法制審議会間接保有証券準拠法部会 第16回会議 議事録 第1 日 時  平成18年10月24日(火)  自 午後1時30分                         至 午後4時33分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  ヘーグ間接保有証券準拠法条約について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● それでは,定刻になりましたので,法制審議会間接保有証券準拠法部会の第16回会議を開催いたします。           (幹事,関係官の異動紹介省略) ● それでは,まず事務局から前回の部会以降の状況について説明していただきます。 ● 前回,予定ということで御報告いたしましたアメリカとスイスによる本条約への署名が7月5日に行われました。これは,ヘーグ国際私法会議のホームページにもそのニュースが掲載されております。それから,EUでございますが,EU内部のコミッションでの検討結果を取りまとめた報告書が7月5日に公表されまして,その後,7月,9月,10月と3回にわたってEUでの会議が開かれたようでございます。在ヘーグの日本大使館に赴任しております○○一等書記官から最近の状況について報告をもらいまして,それによりますと,EUの現在の状況は,一言でいえば議論の最中ということだそうでございます。   先ほど申しましたEUのコミッションの報告書は,3つの案を掲げて,そのうちの2つ目の案をリコメンドして,それで批准してはどうかという提案をしたわけでございますが,これについては,多数派は賛成の意見なのだそうでございますけれども,5,6か国の国が本条約への署名について反対をしているために最終的な結論が出ていないということのようでございます。   そこで,前回のEUでの会議で,議長から次のようなスケジュールで進めるという妥協案が示されたそうでございます。その提案されたスケジュールは,2007年の前半中に本条約に署名を行う。その後,2年ほどかけてEUの証券決済に関する法律規則等の改正を行う。EU法の改正が完了後,1年から2年かけて各国が国内法及び規則の改正等の整備作業を行う。そして以上の諸手続が完了した後,本条約を批准する。こういうスケジュールだそうでございます。   そして,このスケジュールで進めるという妥協案について,次回,11月23日のようでございますけれども,そこでの会議で議論がされる予定とのことでございます。ただ,これで妥協が成立するかどうかはまだ予断を許さない模様でございます。   本条約に署名することに反対しております理由は,システミックリスクの問題とその国の国内法制との整合性ということが反対の理由だという情報でございます。なお,このスケジュールで話し合いがついた場合ですけれども,EUの最終的な批准については2011年に批准できれば上出来ではないかということを,○○一等書記官の接触した,EUの担当官は言われたそうでございます。   私からの説明は以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   ○○委員,何か今の御説明に対して。 ● 特にございません。 ● そうでございますか。どうもありがとうございます。   それでは,今の御説明に対しまして,何か御質問ございますでしょうか。あるいは御意見でも結構でございますが。 ● 反対理由を2つおっしゃいましたけれども,国内法制との違いというのはそれぞれの事情があるんでしょうが,システミックリスクというお話で,もう少し何か具体的にお話しいただいて,もしそれが日本にも同じように当てはまるのか,いや日本は関係ないのか,もしそういうことも御検討されているのであればそのことも教えていただければと思います。 ● すみません,○○書記官からの報告はそのシステミックリスクという言葉だけだったものですから,それ以上の情報は入っていませんので,もしも○○委員で何かおわかりのことがございましたら。 ● 前から言われていることですけれども,システムの運営者がこのシステミックリスクの観点を含めた見地から,そのシステムの参加者について,例えば自国法をこのヘーグ条約の準拠法として選択せよという,そういう公法的なというか,強行法的なというか,そういう要請をしてもヘーグ条約の趣旨に反しないかというのが1点目です。 ● ○○委員,よろしゅうございますか。 ● それ以上詳しいお話が難しければ結構です。もし,なお今そのリスクがあるかどうかよくわからなかったんですが。 ● 例えば,フランスならフランスのCSDが,あるいは決済システム運営者が,その決済システム対策のためにその運営に責任を持つということから,そのシステムに参加する口座管理機関,場合によってはその顧客を含めて,このヘーグ条約上の4条1項の法というのをフランス法にしなさいと,こういうふうに決めて条約違反にならないかという論点です。ですから,日本でいえば,例えばですけれども,金融庁とか日本銀行が参加する人は日本法を準拠法にせよというふうに決めて,ヘーグ条約違反にならないかというのが論点です。 ● よろしいですか。 ● 今の点ですけれども,たしか7月に出されたEUのコミッションの検討結果では,そういう自国法を適用せよという公法的規制をすることは,別にヘーグ条約には違反せず,そしてそうすることによって自国法,あるCSDの下では同一の国の法律が適用されることになるので,システミックリスクも生じないという報告があったというふうに,ごく大ざっぱにいえば理解しているんですけれども,そういう理解でよろしいんでしょうか。 ● 現在は,したがって,そのヘーグ条約の関係者及び事務局もそうだと思いますけれども,今,○○幹事がおっしゃって,私もその旨,前に申し上げたと思うんですけれども,そういう立場なんですけれども,なお本当に大丈夫かということを言っているのというのが,おそらく第1点目だと思います。 ● ほかに御質問あるいは御意見ございますでしょうか。 ● 今の件ですけれども,そういう議論がEUの中で話されているということですが,全体会議なり何なり,あるいはここの前にたくさん出ましたいろいろなノートですね。あそこのところに書かれたとかそういうような進展はあるんでしょうか。それとも,それは個々の判断ということになるんでしょうか。全体の解釈の問題はどういうふうな形で決着しそうなんですか。 ● これは条文のテキストは確定しておりますので,その条文のテキストをどれだけ読んでもぎりぎりのところが明確でないという点は,それはあるとは思います。ただ,これ国際私法の条約ですから,そこに公法的な規制を各国がそれぞれの政策的見地から--公法的という表現がいいかどうかわからないんですけれども,強行法といってもいいのかもしれません--定めることは妨げないはずなんですね。その点は,実は,条約自体の外交会議のときにも,国の名前を挙げていいかどうか微妙なんですけれども,とある国で,うちの国の市場では自国を選んでもらわないと困ると,そういうことをしてもこの条約は矛盾しないのかという質問は出ていたんですね。   ですから,そういうことからいえば,その問題は先ほど○○幹事がおっしゃったような整理がついていたと言ってもいいと思うんですけれども,その辺が必ずしも明確に述べられたものは,少なくとも条約成立前後にはなかったですね。それで,最近になってようやくそういうことであろうという確認がとれたということなんですけれども,何せ明文ではっきりそういうふうには書いていないものですから。それからこのエクスプラネタリー・レポートにもその点は触れていませんので,したがって,幾つかの国からすれば,まだちょっとそこは疑義があるんではないかと。批准してしまって裁判所に行ってというリスクがあるんではないかという,そういう懸念があるというふうに私は聞いております。   したがって,今後の収束というか,どういうふうに解決していくかということでいえば,条約の成文を直すわけにはいきませんので,おそらくそういう解釈であるということを明らかにするというか,それでみんなが納得する,EUならEUの中でですね。ということにならないといけないということではないかと思います。 ● よろしゅうございますでしょうか。ほかに。 ● これは,おわかりになればということで結構なんですけれども,先ほど5,6か国が署名に反対しているようなことを言われたんですが,それは主要な国なんでしょうか。国内法との関係でおそらく反対しているのではないかと思いますけれども。 ● EUの担当官は,○○一等書記官にはどこの国ということは申し上げられないと言ったそうでございますが,主要国もいくつか入っているようです。 ● ほかに。 ● ここで議論するのがいいのかどうかわかりませんけれども,先ほどの公法的な規制を各国でかけることはどうかという問題の立て方であれば,それは国際私法条約なので,範囲外ですということになると思うんですが,その公法的規制に反して,ある人たちが違う法律を指定してしまった場合には,公法違反かもしれませんけれども,準拠法条約上は指定してあればそれにしますと約束している以上,国際私法的効果としては準拠法は違うということになるという議論もあるように思いますけれども,そういったことはあり得ないでしょうか。あるいは,それはもう仕方ないということなんでしょうか。 ● ちょっといろいろな意見での議論があると思うんですけれども,今のような議論の立て方をされれば,多くの国,少なくとも日本なんかにおいては公法と私法とは分けますので,公法違反イコールすぐ私法上の効果が生じるわけではないという意味においてはおっしゃるとおりだと思うんですね。   ただ,この問題の議論のされ方というのは,例えば決済システム運営者が口座管理機関がメンバーに受け入れるに当たり,あらかじめ規則でというか,約款のようなもので,自国法を選んでいないと参加者に加えないというやり方なんですね。同じように,顧客との間に受託契約準則というか,口座管理機関と顧客との間の契約においてもそういうものを入れていないと参加を認めないということですので,違反したらということよりも,入り口で決めてしまおうという話なんですけれども。 ● ほかに何か。 ● 今の関係ですけれども,たしか証券保管振替機構さんは,業務規程でしたか口座管理機関との契約でしたかで,直接口座管理機関との間では日本法を適用し,また,口座管理機関が顧客と締結する契約も日本法を準拠法とするものでなければならないという規制をされておられるんではなかったでしたっけ。 ● ○○委員,お願いできますか。 ● 規程上,今はっきりは書いてございません。解釈としては,多分日本法だろうとは思っておりますが,規程でそういうふうにはっきり書いてあるわけではございません。保振と参加者との間においては書いてございません。   ただ,参加者と顧客との間は約款になっておりまして,これは証券業協会さんが定められている雛型約款です。雛型約款には日本法というふうな文言が入っておりますが,あくまでも雛型ですので,それを外すとどうかという話はありえますし,外すことも可能ではあります。 ● ほかに何か御質問あるいは御意見ございますでしょうか。--先に進めさせていただいて結構でしょうか。   それでは,本日の審議に入りたいと存じます。前回は,部会資料22の国際的な証券決済事例の説明諸図,お手元にあると思いますが,その事例2-2について,部会資料26の第4の2に基づいて御議論いただいている途中で,いつものことではございますが,時間切れになってしまいました。   今回は,前回の御議論に引き続きまして,部会資料22の事例2-2に関する議論の途中から御議論いただき,部会資料26に基づきまして,時間の許す限り御議論いただきたいと思っております。なお,途中区切りのいいところで休憩をとりたいと思います。   まず,事務当局の方から前回の議論の概要と今回御議論していただきたい点について説明していただきたいと思います。 ● 今,部会長からお話がありましたように,前回は部会資料22の図の2-2の英国の例について,この条約を批准する前の段階,つまり現行法例上はどうなるのかという議論を終えていただいて,この条約を批准したらどうなるのかという議論をしていただいている途中で時間が来たわけでございます。   それで,ちょうど時間が来たときにどんな御議論になっていたかといいますと,この2-2の英国の例で,例えばサブカストディX''',これがCrestの下にぶら下がっているわけですけれども,これが倒産してしまったときに,A,X,X',X''がそれぞれX'''の倒産手続にどのような権利を主張して参加することができるのかという問題について議論をしている途中だったわけでございます。   それで,ちょうど終わるときに,ドイツは外国株式については債権として取り扱っておると。