法制審議会戸籍法部会             第12回会議議事録 第1 日 時  平成18年10月24日(火)  自 午後1時30分                         至 午後3時42分 第2 場 所  東京高等検察庁第2会議室 第3 議 題  戸籍法の見直しに関する要綱案についての検討事項について 第4 議 事 (次のとおり)                議        事 ● それでは,定刻が参りまして,御出席予定の委員,幹事の方,おそろいになりましたので,法制審議会戸籍法部会第12回の会議を開会いたします。  最初に,配布資料について事務当局から御説明をお願いいたします。 ● 本日利用いたします資料ですが,事前送付させていただきました「戸籍法の見直しに関する要綱案についての検討事項(2)(案)」,部会資料番号41番でございます。それから,同じタイトルで「検討事項(1)(案)」,部会資料番号でいきますと40番,これも利用いたします。それから要綱中間試案本体の三つでございます。 ● それでは,本日は前回に引き続きまして,パブリックコメントの結果を踏まえて要綱案の取りまとめに向けた審議を行う予定でございますので,よろしくお願いいたします。  まず,前回御審議いただきました戸籍法の見直しに関する要綱案についての検討事項(1),戸籍法部会資料40のうち,第1の6,本人確認等が残っておりますので,この部分から御審議をいただきたいと思います。  最初に,事務当局から御説明をお願いいたします。 ● それでは,前回の部会資料番号40番の検討事項1の一番最後のところですね。5ページ目の6の本人確認等のところでございます。ここでは「試案第1・2(1)(2)のとおりでよいか」と書かせていただいております。(1)は,窓口に出頭して交付請求する場合,それから郵送により交付請求を行う場合,出頭した者あるいは郵送された交付請求書の名義人が交付請求者であるわけでございますが,その確認を行うと。それから,出頭した者又は郵送された交付請求書の名義人が代理人又は使者である場合,それらの本人確認を同様に行うということです。それから(2)は,代理人又は使者が交付請求をした場合には代理権限についての疎明をするということでございます。  これにつきましては,パブコメの結果,賛成意見が多数であったということでございますが,代理権限の疎明に関しまして,パブコメの中では,委任者本人の運転免許証等の写しの提出を求めるべきであるという意見がございました。この点につきましては,当部会での議論を踏まえまして,補足説明では,委任状の偽造等については私文書偽造等の刑事罰で担保されているということと,代理人と使者本人について確認を行うということで,委任状偽造等の防止効果はあるのではないかということで,あえて中間試案の本文には書かなかったということでございます。もちろん委任の事実に疑義のある場合に,市町村長の判断でそういった資料の提出を求めることを否定するものではもちろんございませんが,要綱案として全国一律に行うべき本人確認の方法として例示することは適切ではないのではないかと考えまして,このとおり書かせていただいているところでございます。 ● それでは御意見をお願いいたします。いかがでしょうか。--特に御発言がなければ,中間試案の提案のとおりということでよろしいでしょうか。  それでは,第1の6,本人確認等につきましては,中間試案の提案のとおりとさせていただくということにしたいと思います。  そこで,次に,今度は本日の資料であります「戸籍法の見直しに関する要綱案についての検討事項(2)(案)」,部会資料番号の41に基づいて御審議をお願いしたいと思います。  まず,第1の7,追加資料の提示等について,事務当局から御説明をお願いいたします。 ● それでは,部会資料番号41の第1の7でございます。これは,中間試案で申しますと,御承認いただいた本人確認の方から一つ前のところにさかのぼっていくんですが,第1の戸籍の謄抄本等の交付請求の中の1の交付請求の(5)でございます。市町村長は,戸籍の謄抄本等の交付請求の要件について確認をするため,交付請求者に資料の提示等を求めることができるものとするという,提案でございました。これにつきましても,パブコメの結果,賛成意見が多数を占めたので,提案どおりでよいかと考えています。  それから,有資格者の職務上請求について,資料等の提示が一律に求められることは不適切であるというような意見もございましたが,これは,前回御議論をいただいて,また今後議論いただくところでございます,資格者による職務上請求の要件を踏まえた運用上の問題と考えられますので,要綱案の記述としては,このままでよろしいのかなと考えています。  それから,パブコメの結果,戸籍に記載された者等,理由を明らかにする必要がない交付請求権者についても,このような資料の提出を求める扱いを適用すべきではないという意見もございました。  そこで,考えられるとすれば,現在戸籍の謄抄本等の交付請求の要件について確認するためと書いておりますが,「要件該当性について疑義がある場合は」とか「要件確認のために必要がある場合には」というような限定的な文言を入れるということも考えられないわけではないんですけれども,そのような趣旨でこのままでも読めますし,逆にそういうことを書くと,それでは,どのような点から要件に該当するのに疑義があると判断するのかといったトラブルが発生しないとも限らないということでございまして,この点についても中間試案のとおりでよろしいのではないかと考えておりますが,いかがでしょうか。 ● それでは,この第1の7,追加資料の提示等につきまして御意見ありませんか。 ● 今回,戸籍の謄抄本の請求をすることができる場合につきましては,ある程度の理由といいますか,事情がある場合について請求できるということになるのかと思うんですけれども,その場合に,やはり基本的には請求する人自身が,自分が正当な要件があるんだということを言う必要があるんではないかなと思うんです。そういった点では,基本的には資料等の提示をするというのを原則にしていった方がいいのかなと私は思うんですけれども,いかがでしょうか。 ● 今の点は,私の方では,要綱中間試案が出たときに補足説明を事務当局の方で付されたわけですけれども,そこの22ページに書いてあるように,交付請求書によっても疎明ができる。一律に追加資料の提示を求めることとすると負担が過大になると書いていますし,ここには直接には書かれていませんけれども,国民が戸籍を利用しようとする場合の請求のしやすさという観点でも,原則資料を提示しないととれないというよりは,基本的にはきちんと交付請求書に理由が明らかにされていれば利用できるという考えで,この試案ができていると理解をしていたところで,そういう説明が事務当局からもあったと承知しておりますが,それは変わっていないということでよろしいんでしょうか。 ● ○○幹事のおっしゃるとおりだと思います。 ● ただ,交付請求書にどこまで理由を書くかということが,まず一つあるかと思います。あと,第三者が,戸籍謄本をとるときに,何らかの事情なり,その人との関係というのはあるのかと思いますので,その辺のところにつきましては,少なくともはっきりとさせる必要があるのかなと思うんですが。 ● 個々の具体的なシチュエーションをここに書き込むということは恐らく無理だと思うんですね。基本的には,先ほど○○幹事が言われたように,交付申請書といいますか,そのところで正当な理由があると判断できれば,それだけで出せばいいと。それでなお確信が持てないときに追加の資料を請求するという,そういう組み立てになっているということだと思うんですけれども。  ほかの方,御意見いかがでしょう。○○幹事のお考えは,それは,交付の申請書は申請書として何か資料を必ずつけろと。 ● 原則としてつけると。その請求書の中で確認できるのであれば,それは省略することはできるというような形かと思うんです。少なくとも,使者と戸籍人本人の関係というのはどういう関係なのか,何で必要なのかというのは,ある程度の疎明資料は必要性があるのかなと思うんですけれども。 ● 第三者請求の要件を今回明確化して,具体的に交付請求書に権利権限を行使する具体的な必要性を含めて書いてもらうと。その交付請求書の記載自体によって疎明することがあり得るべしということを前提にした上で,疑義が生じた場合に市町村長による追加資料の提出を求めることについて,法律上も何らかの根拠を認めようということで,この中間試案ができ上がっておりまして,その趣旨の補足説明も書いて,その前提でパブコメでも支持を集めています。ですから,原則,第三者請求のときに資料を提示するというような考え方で運用するということは,その前提を覆すようなことになってしまいますので,この時点においては難しいんではないかという気はいたしておりますが。 ● ほかの委員,幹事の方,御意見いかがでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● やはり私も,一応交付請求書による疎明がなされるということで,それにお互い疑義がある場合の運用として提出を求めるということでいいのではないかと思います。例えば相続事件でも,傍系の家族等とか,そういう者の戸籍謄本等をとる場合に当たって,その場合の追加資料というのは一体何だろうかという問題がありまして,やはり相続とか,そういうきちんとした疎明が一応疑義がないような形で交付請求書の中に疎明されていればそれで足りるとしないと,余りにすべての人が常に資料を持っていかなければいけないというのは,国民への負担がちょっと重いのではないかなと思います。 ● 戸籍謄本等をつけなくちゃいけないとかいうことになると,ちょっと問題ですよね。 ● 今の件ですと,現実的な窓口での対応としては,その死亡した人,それが死亡したことの確認ができるかどうか。