかそのニュアンスを自然な日本文で出すのが難しいので,一応今のところこの点の翻訳には反映しておりませんが,そういう文言の変更があったということでございます。今の点は報告書の14ページの下の方に書いてあります。   以上が14条,4章のところです。 ● それでは,御報告の途中ではありますけれども,休憩を取らせていただきたいと思います。            (休     憩) ● 再開させていただきます。   では5章からお願いします。 ● それでは,報告書の15ページ以降でございますが,5章のところです。承認・執行ですが,これについては幾つかの条文をこの報告書の順に一応触れておきたいと思います。   まず,16条,それから18条も関係しますけれども,幾つかの点について議論と若干の変更がございましたが,まず常居所という概念をここでは使うということになったということでございます。   これは,前の草案では16条のところでレジデンスとハビチュアルレジデンスというのをブラケットを使って併記している状況でした。つまりどちらにするかを決めていない状況でした。これについて今回は,これを常居所のみにするということでブラケットを外すという変更がなされました。   この点につきましては,アメリカから,一般的な話として,常居所地概念というのは混乱をしているので,できるだけ使わない方がいいという,前からの主張ですけれども,が繰り返されましたが,これについては,ここの承認・執行の前提としての全体問題を考える上の居所か常居所かの話ですが,これについては常居所にしていいのではないかという反論がEC等からなされまして,アメリカも一定の条件のもとにそれでもいいということを認めましたので,常居所のみに変更したという状況です。そのあたりの経緯は報告書の15ページに書いてありますけれども,居所,レジデンスだけとしてしまうと,短期の所在も含まれる可能性があって,フォーラムショッピングのおそれが大きくなるという点,それから常居所が混乱するといいますが,これは主として子奪取条約との関係でアメリカの判例が常居所について山のように出て,整合的な理解が難しくなっているということであって,それは子奪取条約との関係で常居所がどこかというのが,まさに子どもを返すべきか,返さなくていいかということのキーになる概念ですので,争いのあるのが当然なのでたくさんの判例が出ているわけですけれども,今回のここの場面では,それがそれほど大きな争点にはなる危険はないのではないかという意見が反対側から出されたわけでございます。   それから,常居所地概念というのは個別の実質的な概念だという,そういう了解が昔からあるわけですけれども,ですから子奪取条約での混乱がそのまま持ち込まれるということはないのではないか,そういうようなことが言われまして,アメリカとしても,報告解説等でアメリカの懸念についてきちんと触れてもらえればそれで妥協してもいいということで,結局常居所を使うということに16条ではなったわけであります。   それで,16条に関しましては,今の常居所か居所かという点のほかに若干の議論がありました。それで,まずd号ですけれども,これにつきましては1つは,これは報告書にはちょっと書いてございませんけれども,このd号の意味するところが必ずしもはっきりしないということで,内容の確認をいたしました。   それは何かというと,今回の翻訳では「決定によって扶養を受ける子が手続の開始時において決定国に常居所を有していた場合であって,相手方がその国においてその子と一緒に暮らしたことがあるとき又は相手方がその国に居住してその子を扶養したことがあるとき。」と,「ことがあるとき。」と訳しております。前回ちょっと私の訳が変だったのですけれども,ご指摘いただきましてこういうふうに直しましたが,これはどういうときにこの要件が満たされることになるのかということなわけですね。   それで,これについては一応その内容,つまりどの時点で一緒に暮らしたり扶養したことがあればいいのかということですけれども,これは聞きましたが,公式には特に回答がなかったのですが,その後何人かの代表と非公式にといいますか,雑談半分のときにいろいろ聞いてみますと,普通の理解は,これはどこかの時点で過去に一緒に暮らしたことがある,あるいは居住して扶養料を払ったことがあるということで,どこか過去の時点で1点それがあればこれに該当するというのが通常の理解のようでございました。   ところで,このd号に関しましてはカナダが反対の意見を表明しております。それは何かといいますと,反対といいますか,これだけでは管轄が認められないことがあり得るので,d号も留保の対象にしてほしいということを言いました。これは結局結論は出なかったのですが,カナダの説明によると,こういう,d号に掲げられているような事実関係では必ずしもカナダでは管轄が認められるとは限らないと。ECの代表は,いや,そんなことないでしょうと言ったのですが,いや,そんなことないと言ったって,そんなことあるんだということで,結局議長は注にそれを書いておく,ただしd号はそのまま留保の対象にはここではしないけれども,一応そういう意見があったということを脚注に書いておくようにという,そういう指示をしております。   それからe号,f号については,これは前の草案でも全体がブラケット,括弧に入っておりましたけれども,今回もそのままということになっております。これについては,報告書の16ページの真ん中あたりにありますが,ECが一定の案を出しまして,そして括弧を外してほしい。つまり一定の修正をするけれども,そのかわり受け入れてほしい,そういう提案を口頭でいたしましたが,文書の方が議論がしやすいということで,文書で出すようにということで,その案自体については特に議論をしないということになっております。ですから次回までにこのe号,f号について,16ページ真ん中にあるような趣旨の修正提案がECから出る可能性はあるということでございます。   