その関係でドイツとの倒産手続ではどうなるのかという,そういう問題提起を○○委員がされまして,そこで時間が来てしまったというところでございます。   そこで,まず,この2-2の事例でサブカストディX'''が倒産したという場合に,国内機関投資家Aはこの倒産手続においてどういう権利主張ができるのかということの議論を続けていただければと思っております。 ● それでは,この条約によった場合にサブカストディ,その図をごらんいただきたいんですが,X'''が倒産してしまったときにA,X,X',X''が,それぞれが倒産手続にどのような権利を主張して参加できるかということについて御意見を承りたいと思います。   今日は○○幹事が御欠席ですね。   ○○委員,何か。 ● すみません,ちょっとまだ。 ● 前回,○○委員がおっしゃられたのは,例えばX'とかX''がドイツの証券会社であったとした場合に,X'''が倒産した場合に,ドイツ法では株式は債権という扱いになっているので,ドイツの証券会社との取引は,ドイツ法を準拠法としている場合には,その下にいる人は債権者扱いということになってしまうのかどうなのかという問題提起をされたわけでございます。 ● 前回からかなり時間が経過しておりますので,かなり細かい議論につきまして思い出していただくのにちょっと時間がかかるかもしれませんが。   実務の方で何か御意見承れますでしょうか。 ● 前回の議論をちょっとよく思い出せなくてあれなんですけれども,実務という点については,こういった事例でサブカストディX'''が倒産するようなケースは経験したことがない--したことがないといいますか,あり得ないというぐらいの認識でしかないんですけれども,実際,国内証券会社,これ日本の証券会社だとしますと,カストディX,海外のカストディですね,日本の法令上は自己と顧客を分けて分別管理ということを言われていますので,金融庁の検査に備えて一応分けて口座を持っていますと。その場合にX''がつぶれてしまうと,自己と顧客トータルでおそらくその上のレベルはつながっていっていると思いますので,権利が減るのかなと。あるいは減りそうだという場合には取り返しにいくという話になると思うんですけれども,そういった話をAがどこまで意識するかという点については,実務の感覚からすると,間に国内証券会社Xが挟まっておりますので,Xが何とか頑張って主張しろと。我々としてはカストディXに対してどうなっているんだ一体という話をして,そういった話が上に上がっていって,X'''についてはサブカストディX''が権利を持っているという形であるんだとしたら,そこでやってもらうしかないねという,結果待ちというような感覚になってしまうのではないかなと。これ実務の感覚からすると,そんなイメージを持っております。 ● どうもありがとうございました。   今の○○委員のお話に対しまして何か。 ● 何か結論があって申し上げるわけではなくて,単に場つなぎ的な意味で発言させていただきますけれども,そもそもこの問題が起こるのは,多分Aの準拠法だと物権法になっていて,X''とX'''の関係だと多分債権というふうに性質決定されてしまうというとき,X’’’の倒産手続に両方参加できてしまうということになって果たしていいんだろうかというのが,○○幹事の問題の御指摘だったかと記憶しております。   それがよくわからないのは,それがまず抵触法上何らかの形,あるいは今度条約上と申し上げてもいんですけれども,この条約上何らかの形で解決が可能なものなのかというのがまず1点問題があって,その先に,そこはしようがないねとしたときに,そこから先は各国の倒産法の問題だよねというような話なのか,そこら辺のところがどっちの問題なんだろうという,そもそも抵触法上の問題として解決ができるものなのかどうなのかというところも実はよくわからないところがございまして,そこをもし何か御教示いただければと思いますけれども。 ● 私,前回休んでおりましたもので,正確に問題の所在を理解しているかどうかは定かではないのですが,X'''が倒産したときにX'',X',X,その他Aなどの権利がどう扱われるかというふうな形で問題を立てられていると思うんですけれども,この条約との関係ですと,おそらくAはX'''の口座に記帳されている権利に対して,これは自己に帰属するという争い方をしたときに,果たしてそういう主張が認められるか。あるいはX,X',X''それぞれがそこに記帳されている口座に,数字というか証券について,自己が権利者であるというふうに主張したときに,だれの主張が認められるかというふうな形で実際には争いになるんだと思うんですね。もし本当に争いになるとすれば。   実務的には,おそらくX''しか私は権利者ですと言いに行かなくて,上からとんとんとんと権利がおりてくるというふうな形で処理されることが多いと思うんですけれども,AあるいはX,X',それぞれの権利を直接問題としなければいけないようなケースというのは,それぞれの方が,直接X'''の倒産手続において私は権利者ですと言いに行くと。そうすると,X'''の口座に記帳されている権利,これはただ口座の記帳上はX''というふうに記載されているわけですけれども,そういった権利に対して,AあるいはX,X'が自己の権利を主張できるかというふうな問題だと考えると,それは純粋にX'''とX''との間の口座契約,その記帳がなされている口座の口座契約の準拠法で決めればいい話なのかなと。その後のドイツ法がどうなっているとか,そういうふうな話はあまり影響ないのかなと思うんですけれども。 ● 今,○○幹事がおっしゃられたところはドイツ法の関係なんですけれども,ここで議論されたのは,私の理解では,X''がドイツの証券会社で,X'''との間でドイツ法を口座管理契約にしていたというような場合を念頭に置いていたのではなかろうかと思います。その場合,準拠法がドイツ法になってしまいますので,X'''に対する関係であると,ドイツにおける株式の取扱いで決まるということに,この条約の8条,そして2条1項でそう決まるんだろうと思いますので,そうなったときに,ドイツはどうも株式を債権として取り扱うらしいものですから,日本における取扱いでも,物権としての取戻権のようなものは,もしかしたら主張できるのかどうか,そこがまたわからないんですけれども,債権であっても何か特別の処理で取戻権が認められているのかもしれないですが,仮にそうじゃないとした場合には,按分で一定の権利が取得できるだけだということに,日本法的な債権だとなりそうに思われます。そうするとAがXとの間では日本法ということで合意していて,日本の株式を取得しているということに,AとXとの関係ではこの条約でなったとしても,結局X''’のところではAはいけなくて,日本の株式として満額自分のものだということは言えないということになってしまうのか,あるいはAとX',Xとの関係が日本法で決まるんだから,Aは株式を持っているんだからX'''に対しても株式を持っているという物権的な請求ができると考えるべきなのか,どちらかなのかという,そういう議論だったのではないかと思うんですけれども。 ● わかりました。そういう意味では完全に誤解をしてお話ししました。   ただ,私の理解ですと,外国証券を扱う場合についてのドイツの法律は,単純な債権というふうに考えるというよりも,預かっているものが顧客との関係で信託受託者の地位に立つというふうに理解されていると思いますので,単純な債権者,一般債権者として同様に扱われるということには,ドイツにおいてならないのではないかなという気はします。   ただ,もし本当に単純な一般債権者ということであれば,その一般債権者という性格づけをした上で,あと,X''とか,それはX''の下につながる人がどういう権利を持つかというのは,ドイツ法で決まらざるを得ないんでしょうし,X'''の倒産法制かなんかで救われなければ,一般債権者の扱いになるのはやむを得ないのではないかなと思いますけれども。   単純な債権者で,証券会社が業として預かりながら,一般債権で,要は,信託的にも預かっていないということではなかったような気がします,ドイツについては。 ● ○○委員,何か。 ● 昔,○○幹事が,今,○○幹事もおっしゃったのかもしれませんが,多分私の推測で言うと,ドイツ法上の性質というと債権ではあるんだけれども,信託的な構成をすることによって,証券会社が倒産した場合には顧客を保護しようという解釈が強いということではないでしょうか。おそらく実例がないのではないかと思います。 ● ○○幹事に対する御質問が幾つか出ていたわけでございますが,前回も今回も大変残念ながら御欠席なものでちょっと伺えないわけですが,ドイツについて何かお教えいただけることがあれば,他の委員あるいは幹事からお教えいただけることがあればと思いますが,いかがでしょうか。今,○○委員がちょっと補足していただいたと思いますけれども。 ● ちょっと話がずれるかもしれないんですけれども,○○委員は,今,X'''に対してAがどういうことが言えるかというのは,結局はX''がX'''にどれだけのことが言えるかということによって決まってくることを前提として,ドイツの場合はX''は債権的な取扱い--ドイツ法だとすると,X''とX'''との関係は債権的な取扱いだとしても,ドイツ法では信託の理論を使って,実は物権に近い保護がされているんだという御説明をされたように理解したんですけれども,Aがどういうことが主張できるかというのは,AとXとの間で決まる準拠法によってX'''との関係でも言えるということではなくて,やっぱり倒産になると,倒産した会社の顧客といいますか,倒産した会社と口座管理契約を結んでいるのはX''だから,やっぱりX''がどれだけ権利を持つかということでもって,その下の者の権利内容も規定されていくと,こういうことになるということなのでございましょうか。 ● 私,そういう意味では,もしその議論をするのであれば,前回どういう問題提起だったか,記憶がはっきりしなくて申しわけないんですけれども,むしろここの2-2でいえば,青で書いてある一番下に国内という,いわゆるXとAですね。ここがドイツであって,上の黄緑色というか,上のX'より上は全部,どこでもいいんですけれども外国であるというシチュエーションと,全部上から下までドイツであるというシチュエーションを比較した方がいいと思うんですよね。   それでもし,全部ドイツ国内,一番上から一番下まで全部ドイツ国内だといたしますと,一番下にいるAは共有持分ということになるんですよね。日本の保振法と同じですけれども。したがって,Xが倒産しようがX'''が倒産しようがその共有持分というのはAに帰属していますという主張ができるわけですね。   これに対して,青の部分だけがドイツで,上の方が外国だとしますと,ドイツではこの場合にはAは共有持分を持たない。そのかわり,Xに対する債権的権利をAは有しているだけだということになるんだと思うんですね。   万が一,今,X'''が倒産した場合とおっしゃいましたけれども,私の頭の整理で言うと,ドイツ国内のXが倒産した場合にどうなるかというと,外国証券の場合には,AはXに対する債権しか持たないんですね。しかし,それを,先ほどからお話が出ていますけれども,何とかAの権利というのを信託の構成かなんかを使ってこうしようということではないかと思うんです。   それで,じゃあドイツから見て外国のX',X'',X'''について,先ほどのお話で,ドイツから見て外国のX'''が倒産したら一体どうなるんですかという話は,AとXとの関係では何ら変わらなくて,AはXに対して債権を持っているだけですので,そういう意味ではその債権は信託的に保護されていればいいんですけれども,ただ,今の例で言いますと,Xは生きているわけですから,あまりそういう議論をする意味はなくて,次に,AはXにどうしてくれるという,先ほどの○○委員の話じゃないですけれども,といったときに,XがX'なり上の人にどういう権利を有するかというのは,この条約を適用すればそこでまた決まるわけですよね。   それだけのことであって,いわばAがジャンプしてX''がX'''に対して有する権利に代位するというか,それを行使するとかということは,よく最近の言葉でアッパーティア権利行使といっているんですけれども,それはX'''からはAは全然把握していないわけですから,それはもう考えていないというか,できないと申し上げておきますけれども,どっちにしてもそういうことだと思います。   ですから,ちょっとさっきのように変えると,上の方がドイツとしますと,また話がややこしくなってくるんですけれども,ドイツ国内から見ればむしろ一番下がドイツでだんだん広げていった方がわかりやすいとは思うんですけれども。 ● 今の○○委員の例はなるほどと思って聞いていたんですけれども,ただ,Aは日本人で,Xは日本の証券会社だという前提で,AとXとの間は日本法だと。