何月何日死んだよと,それをまず自分のところで,うちの戸籍なり住民票で確認できればいいんですけれども,確認できない場合については,まず何月何日に死亡したのか,それを明らかにしなさいと。それと,その戸籍を必要とする人との関係。あなたは何でそれを必要とするんですか,それについて明らかにしてくださいというのは,これは現場の対応として求めております。それをやらないと何でも出すという話になりますので,そこのところはやっていると思います。 ● ○○幹事の言われるのは,それは申請書の中で書かれていて,それを窓口の方で確認できるかどうかということで,確認できればそれで出されているわけでしょう。 ● もちろん,電話での問い合わせだとか,そういった方法もあるとは思いますけれども,一般的な問い合わせに対しては,その辺のところを明らかにして申請してくださいという,そういう対応をしていますね。 ● 多分,言われていることはそんなに違っていないんじゃないかなという気がしましたけれども。 ● 今の点の確認なんですけれども,○○幹事のおっしゃった現在の取扱いの場合には,先ほどおっしゃったようなことについて,示す書類を別途出してもらうという扱いをしているわけですか。 ● 基本的には,そうです。取扱いがあった場合については,こういうものですということでお願いしています。 ● そういうわけですね。そうすると,やはり少し落差があるんじゃないんでしょうか。 ● そうすると,例えば死亡診断書の写しとか何か。 ● 死亡診断書というか,何月何日に死んだよという事実を明らかにしてくださいということですね。それと,戸籍を必要とする人とあなたの関係はどういう関係ですか。ここについてを明らかにしてくださいという,そういう話ですか。 ● それも,明らかにしてくださいというのは,交付申請書に書くとかいうことじゃなくて,別途資料を必要とするということですか。 ● それは,どういう根拠で今やっておられるということになりますか。 ● 根拠はないですけれども,不正請求を回避するという,そういう意味合いです。 ● 例えば,死亡した事実を証明する資料というはどんなものを求めているのですか。 ● だから,死亡したということが分かればいいので,何月何日に死んだと,それが戸籍なり,また住民票なりで確認できれば,それでもってそういうものをつけてください。特に郵送の場合にはそれをやってくださいというふうにやっています。窓口に直接来た場合については,場合によってはうちの方から本籍地に問い合わせをしたりとか,そういったことはありますけれども。 ● 例えば,まだ死亡していないんだけれども,推定相続人の範囲を調査したいというときに,そういうときでも戸籍の必要性というのはあると思うんですが,今言われたような運用がされると,そういう場合に出せる資料もなく,疎明もできずというような運用になってしまうんじゃないかということを非常に懸念するわけですけれども。 ● なぜ必要なんですかということですね。だから,戸籍に記載されている人と請求者の関係がどういう関係になっているのか,その辺については少なくとも明らかにしていただいて,先ほどみたいにまだ死んでいないと,これからの可能性だよということであれば,そういったことも含めてお話をいただくという形になると思いますけれども。 ● その関係というのは,どういうことなんですか。 ● まるっきり関係ない人の戸籍謄本等をとるというわけじゃないはずですから,例えば,債権債務関係があるとか,また,親族だけれども,ちょっと離れたところというような方であれば,その関係を明らかにしてくださいということです。そのための資料を出してください,請求書に書いただけだと確認できませんよという形に,少なくとも千代田区の場合の取扱いとしてはしておりますけれども。 ● それじゃ,○○委員,どうぞ。 ● 今のお話をお伺いしていますと,その規定の仕方として,そういう場合に確認するために求めることはできるという形でも,別に構わないことは構わないんですね。原則の問題として,最初から資料をつけなさい,資料をつけてするべきだとしたときに,じゃ,どういう資料が必要なのかということを,もう少し明示する必要が場合によっては出てくるんではないでしょうか。そこをちょっと心配するんですが,そうすると,現実にこういう事件のときにこういう資料が必要でということが定型的に出せるものであればいいですけれども,必ずしもそうはいかないだろうという感じがいたします。そうすると,そこのところでちょっと,現実の問い合わせなどについて,どう現場でお答えになるか,窓口でどうお答えになるのか。そういったところで問題が発生しないだろうか。そういう疑問を感じるんですが,いかがでしょうか。 ● 基本的には,第三者の請求者と戸籍に記載されている本人との関係ですよね。ここのところはまず明らかにしていただきたいというのがまず第一だと思いますね。これは請求事由によっていろいろな場合が出てくると思いますけれども,何で必要なんですか,どういう関係があるんですかということになるわけなんです。それで,それを何に使うかということについては,それこそいろいろな事例があると思いますので,その中でそれぞれのケースで判断するしかないと思いますけれどもね。 ● そういう形になってしまうのかなと。それぞれのケースで判断するということになると,私は,書き方として,確認するために求めることができるという形にしておいた方が柔軟性を持つことができるのかなという感じがいたします。 ● 私も,結論は○○委員と同じなんですけれども,ただ,2点ございます。  一つは,先ほどのやりとりである部分が出たかと思いますけれども,請求書に事由が書いてあればそれでいいということなのかというと,それは必ずしもそうではなくて,より立ち入った関係を示すための資料の提示が必要とされる場合があるということは,これは確認をされた方がいいのではないかと思います。その上で,すべてを定型化することができないので,その資料の提示等を求めることができるものとするという,この結論で結構なのではないかと思いますが,では,どのような場合が資料の提示が求められる場合なのかということは,原則に書くにせよ,求めることができると書くにせよ,やはり明らかでありませんと,これは窓口の方もお困りになるでしょうし,請求する側も困りますので,現在の実務を整理していただいて,運用の基準というのをある程度明らかにしていただくということをあわせて,原則はこれでよいのかなと思いました。 ● それは法律レベルじゃなくてということですね。 ● 本人等請求とか,有資格者の職務上請求とか,交付請求する人の主体いかんによって交付請求の要件が変わってくる場合がございます。その場合に,例えば戸籍謄本等をとろうと思っているその人と自分との関係について,自分はこの人の直系尊属である,直系卑属であるというようなことを示すものは,資料も原則必要だと思っていたんですが,第三者請求の場合に,戸籍謄本等をとれるための要件であるとか権利権限行使について,例えばどういった貸金債権があってというようなときに,その戸籍謄本等をとろうとしている人と,その第三者との間の関係については原則資料が必要と言われましたけれども,それは,今の貸金債権の請求であれば,消費貸借契約書みたいなものを原則として,提示させるという,そういう運用なんですか。 ● それは,債権資産の関係については,まず出しておりません。 ● それは,いかに交付請求書に消費貸借契約の要件事実がすべて書いてあっても,それだけでは疎明は足らないという扱いをされておられるんですか。 ● これは,住民票の方の交付請求についても同じような扱いをしていると思います。現場の取扱いとしてはですね。 ● 必ず文書で証明しなくちゃいけないということですね。 ● 少なくとも契約書を出してくださいというふうにしています。 ● 契約書がないときはどうしておられるんですか。 ● そのときは交付できませんということを伝えます。 ● 債権があっても。 ● 債権があるということは,何らかの形で資料が残っているんじゃないですかということですよね。何もないというのはおかしいんじゃないですか。 ● それはおかしいんじゃないですか。何か別の権利を侵害しているように思うんですけれども。本当に,さっきも懸念を表明したんですけれども,今みたいに債権は契約書がないと認められないみたいな,疎明についての的確な判断というのがきちんとなされるのかどうか。それが過剰に書類を求められることによって,結局必要な戸籍謄本等が,今回の審議で要件を限定した,そこで限定した上で認められるはずのものが,さらに認められなくなるんじゃないかということを懸念するんですが。 ● 口で言えば簡単ですからね。「あの人,お金を貸しています」って,それは,口で言えばそれだけでお金を貸すということはまずないんじゃないですかということですよね。そういう確認をさせてください。 ● ちょっと○○幹事に教えてほしいんですけれども,例えば契約書を作成したときに,これは示すだけでいいんですか。それともコピーを要求するのですか。 ● 今のところの扱いはコピーを出してもらっています。 ● それでは,コピーは全部行政の窓口に残ることになりますね。 ● それで,業者によったら,それを戻してくれと言ってくるところもあります。特にその申出がない場合については,うちで保管します。 ● コピーを。 ● ええ。そういう形にしています。また最近,自動契約機みたいなもので登録するときの書類しか残っていないときに,それで確認をするというような,そういった事例もありますので,これを契約書として認めていいのかどうかというようなところも,ちょっと内部では課題としてはなっています。また,金利や何かの面でも,非常に高い金利の設定をしているものに対して果たして出す必要があるんだろうかとかという,そんな話は出ていますけれどもね。 ● すみません。本当に全国の窓口でこれだけの請求件数があるときに,一律疎明資料を求めるというのは現実的じゃないように思うんですけれども。 ● ただ,恐らくどこもやっていると思います。全部確認したわけじゃないですけれども,まずまるきり申請書ベースでもって出しているというところは,反対に少ないんじゃないかと思いますが。 ● 債権の金利とか,返済済みかどうかとか,そんなことまでは見ていないはずですよね。 ● 金利までは見ていないと思いますが,少なくとも契約書の確認はしていると思います。 ● すみません。一つお尋ねしたいんですけれども,それは金融業者とか,そういうケースに限ってなんでしょうか。それとも,例えば個人の貸し借りで相手が死んだとか,そういう場合においても,借用書がないというケースもあるとは思うんですけれども,今,○○幹事がおっしゃっているようなのは,業者だというケースがほとんど適用対象とされているんでしょうか。 ● 基本的には,第三者の方がとる場合については,その関係を示すもの,何で必要なのか,そこのところを明らかにしてくださいということについてはお願いしていると思います。親族の方でということだったら,場合によったらそれは戸籍を確認すればできますので,それは相手の戸籍のあるところに問い合わせをして,この人と親族関係ですかというようなことを確認するというのは,場合によってはあるかもしれませんけれども,何らかの裏はとった上で進めているのが大部分だと思いますけれども。 ● そうすると,例えば請求者の方が親族関係を自分の戸籍から証明しているとか,そういうことですか。 ● そうですね。そこまで求める場合があります。特に郵送で請求が来るような場合については,その人との関係が分かるような戸籍をつけて,それで請求してくださいというような場合はあります。 ● 現在,窓口でどのような実務が行われているのか,これはケース・バイ・ケースでいろいろな場合がおありかと思います。今,例に挙がっている場合について,どのようにやっているかということについて御説明があったんだろうと思いますが,我々,ここまで議論してきた際に,これまで行われてきた窓口の確認が厳し過ぎるから,それを緩和すべきだというようなことで議論してきたわけでは必ずしもないと思うんですね。もちろん従前の取扱いに疑問があるところというのもあるでしょうし,それをこの機会に統一ないし補正するということは必要だろうと思いますけれども,何らかの形で書類が求められることがあるということ自体は前提なのではないかと思いますが,その上で○○幹事がおっしゃったような御懸念も確かにありますので,要求のし過ぎになっていないだろうかということを再度どこかで洗い直していただく。  他方,○○幹事がおっしゃったように,ただ言うだけならば,それは虚偽の申請というのもたくさん出て,それも弊害が出ますので,どのあたりでバランスをとるんだろうかということについて,今までのことを前提としつつ,検討する機会をどこかで設けていただくということで,今この場でさまざまなケースについて議論をしても,ちょっと議論が収拾しないように思いますが。 ● 非常に多様性があって,ちょっと要綱の中に書き込めるような内容じゃないと思うんですよね。 ● 恐らく,そういう追加資料の提示等を求める権限を,要綱の中では市町村長が認めるという限度で記載しておいて,今,窓口でばらつきがあるとすれば,それをどういうふうに具体的に運用していくかという問題だと思うのです。例えば,貸金債権であれば,全国一律に,契約書を出させましょうということになると,これはやはり現実的ではないし,それが出てくるまで戸籍謄本等を交付できないということになると,やはりこれはトラブルの原因になります。ただ,それでは,どんな貸金債権であっても,口で言われれば口頭の契約でも何でも,いろいろな形態での契約があると思うんですが,金銭消費貸借と,ちゃんとそれらしく書いてあれば,その契約書は全く要求しないんだという一律な決め方もやはり不適切だと思いますので,これはなかなか,パブコメでもできれば全国一律にとは書いてありましたけれども,やはり窓口での実情と個別案件の事情によって判断せざるを得ない部分がどうしても残ると思うんですね。そういった点を考えますと,要綱ではこの程度の記載とさせていただいて,省令なり通達なりで市町村に基準を示すときに,また検討させていただくということにならざるを得ないかなと思います。 ● ちょっとよろしいですか。本質的な話でないかもしれないですけれども,こういう取扱いを全国で一律というのが一番いいわけですけれども,長い歴史の中で,地域によって公開に対して非常に厳しい見方を住民の方がされるところもありますし,そうでないところもあります。ですから,今,○○幹事が言われたように,できるだけ統一を図るのが好ましいとは思うんですが,それによって,かえって今までの積み上げられていた,その土地土地でのやり方が大きく変わるのも,ちょっと意図するところではないような気もしますので,必ずしも一律にできるかどうかは難しい面もあるということだけは,申し上げさせていただきたいと思います。 ● ほかに御意見よろしいでしょうか。  それでは,いろいろ御意見をいただきましたけれども,基本的には試案のとおりということで,全国でのばらつき等に関して運用基準を通達でどこまで書けるのか,それはなかなか難しいと思いますけれども,事務局の方でちょっと検討していただくということで,要綱としては試案のとおりということにさせていただくということでよろしいでしょうか。  どうもありがとうございました。  それでは,次に,第1の8の交付すべき証明書につきまして,事務局から御説明をお願いいたします。 ● 交付すべき証明書に関しましては,ここでA案,B案ということで2案掲げさせていただいております。A案は,試案第1・3のとおりとするということでございます。試案第1の3は,市町村長は,本人等請求を除いて戸籍の謄本の交付請求があった場合において,請求の目的から戸籍の抄本--個人事項のものですね--を交付すれば足りることが明らかなときは,個人事項に係る戸籍の抄本を交付することができるものとするという,そういう提案でございました。これについて,今回B案という,特段の提案を行わないという提案を新たにつけ加えさせていただいた理由でございますけれども,これは注に書かせていただいたところでございまして,パブコメの結果は試案第1の3に賛成する意見が比較的多数であったんですが,反対意見も相当数あったということでございます。それは,謄本の請求があった場合に,個人事項の証明で足りることが明らかかどうかということを判断することが難しい。それから,その判断をめぐって窓口においてトラブルが発生するというような懸念が示されたわけでございます。それから,賛成している意見の中でも,そういった判断の難しさを指摘する意見もございました。この提案をとった場合は,やはり,それでは,どういった場合に明らかに個人事項に係る戸籍の抄本で足りるのかということを類型化して示すことが必要となると思われますけれども,これはやはり網羅的に示すことはなかなか難しいのかなと考えております。  もう一つの観点は,こういった規定を法文で置きますと,明らかに個人事項に係る戸籍の抄本で足りる場合には,そのような場合に限って,その限度でのみ交付請求権が発生しているということとなるわけでございまして,そういう場合であるのに謄本の請求に対して個人事項で足りるかどうかという検討を行わず謄本の交付をした場合には,本来謄本の交付請求権はなかったわけでございますので,戸籍に記載されている者よりプライバシー侵害を理由として賠償の問題が発生する可能性がある。  それから,謄本の請求に対して個人事項の抄本であることが明らかな場合でないのに,厳しく個人事項に係る抄本のみを交付した場合には,これによって本来必要だった謄本がもらえなかったということで損害が発生した場合には,同様の責任問題が生じますし,謄本の請求に対して抄本の交付をしたということで,そういった市町村長の処分について不服申立て,あるいは,後でまた説明させていただきますけれども,行政訴訟の提起というのがあり得ることになるということでございまして,中間試案のときは,試案の第1の3というものだけ提案を掲げさせていただいていたわけですが,こういった点を考えますと,こういったものを法律上明文の規定で置くのは,多少リスクがあるのかなという気もしております。  注3のところに書かせていただきましたけれども,B案をとって,特にこのような明文の規定を設けなくても,現在窓口で,本当に謄本が必要なのか。個人事項の抄本で足りるのではないか,あるいは一部事項の抄本で足りるのではないかというようなことで指導して,その請求を切り変えさせるという扱いがされておるようでございますが,そういった扱いというのは指導ベースで強制力がないものとして正当化するという通達等の発出が可能と考えられますし,この問題は,そもそも必要な限度を超えて,必要な部分を超えて,とりあえず謄本を持ってこいというように戸籍の謄本を提出する方にやはり問題があると思われますので,そういった戸籍謄抄本の提出を求めている国,あるいは地方公共団体の機関,民間企業等につきまして,必要な限度で提出を求める扱いをしてくださいというような啓蒙活動を法務省の方から行うということも検討に値しますし,それがむしろ現実的ではないかというような気もいたしております。それで,今回,A案,B案,2案掲げさせていただきました。御議論いただきたいと思います。 ● それでは,この件について御意見をいただきたいと思いますけれども,パブリックコメントの結果を踏まえて一応事務局の中で検討して,特段の提案を行わないというB案を新たに出して,両方御議論をお願いしたいと思いますけれども。 ● 少し話は大きくなってしまうかもしれないんですけれども,何が必要なのか。戸籍謄抄本を持ってこいといったときに何が必要なのかを明らかにさせていただくというのは,先ほど○○幹事の方からお話のあったとおりだと思います。