それから3項のいわゆるfact-based approachというものですが,これについては前回ここでも議論いただきまして,日本からは,ここで3号で書かれているfact-based approachと言われるものは,通常行っていることを言っているだけなので,特にこういう条文を入れる必要はないのではないか,あるいは入れるのは適切ではないのではないかということを言ってみたわけですけれども,はかばかしい反応はございませんで,アメリカは,アメリカ側の権利者の常居所地という管轄を認めないということで,ここでいきますと1項のc号の原因を留保する予定なわけですけれども,それとの関係でアメリカは誤解を受けやすい立場にある,つまり扶養権利者の常居所があるというだけでは管轄を認めないという立場をとっているがゆえに,扶養権利者に冷たい国だと思われる,誤解を受けるおそれが大きくて,このfact-based approachで実際にやってみれば,多くの場合は何かほかの関係があるために管轄を認めていいという場合が多いということをとにかく宣伝したいということのようなんですね。そういう誤解を解くためにもこういうものを入れておいてほしい,入れておいた方が意味があるという,回答になっているのかどうかわかりません,回答がありまして,ほかの国も,入れておいても別に問題ないのではないかというような無言の意見が多かったようで,結局これはこのまま残るということになってしまいました。   それから,あと4項について,報告書では触れていませんけれども,こういう条項は不必要なのではないかということを,これも議場で一応申し上げたのですが,これについても議場では回答がなかったというのが状況です。   それで,非公式にいろいろな代表と話してみますと,確かにリダンダント,余計であって,これはなくてもほかの規定で同じことがカバーできるということになりそうではあるが,しかし,先ほど言いましたように2項で1項c号等の留保を行う予定の国が幾つかあるわけですね。特にアメリカがその中心ですが,そういう国にとっては,2項の留保によって悪影響がいろいろあるのじゃないかと思われがちなので,それはあまりやりませんよということを宣伝というか,はっきりさせるためにこういう条文を入れておくことには意味がある。まあ有害ではないでしょうというのが幾つかの人から聞いたところの感触だろうかと思います。これが4項です。   それから5項なんですが,5項については,アメリカから若干異論が議事の過程で出ました。それはどういう異論かといいますと,先ほど来繰り返していますように,アメリカは1項c号を留保する予定なわけですけれども,2項での留保ですか,その留保のゆえに承認されないときには云々と,そういう規定の仕方に5項はなっておりますが,これはほかの理由で承認できない場合と,2項の留保のために,例えば1項c号を留保したために承認できない場合とを区別して,アメリカによれば差別して取り扱うことなので,あまりフェアではないのじゃないかというのがアメリカの異論であります。   しかしながら,これは実際上の問題として,アメリカが扶養権利者の常居所地に間接管轄を認めないというのはヨーロッパの諸国にとってはかなり問題だと考えることなわけです。しかし憲法上の話もあるのでやむを得ないので受け入れるということなので,それのコンペンセーションとしてはこういう特別の規定を置くのもやむを得ないのではないかという意見が,特にEC,EU諸国から強く出されまして,結局アメリカもその点は妥協するということで,ただ18歳未満の子のための決定についてこういう取扱いをするということにしてほしいということで,ここで18歳未満の子のための決定という,そういう修正が行われました。   ただし,先ほど最初の方で述べました21歳というのを子の扶養の定義にする方向で考えているということもありますので,このあたりはまだ今後調整が必要になるかもしれません。つまり21歳か18歳かという点に関してですね。   それから6項ですが,これについては原決定が確定していないのにもかかわらず執行がなされるおそれがあるというか,そういう可能性があるような書き方になっていて,この点については問題があるのではないかという発言をいたしましたが,これについても公式には余りはかばかしい反応はございませんで,ただこれも廊下で休憩時間等に各国の代表,主だった人といろいろ話しますと,一般にどう思われているかという感触はわかるのですが,それはどういうことかといいますと,この16条6項の規定というのは,原決定国で効力を有して,それから原決定国で執行できる場合に執行できますというわけですよね。ということは,原決定国で,例えば確定していないけれども執行できるというような,そういう決定が出されている場合に,原決定国でなら執行できるけれども,海を越えると執行できない,確定しないということにする必要はないのではないか。むしろ原決定国でのその決定の処遇をそのまま外国でも受け入れてやっていいのではないか。その背景としてはもちろん扶養権利者がそれだけ容易に権利を得られる,扶養料を得られるようにしたいというポリシーはあるのだろうと思います。もちろん別の考慮としては,その国の中ではもちろん確定しなくて執行してもいいかもしれないけれども,海を越えてそれをやってしまうと,今度ひっくり返されたときにお金を巻き戻すというのは海を越えると面倒になるので,したがって原決定国では確定していなくても執行してもいいけれども,海外ではだめですよというポリシーももちろんあり得るわけです。日本はそれを一応とっているわけですけれども,そうじゃない考え方もあるというか,そちらの考え方の方がむしろ強いかのように思われました。これが6項に関するものです。   それから17条については,ちょっと報告書に書いてなくて申しわけないのですが,これは分割可能性とか,あるいは部分的な承認・執行の話なんですね。これは具体的なイメージがもう1つわからないので,日本としては具体例,どんな場合に分割可能で,どんな場合に部分的承認とか執行が行われるということを考えているのかということを確認したいということだったわけです。   これも一応議場で申し上げたのですけれども,何かそういう話ばかりで恐縮なんですが,結局はかばかしい回答はなく,要するに大人数ですので,国の旗を上げて順番に議長が指していくのですけれども,続けて何人もリストに載っていますので,発言した後,それについてすぐに答えるということは余りなくて,気がきいた人がいると,先ほどの質問についてはこういう答えですということを言ってくれるわけですけれども,そういうことも何回かはありましたけれども,あとは要するにずらずらっと行ってしまうわけです。今回の議長は比較的そういうことは生真面目な方で,こういう質問があったけれども答えが出ていませんということも何回かはあったのですけれども,しかし全部にわたって回答をきちんと求めるということはなかなか難しい状況だったわけですね。それで大変申しわけないのですけれども,この17条に関しましても,具体例等について質問はいたしましたけれども,これは公式の議場では特に回答はなかったという状況です。   