ただ,Xから上はよその国の法律で,途中にドイツが入っているというときにどうなるのかというのをお尋ねしたんですけれども,その場合はちょっとお話が変わってくるんでしょうか。 ● 変わってくる部分と変わってこない部分とあると思うんですけれども,例えばX'からX'',X'''までをドイツとしましょうか,例えばということで。一番下が日本だと。それでそのCrestから上が,いわばドイツでも日本でもないと。日本であってもいいのかもしれませんけれども。   そうしますと,まずAがどういう権利を有するのかというのは,このヘーグ条約で決まりますけれども,仮の日本法を選んでいたとします,4条1項に従って。そうすると,Aはこの場合には株式なり社債なり証券上の権利を持つんですね。ただそれだけのことであって,そして,実際問題,先の話をすれば,これ発行会社の株主名簿に通常Aの名前が記載されるかどうかというのは法制によって違いますけれども,Aはとにかく権利を行使し続けますし,配当金は受け取れますし,建前だけ申しますと,それは何ら揺るがないということだと思います。したがって,ドイツが別に債権的構成をとろうが物権的構成をとろうが,それはAにとっては関係がない。   ただ,さっきの話で,じゃあこれをどうしてくれるといった場合に,例えばということで申しますと,仮に配当金とかが実務的に一番上からXのサブカストディを通じて流れてきたとします。しかし,X'''が倒産したらつぶれてしまうわけです。途絶えてしまうわけですよね。そこでAはXにどうしてくれると,あるいはどうかなったんですかと,X'''が倒産したらしいけれども大丈夫ですかというふうに聞くと思うんですね,実務的に見ますと。   それで,Xはさっきの○○委員の話じゃないけれども,当面自分が立て替えて払いましてその後何とかしますということなのかもしれません,実務的な解決としては。しかし,法律的にどうですかというと,次は,Xが上に対してどういう権利を有するかと,そういう話になっていくんだと思うんですね。そうしますと,今度はXがX'''に対して何かジャンプして言えるか,あるいはXは自分のカストディというか口座管理機関であるX'に対してしか何も言えないんだという問題は,Xがどういう権利を持っているかということをねらって,これはヘーグ条約との関係でいうと,XとX'の間の契約で定めた法で決まるということになるわけなんですね。   もしそれがドイツ法だとしますと,そうすると今度は,Xはこれは共有持分を有すると,国内株式であればなりそうなんですけれども,今の例でCrestより上は外国だということにしますと,さっきの話になりまして,XはX'に債権,X'はX''に債権,X''はX'''に債権,ただ,この債権は先ほどの○○幹事のお話で,一応学会では信託的に保護しましょうと言っているということですので,仮に信託的に保護されるとすると,X'''がつぶれた場合にはX''がX'''に対して債権を有するけれども,それはX'''の倒産財団には属しませんという,ただそれだけのことという,そういうことだと私は理解します。   お答えになっていたかどうかわからないですけれども。 ● 前回の議論,私も忘れているので,今の話として伺いたいんですが,Aの権利が日本法上物権であるという点は,それはそうなんでしょうか。そうであるかどうかは,この条約でいうと2条1項のaですね。増額記帳に起因する権利の法的性質が何なのかはその決めた準拠法によりますというのですから,日本法上,物権なら物権であると。さらにこの条文上,並びに口座管理機関及び第三者に対する効果も決めてよろしいということなので,物権であればだれに対しても言えるはずだということで,ジャンプして上の倒産手続の中で,自分は物権をここに預けていると。さらにそれは上に行っているはずで,権利はどこかで縮減されるようなことは困ると。一番極端に言えば,間の証券会社が全部倒産した場合でも保護されるはずだということが言えないと物権じゃないと思うんですが,そのような権利が日本法で与えられているのであれば,それがそのとおりになるんでしょうかというのが,多分倒産のシチュエーションの間がどうであれという話だと思うんですが。   先ほどの話だとXとX'のところに直ちに話がいってしまったような気がするんですけれども,Aは物権を持っているという理解でよろしいですか。もう1回確認,何回もやっていることかもしれませんが。 ● それを最初に申し上げたつもりで,それはそうだと思います。ですから,どういうことかというと,例えば発行会社との関係で--発行会社との関係でというと正しくないんですけれども,カバーしていない領域に入りそうですので,Aが株式の所有者であるとき,株の場合であれば,それはおっしゃるとおりでありまして,Aは自分が株式の所有者だということをだれに対してでも言えるというのはそのとおりだと思います。   ただ,私がちょっと気になったのは,結局,X'''とか何かから見れば,Aの名前って全然わからないわけですよね。ですから,そこにいきなりAがおれのものだと言ってきても,あなただれですかという話になるんだと思うんですよね。そうだとしますと,例えば,あまりいい例ではないかもしれませんけれども,国によって違いますけれども,配当金がこの発行会社からこういうふうにXのサブカストディを通じて流すような国だったとします。日本の場合はちょっと違いますけれども,そういう国だとしますと,配当金がX'''に入ってきてしまって,これは倒産財団が自分のものだと思うはずですよね。後には流しませんので,倒産しているので。そのときに,Aがその配当金は自分のものだとX''が訴えて取りにいけるかという話が一応あるように,私は思うんですけれども。   そうすると,理論的にはXが株式の保有者だということにはなるんですけれども,これはちょっと日本法のアナロジーで申しますと,したがって,そのことはAは発行会社に対しても言えるはずですから,発行会社というのはA以外の人に本当は払っちゃいけないはずなんですよね。ですけれども,発行会社からしてみれば,これは法制度にもよりますけれども,ここでいうCrest,ちょっとイギリスは違いますけれども,ここにCrestと書いてあるところが株主であって,そこに配当金を払う,あと配当金は下にざっと流れるということであれば,少なくとも免責という言葉が正確かどうかわかりませんけれども,発行会社はCrestのところに配当金を払えば,もう一遍払わないでAに直接払えという話にはならないと思うんです。   つまり,何を申し上げているかというと,私の感じで言うと,Aが株主であるという点はおっしゃるように日本法が準拠法だということになれば確定していますけれども,実際その配当金が取り合いになった場合には,おそらくX'''の倒産管財人を訴えて,その分受け取った金をよこせという訴訟が,これはちょっと法律論なのかよくわからないんですけれども,少なくとも実際問題としてはどうなのだろうかという言い方にさせていただきますけれども,そうしますと,結局,先ほど○○委員がおっしゃったように,Aは戻してくれとXにしか言いようがないものですから,実際問題としては,Xが立て替えるかどうか知りませんけれども,例えば立て替えてXの方が上へ取りにいくと。X'がもし生きていればX'に言いに行くし,X'も含めて全部倒産している場合には,理屈の上から言うと,X'も倒産している場合でいえば,XはX'に対して権利帰属を主張するということになるのではないかと。そういう意味で,ステップを1つずつ上へ上がっていくのではないかという気がするんですけれども,それは実務の対応であって,おっしゃるように法理論的には,多分この条約の適用があれば,一番下のAが証券の帰属者ですから,日本法であればですけれども,間の人は何も有しないわけですから,ですから,この証券というのはAのものだというのはそのとおりだと思いますけれども。 ● ○○委員,今の○○委員の御説明に対して。 ● 適切な質問がもう一回できるかどうかわかりませんけれども,倒産のシチュエーションで,実務的には,現実的にはおっしゃるとおりだと思います。ただ,倒産というのはなさそうな業界であると仮にしますと,むしろXが顧客に物権を持っていますといって売ること自体の,それが本当なのかというコンプライアンスというのか,本当の権利を売っているのかというところで,上の方に本当につながらないのであれば,そこは物権ですということ自体がおこがましいかもしれないわけですよね。それが前のときから議論になっているわけですけれども,間にすべてが物権的につながっていればそれはもちろん問題ないんですが,そうでない法制が間に挟まっているような場合に,それでも一応大丈夫だと言ってよろしいんでしょうか。 ● 直接お答えできないんですけれども,どう言って売っているかというと,外国株ですと言って売っていると思います。   ちょっと繰り返しになりますけれども,実際問題,証券会社が何かわからない権利を売っていますというわけにいきませんので,Pという国におけるQという有名な上場会社の株式でございますとか,Pという国の国債でございますと言って売っていると思うんですね。   Pという国債とか,P国所在Q会社発行の物権を売っておりますと言わないと不正確じゃないかと言われればそれはそうかもしれないんですけれども,それはやはり法律構成であって,法的な答えを申し上げていないんですけれども,実際問題として,例えば一番下が日本であれば,国内の証券会社はこれはインド株ですとか,何とかの株ですと言って売っているのであって,インド株の物権的権利をあなたは持っていますと言って売っているとは到底思えないんですけれども。 ● それは現実的にはそうだと思うんですけれども,一番のリスクはXの倒産ですよね,その場合に。Xが自分で売るときに,自分は倒産しても大丈夫な権利なんだと言えるか言えないかで,実は倒産したときに管財人が,物権じゃなくて,実は本当はつながっていないんだから,単なる債権者じゃないですかと言われるリスクがあるようだとAさんとしては嫌ですよね。そこは少なくとも大丈夫なんでしょうか。   要するに,Xの倒産において,単なる債権者としてではなく,買っているはずの外国証券の所有者として出ていけるということは確保されていると考えていいのでしょうか。 ● そもそも,この条約のもとで日本法制に委託していれば,そのお答えは,イエスです。ただ,分別管理していないとどうなるかとかという技術的な問題がありますが,ただ,法的にはAだけが権利者ですので,その点はそういうふうにわざわざ言って売っているとは思いませんけれども,日本法であればその点は問題ないと思います。 ● そうしますと,今の例で,AとXとの関係も日本法が準拠法だったとすると,AはCrestにあるどこかの国の株式を取得したということは,これは先ほどの議論ですけれども,だれにでも主張できるということになるとすれば,X''’が倒産して,X''’がCrestに持っている口座の,仮に分別管理されていなくて全部まとめてどんとあったという場合に,しかしそのうちのAがXの口座に持っている数量の分の株式はAのものだということで,立証の困難性ということはもちろんあると思うんですけれども,X''’からずっとつながってきて,Aまで,ある部分についてはつながっているんだということが立証できれば自分のものだということは言えると,理屈上はなるということなんでしょうか。 ● 私はそう思いますけれども。 ● そうすると,Aとしては,この条約に入れば,AとXとの間の準拠法上,自分の権利がどうなのかということだけ見ておれば,一応,立証の問題は別にすれば,そのとおりの権利は取得できることになるということではあるわけですね。 ● そうですね。条約に入らなくても,Aが権利があるということになればいいんでしょうけれども,入らないと現在の法例というか,新しい通則法でも,そこはどっちかはともかくとしまして,同じものであると思いますね。   つまりどういうことかというと,条約に入ろうが入るまいが,A自体の権利というものはAが権利者だと決まったと事実上証明していくものであれば同じ問題が起こるわけですよね。上の方には上がらないわけですから。ただ,少なくとも条約のもとではっきりしていることは,Aの権利はAXで日本法と決めれば日本法に従って決まるということがはっきりするということですよね。それ以上の実務的な難点みたいなものがあるとすると,それは残るということだと思います。 ● 一番確実なところは,結局,仮に日本の口座管理機関のXが倒産したという場合に,Xの口座に入っているAの部分については,Aは取戻権が主張できるという,そこは確実に言えるということなわけですね。それは現行法のもとだと,そもそも準拠法がどこになるかわからないので,一体どういう権利を何法によって取得するのか自体がわからないという問題があるのに対して,そういう問題は全くなくなると考えていいわけですね。 ● おっしゃるとおりだと思います。   1点質問させていただいてよろしいですか。   これが何とというか,手続上というか,倒産法だと思うんですけれども,Xが倒産した場合に,AがXの口座に持っているのが株式だとして,何株かは自分のものだと。それを別の,例えば,ここでYを使っていいかどうかわかりませんけれども,Yという証券会社に移管しますと。そして,Yは生きている証券会社で,それでY証券会社からX'に今度つながっていきますということをしたいときに,これは取戻権の行使だけでは完結しませんよね。取戻権を主張してそれが認められたとしても,当然にYへの移管はできませんよね。   Xの口座の記帳をYに移管させる手続というのは,司法上可能なんですか。一般的にあり得る話ではあるんですけれども,例えば証券会社がつぶれた場合に,全部日本国内で完結していたってある問題だと思うんですけれども。 ● 山一証券がつぶれたときはどういう処理になったのでしょうか。 ● 物があるものに対して,国内株とかそういうものについては,物をよその証券会社に移管したいというような手続は当然できるわけですが,こういった例だと物がない記帳だけの世界ですので,でも実際多分あったはずですよね。相当量,山一は売っていましたので。 ● ですから,社振法の世界でいえば振り替えなければだめなんですけれども,つぶれてしまった口座管理機関の業務ってどういうふうになるんでしょうか。 ● そこは,今は定めはないですよね。先ほど山一の話が出まして,山一証券自体は倒産をしたわけではなかったので,その後の処理は山一証券を続けたと思うんですね ,自主廃業でしたから。例が適切かどうか,山陽証券なんかの場合どうなったかということかなと思うんですけれども,すみません,記憶もありませんのでよくわかりません。 ● 記憶だけですけれども,山一のときは破産宣告がされる前,実際には生きているかのような形で動いているような間は,会社が全部,任意に名義移転を認めましたよね。だから,生きているような会社のXが,Yに対して合意でその対X'向けの名義を移転する手続をやったんだと思いますね。   山陽証券もやはり同じだと思いますが,当時の大蔵省なり,それから業界は,やっぱり実質上の取戻権があるというような理解で全部動いたというような感じがしますね。ですから,請求があれば,問題の会社の自己財産とは別の取戻権である物権と同じような扱いで自由に要求に応じて渡していた。それから指定される証券会社に名義を移転する手続を積極的に協力していたと。それで動いたんだと思いますね。それは当時も大蔵省も証券業協会もその前提で動いていたような記憶ですね。 ● 私もそういうふうだと理解しているんですけれども,例えば,紙があれば,一応頭の整理としては一遍紙を取り戻す権利でもらうと。それからもう一遍生きている証券会社に預けるということは可能です。でも社振法の世界ですと,紙は全くないので,一遍もらうわけにいかないんですよ。XがつぶれたらYとかZとかほかの証券会社さんに移管してもらうしかないと思うんですよね。ですから,そこはちょっと本文から外れたら申しわけないんですけれども,そこは確実にできないとAを保護したことにはならないです。実体法上,いかにAが権利者だといっても, ● 今の点ですけれども,逆に,当然,頭の整理からいくと,倒産した場合は,その倒産した会社の管理処分権限というものが管財人に移管しますよね。その管財人は自分の管理をしたまま,とりあえずその会社というのは通常の営業はしないにしても,いろいろな清算に向けたといいますか,その業務をやっていく過程で,いろいろな資産の整理がされていて,そのうちの資産のうちの幾つかがお客様から預かっているデータであるということがわかって,そこからもしも倒産状態に陥った証券会社がある,でもしかし,いまだこの,例えば日本でしたら保振ですとかいろいろなライン上につながっていれば,例えば倒産したことによって資格を失って,そのラインから外されるということであればまた別ですけれども,つながっているのであれば,通常の管財人はちょうどお客様に証券を渡すのと同様に,ほかの要求があればほかの,ちょうどだれかに紙をお渡しするかのようにデータを移管するという形をとるということではないのかなと思ってまず聞いていたんですけれども,そこがまずどこかおかしいということになるんでしょうか。 ● ですから,司法手続で管財人が争っているんですね。自分のものであると主張しているので,Aが取戻権を主張して訴訟に勝ったら,その効果として管財人にそういう強制する方法があるんですかということが質問です。 ● そうすると,管財人がそれで裁判で最後負けて確定判決まで出ているにもかかわらず,まだ自分は渡さないというようなことが起きているということでしょうか。 ● 渡さないというか,例えばAがYとかZとか指定しないと移管のしようがないと思うんですね。ですから,そこが現在の取戻権の構成と,その司法手続において,例えば取戻権を認める勝訴の判決が確定したとしますよね。その判決原本でもって,例えば何が言えるか。YとかZはAが選ぶ話ですので,そこがリンクしているかなというのが最初に聞きたかった点なんですが。 ● 少なくとも現行制度上は,管財人との訴訟の結果として,自動的に新しく移管するということはないと思いますけれども,それは多分ほかにも似たような問題がたくさんあって,それと共通する問題のように思いますけれども。 ● 今の場合は紙があるときは,訴えの場合は,紙を引き渡せという処分を求めますね。紙がないときは,多分倒産のX会社の管財人はその顧客名義で持っている何々株式の名義を,対X'向けの名義を新しいカストディ会社のYに移転せよという,そういう主文を求めるんじゃないですかね。そうすると,それにおいて管財人は協力手続をするということになるんじゃないかと思います。そんな気がいたします。 ● 現実にはそのようになった例がございますか。 ● ほとんど過去の例は,昔の大蔵省のような場合は大蔵省と証券業協会がそういうふうな形でいくようにという指導をして,そのとおりに各会社は行っていたと。障害なく行っていた。投資家保護を一番大切であるから重要視して,それを実行するようにというのが証券会社の共通認識で,そこのところはほとんど滞りなかったんじゃないかという感じがしますね。 ● 確かに実務上は今,委員おっしゃるとおりだと思いますけれども,ただ,さっきのYに移転させるという主文というのは,Y自身も手続かなんかに巻き込まなくても,それはそのまま出せるのかというのがちょっと私よくわからなくて,と申しますのは,これは似たような事例で,例えばどういうものがあるかと申しますと,最近も非常に問題になっている事例というのは,ドメイン名を不正競争防止法に基づいて,使わせずに自分に引き渡せというようなことを言うときに,現在のシステム,少なくとも民事訴訟法のシステムのもとでは,使うなということは言えるけれども,自分に移転せよと。その移転するのもやっぱりデータを移管するような形になるわけですけれども,今のところできないというのがどうも通説的な立場あるいは判例の立場らしくて,それにただ似たような話なのかなと思いまして,今は,制度上,自分が指定した人に,そこに移してしまうというような話でいいのかどうなのかというのはちょっとわからなかったという次第です。 ● もう一度その辺を考えてみる必要があると思うんですけれども。 ● 私は○○委員がおっしゃったようなふうにいくのが一番いいと思っているんですけれども,本当にいけるかどうか私も自信ありませんけれども。   ですから,もしそうだとすると,話を戻しまして,上の方でX'''がつぶれても下の方は何も起きないんですね。単にその下の人であるX’’がX'''に対して今言ったようなことを行うかどうか,そこの国の--そこの国というか倒産準拠法のもとで,それをするだけのことです。   さもないと,X''は下に責任を問われますから,契約上であれ何であれ,下がお客様なわけですから。ですから,下の方は順番に突き上げていくわけで,というか何もなければ通常元利金が来るのを待っているだけであって,しかし,万が一X'''だけがつぶれた場合には,それがドイツかどこの国かはともかくとして,このX'',すぐ下の人の権利があるというのが,一番レレバントというか,効くわけでして,その人が今言っているのは,X'''の口座にあるものをY'''かなんかに移管してもらうという,そういう問題だけに収れんするように思うんですが。 ● 今日の議論のそもそもの発端は○○幹事の御発言から実は始まっているといってもいいと思うんですけれども,この図のX'''が倒産してしまったときに,A,X,X',X''がそれぞれこの倒産手続にどのような権利を主張して参加することができるかという議論なのでございます。 ● そうしますと,一番最初に,○○委員がおっしゃっていたことで,少なくとも基本的にこの条約というのは,最初の段階ではあまり倒産のことというのは,名称自体がproprietary aspectという条約だったということもあって,単なる権利の所属の準拠法の条約にしようという話だったのですけれども,すぐに倒産の局面を見なくちゃいけないということで条項が入れられて,その条項は2条の1のaと,あと8条でしたか,その辺の規定ですね。しかし,それは部分的にしか,基本的に100%すべてのパターンをカバレッジがあるわけではないものですから,先ほど多分,○○委員が御説明になられた範囲ではワークするけれども,じゃあこういう場合どうなる,ああいう場合にどうなるといったときにはカバーしきれない部分もございますし,また実務的にはこういう困難性はどう克服するかということは,それは条約とか法のレベルでは何ともいかない部分がございますので,倒産の局面ですべての問題がこの条約に入ったからといってハッピーになるわけでは決してないですけれども,事態がインプルーブするのは間違いないと思いますので,そういうお答えになるんじゃないかと思いますけれども。 ● 今,ちょっと○○委員ともお話ししていたんですけれども,Aが例えば株式を持っていますというのをX'''に主張するというのは,それはできるかもしれませんけれども,意味は全くないと思うんですね。X'''の方は,ああそうですか,あなた何か知らない権利を持っているかもしれないけれども,それはわかったといっているのは,X'''は入ってきた配当金かなんかが倒産財団に属するといってやっているんだと思うんですね,管財人は。そのAが何か持っているかもしれないけれども,それが矛盾する権利であるとしても直接AがX'''にどういう請求があるんですか。所有権確認訴訟でも起こされれば負けるのかもしれませんけれども。一応理屈の上から言いますと。   ですから,ほとんどの問題になるのはX''が問題であって,X''はX'''の口座のうちの自分の分を別のY'''か何かに移してくれということをしない限り,X''は下のケアはできないわけですね。下の方のお客様がぶら下がっているわけですから。   だから,実際の紛争になれば,そこへ収れんして,そこでX''が負けたら,別にAが権利を持っていても,これはもう終わりだし,そこでX''が勝てればそれは移管されますから,何事もなかったかのように,ちょっと一遍払われた部分とは別途話さなければいけないかもしれませんけれども,X'''が生きているY'''に入れ替わるという,結局そういうことだと思うんですけれども。   その話を最初からしていたつもりなんですけれども,要領が悪くて申しわけございません。 ● 今のようなことだとしますと,先ほど○○委員がAがXに日本法に準拠して,例えば100株預けていたとしますよね。しかしながら,結局,上の方の戦いによって敗れてしまったと。例えばその100株は管財人にとられてしまった,あるいはだれかのものになってしまった,あるいは債権に過ぎず割合的には半分しか返ってこなかったといいますと,だれか中間にいる金融機関が自腹を切って補てんをしない限りは,Aさんの権利は,日本法だとそういう補てんのメカニズムは働くと思うんですけれども,減ってしまうというふうなこともあり得るということになるようにお聞きしたんですけれども。そうしますと,やっぱり外国債券との関係では,その途中に挟まる金融機関がどういう金融機関があって,そこにどういう法制があるかによって,場合によっては途中で補てんをしてくれる金融機関,あるいは補てんをさせる法制がなければ,日本法の場合にはあるのかもしれませんけれども,そういうメカニズムがなければ,いくら日本法で頑張ったとしても減ってしまうということがあるということになるようにお聞きしたんですけれども。 ● 私がもう少し現実的な話をするんであれば,途中の人であるX''やX'''に対してAが訴えてきたって絶対に一銭も払わないと思います。Xだけだと思います,Aと対しているのは。