法制審議会電子債権法部会 第10回会議 議事録 第1 日 時  平成18年10月3日(火)   自 午後1時00分                         至 午後6時42分 第2 場 所  最高検察庁会議室 第3 議 題  電子債権制度の整備について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● それでは,定刻になりましたので,法制審議会電子債権法部会の第10回の会議を開催いたしたいと思います。           (関係官の異動紹介省略)  それでは,事務局当局に配布資料の説明をお願いいたします。 ● それでは,配布資料の御説明をさせていただきます。  今回の配布資料は,事前に配布させていただきました部会資料12のみでございます。この資料をごらんいただきますとお分かりのとおり,質問事項になっておりますが,これは次回以降,要綱案を作成していく前提として,今回御議論いただいておいた方がいいと思われる問題について,私どもで質問形式にさせていただいて,御議論いただきたいということで作ったものでございます。  ちなみに,要綱案作成の前提として議論を要する論点はこれに尽きるわけではございません。前回,各界意見の御報告をさせていただいたわけでございますが,ほかにもまだ,管理機関の責任をはじめといたしまして,いろいろな論点があるわけでございますけれども,とりあえず今回はここに上げております大きな項目でいうと7つを御議論いただきたいということで作った次第でございます。  これらの論点を取り上げた理由でございますが,論点の3,4の(1),5,6,7は,前回の部会におきまして,今回議論するとされた論点でございますので,これらを取り上げさせていただいております。  このほか,1と2につきましては,今週の土曜日,7日に開催予定の金融法学会でシンポジウムが行われるわけでございますが,このシンポジウムの前にもう少し当部会で御議論いただいた上でシンポジウムをしていただくことが,今後の要綱案の取りまとめに向けて有益なのではなかろうと考えまして,取り上げさせていただきました。  それから,論点4の(2)でございますが,この問題はこれまでほとんど議論してこなかったものでございますが,年数などについても感触を伺っておかないと要綱案が作れないということで,取り上げさせていただいたということでございます。  したがいまして,ここで取り上げております論点のうち前回の部会で今回議論することになっておりました論点の3,4の(1),5,6,7については,ある程度方向性を出していただければと思っております。他方,論点1と2とは,先ほど申し上げましたように,7日の金融法学会のシンポジウムでも御議論される予定ですので,それを踏まえてさらに御審議いただくという,いわばシンポジウムの前提としての議論の整理というような色彩でございますので,そういう観点で御議論をいただければと思っております。  私からの冒頭の説明は以上でございます。 ● それでは,本日の審議に入りたいと存じます。  本日は,部会資料12の「要綱案作成の前提として議論を要するいくつかの論点について」に基づき,要綱案の作成を進める前提として,この資料に掲げられている論点について順次議論をしていきたいと思います。この資料に掲げられている論点が,要綱案作成に当たり議論を必要とする論点の一部に過ぎないことは,先ほどの事務当局の説明でも触れられたところですが,それでもこの資料に掲げられている論点の数は相当数に及びます。したがいまして,今回も終了予定時刻を超えて御議論いただくことになるおそれがあると思いますが,要綱案を作成する前提としてこの資料に掲げられている論点の全部について,一通り御議論いただく必要がありますので,どうぞよろしくお願い申し上げます。  いつものように,審議の途中で,区切りの良いところで休憩をとりたいと思います。また,審議がかなり長引きそうな場合には,また区切りの良いところでもう一度休憩をとりたいと思います。なるべく2度目の休憩をとることなく審議を終えたいと考えておりますので,効率的な審議に御協力をお願いいたします。  審議の進め方ですが,論点1と論点2は,先ほど紹介がありました金融法学会のシンポジウムの前提として,この部会での議論をもう少し深めておきたいという趣旨で議題に取り上げたとのことであり,金融法学会のシンポジウムの終了後に,そこでの議論の結果をも踏まえてさらに当部会で詰めの審議を行うこととなるものでありますので,ほかにも多くの論点につき今日中に審議をし終えなければならないことも考えあわせて,論点1にかける審議時間は1時間程度にしたいと思っております。論点2については30分程度,最初の休憩前には論点3までの審議を終えたいと考えております。その後,休憩を挟んで,議論に時間を要すると見込まれます論点7を先に議論いたしまして,その後で論点4,5,6の順で議論をしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。  それでは,まず部会資料12の論点1の「電子登録債権の発生・譲渡等の要件としての意思表示」の議論に入りたいと思います。この論点については,事務局当局からの特段の説明はないそうですので,早速,質問事項の①から順に議論を始めたいと思います。  質問項目の①は,債権者・譲受人側の申請等も要求すると実務処理上本当に困難が生じるのかどうかということが問題になっているわけですけれども,この点についてとりわけ実務家の委員の皆さんの御意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。○○委員,どうぞお願いします。 ● この点につきましては,もともと私の発言から引用していただいたところだと思うんですけれども,特に手形代替手段として使う場合を想定したケースなわけです。これは前に言ったことの繰り返しになるかもしれないんですけれども,対象先が数十社とか数百社,支払相手がそのぐらい多くなってきますと,手形を振り出して決済するという場合には,通常は手形の振出日の4営業日から7営業日前ぐらいに金額をかためて,それで振出手続をして,相手に対して手形を送る等のことをやっているわけです。  相手先が非常に多いと,債務者からの手続に加えて,債権者側の申請手続を要求するとういことが,債務者にとっても手続的に非常に面倒になる。この面倒になるというところなんですけれども,債権者側がうまくクリックを順調にしてくれればいいわけですけれども,中にはしない先もある。その場合,債務者としてはそれを短期間の間にトレースすると言いますか,確認してフォローする。そういった手間の分,今,手形の場合は郵送するだけで終わっていることと比べて,負担感が増加するということがあります。そういった意味で,債務者として手形からシフトするメリットが実務上あまりないと思われます。  この点につきまして,金融機関としての憶測だけではいけないと思いましたので,個別行として,今,債務者の立場になっている方にヒアリングを実施しました。その結果,B-2案を支持するという意見が,5社聞いたんですけれども,5社ともそういった意見を言っておられたということでございます。そういったこともありまして,債務者としては非常に負担感があるといったことであろうと思います。  以上です。 ● ほかに。○○委員,どうぞ。 ● 今の○○委員のお話なんですが,揚げ足をとるつもりはないんですけれども,手形を実際にお切りになったことのない方のおっしゃる議論ではないかなという気がするんですね。私ども企業の立場からいけば,手形を発行する立場にも立つし,受け取る立場にも立つわけでございますけれども,今,4日前に発行するというふうにおっしゃって,結果として確かにそういう段階で準備をして発行するんだろうと思います。思いますというか,実際そうなんですけれども。  その前の段階で,手形を発行する金額というよりも,商談そのものがきちっと話し合いをされて,いくらの金額で支払うよというふうな事前の交渉があるわけですね。それに基づいて合意を得たものではじめて債務者は手形を発行するし,受け取る方はその金額で受け取るという結果になるのであって,一方的にこの金額で切ったぞと押しつけられて受け取っているわけではないという,実務上の問題を少し御配慮いただくというか,お考えいただかないと,今の議論は一面的ではないかなという気がしております。  勝手に切っているということはいささかもございませんし,そういう意味で①の下から2行目,「包括委任の活用等の実務上の工夫」,このこと自体も「包括委任」などというのは,手形を受け取る側にしてみるとちょっと行き過ぎかなと。1件1件そういう話し合いがあった上で手形が切られているということからいうと,包括委任まで言うのは我々としては出しにくいなというような考え方を持っております。 ● ○○委員,お願いします。 ● ○○委員御指摘のように,事務的な手間がかかると言えばかかるんですけれども,解決は可能ではないかと考えています。例えば,当社でも一括支払システムをやっていますけれども,いきなり一括支払システムに入るわけではなくて,基本契約を取り交わすというような作業は当然あるわけです。  それから,○○委員御指摘のように,手形をいきなり振るということはまずなくて,取引に関する基本的な契約を締結するとか。そもそも一回限りの取引では手形はあまり用いられない。継続的な取引を前提にして手形が用いられるケースが大半だろうと思いますので,その過程の中で何らかの実務上の工夫,それは包括委任がいいのか,電子登録債権を利用しますよというような基本的な合意を作るということでもよろしいでしょうし,負担はあるにしても,それを軽減する工夫は可能ではないかと考えております。 ● 実務上,○○委員や○○委員がおっしゃるように,債権者も債務者との間で取引に関して交渉をやるわけですけれども,それはあくまでも原因債権に関してであって,振出そのものにそれほどコミットするということは,少なくとも債権者の立場ではかなり例外的な場合ではないかという気はいたします。  それから,包括委任に関して,先ほど○○委員もちょっとおっしゃっていましたけれども,そう簡単に包括委任をするのかなというところは若干疑問があるという点が指摘できるかと思います。  それから,どんな制度を作るとしても,実務上の工夫というのは必ずするわけですけれども,実務上の工夫をあてにして制度設計して回るかというような,立法的にいかがなものかという感じを受けるという点を指摘したいと思います。  以上です。 ● それでは,○○委員,どうぞ。 ● 先ほど○○委員と○○委員のおっしゃったことに関してでございますけれども,確かに私どもでも手形を振り出す前に支払通知,請求書といったやりとりの中で,合意が形成されて金額がかたまって,それに基づいて手形を振っている,そういう実務があるということは重々承知しております。その上で,実務的な感覚としては,手形の場合はそういった合意が事前に形成されていますので,さらに支払手段をかためる段階で債権者からも申請させるというのは過剰な手続だと当事者としては感じているんだろうなと。実際そういった声が私どもが聞いた範囲でもお客さんからあったということでございます。  それと,事前に契約を,ここには「包括委任」という形で出ていますけれども,そもそも原取引の契約すらもないような取引関係というのは事業法人間で,特に中小企業などですと多いと思うんですね。ここで支払手段を決めるというところだけで,わざわざ契約を一つひとつとっていくとは実際問題思われないです。それが私がいろいろ聞いている範囲での実務的な感覚でございます。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 中小企業の立場を考えると,受取側の企業としてもいくら支払ってもらえるかという金額は事前に分かっているわけではなくて,当然,返品とかありますから,金額が変わる。それについてはそこで確認すると。手形の場合でも受領するという行為がひとつありますので,単純にそれを発行すれば手形として有効ではないんだろうと思っておりますので,その受領する行為として手続を踏むということであれば,中小企業の立場からはその行為をすることに対して,そこに対して負担感があるということは今までは言われたことはなかったということがあります。  確かに○○委員のおっしゃるように,大企業の立場からいくと,各企業,受取側が確認していただいたかどうか,それをまた確認しなくてはいけないという負担感があるということは分かりますけれども,今回の法制は中小企業のためというところを我々としては求めたいので,そういう意味でそこの負担感ということでいくと,債権者側はそんなにないのかなと思っております。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 補足的にお話しておきますと,手形というのは支払手段の一面があるわけですけれども,信用供与取引なわけですね。ですから,債務者のリスクは債権者が負担するわけです。ですから,サプライヤーズ・クレジットなわけですよね。そういった意味では,債権者側が「この取引はあなたに3カ月後に資金をいただくという取引でいいんです」という合意は,当然どこかの段階でなされているのではないか。単にすぐに換金できるようなものを受け取ったという取引とはちょっと違うような気がしています。ですから,余りに支払手段という側面だけを強調してとらえすぎない方がいいのかなという気がしております。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 今の御指摘に対してなんですけれども,これは前から申し上げているんですが,電子登録債権そのものはいろいろな活用方法があるということで,双方の申請でやっても十分回るものもあるということは十分認識しております。一方で,現実的に手形からシフトしたいというニーズもあります。そこのところをとらえると,今の手形対比,切り替えてメリットがあるのかどうかということでございますので,そういった意味で申し上げているということです。  それから,債権者が中小企業という前提で先ほど○○委員からお話がありましたけれども,結局,あとの譲渡禁止特約を許すかどうかというところも出てくると思うんですが,債務者側がメリットを感じずに,これに乗ってこなければ,原債権とは別個の債権を発生させるという前提の制度なわけですから,そこで債務者が了解しなければ電子債権というのは発生しないわけです。そうなると,そこから先の中小企業金融の円滑化ということにもつながっていかないんだろうと思います。 ● ①の最後の2行に書いてある「包括委任の活用等の実務上の工夫によって実務処理上の困難は生じないと反論されている。」と。この点についてはいかがでしょうか。○○委員と○○委員がおっしゃったこと。ある程度は甘受するという趣旨の御発言だというふうに伺ったんですが。 ● 工夫という意味の一つだろうという気はいたしますけれども,包括委任を何でもかんでも出せるかというか,作りつけにしてしまうということについては私は疑問を感じております。 ● 今,作りつけというお話がされたんですけれども,作りつけにしようということを考えているわけではなくて,「実務上の工夫」と書いているとおりで,これを利用される当事者の方々でそういう工夫を凝らされることもあり得るのではないか。現に一括決済ではそうされているのではなかろうかという認識のもとの記載です。また,ここに書いているのはすべて前回御報告した中間試案に対して寄せられた意見を要約して,別の形で掲げているだけですので,そういう趣旨の御意見なのではなかろうかと思っております。 ● ありがとうございます。  ○○委員,どうぞ。 ● 先ほど○○委員が「振出金額については原因債権について事前に確認している。そして,手形振出の場合は債権者は関与していない。」ということをおっしゃいましたけれども,包括委任に関して,どういう金額で原因債権を発行させるかということは個々に合意すると。その上で電子登録債権を発生させる上では一括支払システムなり,閉じたグループの間でやる場合にはあらかじめ基本契約なりで包括委任をしておけば,A-1からB-1までの案でも全然支障はないのではないかと思うんですね。  私は,B-2案については反対なんですけれども,先ほど○○委員がおっしゃったように,手形の場合はいくら創造説的に考えても,最後は債権者の受領という行為があるわけですよね。このB-2案については,それすらもないものとして債務者の一方的な行為で発生させてしまう。その後生じる問題はその後に考えるというところが,手形の場合よりもさらに徹底しているので,そこがいろいろな問題が生じてとれないのではないかと思います。 ● はい,どうぞ。 ● 今,質問項目①だけを議論していただいていますので。 ● ああ,ごめんなさい。 ● ④にかかわる--では,○○委員,どうぞ。 ● ①の最後の2行の「包括委任」のところなんですけれども,ここで私が問題だと思っていますのは,通常,これは債権者が債務者に包括委任するというケースが多いと思うんですが,包括委任するということは債務者が登録をした場合に,債権者として法的にクレームが言えなくなるのではないかということが問題として考えられます。そういう意味でいくと,債権者のためにもならないのではないかと思います。 ● ○○委員,B-2案ならどうなるんでしょうか。B-2案だと債務者の行為だけが要件なんですから,債務者の申請があって,それが登録されてしまえばその権利は発生してしまうので,もっとそれ以上に文句は言えなくなるはずなんですけれども。 ● そこについては後のところで言おうと思っていたんです。発生はするんですが,債権者側に正当な理由があれば,それを取り消すことができるという考え方を導入すれば,問題は起きないのではないかと思います。その取消しというのは,今の手形でやりとりする場合に,手形は受け取ったんですけれども,当初の約束と全然違う金額のものがきていたということで,それを返却するということをどういうふうな形でこの制度の中で実現するかということであって,それを取消しという形で当初にさかのぼって効力をなくすということを認めればいいのではないか。  何でもかんでも正当理由と認めるというのは問題あると思いますので。その正当理由が何かと言えば,原因関係上の約束と違ったものが出された場合とか,そういったことで限定をすれば問題ないのではないかと思います。 ● 今,最後に御発言いただきましたのは,④のところで御議論いただきたいと思います。  ①については,依然として議論の対立があるということでございますので,なお継続して御議論いただこうと思います。質問項目の……。○○委員,どうぞ。 ● 学会でも議論をしていただく前提として,今のところでちょっと質問させていただきたいと思います。手形に代替するには,今より債務者の負担感を絶対増してはいけないんだというのが,A-1案からB-1案までに対する批判,つまりB-2案をとろうという方の御意見のようなんですけれども,実際に債権者からも申請するのは大変だと言っても,A-1案の②でまた出てきますけれども,この段階で伺っておきたいのは,債権者のワンクリックで済む話ではないんですかと,そういう理解はできないのかということ。○○委員などがおやりになった実証実験でも,そういうことは言えるのではないでしょうかということを知っておきたいんです。債権者側の能動的な行為というのは,そんなに大変なことなんですかという話をひとつ伺っておきたいんですが。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 電子手形で実証実験を行うときに,今おっしゃられたワンクリックが能動的な申請行為に当たるかどうかは別として,債務者側から申請していただいて,その内容を確認して,それを承諾するという行為で発生させようという仕組みをとったんです。これが債権者側の申請行為ということに替わるという形にすれば,これはやりやすい手段でははないかなと思っております。これに対して,特に債権者側から事務負担というのは特に出てこなかったというのが事実であります。 ● ○○委員。 ● 今,まさに○○委員御指摘のとおりでございまして,手形だったら受領という行為に代えて,この場合ワンクリックすればいいというだけの話ということでもございますし,何よりも企業側とすれば債権の回収でございますから,一刻も早く回収したいというのが本音でございます。そういう意味でワンクリックすることについては何の労も厭わないということでございます。 ● ○○委員,どうぞ。 ● これは実際に聞いた声ですけれども,件数が少なくて,1件,2件,数件の話であれば負担感はないと思うんですが,数十件,数百件で,しかもそれが数営業日の間にやらなければいけない,ほかの仕事もいろいろと抱えているという企業の経理の現場,こういったことを考えると,少し負担が増えるだけでも,それは非常に大きな負担だという声が実際にございます。債権者の立場でも,1件,2件,クリックするのはいいですけれども,数が増えてくると,それについても負担があるというのも実際ある声でございます。 ● では,○○委員。 ● それはおっしゃるとおりなんですが,手形を振り出す側でも,例えば郵送等で送りっぱなしということはなくて,必ず手形領収書を回収して,受け取っていただいたというエビデンスはとるわけです。それは何万件手形を振り出してもそういう管理は企業はやらなければいけない管理なので,それに比べて負担感がどうかというと,そんなに負担があるとは私は思えないんです。 ● ○○委員も手を挙げて……。 ● 数百件だろうが数万件であろうが,これは代金決済の問題でございますから,これを放棄するつもりは全くございませんし,そういう手間は当然の企業活動の手間であると受け止めております。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 実務家ではないんですけれども,皆様のいろいろな御議論,そのとおりだと思うんですが,負担として専ら債権者の負担が今問題になっているわけですが,電子登録債権を発生させるについて,発生の効力として管理機関がどこまでの確認をする必要があるのかというのがここのポイントで,B-2案の考え方は債務者側,債権者側両方の電子登録債権の発生に関する意思表示の内容を両方見合って,そして両方が合致しているものであるということを,管理機関が確認することを義務づけられることなのかどうかということではないかと思っています。  もし違いがあるのにそれで成立したということにして登録してしまいますと,これは本来成立していない電子登録債権を成立させたということになって,管理機関の責任が生じますので,そこで管理機関にどこまでの確認の義務を負わせるかという前提として,債務者側と債権者側と両方の意思表示の内容,申請の内容を確認する義務があるかないかということの方がむしろ問題になっているのかと思います。  したがって,さっきから出ているもう一つの包括委任を認めるかどうかということにこれは結びついていて,○○委員のようにきちんと債権者が自分の債権内容を確認できなければいけないということになると,包括委任というのは本来許されないという考えなので,そうだとすると個別の電子登録債権の発生ごとに債務者側と債権者側の両方の申請の内容を確認して,管理機関としてはそれで登録をしなければいけないとなると大変かなと。  さっきから一部出ている御意見のように,完全な包括委任ができているということになると,債権者側から完全な包括委任を受けることも可能だという法制にすれば,債務者側の個別の電子登録債権の申請がきたら,それとさっきの包括的な委任に基づくもので成立したとして扱うことができるということになる。これはB-1案と言いながら,実質B-2案に近いものになる。そうだとすると,管理機関の負担というか,電子登録債権を発生させるについての,そういう意味での問題は解消されるのかもしれないけれども,本当にそれでいいのですかと。包括委任が認められるか認められないかという実質問題がそこにかかっているのかなと思います。 ● 今の○○委員の御指摘は,管理機関の問題でもあるということはそのとおりだと思うんです。2つのことをおっしゃられたと思うんですが,まず債権者側と債務者側双方の申請に齟齬がないかをチェックしなければいけない。これは,A-1案からB-1案までだとそうなると思うんです。それは大変なのではないかとおっしゃられたんですけれども,さっき○○委員がおっしゃられましたように,債務者側が先に申請することにして,それについてワンクリックすればいいということになると,別のクリックはできないわけですから,齟齬はないわけです。  あるいは,中間試案を取りまとめる前にもここで御議論がありましたように,双方申請といってもいろいろな双方申請があり得るわけで,共同申請でなければいけないという形に業務規程を定めることもできるということになったと思います。ですから,そういう形にすれば,今,○○委員の言われたような問題は起きないのではなかろうかというのが第1点です。  もう1点の包括委任ですけれども,包括委任というのはあくまでもそういう方法もあるというだけのことだと思います。さきほど○○委員もそうおっしゃったと思うんですけれども,現に一括決済ではそれが行われているはずなので。ただ,債権者側はそれでいいという明確な意思表示をしているということが当然の前提で,債権者は,その債務者に対してならそれでいいですよということになっているからいける話であって,どの電子登録債権も全部そうなるということは誰も言っていないと思います。逆に,包括的委任ができないようなものであれば,○○委員がさっきおっしゃられたように,一つひとつチェックするし,それも素早くチェックして,債権を回収しなければいけないわけだからチェックしますよと,こういう話になるんだとすれば,それで何も問題はないということになるのではないでしょうか。 ● ○○委員,どうぞ。 ● ですから,根本問題はむしろ包括委任というか,債権者側の同意がどういう形で与えられるかということの決め方であって,それについてかなり包括的な決め方をするのであれば,今,○○幹事が御指摘になったような,ワンクリックなりあるいは共同申請なりで,もともとそういう授権が与えられているんだという形でスムーズにいくのかもしれません。だから,問題はワンクリックで済むということの,どれだけ包括的な委任が認められるかと。どういう形でのクリックであれば債権者の同意があったと扱っていいか,そういう問題ではないかと思っています。  それもさっきの○○委員のように個別についてそれぞれ債権者が確認できるようなものでないと,債権者の同意があったと言えないということになると,具体的にきちんと個別の意思表示が確認できるような仕組みにしておかないと,それがワンクリックと言えないということになるんだろうと思います。 ● はい,○○幹事,どうぞ。 ● 分からないまま発言して恐縮なんですけれども,2点ありまして,1つは先ほど包括委任という話が出たんですが,包括委任なんだろうかというのがよく分からないんですね。つまり,債権者が債務者に対して自己の登録権限について代理権を与えるという形での包括委任というのも考えられるんですが,債権者になる人がこういった債務者からの電子登録債権の登録については,それを受けてくださいという形で登録機関に対して包括的な同意を与えるという形もあり得るわけであって。そうなると,それは委任契約の当事者のところが変わってくるわけですよね。そのあたりは区別して論じるべきではないか。どちらかと言えば,こういった債務者からの電子登録債権の登録については,「私はそれに対して申請をしているというふうに扱ってくださって結構です」という形で,登録機関に対して言う方が素直なのではないかという気がしました。それは間違えているかもしれませんが。  第2点目は,ずっと議論を伺っていてよく分からなかったのは,ここの論点ではないと言われればそれまでなんですが,原因債権との関係をどのようなものとしてとらえる前提でお話をされているのか私にはよく分からなかったんです。と申しますのは,仮に手形が発行される,ないしは電子登録債権が発行されるということになりましても,それが一方的に送りつけられてくるといたしましたならば,それを無視して原因債権の行使ができるはずではないかと思うんですね。そうなりますと,先ほどおっしゃった取消しというのがますます分かりませんで,何で取り消さなければいけないのか。無視すればいいのではないかという感じがするわけです。だから,齟齬があるといった話すら私にはよく分からないので,どういう前提のもとの議論なのかということを少し整理していただかないと,理解が困難なところがあるということを申し上げておきたいと思います。 ● 今おっしゃられたところは,ここの質問項目でいうと④にかかわる問題だと思いますので,①は相当時間をかけて議論していただきましたので,ぼちぼち他に移っていただいて,早めに④にいっていただければと思いますが。 ● 包括委任についてはどちらなんですか。 ● 包括委任はいずれの方法もあるのではないでしょうか。代理権さえ授与されていればそれでいいのではないかと思います,民法上は。 ● ただ,登録機関の手間という話が出ましたけれども,債務者の側で包括委任を受けているということを証明していくということになりますと,委任契約書を提出するとか,いちいち見せるとか,そういう話になってしまうわけですよね。それに対して,登録機関が電子上,自分のところに対する意思表示として既に包括的に受けているという形をとる方が,先ほどの登録機関の負担という面では少ないのかなという感じがしたものですから,構成としては2つあるということを確認しながら議論すべきではないかというだけでございます。 ● ○○幹事が今おっしゃったことは,すべてそのとおり,正しいと思うんですけれども,どちらにするのか,あるいは,どちらか片方しか駄目だということも業務規程で定められるという前提ですので,管理機関がリスクを負いたくなければ,一括決済の場合に行われているように,最初に一括決済を利用するということを定めるときに,管理機関も入った基本契約の中で債務者からの申請があれば,それは債権者も同意したものとして,そこで登録をし権利が発生することについて承諾しますという基本契約を取り交わすという方法が最も安全なんですね。あるいは,個別に債務者が債権者も自分が申請することの代理権を付与してくれていますという証明をつけて申請することを認める管理機関があっても,それは管理機関のリスクテーキングの問題で,そこが間違っていれば管理機関が責任を負わされるというだけの話というふうに整理しているんです。 ● ②に進む前に1点。「包括委任」という意味の確認ですが,包括委任を認めるという立場は,私の理解では債権者のワンクリックすらも必要ないという形で考えているんですね。