ただ,法律で戸籍謄抄本だとか,戸籍の全部事項証明だとか,そういう表現が入っているものもありますので,場合によってはそういった法改正を求める,例えば,労働基準法でしたかね,青少年を雇用する場合については戸籍証明書を備えつけなければならないと,そういった規定は,今,住民票でいいんだというふうに厚生労働省自体が言っているんですから,だったら労働基準法を改正してくださいというふうに持っていった方がよりよい方向に行くのかなと思いますので,意見だけ言わせてください。 ● 今回の法改正で同時にそういうことができればもちろんいいんでしょうけれども,それはなかなか難しいと考えます。 ● ほかに御意見,いかがでしょうか。特にここはパブリックコメントをかけた試案と変えようかというところですので,いろいろ御意見をいただければと思います。 ● ちょっと確認なんですが,先ほどの注2のところにあった損害,国賠の話です。これ,二つの場合がありますけれども,このリスクというのは,別にここの問題だけじゃないですよね。今回の改正のほかのところにもかかわるということでよろしいんですよね。 ● 正当な理由がないのにというのと同じことになる。 ● ただ,それは全体にかかわる問題なんですが,謄本の請求に対して抄本を交付すれば足りることが明らかというところの線の引き方が,なかなか判断が難しいので,そういった問題が生じやすいのかなと,そういうことでございます。 ● 私も○○幹事と全く同意見でして,他の場合でも国賠の問題は生じると思いますので,それだけではここの理由にはならないだろうと思っております。  ただ,そうは言っても,さまざまな場面で謄本ないし抄本と言われていて,申請する方としては大きい方で1回で済ませたいという気持ちを持つというのももっともなところがあるだろうと思います。○○幹事がおっしゃったように,求める方が必要な範囲に限るというのが,これは正論だろうと思いまして,その点は強くこの機会に関係各所に要望していただきたいと思います。  それで,事務局で今回B案を特に出されているということで,B案の方向で考えてほしいという御希望なんだろうと思いますので,それはそれで結構かと思います。しかしながら,注の3でありましたが,通達等々による処理は可能と考えられるということだったんですけれども,ここはもう少し積極的に,もしB案をとるのならばお考えいただきまして,法律のレベルでA案をとらないとしても,抄本,個人事項,あるいは一部事項で足りるという場合には,そのような方向で窓口で指導していただく。関係各所にも働きかけるということを,より積極的にぜひ打ち出していただきたいと思います。 ● ほかの方,いかがでしょうか。 ● 私も,今回は提案を行わないという方がいいんじゃないかと思います。理屈から言えば,本来必要なものだけを出せばいいし,それしかとれないというのが当然だと思うんですが,まず一つは窓口の方々の負担というのがありますし,それから,やはり前にもちょっと話したことがあると思うんですけれども,皆さんがおっしゃるように,要求する方が社会の実態というのが変わらない限り,試案のとおり行おうとすると法律と実態とのそごが出てしまう。ですから,将来的にはそういうことになるんだろうと思いますけれども,やはり今回提案するというのはちょっと難しいなと思います。 ● ほかの方,いかがでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● 私どもの内部で議論をしたときに,この試案の第1の3ですかね,これをとると,多分混乱があちらこちらで発生するんではないかという非常な危惧を持ったことがございます。端的にどういうことかと申しますと,例えば家庭裁判所では,こういうふうな事案だから戸籍謄本が欲しいということで当事者の方に申し上げる。当事者の方がそれをきちんと理解して窓口に行っていただいてきちんと説明していただければ,多分問題は生じないと思うんですけれども,途中できちんと理解されておられずに窓口に行って,その結果,これは抄本で足りることが明らかじゃないかと言われてしまう。そういう可能性もゼロとは言えないなと思っております。そういったことになると,当事者の方に行ったり来たりしていただくことが場合によっては生ずる可能性もありますし,そういうものはなるべく少なくしたいというようなことをちょっと考えておりました。それともう一つ,これも失礼な話なんですけれども,窓口で本当にきちんと判断していただけるのかなというところも,ちょっと少々疑問に思うというところもありました。  それらを考えると,今回,このB案ということで特段の提案を行わないという案を出していただいたので,これであれば,家庭裁判所としてはこちらの方がいいのかなという感じを持って--私個人としましてはこちらの方がいいのかなと思っております。 ● どうぞ,○○幹事。 ● 今のお話で,窓口で適切な判断ができるかどうかというのは,まさにそのとおりで,正直言って,実際窓口にいらっしゃる方も戸籍のことは全然知らないんですよね。何を言われているか分からない。とってこいと言われたから来ましたという,そういう感じで,それに対していろいろ聞くんですけれども,聞いてもやはり分からないので,そうしたときにどうなんだ。そうすると「いや,謄本でしょう」とか,とりあえず謄本を出しておけば間違いなかろうという,そういう方向にどうしても行かざるを得ないですね。抄本を出して,後から「こんなのじゃ足りない。一度で役に立たなかったじゃないか」と言われることを考えると,どうしてもそちらの方に行ってしまいますので,求める方も本当に何が必要なんだ。これこれの証明をするためにこれが必要だから持ってきなさいよとはっきり,それこそ文書か何かで出しておいていただければ,それをもとに市区町村の方としては非常に判断がしやすいというのがありますので,その辺のところをぜひ皆さんに周知をしていただければと思います。 ● それでは,これについては,今回新たに出てきた特段の提案を行わないということでよろしいでしょうか。ただ,この注の3をどういうふうに書き込むのかというのは,事務局の方に御検討をお願いしたいと思いますが。  それでは,次は第1の9,交付請求書の開示,試案第1の4ということですけれども,これについて事務当局からの御説明をお願いいたします。 ● 交付請求書の開示につきましては,試案ではA案,B案という2案を掲げさせていただいておりまして,A案は特段の定めを設けないものとする。B案は,市町村長は,戸籍に記載されている者から,その戸籍の謄抄本等の交付請求書の開示請求があった場合には交付請求書の全部を開示するものとするという提案でございました。A案の特段の定めを設けないものとするという提案は,各市町村の個人情報保護条例等の規定により開示,不開示を決定するという前提の提案でございました。これにつきましては,パブコメの結果,意見が完全に分かれたところでございまして,今回,交付請求書の開示について全部開示するというような扱いを認めるということは,かなり画期的というか,新しい扱いでございますので,これだけ意見が完全に分かれているということからすると,このような規定を設けるのは現時点では時期尚早なのではないかと考えられるところであります。  それから,やはりパブコメの結果によれば,本人通知制度を設けるべきであるという意見も多数出されていたところでございます。これは,交付請求書の開示をするという,恐らくそれを前提にした提案だと思われますけれども,それをさらに発展的に考えまして,交付請求があった時点で本人に通知して知らしめるというような提案ですが,これをすべての場合について行うことは,事務処理上の問題を考えても非現実的であると思われますので,ここはA案でよろしいのかなと考えておりますが,いかがでしょうか。 ● それでは,ここはもともとA,Bという2つの案で意見を聞いているところですが,今回,事務局としてはA案でどうかという,そういうことですけれども,いかがでしょうか。  ○○幹事,どうぞ。 ● 開示請求があった場合,特に問題になるのが個人からの請求があった場合の扱いというのがありまして,うちの方でも以前1件ありまして,実際には委任状,これは相続の関係なんですけれども,戸籍に記載されている人のお兄さんがある不動産会社の役員の人に委任状を出した。そうすると,個人の識別できる情報を出すのは個人情報保護条例の中では好ましくないということで,大部分マスキングした結果,何も分からない状態になってしまいました。それで,請求書の方はどうかというと,請求書についても申請者が委任を受けた不動産会社の個人で,個人名については出さないということなので,これも全部マスキングしてしまいますと,残るのは戸籍に記載されている人の部分,それと,この場合は戸籍の附票が必要だったということで附票を1通求めたよという,ここだけしか明らかにならなかったんですね。これで,こういう状態ですと開示したら「ばかやろう。ふざけるんじゃない。これじゃ何も分からないじゃないか。何を言っているんだ」というふうに現場としてははっきり言って言われてしまうんですね。請求した人,これは悪いことをしようとして請求しているのに「何でそればかり保護するんだ。おれは被害者だぞ。被害者を何で守らないんだ」ということで,大分厳しく言われたことがございました。ただ,これははっきり私の方では言えないのですが,大体お見込みのとおりなんじゃないかというニュアンスを伝えるという,非常に苦しい現実的な対応が求められてしまっているというのが実情です。  また,個人情報保護条例で対応するということなんですけれども,個人情報保護条例の基本的な考えとしては,個人情報について守るという視点ですから,本人の同意がある場合ですとか,よほどの事情がない限り情報を出さないんですけれども,ただ,法令で定めがあるものについては別だよという取扱いになっていますので,これを戸籍法に基づいて証明書の請求があった場合については交付する。