したがって,補充のために非公式に休憩時間等にいろんなめぼしい人に聞いて回るということをするのですけれども,これについては結局非公式にもはかばかしい回答が得られません。余り皆さんイメージがわかなかったのではないかという気がいたしますので,なおこれについてはさらに質問,確認を今後するということでお許しいただければと思います。これが17条です。   それから,18条ですが,これについては結局最終的な変更としてはb号の括弧が外された。それからe号に若干の修正が加えられたというだけで,あとは前の草案と一緒です。   b号は手続上の差異ですね。fraudを拒否事由とするというもので,これは余り大きな反対もなくて,括弧が外れました。   それからe号ですが,これにつきましては,現草案のe号,書き方をちょっと変えていますが,前の草案から少し書き方を変えていますが,実質的に変えている部分というのはごく一部で,現草案で申しますと,e号のⅱのところの「決定の適正な通知を受け,かつ,事実及び法律に関する」というところが入れられただけです。あとは文言の構成の仕方は変えていますが,内容的には前の草案と一緒なわけです。   このe号につきましては,相手方の防御権の保障の観点から疑問であるというコメントが出されました。日本からも出しましたし,幾つかほかの国からも出されております。ただしこれについては,以前から議論があるところだったわけですけれども,行政庁が扶養決定を出すという国では,相手方の防御権というのは決定を出す段階では特に考慮しない。後から修正や不服申立てができるということにする。そうしないと行政庁のシステムとしては立ち行かない。何千件とやっているそうなんですけれども。ということがるる,カナダとかオーストラリアから説明がありまして,結局大きなポリシーとしては行政決定も今回の条約に載せるということはもう決められたことでありますし,行政庁の決定に関して相手方の防御権というのをこういう形で,ここを削除する形で保障するというのは現実的ではないという考慮もありまして,結局これはこのまま入れましょうということに議長の裁定といいますか,でなりました。ただし,一応不服申立ての事由の範囲が法律に関するものだけではなくて,事実に関するものも含めますと言うことで,そこは制限しないということで,それなりに相手方の立場に配慮するという,妥協といいますか,考慮が加えられたという状況でございます。   それから,次,19条で,これは先ほど申し上げた4つのポイントのうちの1つですけれども,これは行政協力ワーキンググループの報告書というのがお手元にいっていると思いますが,資料番号ですと43番です。この承認・執行の手続をどういうふうにするかということにつきましては,これは行政協力ワーキンググループの中でフローチャートを担当している国が幾つかございまして,カナダがその中心だったかと思いますが,そこからこういう表が出てきております。ちょっとごらんいただくと,この資料番号43の8ページ,9ページのところにANNEX Aというのがありまして,ここに1から11段階までのフローチャートが出ております。これが一応この条約のもとでの承認・執行の,この19条の手続が念頭に置いているフローチャートであるということなわけです。もちろんこれはまだ案ですので,あくまでもたたき台でありますけれども,大体こういうことを考えているということでございます。そして,これについて少し説明がございました。   そして,19条につきましてはあと,19条全体を通じまして少し用語の変更が,実質的なものにも及ぶかと思いますけれども,ございました。それは,報告書の18ページの上の方に書いてありますけれども,前の草案では,「承認及び執行され得るかを決定するために」,権限ある当局に送致する。あるいは中央当局そのものが権限ある当局である場合はその決定をするという書き方をしていたわけですけれども,これを「執行の決定の登録」あるいは「執行可能性の宣言」,そういう表現に変えております。   これは,承認・執行の各国での手続がいろいろあるようなんですけれども,決定じゃなくて登録による,登録を少なくともしてやるという,そういう国もあるので,それも含まれるようにこういう文言にするということのようであります。考えていることは前とそう変わっているわけではないということのようであります。   そして,19条につきましては,全体的な話として,先ほどちょっと重要なポイントの1つとして申し上げましたけれども,承認・執行の手続を19条はかなり詳しく,細かいところまで決めようとしているわけですね。これについては日本も含めまして幾つかの国から,そこに書いておきましたけれども,ロシア,中国,日本,イスラエル等でありましたが,これらの国から承認・執行の手続というのは,統一が必要な点もわかるけれども,できるだけ各国の国内法に委ねるべきではないかという意見が出されました。   それで,中国,日本で一応修正案のようなものも,共同提案みたいなものも出しましたが,ところがこれは米国,EC,EU諸国,常設事務局と,非常に強い勢力なんですけれども,これらがこぞって,ここのところは大変重要で譲れないという非常に強い立場を示しております。   どういうことかといいますと,これまでの例えばニューヨーク条約についてもそうですし,ほかのヘーグ条約の関係でもそうだと思うのですけれども,この手続を各国に委ねるということにしてしまうと,各国ごとに手続がかなり違って,条約のそもそもの目的が結局実効的に達せられないということがしばしば経験されてきている。そこで,特にこの扶養の決定というのは非常に特色があるわけですね。つまり,少額でしかも弱いといいますか,経済的・社会的に弱い人が請求をしている,しかも迅速・定期的な扶養料の回収が必要であるという特殊なものなので,これに合わせた手続を条約上できるだけ細かいところまで義務として決めておきたい。そうしないとうまくいかないはずだという,簡単に言いますとそういうことですね。   それで,例えばそこに書きましたけれども,○○さん,この件の常設事務局の責任者ですけれども,事務局次長ですが,○○さんもこの点について,ふだんは控え目で余り意見を述べられないのですが,この点についてはかなり強力なご意見を議場で述べておられました。そこに書いてあるようなことで,手続が統一されないと結局条約をつくっても意味がなくなるというのが経験上明らかであるということで,非常に強くこの点を推進したいということをおっしゃっておりました。   