先ほど来,ワンクリックも必要なものも包括委任でやるかのように聞こえた議論があったものですから,ちょっとそれは違うんだろうということでよろしいでしょうか。 ● 私もそう思っています。ワンクリックは個別の同意であって,包括委任はそうではなくて,例えば基本契約などで決めてしまうというのが包括委任だと思います。 ● これ,全体としてA-1案からB-2案までどれをとるかという議論がありますので,①の議論についてはとりあえず今日はこの程度ということにさせていただきまして,質問項目の②に移りたいと思います。  ②のA-1案特有の問題点についてという指摘がございますが,この②について御意見を。  ○○委員,どうぞ。 ● これも確認させていただきたいんですが,「契約を要件とする以上,管理機関は,その成否を何らかの方法で確認すべきであって,A-1案が,当事者双方が登録申請をしたことを確認すれば足りるとするのは不十分である」という御意見がいくつかあったということなんですけれども,当事者双方が登録を申請したということで,その前提となる合意を確認したという考えがどうしてとれないのかということですね。それから,管理機関が何でそれ以上立ち入って申請契約について確認をしなければいけないのか,それが私は疑問なものですから,こういうお立場の方に少し説明していただきたいんですが。あるいは,私の意見に対するサポートの御意見でも結構です。 ● ○○幹事,何かございますか。 ● その意見を寄せられた関係の方はここにはいらっしゃらないと思います。前回の部会資料でいうと3ページの後ろから4ページにかけて,「契約を要件とする以上,管理機関は,その成否を何らかの方法で確認すべきだ」という意見が出されているわけでございます。  これは,私が代わって答える能力も意思もないんですけれども,推測いたしまするに,補足説明にも書いたことですけれども,当事者間では100万円の電子登録債権を作ろうという契約をしたと。ところが,申請するときに間違って0を1つ多くして1,000万円という申請をしてしまったという場合はあり得るわけですね,A-1案だと。その場合,いくらの債権が発生するのかというと,100万円しか合意していませんから,100万円しか発生しないはずです。特別の権利外観法理か何かを作れば別ですけれども。そうなると,1,000万円という申請は本当に当事者間の合意と合致しているのかどうかということをチェックしないと,もしかしたら100万円の合意しかしていないかもしれないわけだから,そこをチェックしなければいけないのではないかと,そういう問題意識なのではないかと思います。 ● 本当にそうなんですかね。そういう問題意識でこういう意見が出ているんでしょうか。そこがよく分からないんです。それから,管理機関は両方が申請してきたら受け取って,ブックキーピングで登録すればいいのであって,あとは当事者が自分たちで処理をする話で,管理機関は別にお節介する必要はないのではないかと私は思うんですが。 ● その場合,今,私が挙げた例だと一体いくらの電子登録債権が発生するのでしょうか。 ● だから,それは別の問題であって,この意見はそういうことを,○○幹事の御指摘のようなことまで考えての意見ではないのではないですかというのが私の質問です。 ● ここは省略していますけれども,不動産登記等のことも書かれていまして,不動産登記ですら登記情報の提供が要求されているではないかということは触れられていたように記憶しています。 ● ですから,問題は,A-1案特有の問題点としてこういうことが上がっているんだけれども,それは適切な理由のある御指摘なのか,そこまで管理機関はチェックしなければいけないのかというのが私の質問であって,今,○○幹事の挙げたようなケースでいくらのものが発生することになるのかなどいうのは別の議論として,ここでやるなり,ほかのところでやればいいのであって,今は②の議論として,ここでA-1案の批判として上がっているものは適切な批判かどうかということを私は知りたいということです。 ● この意見を出された団体は登記に関心をお持ちの団体ですので,登記ということが頭におありになるのかなということは推測します。今回のレジュメにも書いてございますように,登記は対抗要件に過ぎず,この電子登録債権における登録の方が登記より効力を強くしている。そういうもので,弱い効力しかない登記においてすらそういう原因関係の確認をやっているのに,もっと強い効力を持っている登録でそこを放ったらかしにしていいのかという御発想がおありになるのではないのかなと推測しております。  ○○委員の御指摘のその批判が適切なのかどうかというのは,哲学の問題に近いところもあるかと思います。哲学というのはどういうことかと申しますと,登録は,登録されている以上それは本当のことでなければいけないということを,どこまで要求するのかということについての考え方の違いがあるのではないかなと。登録された以上そこはすべからく真実にできるだけ近づけなければいけないという発想にお立ちになるのであれば,こういう意見は出てき得るのかなという感じは持ちます。これは私の意見でもないので推測して言っているので,これが正しいかどうか分かりませんが,この意見の背景を推測するとそういうことなのかなというところでございます。 ● いくつかの前提を区別した方がいいと思うんですよ。登記の場合は,受け取るのは法務局であって,その登記の申請はなるべく申請者の申請の正しさを担保したいということがあるわけですよね。直前まで話していたのは手形代替ということを話しているわけで,そのときには債権者の関与すら要らないという御意見があるというところで,一方でA-1案批判のところで登記と並べての御批判というのは,筋というかレベルが違い過ぎはしませんかということなんです。 ● ○○委員,どうぞ。 ● この御意見を支持しているということではなくて,これを見た感じでは,契約を要件としているということなので,管理機関がどこまで確認するかは別にしまして,登録の実施要件で,成立要件ですから,何がしかは確認すべきで,そこを全然確認しないということだと,そもそも契約を要件にしているという意味がよく分からなくなってきてしまうのではないかなという気がするんです。だから,多少は登記のような原因証明証書とかいった程度のものは,A-1案だと要求しないとおかしいのではないかなと,そういう感じでございます。そういうのを抱いたということです。 ● ○○委員,どうぞ。 ● ですから,私は,当事者双方が申請したことによって,その前提となる合意を確認したという考え方はとれないんですかと。この電子登録債権のときにはそれで十分なのではないですかということを申し上げているんです。 ● ほかにこの点について御意見ございませんでしょうか。  この点についても,なお異論はあるということで先に進ませていただきます。  はい,○○幹事。 ● いや,言わなくてもいいんですが,○○委員に賛成です。つまり,私,分からないんです。不動産登記については何回聞いてもすぐに忘れてしまうんですが,登記原因証明情報として添付される契約に解釈の余地があったらどうなるんですかね。あれはつければいいわけですか,登記原因証明情報が。そこにおいて登記所が甲不動産であるか乙不動産であるか明確でないということで却下できるんですか。 ● それは却下することになります。登記原因証書,今は登記原因情報ですね,登記原因情報と申請情報が合致していなかったら,申請は却下しなければいけないということに不動産登記法上なっています。 ● 合致していなければそうなるかもしれませんけれども,契約の解釈というのは,必ずしもその書面にあるものとは限らないものがすべてを,それだけに限られて解釈されるわけではないですよね。つまり,契約書の文言と登記内容,ここで言えば登録内容というのが合致しているかどうかというのは,限界的な事例を考えると必ず一目瞭然に合致しているとは限らないのではないかと思うんです,理論的には。 ● 実務上は一目瞭然に合致しているものが出されます。そうでないと受け付けられませんから。 ● それに別の口頭の合意があったらどうなるんですか。契約というのはそこの紙だけではないんですよ。口頭の合意があれば,一目瞭然合致しているように見える契約書の条項の意味は変わってくるわけであって,登記所はその紙と登記内容が一見合致しているということ以上は判断できないわけでありますね。そうなりますと,確認をせよということを言いますと,解釈リスクを誰が負うのかという問題がどうしても出てきて,却下をすればいいじゃないかというのは,登記所ですから,そういうことを言えるのかもしれませんけれども,こういう契約でこういうふうに合理的に解釈できるにもかかわらず,一目瞭然ではないといって却下したということになって,そこは免責条項を入れればいいのではないかと言われればそれまでですけれども,制度設計としてはあまりいい制度設計ではなくて,当事者双方が申請してきているんだから,それで合意があったとして扱えばそれはそれでいいのではないかと。 ● 御意見,伺いました。  それでは,質問項目の③に移りたいと思います。A-2案は,問題が多いので検討の対象から落としてはどうかという事務当局からの提案でございますが,この点,何か御異論ございますでしょうか。A-2案について御支持の意見をお出していらっしゃる団体もあるように思いますが。○○委員,どうぞ。 ● 日弁連はもともとA-2案を支持する意見を出しております。なぜかというと,全体として,契約を要件とするA案を支持すると。その中で,A-1案については若干当事者間の合意の確認においてやはり問題があるので,管理機関を通じての意思表示と承諾のやりとりを言っているA-2案が,非常にテクニカルなきらいはあるけれども,やむを得ないものとして賛成しようということで,A-2案を支持していると。  今回,事務局から示された交叉申込みという案ですね。これは契約理論でも説明できますよというものと理解したんですけれども,日弁連で先日この論点について議論したときは,契約理論で,交叉申込みで説明ができるのであれば,そっちの案に乗りかえてもいいではないかということで,B-2案は反対であると。それに対抗するものとして,新しい全体を止揚する案として交叉申込みで説明できますというふうに学者の先生方がおっしゃるのであれば,それでいいではないかという感じがします。 ● それでは,質問項目の③については,○○委員の御発言をいただきましたので,以上で終わりたいと思います。  質問項目の④に移りたいと思います。これはB-2案に対して寄せられた批判的意見が列挙されておりますが,これについていかがでございましょうか。○○委員,どうぞ。 ● どうもB-2案は目の敵にされているようなんですけれども,どうしてこういう考え方をとっているかということを説明させていただきたいと思います。  一番基本的なことはさっき申しましたように管理機関その他の負担の問題を考えているわけですけれども,さっきワンクリックでいいということを申し上げましたけれども,ワンクリックでいいようにするためには,事前に債権者との間に一応のアレンジメントができていなければいけないわけですから,そういうことを要求するのかということでございます。  ここに出ておりますイからニの問題点,いろいろ問題点を出していただいているわけですけれども,このイの点についていうと,これが一番大きい問題だと思うんですけれども,極めて複雑な法律問題で解決不能と考えるべきかどうか,これが考え方の分かれるところかなと。さっき○○委員は「債権者が同意しない場合は,後で取り消せるというふうにしてはどうか」という御意見をおっしゃったんですけれども,私はさっきの○○幹事の御指摘の方で,原因関係に全く無関係ということで考えていった方がいいのではないかと。  ただ,それで押し通せない場合が,前に御指摘いただきました,電子登録債権が債務者の申請で成立した後で,債権者がそれに対して承諾するような行為を一切していない段階で,債権者の債権者が差し押さえた場合にどうするか,これが一番問題で,それ以外の場合は原因債権に債権者が同意を与えない限り,あるいは,同意を与えるような行為をしない限りは原因関係には影響を与えないということで押し通すのがいいのではないかと思っておりますけれども,債権者の債権者が差し押さえた場合には全く影響を与えないというふうに済まなくなってくる可能性がある。ただ,そういう場合はほかにもいろいろあり得るし,その結果そんなにどうしようもないような困った法律関係になるのかというと,そうでもないのではないかという気がしています。  これは考え方の分かれるところでございますけれども,例えば現在借家関係で,家を賃貸している人が更新を拒絶して,賃料の申込みを拒絶していまして,その人の預金口座に借家人が勝手に振り込んでしまいますと,それで預金債権としては成立してしまうわけです。それが差し押さえられた場合と同じようなものになる。そういう場合,法律関係が複雑になるからそんなことは許されないというようなことを言う人はいないわけで,結局,債権者の債権者が債権を差し押さえて,場合によっては転付命令等をつけて自分の債権の回収ができたとしますと,その範囲で差し押さえた方の債権者の債務者,つまり差し押さえられた債権の債権者側から言えば自分の債務の弁済の効力が発生して,その分だけ利得が発生したことになる。  そうなると不当利得の関係が債務者と債権者の間で起きてくる。その不当利得との法律関係で処理していけば対応できることであって,そこから生じる結果がどうしようもない難しい法律問題を生じさせるということには必ずしもならないのではないか。今言いました振込みの場合と同じようなことであって,そういう関係はほかにもあり得るわけありまして,この場合だけ,特に非常に困る法律関係がそこから生じるからといって,B-2案がまずいというふうに言う必要はないのかなと感じております。  次のロについては,技術上の問題になるんですけれども,法律論を離れた政策的な問題なので,これは政策的な考え方が分かれるところなのかなと思います。とにかく法的には,さっきから言っておりますように,債権者の方がたとえ電子登録債権を債務者が勝手に発生させたとしても,それは自分と債務者との間の原因関係には一切影響を与えないという態度を貫けばいいはずであります。  それから,ハはこれまた思想が分かれるところだけでありまして,ニのところはよく分かりませんでした。むしろB-2案は一番簡単に電子登録債権を発生させる方法でありますけれども,それによって債権者がすぐそれを資金化したいということであれば,それを認めてそれを資金化すればいいだけの話なので,今のような問題が指摘されているのはちょっと理解しにくかったということです。  とりあえず以上です。 ● ほかに。はい,○○委員。 ● 今のイのことについて,○○委員がおっしゃっておられることと同じことなのかどうなのか,私自身もあまり分からないんですけれども,債務者側からみますと,債権者の債権者の差押えについては非常に包括的な形で,投網を投げるような形でやられていることが多いと思うんですね。そうしますと,原因債権があって,その原因債権があるということを知っている債権者の債権者は,原因債権そのものの差押えもやりますし,電子登録債権になっているかもしれないということで,そちらの方の差押えもする。それから,譲渡登記がされているかもしれないので,そちらの方もやるという形でまとめてやってしまいますし。それを複数の債権者がやってしまえばまた別の問題が生じると思いますけれども,一つの差押債権者との関係では,債務者は特に大きな問題に巻き込まれるということはないのではないかなと考えております。 ● ○○委員,どうぞ。 ● イのところなんですが,○○委員のお考えで原因関係の不当利得で処理すればいいと考えでいきますと,これは一つのお考えとして成り立つんですが,その場合には,後で議論していただく,学会でも皆さんに伺おうと思っているのは,論点の2のところで出てくる事例で,その論理でいくと事務局見解及び判例の立場と逆の答えが出てくる。それはまた2のところでやっていただければいいんですが,最初に譲り受けた人,電子登録債権発生以前に譲り受けた人は無関係なんだから,さっきの○○幹事の御指摘でいうと,放っておけばいいということで,そのまま優先権を主張して原因債権についての弁済請求ができるということになると思うので,これはかなり大変な議論が出てくるということで,極めて複雑な法律問題が生じるかもしれないと思います。  それから,ハのところは,思想の問題ではなくて,以前,部会長が確認されたように,法定債権を発生させるという形に法律的にはなってしまうので,今の電子登録債権の話の中に民法上の不法行為や不当利得,事務管理,ああいうところと同じような形の債権の発生を認めるというのは思想の問題ではなくて,学会では受け入れがたい,特に民法学者としては受け入れがたい議論になるんだろうと思います。  一応それだけ申し上げておきます。 ● ○○委員。 ● ○○委員に具体的にお伺いしたいんですけれども,○○委員のお考えですと,債権者の債権者が差し押さえてしまった場合は,その差押え自体は有効なわけですね。そして,原因債権の行使はできなくなるけれども,代りに不当利得債権を取得するということでしょうか,元の債務者として。不当利得債権は誰が誰に対して……。 ● 原因債権が行使できなくなるではなくて,原因債権はそのまま残っているんですけれども,その結果,差し押さえられた債権者が自分の差押債権者に対する債権の弁済の効力が発生してしまうわけですね,債権者にとって。したがって,その分だけ利得が生じる。原因債権はそのまま残っていますけれども,債務者が債権者に対する関係,その結果,不当利得になるのかどうか,そこはちょっと自信がありませんけれども,その分だけ利得が発生していると。 ● 債権者に。 ● それによって自分が電子登録債権をしたことになるのかどうか,原因債権に影響を与える……。すみません,時間がもう少しかかりますので。 ● はい。では,後ほど御発言ください。○○委員,どうぞ。 ● では,お考えいただいている間に,あまり差し障りのない,さっき執行の問題だといって,民法の一般原則についてつなぎの発言をしておこうと思います。  両面ありまして,他人の意思に反して利益を与えるという面と不利益を与えるという面と両方あるわけで,電子登録債権を債権者が知らない間に発生させるというのは利益を与えることですよね。それは債権者の財産管理について,あるいは財産権について私的自治に反するということだろうと思います。法定債権ではないかということなんですが,法定債権といっても,不法行為の場合ですと損害があるとか,不当利得の場合ですと,その前提となる利得があるというわけですが,この場合には何ら原因もないのにいきなり債権が発生してしまうということになるわけです。それを手当しようとすると,先ほど○○委員がおっしゃったような債権者となるべき人に遡及効のある放棄が必要だということになりますが,それは非常に複雑なことになるだろうと思います。そういう他人の意思に反して利益を与えるというのは,私的自治に反するというのが一方であります。  他方で,他人の意思に反して不利益を与えるというのは,なおさらその問題が出てくるわけですが,その点が先ほど○○幹事が御指摘になられた原因債権に及ぼす影響ということだと思います。考え方としては,リンクさせるということもなくはないと思いますが,やはり無理だろうと。例えば,支払のためにというような効力を擬制するということはやっぱり無理だろうと。そうすると切り離すということになるわけですが,切り離した場合に,後で同意をすることによって再び原因債権に影響が出てくるというのは,今の○○委員のお考えだと思うんですが,それはまた非常に複雑なことが生じるであろうと。同意によって実体関係が変わるとすると,同意の前と後とで,例えば原因債権の譲渡があった場合,あるいは,原因債権が差し押さえられた場合等々について,法律関係が変わるということになりますが,かなり複雑で不安定なことになるだろうと思います。  そうすると,思想の問題かもしれませんけれども,より実際的な問題も含めて難点がかなり多いのではないかという気がいたします。 ● ○○委員,どうぞ。 ● B-2案の場合に,債権者の受領行為がないというふうなお話がされていると思うんですけれども,利用する場合に,必ず利用者は管理機関に電子登録債権を利用するための口座を開くということでやっています。債務者単独申請で発生させたとしても,債権者も見ようと思えばいつでも見れるような状態になっていると思います。これは手形の場合で考えると,まだ封筒を開けていないけれども,ポストの中に郵送された手形が入っているという状態と同じなのではないかと思いまして,それとのアナロジーで考えれば,手形に対して差押えがきているというふうなこともあるわけですから,それと同じように考えられないのかなというのが,間違っていたら御指摘いただきたいんですけれども,素直な感覚なんです。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 手形の場合は,債権者は債権者の手元に来る前はそれが差し押さえられて債権を失うということではないわけですよね。電子登録債権でB-2案をとった場合はそういうことが起こり得るということだろうと思います。  それから,最初の方で御指摘があった,必ず債権者も口座を持っているはずだとおっしゃるんだけれども,それは一括支払システムみたいな閉じたグループで利用しているときは,あらかじめそういうふうになっているでしょうけれども,これは一般手法として作ろうとしているわけですから,全然関係のない人に対しても発生させることができるという前提で考えなければいけない。そのときに特定の管理機関に口座を持っていない債権者に対しても通用する議論をしなければいけないということだろうと思います。 ● ○○委員,どうぞ。 ● A-1案からB-1案までを採用するということは,必ず双方から申請があるということですから,申請するためには管理機関あての口座が必要であって,そういう意味で必ず口座は開設されているという前提だと思います。 ● B-1案まではそうですよ。B-2案はそうではないでしょうという内容です。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 実務の点から,今の点が,まさに私は疑問として皆さんに教えていただこうと思ったんです。要するに債務者が一方的にこれを取り出すということになったときに,例えばAという債務者がAという管理機関でこれを取り出そうとしても,受取人である債権者はそこに何ら登録をしてなかったというときに,どうやって有効的に取出しができるんだろうかという実務的な疑問を持っている。もし一方的に債務者側が法定取引をせよという格好で利用者を強制するということになることもあり得るのかなと。これは逆にまた銀行かなんかで問題になるのか分かりませんけれども,そういう点でどうやって登録のない債権者に対して支払を発生させることができるのかという技術的な問題を疑問として思っております。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 債権者側に口座がないというようなケースですね。 ● 管理機関に登録してません。 ● その場合,どういうケースかというのを想定できると思っております。電子登録債権を利用していって,相手先ごとに今の決済方法から切り替えるという場合に,かなりシフトしてきたので,債務者側としてはできるだけ同じような決済方法でやりたいということで,債権者側の口座がなくても,とりあえず電子登録債権化しようというケースはあると思うんですね。ただ,債権者側からすると,口座がないわけですから,管理機関での意思表示もできませんし,権利行使もできないということなので,位置づけとしては,債務者から送金のデータを銀行に送ったような状態で,債権者からは権利行使できないんですけれども,自動的に資金を受領できるような関係になるのではないかなと思います。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● ○○委員は何度か「口座」という言葉をおっしゃったんですけれども,その口座というのは,お聞きしていると銀行口座のことではない,管理機関との間でIDとかパスワードをもらう,そういうことを「口座」というふうにおっしゃっているように思うんですね。ちょっと銀行口座と紛らわしいものですから。 ● おっしゃるとおりで,管理機関あての意思表示をするためのID,パスワードを通じた口座ということです。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 債権者側は電子債権を通じない,例えば手形でほしいと思っていることもあり得るわけですね。そういったときに,このケースでいけば一方的に債務者側が登録,発生させるということになってしまうんではないですか。 ● そういう場合を想定しているのではなくて,例えば,譲渡禁止付きの売掛債権で資金化,債権流動化に使えないと。ただ,債権者側が管理機関に口座さえ開けば流動化できるような状況を債務者側から積極的に救い出してあげようということで,とりあえず債務者側からの登録はしておきます。そういうふうなプラスのメリットを与えるようなやり方もあるのではないかなと。想定しているのはそういったことです。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 先ほどから伺っていると,○○委員の想定されている利用の仕方が,電子登録債権の利用の仕方の全部ではないような気がするんです。明らかに一括支払システムみたいな閉じたグループで,大企業が多数の顧客に振り出すという利用方法にはあてはまる議論のようですけれども,そうでない一般的な法律として考えた場合に果たして通用する議論なのかというと,違うような気がするんですね。手形の場合だと債権者がどこの金融機関と取引していようが振り出すことができるわけですが,電子登録債権で一定の管理機関にあらかじめ登録しているというようなことを想定すると,それは全然違った利用になってくるんですね。 ● ○○委員,どうぞ。 ● さっきのやや混乱してお答えができなかったことを,正しいかどうか分かりませんけれども。債権者の債権者が債務者が勝手に創設した電子登録債権を差し押さえたとしますと,その結果,債権者の債権者が債権について弁済を受けることになると。債務者の方はその分については当然払わなければいけないわけですので,損失をこうむることになる。債権者の方はどういうことになるかと申しますと。すみません,もう一度考えを整理し直させてください。 ● ○○委員。 ● 管理機関は,管理機関と事前に何も登録関係のない債権者のために電子登録債権の登録を受け付けてはいけないというルールはあり得ないんですか。そういうふうに決めておけば,A案からB-1案まで皆そうなっているんですね。B-2案もそれを共通ルールにしてしまったら,○○委員のおっしゃっていたことは,ともかく管理機関としてはこの人とは全然関係がないから,そういうのは受け付けませんというふうにして全部返せるわけですよね。そういうことができておかしくないので。  例えば,過去に私の銀行口座を知っているからといって,勝手にお金を送ってくる人がいるんです。これに関して一度も依頼したことがないんですけれども,送ってこられているので,私は受け取っているんで,それで弁済がくると思うんですけれども,そんなことが起こらないように,この管理機関には関係のない人ですから,断らなければいけないというふうに管理機関側に義務づけておけばいいとも思えたんですが。 ● それは法律の問題ではなくて,各管理機関の業務規程でそういうふうに決めることはできるでしょうけれども,全部がそうではないという前提で。 ● 私はむしろ法律の中に入れておくと。 ● ○○委員に御質問ですが,管理機関は無関係の債権者たるべき人のために何とかとおっしゃった。その無関係かどうかというのはどういう基準で決めるんですか。 ● 管理機関が独自に判断すると。つまり,あらかじめそこに来るということが分かっていない人の分は全部ノーと言うと。勝手に登録できるという状況を排除するのに必要なルールをつくればいいという。 ● 中には,管理機関は自分のところにあらかじめ登録している人じゃないと債権者として受け付けないという業務規程を設ける人もいるかもしれないけれども,すべてにそれを強制するということは,今までの議論の前提では全然ないんじゃないと思いますが。 ● A-1案かA-2案,B-1案はそういう前提になっているんじゃないですか。 ● 全然なってないですよね。 ● 申請してくるということが関係ですから,申請も含めて関係ということですけれども。債権者になる人は申請してくるんですね,登録してくださいと。そういうふうに言うか,事前にそういうことをしてもいいということを債権者の側が言っていない限りは登録できないということにはできないかということをお尋ねしたんです。 ● それはさっき議論した包括委任とどこが違うんですか。 ● 包括委任みたいなことです。ですから,ワンクリックがあり得るという話を聞いて,事前に関係があるからワンクリックが成り立つわけですから。○○委員がおっしゃった「拒む」というのもワンクリックの一種で。ワンクリックの話を聞いて疑問だったのは,クリックしなかったらどうなるのかと。ずうっと画面を立てておいて,20年たつということもあるんですね。そういう問題は後で出てくると思うんですけれども,ワンクリックというのはシステムが先に構築されているので,そのシステムの一員であるかどうかということがあらかじめどこかで決まらないと作れない話だと思うので,そのシステムの一員であるということを確認して,そういう人の分に関連した申請でないと受け付けないということは,制度上,法律で要求できるかなと思ったんです。 ● それはB-2案をとるという……。 ● どの案でも同じことになると思うんです。 ● そうなんですか。 ● ワンクリックの話をする限りはそうじゃないとおかしいように感じます。 ● ワンクリックでなければいけないという議論は誰もされていません。 ● ワンクリックの話をするならばという……。 ● ワンクリックはOKということを言っているだけで。 ● 電子登録債権を勝手に債務者が発生させて,それについて債権者の債権者が差し押さえた場合は,結局,それで債権者は自分の債権者に対する弁済が発生するということ。一方で,債務者の方はそれでありながら債権者が原因関係の影響を否定して,原因関係はそのまま残っているということになると,債務者が一人相撲をとったことになりますので,債務者が自分で二重の負担がそのまま残るということになるだけであって,それ以外のことには影響を与えない。債権者はあくまで自分の債務者に対する原因債権を主張している以上は,そのまま債権として残るだけではないかというように思います。 ● 先ほどは不当利得の問題が生じるようにおっしゃったんですが,これはその問題も生じないと。 ● はい。 ● そうすると,原因債権について100万円の電子登録債権を債務者が登録したときに差し押さえられてしまうと,電子登録債権100万円を差し押さえた債権者に払い,かつ,原因債権については影響を及ぼしていないから,原因債権の100万円を払って,あとの清算は一切してもらえないということになるんですか。 ● そういうことになりますね,認めてもらえない以上は。 ● それは妥当なんでしょうか。 ● それは常にまさにそういうリスクを負うと。相手の同意を得ないで電子登録債権を債務者として勝手に発生させた以上はそういうリスクもあり得ると。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 私はA-1案に賛成であるということを前提にしながら,2点申し上げたいと思います。  1点は,不当利得は生じるのではないかと思いますし,仮に生じないとしても,債務者の第三者弁済のような関係が生じますが,何らかの形で調整はされて,そんなに変な話にはならないのではないか。B-2案に賛成はしてないんですが,そんなには変にならないのではないかと思います。  2点目,これもB-2案に賛成しているかのように聞こえることを申し上げます。民法上の一般原則を修正することになるからB-2案に反対であるというと,私は賛成できないんですね。例えば,先ほど○○委員から誤振込みの例が出ましたけれども,誤振込みの最高裁の民事判決と刑事判決を整合的に理解しようとしますと,本人は請求できないけれども,差押えは可能であるという内容になるわけですね。そういう意味では,本人は誤振込みがあったからといって利益としての債権を得ているという状態に必ずしもなっていないわけであって,かつ,それでは本人が払戻を受けたらどうなるのかと。誤振込みの問題を除いて,B-2案のときにどうなるのかと。それはそこで受益の意思表示をしているわけですから,自分の意思に反して私のところに権利が発生したなんて言わせる必要はさらさらないのであって,私は民法上の原則から認められないとは思いません。  さらに申しますれば,これは後で議論すべきことで,今回,今日ではないかもしれませんが,登録保証の現在の試案は登録保証人の一方的な登録によってできる形になっているのだと理解しておりますが,違いますか。 ● 違います。 ● ああ,そう。この問題と対応する。 ● 登録保証も債務ですから,債務者です。 ● 対応することになるんですか。はあ,そうですか。それでは,その点はカットします。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 発言しようかどうかずうっと迷っていたんですけれども,○○幹事が心強いことをおっしゃっていただいたので,ちょっと発言させていただきたいと思います。  私たち商法をやっている者から見れば,民法の一般原則に常にかかわっていたら私たちの存在意義はないというところがありまして,むしろそれをどこまで必要性に応じて修正できるのかということを議論してきたというふうな感じがしております。それは理論的に破綻することがあるかもしれませんけれども,そこの部分で私たちは,このどこに必要性があるのかということを吟味するというスタンスで,学問的には存在になるのではないかなと考えているんです。  そういう点で考えますと,問題の設定の仕方はB-2案の構成をとることによって可能となる法律構成はどういうものか,どういうニーズにこたえることができるのかということに尽きるのかなと思います。B-2案をとった場合に生ずる弊害は実務上の対応で,B-1案から以下のAに対応するような形のものと同じように弊害防止策を講じることができるので,そういう意味ではB-2案をとることによって何ができるようになるのかと。それは○○委員が言っておられることでありまして,そこに対して,先ほど「電子登録債権が通常想定しているものではないでしょう」という御批判はまさにそのとおりでありますけれども,通常想定していないかもしれませんが,債務者の一方的な登録だけで債権を発生させておくニーズが,例えば一括決済の世界で存在するんだとすれば,そのニーズにこたえるような理論構成を許容するかどうかということだけを議論すればいいのではないかなという気がしております。 ● 今,一括決済の場合でも必要のようにおっしゃったんですけれども,決してそんなことはないはずです。一括決済も三者契約で処理されていますので。○○委員は一括決済を超えた手形的利用をということをお考えなので,一括決済でそれで必要だということをおっしゃっているわけではないですよね。 ● 具体的に考えていますのは,手形から単純にシフトするようなパターン,それから,譲渡禁止付きの債権を考えた場合,これは流動性がないので,債権流動化という形で資金化に使えないということが問題で,これを今までは,債務者が手形を振り出してくれるような関係であれば,それを流動化して資金化に使っていたと思うんです。手形を振り出すのも,いろいろなコストの面でなかなかしんどいということで今はどんどん減ってきている状況がある。その中で,低コストの電子登録債権を債務者にとってより簡便な形で発行することができれば,債権者にとって流動化をして資金化するという道が開けるのではないかなと思っているということでございます。 ● 私が発言してはあれなんですが,論点は2つあって,1つは相手方に対する意思表示があるかどうかという点,もう1つは一方的な行為で債務負担をするかどうかということなんですけれども,実態的な合意のレベルでの前提が欠けて,単に登録行為をするだけでいいのかというのが十分に議論されていなかったのがちょっと気になったんですが,その点はよろしいんでしょうかね。 ● 私だけの発想の違いなのかもしれませんが,議論の仕方として,ブロックを積み上げていくように,まずは当然のごとく契約がなければ債務を発生させるべきではないというところから議論を積み上げていくという議論の仕方と,それから,こういうニーズが今存在していて,そのニーズにこたえるための理論構成として,かたい理論をとるとそれはできないと,要するに社会からこういった利用の仕方を許容しないというところをどう評価するかという問題が2つあって,そこが議論のすれ違いになっているのではないかなと思ったんですね。  確かに理論というのは積み上げがあって,理論に限界があって,それ以上のことは理論的に無理なんだという限界値を探ることも必要かとは思いますが,他方において,今,○○委員がおっしゃっておられるニーズというものにも耳を傾けてみて,それが社会にとって有用なニーズであれば,そこは理論的に説明していくという努力をしていくのが,民法と特別法を作ることにおける今までの議論の積み重ねだったのではないかなと思うんです。したがって,ベースになっている議論を絶対に崩さないというのであれば特別法はそもそもつくれませんので,ニーズに耳を傾けてみるというアプローチをとって,○○委員のニーズを伺ってみたかったというだけのことです。  私はニーズを誤解していたんですけれども,今の御指摘にあったような手形を代替的に流動化させるというニーズに,ものすごい強いニーズがあるというふうにお考えになるのであれば,それに対して理論的に何らかの整合性をつけていくという努力をすることはやぶさかではないのではないかなと思っているだけです。 ● 商法の先生にお伺いしたいんですが,手形債権を発生させる場合には,実体上の合意というか,実体上相手方に対する意思表示はなくていいんですか。 ● 相手というのは手形……。 ● 債権者,債務者です。 ● それはまさに理論が違いまして,創造説の立場ですと,そこは要らないというふうに……。 ● でも,手形券面上には債務負担文言が書かれてあるわけですね。 ● それは書かれています。 ● それは相手方に分かるわけですよね。 ● でも,相手方の名前はまだ書いてないこともあります。 ● いずれにしろ相手方に交付して……。あ,そうか,創造説はそういう形の権利が……。 ● 手形上の権利として発生していて,それを単に権利移転するということです。 ● ただ,結果的には最初の権利者に渡ったところで実質上の権利が発生すると。 ● そういう理論をとられるのがむしろ伝統的な考えなんです。 ● そうすると,債務負担文言がついた手形が相手方にも渡るわけですよね。 ● 相手方のない単独行為だと思います。相手方がございませんので,意思の表白行為があれば債権は発生するというふうに考えているんだと思います。 ● その時点で差押えも当然できると。 ● 意思の表白行為のとらえ方によって,それが郵便局員に渡すときだという考え方もありますが,券面上に記載しただけで意思の表白があったということで成立するというふうに考えるのが一番極限的な創造説の考え方ではないかと思います。 ● そうすると,実体的な意思表示はまだそこではないと。 ● ないというか,その時点であったと,手形要件に最低限のことは書いてあれば。例えば,手形債権者,受取人の名前が書いてなくても,手形の権利としては発生するというのが通知によって分かるんだそうです。 ● 債務負担文言というのは一体どういうものなんですか。 ● 普通は印刷されている手形用紙を使いますから,そこに書いてあります。 ● それと電子登録債権の登録というのは同じレベルなんですか。 ● 絶対的に同じとは言いませんけれども,とにかく手形振出人の名前を記載したところで,手形上の債務は発生するということです。 ● すみません,ちょっと議論を混乱させてしまいました。 ● 何度も申しわけないんですけれども,○○幹事がおっしゃいましたが,さっきの事実で不当利得は成立すると思いますので,そういう形で問題ははっきりすると思います。 ● 時間が随分経過しましたので……。はい,どうぞ。 ● 今の不当利得は,元の債権者が不当利得を処理したと。元の債務者が債権者に対して不当利得の請求権があるので,それと原因債権をぶつけて相殺するという感じになるんですね。結論としては,債権者は原因債権もとれなくなる,要するに無理やり自分の債権者に払わせるのと同じ結果になると。 ● その範囲ではですね。相殺される範囲がある。その場合に不当利得の損害の発生と言えるかどうかちょっと自信がなかったので,私は撤回しちゃったんですけれども,やはり損害があるとは言えるのではないかと思っています。 ● では,最後。○○委員,お願いします。 ● さっきから民法の批判がたくさんありまして,1つだけ確認をしておきたいんですが,民法の一般原則というものが金科玉条として絶対的に維持すべきものだということは誰も考えていなくて,むしろ一般原則なるものを考えることによって,そこで保護されている価値とか他の制度との関係について考える手がかりになるということだと思います。例えば,勝手に電子債権が発生したとしても,原因債権には影響がないと○○委員がおっしゃるのも,その背景には勝手に他人を害することはできないだろうという共通認識があるからだと思います。  以上です。 ● すみません,不手際で時間が随分延びてしまいました。それでは,最後,⑤に議論を移していただきたいと思います。  これは事務当局からの新たな提案ですので,まず事務当局に補足説明をしていただきます。 ● 今まで①から④まで御議論いただいたわけですけれども,どの項目についてもいろいろな御意見があって,終わってはいないわけです。逆に言えばどの案にもそれぞれ問題点が指摘される方がいらっしゃるということで,その問題もあれば,B-2案的な問題もあるわけです。それはB-2案でも同じ御議論が出るわけですけれども。ただ,A案とB案の対比は,今までA案は契約構成,B案は法定債権というふうに当然のごとく分けて中間試案まで整理してきたわけですけれども,果たしてそうなんだろうかと。しかも,先ほど来お話が出ていますように,A案の問題というのは,申請の外に別に合意が必要になるので,その合意と申請等の間で食い違いがあった場合の問題というのが起きるわけですけれども,それをなくすためにB-1案みたいに考えないといけないということになるわけです。  これは中間試案を作っている段階でも,何人かの委員がおっしゃられたと思うんですけれども,B-1案とA案はそんなに違わないのではないかというお話があったと思います。そこからヒントを得たんですけれども,B-1案は必ずしも法定債権という構成が唯一のものではないのではないかと。やることは申請なんですけれども,その申請の中に権利を発生させる意思表示も含まれているのであって,それが交叉申込みのような形で行われるに過ぎないのだと考えれば,理論的な面も克服できるのではなかろうかと考えた次第ですが,いかがかということを若干御議論いただければと思います。 ● それでは,今,補足説明をいただきましたけれども,質問項目⑤の新しい提案について御意見を伺えればと思います。いかがでしょうか。○○幹事。 ● 先ほど来ワンクリックという話があったのと,一方で債務者の方が何らかの形で詳細なデータを記載したものを債権者の方では確認してぱっとクリックするだけであるというふうなことが,一般的に想定されていたようなんですが,それも申込みと言うのであればそれでもいいと思いますし,現実には先ほど電子手形との関係では承諾というコンセプトをお使いになられていましたが,申込みと言いたければそれでも構わないのかもしれません。  しかし,実感としては必ずしも申込みにこだわらず,承諾なども,両方からデータが来て,それでやるという場合もあれば,一方がデータを送ったものを片方がクリックして承諾すると。申込みというよりも承諾というコンセプトを使った方がしっくりくるような御議論が既になされていたような気がしまして。そうすると,ここにお書きになられているような案にもうちょっと広がりもできるし,広がりを持たせることが必ずしも不適切であるとは思われませんので,御検討いただきたいと思います。 ● ほかに御意見はございませんか。○○委員,どうぞ。 ● A-1案の包括同意のところの確認関係ですね,基本契約の存在と原因関係の確認というのを,管理機関にどの程度義務づけるかによって,クレジットカードなどの大量の債権を扱う場合には,一般に使えないという可能性もありますので,先ほど御説明がありましたように,継続的な契約においては基本的な契約の存在と,個別の一つひとつの確認というのは機関にとっては非常に大きな負担になってしまいます。そういう意味では,○○幹事が言われましたように,B-1案という形の考え方で,あとは電子登録債権の外で考えるというような対応でもよろしいのではないかなと思います。 ● ほかに。○○委員,どうぞ。 ● 先ほど○○幹事からも御発言がありましたけれども,私も交叉申込みというのをメインに出すのはあまりぴんときません。要するに,A-1案を緩やかに考えればいいのであって,さっきの○○幹事の言い方で言えば「債務者が詳細につくったものを債権者がクリックする」,もちろん逆でもいいけれども,そういう形で両方から申請があればいいと。この交叉申込みというのは,A-2案とかB-1案を取り込むための説明を加えるということと私は見ているので,これがメインの説明になるというのは本末転倒であろうと思います。こういう形でA-2案,B-1案の支持者の方も,緩やかなA-1案の発想の中へ取り込まれることとするというのであれば一向に差し支えないと,私はそのくらいに思っております。 ● ○○関係官,どうぞ。 ● 交叉申込みについて,これが原則というのは違和感を感じるという○○委員の御指摘はある意味ごもっともな側面はあるんですけれども,申込・承諾という構成を素直にとろうと思えば,先にした方の申込み,申請が相手方に伝わってはじめて申込みということになって,相手方がそれに対して応じてはじめて承諾になるということになってきて,管理機関に対する意思表示しかないということになってくると,厳密な意味で相手方に伝わっていない前提でものを考えたときに,申込み・承諾とは言い切れないというところがございます。  相手方に必ず伝えるという点を克服しようとして考えたのがA-2案だったんですが,A-2案は必ず通知を要するというのは耐えられないという御意見が強うございましたことから,ひっくり返してものを考えてみると,交叉申込的に契約ということが観念できないか。さらに相手方に何らかの形で通知されているという前提であれば,相手方の後からやる方は承諾と言ってもそれはいいわけです。ただ,そういう形で申込・承諾として,それを原則だと言ってしまうと,必ず伝えなければいけないということになってしまうから,それを原則にはせずにやればいいということから,交叉申込みという言い方をしているということでございます。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 確認ですが,交叉申込構成の場合には,到達は不要だというお考えですか。 ● ここに書いておりますように,電子登録債権においては管理機関が受取手になるんだと,それぞれの申込みの相手方にはいちいち到達しなくても,管理機関に到達した段階で済むんだというふうに考えるということでございます。それによって,相手方に通知しなければいけないという問題を解消しようということでございます。 ● そうしますと,申込みの意思表示は相手方にお互いに到達しないという前提ですか,受領権限を与えるというのではなくて。 ● 当然に管理機関に到達した時点で相手方に到達したものとみなされると,電子登録債権でいうと。 ● 法定の受領権限があると。 ● みたいな感じということです。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 私はそういうことになっても難しいことを考える必要は全然ないと思っております。A-1案は2人一緒に申請をしているんですから,どっちが早いとかいうようなことを論じるまでもないのであって,一方が作った申請に他方が同意を与えて,それで当事者双方が登録申請をしたことを確認すれば,管理機関は足りるんだと。それ以上,どっちが申込みで,どっちが承諾だなんていうことを詰めて考える必要もないし。交叉申込みというのはまさにA-2案的なものを取り込むための論理であって,これをメインにするなということを申し上げたいと思います。 ● ほかに。○○委員,どうぞ。 ● A-1案だと,当初指摘された100万円の同意に対して1,000万円と間違って,両当事者が申請してしまったというケースで,実体的には100万円の電子債権しか認めないわけですよね。あとは外観法理かなんかを新たに別につくって,1,000万円の電子登録債権を発生させるというステップをもう一回踏まなければいけないわけですよね。A-1案にはそういうシステムをまた別に作らなければいけないという問題がある。それなしに申請行為だけで済まそうというのがA-2案でありB-1案であるということで,必要最小限はどこかと考えれば,法律上,管理機関に受領権限をみなしで与えてしまって,交叉申込以前のところで民法上も契約も成立,そして申請も成立というふうにするのも,テクニカルだけれども,ありかなと思っています。 ● テクニカルではあるけれども,ありかということを全部否定するわけではありませんが,100万円というのを1,000万円と申請したときの処理のために,基本的な論理構成を動かすようなことは本末転倒でありまして,100万円のものを1,000万円としたときに,外観法理で1,000万円を有効にするかどうかは,電子登録債権の性質として,そういうものは表示の方を見るんだとか,それはまた別の議論をすべきであって,ここでは登録の問題として。そこで,事務局がこだわられているような誤申請のことを余りにも針小棒大にとって,それをうまく説明するために基本的な理論を変えようとするのは私は賛成できない。基本的にはA-1案でそのままいけばよろしいと私は思います。 ● ほとんどのケースはA-1案で問題ないというのは分かるんですが,極端なケースをとって,それでも説明できますかというのがここでの議論なのではないかなと思ったんです。 ● 今,○○委員のおっしゃった何らかの手当というのは,立法の際には実際に手当をしなければいけないわけで,それもあわせて考えなくてはいけないという問題も残るのではないかという気がいたします。  いずれにしろ時間が大幅にたってしまいまして,私の不手際で申しわけありませんが,論点1についてはこの程度にさせていただきたいと思います。今までの議論でかなり深まったと思いますが,なお対立が残っているという形になってしまっておりますが,この程度にさせていただきまして,シンポジウムがあるようですので,その結果も踏まえて次回以降にさらに議論をさせていただきたいと思います。  それでは,論点2の「電子登録債権の発生と原因債権の譲渡等が競合した場合の取扱い」に移りたいと思います。この論点については,事務当局に趣旨の説明をお願いいたします。 ● この論点を取り上げた理由は,冒頭に申し上げたとおりで,シンポジウムの前にもう少し御議論をいただいた方がいいと考えたものでございます。前回の部会でもこの問題についてもう少し議論した方がいいという御指摘を○○委員から頂戴しましたので,それを踏まえて取り上げた次第でございます。  4ページの(注)に書いておりますのは,既に皆さんお読みいただいていると思いますけれども,○○委員がお書きになられた論文でございます。ここにお書きになっておられることは,私どもが書いているものと若干違います。①はこれでいいんだということだろうと思うんですけれども,①はこれでいいとすると,③は本当にこれでいいのかという問題提起をされておられるんだと思いますので,そこら辺を御議論いただければという趣旨でこれを出しているということでございます。 ● それでは,事務当局のされている整理でよろしいかどうか,御意見をお伺いしたいと思います。これにつきましては,○○委員の論文等が引用されておりますので,もしございましたら,○○委員,御発言をお願いします。 ● 全体には,○○幹事から御説明があったように,債務者がこのケースで,要するに先に原因債権が譲渡されて,動産債権譲渡特例法4条1項の登記がされて,第三者対抗要件を譲受人がとったと。ただ,2項の通知はまだされていない。この段階で電子登録債権を発生させて,その電子登録債権がAからDに譲渡されたというケースです。  こういうケースは本当に起こるのかというと,A-1案からB-1案までのケースでも起こらないわけではないですし,B-2案だとさらに起こる可能性はあります。つまり,特例法登記で第三者対抗要件をとるというのは債務者に知らせないでとる対抗要件ですから。債務者は知らずに電子登録債権を発生させる。A-1案からB-1案までだと,発生の段階でクリックするか何かで債権者は少なくとも知るわけですね。だから,A-1案からB-1案までの場合には,このケースは債権者が知っていながら,自分が先にした原因債権の譲渡と抵触する登録をクリックするとオーケーするという,ここで責任問題は当然生じます。だけど,二重譲渡,普通の,いわゆる民法の二重譲渡ということを債権者は知っていてやるわけですから,そういうことがあり得ると。さらに,B-2案だと,非常に困ったことに債務者単独でありますから,債務者に悪気がなくても債権譲渡特例法登記の譲渡があったことを知りませんので,普通に登録してしまうと。さらにB-2案だと問題が出てくる話です。  ついでに申し上げますと,③の御検討をいただく前に,①に書かれていることの下3行ぐらいのところはB-2案では言えなくなるんですね。つまり,勝手に他人を害せないと,さっき○○委員の御意見に対して○○委員の解説というか,理解が示されたところですけれども,①の考え方は指名債権譲渡があった後で手形を出したケースで関連があるものなんですが,手形の返還と引換えでなければ支払わないと言えるというやつですよね。それを民法で言えば,468条2項の「その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由」に当たるからということで拒めるわけでしょう,債務者は。  だから,B-2案で,債務者が勝手に出したというときには,「勝手に他人を害せない」ということになると,この事由に当たらないという言い方が出てくる。これはパブコメで流動化,証券化という理解から,B-2案をとるんだったらそうした方がいいよと。その事由に当たらないという考えが成り立つというか,そうすべきだという御意見がパブコメで出ていたと思います。ですから,これも一つのやり方として処理はできるわけですけれども,そういう問題が出てくる。  したがって,②は,①の抗弁が立つということを前提にして書かれているものです。つまり,手形の返還がない限りは払わないのと同じように,電子登録債権の支払等登録がされなければ,それと引換えでなければ原因債権を払わないというふうに抗弁されちゃいますから,原因債権の譲受人Cは譲受債権の請求はできず,電子登録債権の譲受人Dは,Cの存在にかかわりなくBに対して当該電子登録債権の支払請求ができると。その場合に,帰結としてCとBとの関係でいうとどうなるかというところですけれども,ここでお書きになられているのは,原因債権と電子登録債権は別の債権だから二重譲渡関係には立たないんだと。二重譲渡関係に立たないというと,考え方は3つぐらいありまして,○○幹事がさっきおっしゃったような発想でいくと関係ないということになると,もともとの譲受人Cも電子登録債権が出たのは関係ないんだから,自分が譲り受けて対抗要件を具備した債権は回収できていいはずだというのが1つです。  それから,ここで書かれているのは対抗関係に立たないので,Dが債務者Bから電子登録債権の支払を受けても,DはCに対して不当利得返還債務は負わないと。つまり,この考えは,対抗関係に立たないんだから,二重譲渡の関係の優劣問題にはならない。ならないけれども,Cは譲受債権を主張できないんだから,Dはとってしまって,その結果,後処理も何もないDの勝ちと,Cは損をするという考え方です。  3つ目の考え方は,ここに書かれていないんですけれども,債務者が電子登録債権の発生をもって抗弁を対抗できるということは,原因債権と電子登録債権には牽連性があるんだろうと。だからこそそういうことが言えるんでしょうと,無関係ではないじゃないですかというんですね。そうすると,無関係でない,牽連性のある債権について,債務者が抗弁して保護されたんだから,その債権の処分について,原因債権の処分と電子登録債権の処分は二重譲渡に近い関係,牽連性のある関係に立つんだということになると,CとDの間では,Cの債権譲渡登記の何らかの優越性を認めるべきではないか。そうするとCからDに対しての不当利得返還請求は立つのではないか。これが3つ目の考え方です。  私としては,これは学会でも御質問したいんですけれども,ここでも皆さんに御意見を承れればありがたいと思っております。 ● 今の御発言に関連して何か御意見ございますか。ややこしい法律関係になりますけれども,何か御意見がございますでしょうか。○○幹事。 ● 意見というか,私自身はここに書かれたとおりではないかと考えております。ただ,留保が必要であるのは,○○委員がおっしゃいましたように,原因関係に対する影響がいくつかのパターンがあると。それは当事者の決め方次第であって,発生登録のときにどういう関係をとるかによっても,さらにバリエーションが出てくるということですが,例えば影響しないということができるのか,そこも当事者が決めればいいんだということだすると,影響しないものとして電子登録をしますと。影響するんだけれども,抗弁がつきますというタイプのものとすると。  あるいは,支払に代えてということで,完全に弁済したのと同じような形で,原因関係は消してしまいますと。それは当事者の処分行為の内容で,それによってその後の処理が変わってくるというのはそのとおりだと思いますけれども,いただいた資料について,①の本文の3行目,「電子登録債権の発生後も原因債権が併存する場合には」と,わざわざ違う可能性もあるけれども,「併存する場合というのを考えた場合には」ということで含みを持たせておられると思いますので,これが併存しない場合で消えてしまう場合はどうかとか,全く無関係である場合,「ために」ということさえ言えないようなタイプのものだとどうかとか,そういうバリエーションはあるでしょうけれども,問題になり得る事例としてこの場合を考えたときには,①から③のような帰結になるということであまり問題がないのではないかと私は思っております。  確かに原因関係のところに影響をしてきて,原因債権の行使があったときに,それに対して抗弁を主張できるという限りでは,原因債権移転と電子登録債権というのが影響しあっているということがありますけれども,対抗の場合はそうではないというのが,あるときには他方の影響関係をなし,あるときには影響関係をなさないのが影響しないということですけれども,それは操作のところで当事者がその選択をして,このようなものとして原因関係にこういう影響を及ぼすといって処分をしているわけですから。極端なことを言えば弁済したのと同じで,消してしまっても同じような話になるわけですので,ここは矛盾しないのではないかという感じがしておりまして,位置づけとしてはこういうことではないかと私は思っております。 ● ○○幹事に2つ質問させてください。  1つは,併存する場合と仕切っているからということなんですけれども,併存ということの中には,牽連性を持つ併存と,○○幹事がさっき言われた全くの無関係というのと両方あり得てしまうので,それによって答えが,最後のところ,BがCに払わなければならなくなるかというあたりが全然変わってきてしまうので,この仕切りではまだ決まらないのではないかというのが1つ。もう1つは,当事者が決めればいいとおっしゃいましたが,対抗関係というのは当事者が決められることでしょうかということです。対抗関係というのは当事者の合意の外にあるのではないかというのが私の理解です。 ● 第1点はそのとおりだと思っております。先ほどの当初の電子登録債権の発生に関して,一定の考え方をとった場合にはおよそ原因債権が影響しないという形での発生の仕方があり得るというのは,この場で確認されたところだと思いますので,そういう可能性があることはたしかで,その意味で○○委員がおっしゃるように,「併存した場合」という場合にこのような対抗が主張できるものであるという前提として書かれているとすると,それはもう少し細分化が必要ではないかというのは,そのとおりだと思います。  ただ,問題になる場面として,典型的に従来触れたあの関係を含めて言われていた一つの場面として考えるとすると,こうなるのではないかと。