一方,請求書の開示請求という話になると,個人情報保護条例でいくというのは,これは出す方は戸籍法だけれども,開示請求については個人情報保護条例というのはいかがなものかなと。また,条例の場合ですと,条例の規定の仕方ですとか,また運用だとか,そのあたりについては自治体によって大分差があります。千代田区の場合だと,弁護士の方ですとか資格者の方から来た場合については,基本的には職務上請求ということで出すようにしています。ですけれども,自治体によってはそれも出さないという判断をしているところもあります。うちの場合だと,使者の方が来た場合については,その使者の名前だけ出すのはやめましょうというふうにやっていますけれども,それも全部出すというところもあります。自治体によってその辺のばらつきがありますので,どちらかといえば,このあたりについては,それこそ全国一律的に,戸籍謄本等をとられた人の権利を守るというところも含めまして考えていくということが必要なのかなとは思うんですけれども。 ● そうするとB案。 ● 私の方としてはB案と思いますけれども。 ● 私も,個人情報保護条例というのは,本当は○○幹事が言うように自治体によって違うんですよね。運用もまた違っているという部分で,そんな大事なことを自治体側に託していいのかなというのがありまして,やはり法律の中で決めるべきではないかなと思うんです。  あと,やはり私の立場からすると,知らないうちにそんなものがとられているということからすると,やはりマスキングだらけのものを出されても何の役にも立たないなという感じがします。 ● 自治体だと情報公開についての条例もありますよね。その情報公開の対象から外れているという,個人の氏名とか何か,そういうことですか。 ● 私が先ほどお話ししたのは,戸籍法は個人情報保護条例の範囲の外として,戸籍法に基づいて請求があった場合については証明書の交付をするんだというのがありますので,できればそれに従った形で,開示請求があった場合についても対応できるようにしていただいた方がいいんじゃないかなと。基本的には個人情報保護条例の中で言っていますのは,個人情報を外部に提供する場合については,本人の同意を求めるですとか,また個人情報審議会というようなところを大体のところは持っていると思いますけれども,そういったところの合意を得ているだとか,また,身体,財産,生命にかかわるようなものが発生して緊急性があるというような場合については,その例外として認められておりますけれども,本人の同意を得た上で情報提供するというのが基本的な方向になっているかと思います。 ● ほかの方,御意見いかがでしょうか。 ● 今回の改正によって,一応第三者請求等の場合は理由があるときに交付されるという原則になっていくわけですね。戸籍謄本等をとられた本人が開示請求をするという場合に,片方では戸籍謄本等を請求する必要があってとっている。それから,片方では知りたいという要求が開示請求に向かっているわけですけれども,必ずしも自分のとられたものを全部知りたいという権利が実体法上確立しているというのではないのではないか。ですから,ここら辺は,やはり利害の調整という形で考えるべきものであって,私は,その必要性があってとったものについて,私がとりましたと言われることを必ず明らかにさせられるというのは,とった人が理由があってとった場合に,そこまで明らかになってしまうことを望んでいるか望んでいないかという問題もあると思います。これはA案で利害の対立を制度としてどういうふうに求めていくかという問題ですので,そういう形で折り合い点というのはある程度求めなければいけないのではないか。やはりB案というのは,とられた人は全部を知る権利があるんだという,そういう権利というのがあることが前提になっているような気がするんですけれども,果たしてそういう権利があるのかなというのが私の疑問です。 ● やはりこちら側も権利があって開示請求するんじゃないかなと思うんですけれども。ただ自分の感情の赴くままに,自分の情報をだれがとったか出せと言っても,それは窓口は受け付けてくれないんじゃないかと思うんですが。やはりとられた方も,何か自分の権利が侵害されている,自分の知らないところで何か使われているという,そういうものにはやはり開示する権利があることが前提じゃないかなと思うんですね。 ● 全体として,個人情報は,個人情報保護法や何かでまず保護するという方向で多分行っていると思うんですね。今,このA案,B案という二つの案があるんですけれども,B案の場合には,それに大きな例外を設けよう,戸籍法の場合には申請した人の氏名を全部公開してしまおうという大きな例外を設けるという規定なんですね。しかし,何で,戸籍の場合だけそうするのかという説明がつくのかというところが一つあると思うんですけれども,戸籍法の場合には,今回の議論の中では,今まで全部公開であった,これが原則であった。これを逆転しようと,逆に非公開を原則としようと。ただし,いろいろリーガル関係のものについてはもちろん公開するわけですけれども,そのように謄本などの交付請求を絞る,その要件を絞る。絞って請求が認められた人について,今度は氏名は全部公開してしまう。何かちょっと逆のような感じがしないでもないんですけれどもね。 ● 条例です。 ● 条例によると,今,○○幹事がおっしゃられたみたいに交付請求書がマスキングだらけだったわけですよね。言ってみれば何も公開していなかった。ところが,今度絞った請求のものについて全部公開してしまう。何かちょっと変かなという感じがしたんですけれども,そうでもないでしょうかね。 ● 公開の原則を徹底していくと,自分が見たことを知られないというところまでいくというのが,今の個人情報保護とか何かと離れてもそういうことになるんじゃないかなと思うんですね。他方で今度は公開しない。特に必要のある人には見せる。必要のある人には見せるけれども,そのかわりあなたの名前は相手に伝わりますよという,そういう制約がつけられた形で見ることができる。ただ,そういう制約つきで見せるという仕組みがいいのかということじゃないかと思うんです。個人情報保護のみという観点からすると,ちょっとなかなか解決がつかないんじゃないかなと,私は個人的には思っているんですけれども。 ● 原則公開から原則非公開にするとしても,やはりこれは公証制度だと思うんですね。公証制度を利用するのにそういう制約がつくというのは,やはりちょっと本来と違うと思うんですね。つまり,行政が持っている情報を国民が使えるという,公証してもらうということですから,それをやるためにそういう制約を受けるというのは,ちょっと公証制度というのを後退させることになるんじゃないかなと思うんですけれどもね。  ○○幹事がおっしゃったので,ちょっとよくわからないのがあったんですけれども,例えば今度,戸籍法の改正で開示請求を認めるとしますよね。そうすると,各条例上の法令に当たるわけですよね。法令の定めのある場合,ですからできる。多分,恐らく全国の自治体の保護条例で提供を禁止しているけれども,法令は除外というふうになっているというのがほとんどだと思うんです。そうすると,そういうふうになれば整合性がとれる。先ほどちょっと戸籍と条例との関係とおっしゃったのは。 ● 先ほどお話ししたのは,個人情報保護条例,これの中では,原則的には自分の情報を出すときには本人が同意した場合,これが原則だよと。だけれども,法令で別に定めがある場合については,それはその法令に従ってやってくださいと。今回,この戸籍の話は,戸籍法に基づいて証明書の交付請求ができる。それについて自分で入手することができますよという制度にもともとなっているわけですね。 ● そういう意味ですか。それはちょっと違うんじゃないんですか。あれ,例えば戸籍法で請求が認められると,開示できるといった場合には--そうか。法令によって除外事由に当たるんだから,その開示請求事件も条例に基づく開示請求になるんじゃないんですか。 ● だから,この場合は条例から適用除外になって,戸籍法に基づいて証明書の交付をしなさいよと。 ● だから,それは規定の仕方によってじゃないんですかね。おっしゃる意味は分かりました。 ● 私の意味はそういう意味です。 ● 分かりました。いずれにしても,ちょっとそれは規定の仕方によってなると思うんですけれども,その開示を認めるということについて,やはりちょっと私としてはにわかに賛成できないというか。 ● 私もちょっとどちらにするか迷っているところです。○○委員の言われることも国民一般感情的には非常によく分かって,やはり自分の戸籍というのは,かなり個人情報の極みみたいなもので,それを全くつながりのない第三者がとったということを全く知らないでいるということについては,何かちょっと違和感があるんですね。ただ,それが○○委員の言われる全部--じゃ,今度逆にとる立場になったときには,とるのにはそれなりの理由があるということも分かりますから,そのとったことについて,全部相手にそれがまた筒抜けになるということも,ちょっと違和感があるというのもわかって,やはりその両方のそごというのはどこにあるのかとよく考えてみると,今,個人情報保護条例というのがまだ日本の社会で,本来それが目的としたことにかなわず,いろいろなトラブルというんでしょうか,目的どおりの使われ方をしていないためにいろいろな問題が--例えば医療なんかが典型的だと思うんですけれども,医療安全にはそぐわないような個人情報の保護の問題があったりして,すごくいろいろ,まだ未消化な状態なところに,戸籍法は個人情報保護条例の外に置いて論じるということ自体にそもそもの無理といいますか,そういうものがあるので,これは,どうしても両方がかみ合わないのかなというような感じがするものですから,議論をしてみても納得のいく結論にはなかなか至らないような気がして,やはりその両方の感情がある程度真実だと思うので,それが両方ともが成り立つような,何か緩やかな枠組みにしておかないと,何か現実には非常に動きづらいことになりはしないか。