だから補てんはするもしないも関係なくて,XがAに対して,補てんという言葉を使わせていただければ,補てんするかだけが勝負だと思います。   日本の証券会社はどうされるかわかりませんけれども,おそらくAに外国株を売って,それで間のカストディがつぶれて何か動かなくなったと。X'''か何か知りませんけれども,それは日本の証券会社,通常は補てんをすると思うんですけれども,ただ,そういう実務的な話をしていいのかどうかよくわからないんですけれども,法理論からいえば,必ずしもヘーグの世界だけとは思いませんけれども,現行法でも準拠法がどうなるかですからね。日本法になれば,あくまで証券はAに属しているんですよね。それで間の口座管理機関というのは何ら権利がない。社振法の世界では違いますけれども,ということではあるんです。   ただ,それが空振りというと言い過ぎだと思うんですけれども,そのことをもって,上の方へ行って主張してどうなんだろうと。例えば発行会社に直接権利行使してみたところで発行会社の株主名簿にAと書いてあればいいですけれども,そこにはX'''と書いてあるかもしれないですよね。この場合に日本法的にいいますと,名義書換請求はできるんですかというと,おそらくそういう法制のもとでは,発行会社の名簿というのはX'''レベルの人だけで名義書換しているはずですから,下層の人であるAの名前に変えるということはあり得ないと思うんですよね。   ですから,要はその証券が取り合いになればAは勝てるはずなんですけれども,実際問題として,そういう場面で別にBとかいう人が出てきて,途中に記帳してあるものはAのものかBのものかとなればAは勝てると思うんですけれども,今,最初から今日議論している文脈で言いますと,もし○○幹事のような問題意識で言うのだったら,Aに補てんしてくれるかどうかは,Xだけ,それだけが勝負だと私は思います。   そのXが補てんするかどうかは,もちろんビジネス・ジャッジメントかもしれませんけれども,いずれにしても,補てんしたものはXは上に取り返しにいかなければいけませんので,今度はX'がXにその点をまた払うかどうかだけの問題で,それの積み重ねだと思います。 ● 繰り返しで,私は○○幹事と全く同じ問題関心なんですけれども,要するに実務的にはXが補てんすればいいというのはよくわかるんですけれども,補てんの額があまりにも大きくてXが倒産しましたとなると,補てんはできないということですよね。にもかかわらず,そもそも何を売っているのかというと,そこは要らないということかもしれませんが,しかし物権だという前提は,法律論から見ればそうなるというのがこのヘーグ条約で,上の準拠法はどんどん違ってきちゃいますということだと,必ずしも確保できないということは顧客に言わないといけないんじゃないですか。リスクはあるんじゃないんでしょうかね。   要するに,本当の物権ならリスクはないところを,上には違う準拠法が挟まるかもしれないので,必ずしも物を持っているのと同じ状態にはならないですと。もちろん最大の努力はするけれども,私はつぶれればそれはもう約束できないというのが本当のところになってしまうんじゃないでしょうか。 ● 私の理解では,まず○○委員のXがAに何を売っているかが問題だというのは前回もおっしゃっていて,一貫している話,私はそれに気持ちは全く賛成なんですけれども,ただ,それは正確に説明するというと,前に申し上げたかもしれませんけれども,アメリカは,全部アメリカ国内の場合でも,あなたに私はセキュリティーエンタイトルメントを売っていますなんていうことを言う人はいないと思うという,それだけのことであって,おっしゃるように,物権かどうかというのは非常に大事だと思います,その意味では。   それからもう1点は,準拠法がどうかとかこの条約がどうかは関係ないと思うんですね。これは,仮にこの条約がなくても,全部同じ法律であると多少はわかりやすいかもしれないという問題であって,間接保有であれば常に生じる問題だと思います。   例えば,全部アメリカ法だとします。あるいは別の法でもいいのかもしれません。日本法はちょっと実質株主名簿があるからややこしいんですけれども,仮の日本の保振法で,実質株主名簿がなかったとします。ちょっと仮定の世界です。アメリカに近い世界になるんですけれども,そうするとAは共有持分を持っていますという意味において物権なんですよね。ですけれども,共有持分を持っているから何が言えるかというと,X'''にジャンプして,自分はこれこれの共有持分を持っていてXがつぶれましたと。だからX'''に対して自分の権利の取戻権を行使しますといったってないですよね,それは。   そうではなくて,やっぱりAはXがつぶれたならば,XがX'に持っている口座の名義を,さっきの振替という言葉を使わせていただければ,XからA名義に,例えばですが,あるいは自分の別の証券会社であるY名義に変えてくれという,そういう請求をX'に対してする。なぜならば,当該証券記帳分については,それはXの倒産財団に属さないからであるということであり,X',X,Aとぶら下がっているのをX',Y,Aとか,Aが直接ぶら下がることも可能な法制度であればそうしてもらう。さらに上の方でX'''がつぶれました。全部日本法だとしてですけれども,その場合でもAが直接言ったって,X'''から言えばあなた何者ですかということであって,やっぱりこれはX''がX'''をY'''に変えてくれという請求をしていくと。これは,ですから,準拠法がどのようにして定まるかにかかわりなく,こういう間接保有構造ということにあれば,実際の争い方はそういうふうになるんじゃないかと思うんです。   ただ,繰り返しになりますけれども,AとBが取り合ったような場合には,これはその帰属はAが勝つというか,物権的にAが勝つという話にはなると思うんですけれども。 ● ○○委員,よろしゅうございますか。まだ首をかしげてございますが。 ● 先ほど,ドイツはドイツの証券か外国の証券かで区別して,外国証券についてはもう債権的な,あるいは少しはプラスアルファがあるとしても物権の約束ができないという,法制的にそう区別しているというお話がありましたけれども,国際私法の話ではなくて,日本の実情として,外国証券でこういう間接保有の形,あるいは外国に物があるような場合には,物権的な権利を売れるかというと,そもそも普通はそうじゃないというのが正直な言い方ではないかなと。私は,昔からそう思っているんですけれども,でもそこは変えなくてよいというのが前提ですね,今のお話は。 ● それは,多分,○○委員のおっしゃっていることは次の部分だと思うんですね。全部日本の国内で完結している場合であっても,紙は完全にないわけですね。新しい振替法がそうですけれども。すると,紙がなかったら,あなたの持っている権利は何ですかと言われたら,それは我々は株式とか社債と呼んでいますけれども,それは所詮発行会社に対する債権的な権利ですよね。ただ,発行会社に対する株式については,一応学会では社員権論とかいうのがあって,単純な債権とは違うという議論があるんですけれども,物権というよりは債権で,ただ,その帰属を問題にしているわけです,日本の現行法は。その帰属というのは一番下の人だけに帰属していますと。途中の口座管理機関には帰属し得ませんと言っているわけですね。   ですから,そういう意味で言うと,私はそれを紙がある場合に,紙に対する共有持分権という物権的な構成をするか。もう今は,紙は全然ないわけですからそれはできないので,要は発行会社に対する権利にすぎないんですね。どちらに構成しても帰属が勝負なので,そういう意味ではAならAに帰属していますということの意味はあると思う。それで,その意味は途中のここでいうXやX'が倒産した場合に,そこの倒産財団には属しませんという意味だと思うんですね。   ただ,ここから先が問題で,これがAとBで争われているときには,そのAに帰属しますというのはBに帰属しませんという意味ですし,Bに帰属しますというのはAに帰属しませんということですので,例えばXに記帳された100株なら100株というものについて,Aが株主ですか,Bが株主ですか,あるいはAの株式ですか,Bの株式ですかと言われたら,Aは勝つはずですね。だれを相手にどういう訴訟を起こすかというのは,場合を分けて考えなければいけませんが。   ところが,今日の話は上の方で倒産したという難しい話なので,話が難しくなるんですけれども,全部日本法で完結しても,上の方で多層構造でこれだけあって,上の方で倒産していたら,Aは自分のところに,一番下に記載されている部分だけ株式ですということは言えるんですけれども,万が一,上の方で数が合っていなかったら,Aはそれを発行会社に言ったって発行会社は免責です。それが1つあります。   ですから,実際問題としては,Aはその株式ですということを言ったのは,それは物権的な構成をしようと,債権という表現がいいかわかりませんけれども,発行会社に対する株式とか社債,その帰属がAに帰属していますという構成をしようとも,縦につながっている途中で口座管理機関が倒産したような場合には,私はもう移管という形でしか問題が現実にならないように思うんですけれども。どうなんでしょう。 ● 過去に調べたもので不正確かもしれませんけれども,おそらく,例えばドイツですと,国内ですべて完結しているときには,お客様を相手にする金融機関は証券についての直接の所有権を取得させる義務を負うというふうなことを法制で書きながら,他方で,外国証券の場合には,そのような法令上の義務から金融機関を免除した上で,約款などにおいて,要は所有権を取得させる義務を免除しているんですけれども,それについて,学説などは,要は外国証券については外国法にもよるし,いろいろよくわからないこともあるので,そういう意味では約束できないことは義務づけないと。しかしながら,その上でいろいろ議論ですとか,あるいはそういう金融機関に外国証券会社などと,別途信託宣言という話が○○幹事の御報告の中でもあったと思いますけれども,そのような仕組みをとらせるということで,なるべく顧客の権利を最大限に保護するような枠組みを提供するようにしようというふうな多少の色分けをしていると思うんです。   そういう意味からすると,ドイツは,少なくとも立法段階においては,国内と外国において与え得る保護の違いの濃淡があるのかなということを認識しつつ,法律の世界でも書き分けていると。それを今の平面に,日本法のお客さんに対する販売の平面に焼き直せば,国内において我々はここまでできます。しかし,外国になると,必ずしもすべて日本にあるような場合と同じようにならないリスクも増えるかもしれません。確かに,大半は○○委員がおっしゃったように,日本においても,あるいは上にいっぱい積み重ってそこで善意取得とかされてしまえば減っていくということですので,問題の本質は間接保有ということにあるのかもしれませんけれども,そういった国内と外国でちょっとリスクの度合いを分けているというふうなことはあるので,私はどちらかというと○○委員がおっしゃられる問題の御関心には,非常に私もそうなのかなという気持ちをしてお聞きしておりました。 ● 大変おもしろい議論だと思いますが,新しい条約が適用されていない現行法でも,果たして証券会社が何を売っているのかという問題があって,それで新しい条約が仮に批准されると,何を売っているかの性格がこの条約によって多少ずれてくるということもあり得るんですが,それは結局,やはり対顧客へのディスクロージャーの問題であって,強いていえば,金融商品販売法のところでどこまで言うかというようなあたりで処理すべき問題なのではないでしょうか。外国株式を売っているとは言うけれども,いろいろなリスクがあるんですよというのを付随的に言うようにするか,そういうような形で,本当は現行法でもそういうふうにワーニングをすべきものであるかもしれないけれども,新条約に仮に入れば,ますますそれを明確にしておくべきだというような感じはしますけれども。 ● ただ,委員もおっしゃったように,ドイツは今でも,この条約の前でもそれはやっていますので,これは本当に条約を導入したから変わるというふうな話ではなくて,もう外国に行って,争い方によっては外国法が適用される可能性があると。それは今この条約を批准する前でも,どこか外国金融機関を集めて,そこに実際に取りにいったときに,今は何法が適用されるのかすらよくわからないわけですから,そういう意味ではリスクがあるわけですよね。そういう意味では,ドイツのこの立場というのは,今も,また多分条約批准後も変わらないのかなという気がいたします。   だから,この条約によって引き起こされる問題ではない。もともと潜在的な問題なのかなという気が私はいたします。 ● うっかりしていました。議論がおもしろくてつい時間のタイムキーパーであることを忘れておりました。   ここで休憩させていただきたいと思います。           (休     憩) ● それでは,再開したいと思いますので,お席にお戻りくださいませ。   ちょっと前半の議論を事務局の方でまとめていただきたいと思うんですが。 ● まとめられるかどうかわからないんですけれども,先ほど来,○○委員と○○委員の御議論があったわけですけれども,どうもお聞きしていますと,○○委員がおっしゃっておられることと○○委員のおっしゃっておられることというのは,何か議論のフェーズが違うというか,○○委員はどちらかというと事実の問題をおっしゃっておられるのではなかろうかと。つまりここではX'''が倒産したというケースで議論しているわけですけれども,X'''の口座はオムニバスアカウントという前提で物事を議論しているわけですが,これは先進諸国はみんなそうですので。そうするとX'''が開設している口座にはAという名前は全くあらわれなくて,X''がどの証券を幾ら持っているということしか出ていないので,Aが自分が権利者だと言ってきてもX'''は相手にしないという,それは事実の問題としてそのとおりだと思うんですね。   ただ,休憩前に私からもちょっと質問させていただいたんですけれども,例えばこれが全部日本だと仮に仮定をいたしまして,このCrestのところが証券保管振替機構さんで,今は2階層なんですけれども,社振法上は,こういう多階層もできることになっています。仮に多階層になったといたしますと,それでもX'''はAと直接の関係が全然ないわけですので,Aが自分が権利者だと言ってきても相手にはしないということにはなるんだと思うんですけれども,これX'''はX''の口座を持っていますので,X'''が開設しているX''の口座に,また甲という証券に入っているとして,その総数があらわれているわけですね。その下にX''がX'の口座を開設していて,そこにまた甲という証券の数が記録されていて,同じようにX'が開設する口座にXが持っている甲という証券の数が書かれていて,Xが開設しているAの口座にAが持っている甲証券の数が書かれているわけですけれども,先ほど○○委員は,その数にそごがあったときには,いくらAが自分は100持っていると言ったって,上の方で足し合わせると数が少なかったら100はいかないよねというお話をされて,それは日本法もそのとおりですけれども,仮に数がぴったり合っていれば,これはAX,XX',X'X'',X''X'''というふうにつながっているチェーンの中で,それぞれの口座に入っている証券の数がぴったり上と下が合っている。これは合っていなければいけないはずで,証券保管振替機構さんは毎日それをチェックするようにしておられるわけなんですけれども,普通は合っているはずで,合っていれば合っていることを立証--そういうチェーンになっていて,かつ総額がそれぞれ上と下が合っているということが立証できれば,AはX'''が開設しているX''の口座に入っている甲証券のうちの100は自分のものであるということが立証できるということにはなるのではないかなと思うんですけれども,その点はいかがでしょうか。 ● それで,私は司法手続で移管できますかと聞いたのはそういうことなんですね。ですから,今の例で申しますと,そのうちの100といってもどの100か決定できませんけれども,ファンジブルですので。ただ数量という意味においてはAはそれは言えるはずなんですね。   問題はAがジャンプして,全部日本法の場合に,前後して申しわけありませんけれども,準拠法にかかわらず,今存在する問題を議論しているんですけれども,準拠法の問題にいく前に。   AがX'''のうちの,全部で1,000なら1,000あるうちの100をY'''に移管せよという勝訴判決がもらえるかということなんですね,私がお聞きしたいのは。私の理解を先に申し上げますと,ジャンプしているからだめ。というのは,X'''から言えば,1,000のうちの100がAのものとはわからないわけですよね。わからないという前提でシステムが動いていると言う方が正しいと思うんですけれども。   ですから,私はそれが言えるのはX''だと思うということを申し上げているんですね。それが言えるというのは,X'''分の100であれ1,000であれ,それをY'''に移せという,そういう請求を持って裁判所に行けるのはX''ではないか,日本法のもとでもですね。   じゃあAが何が言えるかというと,あと2つ可能性があるんですけれども,1つは株主権を持っていることのような地位の確認というか,そういうものをX'''の倒産管財人を相手に確認の訴えを起こせるかというところを教えていただきたいんですけれども,確認して何になるのかなと確認の利益がクエスチョンマークなんですね。   じゃあもう1つ,最後は発行会社あてですけれども,発行会社の株主名簿にAでない人が書いてあったとします。Aの前の人が残っているとかですね。じゃあその前にその100の部分についてX'''がつぶれたからもうとにかくあとは自分で権利行使しないと大変だと,いきなり名義書換請求ができるかというと,私はクエスチョンマークで,名義書換請求は下から順番に行けということだと思いますので,やっぱりまずX'''をY'''に置きかえて次に行うことではないかというのが私の理解なんですね。   ただ,これは必ずしもそうでなきゃいけないとは書いていないんです,社振法には。若干の解釈の余地はあるかもしれない。つまりAが全部日本法の場合でもX'''が倒産した場合に,そこのうちの100というのはインフレとかない場合であっても,Aが権利行使するにはどうしたらいいんでしょうかというのが,最初の,ある意味では移管という意味でいえば御質問だったわけですけれども,手続法的に。 ● 確かに,○○委員が言われるように,AとX'''との間には直接のつながりがありませんし,Aが持っている証券を管理しているのはXでしかないので,Aが直接,保振法でもそうですけれども,社債,株式等の振替に関する法律でも,Aが自分の株--株としますと,株式を口座管理機関Yに振り替えろと言うためには,Xに対して振替を請求しなきゃいけないということになっていますので,それをXやX'を飛び越えてX'''に振替請求は,これはできないというか,上だけ変えても下が変わりませんから,下から順にいかなきゃいけないということには,それはそのとおりになるんだと思うんですね。それはおっしゃるとおりだと思いますけれども。ただ,X'''が持っているポーションというんですか,それの例えば1万あるうちの100はおれのものだということ自体は言えるのかなと思っていたんですけれども,それも言えないんですかね。 ● 法的にはそれはそうなんですけれども,そうだというのをだれに対して,いわゆる口座管理機関及び第三者に対しての関係で言えると,条約の部分でいえば,これはしかし準拠法条約を持ち出さない方がいいと思いますけれども,全部日本法の話ですから。日本法上も社振法上の前提ですよね。株式がAに属しているという意味では,株式であれ社債であれ,それはAがおっしゃるように,1,000のうちの100は自分のものだということは,それは正しいと思います。法律論としては全くそのとおりだと思います。でも,それを実現する手続法がないんじゃないかということですね,多少強くいえば。X'''が倒産しているんだから。 ● それでお話が大分わかってきましたけれども,だから日本であろうが外国であろうが,手続法がないから,結局のところ自分の直近上位口座管理機関であるXにしか言えないんだという,そういう整理をされておられるわけですね。 ● 整理というか,整理は2つありまして,1つはそうかどうかをお聞きしたかった。特に執行法というか倒産法の取戻権の,日本でいえば実務との関係で。それから第2点は--ですから,準拠法にかかわりなく今申し上げたように存在する問題があり,それからもう1つは,準拠法が異なることによって生じる問題があるかもしれないわけですよね。それから,準拠法がわからないことによって生じる問題もあるかもしれませんし,この条約で準拠法は明確になるわけですけれども,その結果が,例えば日本,ドイツなどになったときに生じる問題があるかどうかという,だから両面あるということも申し上げたかったんですけれども。 ● そのうちの前者の方なんですけれども,これは私どもも調べてみないと何とも言えないんですけれども,まず取戻権というのは,倒産法上,取戻権という言葉が使われているんですけれども,これは普通の物権的請求権が倒産においても妨げられるものではないということを規定しているだけですから,Aが,株式を物権というのかどうかは別にして,株主というか株式を取得している者に言っていくことができるのは,紙であればその株券を自分によこせという引渡請求権,物権的請求権としてのですね。   ところが,ここではペーパーレスですから,紙はありませんので,自分のものですから,自分のものを振り替えろという請求,これが物権的請求権としておそらくできるのではなかろうかと。それが倒産法上は取戻権という評価になるのではないかなと。もうちょっと調べてみて,あるいは倒産法の先生にも聞いてみて,また次回,もうちょっと正確なことを御報告したいんですけれども,私はそう思っています。   ただ,問題は,休憩前に○○幹事がおっしゃられたように,簡単にそれができるのかどうかというのは,やや手続法的には問題があるのかなと思っていまして,これは取戻請求権と業務の問題の2つの問題があるからだと思っていますけれども,といいますと,まだ民事再生手続ならいいんですけれども,破産手続開始決定を仮に受けたとしますと,破産手続開始後は裁判所の許可がない限り業務を行えないということになっているのですね。振り替えるというのは口座管理機関としての業務なので,だから裁判所の許可がないと振替に応じられないのではないかというところが一つと,取戻権なんだからそれはまた別の問題なんだというふうに整理することもできるかもしれないんですけれども,そこに一つ問題があるのかなと思いながらお話を聞いていました。   それからもう一つは,破産法を超える問題なんですけれども,果たして破産手続開始決定を受けた証券会社が口座管理機関としてその後も業務が続けられるのかという問題があって,もしも続けられないとすれば,破産法を持ち出すまでもなく振替には応じられないということになってしまうんですけれども,そこら辺がどうなっているかというのは,○○幹事,すぐにはわからないですよね。 ● そこまで規定を整理していないですよね,社振法は。口座管理機関がまさに破綻した場合にその口座そのものをどうするか。さっきからずっと調べていたんですけれども,振替機関が破綻すれば業務移転命令というものがあって,まさに口座全体がほかの健全なところに行ってしまう,業務を続けるというふうになっているんですけれども,口座管理機関についてはその規定がないので,口座そのものがどうなるかというのは,すみません,むしろ規定がない。 ● ちょっと私ども○○幹事と御相談しながら調べたいと思うんですけれども,もしかしたら社債振替法の問題ではなくて,現行法で言うと証券取引法,つまり証券会社の業務として口座管理機関になっているんだと。兼業なのかもしれませんけれども,その辺の細かい整理はよくわかりませんが,そうすると証券取引法上,証券会社が破綻した場合にどうするのかというような規律があるとすると,そこで何か処理されるのかなと思うんですけれども,○○委員,金融商品取引法の御専門というか,部会長をされましたので,何か御教授いただければ。 ● 何も知らないんですけれども,例えばしかしアメリカであれば,連邦倒産法の中にブローカー,ディーラーの特別規定がありまして,証券会社がつぶれた場合には,例えば先物等の建玉といっていますけれども,健全な証券会社に全部移管すると。そういう規定があるんですね。ですから,おそらく日本も,この議論というのは,昔,それこそ山一のころに当時の大蔵省と散々議論したんですけれども,証券会社が破綻した場合には,ポジションは全部移しましょうと。そういうのが倒産法の特別規定として,できれば法律上規定を置く方が安定感は増しますね。ただ,その倒産法に特別規定を置くということは,日本は非常に抵抗があるんですね。ここで申し上げる必要はないと思いますけれども。したがって,そういった特別規定はおっしゃるように置かれていないというのが現状だと思います。   ついでによろしいですか。○○幹事が前の方におっしゃった--したがって,今おっしゃったような問題はあるんですけれども,私の理解を申し上げますと,先ほど○○幹事がおっしゃいました,ぜひ調べていただきたいんですけれども,Xがつぶれた場合は,AはXに対してYに移せと言えると思うんですね。管財人相手に訴訟をして。しかし,X'''がつぶれたときに,Aがその管財人を相手にして,X'''の口座の名義をX''から例えばAに変えろというのは,私はちょっとクエスチョンマークです。