ここでも,「いわゆる支払のためにこういうものを発生させた場合には」というのが括弧書でついておりますので,そういう場面に限定した記述として考えるならば,こうなるのではないかということで,原因関係に全く影響しないという場合で,したがって,先ほどおっしゃった無関係であるとか,放っておけばいいと言われた場合には違うとおっしゃられたのは,そのとおりだろうと思っております。ここは言葉足らずで申しわけございません。  2点目の対抗関係が当事者に認められないというのは,そのとおりなんですけれども,対抗関係のところにどうなってくるか,対抗関係の射程がどこまでかというので,もともとの債権が譲渡されて対抗要件が備わったというのは,債務者に対して主張できる前に弁済されて消えてしまえば,債務者との関係では負けるし,それとは別のものとして,別の債権を独立して成立させているという話と,対抗問題というところはそこまで射程として入ってくるのかというのは,一律に決まらない話ではないかと思うんです。  すみません,とりあえず……。 ● それでは,○○委員,どうぞ。 ● 私は基本的に2の整理でいいと思っているんですけれども,2の①のところで,原因債権と電子登録債権の関係というのは,電子登録債権は原因債権と全く無関係に発生するものではなくて,原因債権と一定の関係のもとに発生させるわけで,どういう趣旨で電子登録債権を発生させたかということで,その後の両者の関係が変わってくるということだと思うんですね。ここに書いてある「電子登録債権の発生後も原因債権が併存する場合」というのは,その後の消滅する場合の対比で書かれているのであって,原因債権との関係で,電子登録債権を発生させることによって原因債権を消滅させようという当事者間の合意がある場合もあるわけですから,そういう場合は「支払に代えて」になっていくと。後ろの方に書いてあるように,原因債権は消滅して,電子登録債権だけが残る。  それに対して通常は電子登録債権を発生させるというのは,原因債権の支払のために電子登録債権を発生させる,そういう通常の場合について言えば,ここに書いてあるようにかかるというのがありまして,民法468条2項で,同項の抗弁の問題が引換えでなければ,原因債権の請求はできないというふうになります。  それから,さっき○○委員が御指摘になりましたB-2案との関係で,そういう原因債権との関係なしに,原因債権の債務者の了解なしに債権者の方だけで電子登録債権を発生させた場合,それは支払のために電子登録債権を発生させたとは言えないわけですから,そういう場合は抗弁の対抗を受けないと,468条2項の問題にならないというのは,まさに○○委員のおっしゃったとおりで,そういう場合は両方の債権が並立しているし,両者の間に優先的な行使関係も起きないということになると思います。  そして,その次の②のところは,当然,支払請求することができるということになります。③との関係で,今,対抗の問題は当事者の合意で決まらないのではないかと○○委員が御指摘になりましたが,1つの債権が二重譲渡されたようなときに,そのどちらが権利者としての主張ができるかという問題が起きるときは対抗問題になる。そうではなくて,ここでは電子登録債権と原因債権は別個の債権ということですから,これは対抗の問題にはならないというふうに私はとらえています。あと,先行使の問題なんかは,さっき言ったように原因関係との関係で抗弁が発生し得る場合はあります。  以上です。 ● 1点だけ確認させてください。○○委員の御説明はよく分かりました。非常に多数の御意見はこういう説明をなさると思うんですね。今の御意見だと,①のところで,支払のために出す場合というのは原因債権と電子登録債権に一定の関係があるという御説明でしたよね。全く別の債権であるけれども,何らかの権利関係というか……。 ● そういう当事者間の合意のもとで発生するわけです。 ● 後の方の対抗問題にならないというときには,別債権だからというのを理由づけにするわけですね。 ● ですから,当事者の合意の延長で別債権として存在している場合の話です。 ● だから,それは当事者の合意の延長で別債権だというふうにして,対抗問題から外に出すというのを当事者ができるんですかというのが,さっきの○○幹事に対する私の質問だったわけです。 ● ○○幹事,手が挙がっていますが,それに関連した議論ですか。 ● いえ,別です。 ● 別ですか。 ● 全く無関係に存在する場合について分からないことがあったのでよろしいですか。 ● どうぞ,発言してください。 ● 今の対抗問題がどんなレベルかという話は,先ほどのこと以上は申し上げられないと思いますので。もう1つ,一方的な債務負担のみによって発生させたがゆえに,債権者の関与がないために原因関係の影響関係についての合意部分が全くなくて,そのために原因関係に影響しないという場合がここから落ちているのではないかというお話に関連してですが,その場合に債権の譲渡等をどう考えたらいいのかというのが若干気にかかっております。つまり,債権者の関与がないので,原因関係がどうなるかについての合意は全くないと。しかし,債権者はある段階で電子登録債権として存在するので譲渡してしまっているわけですね。その際の関係というのがよく分からなくなってきたものですから。 ● 今の関係について説明できますか。 ● 今の場合は,債権者が自分の債権と認めてBに譲渡したわけですから,それは最初から同意のもとで電子登録債権をつくったのと同じになりますので,当然,原因関係に影響は同意のもとで出ているということになるんですかね。 ● そうしたときに,デフォルトルールを全く置いていないということになりますと,当事者の合意があって原因関係にどういう影響を与えるというのは選べて,手形の場合では通常こちらというような話があると思うんですが,その場合は慣習等によってデフォルトが決まって,こういう場合には何らかの影響関係が必ずあるという前提で話をすればよく,逆にいうと①から③の記述はそういう意味ではすべてを尽くしていると理解してよろしいでしょうか。 ● すみません,ちょっと議論の順番で。○○幹事は非常に頭のいい人なのでどんどん話が先にいっちゃうんですが,債権者,デフォルトルールを決めていない話というのはもうひとつ後で,債権者の責任というのももうひとつ後で議論していただければ,議論は混乱しないのかなと思うんですが。 ● それでは,○○委員。 ● この論点について日弁連の委員会で議論したわけですけれども,結論的には○○委員がおっしゃったのと同じことで,事務局のお考えになっている①,②,③はいずれも正しいと。今,原因債権と無関係に電子登録債権が発生されているということをいろいろ議論されていますけれども,この設題の3行目に「当該債権を原因債権とする電子登録債権が発生し」とあるわけですから,そこに絞って,その先だけ議論すればとりあえずよろしいのかと思います。この問題は,原因債権は譲渡されて債務者対抗要件が具備される前に,債務者が当該債権を原因債権とする手形を旧債権者に振り出してしまったという場合と全くパラレルなわけで,そうすると①,②,③はそのとおりの結果にならざるを得ない。  (注)の○○委員の論文は,支払の抗弁については実質的に同一債権のように扱っているという御指摘なんですけれども,手形の場合であっても,手形債権の原因債権は法律上別個の債権であるということを前提にしつつ,原因債権との牽連性で原因債権の支払請求に対する抗弁として手形が出ていますよという抗弁は言えるわけであって,別に矛盾はないじゃないかと。CとDは対抗関係には立たないと。要は,この場合のCはAに対して責任追及していくしかないのであって,悪いのはAですから,それ以外のものに対して言えないというのは当然のことではないかというのが私を含めて全員の意見でした。 ● いいですか,今の件で。 ● 時間が大分経過していますので,手短にお願いします。 ● また議論の機会があるかと思うんですが,○○委員に御質問したいのは,Aに対して責任追及する際にB-2案だといけますか。 ● B-2案というのは,先ほど○○委員もおっしゃったのですけれども,②は以降出てこないんですよね,B-2案のままでは。B-2案で債権者が譲渡して受け取って,さらにBに譲渡しなければなりませんから,その段階ではB-1案とB-2案の差はないんですよね。B-2案というのは債権者が承諾する前に成立しているかどうかというだけの話ですから,B-2案で一たん発生させても,Dに譲渡するということは,Aの行為が必ずあるわけですから,そこでAは承諾しているわけですから,B-2案とB-1案との差異は出るということはないはずだと。 ● おっしゃるとおりです。それでは,Dに譲渡する前の段階で電子登録債権を発生させたということを抗弁にすることは無理ですよね。 ● それは1の問題になると思います。 ● その段階でAにいっていない……。 ● 私はB-2案はとりませんけれども,○○委員のお考えは恐らくそれは抗弁できないということになると思いますね。 ● はい,ありがとうございます。 ● 議論の整理だけなんですが,①は併存する場合と消滅する場合とがありますけれども,②,③は併存する場合だけだと考えた方がすっきりすると思うんですが,そういう理解でいいかどうかという点を一つ。 ● それは全然違います。併存しようが,併存しまいが,②は電子登録債権の問題ですから。電子登録債権を譲り受けたDが電子登録債権をBに請求できるかという問題は,原因債権が残っていようが,消滅していようが,それは関係ないことだろうと思います。 ● 電子登録債権の関係はそうですが,Cは原因債権を譲り受けているわけですから,①で消滅ということになった場合には,その瞬間にBはCに対して消滅するということになってしまうのではないだろうか。そうすると,その後で原因債権を譲り受けたかどうかというのは関係なしに,原因債権が消滅すればそこだけの問題になるのではないかというふうに理解したんですが,そうではないんですか。  Cはまだ債務者対抗要件を備えていないわけですね。その段階で原因債権が消滅しているわけですね,代物弁済か何かによって。そうすると,そこで話はついてしまっていて,Dが登場する前に話はついているのかと思ったんですが,そういう理解ではないんですか。 ● それはそうだと思います。 ● はい,分かりました。それを確認したかったのが1点です。もう1点は,②,③においてBが弁済するのが,Cに対する債権譲渡の通知が前の場合と後の場合とで若干対抗する内容が変わってくるのだろうと思いますので,これはお答えいただくというよりも,議論する際にはその前後で分けた方が分かりやすいのかなと思います。  時間がたちましたので,一応申し上げます。 ● 今の最後の点ですけれども,4条2項通知がいつ行われたかということ,それから,電子登録債権の譲渡がいつ行われたかということは,その先後は,②,③の結論には影響を及ぼさないという前提で,そういう前提を立てていないんです。その先後がどうであろうが,Dは電子登録債権を譲り受けた以上は電子登録債権を行使することができるし,Dは支払ってもらったものをCに渡す必要はないと。いかに電子登録債権の譲渡登録の方が4条2項通知の後であろうとも不当利得になることはないと。それは先ほど○○幹事が言われたように別の債権なんですから。そういうふうに考えているんです。それでこういうふうになっているんですね。 ● 最後の結論のところではなくて,そこに至る段階で,BがCに対して何を主張できるかというのが,通知前にBがCに対してか変わってくるだろうということです。一応,議論の整理というだけですので。 ● 中身はこういう形でいいということでよろしいんですね,②と③は。 ● ええ。ただ,分析していくとその2つの問題が出てくるだろうということです。 ● それで答えは変わるんですか。①から③までで直さなければいけないところがあるんでしょうかと伺っているんですが。 ● 最後の不当利得云々というのではなくて,BがCに対して468条2項の事由として主張する内容が変わってくるのではないかということです。 ● ①の部分をおっしゃっていて,②,③は変わりがないということでいいんですね。 ● 時間がきてしまったので申しわけないんですけれども,②,③でCに対する債権譲渡の対抗要件,4条2項通知が来る前にBがDに弁済した場合と,それが来た後で弁済した場合とで,BがCに対して主張できる内容が変わってくるのではないかということです。 ● それは①ですよね,BとCの関係ですから。今おっしゃっているのは②,③なんですよね。 ● そうです。 ● ②はDとBの関係ですね。③はCとBの関係なんですけれども,今おっしゃっているのはBとCだけが影響があるということをおっしゃっているということでいいんですか。 ● 支払のために電子登録債権を発生させたという場合で,両者が併存しているということが前提になっているということで考えてよろしいんですね。そのときに,BがDに電子登録債権を弁済するわけですが,そのことをCに対して主張するための理屈が,通知前と通知後で変わってくるのではないかということです。通知前に弁済した場合には,電子登録債権が弁済によって消滅し,それに伴って原因債権も消滅したということを主張することになるだろうと。それに対して,通知後に弁済する場合には,既に電子登録債権が発生し,それが譲渡されているということが主張できる事由になるだろうという意味で変わってくる。非常に細かいことですけれども,場合が違ってくるだろうと,そういう趣旨です。 ● ですから,3ページの終りから4ページにかけて書いてある②と③の問題,ここは変更はないですねということを確認したかっただけなんです。 ● 変更というか,その内容について分析したということですよね。 ● 結論的にはここに整理をしていただいたことでいいということですよね。Cに対する関係での説明が異なってくると。 ● はい。 ● それはよく分かります。 ● もう1カ所,後の議論の確認だけさせてください。何を申し上げたいかというと,中間試案ではこのときの原因債権が消えるかとか,消えないかとかというのは,すべて当事者の合意に任されている。そして,さっき○○幹事がおっしゃった重要なことなんですけれども,デフォルトルールについても今のところ何も定めないという議論が多数だけれども,今後なお検討すると,こういう形の審議になっていたと思うんですが,ここだけ確認させていただいて,後のデフォルトルールの議論のところでもう一回これが響いてくる可能性があるものですから。 ● 分かりました。時間でありますが。この問題について○○委員が論文にもお書きで,異論がおありだということですが,事務局の整理について○○委員と同じような考え方,あるいは,事務局の整理に反対するという御意見をお持ちの方は,今御発言いただきたいと思います。それでは,○○委員も御異論があるということでお伺いしまして,大方が事務当局の整理でよいというお考えのようだというふうにお伺いいたしました。  申しわけありませんが,ここで休憩をさせていただきたいと思います。           (休     憩) ● それでは,再開をしたいと思います。  論点2につきましては,先ほど御議論いただきまして,本日のところはこの程度にしておきたいと思います。シンポジウムの結果も踏まえて,次回以降,さらにこの点について御議論していただきたいと思います。  続きまして,論点の3でありますが,電子登録債権の全面的な譲渡禁止の可否・善意取得及び人的抗弁の切断を認めない旨の任意的申請事項の可否に移りたいと思います。この論点は,中間試案に対する意見照会の結果におきましても各界の意見が2つに割れたものであり,前回の部会において今回議論する項目の一つとしたものであります。この論点につきましては,事務当局からの特段の説明はないということですので,早速議論をしていただきたいと思います。  まず,(1)ですが,発生登録における当事者による電子登録債権の全面的な譲渡禁止を許容するかしないかという点と,善意取得及び人的抗弁の切断を認めない旨の登録を認めるかと,そういう問題提起が本文でされていますが,この問題提起について直接に議論したとして,これは中間試案作成前と同じ議論の繰り返しになってしまいますので,まずここに挙げました注についての議論をしていただきたいと思います。注は3つございますが,議論の前提となる事項をはっきりさせるという観点から,最初に注の3を議論していただきたいと思います。全面的な譲渡禁止特約を認める案は,発生登録における当事者が全面的な譲渡禁止特約をしたものの,それを登録していなかった場合の効果について,民法466条2項によって譲渡の効力を判断するのではなく,人的抗弁の切断の例外の問題として譲渡の効力を判断するという,そういう理解でよろしいかと,そういう問題提起であります。全面的な譲渡禁止特約を認める案を支持される方々はそのような理解に立っておられると,そういうことでよろしいでしょうかということでありますが,御発言をお願いいたします。  ○○委員どうぞ。 ● 私は従前から全面的譲渡禁止を認めるべきだという案に立っておりまして,この注に書かれてある記載のとおりに理解しておりまして,そのとおりに今までそれを前提に議論しております。  以上です。 ● ほかに,この点について,そうでないという御意見の方いらっしゃれば,御発言をお願いいたします。 ● 質問です。 ● 質問ですか。どうぞ。 ● そうでないかどうかの前にですね,ここに書かれていることの考え方として,譲渡禁止特約はどこにあるのかという話なんですけれど,電子登録債権として登録されたデータの中に譲渡禁止特約を全面的な譲渡禁止特約を書き込んでいいのかどうかという話と,その書かれていない譲渡禁止特約の効力をどこまで認めるのかという議論が,どうもいろいろな研究会なんかでも議論が混乱している方がおられるようなので,例えば原因契約について譲渡禁止特約をしても,登録された電子登録債権には譲渡禁止特約がついていないときには一切その原因契約の譲渡禁止特約は及ばないんだというような仕切りになるのかとかですね,ここにあるのは何か電子登録債権にも本当は譲渡禁止特約をつけたかったんだけれども登録していないような場合みたいな書かれ方ですよね。そのケースを整理して,私はもちろん個人的には電子登録債権には譲渡禁止特約というのを全面的なものを認めないで譲渡性を確保した方がいいんじゃないかと考えるんですけれども,それを一歩譲っても,見えない,書かれていない電子譲渡禁止特約というのが生きてくるというのが非常に困ると思っていますので,今の点はちょっと整理していただきたいと思います。 ● その趣旨で注3をつけているわけでございまして,○○委員がおっしゃられた考え方と○○委員がおっしゃられた考え方は全く矛盾してないと思うんですね。つまり,人的抗弁の切断の例外の問題という形で処理がされるということになりますので,一般の民法466条2項によって譲渡の効力が判断されるわけじゃないと。あくまでもそれは人的抗弁に過ぎないものになると,登録されてなければですね。登録されていれば,これは物的抗弁といいますか,になる。ということは知っている,知らないという問題は起きない,という整理になるということで,○○委員よろしいんですね。 ● そのとおりです。 ● 質問です。もう1回。ということは,人的抗弁にはなるんですよね。 ● それはあらゆるものが人的抗弁にはなりますので,登録されていないものはですね。原因債権上の抗弁だって人的抗弁ですから,いろんなものが抗弁にはなるわけですけれども。 ● いや,そこを問題にしているのであって。 ● 人的抗弁にすらならないということですか。 ● そうです。要するに電子登録債権上に出てきていない譲渡禁止特約が人的抗弁にせよ,後から出てくるというのは困るんじゃないですかということを私は言いたいわけです。そこをどうお考えですかということなんです。 ● 原因債権について譲渡禁止特約がついているけれども,電子登録債権の登録をするということがあるかどうかという問題ももちろんありますが,仮に実体法的な合意が必要だとして,そこに譲渡禁止特約がついているけれども登録はしなかったと,こういうことですよね,○○委員おっしゃっているのは。 ● ちょっと分けて考えなきゃいけないと思うんですが,原因債権に譲渡禁止特約がついていたからといって,電子登録債権まで譲渡禁止特約がついているとは限らないわけです。あくまでも電子登録債権自体に譲渡禁止特約がなければいけないはずであります。それはよろしいですね。それを前提にして,電子登録債権自体に譲渡禁止特約の合意はしているんだけれども,それを登録し忘れたという場合にどうなるかということを述べているのが注の3で,○○委員は人的抗弁の切断の問題だというふうに整理されて,私どももそう思っているんですけれども,○○委員からはさらに進んで,何らの抗弁にならないという考え方もあるんじゃないかという御指摘をいただいたわけでしょうか。 ● それでいいんです。要するに,当事者が譲渡禁止のついていない債権としてその流動化をしたりした後で,人的抗弁にもせよ譲渡禁止があったということが言えてしまうというケースは非常に困るのではないですかという,実務上,そこを聞いているんです。 ● ですから,それは原因債権にだけついていて電子登録債権にはついていなかったという場合ですね。 ● もちろんそれはそうですし,それからこうやってここに書かれているように,つけ忘れたときは人的抗弁になるという。 ● つけ忘れたときは,電子登録債権としてはそういうものとしようという約束はしていたわけですから,それは人的抗弁になるんじゃないんでしょうか。 ● そこが私は困りませんかと言っているんです,譲り受けた方としては。 ● 少なくとも,○○委員の考え方は,客観説に立てば,登録していないわけですから対応できない,問題ないわけですよね。ほかの先生方の多数意見である悪意の抗弁を認める考え方の方というのは,調査義務は一切ないと。抗弁が主張されることの確実性を認識して取得した場合にだけ抗弁の対抗を受けるという考え方ですから,それに立っても,実際問題としては問題が起きるということはないと思いますけれども。 ● どうぞ,○○委員。 ● 私は,人的抗弁ととらえることがちょっと頭の整理がよくできておりません。債権の内容あるいは存否についての抗弁であれば,これは人的抗弁ということで非常にわかりやすいんですが,債権の帰属自体の問題になるのではないだろうかと。そうすると,譲り受けたことを前提として何か抗弁を言うというのではなくて,そもそもそこを主張できないということだと,ちょっと人的抗弁とは別なのかなと思って十分整理できていないところです。 ● その点,商法の先生方はいかがでしょうか。 ● いかがですかね,○○委員。 ● 債務の内容として何を理解するかということだと思うんですけれども,商法の場合で言えば,手形,とにかく手形面に書いていない手形外の行為をすべて人的抗弁と呼んでおりますので,今おっしゃったような帰属についても,手形外の合意としてその手形を譲渡しないという合意があれば,それは人的抗弁の問題になるというのは手形法での理解であります。ですから,私はそれと同じ扱いでこの場合もいいのではないかと思っております。 ● よろしいですか。商法上の理屈はそうかもしれないけれども,実務の問題として,譲渡禁止がついてないはずの電子登録債権だと思って譲り受けたら,後で人的抗弁にもせよ,その譲渡禁止特約があったなんていうことを言われたら,これは私は流動化スキームの中に成り立たなくなるリスクさえあると思うんですけれども,どうなんでしょうか,その辺について実務の方は。 ● ○○委員の御発言を確認したいんですが,その話は譲渡禁止特約についておっしゃっているのか,人的抗弁全体についてのお話なのかということなんですが,仮に人的抗弁全体についてのお話であると仮定するならば,人的抗弁の切断の例外についてはまだA案,B案が併記されている段階でございますので,そのところの問題かなという気がするんですが。 ● よろしいですか。これは私は,○○委員が正確に御指摘になられたように,その債権の性質,属性の問題と譲渡禁止の問題は,もし譲渡禁止で物権的効力がないとその譲渡自体が無効になってしまいますので,ですからこれは確かに人的抗弁全体についても私は客観説ですけれども,その人的抗弁のところはどっちに転ぼうと,ここは別にして,とにかく譲渡禁止特約に関しては人的抗弁にすらならないという立場が適切ではないかと思って発言しています。 ● 今のお話でようやくわかりました。つまり,だから○○委員は全面的な譲渡禁止特約否定説なんですね。だから人的抗弁としてなら認めていいという考え方が人的抗弁の肯定説で,人的抗弁ではない,全面的な譲渡禁止特約肯定説で,○○委員のように人的抗弁にすらなるべきでないと考えるのであれば,そもそもそういう特約をすること自体が禁止されるというふうに考えるということに整理されるのではないかと思ったんですけれども,いかがでしょうか。 ● ですから,最終的に全部の債権について譲渡禁止特約を全面的に排除するかどうかなんていうのは,国際債権譲渡条約なんかでも債権の種類で全面的に譲渡禁止を否定する種類の債権を限定したりしていますから,そこのところの議論はまだ私は保留しますけれども,考え方としては今○○幹事がおっしゃってくださったとおりです。 ● では,注3はこの程度でよろしいですか。  では,この注3については議論がわかれているという。 ● いや,そうじゃなくて,注3については要するに全面的な譲渡禁止特約の効力を認めるという立場を支持される考え方は全員人的抗弁の切断の問題であるというお考えだと。つまり民法466条2項の問題として処理されることはないということで御意見が,全面的な譲渡禁止特約の効力を認める考え方の方はそういう前提でその案を支持されているという整理ができたということでよろしゅうございますね。 ● 私も全面的な譲渡禁止特約があってもいいと考えておりまして,注3の整理はいいと思うんですが,○○委員御指摘のとおり,支払の立場と私どもは流動化のプレイヤーの立場と両方ございまして,流動化証券化の実務においては○○委員御指摘のとおり,これが譲渡禁止特約が人的抗弁になるということが障害になる可能性はございます。 ● ですから,そういう考え方をとる場合は,全面的な譲渡禁止特約は認めない案になるという整理でよろしいかということを言っているわけでございます。つまり,全面的な譲渡禁止特約の効力を認めるけれども,登録されないと何らの意味がないという考え方があるのかということなんですけれども。これはないということでよろしいですよね。 ● それはないと思う。だから,実務として,だから原因債権の方に譲渡禁止特約があるか,それから電子登録債権の方にもその譲渡禁止特約の登録があるかどうかということを両方確認しなきゃいけないという多分プラクティスになるんだろうと思いますけれども。 ● ちょっと確認なんですけれども,今全面的な譲渡禁止特約の問題として合意はしたけれども登録はされなかったということを議論していただいてきたんですけれども,全面的でない譲渡制限,例えば譲渡の回数は5回までですという合意をしたんだけれども,それを登録し忘れましたというときに,5回を過ぎたということは,それは人的抗弁だというふうに考えているんですけれども,そういう理解でよろしいでしょうか。 ● 私は客観説ですから,それもだめと。要するにさっきの○○幹事の御質問のように,ほかのことについても書かれていない抗弁を認めるというのは,私は極力排斥したい。だから今の御質問についてもノーですけど,特にここは全面的譲渡禁止特約で書かれていないようなものについては絶対認めるべきではないと,こういうことを申し上げている。だから私の立場は一貫しています。 ● ○○委員以外はいかがでしょうか。○○委員以外は全員人的抗弁の問題だというふうに,抗弁を対抗できるかどうかは別にして,人的抗弁の問題であるということでよろしいでしょうか。 ● ○○委員。 ● もしその考え方を受け入れるとすれば,さっき○○委員の御説明のあった手形理論のように,手形外の合意はすべて人的抗弁だという,そういう整理になるんだろうと思います。ただ,それをここでその手形理論にそのまま乗っかっていいのか,それとも別の概念,例えば害意ということについても,手形法の似た表現を使っているけれども,あるいは違うかもしれないということも含めて,どういう説明するかについてはちょっと留保したいと思いますけれども,466条の問題ではないということは,それでよろしいかと思います。 ● わかりました。  では,細部について議論がありますが,466条2項によって譲渡の効力を判断するというのではないという点については特に御異論はないということでよろしいでしょうか。  それでは,注3はその程度にしまして,次に注1について議論をお願いしたいと思います。この注は,全面的譲渡禁止特約を認めるか認めないかというのが,債権者となる中小企業の資金調達の阻害要因になるかどうかとは関係しないのではないかという,そういう注でありますが,こういう整理でいかがでしょうかということですが,御意見を。○○委員,どうぞ。 ● 私もこの整理でよろしいというふうに考えています。譲渡禁止特約の問題を電子登録債権の制度の中に取り込むかどうかという問題で,債務者が譲渡禁止特約の効力を望む限りは実質は変わらないと,ここにそういう論旨で書かれておりますけれども,まさにそのとおりだというふうに理解しております。  以上です。 ● ○○委員,こういう整理でよろしいでしょうか。特に,こういう整理で……,はい,○○委員。 ● これは私は,中小企業の立場から言うと,阻害要因そのものであるというふうに思っております。この注にもあるように,確かに譲渡禁止特約がなければいやだよという大企業は使わないようになるよということは,それは確かにそうかもしれません。そうであれば,確かにこの電子登録債権というマーケットというか,この利用される範囲というのは非常に小さくなるということはもう事実そうだろうと思うんですね。それだったらもうそれでいいじゃないかと。要するに,じゃ電子登録債権が使われないということとして,我々は,ではやっぱり従来どおりの手形か何かで回収して,それで資金調達に当てますよということになるんだろうと思うんですね。ですから,要するに譲渡制限があることによって,やっぱりそういう意味での流通性という面では利用価値がやっぱり下がることは事実だと思うんですね。  それで,じゃあ譲渡制限を認めるよとなれば,中小企業の方はやはり資金調達に困るという可能性は出てくると思うんですね。そういう面からも,中小企業としては譲渡制限がある場合は受け取りたくないよというふうになるんだと思いますけれども,要は,今までと大企業がこれをつけたいというのは何かといえばやっぱり二重譲渡の問題だとか,そういうことに関して危惧を持っているということだろうと思うんですが,この今の電子登録債権の仕組みでいけば二重譲渡の問題は回避できるということになっておりますので,そういうことから言うと,心配する点は解消されているんじゃないかと。そういうことから言えばこの問題はないので,流動性を高めるという本来の趣旨から言って,譲渡禁止は認めないという方向でこれは整理をするべきではないかと思っておりますけれども。 ● 直接それが今話題になっているわけじゃなくて,その議論が資金調達の阻害要因になるかどうかということに関係するかということですが。 ● 流通性がやはり欠けるということになれば,要するに利用価値が低いというか,障害になるというふうな考え方を私は持っています。 ● それは否定されていないんですけれども,はい,○○幹事どうぞ。 ● 恐らく議論はこういうことだと思います。このまとめは非常に論理的で,こういうことになるんだということは共通で認識できることだと思うんですけれども,恐らく中小企業者の方は今回のこの制度を作ることによって,自分たちの債権の流動化を図るチャンスを広げたいと。今よりも改善したいという思いをお持ちなんじゃないかなと思うんです。そうした場合に,電子登録債権化することについて,債務者の方に,例えばすべてを電子登録債権にすることによって仕事が合理化されるとか,そういった別なインセンティブが働くということがこの世の中で存在するとすれば,電子登録債権化が進んでくるという可能性があると思うんですが,そのときに全面的な譲渡禁止はできないという制度にしておくと,結果的には中小企業者にとってみると,その資金化の可能性が今よりも高まるという結果になるんだろうと思います。つまり,この注1の前提は,今電子登録債権を利用するということに特段のインセンティブを持たないということを前提にしている場合には論理的に正当な議論だと思いますけれども,債務者の方の側に,全く別に,例えば電子化することによって合理化が図られるといったような特段のインセンティブが働いてくるとすれば,そのことによって電子化が進む中で今度は全面的な譲渡禁止ができなくても電子化の方を選ぼうというインセンティブが働いてくる可能性があるとすれば,中小企業者にとってみるとそこは非常に大きな問題ということになるんじゃないかと思います。 ● 今,○○幹事がおっしゃったのはそのとおりだと思うんですけれども,ですから問題は,そういうインセンティブが働くほど,譲渡禁止をしたいという人たちの譲渡禁止についての思い入れといいますか,ニーズというのは,プライオリティの低いものだと言えるのかどうかということが問題,今うなづいていただきましたけど,そこは○○委員,どうなんでしょうか。 ● これは,私の方も根強く主張しているのは,それなりにニーズがあると,実務上のニーズがあるということなので,そう簡単に電子化によるインセンティブが今構想されている中で直ちに享受できるというふうな,そういう楽観的な観測は持っておりませんので,そのような状況の中で電子登録債権というのを制度として作るのであれば,まずはここも制度として取り込んでいただくのがいいのではないかと,そういう議論の仕方をしているということでございます。 ● ほかに,今のことについて,○○委員どうぞ。 ● この注1のところで阻害要因となるかどうかというところについてはやはりそのとおりだろうと私も思っています。ただ,結局これを使って中小企業が流動化したいと,先ほど○○委員がおっしゃったところはそのとおりだと思いますし,今の下請法にあるように,下請事業者に対して支払をする手段として,例えば今手形の場合だとこうだとか,一括支払の場合だとこうだといろいろな決めがありますけど,その中で資金化についてそれを阻害するようなことがあってはいけないということがありますので,それでは電子登録債権というものが資金化について阻害要因となるような全面的な譲渡禁止というものが可能であるということになると,これは今の下請事業者の保護というところに当たらなくなってしまうのかなと。やはり書いてあること自体について何ら言うわけではなくて,全面的な譲渡禁止特約というところについてちょっと一言申し上げたいというところでございます。 ● 今,○○委員が言われた下請法の問題というのは,おそらくこの電子登録債権法でどう定めても,例えば仮に譲渡禁止ができるということにしても,下請法の枠があてはまる企業さんにとっては下請法に従って払わなければならないから,電子登録債権を使うときには譲渡の全面的な禁止はできませんということになる可能性はあるんだと思うんですね。そこは公取さんがどう定めるかという問題じゃないんでしょうか。 ● はい,そのとおりでございます。 ● ○○委員どうぞ。 ● ぜひ議事録に残していただきたいと思っておりました。私は,この阻害要因となるかどうかには関係しないように思われるがどうかという書き方には非常にやっぱり違和感がありまして,関係するというふうにはっきり申し上げておきたいと思います。現時点で指名債権に全面的な譲渡禁止特約の効力が認められていることが中小企業の資金調達の阻害要因になっているということはどなたも否定されないと思います。そして,ここで書かれている論理は,電子登録債権について全面的な譲渡禁止特約の効力を否定すると,大企業債務者はその電子登録債権にすることに応じないから,使われなくなるだろうということなんですが,これは先ほど○○幹事おっしゃられたとおり,電子化が進んでコスト的に電子登録債権を使った方が便利だということになれば,必ず大企業の皆さんもお使いになると思います。その際に,全面的譲渡禁止特約が認められているということになると,現在と何も変わらない。だから,その阻害要因になるんです。だから関係しないように思われるというのは,私は非常に強い違和感があります。  以上です。 ● はい,○○委員どうぞ。 ● 流動化を促進する立場で考えると,譲渡禁止特約というのはない方がいいわけですが,ただ,電子登録債権というのは新しい制度ですので,まずその制度の普及がないと証券化をするそもそも債権が存在しないということになりますので,できるだけ制度の普及の障害にならないということであれば,現状の実務で行われている譲渡禁止特約というのを認める方向というのはあるだろうと思っています。  ちょっとよくわからないので教えていただきたいんですけれども,例えばファイナンスの目的ということであれば,債権を証券化するという形だけではなくて,担保の目的に供するということができるはずで,例えば電子登録債権を担保目的で活用するということができれば,少なくとも債権が可視化されるということは,通常の指名債権であるよりは加速するわけですから,非常に見やすくなるわけですから,そういった意味ではファイナンスの拡大にはつながるのではないかというふうに考えていますけれども。 ● これは,実際自分が債権流動化の債務者のところに譲渡禁止特約付の債務を持たれている債務者のところに行った経験から申し上げるんですけれども,やはりいろんなことを考えながら,外せるか外せないかということを考えていくわけなんですけれども,現状はやはり譲渡禁止特約を残しておきたいという意向というのは非常にまだまだ強いんだろうなと思いまして,外したとしても何らかのプラスといいますか,そういった総合判断の中で外すか外さないかということを決めておられるというのが多分現実だと思いますので,そういう意味で,私個人としてはこの注1に書かれていることはそのとおりなのかなと思います。全銀協としてはここが意見が分かれているというところはあるんですけれども,全面的な譲渡禁止を認めないということで,新しい制度を作るから一つのメッセージ的にそういったアピールをするということによって,流動化の促進を図るというようなことをねらいたいというふうにおっしゃっている方もいるんですけれども,足元の現実を見るとこの注1の整理なのかなと私は思います。 ● 両論があったというふうに伺いました。  それでは,この注の2について議論をしていただきたいと思います。全面的な譲渡禁止特約を認めるのと否定するのと,いずれが電子登録債権が実務でより活用されることになるのかと。今の議論にそのまま関係しますが,そういう質問でございます。特に実務家の委員の方々のご認識をお伺いしたいと思いますが,いかがでしょうか。  ○○委員どうぞ。 ● すみません。ここに書かれてある後者の意見が妥当であると考えております。譲渡禁止特約を否定するタイプの利用を開発すると,商品開発するということ自体を否定しているわけではありませんで,譲渡禁止特約を肯定するタイプの商品開発も肯定したいと,そういう主張でございますので,否定タイプを,ここで前半に書かれている否定される,阻害する,開発されやすいというふうには必ずしもならないと考えております。 ● ○○委員どうぞ。 ● これどちらがというのは,正直言ってちょっと私はわからないというのが結論だと思います。ということは,逆に言うと,要するに決め方次第でどちらにもできるということだと思います。要するに,決め方次第で人間というのは知恵を絞ってこの商品化するなり何なりということは,どっちに決まったにしろそれをうまくその制度を利用してマーケットを作っていくんじゃないかと思っております。  ただ,先ほどの問題でちょっとかぶってくるんですが,要するにここで汎用性が高まって新しい金融商品ができるとかできないとかと,これが本来電子登録債権化をすることの目的だったんでしょうかと。要するに,本来の目的は中小企業の資金の調達の円滑化とかそういうことが目的だったわけですね。そういうことから言えば,やっぱりそういう観点からいけば,もう先ほど○○委員が非常に的確にまとめていただいたんですが,そういう観点からいけば,この譲渡性は,譲渡禁止特約は認めるべきではないという形になってくるんだろうと思います。 ● ほかに御意見。○○委員どうぞ。 ● 電子登録債権を活用するというメリットといいますか目的というか,一つは譲渡禁止がついてなければ流通性がついて資金化等に使えるということと,それと可視化するということと,それともう一つはシステムで処理しますので,合理化につなげると,大きく言ってこの3つぐらいあると思うんですけれども,結局商品開発とかという立場からすると,どのメリットをとるかという多様性があるということも大事かなと思いますので,譲渡禁止をつけた上で例えば金銭消費貸借約定書のかわりに使うとか,そういったことも十分ケースとしては考えられるのではないかなと思っております。 ● ○○委員どうぞ。 ● 先ほど,阻害要因となるかどうかについては注1のとおりですという話はしましたけれども,この注2の部分については,先ほどの○○委員のおっしゃったように,あと○○委員もおっしゃったように,全面的な譲渡禁止特約がついていれば何ら今と変わらないような仕組みで企業が使うところが出てきてしまうということになると,そもそもこの法制度を作る意味がないのかなと。やっぱりこれを使う以上は全面的なものについては,そこは避けたいと。それは一部譲渡禁止とかそういうのはあるでしょうけれども,なぜ全面的なところを許すのかなというところが,そこは中小企業の立場からいくと,そこは認めがたいと思っております。 ● ほかにございませんですか。よろしいですか。  認識にもやはり少し違いがあるというふうに伺いました。  それでは,注の2についてはこの程度にしたいと思います。これらの議論,ちょっとまとめるのは難しいんですけれども,1についてもやはり両論があり,2についても認識にやや差があると。3については466条2項によって譲渡の効力を判断するのではないという点については一致があったけれども,人的抗弁の切断の問題となるのかどうかという点についてはやや異論があったということでありまして,なおそういう整理でよろしいかどうかということですが,なおそういう整理のもとでさらに御議論していただきたいと思いますが,いかがでしょうか。  それでは,引き続き議論があった点については,議論を後にお願いをしたいと思います。  それでは,3の(2)のところでありますが,管理機関が全面的な譲渡禁止をするとか,あるいは債務者の同意がない限り譲渡を禁止するとか,管理機関の承諾がない限り譲渡を禁止するとかという,そういうニーズですが,そういうニーズはないと考えてよいかという,そういう質問でありますが,この点について何か御異論はございますでしょうか。実務家の方々,こういう整理でよろしいでしょうか。  はい,○○委員どうぞ。 ● これはもうあらゆるケースにおいてという,そういう前提でございますね。そういう意味では基本的にこういうニーズはないのかなと思いますけれども。 ● 特に御意見,○○委員はございますか。 ● 今,○○委員,管理機関になられる可能性の高い団体の方がそうおっしゃっているので,特に異論はございません。 ● わかりました。  それでは,この論点3については,この程度の議論にさせていただきたいと思います。  それでは次に,ちょっと議論があるかと思われます論点の7ですね。登録原簿の開示の問題に移りたいと思います。ちょっとページが飛びますが,8ページ以下でございますが,この論点についてはまず事務当局に説明をお願いいたします。 ● 登録原簿等の開示の問題は,前回の部会で,今回御議論いただく主要なテーマにしていただいたわけでございます。したがって,前回は中間試案に寄せられた意見自体も余り詳しくは申し上げなかったんですけれども,今回,この資料を作るときに整理してみまして,おおむね3つぐらいの問題があるんだということに気がつきました。  1つは,譲渡履歴の問題でございます。つまり,記録事項には必要的な記録事項,それから任意的な記録事項,任意的記録事項には法定の任意的記録事項と法定外の任意的記録事項があるわけですが,法定外の任意的記録事項の問題をちょっと別にしますと,ほかの記録事項のうち開示すべきでない場合があるんじゃないかという問題が指摘されたのは,譲渡履歴だけであるということでございます。つまり,ほかの例えば金額とか支払期日とかを開示しない場合を認めるべきだというような意見は一つもなかったわけで,あるいは法定の任意的登録事項で,例えば譲渡の回数の制限とか,そういうものを開示しなくてもいいという意見も一つもなかったわけであります。ですから,開示しなくてもいい部分というか,開示すべきでないものとして,譲渡履歴の問題が取り上げられていたと。前回の部会資料11に書いておりますのは,寄せられた意見を羅列していますので,ややわかりにくいんですけれども,要するに譲渡履歴について法律上開示すべきでないことにすべきだという意見と,それぞれの管理機関が業務規程で開示するか開示しないかを決められるようにするというやり方が考えられるんじゃないかという意見の2通りがあったと,大きく分ければそういう整理ができるかと思います。  そこで,この譲渡履歴の問題に関して債権者が請求した場合,債務者が請求した場合,それから過去に債権者であったけれども現在はそうでないもの,それから債務者だったけれども現在はそうでないものという,それぞれについてどこまで譲渡履歴を開示すべきなのか,すべきでないのかと。あるいは逆に債務者の履歴というんですか,債務者が交代していたり,かつて債務者だったけれども債務者でない人がいたときにそれはどうするのかと。譲渡利益の裏返しの問題ですけれども,そこは意見照会の結果では意見が寄せられていなかったんですけれども,同じ問題じゃないかということで合わせて問題提起をしているということでございます。  もう一つは,中間試案にかかげていたもので,例外的な開示拒絶事由として登録原簿に記録されている者の利益を害するおそれのある場合には拒絶できるという一般則を設けるということを提言していたわけですけれども,これにつきましては,一体何が登録原簿に記録されている者の利益を害するおそれがあるときなのかというのが非常に不明確で,電子登録債権を利用する者として非常に不安があるという意見が寄せられたわけでございます。そこでそれを明確化する必要があるのではないかと考えたわけで,そこで⑤,⑥あたりにその問題を書かせていただきまして,要するにこういう抽象的な事由で物事を処理するのではなくて,個別具体的にどの人が請求したときはどこまで見せますというのを一義的に記述することが,もしかしたらできるのかもしれないということで,そうすれば抽象的でわかりにくい要件を定めなくてもいいということになりますので,そういうことができるのかどうかを御議論いただきたいということでここに書いておりますような質問をさせていただいているということでございます。  それから,3つ目ですけれども,法定外の任意的な登録事項の問題がございます。法定外の任意的登録事項については管理機関が業務規程で開示しないことができるというのが中間試案での案なわけですけれども,しかし無条件に管理機関が何でも好きなように定めていいのかという問題提起があったわけでございます。そこで,一体管理機関は自分の利益のために開示しないというんじゃなくて,利用者の人たちのことを考えて多分開示しない場合というのを設けたいわけだろうと思いますので,そういう理解でいいのかどうか。つまり,当事者が,これは登録した当事者間の備忘として,第三者である管理機関のもとに記録として残しておきたいので,ほかの人に見てもらっちゃ困るというのが一番開示してもらっては困るという事柄なんだと思うのですけれども,それ以外に管理機関独自の判断で,登録はしたけれども開示させないというものがあるのかどうかということをお尋ねしているのが⑧でございます。  具体的には,別紙の添付資料というのをつけさせていただきまして,電子登録債権が債務者がAで,B,C,D,E,F,G,Hというふうに移転したと,こんなに移転することはまずない--シンジケート・ローンだったらあるのかもしれませんけれども--ほかではないかもしれませんが,それで保証人がいろいろついたと。ある人は譲渡したのみで保証登録はしなかったというような例を挙げさせていただいて,どの人が請求したときにどこまで開示しなければいけないのかということを問題提起させていただいているということでございます。  それで,あとややおわかりいただきにくいかなと思いますのは,例えば①でいいますと,登録原簿上過去に債権者または債務者であったが現在はそうでなくはないとされているものについての登録内容は開示すべきではないという表現をしていますが,この登録内容とは何かということですけど,通常はその者が譲渡した譲渡登録,あるいはそのものを譲受人とする譲渡登録のことでございます。ただ,ある人が債権者の地位を取得したりするのは,支払等登録をすることによって法定代位したりとか,そういうこともありますので,必ずしも譲渡登録に限らないものですから,現在はそうでないとされているものについての登録内容という表現にしているだけで,通常は債権者であればその人を譲渡人とする譲渡登録,譲受人,譲渡人とするそれぞれの譲渡登録をさせているとお考えいただければと思います。  とりあえず,私からの冒頭の御説明は以上です。 ● それでは,これは①からページをめくっていただいて10ページの⑧のところまでそれぞれが質問項目の形になっておりますので,順次御意見をお伺いしたいと思います。  まず,(1)の①の登録原簿上の現在の債権者,これが登録事項についての開示を求めたと,そういう場合にどこまで開示をすべきかという問題についてここに整理がございますが,御意見をお伺いしたいと思います。なお,この添付資料12ページのところの設問の①というのが具体的に考える手がかりになると思いますが,あわせてご参照いただければと思います。この点についていかがでしょうか。  ○○委員どうぞ。 ● ①につきましては,従来私どもが主張しました譲渡履歴を排除していただけないかということに沿ってお書きいただいていますので,基本的にこのとおりでいいのかなと。一番最後の方に個人が含まれている場合についても触れてございますけれども,投資家として取得する立場からすると,個人についても表示をしていただいて,必要であればそれによって判断をしていくということができればいいということで,ここについてもこのとおりでいいのかなと思います。 ● ありがとうございます。  ほかに,この①の点について御意見ございますでしょうか。○○委員どうぞ。 ● 私も基本的にこれでいいと考えているんですが,ちょっと確認は,個人が含まれている場合についてなんですけれども,事例①でEのみが消費者であったという場合に,E-Fの譲渡が無効であると,何らかの事情で無効であったという場合に,GとHは善意取得しないと。これは消費者保護ということで。ですから,EからFが,これは有効であればHは善意取得する可能性があるので,だからHがGから取得する段階でE-Fの譲渡の有効性について調査をする必要性が出てくるだろうと。それを前提にこういうふうに書かれていると,そういう理解でよろしいですね。 ● そのとおりでございます。 ● ○○委員どうぞ。 ● ①のケースで,現在の債権者が開示を求めるケースとして幾つか書いてあるんですけれども,この中には例えば会計監査のために会計監査人が見たいということで,それに対して示すために開示を求めてくるということが考えられるんですけれども,そのあたりについてもこれでこの開示範囲でいいかということでやっぱり考える必要があるということでよろしいでしょうか。 ● 何か特別に会計監査の関係だと履歴まで見せなければいけないとか,何かそういう事情がありますでしょうか。 ● そこもちょっと考えないといけないのかどうなのかということをちょっと考えて,特別に別途そういう場合は手当されているという,ちょっと私も余り詳しくないので,会計監査のことは。 ● 一般論としては会社が見れないものを会計監査人だけは見れるということはあり得ないと思うんですけれども。 ● 特にこの整理で御異論はございませんでしょうか。 ● 今問題になっている消費者の問題なんですけれども,ここでは消費者である可能性のある個人が含まれている場合という整理になっているんですけれども,それで本当に大丈夫かどうかということで,注では譲渡登録における譲渡人が個人ではあるが消費者である可能性がない場合として,その者の商号が登録されていると,そうすると商号を登録しているんだから事業者として登録しているんだというふうに見られるから,そこは開示しなくても善意取得があるから大丈夫だという整理になっているんですけれども,商号が書かれていたとしても,これは消費者というのはある行動をとるときの属性ですから,取得したときは事業者として取得したけれども,譲渡するときには消費者として譲渡するということ,ほんとにあるのかどうかよくわかりませんけれども,そういう場合がもしもあり得るのだとすると,個人がとにかく入ってきたら全部開示しなければいけないということにしなきゃいけなくなると思うんですけれども,その辺はいかがでしょうか。  ○○委員,日弁連で何か議論ありませんでしたか。 ● ここについては特に議論なかったんですが,今おっしゃった点も含めて,①は書いてあることはそのとおりなんですが,設例等を見ると果たしていっぱいできる管理機関の担当者が現在有効なものと現在有効でないものを切り分けてうまく開示することができるだろうかという,事実上の困難性があるんじゃないかなと。余り細かくこういうふうにやっていきますとですね。理屈はいいんだけども実務で果たしてスムーズに動くだろうかという懸念があるような気がいたしますね。消費者については,もう個人であれば消費者の可能性があるとせざるを得ないんじゃないですかね。今おっしゃったように,商号があっても,場面場面では消費者に当たるという可能性を認めるのであればね。 ● 商号があるとまたいいんですけれども,弁護士だれだれとか書いてあったときに,譲り受けたときは弁護士として,弁護士報酬として譲り受けたんだけれども,譲渡するときは個人として何かやったとか,そういうことがあるのかどうかということなんですけれど。 ● 弁護士は事業じゃないと言われるからね。 ● ○○委員がおっしゃるのは商号がついていても個人であれば全部開示を要求するという御趣旨ですか。 ● いやいや私はそこまで強い意見はないんですけれども,今○○幹事が注の場合は必ずしも注に書いてあるようにはいかない可能性があるよというふうにおっしゃったから,そうなのかなと思って申し上げただけなんですけれどもね。 ● 原則的にはこの整理で。 ● 商号が書いてあれば基本的には消費者じゃないんだろうとは思うけれども,さらにそういう場合でも譲受の場合は消費者だけども譲渡の場合は消費者じゃないというケースがもしもあるのであればしようがないじゃないかなという気はしますけど,そこはどうなんですか,本当は。 ● ほんとにあるのかどうかよくわからないので,消費者契約法にお詳しい研究者の○○幹事いかがでしょうか。 ● お詳しくない。部会長の方がお詳しいですから。いやいやこれは○○幹事に振った方がいい。 ● 事業のために譲り受けたんだけれども,住宅ローンの弁済のためにその債権を使ったとかいうようなことは理論的にはあり得るんだと思いますけれども,実際どうあるのかと言われればなかなか考えにくいのですが,可能性がおよそないとされるかというと,取引が事業のため事業としてということですので,個人事業者である場合にどうなのかと言われれば,可能性はあり得るんじゃないでしょうか。 ● 書きぶりとしては消費者である可能性のある個人というふうに書いてあるわけですから,商号が振っていても消費者である可能性のある個人だというふうに認定できれば,それは開示の対象になるという,こういう理解でいけませんでしょうかね。○○幹事どうでしょう。 ● 特に意見があるわけではありませんが,債権を譲り受ける場合には利益を得ているわけなんですけれども,債権を譲渡する局面においては出捐があるわけですね。そうした場合に,今消費者契約法のところでも議論されていたと思うんですけれども,個人事業者の中には一般の悪徳商法に引っかかるのと同じような形で大量に例えば不要な消火器を買わされているような判例等については事業者性を否定するというような,そういう議論もあったかと思うんですけれども,そうなりますと,確かに事業で取得している債権だとしても,その出捐をした時点においてその者の判断能力等がまさに事業者と認定できるようなものと言えるのかどうかということをもうちょっとぎりぎり考えていきますと,やはりここでの消費者性というのは保護目的から考えれば商号があるからそれで必ず事業者だと言い切れるかというのはやや疑問があるんじゃないかなとは思います。 ● そうしますと,個人がとにかく登録されているときはすべからく個人の人は譲渡登録の内容も開示しなければいけないと,こういう整理にせざるを得ないということですか。 ● これをどういう制度に作るかということだと思います。もう決めの問題なので,まさに事業者ないしは消費者というものの概念をかなり明確なものにしてしまって割り切ってしまうと,この電子登録債権法における保護の対象を限定するというのであれば,それはもう事業としてとかいう概念で切ってしまって,消費者契約法でいうところの事業としてというのはいわゆる商人ですかね,商号を持っているわけですから,商人であればそれはもう事業者とみなすというふうにもう決めてしまえばそれでいいのかなとは思いますけれども,実質にもうちょっと即して政策目的から考えれば保護されるべき人というのはもっと広くなってくる可能性はあるんだろうなとは思います。そうだとすると,なかなかそれを管理機関等が切り分けることは難しいでしょうから,個人か法人かという切り分けしかないのかなという感じはします。 ● ここで書いてあることで,管理機関が間違ったら何かサンクションがあるんですか。開示に関するルールに違反した場合のサンクションというのはどのように考えられているんでしょうか。それで,○○委員がおっしゃったようにこれはなかなか難しい判断を迫られたときにセーフハーバーをどこでつくるかと。つまり開示に関するルールの中でセーフハーバーをつくっておいた方が管理機関としては助かるのかどうかという問題,今○○幹事がおっしゃった点と重なるんですけれども,この開示しなければいけないということと,開示しなくてもよいというんですけれども,間違うことがある,間違ったらどうなるのかということも含めて,開示しなければいけないこと,開示しなくてもいいことをつくっておく必要があるということだと,一般的には言えると思いますが。 ● この問題は,何か管理機関がやらなければいけないことが法律で定められていて,それに違反した場合は当然のことながら業務改善命令とか場合によっては業務取消し,認可取消しですか,1回開示を間違ったぐらいではそんなことにならないと思いますけれども,業務改善命令ぐらいはあり得る話なんだとは思いますけれども。○○幹事,それでよろしいですか。 ● それで結構です。 ● あと,私法上の責任は結局可能ですか。 ● だれにどういう損害が生ずるのかという問題にもよると思いますけれども。 ● ええ,損害が生ずるという主張して訴えることは可能だということですか。 ● それはもう訴えることはだれでも可能ですから。 ● そのときに,ここで違反しているということで損害というのは,裁判所が言えば損害があったことになりますから。 ● その前に開示請求訴訟をするんじゃないんですか。 ● 見せてもらわなかったけど,むしろ逆に譲渡履歴まで見せてしまったというときに見せてもらいたくなかったのに見せられてという,それでしかし法人がどんな損害があるのかというのもいささか問題かもしれませんけれども。 ● ただ,さっきの○○幹事の整理で,個人だったらすべからく見せなければいけないということにすれば,もうその問題は起きなくなるということですけれども。  ただ,商号を付して個人の取引をするという場合に,個人として行動しているということは本当にあるんでしょうかね。商号を付さないで個人が行動すればそれはまさに個人だけれども。 ● そういう整理ではないと思います。私たちが商人であるかどうかということで議論するときは商法が適用されるかどうかということを議論する,そういう目的のために議論はしますけれども,ここで問題としているのは消費者として保護するに値する人かどうかということを議論していますので,その消費者という,保護に値しない人というのは商号をつけている人は絶対保護に値しないのかと言われてしまいますと,ビジネス事業者としても消費者と同列に保護に値するような事業者は存在するというふうに私どもは考えています。例えば,商法の世界でいきましても,商行為法の中にはいわゆる家事労働を行っているような者に関してのそういう例外的な規定とかもありますので,あるいは小商人というのもありますから,そういう意味では同じ商人といってもそこでは類型化というのがなされているんじゃないかと思います。 ● しかし,ここは消費者保護の問題では必ずしもないですね。 ● いや,ここは消費者保護の問題です。 ● そうですか。現在の債権者が自分の権利があるかどうかを調べて……。 ● いえいえ,その人が反射的効果として消費者が守られるわけですよね。 ● でも,仮に乖離がなくても消費者であるということはあとで主張できるんじゃないでしょうか。 ● それは主張はできるんですけれども,主張されちゃったら困るんですね。譲り受けようとする人は。