ちょっと言葉が足りないんですが,そんな感じがいたしました。 ● 私は,自分の情報をとられた,そこを何が何でも追跡したいという気持ちではなくて,むしろ個人情報保護条例が余りにも地域によって違うと,そこにすごく,そんなところに託していいのかなと。そうすると,こちらの地域では物すごく緩目で,こっちは厳しいというのが出てくる。それでいいのかなという,気になるのはそこだけなんですよね。だから,そっちの方が大きいんですけれども。 ● 先ほど○○幹事が見せたマスキングがありますよね。これは多分,規定からすると,どこの自治体でもこうなるんじゃないんですか。 ● このあたりがまたいろいろな考えがあって,請求者の同意を得た上で実名を出すというようなことをやっているところもあります。 ● それはそれでいいんですけれども,請求者の同意がない場合には,これは恐らくどこの自治体でもそれは個人情報保護条例じゃ出てこない。墨塗りになってしまうのがほとんどじゃないですか。 ● 大部分は恐らくそうだと思います。 ● ですから,自治体によって物すごく違うという実態はないんじゃないかなと思うんですね。ただ,○○委員がおっしゃる,もしこれをやるんだったら法律で統一的にやるべきだというのは,それは私もよく分かるんですけれどもね。  ただ,個人の情報について市民,国民がアクセスする場面って,ほかにもいっぱいありますよね。例えば不動産登記簿謄本だとか,全部事項証,住民票なんかもそうだと思いますが,そうすると,戸籍のときにそういうふうに変えたら,そういうものにしていても,やはりだれがアクセスしたかというのを……。 ● 今,不動産登記は,だれが不動産登記を見たかというのはもちろん出していないわけですよね。あれは,それこそ公証制度の一番最たるものだと思いますけれども,だからだれもが自由に見られるということ保障するという意味でも,個人情報ということを離れても必要なんじゃないかと。ですから,ここではやはり請求した人の名前が本人に伝わりますよということを前提にして,相当な理由があるときに開示しているというふうに言っても,それで権利行使しようというような人間にとって,その権利行使が十分保障されているのかという観点も必要じゃないかと思うんですけれども。そういう点からすると,今の段階では,ほかの法律との整合性というのもありますけれども,A案という事務局の案でいいのかなというのが私個人の考えなんですけれども。 ● ただ,不動産登記と戸籍では扱っている内容が違うので,それをまるっきり同一視して考えることはできるのかなというのは,いわゆる公証といっても,自分が例えば自分の親族の関係を証明するんだというために使うんだったら別に構いませんけれども,第三者が「何でそんなことが必要なんだ」というふうに反対に言いたくなっちゃうのは,そういうところなんですけれどもね。だから,ちょっとその辺のところで,ほかの制度も確かにそうなんですけれども,ただ,戸籍特有の個人情報が非常に含まれているという部分がありますので,それはやはり慎重な扱いが必要かなと。また,住民票については,今,総務省の方で検討会を始めておりますので,それについての見直しも恐らくされてくると思いますので,まだそれは全体の決定には従いますけれども,私の意見としてはそういったところです。 ● ほかの方,いかがでしょうか。  それでは,大分いろいろ御意見を伺いましたけれども,一応いろいろな意見はありますけれども,要綱としてはA案ということでまとめさせていただくというふうにしたいと思います。  そこで,次に,第2の除かれた戸籍の謄抄本の交付請求という点について,それでは事務局から。 ● 除かれた戸籍の謄抄本等の交付請求につきましては,中間試案で戸籍の謄抄本等の交付請求と同様とするものとするという提案を掲げさせていただいておりまして,この提案に反対する意見はなかったということでございますので,本提案のとおりでよろしいのではないかと考えております。 ● この点についてはいかがでしょうか。特に余り御異論はないということでしょうか。  それでは,これについては中間試案の提案どおりということで決めさせていただきたいと思います。  それでは,ここで休憩するということにしたいと思います。           (休     憩) ● それでは再開したいと思いますが,第3の1,届出人の本人確認を行う場合について,まず事務局から御説明をお願いいたします。 ● 第3・1の届出人の本人確認を行う場合でございます。試案第3・1のとおりでよいかということでございますが,試案第3・1は,市町村長は,戸籍法の定めるところにより届け出ることによって効力を生ずる婚姻,協議離婚,養子縁組,協議離縁又は認知の届出については,運転免許証の提示を受ける方法,その他市町村長が相当と認める方法により届出人の本人確認を行うものとするというものでございました。いわゆる創設的届出のうちの重要なものについて届出人の本人確認を法制化するという提案でございます。この点につきましては,大多数の意見がこのような提案を支持するものであったというものでございまして,この点についてはこのままでよろしいのではないかと考えております。 ● それでは,御意見お願いいたします。特によろしいですか。 ● 基本的にはこれでよろしいのかと思うんですけれども,全国の自治体の中では,効力を生じる届出についてすべての項目をやっているというか,本人確認を実施しているというような自治体もあるようですので,その辺はしようがないんでしょうかね。そういう取扱いをしているというところも自治体によってはあるようでございます。それは,これに合わせればいいということですかね。 ● 少なくとも法制化するのはこの限度でということで,そのような自治体の扱いはもちろん否定する措置ではございません。 ● 分かりました。 ● ほかにいかがでしょうか。--よろしいでしょうか。  それでは,この第3の1は,中間試案の提案のとおりとさせていただくということにしたいと思います。  では,次に第3の2,届出人の本人確認ができなかった場合の措置という点でございますが,事務局の方から御説明をお願いいたします。 ● 届出人の本人確認ができなかった場合の措置につきましては,中間試案ではA案,B案という二つの提案を掲げさせていただいておりまして,A案は,本人確認ができなかった場合,届出を受理した上で,確認ができなかった届出人に対して届出がされたことを通知するものとするというものでございます。B案は,本人確認ができなかった届出人があるときは,届出を受け付けますが,届出の受理を一定の期間内留保いたしまして,届出がされたことを通知して,その一定期間中に申出がなかったときは受理をする。受理された場合には,受付のときにその効果をさかのぼらせるという提案でございました。パブコメの結果,A案の受理はする,受理をした上で通知するという提案を支持する意見が比較的多数でございました。  この部会でも御議論いただきましたように,B案についての問題点,これは,ほとんどの届出は真正の届出であるにもかかわらず,そのような真正の届出についてまで一律に受理が留保され,そのような創設的届出によって生ずる身分関係についての法的安定性が害されるなどの深刻な問題がございまして,B案を支持するという意見の中にも,この点を克服する説得的な理由づけ,この点については問題じゃないというような積極的な理由づけは見られなかったために,事務局としてはA案を採用することでよいのではないかと考えております。  それから,これは補足説明に書かせていただいたことなんですけれども,郵送の方法による届出がされた場合,原則として郵送の方法の場合は本人確認ができないというふうに扱い,届出人に通知するということではございますけれども,届書に届出人の実印が押印されて印鑑証明書が添付されているときの扱いについてどうするかという問題提起をさせていただいておりましたけれども,この点,印鑑証明書が添付されていたときでも通知すべきだという意見は少数であったということでございまして,この場合は,郵送の方法による届出ではございますが本人確認ができたものとして扱い,通知は要さないという整理をするのが適当ではないかと考えているところでございます。 ● どうもありがとうございました。  それでは,以上の説明に基づいて御意見をお願いしたいと思います。A,Bと二つの案を一応提示しましたけれども,最終的に要綱ではA案にするということにしたいということでございますが。 ● A案の場合だと,大体現行に近い形を制度としてきちんとするという形になるということですよね。これで,今現在の取扱いとして,自治体によって届出人のうちにだれに対して通知を発送するのかという点だとか,発送先をどこにするかとか,その辺のところでいろいろ混乱ということじゃないですけれども,運用面でばらばらになっている。届出人のどちらかだけ確認できれば,あとはもう発送しないとか,両方できなきゃだめだとか,いろいろな場合をそれぞれのところでやっているようですので,その辺のところももう一歩整理をしていただければと思います。これは実際の運用面の話になろうかと思います。  それと,先ほどの印鑑証明書を添付された郵送の届出の件なんですけれども,印鑑証明書というものについて,現場の中でははっきり言って余り高い評価をしていないというのが実情で,これは要は行政証明という形になっておりますけれども,住民基本台帳に記録されると比較的簡単に印鑑証明書はとれます。それなので,一手間かけるということで抑止力になる可能性はあるんですけれども,偽造を意図的にやろうとしている人たちにしてみると,さほど難しい作業ではありませんので,本当にこれで印鑑証明書をつけてくれば本人通知をしないよということで,果たしていいのかなというところをちょっと思ってはおります。 ● それは他人の印鑑証明書をとるというんじゃなくて,印鑑登録自体から偽造している。なりすましというか,しているということですね。 ● ええ。実際実務的には照会書を郵送で送って,そこにある回答書というのを持ってくれば登録してやるよという形になりますので,結構その手の偽造の届出というのは,それなりに件数はありますので,果たしてこれで抑止力になるかなというのは思っているところです。 ● 先ほど○○幹事から言われた1点目の話で,届出人が複数いた場合に,一人確認できれば今の運用では通知を発しないというところもあるというお話でしたけれども,今回の届出人の本人確認の場合については,中間試案の注のところでも書かせていただきましたけれども,複数の届出人がいた場合には両方確認できないと,それは本人確認できたものとして扱わなくて,本人確認できなかった方,届出人については,それで通知を発するという制度を考えているところです。 ● 結局その辺のばらつきが出たというのは,早い話が経費の問題で,郵送経費が結構かかってしまうので,それは大変だというような自治体の事情や何かも含めての話かと思います。現実的に千代田区でも,この辺の本人確認や何かを進めることによって,通知を発送することによってお金が足りなくなっちゃって,ほかから持ってきたとか,そういう操作をここ二,三年,毎年のようにしなければいけないというような実情がありますので,予算面のところも課題になってくるかと思います。 ● ほかに御意見いかがでしょうか。  それでは,これにつきましてはA案を採用するということにしたいと思います。  次は,第3の3,届出の不受理申出制度について事務当局から御説明をお願いいたします。 ● 届出の不受理申出制度でございます。これにつきましては,試案の第3.3で,本人確認の対象となる一定の創設的届出に係る届出について,届出人本人は,市町村長に対し,あらかじめ届出がされても,当該届出人の本人確認のない限り,これを受理しないよう申し出ることができるものとするというものでございました。これに関しましては,現行の扱いでは通達に基づいて,離婚届等個別の届出について虚偽の届出がされるおそれのある場合に,6か月以内の一定期間内,当該届出を受理しないように申し出ることができるという手続でございますが,今回の中間試案の不受理申出制度というものは,そのような虚偽の届出がされるおそれがあるかどうかを問わず,かつ期間の限定なくこのような不受理申出をすることができるという,そういう前提での提案でございました。  パブコメの結果,このような提案を支持する意見が多数を占めたため,本提案のとおりとすることでよいと思われます。ただ,パブコメの中に,有効期間に限定がないということについてはいかがなものかという意見も少数ございました。現行の扱いでは6か月ということですが,虚偽の届出がされるおそれがある場合という,そういった限定をつけないわけですし,期間の限定がないということ自体は,それほど違和感はないんではないかと思われます。ただ,一回出せばずっと永久的に不受理の申出の効力が続いているということでいいのかということですが,そのような制度を利用したということですので,それでもいいのかなという気がいたしております。逆に,それでは,期間を制限しろとした場合に,例えば1年,2年,あるいは3年といったような期間を設定すると,その都度更新の必要が出てきて,更新し忘れていたというような場合,当然不受理申出をしていたので受理されないだろうと思っていたら,期限が切れていて受理されてしまったというような場合も想定されますので,これは期間を設定するかどうかはなかなか悩ましい問題だなというふうに考えておりますが,要綱案の内容としては,試案の第3の3程度の記載とさせていただいて,期間をどうするかというような点は,実施細目として事務局の方でまた検討していきたいと考えております。 ● ありがとうございました。  それでは,この第3の3,届出の不受理申出制度について御意見をお願いいたします。 ● 不受理申出という制度について制度化するというのは,これは非常にいいことだと思います。○○委員が非常に気にしておりますのは,受理通知,これを発送する。これはこれでいいだろうと。不受理申出をする,それもいいけれども,現実的にこれで虚偽の届出がされたと,婚姻届を例えばだまされてというか,本人が知らないうちに出されてしまった。戸籍に記載をされたときに,それを救済するためには,また家庭裁判所の方に行って手続をしなければいけない。ここのところが何とかならないのかというのが常に出てきておりまして,そこのところでの抑止という点で,現実的には私はこの方法でいいのかと思うんですけれども,実際にそういう事例が出てきた場合の救済策というのが非常に厳しいところなのかなというところなんですけれども。 ● 日本では,本人が出頭しないで書面だけで身分関係ができるという,出生は別ですけれども,婚姻や離婚について,特に離婚ですか,そういう制度をとっていることからちょっと避けがたいところで,学者の中にはかなり本人出頭,あるいは裁判所の関与,特に離婚については何らかの形で,協議離婚であっても裁判所の関与という意見も多いんですけれども,現実に,今,9割以上の離婚が協議離婚で届出だけでなされているところに,これを全部裁判所でやれといったら,裁判所もパンクするんじゃないかと思いますけれども,日本には日本なりのいい面もあり,特にフランスなんか,協議離婚でも両当事者で合意はしているんですけれども,両方が別の弁護士を立てなくちゃいけないというので,弁護士費用が非常に高いという不満があるんです。そういう日本には日本なりのいい面もあって,それから,現実にもちょっとそこは変えられないとすると,網をくぐって受理されて戸籍に記載されちゃったら,やはりそれは争うのはしようがないのかなという気がしますけれども,できる限りそういうのがないようにということで,今回,こういう本人確認を制度化しようということで,これだけでもかなり今までよりはよくなる部分が多いかなと思います。特に先ほどの,窓口に来た人間だけじゃなくて,もう一方の人間についても本人確認するということですので。  ほかに御意見いかがでしょうか。  それでは,この第3の3,届出の不受理制度については,中間試案の提案のとおりにさせていただくということにしたいと思います。  次は,第4の1,学術研究のための戸籍及び除かれた戸籍の利用について,事務当局から説明をお願いいたします。 ● 第4の1の学術研究のための戸籍及び除かれた戸籍の利用でございます。これは,中間試案の第4・1で,市町村長は,学術研究の目的のために,戸籍又は除かれた戸籍に記載されている事項に係る情報の提供をすることができるものとするという提案を掲げていたわけでございます。  パブコメの結果,この提案に反対する意見は見られなかったということでございまして,この提案どおりでよろしいのではないかと考えております。実際の運用につきましては,現在,通達に基づく法務局長等による事前承認手続をとっておりますけれども,全国一律の扱いをするために事前承認手続というのは維持すべきであるという意見が出されているところでございまして,中間試案の注にも書かせていただきましたように,学術研究の目的とはいえ,戸籍若しくは除かれた戸籍に記載されている者又はその親族の権利利益を不当に侵害するものであるかどうか,そういった点も考慮しまして相当性を判断するということでございますので,この事前承認手続を維持することが適当であると考えられます。要綱案の内容としては,この要綱中間試案の記載そのままでいいんじゃないかと考えております。 ● それでは,御意見お願いいたします。--特によろしいでしょうか。  それでは,この第4の1につきましては,中間試案の提案のとおりとさせていただきたいと思います。  次に,第4の2,制裁の強化について,事務当局から説明をお願いいたします。 ● 制裁の強化でございます。中間試案の第4の2では,偽りその他不正の手段により戸籍の謄抄本等又は除籍の謄抄本等の交付を受けた場合の制裁を強化するということでございます。  パブコメの結果,こういった制裁の強化自体については,多数の意見が提案を支持したということでございます。強化の程度についてはいろいろな意見がございまして,現行の過料の制裁の額,過料の額を上げるべきであるというような意見もございましたし,むしろ刑罰化すべきであるというような意見もございました。  この点について事務局の方で関係部局と調整しておりまして,まだちょっと見通しといったものをここで申し上げることはできないんですけれども,御了解いただきたい点としましては,刑罰化をも視野に入れて検討することでよろしいでしょうかということでございます。刑罰化ということになりますと,実体的な構成要件の明確性というのが強く要求されてまいりますので,今回,第三者請求,あるいは資格者請求,これについてはどうなるかまだ分かりませんけれども,要件をかなり詳細に書くことによって,そこでいう構成要件の明確性がそこで本当に満たされるのかといったような問題もございまして,できる部分については刑罰化をも視野に入れて検討する。ただ,なかなか刑罰化が難しい部分が仮にあるとすれば,それは過料の額の引き上げ等によって対処させていただくということで,事務局の方で検討させていただきたいと考えております。 ● それでは,御意見をお願いいたします。  これは,ある意味では,先ほどの国賠と裏表の関係といいますか,請求する側の正当な理由というのとかかわってきますので,なかなか刑事罰というのもいろいろ検討していただかないと,ちょっと難しいかなと思いますけれども,いかがでしょうか。  それでは,この第4の2,制裁の強化については,中間試案の段階では特に刑罰化というようなことには触れておりませんけれども,中間試案の提案どおりということで,制裁の強化の程度については,刑罰化も視野に入れて事務当局でさらに検討させていただくということにしたいと思います。  