何者かわからないわけです。   それからもう一つ,X'''を相手としてX''の口座をY'''に移せというのも,Aがやれるというのはちょっと,何か債権者代位権でも積み重ねていけば論理的には可能かもしれないというのは,ちょっとクエスチョンマークなんですね。   ですから,X'''のもとにある顧客口座をY'''に変えろと言えるのは,ここでいう例えばX''とかその下に下がっている人だけではないか。Aがジャンプして言えることはないので,Aが移管を主張できるのは自分の直近のXが倒産した場合だけではないかと,私はそんな気がするので,あわせてもし調べていただければと思います。 ● そこは先ほど申しましたけれども,○○委員のおっしゃるとおりだと思います。Aが振替請求できるのはXだけということは,社債株式振替法にはっきり書いてありますので,Xが保有している,開設しているAの口座の株数を減額主張しないで,上だけ変えることはできませんから,AがXを飛び越して上位の口座管理機関に振替を請求するということは,それはできないと思います。 ● 業法の関係ですけれども,私の理解している限りでは,証券取引法あるいは銀行法の免許取消しとかいろいろな手続がありますが,取消しになった場合でも,例えば新しい取引の注文を受ける,新しい買い注文を受けるということは禁じられていますけれども,お預かりした資産を売ること自体,あるいは持ち続けること自体,これは業務という分類になっていないで,単なる清算手続の活動として許されているという理解なんですね。証取法やなんかは,今回の金融商品取引法については行政の概念が変わりましたから,ちょっと違うかもしれないんですが,少なくとも現行法の証取法とかあるいは銀行法は,業というのは収入を前提にしていますから,多分そのときにはもう手数料はとらないんだろうと思うんですが,お預かりし続ける,取りに来るまでは,それから,売れといえば売る注文は受ける。それから銀行も預金も,それを続けることですね。現在の状態で続けること自体は,一般に業違反ではないという分類であると理解していますけれども。 ● 今のお話のとおりだとすれば,倒産法上も,倒産した後してはいけない業務には当たらないという整理ができて,振り替えろという請求があれば,Xが倒産した場合であればAが振り替えろと言えば,その後,XからYの口座に,もちろんAが持っていなければいけないんですけれども,振り替えることはできそうな。 ● 振替法との組み合わせはちょっとよくわかりません。 ● いろいろな法律が錯綜してきておりますけれども,何か御意見なり今までの。 ● ちょっとよろしいですか。ちょっと話は変わるんですけれども,この2-2の英国の例というのは,CrestからX''',X'',X',X,Aというふうにきれいにつながっている,事実としてそうなっているという前提の図なわけですけれども,実際問題としてAが持っている証券会社Xの開設する口座で持っているAの例えば株式なら株式が,その後どういう経路をたどってCrestまでつながっているのかというのはAにはわからないといいますか,あるいはXにもわからない場合もある。途中から,自分の上はわかりますけれども,わからない場合も実際上はしばしばあるんだろうと思います。   それから,例えばXはここではカストディX'を使って自分の口座を持っているという前提なんですけれども,もしかしたらXは別の外国の口座管理機関ともつながりがあって,例えば甲という--外国なんだから甲はあまり妥当じゃないですかね。PならPという株式をカストディX'を通じても持っているし,別の例えばCというカストディを通じても持っているというと,もうこうなってしまうと,それこそAの分がどっちのポーションに入っているのかすらわからなくなってしまうので,事実の問題としてもAがどういう経路でCrestまでつながっているのかというのは,主張立証ができないということになるだろうと思うんですね。   実は,そういう問題がたしかエクスプラネタリー・レポートにも触れられていたんじゃなかったかと思いますし,ジム・ロジャーズ教授がボストン・ローレビューにお書きになられたものでも,そもそもそういう場合を念頭に置いてこの条約はできたのだと。だからAはXから上がどうなっているかわからないんだから,AとXとの口座管理契約でAの権利は決めてやらないと,上のことを考えていても実務的には立証はしようがないということを前提に,だから上の方の,例えばCrestの準拠法とかで物事を決めないで,投資家とその直近上位の口座管理機関との間の契約準拠法で物事を決めることにしたんだという説明がされていたと思います。   ですから,そういうことを考えると,先ほどの○○委員の御議論ではそういう議論とは全く違う経路といいますか,上から順に見ていかなきゃいけないというお考えで,それ自体私は,個人的には非常にシンパシーを抱くんですけれども,この条約の考え方とは違うのではないかなという気がするんですけれども,そのあたり○○委員あるいは○○幹事に。 ● 今の○○幹事のお話というのは,基本的にはこの条約というのはどういう発想で作られているのか。その発想の前提には,実務的にはAから見た場合に上の方まではたどれないということがあり,それは,そうすると,実務的に,例えばX'''みたいなものが倒産した場合において,そこから下がどうなっているか,あるいはAがX'''までどういう経路になっているかというのは難しいだろうと。それはおっしゃるとおりだと思います。   ただ,○○委員がおっしゃるように,論理的にはAというものが何らかの権利を持っていて,条約上,例えばXとの関係でこの条約における準拠法というのを決め,それが物権的保護を与えるような形のものになっていると。他方で,X''みたいなところがX'''に対して権利を持っていて,そこで何だか知らないけれども,誤ってそのような保護が十分でないような準拠法をしてしまったがために,その間にそごが生じてしまって,X'''が倒産したとき果たしてどうなるかのような話は論理的にはあり得るとは思うんですね。   そのことをどう考えるのかというのをちょっと御説明したいと思うんですけれども,まずこの条約というのは,実質法としていろいろな諸国の法制がさまざまな形でこの間接保有という形態を達成しようとしていると。その中には,我が国あるいは大陸法諸国の一部のように,直接に上とつながっているような形というものを前提に想定しているようなところもあれば,あるいはもう自分の直近のものしか権利はなくて,あとは直近のものの権利の集合体がつながっているだけだと考えているものもあると。要するに,1つの現象を2つの方向から説明できるわけですね。その実質法の内容にはタッチしないという前提でスタートしています。   したがって,例えばX'''に対して,X''が権利を持っていますが,この権利は一面から見ると,X''固有の権利のように見え,他方で,AあるいはAと同じような立場の人たちがざっといるわけですが,その人たちの集合体の権利のように見えて,どちらであるということを確定という問題についてはこの条約は立ち入らないというようなスタンスでいると私は考えています。   そこを前提にX''’の倒産という状況を考えますと,そうしますと,条約上2条1項のaのところで,このAの持っている権利というもの,あるいはX''の持っている権利というものがどのようなものかというのは,準拠法の指定ができるようになっているわけですね。その準拠法の指定の効果として,リーガルネイチャーで決まってくる。つまり物権的保護なのかどうなのか決まってくるというわけです。   そうすると,ここで1つ問題が生じるわけです。つまり,Aが持っている権利の準拠法の合意とX''が持っている準拠法の合意がずれた場合においては,その保護が2つ異なる形で発生してしまうんですね。この間の調整関係をどうするのかという問題について,今,○○委員が御指摘になられたのは,そういうふうに抽象化できると思うんですね。この答えは何かといいますと,答えは,先ほど私が一番最初に申し上げたように,条約はその問題についてはタッチしていないんです。つまり,先ほど前半で申し上げましたけれども,この条約は,できるところは手を打ったができないところは手を打っていなくて,そのできないところの一つは,先ほど言ったような,実質法上異なるような形態の保護のシステムあるいはアーティキュレーションがあり,どちらかに偏らないように作られているものですから,今言ったようなところはネグってあるわけです。ですから,権利自体もだれがだれに対して持っている権利ということではなくて,セキュリティーズという形で抽象化されて,その権利が果たしてどのように確保されるのかという形になっているわけですね。   そうしますと,A自身がX'''に対して,自分の権利を持っているというふうにX'’’が倒産するときに言ってきて,それからX''もやはり言ってきているというようなときに,経済実態からみれば多分同一の者が言ってきて,あとはどちらがいえるのかということが問題が生じるわけですけれども,残念ながら,その問題に関してはこの条約は,そこを改善することの仕組みというのは多分ビルトインされていないと思います。それはなぜかというと,一番最初に申し上げた理由からです。   そうすると,じゃあどうなるかというと,その問題の解決というのは,まさにX'''が倒産した倒産開始地国法がどのように考えているかということで,それは通常,先ほど○○委員がおっしゃられたように,名義人がだれかというところで,つまりX''の方がとりあえず倒産手続に参加してくる資格を与え,そこにまずどういう保護を与えるかというところだけでやっていくというのが通常の形態であって,先ほどの全部日本であった場合どうなりますかという話を聞いていると,私は専門家じゃないのでわかりませんけれども,どうも日本もそれと類似するような法制になっているのではないかと思いました。   今のところが,私が皆さんの議論を理解したところなんですが,すみません,何か間違えているかもしれません。 ● ○○委員,何か。 ● そうだろうと思いますけれども,もう1回だけいいですか。おっしゃるように塊ごとといいますか,直近の人たちとの間だけで考えていくという仕組みだというのはよくわかっているところなので,そのAについてはXとの間で考えればいいというのはおっしゃるとおりだと思います。   ただ,先ほど私の最後の発言のときに申しましたけれども,日本法上,こういう場合にも共有持分権があるという形の実質法の内容の方が問題があり得るのかなと。要するに,どこかでこのような形で上につながっているとき,みんなそのような権利を持っていて,X'''もX''もみんなその現物の場合,わかりやすくいいますと,現物の株式の株券の共有持分権を持っているのであれば,その下にどんどんそれを売っていくというのは構いませんけれども,ある段階の人までは債権的な権利しか持っていないのに,どこかで突然物権を売っているような顔をして業務を行っているとすると,そこは持っていないものを売っている人が途中どこかにいるんじゃないかと。それが日本の証券会社はいつも共有持分権を売っていますという実務だからといって,本当にそうなのかというのを確認できているかどうかは私は疑問で,今でもある話だと思いますけれども,ですからそこに,準拠法の話よりは,実質法の内容じゃないかなと思うんですけれども。 ● ○○幹事は何か。 ● 私は,今,○○幹事がおっしゃられた部分で,1点気になる点があったんですけれども,要はAがX'''のところに行って,私が権利者ですと言い,X''が,X'''のところに行って,ここに書かれているものは自分のものであるというふうな競合になったときに,それを決めるのは倒産法ではないかと。X'''の所在する国の倒産法ではないかという,いずれにしても倒産法の領域で決まるのではないかというふうにおっしゃったんですけれども,これは条約の読み方なのかもしれませんけれども,AがやろうとしていることはX'''が管理するX''名義の口座,そこについては,条約は準拠法のこう書かれているものについて記帳してあることから,アカウントホルダーがどういう権利を持つかということについては,X'''とX''が合意した法律によって決めると書いてあって,それが第三者,それ以外の人との関係でどの程度優先するかとかについても,第三者の関係でどういう効力を持つかということもその法律が決めると書いてありますよね。   そういうふうに考えますと,Aはまさにそこの条約における第三者なので,Aが勝つか,X''が勝つかというのは,その条約のことから言うと,そのX'''とX''の間で合意した法律で決めると。