ということで,後で最後に述べますけれども,ここは今後,次回の特別委員会でこの19条も議論の対象になる予定ですけれども,かなり細かいところまで強制的な手続で統一するという方向が強く打ち出される可能性が高いと考えられますので,この点少し考えておく必要があろうかと思います。   それから,もう少し具体的に話してまいりますと,19条の2項に「送致」というのがあるのですね。この2項のa号に,先ほど述べましたけれども,受け取った中央当局は登録あるいは執行可能性の宣言のために,権限を有する当局に申立てを送致する。b号で自分が権限ある当局である場合,自分で決定するということですけれども,送致するというのがa号にあるわけです。   この「送致」というのが具体的にはどういうものであるのかということについて,必ずしもはっきりしないということで,これについても内容の確認をするということをいたしましたが,これも結局余りはっきりしなかったというのが実情でございます。何かはっきりしないのばかりで申しわけないのですけれども。   ただ,いろいろ聞いてみますと,イメージとしては中央当局に出された申立てをそのまま権限当局に送る。つまり中央当局が例えば新たに代理人になって申立てを起こすとか,そういうのではなくて,書類を左から右へ移すといいますか送るというか,まさに送致をイメージしているという場合が多いのではないかと思います。   それから,3項の関係では,職権コントロールをどこまで行うかということが問題になりました。それで,これについては16条,18条をコントロールの理由にするか,それとも18条a号の公序違反のみをコントロールの事由にするかという2つの案があったわけですが,現在もその案は両案併記のままでございます。この点についても議論が両方からありましたけれども,議論はこの点は平行線だったわけですね。この点については次回の特別委員会で議論がさらになされるという予定でございます。   それから,時間がちょっと少なくなってまいりましたので,あと少しはしょらせていただきますが,8項につきまして,報告書20ページですが,ECからの上訴は1回のみに制限するという修正提案がなされましたが,これについてはさすがに各国の憲法問題にも関係するということで,それは国内法に委ねるべきであろうという意見がむしろ多かったわけでして,結局その提案は通らなかったという状況でございます。   それから,もう1つ,9項に関係する,9項というか,書かれていないのですが,関係するのですけれども,執行判決といいますか,執行決定の確定が執行の前に必要なのではないかという意見がございまして,これは日本から出したのですけれども,これについては,まだ最終的な決定はないのだろうと私は理解しておりますけれども,特に議場での議論はなかったという状況でございます。この点も多分19条の次回の委員会でなお検討の余地があるのではないかと思っております。   それから,恐縮ですがちょっと急ぎます。20条は文書の話です。これは少しシステムを変えまして,これまで議論の中心だったのは,決定の原本が必要なのか,それとも要旨でいいのかということだったわけですね。これについては原本がないとだめじゃないかという国ももちろん,日本もそうですけれども,あるわけです。しかし他方,要旨だけでもいいという国もあって,結局どちらかに統一することは難しいということで,考え出されましたのが,この1項で原本が必要である,あるいは認証した謄本が必要であるということにしておいて,2項で宣言によって要約でもいいですよ,抄録でもいいですよということを言えるということにしましょうということで,これで両方とも,どちらの方向を主張している国も,自分の国に関しては望むようにできるということになるのではないかという,そういう案でございます。   それから,24条,これは報告書にございませんが,「子又は申立人の出頭」ですが,これにつきましては,子・申立人の出頭は要求されないというのが括弧に入っていて,今回はこの点は特に議論はなかったのですけれども,代理人等の出頭を求めるということを各国がすることはこれによって妨げられないということでよろしいですねという確認はいたしましたが,この点についても特にだめだともいいともいう反応はなかったという状況でございます。   それから,25条,これが先ほど申し上げた重要なポイントの最後の点ですけれども,公正証書・私的な合意の扱いで,これを決定・判決等と並んで承認・執行の対象とするかという問題があります。結論としてはこれはまだ括弧に入っていて,両方あり得るという状況になっておりますが,これについてはもう少し具体的に,どういう公正証書,あるいはどういう私的な合意というものを推進側が考えているのかをもう少しきちんと説明してほしいということで,議場でもカナダから一定の説明はあったのですけれども,それでもなお具体的によくわからないところもございますので,今後この点については,推進側からもう少し具体的な説明がなされるということが期待されるという状況だろうと思います。これは報告書の22ページあたりをごらんいただきたいと思います。   それと,申しわけありません,もう時間が押しておりますが,あとは6章に参りまして,27条「国内法による執行」ですが,この点については報告書の23ページにありますような議論が若干ございまして,カナダから一定のルールが出されましたが,結局それは認められませんでしたので,変わっていないという状況であります。   それから,24ページの27条3項のことですけれども,これは時効をどうするかという話で,これはそこに書いてありますように,現草案は扶養権利者により有利な扱いをするという点から,2つの候補があるうちの長い方をとるということにしているわけですね。しかしこれについては双方の立場の国から意見がそれぞれ,自分の方がいいというのがございましたのと,それからより長いというのが実際には結構中断とか停止とかあるので,解釈問題としては面倒なのではないかという指摘等もありましたので,なお準拠法のワーキンググループで検討するということになっております。   それから,29条の「執行措置」ですが,これについては変更は結局なかった状況です。こういう列挙はしないほうがいいという国もございましたが,基本的には例示列挙で拘束力はないので,有害なことはなかろう,挙げておいてもいいのじゃないかという意見がむしろ多かったと考えられます。   