最後は,第4の3,不服申立手続でございますが,これについて,それでは事務局の方から御説明をお願いいたします。 ● それでは,不服申立手続について御説明させていただきます。  この不服申立手続につきましては,中間試案までの検討の段階では出ていなかった項目でございまして,戸籍の謄抄本の交付請求に関する見直しを検討していく中で,その所要の措置として講ずるものがないかというのを検討していたところ,その不服申立手続の中の戸籍の謄抄本の交付請求についての市区町村の処分を争う方法について検討を要するのではないかということを考えまして,今回,不服申立手続について提案をさせていただいた次第でございます。  現在の戸籍の謄抄本の交付請求に関する市町村長の処分の適否を争う手続につきましては,戸籍法に規定がございまして,このような事件は一般に戸籍事件として,種類を問わず戸籍事件として扱いまして,戸籍事件について市町村長の処分について不服がある者については,家庭裁判所に不服の申立てをすることができるというふうに条文上されておりまして,行政不服審査法による不服の申立てをすることができないとも明文でされていまして,また,行政訴訟によって争うこともできないというふうに従来から考えられてきているところでございます。  このような制度になりましたのは昭和22年当時でございますけれども,この当時は戸籍事件に関して戸籍事件の種類に着目せずに,一括して家庭裁判所が関与することが多いことから,家庭裁判所への不服申立手続によるという立法がされたわけですけれども,その後,期間も経過して,事件の種類によってどのような不服申立手続を設定するのかというのを見る必要があるのではないか。そして,今回戸籍の謄抄本の交付請求の見直しによって,第三者が請求する場合,資格者が請求する場合,あるいは国又は地方公共団体の機関が請求する場合について理由を明示していただいて,交付請求の要件を明確にするというような扱いがされることから,戸籍の謄抄本の交付請求に対する市町村長の処分の適否が争われるケースも予想されるという点にかんがみて,戸籍事件に関する市町村長の処分を種類ごとに,その不服申立手続について検討している資料でございます。  それで,戸籍というのは国民の親族的身分関係を登録,公証するためのものではありますけれども,その登録の面につきましては,いろいろと家庭裁判所が大きく関与するという制度的な枠になっていることから,届出等,登録に関する部分については,従来どおり家庭裁判所への不服申立手続を維持することが適当ではありますけれども,他方で,戸籍の謄抄本の交付請求に対する市町村の処分という公証の面については,その争う当事者が場合によっては,国又は地方公共団体の機関や弁護士等の資格者と対市区町村というようなケースも予想されて,その当事者性とか,あるいはその戸籍の謄抄本の交付請求に関する処分については,家庭裁判所の専門的知識が特に必要であるとは思われないこと等を考えまして,戸籍の謄抄本の交付請求に関する市町村長の処分の適否を争う手続については,他の制度でございますけれども,住民票とか外国人登録原票の写しの交付請求に関する市町村長の処分については,行政処分を争う一般的な手続で行政不服審査法と行政事件訴訟法によって争うことができるとされておりまして,それとの平仄も考えて,戸籍の謄抄本の交付請求に関する市町村長の処分を争う方法については,行政不服審査法に基づく不服申立てや,その行政訴訟の一般的な方法によることが適当ではないかということでの提案でございます。 ● よろしいですか。それでは,今回新たに出てきた項目ですけれども,いろいろ御意見をいただければと思います。  裁判所としてはいかがなんでしょうか。 ● まず,規定の仕方で,先ほどおっしゃられた,例えば戸籍訂正等とうまく区別ができれば,裁判所としてはどちらの形になってもそれほどの利益は関係ないのかなという感じがいたします。なぜかと申しますと,ちょっと調べたところでは,こういう市町村長の処分の適否,これに関する家庭裁判所への申立て,この件数はそれほどないんですね。ちょっと調べましたのは,東京家裁の本庁,八王子を除いた本庁だけの件数なんですけれども,平成16年度で年間9件,17年で11件,18年,今年になりましてから7件,10件程度でございます。おまけにそのうちの半分ぐらいが同一の方の申出,何度も繰り返し繰り返し申立てをされては取下げをするという形の事件になっておりますので,それを除いてしまうと年間五,六件程度しかありません。本庁だけでございますが,そういう意味では,余り同一な形になっても,これが行政訴訟になったという形になっても,多分行政部に御迷惑をおかけすることはほとんどないかなという感じがいたします。そんなところです。 ● 実際には余り,断られて訴訟にするということはないということですかね。ただ,今まではとれていたのにとれないというと,中には訴訟にする人もいるかもしれませんね。  ほかに御意見いかがでしょうか。○○幹事,何かございますか。 ● 私ももともと,何で家裁がこんなことをやるのかなと思っていたところがあるので。ただ,このすみ分けがうまくできればと思っているんですけれども,そこだけですかね。 ● ほかによろしいですか。  それでは,この第4の3,不服申立手続につきましては,本検討事項案をベースにして,本日いただいた御意見,特に地裁と家裁との役割分担といいますか,どちらに行けばいいのかきちんと分かるような形で,さらに事務当局で御検討いただくということでよろしいでしょうか。  そうしますと,本日予定していた議題はほぼ終わりましたけれども,前回を含めまして今回まで,今日の検討事項も含めて,何かまだ御発言ございますでしょうか。 ● 先ほどちょっと発言をしそこなったんですけれども,不服申立ての前に制裁の強化の点が出ておりまして,刑罰化を視野に入れて検討することにしてよいかということで,今回初めて出たもので,この審議会が構成要件等も全く現時点においては何も出ていない。この審議会の,基本的には年内に要綱案を取りまとめという,一応予定としてはそういうことになっておりますので,この刑罰化となれば,やはり重大な問題でありますし,構成要件の検討とかという問題がありますので,この審議日程の面で急がれるということではなく,やはりこの辺は大事なものなので,十分な討議の時間はいただきたいと考えております。 ● 今,試案の内容としては制裁を強化するとしか書いていなくて,今回,刑罰化を視野に入れて事務当局で検討することについて御了解いただきましたので,どういった行為について刑罰化できるのかといったことを内部で詰めて検討いたしまして,次回,あるいは年末の最後の部会にお諮りして,そこで御了解いただくということが可能であればやりたいと思っておりますが,それでは足らないということですか。 ● どのような内容のものが出てくるかも,ちょっと今の段階で分かっていないので。 ● できるだけ,こういった行為についてはという形で具体的に示したいとは思っておりますけれども。できるだけそういうような方向で進めていきたいと思っております。 ● 刑罰化も視野に入れてというのは,全面的に刑罰化するという趣旨ではなくて,一部過料と併せて罰則規定も設けるというようなことを検討されるという趣旨ですよね。 ● イメージとしては,例えば資格者になりすますとか,そういった悪性の高い行為で,かつ明確に行為が認定できるようなものについては刑罰化ができるような感じになるかもしれませんけれども,それ以外に,例えば同じ資格者でも交付請求の在り方が変わってくるような,もしそういうような状態になれば,そこのところを偽ったというか,違うやり方をしたというような場合で,本来の請求の仕方をすればとれたのに,違った請求の仕方をしてしまったというような類型の行為まで刑罰化するのが相当かというような観点もございますので,いろいろな偽りの手段を用いたという類型があると思いますので,その類型ごとに,どのような行為を刑罰化して,どのような行為を過料でいくのかというようなことを,できるだけ細かく検討してお示ししたいというふうに考えてございます。 ● ほかにいかがでしょうか。--よろしいでしょうか。  そうすると,今日は大分時間が余っているんですけれども,事務局としてはどうしますか。 ● 前回御議論いただいて,結局結論が出なかった資格者による職務上請求につきましては,現在事務局で検討中でございまして,ちょっと今回お示しする提案がございませんので,恐縮でございますが,今日はここで終了させていただいて,次回,11月の部会で残った問題点,職務上請求も含めてすべて御議論いただいて,12月の部会では11月でお決めいただいたことも含めて最終的な文言修正の上,採択という予定で進めさせていただきたいと考えております。 ● 時間があるということなので,ちょっといいですか。  学術研究というのがありましたよね。試案ですと市町村長ができるものとするとありますけれども,この学術研究がそれに当たるかどうかとか,どういう範囲のものかとか,いろいろ問題があると思うんですが,この辺は結局,各市町村長の裁量に委ねるということになるのですか。 ● 法務局の事前承認手続を維持したいと思っておりますので,それは一律に判断できるようにしたいと思っております。 ● ほかに御意見ございますでしょうか。御発言よろしいですか。  それじゃ,次回以降の予定について事務局の方から。 ● 次回は11月21日火曜日,1時半から午後5時まで,法曹会館の「富士の間」で行います。要綱案を採択していただく予定の最後の部会は12月19日火曜日,時間は午後1時半から午後5時まで,法曹会館の「富士の間」でございます。 ● それでは,本日は大分時間が早いですけれども,これで法制審議会戸籍法部会第12回会議を閉会させていただきます。  長時間御審議いただきまして,どうもありがとうございました。 -了-