つまり,自分が完全に確実に権利を取得できるかどうかを知るために必要なものは見ることができなきゃいけないので,つまり譲渡人,現在の債権者はだれかに譲渡しようと思ってこういう債権ですから譲り受けてくださいということで開示してもらったものを見せるわけですから,それを見ていれば完全確実にそこに書かれたとおりの債権が譲り受けられるものを見せてもらわなきゃ困るということになる。 ● じゃ商号がついたものを間違えて商人としての取引だとして開示をしなかったと。あとになったらもう何も言えない。 ● あとになって消費者だということに万が一なったら善意取得しなくなります。それで何か問題があればですから。だから非常にレアなケースではあるので,そこまで考えなきゃいけないのかどうかということが問題なんですけれども,レアではあるけれども善意取得がないということになりますれば……。 ● いずれにしても消費者は開示されなくても。 ● だからその人は問題ではないんですよ。 ● 問題ではないというのは……。 ● 開示を受ける側が……。 ● もちろんそうですが。 ● そこから譲り受ける人が問題なので。 ● いやいや,それはもちろんそうですが,ただ,消費者保護の問題ではないというふうに。 ● いや,そうではなくて,保護されている人が決まっていますと,その分については必ず開示していただかなければ困るということですので,保護されるべき人が消費者として設定されている以上は,そこの消費者の概念をどう設定するかによってどれだけ開示するかと,これはもう完全にリンクしている議論だと思います。 ● いやいや,そのことは全然否定しているわけじゃございません。 ● ですから,そちらの方の概念が商号を付しているものは一切保護に値しないという議論で整理できるのであれば,それはそれで開示の対象にはならないと,論理的にロジカルにつながっている議論ではないかと思います。 ● それで,この議論はどう終息しますでしょうか。なるべく広くやはり個人であれば商号がついていても開示するという方がそれは取得者にとっては安全ということになりますね。 ● ですから,その消費者を守るというのをどういう射程にするのかということの決めの問題だと思います。 ● そこはもう消費者契約法の定める消費者の範囲でということで一応決めていると思いますけれども。 ● ただ,その消費者契約法の方がやや揺れているということなんじゃないでしょうか。つまり事業者という概念のところで私がちょっとうろ覚えなので間違っているかもしれませんけれども,消費者契約法の議論をされている,あるいは消費者契約法の改正などを議論される議論の中には,事業として事業のためにだったでしょうか,という概念というのを縮小解釈することによって,いわゆる個人事業者としてやっている者の中にも保護に値する者がいるという議論をすべきじゃないかという,そういう議論もありましたし,判例の中にも一件だったと思いますけれども,たしか消火器を買ったケースじゃないかと思うんですが,認められているケースがあると承知しております。 ● そうであれば,個人で登録されていれば,すべからくその人がした譲渡登録はあわせて開示しなければいけないということにせざるを得ないと思うんですが,管理機関におられる方はそれでよろしいですか。 ● そういう設定で入っているのであれば,それでいいと思います。 ● わかりました。  ほかに御意見ございませんでしょうか。  今の御意見では個人であればなるべく広く開示をするという方が適切ではないかという方向の議論になったと思います。  それでは,②の登録原簿上の現在の債務者が登録事項についての開示を求めた場合にどこまで開示すべきかという,そういう問題についてでありますが,これも添付資料の設問の②のところに具体的な例が挙がっておりますが,御意見をお伺いしたいと思います。  ○○委員どうぞ。 ● この②につきましては,①の裏返しということで,現在の債務者に対してどこまで開示するかという問題だと思うんですけれども,この設問の具体例としては,この①と同じように現在の内容ということに限定するというふうなことで前提でも書かれていると思うんですけれども,債務者に関しては,例えば債権者がどんどん転々譲渡していって変わっていった場合に,過去の債権者の情報であってもその過去のその時点では権利関係というか利害関係を持っていたわけですから,それも含めて開示してほしいというニーズはあるのではないかなとは思っています。一方で,債権者の立場から,過去のものについては開示されたくないというニーズもあるのではないかという意見が全銀協内部にありまして,原則的には債務者は常に利害当事者なわけですから,過去のものも含めて全部開示できるというのが前提かなとは思うんですけれども,例えば管理機関の決めによって一部限定できるとか,そういったことができれば,ニーズにすべて満たせるのではないかなと考えます。 ● ほかに。○○委員。 ● 幾つかあるんですけれど,まずここのところに最初の文で自己がだれに対してどのような債務を負っているのかを確認したい場合に限定されると考えてよいかという論点が載っておりますが,第三者に示すという場合がほんとにないのかなというのがちょっと疑問で,例えば銀行とか取引先とかから,新規に融資を受けるとかいうときに,信用調査で何か開示をするとか,そういうことがあり得ないのかなというのがちょっと疑問に思ったところです。 ● 確かに,どれだけ債務を負っているのかを示すために開示を受けてそれを第三者に示すということはあるかもしれないんですが,その場合に,開示してもらわなければいけない内容というのは自分が確認する場合と変わりますですかね。 ● 変わらないとは思いますが,ちょっと①がそう書いてあったものですから,読んでいてちょっと一応気になったというところです。書かれている内容では,開示請求者以外の登録原簿上の債務者がだれであるかも一応開示するという案がいいのではないかと考えます。 ● そういうケースがあったとして,開示する内容等についてはここのまとめと変わらないという。 ● はい,変わらないと思います。 ● ○○委員どうぞ。 ● 現在の債務者への開示する内容について,基本的に電子登録債権を利用する場合に,開示してほしいというのは自分の取引内容を開示してほしいということはあると思うんですね。そうすると,現在の内容というのはそれが直接渡した相手,AとBでいけば債権者であるBの情報というのは必ずいつ見ても見えなきゃいけないとは思っています。Bが現在の債務者であろうとなかろうと,Bとの取引があったということをやはり確認するということは必要ですから,それの情報は必ず必要であろうと。あと,その時点において,Aから見ると,AがBに渡したという時点においての,権利関係のある人の情報が開示できればいいのかなと。先ほど○○委員はすべての債権者の情報という話をされていましたけれども,そうではなくてその行為を行った時点での登録内容が開示されるべきであろうと思っています。 ● そうしますと,添付資料の事例でいうと……。 ● 基本的な考え方は(ⅱ)という方の考え方に立ちます。 ● AはBに対して発生登録をしたから,そういう観点からBの部分は見れる,Bの名前は見れるということなわけですか。 ● そうですね。だから,この例でいくとBは要するに債務者の一人になっていますので,これはどちらも見えるんですけれども,債務者でなくなった,要するに手形でいけば非担保で譲り渡すという行為があると思いますので,そういう場合についてもAとしてはBの情報は見れなくてはいけないのかなと。あと,現在の債務者ということであれば当然そのAだけではなくて,登録保証人である例えばCというのも登録保証人,これでいくとDの方がいいですか,例としてはDの方がいいのかな。Dが登録保証人になっていますので,Dから見ると当然Cとの情報,あるいは譲渡したEとの情報,これは必ず見れないと,自分はどういう取引をしたかというのがあとでわからなくなってしまう。 ● そうしますと,御意見が分かれているわけですけれども,まずは債務者が請求したときは譲渡履歴も全部見せることのできるようにしてはどうかというのが,それは管理機関の選択でできるようにしてはどうかというのが○○委員の御提案というふうに承っていいわけですね。 ● はい。 ● それについては○○委員はいかがなんでしょう。 ● これはおそらく債権者側の立場からそこは見せたくないという,先ほど○○委員もおっしゃっておりましたけど,そういう意見があるので,そこについて管理機関の決めというのがなかなか難しいのかなと思うんですけれども。 ● ですから,見せる管理機関もあれば見せない管理機関もあるということになるわけですけれども,業務規程で定めますから,それは公表されるので。○○委員のところだと,例えば見せないと。○○委員のところだと見せるということになったときに,どっちを使うかは○○委員がお決めになると,こういうことになるんだと思うんですが,そういう整理でもいいんでしょうか。それとも,もう見せる,見せないと法律で画一的に決めた方がいいのか。どうでしょう。 ● よくわからないんですけれども,②で他方でというところ最後の4行に書かれていますよね。設例の方では債務者AがEに対して相殺の抗弁を有していた場合に,E以下も開示対象だと言っているんですが,Aというのは開示を受けてみないとEが途中に入っていたかどうかというのはなかなかわからないわけで,その前の段階でEさんというのがもしいれば見せてくださいよというような言い方をしなけりゃならないということになるんですか,この事務局の考え方では。果たしてそういうことはできるだろうかと,Aにとってですね,というのがちょっと疑問なんですが。開示されてみないとEが入っているかどうかなんていうことはわからないわけですよね。 ● まさに○○委員おっしゃるとおりでございまして,たまたま知っていたという場面と,先ほど○○委員の最初の2つ御意見があるという中で,債務者は現段階の権利関係は見れるということで,たまたま閲覧をして支払期前に知って,Eが債権者であることを知っていたと,そういうパターンはあり得る。実際どれだけあるのかというところはありますけれども。 ● 知っていて開示請求すれば別にいいんだけれども,開示を受けてればEに対して人的抗弁があって,そのあとも外の抗弁がつなげたのに,それを知らなかったばっかりにEとFについては隠されてしまって,権利主張のチャンスを失うという場合もあるんじゃないかなと。そういう知ってたか知らないかの偶然でもってEに対する開示を請求できたりできなかったりするというのも変だなという気がするんですけれども。 ● そうだとすると,登録外の抗弁を認める立場に立つとすれば,すべからく債務者が請求したときは譲渡履歴も開示するということになる。 ● それが一番すっきりしていて,しかもその可否を管理機関の業務規程にかからしめないでやるのがほんとはすっきりしていいんじゃないかなと。管理機関の業務規程によって見せたり見せなかったりするというのもまた変かなと。 ● ただ,もともと何の抗弁を持っていない場合でも全部見ることができていいのかというのは若干気にならないではないんですけれども。 ● ③のところにも関係するんですけどね,身に覚えもないというところで③が出てきますが,要するに疎明を要するのかどうかという話になってくるんですよね。言いさえすればいいのか,それとも管理機関に何か言い分を示すものを示さなきゃいけないのかどうか。後者だとすると,今度は管理機関との間に争いが生じますね。そこをどうするのかなというようなことがあるんですけれどもね。 ● ○○委員どうぞ。 ● 先ほど,使う方の企業の立場から話したんですけれども,管理機関の立場になるとした場合を考えますと,やはりこういうケースはこの人に開示する,こういう情報を開示するというのは非常につらいと思います。先ほどの消費者の問題もそうなんですけれども,結局はすべての情報を見せれば,あるいは今現在の最終的な債権債務の関係,あとは自分がかかわったところ,前後の関係,そこだけにするとどちらかに仕切っていった方が利用者としても本来わかりやすいのかなと。それが可能であればそのようにしたいという,管理機関という立場からいくとどうなのかなと思っております。 ● ○○委員どうぞ。 ● ちょっと繰り返しになるかもしれませんけれども,全銀協の中で話をしたときも,債務者側と債権者側のそれぞれの立場があって,債務者側からしたらすべて見たいというニーズもありますし,債権者側からすると見られたくないというニーズもやっぱりあるんだろうなというところですので,ちょうど中間点をとって先ほどの御提案をさせていただいたということでございます。 ● いずれにしても,この事務当局の整理では少し範囲が狭過ぎるという御意見だったように伺いましたが,いかがでしょうか,ほかの委員の方,あるいは幹事の方,御意見ございませんでしょうか。管理機関の業務規程によって見れたり見れなかったりするというのは,それはそれで何かちょっと変な感じがするんですけど,その点についていかがでしょうかね。○○委員どうぞ。 ● 当然利用者の立場からいくと,管理機関が並列で存在するということを前提に議論はされているということでいけば,管理機関の業務規程によって変わると,そこは利用者は使いづらくなってしまうと思っております。 ● おそらく管理機関がどういうビジネスモデルでサービスを提供するかということだと思っておりまして,手形的なものを提供する管理機関,あとシンジケート・ロ-ン的なものを提供する管理機関ということで,何に使うかによってその辺のニーズも変わってくるのかなということですので,参加する方はどういうビジネスに自分が参加するかということを認識した上で参加するわけですから,そこでそれほど混乱というのは生じないのかなというような感じはいたしますけれども。 ● ありがとうございました。ちょっと今の御意見を踏まえて,もう少し,ちょっと頭に血が上っていますので,もうちょっと冷静に私どもも考えさせていただいて,またその上で案をお示ししてさらに議論していただくということでよろしゅうございましょうか。 ● それでは,②のところは考え直すということでございますが,次にそれじゃ③のところについて御意見をお伺いしたいと思います。③のところは,これは過去に債権者であったけれども,現在はそうではないとされているものが登録事項についての開示を求めた場合にどこまで開示すべきかという問題についてでございますが,この点について御意見ございますでしょうか。  ○○委員どうぞ。 ● この③番については過去に債権者であった人がどうかということで,基本的にここに書いてあるとおりでいいのかなと思っていまして,ただ,あとの方に身に覚えのない場合というのが出てきて,身に覚えがない登録がされていることを管理機関に対して明らかにしなければならないと書いているところがちょっと若干引っかかるところでして,身に覚えがない登録で,特になりすましとかがあった場合に,管理機関としては身に覚えがないのかどうかというところはちょっと判断つきづらいところもあるんじゃないかなと思っていまして,そこを管理機関に対する説明で管理機関が開示していいかどうかという判断がつきづらいような感じもしていますので,ここで何らかの工夫で第三者的なものをかますのか,そういった工夫ができれば管理機関としても非常にありがたいなとは思っております。 ● ○○委員どうぞ。 ● 私もさっき申し上げかけたところなんですけれども,同じ問題なんですが,身に覚えがない登録がされていることを管理機関に対して明らかにしなければならないという具体的な意味なんですけれどもね,これを何らかの疎明とか証明を要するというふうに解釈してしまうと,そこでまた争いが生じて管理機関はなかなか慎重に構えると。そこでまた争いが出ると。実際のところ身に覚えがないかどうかなんていうことは難しい事実でありまして,訴訟をやってみて初めて明らかになるケースも多いわけで,そこが明らかだからということで,明らかであることを要求すると,実際は開示なんか受けられなくなるわけですね。だから,これはそういうふうに言いさえすればいいということになる。すると言いさえすればいいぐらいのものだったら,こんなこと要求しなければいいわけで,そこのところは余り要件としなくていいんじゃないかと。 ● お2人の御意見それぞれそういうのが出るだろうなと,これは想定の範囲内だったんですけれども,まず○○委員のお話は,実はここは明らかにというのは最初疎明とか証明という言葉を入れようと思っていたくらいなんですけれども,当事者間なのに私人同士なのに証明とか疎明というのはおかしいなというので明らかという言葉にしたんですが,これはそれこそ今○○委員がおっしゃられたように,言いさえすればいいんだったらこれは分ける意味がないので,しかしまさに今利害関係がない人にこそ譲渡履歴は見せたくないというのが意見照会の結果の多くの意見なものですから,見せなければいけないのはなりすましとか無権代理とか,そういうので勝手に譲渡登録されてしまったと,あるいは支払等登録されてしまったという場合なので,それをやっぱり証明してもらわないとだめだということにせざるを得ないんじゃないかと。ただ,そうなると,○○委員がおっしゃられるようにそれを管理機関が判断しなければならないのは非常にリスキーであるという問題はあるというのは認識していました。 ● なりすましにしても代理にしても真実の権利者のところに何も証拠が残っていないわけですよ。だからそれを明らかにせよということを言われちゃうと,実際は開示できないことになりはしませんかというのがあるんですね。 ● 手順としては,まず申請に関する書面等の開示を求めるものと思います。これは自分の登録で,自分がしたことになっている登録ですから,その申請に関する書類の開示は受けられるということになります。そこで自分のID・パスワードが使われたらどうかというと,それはどうしようもないというか,自分が関与してないということを立証するのは,つまり自分の印鑑証明書が押されているものが出てきたのと同じですから,それはもうどうしようもないということになるんじゃないかなと思っていたんですけれども。 ● 今具体的な話になってしまいましたけれども,実際いろんなケースがあり得るので,管理機関が納得をするまでの疎明というか,明らかにするところまでを要求すること自体が,裁判所へ行く前に前哨戦を管理機関とやらなければいけないようなことにもならざるを得ないので,余り適当じゃないんじゃないかなと。実際働かない,こういう要件を設けてしまうと開示を受けることができない方に働かないかなと思うんですが,ほかの方はいかがなんでしょうか。 ● いかがでしょうか。  何もなしに来たら開示するというか,あるいはこういう文言を残しておいて疎明というのはちょっと難しそうですが,どちらか。○○委員どうぞ。 ● 身に覚えがない登録,それ自体は開示はされるわけなので,ですからそれをまず開示させて,その上で例えば印鑑を偽造しているとかですね,そういうことをある程度言えばいいんじゃないかなというふうに,私はこれを読んでいたときにそういうふうに考えたんですけれども,そういうことではだめなんでしょうか。 ● 2段階ということでしょうか。 ● はい。 ● 私が先ほど申し上げたのもそういうことで,自分がしたことになっている登録についての申請関係の資料を見せてもらえますから,それを見て偽造だとか何とかいうのが立証できればさらに登録原簿の内容を見せてもらえると。 ● もらえるという,そういうようなことで,それほど実務的に負担にならない,全然開示されないというふうにはならないんじゃないかなと読んでいたんですね。たしかにこういうふうに書いてしまうと,現実に受けられないのかなとも思ったんですけれども,まず自分の身に覚えのないところだけは開示できるわけですから,そういう権利があるわけだから,そこを確認してですね,そうすると絶対何かすぐ出てくるんじゃないかなと思ったんですけれども,そういうことにはならないでしょうかね。 ● 印鑑の偽造という形で出てくればいいですけれども,それですら銀行は必ずしも納得するとは限らないし,ほかの理由でいろいろあるんじゃないかなと思うんですけれども。だから,偽造だけで申請書類を見ればすぐに明らかになるということを余り前提としない方がいいんじゃないかなと思いますけれども。 ● ただ,申請書類の開示を受けてもそれに何らの問題が見出せないというときに,弁護士として自分の依頼者がほんとに身に覚えのない請求による登録をされて被害者で取り戻せるという立証ができるとお考えになりますか。 ● それは弁護士は依頼者の言うことを信じるところから始まるわけで。管理機関は相手方として非常に慎重に構えるでしょうからそこは違うんですね。要するに,まず高々現在の債権者までのルートを知りたいというだけの開示なんでね,そんなに重いものとして構えなくてもいいんじゃないかと。身に覚えがないかというのはほんとに本案の勝敗で決するような重要性がある難しい問題だと思うんですよ。 ● おっしゃることはよくわかるんですけれども,意見照会の結果では,一番譲渡履歴を見せたくない相手というのがこの過去に債権者であったけれども現在はそうでない人なんですよ。ですから,そこは何らの要件の限定なしに全部見せるというのは意見照会の結果を全然取り入れないということになるんですけれども,それで意見をお出しになられた団体はよろしいんでしょうか。 ● ○○委員がおっしゃったのも一つの考え方かなと思うんですけれどもね,とりあえずその身に覚えがないと言ってきたら,第一段階として次の譲渡登録だけ見せて,そこで何か新たな発見があれば現在のところまでさかのぼって第二弾の開示を受けるというような,そういう御意見ですよね。 ● その提案自体がそういうふうに読めると私は考えたんです。 ● だから,その入り口のところを厳しくするかどうかというだけの問題になるわけですが。はい,どうぞ。 ● 身に覚えのない債権が登録されているということはどうやって知るんですか。 ● 身に覚えのない譲渡。 ● ああごめんなさい,身に覚えのない譲渡をされているということは。 ● 自分が見に行ったときに自分が権利者じゃないと言われるからわかるわけですよね。 ● だけど,そういう登録があること自体には。 ● 自分は一たん受けていますから。自分が一たんは債権者になっていますので。 ● 受けていて,その先へ行ったときにはと。 ● そういうことです。 ● そういうことですか。 ● 身に覚えのない登録で,確かに次の譲受人に対する譲渡というのは,それは原理原則に基づいて開示を受けられると思いますので,そこ自体は全然問題がないと思うんですけれども,これはシステムで処理することを考えると,結局IDとパスワードを一応確認して判断しますので,それさえ合っていれば特に瑕疵がないというふうに判断せざるを得ないと思うんですね。そう考えると,じゃその次,さらに開示していいということを何をもって判断していいのかなということがやっぱり非常に管理機関としては悩ましいなというふうなのが正直なところです。 ● 現実にはね,身に覚えがあろうとなかろうとIDとパスワードはちゃんとしてないと譲渡登録はもともとなされないはずなんですよ。そこさえ一致していればもうその先は見れないという扱いにしてしまえば,現実は救済はできないというのと変わらないようにも思うんですけれども,それでいいというのであればいいんですけどね。 ● それでもだめなら裁判所の証拠保全ということになるんじゃないですか。提訴前の。 ● だからすべて訴えるべき相手もわからない。だからいっぱいいろんな手続きをやっていかなきゃならないということですね。訴えようとする人は。まず管理機関に対する証拠保全をやったり開示請求をやったり,ようやく現在の債権者がわかって本来のやろうとしていた取戻訴訟をやるという。 ● それで勝てる可能性はほとんどゼロということなんですよね。善意取得とかありますから。だから,ほとんど勝てる可能性がゼロのものに開示しなければいけないのかという問題ですけれどもね,突き詰めれば。 ● どなたか。はい,どうぞ。 ● 全然違う側面なんですけれども,私法上の権利関係の問題のためだけにこの開示が求められるのかというのはちょっと気にかかっていまして,これは実務的に問題なので,実務の方からそんなことは必要ないということであればそう言っていただければいいんですけれども,さっき○○委員が会計監査との関係で見たいというお話をされましたけれども,それ以外にも例えば税務調査との関係で,既にその債権は自分の債権ではなくなっていて,自分の資産の中に入っていないということを税務当局に示したいとか,過去債権者であった人が。そういうようないろんな目的でこの記録・履歴を見て,それを場合によっては使いたいということがあり得るのかなということがちょっと気にかかっていまして,もしそうだとすると,あんまり民事法上の問題だけで入り口を狭くしちゃうと困ることが出ないかなというのがこれがちょっと気にかかったんですが。 ● 過去の譲渡の立証とか税務調査でいつだれに譲渡したかを確認したいというのは,今の身に覚えがないのよりもう一段階前の登録で自分が当事者になっている譲渡登録を相手方も含めて開示されるという理解でよろしいですか。 ● それで結構です。だから,それよりも以上のものを開示しなければいけないようなそういう例があるかどうかということなんですけれども。 ● そうすると,今の話ですと,①ですか。 ● 今の議論しているのは③なんですけれども。 ● ③は過去に債権者だったのが現在ではそうではないとされている場合というふうに書いてあるんですが,今のような電子登録債権は既に譲渡済みであって,自分の資産の中には電子登録債権は入ってないというような場合というのは,今の○○委員と○○幹事の御説明ですとどこのところで。 ● ③の上から5行目ですか,債権者でなくなったことの登録がされた後に当該登録を確認する場合と。ですから,当該登録は常に見れますので,自分が譲渡したりあるいは支払等登録をされてしまったという登録は見れると思うんです。 ● それはいつまででも見れるわけですか。 ● いつまででも見れると。すみません,文章が悪くて。 ● よろしいでしょうか。 ● はい,どうぞ。 ● ちょっと御質問なんですけど,開示を請求するときというのは費用を払わなければ,開示を求めたときには費用がかかることが前提になっているんでしょうか。 ● はい,中間試案でそうなっております。 ● その費用というのを例えば身に覚えがないとかという特段の事情の場合についてかなり高額な費用を要求したりとか,そういうような形で制約を設けるということはできないんでしょうか。 ● それって合理的なことなんでしょうか。多分手数料は業務規程で定めて認可の対象になると思うので,不合理なものは認可しようがないと思うんですけど。 ● 例えばなんですが,実際にこれで紛争が起こっていて,自分の債権を保全したいとか,あるいは損害を回復したいと考えている場合は,通常自分ではできませんですよね。そうしますと,おそらく想定されるのは弁護士なり何なりに頼んで弁護士に見てもらうという,そういう形になるんだと思うんですけれども,そうしますと一つの考え方としては弁護士であれば開示をしますよということで弁護士に費用が払われているということが前提になって見れるというような制度の枠組みであれば,そんなに濫用的な使われ方はしないのかなというような気もするんですね。つまり,見れる人本人に対して情報を不用意に提供するというような形にならなければいいわけですよね。恐らく,私はちょっと申し上げたいのは,身に覚えがないというのは先ほどから○○委員がおっしゃっておられるように,証明のしようが恐らくないだろうと思いますので,開示をさせるという方向になったら請求すれば開示されるという方向になるのかなという感じがするんですね。もしそうじゃなくて開示をさせないというのであれば,どうせ○○幹事がおっしゃっておられるように,訴訟をやったってほとんど取れないんだから,ふさいでしまいましょうという,どちらかになるんだろうなと思うんですが,その中間的なものとして,いわばある程度のどうしても必要性があって,ややハードルは高いけれども自分の方でかなりお金を出してでも絶対見たいという人にだけ限定的にそういうことができるような社会的制度というのを構築すると,問題は解決されるんだろうなと思うんですけれども,それを法制度として作るかどうかはちょっとわかりませんが,考え方としてはイレギュラーな請求なので,その部分については特段の費用等が必要ですという社会の制度設計はあり得るんじゃないかなとは思いますけれども。 ● さっき例として弁護士に頼んで弁護士が請求したときはとおっしゃられましたけれども,本人が見れないものを代理人なら見れるというのはどうやって説明するんですかね。 ● 第三者の情報ですよね。つまり第三者が途中でだれかが債務者であったとか,そういうような情報ですよね。 ● ですけども,依頼者本人が請求したとしても見せないものを代理人である弁護士が請求したときだけは見せるというのはどういうロジックで説明するんでしょうか。 ● 私が個人で自分で請求するということよりは,実際問題としてはこういう紛争の実態になったときには恐らく弁護士なら弁護士に頼んで紛争を解決してもらおうと思っているシチュエーションなんじゃないかなということを前提にしていたものですから,社会的にはかなり費用をかけて紛争処理をしようという,そういうインセンティブを持つ人しかこの情報の開示は求めないんじゃないかなと思ったんですね。したがって,個人でだれも頼まずに請求する場合もやはりそれ相応の経済的な負担をしている場合にだけ開示されますよというような制度設計をすることはあり得るんじゃないかなという,その要するに差別化の根拠の話として申し上げただけなんですが。 ● それ相応の負担というのは一体どんなふうに具体的に条文を考えるんでしょうか。 ● おそらく私法の世界の話ではないと思うんですね。今私が申し上げているのは。つまり業務規程として,これは通常のサービスと特段のサービスというように分け方をしたときに,これは極めてイレギュラーなケースなので特段のサービスですから相当程度の費用が必要ですよという形にすることで制約をかけるということは私法の世界の話ではありませんけれども,それが当局によって認められるのであればそういう差別化によってこの問題を解決することはできるんじゃないですかという提案です。 ● それは,弁護士に頼まなくても業務規程としてこういうケースにおいては特に費用を高くする,請求できるというようなことを置けば同じことになりますか。 ● そういう趣旨です。つまり,通常紛争解決するようなそういう特段の費用をかけてでもやろうと思っている人しかこれは請求しないということを。 ● 一般に費用というのは実費相当額でなければならないというのが普通なんですけど,それ以外の例は見たことないんですけど。 ● そうですか。実費相当額以外は無理ですか。それは役所ではなくてということですか。こういう場合でも。 ● 役所であるかどうか,こういう公的なものはみんなそうなんじゃないでしょうか。いわば特許的なものですから。 ● そういうことであればちょっと制度としては無理かもしれませんけど,もしそうだとすれば全部ふさぐか全部あけるかということかなとは思いますが。 ● はい,○○委員どうぞ。 ● ちょっと費用で処理するというのはなかなか難しいんじゃないかなという感じがいたします。というのは,それによって被害をこうむる人にどういう影響があるかというのは別の問題だからと思うからです。身の覚えのない登録という概念がちょっとわかりにくいのかなという気がしまして,例えば偽造とか変造とかいうふうに特定してしまうのはいかがでしょうか。つまりここで問題となっているのは,BからC,CからDというように移転したときに,B-C間の登録については,これは常にBは見ることができるわけですね。そのB-C間の登録を見たところ,それが身に覚えがないというときにさらにDから先についても見ることができると,こういう制度だと思いますが,その際にB-C間から先を見るために,B-C間が偽造または変造であったということを言えれば何か処理できるのかなと思います。その際に,任意に管理機関が見せる場合に,どのようなことをBが言えばいいのかというのと,それから管理機関がどのような場合に免責されるのか,Dとの関係で免責されるのかという問題がありますのと。それから,仮に管理機関が任意に応じないときに,Bが裁判所に見せろという請求をする際に何を疎明,あるいは証明すればいいのかという問題があると思います。そのときに,やはり何らかの基準を決めておけば回るのかなと思いましたが,身に覚えがないということをもう少し具体化した方がいいのではないかと,それによって解決できるのかなと思いました。 ● じゃそれは仮に偽造,変造というふうに言葉を置き換えた場合ですね,○○委員の先ほどからの御懸念というのは払拭されますか。 ● それを言いさえすればいいのか,それを明らかにしなければいけないのかで,大違いですから,そこは言い換えただけでは解決はしないだろうと。身に覚えがないというのはまさか条文に書けないでしょうから,偽造とか変造とかということになるんだろうと思いますが。  あと,先ほど○○幹事の御意見は,弁護士で代理でしたらどうかと非常に弁護士を高く信用していただいてありがたいし職域拡大にもなると思いますけれども,なかなかこの法律だけというのは結構難しいかなという気はいたしますですね。 ● 基準をどう立てるかということに結局尽きるわけですが,どうしますかね。 ● また次回までにちょっと案を考えたいと思いますが,基本的にはやっぱり意見照会の結果を踏まえると,言いさえすればだれにでも見せるというわけにはいかないんだろうと思います。ですから,証明してもらわなければいけないと。偽造なり変造であるということを立証すれば見せますよと。そもそもそれを立証できないんだったら最後まで立証できないはずですから。そういうのを訴訟に持ち込むこと自体が時間と費用のむだですので,早くあきらめるものはあきらめていただくというのをここでは基本的には考えたいなと。 ● 結局,開示の段階で本案をやらなければいけないということですよね。仮処分の本案化じゃないけど,それと似たようなことになるので,だれが現在の債権者で……。 ● ただ,申請に関する書面等はまず見れますので,その自分がしたことになっている譲渡のですね。それを見て,申請の添付資料には何も問題がないということになると,それでも自分は譲渡していないと立証するのは極めて困難でしょうね。 ● このハードルを余り高くね,証明とか明らかにとかいう文言とすることは少なくともどうかなと。一応の何かを言えばいいという程度でいいんじゃないかと。法文上難しいかもしれませんけれどもね。 ● 開示されたら困るという人の利益と,要するにこういう状況で開示を求めたいという人の利益をどう優先するかという問題ではあると思います。いずれにしろ,これはまた事務当局でもう少し練っていただくということにしたいと思います。  それでは,次は④と⑤も同じようなことでしょうか。この2つについてまとめて御意見をお伺いしたいと思います。いずれの設問も考えてよいかという問いかけがされておりますが,④,⑤について別の考え方をとるべきだという御意見ございますでしょうか。  いかがでしょうか。はい,○○委員。 ● ④は先ほど現在の債務者についての議論でしたけれども,④は過去の債務者であった者のということなんですけれども,開示の範囲について先ほどの議論というのはそのまま当てはまるのではないかと思っていまして,債務者であった場合の履歴といいますか,これも対象にはなってくるのかと。ただ,そこでいろいろと利害関係もありますので,開示の範囲については管理機関の方で決められるというふうな形にするのが妥当なのかなと思います。 ● ほかに御意見は。はい,○○委員どうぞ。 ● ④についてはこの事務局案でよろしいかなと考えていますが,⑤については事例⑤でHが開示を受けた情報をどのように利用するかというのがちょっと不明なので,濫用のおそれがないかなというところがちょっと懸念されるのと,それから仮に譲受候補者に開示するという場合でも,複数の候補者に開示するとかいうこともあり得ますので,情報が広範に流出して関係者の利害を害するとか,そういったことが本当にないのかなというところがありますので,登録原簿に記載されている者の利益を害するおそれがあるとして開示を拒否する余地はないとまで言い切れるのかなというのはちょっと疑問に思えます。 ● よろしいですか。 ● はい,どうぞ。 ● ⑤の方なんですけれども,今○○委員から御指摘があったんですけれども,しかし管理機関の側でそういうことを立証できることってあるんでしょうか。 ● 多分現実には立証の可能性はないかもしれないんですけれども,そうすると多分この提案でいくと,こういった場合にはそういった拒絶事由を作れないというふうな形にするのかもしれないんですけれども,そうしてしまうと,仮にこの関係者が管理機関の行為を差し止めるとかそういったときに何かそういった理由を,管理機関にそういう開示を拒絶できる理由があれば,それを根拠にそれを代位行使するとか,何かそういった主張ができるのかなと思ったので,ちょっとこのまま管理機関は拒絶できないというふうに外してしまう必要性はないのではないかと考えた次第です。 ● この問題は冒頭に申し上げたように,この抽象的な要件を設けることに対する否定的な意見が中小企業団体から寄せられているので,こういう抽象的な要件なしでもこの人が請求したときはこれを見せますという形で全部整理できないかという問題意識でもともとつくっているものなんです。 ● それは了解しているんですけれども,ちょっとほんとにそう言い切れるのかなというのが非常に疑問に感じたということです。 ● 管理機関側はいかがですか。 ● 私はここに書かれていることでいいのかなとは思っております。 ● ○○委員。 ● 断言はできませんけれどもやっぱりこの状態になるのかなと思います。拒絶する余地,要するに拒絶するということはできないんだろうと思っております。 ● ○○委員。 ● 2点ありまして,1点は今のようなケースで権利濫用的な場合をどう考えるのか,それが明らかである場合にどう考えるかというのが一つあります。それからもう一点は別の話なんですが,権利義務に関する登録内容という概念が①でも②でも,それからここでも出てくるんですが,それはもう少し具体化できないだろうかということです。必要的申請事項,それから法定の任意的申請事項というように,具体的に書いた方がいいのではないかなと思います。と申しますのは,権利義務に関する登録内容というのを広く理解しようとすると,割と広がってくるのではないだろうか,契約書であるとか,あるいは契約書の付属書類などももし含めるということになると相当広くなりますので……。 ● 登録内容ですよ。登録内容というのは登録原簿に登録された内容という意味ですよ。 ● ええそうですが,その任意的記載事項も含むということですか。 ● 任意的記載事項のことは後で別に取り上げていますが,⑧で。 ● そうすると,ここは限定されているという理解で大丈夫なんですか。 ● ⑧で任意的登録事項に関してはですね。 ● それは含まれないということですか。 ● はい。 ● それでしたら結構です。 ● ④と⑤について,ここの整理で特に御異論は……。○○委員は。 ● 疑問があるということで,最終的にそうなればやむを得ないかと思います。 ● はい,わかりました。 ● ○○委員は権利濫用とおっしゃったんですが,疑問があるといいますか,全然何か具体例が思い浮かばなくて理解ができないんですが。 ● 何が権利濫用かという,どういう御趣旨かという質問ですが。 ● 例えば,情報を得て不当な利益を得るとか,あるいは非常に多数回にわたって請求するとかというようなことが頭にありましたけれども。 ● 後者は,複数回,何回も何回も言うというのはまだわからないではないんですが,手数料取りますから構わないような気もしますけれども,前者というのがわからないんですが,不当な利益を得るというのが。 ● 他の法制でやはり閲覧請求などをするときに不当な利益を得る目的でというような規律の仕方をしている法制があると思いますので,それとの均衡というのを考えた次第です。 ● おっしゃるとおり中間試案のときにそれを上げていたわけでございまして,取締役が議事録なんかを見たいとか,そういう,あるいは株主名簿とかですね,そういうようなときの拒絶事由に不当な利益を,転売目的,名簿屋みたいなものが典型例ですけれども,ただ,ここでこの登録開示事項でそういう名簿屋みたいなものが成り立つのかどうかということをお聞きしたかったんです,本当は。それはないんじゃないかということでこういうふうに余地はないと考えてよいかと書いているんですけれども。 ● はい,○○委員どうぞ。 ● 私はこの⑤に書かれていることはこのとおりで結構だと思いまして,逆にこれでここに書かれているような現在の債権者が見られないという,その管理機関によって拒絶されるという方がおかしいのではないかと考えていますが。 ● わかりました。大体④と⑤については御異論,御疑問の提示はございましたが,大きな異論はないということで,それで⑥についてですけれども,これはちょっと続けますですかね。ちょっと頭を冷やす時間を設けたいと思います。すみません,休憩をとりたいと思います。           (休     憩) ● 時間が大分暗い時間になってしまいまして,不手際で申しわけありませんが,あと頂上は大体見えて,あと先は少ないかなと思いますので,ぜひご協力をお願いしたいと思います。のぼりだけではだめですか。失礼しました。  それでは,9ページの一番下に⑥というのがございますが,この⑥についてまとめていいかどうかという御意見をお伺いしたいと思います。これは,先ほど議論しました②とも関係するかと思いますが,いかがでしょうか。②については,少しこの整理について御異論があったように思いますが。 ● 確かに部会長おっしゃるとおりで,⑥は②をどう整理するかというもので,要するにここでの問題意識というのは,⑤もそうなんですけども,先ほど○○委員がおっしゃられたことですが,必ずこれだけは開示しますということになっているものについては開示を拒絶する余地はないという発想ですから,②の範囲が決まれば,そこは自動的に決まるということになるのかなと思いますので,ちょっと②とあわせてまた次回以降にご審議いただくということでよろしゅうございましょうか。 ● はい,何か。○○委員どうぞ。 ● ⑥に関しても⑤と同じようにやはり疑問--別に大勢に反対するつもりはないですけど--やはり若干疑問がありますと。取引関係とか,そういう信用情報ですから,反社会的勢力などにそういうものを利用されるのはちょっと怖いなと。流出してしまって,開示請求者の急迫に乗じてそういうものに利用されないかなということで,若干気になりますということです。 ● 今,⑥について議論しているわけですけれども,これは②の整理をさらに事務当局でしていただくということですので,それとあわせてさらに御検討いただくということにしたいと思います。  次に,この⑦の管理機関が開示請求権者として業務規程で定める者が開示を請求した場合の取扱いについての御意見をお伺いしたいと思います。これは業務規程で開示請求権者として定めるというのは具体的にはどういう人が挙げられるのでしょうかね。これはシンジケート・ローンで出てくるかと思うんですが。機関投資家とかでしょうか。ちょっと御意見を。 ● まずはシンジケート・ローンということでいくとですね,これにエージェントが入ってくるだろうと思っておりまして,この機関投資家や格付機関,こういったところも入ってくるのかなと。ちょっとそれ以外のところでほかにないかどうかというところを今完全に詰め切れていないんですけれども,現状では,先ほど申し上げたところが追加で入ってくるのかなと思っております。ここの後段で書いてあることについてはこのとおりかなと思います。 ● ○○委員どうぞ。 ● エージェントとかを考えるのであれば,さらにそこから委託される先とかいうのはないんでしょうかね。今の御質問なんですけれども,サービサーとか,そういったものというのも想定しておかないといけないのかなとは思いますけれども。 ● いずれにしろ,それは業務規程で定める範囲という問題ですから,特にここで関心があるのはこの開示の範囲についてどうかということですが,その点についてはいかがでしょうか。ここの整理で。 ● 今のご発言はサービサーが請求する場合と機関投資家が請求する場合で開示事項が違うかということですか。そこは違わないという理解でよろしいですよね。 ● よろしいですか。その点については先ほど御意見なかったですか。  ほかに,この点についての御意見ございませんでしょうか。  それでは,この⑦については特に御異論がないということでよろしいでしょうか。  それでは,次にこの⑧の法定外の任意的登録事項についての開示の範囲の業務規程による制限について御意見をお伺いしたいと思います。この点についてはいかがでしょうか。  はい,○○委員どうぞ。 ● ⑧は全部で3つの問いがあると思うんですけれども,最初の3行目のところですね,当該登録事項の登録の当事者が開示の対象外とすることを求めた事項に限定するものとしてよいかということ,これはよいと思います。あと,その下に「必要があるか」と2つ書いてありますけれども,これについては,必要はないのかなと思います。 ● ほかに御意見ございますでしょうか。○○委員どうぞ。 ● 私もこの3つのうち,始めはこれでいいと思うんですけれども,あとの2つについては,要するに当事者と異なることを管理機関がやるということはおかしいんじゃないかなと。もしやるとするなら,少なくとも当事者の確認をとるというぐらいのことはどうしても必要だろうと思っています。 ● ほかに。○○委員どうぞ。 ● 多分想定される意見だと思いますけれども,最後のところなんですが,どこまでが任意的登録事項として含まれるかわからないのですけれども,もしもセンシティブな情報も登録し得るという場合には,それは業務規程で開示を抑えるということはあり得るのかなと思います。 ● それは,登録をした当事者がそのセンシティブな情報について開示を制限してくれと言っていなくても管理機関が自分で勝手に--勝手にというと語弊があるかもしれませんけれども--開示しないことにすることもできるという御趣旨ですか。 ● これは,最初のときから申し上げているんですけど,本来はセンシティブな情報は登録すべきではないと思いますけれども,ただそれはここで決めることでは多分なくて,おそらく別のところでお決めいただくことになると思います。もちろん,債務者がみずから電子登録債権を発生させているわけですから,そこで抑えることができるじゃないかという議論はあり得ると思うんですけれども,事実上弱い債務者がセンシティブ情報を含めた登録を認めてしまうという場合について,歯止めを入れておいた方がいいのではないかなと,そういう意見です。 ● しかし,管理機関がそれをより分けることができますか。 ● それはセンシティブ情報の定義の仕方だと思いますけれども,それはいろんなところでセンシティブ情報とは何かということについてルールが定められているわけですよね,業態ごとですけれども。そういうものを参考にしながら基準をつくることはできるのではないかなと思うんですけれども。 ● そういうものこそ,この登録の当事者が開示の対象外とすることを求めておけばいいのではないかと思うんですが。 ● ですから,求められない場合にどうするかということなんですね。 ● 今頭に描いておられるセンシティブ情報というのがよく理解ができないんですけれども,例えばどんなものをお考えなんでしょう。 ● 任意的登録事項としてどこまで登録できるかわかりませんですけれども,信用情報に関することで,信用に関するというと非常に広くなってくると思うんですが,宗教であるとか,家族歴であるとかというところまでもし登録できるとすると,それを外すということが考えられるのではないかということです。センシティブ情報とか機微情報と呼ばれるものについてはおそらく○○委員がお詳しいと思いますけれども,個人情報保護法に基づいて各業態ごとに記述があるかと思いますので,その辺は参考になるのではないかと思います。 ● ○○幹事。 ● ちょっとわからないことが幾つかあるんですが,そのセンシティブ情報を開示できないものに仮にするとしたときに,最終的にその譲受人ないしは債権者が,債権を行使しようというときにはその情報は見れるんですか。つまり,それは開示の問題じゃないんじゃないですか。○○委員の問題関心から言うと,おそらくは譲り受けた人が実際に債権を行使しようというときにも見られない情報なんじゃないかという気がするんですが。それが第1点です。  第2点目は,先ほどから○○委員もおっしゃっておりますように,何を任意的記録事項にするのかという問題と絡んでいますので,今発言すべきことかどうかわかりませんけれども,その実体的な効力の問題なんです。つまり開示できないというふうにした事項について,それを登録することの実体的な効力というのはあるんですか。もちろん家族構成ですと,債権の内容には関係してきませんから,それはそれでよろしいわけですけれども,債権の内容に関連するような法定の任意的記録事項以外の任意的記録事項を記録して,かつ開示はしてくれるなと言ったときに,譲受人にその内容は対抗できることになるんでしょうか,というのが2点目なんですが,以上です。 ● 第1点については,譲受人にすべての情報が移転すべきかどうかという問題と,それから譲受人になろうとする者を含めて広く開示が可能かどうかという問題と2つ含まれていると思います。第2のといいますか,譲受人になろうとする者を含めて広く開示するかどうかについては,動産債権譲渡特例法のような二段階システムによって,そこはコントロールできると思うんです。第1点の債権の譲受人であればすべての情報が債権譲渡がある以上移転すると言えるのかどうかは,○○幹事はあるいは当然にすべての情報が移転するんだと,債権譲渡が認められている以上は移転できるのだというお考えであれば,そこは私と少し違うと思います。  それから,効力があるかないかということと,それから登録するかどうかということですが,私が最初申し上げましたとおり,本来はセンシティブ情報は登録すべきではないと考えておりますけれども,しかし有害的記録事項を設けるということがこの制度の上ではなかなか難しかろうということで,そこの段階ではしようがないかなと思っておりますが,ただ,どこかでチェックするということが必要になるだろう。特に,個人情報保護法がこの法律によって適用されないという理解をとる場合にはやはりどこかで歯止めを置く必要があるだろう。それがここの審議会で検討すべきことなのか,別のところで検討すべきなのかはわかりませんけれども,そういう考えを持っています。ここでは,少なくとも業務規程で定めることによって開示の対象外とするという可能性を残しておいた方がいいのではないかという考えです。 ● 今幾つかのことをおっしゃったんですが,一つは債権譲渡登記と同じように開示ということをおっしゃられたんですが,ここでは債権譲渡登記のような一般への開示ということは一切認めないという中間試案の考え方は維持しております。つまり中間試案で列記されていた特定の人だけが開示を受けるもので,その人に対してどれだけ開示するのかということをずっと御議論いただいておりますが,それはそれでよろしゅうございますか。 ● はい。ただ,何といいますか,情報保護というときに二段階あるだろうということを前提にした話だということです。債権譲渡に伴って情報が当然に移転していいかどうかというのと,それからより広くその債権について情報を得たい人が何を見ることができるか。だれでも見れるのは何かというのと二段階あるだろうと。 ● だれでも見えるものはないという整理なんですけれども。 ● はい,それで今○○幹事がおっしゃったように,狭い範囲の問題だということで,それを前提に考えているということです。 ● 今,○○委員から一番最後のものですね。当事者が開示の対象外とすることを求めていない事項でセンシティブ情報は管理機関が業務規程で定めて開示の対象外にすべきではないかということについて,管理機関になられる側の御意見はいかがでしょうか。○○委員,あるいは○○委員,○○委員,いかがでしょう。 ● 内容が何なのかにもよると思うんですけれども,やはり書いている内容について,これはセンシティブに該当するかどうかということを一つ一つチェックするというのは,大量処理を前提に考えた場合に非常に厳しいかなというふうな感じはいたします。 ● ○○委員がおっしゃられた部分が具体的なイメージが多分ないので,難しいのかなと思うんですけれども,実際に今考えますと,私が思いつきで考えたものだけなので参考になるかどうかわかりませんけれども,例えば病院と患者の間での診療報酬の支払を電子登録債権化するとか,今いろんな形でいろんな費用をカードを使ったり集金代行をしたりしておりますので,例えば労働組合とか宗教法人,政党等の会費の収納とかそういうのがあって,そういったものを例えば流動化するとか流通させる--そこまで本当にそういうニーズがあるのかどうかわかりませんけれども--そういったケースでは,例えば債権者名が問題になってくるとか,管理機関の方で債権の特定のために何らかの債権の発生原因について若干登録が必要だというふうに決められてしまえば,そういったところが問題になってくる可能性はあるのかなと。○○委員のお話を聞いて感じましたので,とりあえず発言させていただきました。 ● 今,○○委員おっしゃったのは債権者の名前を開示しないことができるということですか。債権者のお名前を開示できないと意味がないんですけど。 ● いや,場合によってそういう考え方もあり得るのかなと思ったんですけれども。 ● ⑧はそこまで議論を拡大してないですよね。 ● ここは法定外の任意的登録事項ですので。 ● クレジットカードの明細というのはあるかもしれないですね。党費とか労働組合費が自動的に落ちていくという仕組みになっていれば,○○委員のおっしゃることからすると,債権者はクレジット会社1社なんだけれども,その内訳がそういうものであるということはあるのかもしれません。 ● ○○委員どうぞ。 ● センシティブ情報との関係で言うと,やはり個人情報保護法の利用収集の範囲との整合性の確保というのは必要かと思いますが,それはむしろこの電子登録債権法制の中でクローズされて判断できることではないのかなと思っています。例えば,病院の診療報酬債権を証券化するときに電子登録債権を活用するということはあり得るわけですけれども,そのときに診療科目ごとに患者さんの名前というのを出してしまうと,これは事実上非常にセンシティブな情報というものが出てしまうということになりかねないんですが,じゃそれが証券化のために本当に必要な情報かというと,そうではないわけですよね。ですから,それはそもそも利用とか収集の範囲の中で関係がない情報だというふうに整理をしていった方がいいような気もいたします。  それから,○○幹事の御質問で,そもそも任意的登録事項として登録したものでありながら開示できないような情報があるのかということに関しては,あるんだろうと思います。例えば,金銭債権の情報以外に,いわゆる商取引であるとか,購買情報というものを任意的に登録したいという実務界のニーズは当然あるだろうと思いまして,部品のスペックの情報であるとか単価の情報というのは営業的には非常に重要な情報でございまして,A社に対して幾らで売っていて,B社に対して幾らで売っているかというのは,いろいろな取引の経緯がある過程の結果そういう価格形成がされていますので,その単価がA社に対して幾ら債権があり,あるいは債務を持っているかというのは,これは構わないんですけれども,どれぐらいの取引量に対して幾らかというのは非常にナーバスなものでございますので,この部分はたとえ社内管理上等の理由によって登録はされていても開示したくないというニーズは当然出てくるんじゃないかなと考えております。 ● ちょっとよろしいですか。今○○委員が言われたそういうナーバスなものは,これは当然登録をした当事者が開示をしないでくれと言うわけですよね。 ● おそらくそうなるでしょうね。 ● だから,問題は○○委員がおっしゃられたようなものということですけれども,まず家族構成とかそういうものについては,そもそも法定外の任意的登録事項というのは管理機関が業務規程で定めた範囲でしか登録できませんので,家族関係がどうなっているかというのは電子登録債権の流通とか支払に何の関係もない情報なので,そんなものを管理機関が登録することを認めるとは到底考えがたいように私は思うんですけれども,そういう理解でいいかどうかということと,それから信用情報のお話を挙げられましたけれども,信用情報を仮に法定外の任意的登録事項とすること,これは信用情報をつけることによって流通性を高めるというためにあり得るだろうと思うんですね。つまりこれだけの信用があるものだから高く買ってくださいよというために信用情報をつけると思うので,それは見せることができないと登録した意味がないんじゃないでしょうか。その2点についていかがでしょうか。○○委員どうですか。 ● よろしいですか。私は今の○○幹事の御説明というか御意見に非常に同感でありまして,特段それで問題はないと思って,○○委員の今回の御発言には余り同調しない意見なんですけれども。 ● 先ほど○○幹事のおっしゃったうちの家族関係なんかは登録するわけないだろうということなんですが,そこが私は実際に任意的登録事項というのがどういう形で登録されるかというイメージがわかないんです。例えば,住宅ローンの契約書や,あるいは住宅ローンの申込書というものまで登録できるとすれば,そこには家族関係などが入ってくるわけです。あるいは国籍,年収なども入ってくるわけですが,そういったものがどうなるのかということです。  それから,信用情報については,それこそ見せる必要があるだろうということなんですが,これは譲渡人と譲受人との関係によって,その債権の価値については譲受人の自己決定,自己責任だという,そういうルールもあり得るわけですよね。ローン債権の流通市場において,どのような情報を譲渡人が譲受人に開示すべきかというのは,これはむしろ両方の利益を勘案しながら実務慣行が形成されていくべき分野だと思いますので,当然すべて見せるということにはおそらくならないのではないだろうかと思います。 ● 見せないとしたときには,それを登録するというインセンティブはどういうところに働くんでしょう。 ● 先ほどお話がありました,この実務のことはよくわからないんですけれども,社内手続的には登録はしてしまうけれども,しかし後で見せたくないというようなものがもしあるとすれば,それを最後のところで抑えておく,あるいは個人である場合には信用に関することを知っていた方が確かにその個々の債権の価値を決める上では便利かもしれないけれども,しかしそれは見せたくないというのがあるのではないだろうかと。むしろ多数の債権の全体評価ができればそれでいいので,その仕組みを考えていけばいいのかなと思っております。 ● 今のお話ですけれども,多数の債権の全体評価とおっしゃったんですけども,電子登録債権というのは1個1個登録して,譲渡登録していくものですので,バルクで処理するということは基本的にないと考えているんですけれども。 ● 先ほどのクレジット債権について,それを何個と数えるかによると思いますけれども,そこに多数の債権が入っていたとしたときに,1個1個について精密な情報というのは譲渡人と譲受人との間では特に求められていないんじゃないだろうか。実行する段階になると必要になるかもしれませんけれども,バルクで売買するときはトータルとしての評価があればいいので,そうすると登録し,あるいは開示すべき情報もその範囲でいいのではないかということなんですが。 ● 要するにたくさんの債権を一本にまとめて一本の電子登録債権として登録するという意味ですか。 ● 定型的に発生する多数の債権,同じような種類の債権について言うと,結局譲渡人,譲受人は,電子登録債権自体はばらばらですけれども,譲り受ける際にはまとめて評価するのではないかと思うんですね。そうすると,その評価に必要な情報があればいいのではないかということなんですが。 ● ○○委員のおっしゃることは私はよくわかるんですが,業務規程でいずれにしろ定めるということになりますと,2つの定め方があるわけですね。1つは,コントロール機関において法定外の任意的記録事項として何を認めますというところでの定めと,開示において何を見せますという定めとあるわけですよね。前者で対応するというのが本当は筋なんじゃないかなという気がします。それがその何というんでしょうか,○○委員と私は多分同じで,法定外の任意的申請事項,記録事項の書き方というもののイメージが実務的に全然わかりませんで,フリーなスペースが与えられているということになりますと,その中にどのような情報が入っているのかをチェックして弾き飛ばせというのは,それは無理な話で,そうすると個々具体的な開示請求があったときに消すという方がまだやりやすいだろうという感じもします。それでもやりにくいとは思いますがね,フリーだったら。だから,その辺のイメージがまずよく浮かばないんですが,どちらかといえば,最初の段階ではじくという制度設計の方がいいのではないかというのが1点です。  私,2点目としてちょっと誤解が○○委員に対してあったような気がするんですが,と申しますのは,私は出せないような任意的記録事項を記録することがあるのかと言っているのではなくて,任意的記録事項で書いて,それで見せないでねと言っておいて,しかしここへ書いているから効力があるという主張が実体法上できるという制度設計というものはあり得るんですかという話であって,それはやっぱりあり得ないんじゃないかという気がいたします。  