それから,32条,7章の「公的機関」ですけれども,これにつきましては,償還請求の法的性格につきまして日本から質問をしました。これは法制審でも御議論いただいたところですけれども,これについてカナダや米国からは,これは代位であるという反応がありましたが,そのほかにイスラエルからは,日本がそういうことを--日本の主張そのものではありませんけれども,日本の質問からわかることとして,公的機関だけではなくて私人にも代位を認めるべきであるということを強く主張をされておりました。これについては,しかし,私人が代位できるという,それでこの条約を使えるということについては,ほかに余りサポートはなかったのですが,一応議長はこの点,脚注に入れるようにと指示をしておりました。しかし,現草案は多分最後の方でちょっと,起草委員会も疲れていたのだと思うのですけれども,この草案にはその脚注は反映されていない状況でございます。   そのほか,重要な点としては,8章に参りまして,「個人情報」の33条,34条,35条のあたりで若干の議論がありましたが,これはまだその議論が現草案に反映されておりません。   それから,言語・翻訳,39条,40条につきましては,日本からは,言語の問題については,日本であれば日本語で裁判所に出さなければいけないのが原則であるというようなことを申しましたが,この点については特に反応がなかったという状況であります。   それであと,「不統一法国」の話,41条,それから「他の条約・国際的協定との関係」につきましては,不統一法国の方は特に申し上げることはないと思うのですが,42条のところにつきましては,常設事務局の○○さんからこの点についての報告書が出されまして,その中で提案として挙げられている条文をそのままここに案として挙げております。しかしこの点については特にまだ議論がなされている状況ではありません。   最後に準拠法ルールですけれども,これについてはプレリミナリードキュメントの22にワーキンググループの○○教授が作成した報告書がございまして,これが出されまして一定の説明が○○さんからなされました。   それで,個別の,条約に組み込まれる特定の問題についての準拠法ルールについては先ほどこの報告書の前の方で触れていることですけれども,扶養義務に関する一般的な準拠法ルールについては,結局これは必ず入れて全部の国が受け入れるということにはしないということでは合意ができているわけですけれども,その内容につきましてはなおまだ議論が残っているところであります。   それで,ワーキンググループでの案としては,一応A条からK条までというのが今のプレリミナリードキュメントの最後の方に出ておりまして,それについての簡単な説明を報告書の28ページ以降にしておりますが,ちょっと時間の関係で内容自体はとりあえず省略させていただきたいと思います。   それで,最後ですけれども,今後の予定といたしましては,報告書の一番最後に書きましたように,今月に起草委員会が開かれるという話でありまして,条約草案の改訂作業を行って,年末をめどにその新しい条約草案と,それから解説書,条約解説のドラフトが各国に配布されるという予定であります。来年の春ぐらいまでに多分コメントを各国から得た上で,来年の5月に第5回の特別委員会を開きまして,全般についてというのではなくて,一応今の予定としては準拠法ルール,それから13条,19条を中心に議論する。多分ほかのところも必要があれば議論することになるだろうと思いますけれども,そして来年の秋に外交会期を開いて条約を採択する予定であるということであります。   なお,準拠法ワーキンググループ,行政協力ワーキンググループ,それから書式ワーキンググループもそれぞれ活動をするという予定であります。   ちょっと最後はしょって申しわけございませんけれども,一応私の方からは以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   全般的な事項について,基本的には先ほど○○委員がおっしゃった大きなポイントの4点というのは,結局次回また対処方針を練らなければいけないところで,もう1回戻らなければいけないところだろうと思うので,特に4点にこだわる必要は今のところはないのじゃないかと思いますが,まず,全般的に○○委員の説明に対しまして,質問がございましたら,それを全般についてお願いしたいと思います。特に全般に限定しなくとも,それじゃ逐条的に行きますと,まず1章の適用範囲・定義,1条から3条までについて何かご質問がございましたらお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。   それでは次に,行政協力,4条から8条まで,いかがでしょうか。   ちょっと私からよろしいですか。フォームが義務的なものになってくるという説明がございましたですね。その際に,iSupportというソフトとの関連性というようなこともおっしゃいますが,このフォームの義務化ということとそのi Supportというのは不分離な関係にあるというわけではないのですか。 ● 絶対にというわけじゃないと思いますが,かなり実務的にはiSupportをうまく動かすためには,必要不可欠な情報があるわけですね。それをもらったときにそのままぽんとインプットできて,それが迅速に送られるということが必要なので,もちろん必要な情報が何らかの形で含まれている文書が出てくれば,そこから必要な情報を取り出して入力していくということをすればいいわけなんですが,ただそれよりははるかに,決まった書式で,この部分にはこの情報が入っている,この部分にはこの情報が入っているというのを,そのまま横流しで入力できるという方がはるかに効率的で,そういうことを考えているということのようですけれども。   ですから,絶対不即不離の関係にあるわけではないけれども,大いに実務上は関係があるといいますか,要請の度合いが高いということなんじゃないかと思います。 ● 2000年かそのあたりに,あのソフト会社は一度来ましたですよね,ヘーグに。そのときにセキュリティーの点について割とみんな説明がないので,結局扶養義務者というのは方々に借金を抱えていて,裏の世界の人たちからも追っかけられている人が多いわけで,扶養義務者の所在地というのはみんな知りたい人たちがたくさんいるわけですね。そういう人たちがセキュリティーを侵してくる可能性が出てくるので,そのときはセキュリティーにこのソフトは心配がある,何の説明もないのはおかしいという印象だったのですよね。それで,セキュリティーについて,そのi Supportについて何か説明がございましたですか。 ● いえ,それは全くなくて,セールストークだけだった。 ● セールストークだけですよね。前回もそうだったですよ。 ● どんなに便利かという話がありました。確かにおっしゃるとおりですね。 ● だから,あれが一緒にセットになるとフォームの問題はちょっとどうかなと思うのですけれども,それは別に……。ほかに行政協力について。   それじゃ次に,3章についていかがでしょう。9条から13条。なければ手続の開始については。はい,○○幹事。 ● 14条のところで,確認なんですけれども,14条の1項でモディフィケーションに関する管轄を一定範囲で限定する規定が入っておりまして,2項のところでこの1項の例外となる場合が挙がっているかと思います。この2項の場合が例外になるということが,すなわち新たに申立てがなされたところで必ずその管轄を認めるという趣旨ではなくて,申立てがなされたところの管轄ルールをさらに見た上で管轄を認めるかどうかということになるかと思うのですが,そういう趣旨でよろしいでしょうか。 ● そういう趣旨だと思いますが。 ● 14条は管轄の制限だというのは共通理解なんでしょうか。確かに2項はそのような,2項とあわせて読めばそのようにも見えますけれども。外国でされている,一定の要件なんで,それと承認のところで,この14条違反というのが18条のf号に入っているのですね。18条にはほかには管轄規定がなくて,管轄は16条に書いてあるのでしたか,間接管轄は。何か切り分けというか,性質づけが整理がちょっとわかりにくいですが,ちょっと教えていただければと思います。 ● いかがですか。 ● すみません,私もよくわからないのですけれども,14条が管轄の問題であると言うか言わないかで何か変わってきますかね。 ● 裁判を受ける権利とかと言っている国の方は,何かもっと違う読み方をしているのかなと思いまして。私は最初見たときは,管轄という話じゃなくて,提訴させないといいますか,主語が何かによるのですけれども,そういうふうな規定なのかなと思ったのですが,何か受け身に変えたりして,何か管轄みたいにも読めますが,しかし管轄だったら管轄のような書き方があるはずなのに,何かちょっと中途半端かなと思いますので,何かちょっとわからない。 ● 実態はそうです。それほど疑問があるというわけではない。はい,○○幹事。 ● 2004年にこのルールが最初に入ったときにちょうど事務局におりまして,そのときに議論をした限りでは,直接管轄のルールそのものはやはりアメリカとECとのルールで,扶養権利者の住所地の管轄を認めるかどうかで一致が全く見られないので,そもそも置くことはできないけれども,モディフィケーションという形で,一たん出された扶養決定を変更する際の管轄のルールであればこういう形のことができるというので妥協の産物として,少なくともこれだけは置けるというので置いたという経緯がありますので,一応管轄を定めるといいますか,そういう趣旨でできたということは確かだと思います。 ● そのほかに14条のところ。ございませんようでしたら,5章,承認・執行について。規定では15条から26条。はい,○○委員。 ● 16条についてカナダが1項d号が問題だという発言をしたということですが,その理由が,現状では管轄を認められないという理由なんですね。であれば日本だってそうだと思うのですけれども,要するに条約をつくるということの意味が,自分の国の法律は変えない条約にしてほしいと考えている国も相当あるということですね。1項c号が受けられないのは多分アメリカが,ご説明あったかもしれないけれども,憲法違反だとか,そういう話だと思いますけれども,d号も過去の関係ですから,アメリカはどうなのかなと思いますけれども,脚注15によるといずれにしても2つだけの国が問題にしている。 ● どこだか実は○○委員,わからない。カナダと,もう1つがどうしてもメモに出てこないのですね。2つの国と書いてあるのですけれども。アメリカじゃないと思うのですよね,これ。アメリカだったら覚えているはずなんですけれども。 ● 日本はこれ,いいという話でしたっけ。そういう議論をしたのでしたかね。すみません,大分前の話で,覚えてないのですが。 ● その点は日本では多分議論してないのじゃないかと思うのですが,ありましたか。   それで,カナダの説明は今おっしゃったとおりです。つまり,憲法違反になるから嫌だという言い方はしていませんでしたので,現状では認められないのでだめだというのですから,確かに○○委員おっしゃるとおりに,現状を変えたくないのでこれは留保したいという,そういう意見だと理解されますが。 ● これ,いろんな状況があると思うのですけれども,ある国で国際結婚をして住んでいて,離婚して1人だけ帰ってきて,向こうで再婚したのだけれども,非常に困窮している。子どもは子どもですから,子どもからの扶養請求ってあり得るのですよね。しかし何年もたって,向こうは再婚もしていて,いろんなことが多分あり,それで管轄を認められちゃうのはどうかなとは思いますが,それでいいのならもう1項c号と余り変わらないですよね。そこはアメリカのためにd号をつくっているということですかね。だったらもうc号でいいじゃないか。c号を正面から認めそうなものだけれども,それは困るというのでd号が出てきているということでしょうか。 ● 議論の経過からいうと,もちろんc号があって,c号はアメリカが留保すると言っているので,そのc号に当たる場合であっても,より管轄が認められやすいような場合としてd号を,これはECだったですかね,どこかからこういう案を出して,それでd号として入れると。これは留保の対象としないという,そういう案として出てきたのだと思うのですね。それで,だからアメリカはc号はもちろん留保するけれども,d号の場合は認めるという趣旨なんだろうと思うのですけれども。 ● 話し合った上で出てきている,ECとアメリカと。 ● いや,ちょっとそれはわからないですけれども。でもアメリカは正面からd号には反対してなかったと思いますね。これだったらアメリカでは管轄ありになるのじゃないですかね。これではだめですか。カナダはこれではだめだというか,受け入れられないことがあるということだったのですが。 ● 1項d号のこの規定は,アメリカの統一州際家族扶養法に似たような規定がある。直接管轄としては規定があるので,恐らくd号はアメリカの方でも受入れ可能なんだろうと,以前の部会でちょっと発言させていただいたことがあります。 ● 第5回の議事録の16,17ページあたりに。 ● 今の点で,関連なんですけれども,○○委員の方から,過去の一時点でという点が非公式なものとして御報告されている。ただ直接管轄の場合であれば,決定前の一時点というのは明らかかと思うのですけれども,こういう形で承認・執行の間接管轄みたいなものに規定した場合に,決定前であれば当然入ってくることはあろうかと思いますけれども,過去の一時点というのが決定後みたいなものでも入って来得るのかどうなのかというのが,前々回あたりに若干検討,質問として挙げられたところかと思うのですが。 ● そこのところは細かく分けて尋ねていませんので,申しわけありませんが。恐らくイメージとしては決定前の話を念頭に置いているのじゃないかとは思うのですけれども。 ● 直接管轄をそのまま間接管轄に引き直してくるのであればそうなるのかなと思いますが。 ● ほかにいかがでしょうか。   私,聞き残したのですけれども,この公序の審査というのは職権による審査というのは大勢は可能性というのは……。 ● すみません,どこでしたか。 ● 承認のところで,公序則の問題は,今の段階だと,当事者が援用しない限りは,いない間に公序則の問題はどうなんでしたっけ。職権で裁判所がチェック,公序則違反かどうかという可能性については,今の規定ではできますよね。当事者はいないけれども。ただ送られたアブストラクトでよろしいのですよね,判決の承認,送られてくる。 ● 国によっては。 ● 構わないですよね。だからアブストラクトだけで見て,反公序性の判定ができるかどうかという点については,何か議論がありましたですか。 ● その点についての議論というのはちょっとよく覚えていませんが,多分詳しくはなかったのだろうと思うのですけれども。   ただ,要するにアブストラクトではだめだという国は,はやり判決全体を見なければ,コントロールというか,必要なすべき審査ができないという意見を述べていたと思いますので,間接的にはそういう点も考慮されているのかと思いますが,ただアブストラクトでいいという国がその点のコントロールをどう考えているのかはちょっとわかりませんですね。 ● どうもありがとうございました。   ほかに5章関係,いかがでしょうか。 ● 19条の関係で確認というか,送致という言葉が,転達に近いようなものであるとしますと,書式をどうするかという問題とも絡んでくるのですが,少なくともこの承認・執行の場面ではこのままこの書式が裁判所の方まで来てしまう可能性があるということになってくるのでしょうか。そうすると,そのほかの部分の新たな決定を求めるとか,仮にその前提として親子関係の成立まで問題となっていくような場合について,書式を義務的とするかどうかということにかかわってくるかとも思うのですけれども,裁判所に対して用いられるような書式,中央当局が関与するような場合,それについて従前は中央当局に対する申立てであるとか,中央当局に対する申立てについての書式であるという前提で議論が進んでいたと思うのですけれども,この点についてどのような議論がされているのか。そういったことがあったらちょっと教えていただきたいと思います。 ● 10条1項に幾つか申立ての種類が挙げられているわけですね。今おっしゃったようにa号が決定の承認あるいは承認・執行なんですけれども,そのほかの決定についても,我々というか,ここでの私たちの議論としては,これはあくまでも中央当局に対する申立てであって,それがそのまま裁判所に行って,裁判所がそれは受け取らなければいけないということになっているわけじゃないだろうという了解で議論を我々はしていたかと思うのですけれども,ただ先ほど申し上げましたように,どうも条約の特別委員会に出てきている人たちの頭の中のイメージとしては,ここで挙げられている申立てが,中央当局は介するけれども,最終的には各裁判所とか行政庁にそのまま行くということをどうも念頭に置いておられるようなので,そこではやはり我々の理解とギャップがあるのだろうと思うのですね。だからそこのところをちょっとはっきりさせないといけなくて,もしそうだとすると,日本の例えば裁判所に来たときに,そのまま受け入れられるような内容,書式のものでないと,あるいは日本の国内手続を変えれば別ですけれども,あるいは変えることが可能な限度での申立ての内容とか書式にしてもらわないと日本としては受け入れにくいということになるのだろうと思うのですね。ちょっと一般的な話で恐縮ですが。 ● よろしいですか。 ● 事務局から御質問して恐縮なんですけれども,またわからないところは後日教えていただきたいのですけれども,今10条のお話が出ましたので,1,2点教えていただきたいのですが。今の○○委員のお話ですと,この10条というのは行政当局を一応念頭に置きつつも,最終的には裁判所をターゲットにしているということになりますと,対処方針を見ますと,6条の方については親子関係の成立というのが入っても最終的にはやむを得ないということだったわけですが,この10条の方については削除願いたいということが,より強めの対処方針になっておりまして,もし裁判所をターゲットといたしますと,たとえ必要な場合であっても親子関係の成立というものを裁判所の申立てに果たして含めていいのだろうかというのが気になったところでございます。そこについては,何かもし御議論があったのであればお教え願いたいというのが1点でございます。   あともう1つ,ついででございますが,10条1項a号の注6のところで,非締約国の決定については承認・執行のために転達することは許されるとございますけれども,この転達というのがもしも中央当局の援助の一環だといたしますと,たとえ転達にすぎないとはいっても,非締約国の決定に一定の助力を加えるということになりまして,そうするとやはり,相互主義の観点からすると,若干踏み出しているのではないかなというあたりがちょっと気になるという点がございます。   あと,これは恐らくそうだと思うのですが,転達以外は何もしなくていいというようなコンセンサスというのもあったのかどうかというあたりもお教え願えればと存じます。 ● それぞれ難しい問題ですが,まず親子関係の成立に関しまして,今御指摘のとおり,10条の1項c号の方については,もしこれが裁判所に行くということであれば,より強い理由で日本としては賛成しにくいということなわけですね。ただし,そこのところは一応6条とセットで申し上げましたけれども,特に強い議論はしていない状況だと思います。   