それが2点目で,もう1点あったんですが,忘れてしまいました。 ● 任意的登録事項で見せていけないようなものはセンシティブ情報が含まれるのかどうかという事実の認識についてもやや議論のあるところですので,もう少しそこのところは事実関係を含めて整理をいただきたいと思います。  それでは,これは8のところまで一応済みましたので,次に,この論点7の(2)に移りたいと思います。ここに2つの設問についてですが,御意見,御異論ございますでしょうか。  これは,○○委員に御発言をいただきましょうか。 ● この2つにつきましては,ここに書かれていることでよろしいのかなと思います。 ● ほかに御意見ございますでしょうか。  それでは,この点についてはこの整理でよいということにさせていただきます。  それでは,この論点7にちょっと時間がかかりましたけれども,この程度にいたしまして,残りました論点4から論点6までについて審議をしたいと思います。まず,これらの論点についてまとめて事務当局に説明をお願いいたします。 ● まず4の電子登録債権の弁済以外の消滅原因の「(1)供託」でございますが,これは,中間試案に対する意見照会で,弁済供託の場合,債権者側から支払等登録をしなければいけないという原則を適用したら供託できないじゃないかという意見が寄せられたことを踏まえて,どうするかさらに事務局の方で考えるということにしていた答えを書いているものでございまして,結局は中間試案を作る段階でも一度御議論いただいたわけでございますが,そのときと結局回り回って同じ結論になったんですけれども,ここに書いておりますような理由で供託者の単独申請による支払等登録は認めない。つまり供託者が供託をした場合に支払等登録を受けるためには債権者の申請,あるいは供託者が申請することについての債権者の承諾,もしくはこれにかわる判決が必要になるということにせざるを得ないのではないかと事務当局では考えるに至ったわけでございますが,それでよろしいかというのが(1)でございます。  それから,(2)でございますが,①はいわば当然のことですけれども,支払期日等から時効期間が経過していても,前回もお話がありましたように,時効の中断とか時効利益の放棄ということがあり得るわけですので,単独申請というわけにはいかないだろうというのが①でございます。そうなりますと,②の登録原簿の保存期間の問題ですけども,時効は完成しているんだけれども支払等登録がされないで放りっぱなしになることがあり得るのではなかろうかという問題でございます。中間試案におきましては,保存義務というのはすべての登録について支払等登録または登録事項を削除する登録がされた場合だけ,そこから保存期間を起算するという案を示していたわけですけれども,それだけでは賄えないのではないかと考えるに至ったわけでございます。そこで,すべての登録について支払等登録または登録事項を削除する登録がされた場合の保存期間と,そうじゃなくて何もされていないのだけれども支払期日から非常に長い期間が経過した場合には消去できるという2つを用意しなければならないのではないかということで,それぞれ3年,5年,7年というのと7年,10年,20年というのを,何かお示ししないと議論していただきにくいと思ってお出ししただけで,このうちのどれがいいとかいうプレファレンスがあるわけでも,このような期間を掲げたことに積極的な理由があるわけでもないんですけれども,これを一つのたたき台に感触を伺えればというのが②でございます。  5の登録保証における消費者保護等の問題ですけれども,これも前回御議論いただいたところですでして,そのときに宿題になりました,保証の場合における消費者とは何ぞやということを少し調べるようにという御指摘だったものですから,それを注に書いておりまして,消費者契約法の立案担当部局が書いておられる解説では,法人の経営者や従業員等が当該法人の債務の保証人になる場合であっても,経営者や従業員等は消費者だという整理がされているということでございます。そうなりますと,前回の部会で○○委員から幾つかのパターンに分けて考えなければいけないんじゃないかという御指摘があったんですけれども,全部消費者でくくれるということに結局なりますので,登録保証人が消費者である場合には登録保証の独立性,この独立性は中間試案の第5の3に幾つか項目があるわけですけれども,その全部を適用除外することでいかがというのが5でございます。  それから6も前回の部会で,これは金融界からの意見を御紹介したわけですけれども,特定の登録の当事者も常に申請権者に含めると,その人が債権者でも債務者でもなくなっていて,何らの利害関係がない場合でもその人を巻き込まないと変更登録ができないということになって大変なことになるという御指摘があって,それはそのとおりだろうという話になったわけでございます。そこで,どういうふうに切り分ければいいかということを考えたのがこの6の本文でして,要するに登録原簿上の利害関係を有する者,つまり登録原簿に変更を加える,登録事項に変更を加えることによって,登録原簿上利益を得るか損をすることになる関係にある人全部が,直接だろうが間接だろうが,そういう人たちみんなで変更登録の申請をしなければいけない。したがって,もう債務者でも債権者でもなくなって,その事項がどう変更されようが関係ないという場合は申請権者にはならないというふうに整理し直したということでございます。ただ,注の「なお」書に書いておりますように,現在は債権者でも債務者でもない場合であっても,例えば法定外の任意登録事項として,電子登録債権の経過,来歴を明らかにするために,原因関係を登録したという場合に,そこを勝手にあとで直されてしまいますと,何のためにそれを登録したのかということになりますので,そういう場合は利害関係がありということになるのだろうと考えた次第でございますが,それでよろしいかというのが6でございます。  以上です。 ● それでは,まず論点4の(1)の供託について議論をしていただきたいと思いますが,事務局の原案は中間試案の作成前における審議結果と同様に,電子登録債権の供託があった場合における供託者の単独申請による支払等登録は認めないというものでありますが,これについていかがでしょうか。○○委員どうぞ。 ● 私はこの意見を出した団体の幹事をやっております関係で,意見の趣旨を確認をしてまいりましたのでちょっと報告しておきます。パブコメで意見をお出しするときにはちょっと以前の債権譲渡登記の競合の問題とかで債権者がわからない,不確知の問題が生じるのではないかとか,あと支払の同期性の問題とか,そういったところで漠然とした不安感があって,それで弁済供託の関係も意見として考えていただきたいということで出したんですけれども,今日も議論がありましたように対抗関係とか優先関係の整理がきちんとできていけば,債権者不確知の問題はほとんどなくなるだろうということにもなりますので,今回の案で特に問題がないというような意見を言っておりましたので報告しておきます。 ● この点についてほかに御意見ございますでしょうか。  はい,どうぞ。 ● 1点だけ確認させていただきたいんですが,今回のこのタイトルが供託となっておりまして,また結論の部分にも供託があった場合とありますが,説明文の第1行に弁済供託とありますし,また本日は○○幹事からの御説明でも弁済供託とありましたので,今回の御提案はあくまで民法上の弁済供託に限られると。裏を返せば執行法上の執行供託については今回の御提案の射程外ということでよろしいでしょうか。  すなわち,若干補足しますと,執行供託の場合は弁済供託と異なりましていつでも取戻しが可能という形にはなってございませんので,別に定めるとか,あるいはあくまで今回は民法上の弁済供託に限られるという点でよろしいかと思いますが。 ● ここに書いたのは弁済供託をイメージしていて,まさに自由に取戻しができるパターンを考えております。では,執行供託の場合はどうかというと,それじゃ執行の申立てが取り下げられた場合はどうなるのかとかいろいろと議論があるようですよね。ですから,そこら辺はまたいろいろ御相談させていただきながら,詰めて考えていきたいと思っているところでございます。 ● とりあえず弁済供託についてのここでのまとめということについてはよろしゅうございましょうか。  それでは,御異論がないということで次に移りたいと思います。  論点4の(2)の消滅時効と登録原簿の登録内容の消去に移りたいと思いますが,まず①の消滅時効の完成を原因とする支払等登録の申請権者ですけれども,これは他の支払等登録と同様に債権者の申請または債権者の承諾を得た債務者の申請によって行わざるを得ないという,そういうまとめですが,それで特に御異論ございませんでしょうか。  これについては特に御異論がないということで,それでは次に進みたいと思いますが,この論点4の(2)の②の登録原簿の登録内容の消去の問題でありますけれども,支払期日から一定の長期間が経過したときにも,管理機関が登録内容の消去をすることができるものとするということは,ここにまとめているところでよろしいでしょうか。  ○○委員どうぞ。 ● 確認というか御質問なんですが,時効の中断がなされている間はどうなるのでしょうか。差押えがあったり訴訟があってそれが長期間にわたっているという場合,それから確定判決による時効期間の延長の対象になるかどうか。さらに更生手続などで長期分割になっているというような場合はどうだろうかということで,一律に年数を決めてしまって支障があるかどうかの御検討についてお伺いしたいと思います。 ● いろいろな場合があることはもちろん承知しているんですけれども,まず第一に登録原簿の登録内容が消去されたとしてもそれによって権利がなくなるわけではないということは確認しておきたいと思います。一たん登録された以上は権利が発生するわけで,あとからそれが消えたからといって権利がなくなるわけではない。これは登記でも1回登記されれば対抗力が生じて,滅失しても対抗力がなくなるわけではないというのと同じであります。その上で,一体,消滅時効の問題との兼ね合いで支払期日から長年たっているものについてどう考えるべきかということ,これは場合分けは恐らくできないと思います。例えば会社更生ということをおっしゃられましたけれども,会社更生が起きているのかどうかも管理機関は必ずしもわからないわけですので,会社更生中だから残しておくというようなことを要求すると非常に酷なことになると思いますので,どこかで安全なところで線を引かざるを得ないのではないかと思っております。 ● 今のお話の最初のところで,権利自体がなくなるわけではないんだということですと,例えば実際にできるかどうかわからないんですけれども,整理ポストみたいなものを設けてそこに移しちゃうというような処理はできないでしょうか。 ● それは管理機関の事務処理の問題ですので,整理ポストであっても登録は登録ですから,それはできると思いますけれども,ただ,電子データを残しておかなければいけないというのが非常に多くの登録がされるということを念頭に置いて考えると,これは7年保存しないといけないのと20年保存しないといけないのとでは,保存しなければならない量が約3倍になりますので,それをどう考えるかという問題かと思います。 ● そうすると,時効の中断については何というか,実体上残っている権利を想定して考えればよいということですね。つまり整理ポストに入れるか,あるいはそもそも全部抹消してしまうかは別にして,実体上の権利は残っているから,それについて請求していけばよいと,こういう御理解ですね。そうしますと,この残っている権利も電子登録債権であるという理解でよろしいわけですか。 ● それはそうです。ただ,登録されていませんから,譲渡登録とかはできないので移転はできないということになると思いますけども。 ● そうすると,登録のない電子登録債権を認めると。 ● 復活させればいいと思いますけれども,当事者の申請で。つまりそれも変更登録だと思いますので。 ● ○○委員どうぞ。 ● 今の2人の御議論のところなんですが,私もやはり原因債権は残っているけれども,電子登録債権はデータが消去されたら一たん消えるのではないかと理解しておりまして,それを当事者が復活させる場合にはもう一回登録をするということになるのかなと。だから,この消去期間というのは今○○委員からも御説明あったように,ここにも書いてあることですけれども,時効の中断とかを見越して,電子登録債権の時効自体は3年だというふうに中間試案でなっていますから,例えばその3倍強ということで10年なら10年ということにしておいて,それでそこで消去されたものは一たん電子登録債権としての権利はなくなるんじゃないかと思っていたんです。ただ,原因債権としては生きていると考えていたんですけど,そこはやっぱりまずいですか,そう考えると。 ● そういうふうに考えますと,一回成立した権利が例えばものすごい大地震か何かでデータが全部消えてしまったというようなときには,その時点で権利はなくなってしまうのですか。 ● いえ違います。それはデータの事故による消滅ですから,復旧ということになるのであって,ここはルールにのっとって,登録機関が終わったので消すということですから,それは違う話だと私は理解していたんですが。 ● そうすると,時効が完成していなくて存在している権利なんだけれども,当事者じゃない管理機関がデータを消すと権利までなくなるわけですか。 ● はい。私は原因債権は残るけれど,私はコーティング論ですから,電子登録債権の登録を抹消して原因債権だけに戻すということはできるというのは相続のところでもそういう議論をして,変更登録の中にそういうものは含まれるんだというお話を伺ったところですから,それとパラレルに考えたんですけれども。そのもしそういう考え方がちょっとリスキーだというのであれば,この20年説とかそういうふうに長くする必要もあるかと思うんですけれども,それは○○幹事がおっしゃられたようにデータの量がすごく多くなっちゃいますから,それはやっぱり10年ぐらいで消すべきだろうと思うんですね。その場合やっぱり取引の安全ということを考えても電子登録債権でありながら登録データがないものについてなお電子登録債権としての評価を継続するというよりは,一たんそこで原因債権しかないという判断にした方がいいのではないかというのが私の意見です。 ● かなり大きな問題に突き当たってしまったんですが,どうお考えでしょうか。○○委員,どうお考えですか。 ● よく考えていなかったんですけれども,有価証券の一般理論からすると,権利行使をするためには有価証券が必要なわけですよね。でも権利がなくなったわけではないけれども,行使ができなくなってしまうわけですね。それと同じような関係かなという気がしておりまして,権利自体がなくなるわけではないでしょうけれども,実際上行使しようと思うとやはり登録をもう一度し直してもらって,有価証券でいえば除権決定を得るようなことをして,それと同じ関係になるのか,ちょっと詰めて考えてはいなかったんですけれども,今お話聞いていて,感想としてはそういう関係になるのかなと思いました。 ● いかがでしょうか。ちょっとこの点について何か御意見を伺っておいた方がいいかなと思うんですが,学者の先生方ということで,○○幹事いかがでしょうか。 ● 私は直ちに結論はまだないんですけれども,そういうことが起こるかどうか,先ほど裁判によって当初の時効であったものよりも長く伸びるような場合も民法の債権についてはありますですよね,10年になると。そういうような訴訟を電子登録債権の場合に起こしているときがあるのかどうかという,支払というのが基本的に口座の決済でやるというようなときどうなるのかという感じがするんですが,でも払わなければあり得るだろうとすると,そういうものが継続中であったとか,あるいは確定判決が出ているというようなときに債権自体の登録は消えてしまって,行使もできないということになると,出た判決だとか中断の話の実体的な関係は一体どうなるんだろうかと。かつ,そのときに原因債権と両方請求していればいいんでしょうけれども原因債権とは切り離されて主体が違ったり,あるいは簡単だというので電子登録債権の方だけしかなぜか主張しなかったというようなことだとすると,電子登録債権の方にだけ法律関係が確定しているというようなものについて,どういうことになるのかというのがちょっと気になっていまして,そうすると一応一律に何年と決めてしまうんですけれども,当事者の申請によって延長するというようなことはできないのかと。例えば判決が出ていて,明らかにこれは時効は10年に延びているということか,それ以外に明らかであるようなものですね。管理機関がイニシアチブをとってやるというのは,それはちょっともう不可能だと思うんですけれども,やっぱりそれに対して発生登録を改めてやらないと権利行使自体ができませんと,証券を改めて作るのと同じですというのであれば,債務者がそんなことに同意するかという感じもしますし,そういう処理を絡ませることによって実質的に持っていきたいところに持っていけないだろうかという気はしているのですが,理論的な問題として登録がないときの電子登録債権というのがどういう状態であるのかというのはわかりませんが,確かに今の議論を聞いておりますと,権利行使に登録を要する債権があるとすると,行使できないんじゃないような理由ではないのかなと。そうすると,復活の簡易な手続を認めるか,それともおよそ最初から延長は認めておくというような手当は必要じゃないのかなという気はしておりますが。 ● 一たん消えてしまうという考え方はとらないという。 ● 一たん消えてしまうということは実体的には,例えば判決なんかで時効期間が延長されていて,存在するということが電子登録債権そのものについて確定もされているのに管理機関が抹消すると消えてしまう。しかもそういうものを消すという方法を最初から用意しておくということですよね。そういうものが出ていようが何しようが3年で切るとか7年で切るとか,それが果たして適切なのかなという気はしているのです。ですから,その前提としてはやっぱり抹消すると消えちゃうんじゃないかなという印象があったのかもしれません。そういうことを認めるのは適切じゃないんじゃないかという気が逆にしているものですから。 ● 潜在化しているというのは。 ● ○○委員の説明を受けて,そういうことかなと思ったんですが。行使できないようなもので潜在化しているというのは。時効にかかった債権というのはもともとそういうもので,そういうものをもう一本作るというようなことかもしれませんが,だとするとしかし本当は権利が確認されているものについて権利行使ができるような措置が入っていないとやっぱりまずいんじゃないかなと。それが簡易なタイプについてなのかどうかわかりませんが。 ● 今の○○幹事の御意見に非常に賛成なんですけど,実務の観点では期間の方がここに書いてあるような20年とかいう形になりますと相当なシステム的な負荷というのがかかってくるだろうと。現実にここまで必要なものがどのぐらいあるのかというのもわかりませんので,実務上は時効が3年ですから支払期日から3年たった後に,残っているものはどのぐらいあるのかわかりませんが,相当少ないだろうと。これについて管理機関の方はすべてデータを持っているわけですから,債権者の方に通知をすると。通知をして,まだ時効の中断を援用する場合については,簡単な判決とか証人の事実等の疎明を管理機関にすることによって再度3年延長すると。もし,もう既に貸倒処理しちゃっていいですよということがあると,例えば時効の成立を税務署等に証明するにもそういった記録があれば簡単に企業側はできると思いますので,もともと債権者としては期日管理を当然やっているわけですし,そういう3年のところで一たん通知して,何らのリアクションがなかったらそこでもう管理機関は全部落とせると,そういうふうに決めてしまった方が実務的にも簡単ですし,一回消してしまいますと先ほどからございましたようにいろいろな問題がありますし,非常に債権者側に負担が大きいですよね。ですからそういう割り切りで,理論とかそういうところではないんですけれども,そういう割り切りでいいのではないかなと思われるんですけれども。 ● 今おっしゃったのは消去をこの手続ではなくてむしろ3年たったら時効が来ているはずだからというので,手続的に通知をして,その手続で返事が来なければ消しちゃうと。 ● それはもう消してしまうと。 ● 7年とか10年ではない,別の発想。 ● はい。権利行使をまだするつもりがあるかどうかの管理機関の方からの確認をして,期間内に返事がなければ権利行使する意思はないということで,そこでもう消してしまうということではどうかなと思うんですけれども。 ● それは一つの発想ですね。手続的に何かちゃんとしたものを置けば,もっと早い時期に消しても構わないということにはなる。そういうやり方で何か問題が新たに出てくるかどうかということも考えなくちゃいけないと思うんですが。 ● 確実に債権者に届かないといけないですね。 ● そうでしょうね。 ● 返事がないだけじゃだめですね。 ● 届いたというものがあれば返事がなくてもいいんでしょうけれども。届いたというところがちょっと管理機関にとっては負担になるかもしれないですね。 ● 内容証明でやらなくちゃいけない。 ● だとちょっと大変ですね。そこがちょっとこれの欠点です。官報掲載でよければいいんでしょうけれども,そういうわけにもいかないでしょうし。 ● いかがですか。事務局としては,少し別の発想からの提案も出たようですが。  ○○委員どうぞ。 ● おそらくやはり期間だけだとなかなかうまくいかないので,期間プラスアルファ,それが最初私が整理ポストというような変な言葉を申しましたが,○○幹事のおっしゃった申請延長とか○○委員のおっしゃった通知によってということですが,そこの組み合わせ方というのはいろいろあると思うんです。仕組み方は。例えば○○委員の通知説をとるにしても,通知がない状態で債権者側からアクションを起こしたという場合も当然含まれてくるでしょうから,そこはいろいろ御検討いただくことにしまして,期間プラス一部のものについては延長になるのか別の種類になるのかわかりませんけれども,その並列と申しますか,そのような制度がいいのではないかと思います。 ● ○○委員どうぞ。 ● 私が先ほど申し上げたのは,要するに電子登録債権なるものは,実際に10年も20年も生き延びるというか,命のあるものでは,一つの債権についてですね,そういうものではないだろうと。制度の仕切りとして不法行為の724条の行為のときから20年とありますね,あれと同じように一種の除斥期間として生存期間を決めてしまって,それで10年やれば十分ではないかという一つの御提案だったわけです。その裏には管理機関の方がいろいろ○○委員のように実際には管理機関でそういうことをなさるんだろうと思いますが,それを義務付けられても管理機関としては自分の登録債権の管理が煩瑣になると。だからやってもいいけどそれを余り義務付けるのもいかがなものかと。確かに○○幹事が言われたように時効なんかでどんどん伸びてくる場合もあるんだけども,それでも10年見ておけばよろしいんじゃないですかということで,さっき私は申し上げたんですね。ただ,一方で不法行為の20年も,最近になって,もともとあれは時効なんですけれども,除斥期間説に最後のところで,時効で言えば停止みたいなものを認めなければいけないじゃないかという議論が出てきているのと同じように,10年と切って,やっぱり最後のところでこういう理由で延ばしてほしいというのがあるだろうと。そうすると,○○委員がおっしゃるようにその分何か組み合わせてくっつけるということが考えられると思うんですが,私はもうそういう意味で,ちょっと一つこれは割り切りで,電子登録債権自体の寿命が10年だという考えはいかがでしょうかという提案であります。 ● 今の○○委員の説でいきますと,支払期日から10年で自動消滅ということになりますね。すると電子登録債権で確定判決をとったという場合は必ず確定判決の確定日というのは支払期日から訴訟の期間だけ遅れているわけですが,今の民法ですとそこから10年ということになるわけですが,その時効期間の満了前にもとの電子登録債権が消去されて消えてしまう。すると確定判決は執行できないという御理解になるのか,そういう場合でも確定判決の正本だけあれば執行できるのか,それはどうなりますか。 ● それは後者でしょうね。だから,そういう判決で延びたなんていうケースがない限りはもう寿命は10年ということであって,その判決の効力まで無にする10年というのはちょっと難しかろうと思いますけどね。 ● そうすると,確定判決をとった場合は,その支払等登録との引き換えだなんていうことは当然言えなくなるわけですね,もう消えちゃっているわけだから。するとちょっと違って,登録がなくても判決の紙だけで執行ができるということになるんですかね。というふうに理解すればいいと。それは一つわかりました。  あともう一つ,○○幹事と○○委員のおっしゃったことに私も魅力感じているんですが,その場合,当然債権者の一方的な申請で延長できるということになると思いますが,その際債権者が何を言わなければならないかということなんですが,先ほど○○委員のお考えだと,時効が中断しているという証拠を積極的に出さなければいけないと。債務者の承諾ないし時効期間完成前の請求なりその他の中断事由を証明しなきゃいけない。そういうことでいいのか,それともこれを延長してくださいと言いさえすればいいんじゃないかという考えもあるんじゃないかと思うんですね。時効というのは債務者側の援用があって初めて有効なものですから,そこもあわせて考えておかなきゃいけないなという気がするんですが。 ● ○○幹事。 ● 電子登録債権が抹消されたときの話なんですが,○○委員は原因債権だけが残るとおっしゃって,それは極めてあり得る考え方のような気がするんですが,ただその原因債権との関係というのを当事者が自由に定めるということになりますと,原因債権はあるとは限らないわけですよね。そうすると電子登録債権が抹消されるとそれで権利がなくなるということになって,それで本当にいいのかなという気がするというのが第1点目です。  第2点目は○○委員がおっしゃることとほとんど重なるんですが,そもそもこの制度は,こういった制度を作るときにはどういう制度なんだろうかということがあるような気がします。つまりこれは(2)としては消滅時効と登録内容の消去というふうに書いてあるわけですけれども,消滅時効だけとは限らなくて,7年たった,10年たったということになると,時効も含めて消滅している可能性が高かろうというふうに考えて抹消するのだというふうにとらえますと,債権者が,いや違いますよと言っただけで抹消を止められたり,復活,再登録ができたりするというのが,どうも何か制度趣旨としての推定的な考え方と違和感があるような気がするんですね。かといって,結局定まっていないんですが,私も。○○委員がおっしゃるような疎明だけはしないといけないということになりますと,何でこれが管理機関が疎明だということをちゃんと認めるとか認めないとか,大変な負担が管理機関にいきそうな気がいたしまして,ほんとはよくわかっていないんですけれども,そうなると,私は○○幹事と○○委員がおっしゃっていることはよくわかるんですが,何か仕方がないのかなと。6ページに書かれていることで,消滅させた後に訴訟なり起こして,相手方に対して,再登録の義務を負わせるというふうにせざるを得ないのかなという気がしているということであります。 ● 時効中断事由を考えてみますと,そんなに難しいことではないんじゃないかなという気はしますけれども,差押えがあるとか,訴えを提起しているとか,あるいは債務者の承認があるとかいうことですから,そんなに悩むことはなかろうという気はします。 ● いろいろ議論をいただきましたが,なお今日の御議論を受けて事務当局でもう少し練っていただくということにしたいと思います。大体考えられる考え方はすべて今出していただけたと思いますので,十分に資料が整ったと思います。  それでは,これは論点の最後5ですかね,論点5の登録保証における消費者保護の問題に移りたいと思います。この論点につきましては,先ほど御説明がございましたけれども,法人の経営者が法人の持っている債務の保証をする場合もその経営者は消費者と解釈されるということですから,法人の経営者の妻子や親族,友人などが保証する場合も当該保証人は消費者として扱われることになりますので,これは原案どおり登録保証人が消費者である場合に登録保証の独立性はないとすれば,それによって前回の部会で問題となった事例はすべて適切に解決されることになると思われますが,そういう整理でよろしいでしょうか。  この点については特に御異論はないということで,その点を確認させていただきました。  それでは,最後に論点の6でありますが,変更登録の原則的な申請権者について御議論をいただきたいと思います。変更登録の原則的な申請権者については中間試案での考え方を改めて変更の対象となっている登録の当事者を常に申請権者とすることはしないで,当該変更することに利害関係がある場合にだけ申請権者とするという案,これが提示されているわけですが,そういう考え方でよろしいでしょうかということで御意見をお伺いいたします。  よろしいでしょうか。この点についても特に御異論ございませんでしょうか。  それでは,事務局のこの整理に御異論ないということで確認をさせていただきました。  それでは,大変長く時間を超過してしまいまして、どうも私の不手際で申しわけありませんでしたが,これで本日予定した審議はすべて終わったことになります。  それでは,次回の予定について事務当局から御説明をお願いいたします。 ● 本日も長時間にわたって非常に御熱心な御審議をいただき,ありがとうございました。非常に有益なお話が多々あったと思いますので,今日の御議論の結果を踏まえて次回の資料を作りたいと思います。どうも本当にありがとうございました。  次回でございますが,次回は10月31日火曜日午後1時からでございまして,場所はこことは違いましていつもの20階の第一会議室でございます。それで御審議いただく内容は,次回までに要綱案の第一次案を作ろうと思っていますので,これを事前にお送りしてそれについて御審議いただくという形にさせていただきたいと思います。その際には,今度の土曜日のシンポジウムも行かしていただいて勉強させていただいて,それを踏まえて案を作らせていただきたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。 ● それでは,これで本日の審議を終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。 -了-