それから,a号の非締約国の決定のところですが,これは報告書にもちょっと書きましたが,最後の御質問ですけれども,これは転達だけすればいいというのが理解だと思いますが,これが相互主義の観点から問題なのではないかという御指摘ですが,それは確かに言われてみると,おっしゃられるとそのとおりかと思いますが,この点については特にその場では私は何も申し上げてないと思います。   以上です。 ● いかがでしょうか。   それでは6章,受託国での執行についてはいかがでしょうか。ございませんようでしたら,次,公的機関,32条だけの話ですが,いかがでしょうか。もしなければ一般規定,33条以下。ございませんようでしたら,次に準拠法ルールについて。 ● 準拠法の部分だけ批准することはできるのですか。さっきオプションだとおっしゃったのは,本体は……。 ● 入れ方についてもまだ決まってないと思うのですけれども,今考えているのはオプションですので,本体に入った上で,入るか入らないかを決めるというのが一番あり得る形だと思うのです。つまり,この条約とは切り離してという御趣旨ですよね。 ● 日本として今やっていることをもし向こうがたくさんになった場合にはこっちへ移るというのに,ほかのところはなかなか難しいけれども,ここだけはということはあり得ると思うのですけれども。 ● 73年条約が変わってしまうと,新しい方に入った方が多分いいということになったときに,本体の行政協力の方はだめだけれども,準拠法は入りたいということはあり得ますね。 ● すごくあり得る。 ● そのオプションもまだどういう形でオプションをつくるかはなお議論がこれからだと思いますので,そういう方がよいというのであれば,そういう提案はもちろんできると思います。けれども,余り歓迎はされないだろうと思いますけれども。 ● ○○幹事。 ● 準拠法の関係で,D条のところで,大変細かいところで恐縮なんですが,2項と3項の関係を拝見していますと,ちょっと気になったのですが……。 ● 何項ですか。 ● D条の2項と3項です。それで,2項の方で傍系親族間の扶養義務についての規定がありまして,扶養義務者とされる者が常居所地法上はそのような義務がないということを主張すれば,それで扶養義務を免れることができるという規定になっていまして,3項の方でそれ以外の扶養義務について,常居所地法上も,それから当事者の同一本国法上もそのような義務がないときにだけ義務者がその義務を免れることができるという規定になっているように読めるのですが,そうなりますと,この3項で扶養義務者が義務を免れるための要件のほうが厳しいことになりますので,2項と3項のバランスを考えますと,むしろ逆の方がいいのではないかと思って拝見したのですが。 ● なるほど。 ● 読み方が正しいのかどうかもあれなんですが,多分3項の方でnorになっていますので……。 ● そうですね,両方だめなんですね。 ● 両方かかりますので,これがorになっていればそのどっちかを援用して義務を免れることができるという規定になりますので,それだとわかるのですが,norになっていると累積的適用になりますので。 ● そうですね。これはすぐお答えできなくて恐縮なんですが,2項と3項で対象となるものが違いますよね。対象となるものというか……。 ● 1項と2項以外の扶養義務なので,さらに傍系親族以外の扶養義務ということで,非常に特殊なケースの扶養義務を想定していると思うのですが,そのような場合ですと,むしろ扶養義務者が義務を免れられる範囲を広げた方が2項とのバランスからいきますとよいかと思うのですが。 ● おっしゃることはよくわかります。そうですね,それはちょっと考えて……。 ● 御確認いただければ。 ● いろいろ議論してつくっているはずですので,何かからくりがあるのだと思うのですが,今すぐわからなくて。 ● 確認をお願いできればと思います。 ● そうですね,確かにそのいずれかでコンテストできるのだったら,理由がなければコンテストできるという方が何となく筋は通るけれども,何か理由があるのかもしれませんね。   ほかに何か。 ● 今の点に関してですけれども,意見になりますが,私はむしろDの2項と3項を統一して,連結の方法は3項のように扶養権利者に有利なようにした方がいいのではないかと思います。でも,これらの場合には文化的な要素も強いので,本国法主義を部分的に入れることになじむのではないかと思います。 ● 何か質問されるようなことございますか。 ● いや,質問というより意見です。 ● はい。じゃ,ほかに準拠法ルール以外でも結構ですので,いかがでしょうか。   それでは,そろそろ時間でございますので,このあたりで本日の議題につきましては一応議論を終わらせていただきたいと思います。   最後に事務局から今後の日程等について連絡をお願いしたいと思います。 ● それでは,今後の日程などでございますが,○○委員の御報告書などによりますと,次のとおりとなっております。   まず,9月に起草委員会が開催されまして,現草案の改訂作業が行われまして,年末までに改訂後の条約草案がドラフト,エクスプラナトリー・レポートとともに各国に配布されまして,これに対する意見照会手続がとられるということになります。   また,11月の17日と18日,2日間にわたりまして準拠法に関するワーキンググループの会合が開催されるということでございます。それから,来年の5月8日から16日まで,第5回特別委員会が開催されるということになっております。そして,来年の秋に外交会期が開催される予定となっております。   そこで,次回会議でございますが,9月に開催予定の起草委員会による改訂後の条約草案とレポートが年末までに各国に配布されまして,これらに対する意見照会手続がとられる予定であるということを踏まえまして,日本政府が提出すべき意見を作成するに当たって,皆様のご審議を賜りたいと考えております。   改訂後の条約草案等が配布され,意見照会手続がとられる確実なスケジュールがわかり次第,次回会議の日程を定めて,皆様に御連絡を差し上げることにさせていただきたいと思いますので,その点につきましてはまた追って御連絡をさせていただきたいと思います。  以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   それでは,法制審議会国際扶養条約部会の第7回会議を閉会させていただきたいと思います。   本日はご熱心なご審議をいただきましてありがとうございました。どうもご苦労さまでした。 ―了―