しかしながら,その結果かわいそうなAをX'''の証券会社の破綻法制としてのX'''口座の倒産手続に適用される法律が何らかの別の取扱いをするということはあり得ると思いますけれども,まずX'''が管理するX''名義の口座,そこをめぐって紛争が発生しているという場面について考えるならば,それを決めるのは,だれが権利者であって,その権利者との関係でほかの人はどの程度の取扱いをされるのかというのを決めるのは,そこの口座の契約の準拠法なのかなと思います。   だから説明の仕方の違いなのかもしれません。この条約は,アカウントごとに話をしていますので,おそらく争いになっているアカウントを決めないと話は始まらないように思いまして,そうすると,そのアカウントをめぐる争いの話を倒産手続法によるんだというふうなお話をされたのは,ちょっと違う理解の仕方があるのではないかなというふうな,少数説で私は異端なのかもしれませんが,そんなようなことでお聞きをしました。 ● まず,細かい話ですけれども,多分○○幹事がわかって言っていらっしゃるのはわかるんですけれども,一応誤解されないように。倒産開始地国の法律と言っているので,それが倒産法の中に書かれているか,あるいは物権法の中に書かれているか,あるいは証券取引法の中に書かれているかは,それはその国自体がどういうふうなシステムで扱っているかということだという理解でございますので,倒産法の話だというのは,そういう趣旨ではないというのがまず1点目でございますが,もう一つは,多分,○○幹事の解釈と私の先ほどの解釈の違いのところはどこにあるかと申しますと,アカウントホルダーと確かにインターミディアリーの間で準拠法の合意をしていますと。その準拠法の合意がその人の持っている権利についてその性質を決めますと。じゃあその権利というのは一体どういうものなんですかということについては,各国実質法上,それを直接の一番上の人に向けて持っているような権利というふうに構成しているものもあれば,あるいは直近の上の人のみであって,それ以上は絶対ないというふうに構成しているものもあり,さまざまな形態のものがあるということで,そこについては触れていないんだと私は理解しております。   つまり私の見解と○○幹事の先ほどおっしゃられたところの違いというのは,そうすると,私の立つ立場に限り,条約を批准して,仮にX'''がX''しか相手にしないというような態度をその倒産開始地国からとったとしても,それは条約でそう書いてあるからではなくて,その国が条約のカバレッジ以外のところでどういう政策を持っているかによって,そのような約束がたまたまやられたにすぎないという説明になるわけですけれども,もしも先ほど○○幹事がおっしゃられたアカウントホルダーとインターミディアリーの間で確かに準拠法の合意というものはしますけれども,準拠法の合意イコール,その直前の上の人たちの権利というものも,実質法上それしかないのだというふうにするとするならば,この条約を批准したおかげでX'''は下のX''しか相手にできないということになってしまうんじゃないかという話に私は聞こえたんです。   それは多分そうではなくて,つまりこの状況はあくまで準拠法の合意の構造というのは,自分と自分の直近の上の人との間の合意でやっていきますけれども,その同意によって,リーガルネイションが決まる権利というものが,じゃそれをだれを名宛人にどのような形になっているのかということについてはタッチしないようにしていて,それは一番最初の,先ほど申し上げた各国法制が違っていてそこには触れないという前提で作られている条約であるからこそ,それは当然のことだと私は思っておりますので,先ほどの確かにそのX'''とX''の狭間でAがかわいそうな例が出てくるみたいな話というのは想定される事例としてはあり得るとは思うんですけれども,そのときに仮にX'''というのがX''だけを名宛人として倒産手続を以下進めてしまって,その結果云々かんぬんということが起きるのは,あくまでそれはその倒産開始地国の法律あるいは法政策がそういうシステムをとっているからではないかと思います。   その意味では,先ほどまさに○○委員が,じゃ日本は一体ここをどういうふうに扱っているのでしょうかということをぎりぎりとついてきて,あるいは今度調査をお願いしますというところは,多分,そこのところは日本の法制がどうなっているかというのは,この条約の話とは別にそういう準拠法をやるときに重要だからなんだと思っております。 ● 今,○○幹事はX''がX'''の倒産手続において,X'''に口座を開設してもらって,口座名義人になっているということから,どういうことをX''’の管財人に言えるのかというのは,この条約が定める準拠法ではなくて,倒産開始地国の実質法によって決まるとおっしゃり,他方,○○幹事はこの条約が定めるX''とX'''の間での口座の準拠法で決まるというふうにおっしゃられたというふうに私は理解したんですけれども,○○幹事は,自分の説が少数説のようにおっしゃったんですけれども,私は○○幹事がおっしゃるとおりじゃないかと前から思っていまして,8条を見ますと,8条1項は,2条1項に属する事柄はこの条約で定める準拠法,つまりX''とX'''の間で決める準拠法で決まるということを8条1項は書いていて,そのうちの2条を見ますと,2条1項のdで,X''が持っている権利がプライオリティーを有するかどうかもこれに入っているわけですから,X''がX'''に対する権利を破産管財人といいますか,破産に関与するすべての人たちに主張できるかどうかというのは,X''とX'''の間の準拠法で決まるんじゃないでしょうか。 ● おっしゃるとおりです。 ● そうするとさっきおっしゃったのはどういう趣旨なんですか。 ● AがX''’に対して主張してくると。他方でX''が多分Aもワン・オブ・ゼムであるところの権利というものをX'''に主張してくると。そういう場合に実質としては同じものですよね,主張されている部分については。どちらを権利者として倒産手続を以下進めるかという問題。 ● ちょっとわかりにくかったんですけれども。 ● X'''の倒産手続が始まっているという前提ですね。そこで先ほどからX''というものが,自分自身が,その下にさらにいろいろなものがぶら下がっているわけですけれども,倒産手続に参加してくるというときに,Aが自分自身の権利というものはこの中にあるのだというふうに言ってきて,自分自身も倒産手続に参加させろというように言ってくる場合ですね。その場合に,実務上というか,それから現実に立証ができないからというところで,それがうまくいかないということもあります。それは当然に前提でございますけれども,仮にそういうのが全部証明できたとしても,X'''が倒産手続の中でその倒産手続に参加している権限というものをだれに認めるか,つまりX''に認めるのか,それともA個人の参加を許すかという問題は,X'''の国で倒産手続が進められている以上,その倒産開始国が決める話であって,この条約のカバレッジに入っていないということを申し上げているのです。 ● ○○幹事の御趣旨は,要は,実体的にだれが権利を有するかということを決めるんじゃなくて,要はX'''の倒産開始地国法が,要は実質法上権利を有さない者に手続参加を認めるとしても,それは倒産開始地国の法の話であると。しかしながら,実質的な権利をだれが有するかというのは,X'''とX''との間の法律で決まると。そういうふうな御趣旨ですか。 ● 実質的な権利をだれが有しているかということは,A自身もセキュリティーズのアカウントホルダーですよね。それで何らかの権利を持っているわけですよね。 ● AはX'''に開設された口座においてはアカウントホルダーではないですよね。 ● アカウントホルダーであるかどうかというのは,A自身が持っているセキュリティーズが何らかのいろいろな権利を持っていて,それ自身は実質法の問題ですけれども,それ自身をコントロールする準拠法を決めるために,アカウントホルダーとインターミディアリーというものがここで定義されて置かれているわけですので,この条約がこの2人の間に準拠法の合意を認めているからといって,この2人の間でしか,実質,セキュリティーズ,権利というのはなくて,そこから上には権利がないのだというようなことは一言も言っていないということです。 ● よくわからなかったので。 ● ○○幹事おっしゃっていることは,私が先ほど休み時間に○○幹事にお聞きしたことにお答えいただいたことを御説明いただいたと理解しているんですけれども,おそらく,AとXとの間で準拠法を合意して,それで例えば日本法が指定されて,それは株式で物権的に帰属しているということになったとすれば,その物権的権利は観念的にはX'''に対しても主張できるはずであると。したがって,その権利をX'''に対して主張できる権利を持っているということは,当然その倒産手続に対しても,立証の問題はありますけれども参加できるはずだと。他方で,この条約はステージ・バイ・ステージで見ていきますから,X''とX'''との関係でもまた準拠法が定まっていて,そちらではX'’が例えば債権的権利を持ってきていると。   そうすると,Aさんが持っているX'''に対する物権的権利とX''がX'''に持っている債権的権利,これは条約がステージ・バイ・ステージで見る関係上,必ず両方が生じてくるということは,それは避けられないと。その避けられない事態が起こったときにどうするのかというところまでこの条約は決めているんじゃなくて,そこは倒産開始地国の法律--法律というか国際私法も含めてなんでしょうけれども,そこで解決していくと。そこは条約は触れていないんだという御説明だというふうに理解しているんですけれども,よろしいですよね。 ● ありがとうございます。私はそういうふうに説明したい。 ● もしそうだとすると,私,先ほど申し上げたように,今の解釈は私の理解するところとは違うということですね。先ほど申し上げたように,要は,AはX'''との関係ではアカウントホルダーではないわけですよね。そうすると,AがX'''に何かを直接言いにいこうとすれば,アカウントホルダーではないというステータスで,X'''に開設されたX''のアカウントに対して,証明された権利にこれが自分のものだと言いにいかざるを得ないとしますと,Aは自分がXとの間で何らかの権利を持っているというふうなことは直接X'''に言おうとしても,X'''とX''の間の準拠法がX''がそこに記帳された数字について,どういう権利をアカウントホルダーが持つかということを決めると書いてあるんですから,そういった主張はなかなか難しいのではないかと思います。   ただ,1点だけ留保しますと,その手続の中で,Aがそこの口座に記帳された権利を理由に,みずからがそういった行使をできるということではなくて,別の何らかの権利,これは口座に記帳された権利に関しての条約ですから,そうじゃない権利を根拠に,みずからが手続に参加できるとか,みずからが何かの権利を受けるべきであるとか,お金を受けるべきであるとか,そういうふうな主張をするのであれば,それはまた別途,別に決まる準拠法で処理をするという余地はあると思いますけれども,少なくともそのX'''に開設されたX''名義の,X''がアカウントホルダーである口座について,だれが優先権を有するのかというふうなことを決めるためのまさに条約だと思いますので,○○幹事がおっしゃったように,Aがその下にこういう人がついて,そこは別な準拠法を選択したからそれを上の口座管理機関との関係でも引き継いでいるというのは,少なくとも私の理解する限りちょっと違うのではないかと思います。ただ,私自身もよく考えてみたいと思います。 ● さっき○○関係官の整理を○○幹事はそのとおりだとおっしゃったんですけれども,何かちょっと違うのかなと思ったのは,この図を前提にすると,さっき○○幹事自身がおっしゃったんですけれども,X''が持っている権利があるのかどうかわかりませんけれども,何らかのものというのは,Aも含む,Aが例えば100あってX''が1,000持っていると,この1,000と100が相矛盾するんだとすれば,これはこういう図にはならないはずなんですよね。   だから,さっき○○幹事がおっしゃられたのは,X'''の倒産手続に1,000の証券を直接口座に持っているX''が参加するのか,それともその1,000のうちの100を持っているAが参加するのか,あるいは両方が参加してどっちかが優先的に参加することになるのかという,そういう問題はこの条約の定めるところでないとおっしゃっているだけで,AとX''の権利関係が相矛盾するという事例を想定しておっしゃっているわけじゃないですよね。 ● X''とX'''はアカウントホルダーとインターミディアリーですので,準拠法の合意ができますよね。それをα法にしたとしますよね。AがXとの間でβ法を準拠法にしますよね。しかし,A自身はセキュリティーを持っているので,セキュリティーの権利だと称してX'''の方に,そこに少なくとも自分のものがあるはずだ,今まさに○○幹事がおっしゃられた,というときに,そのAから主張するとβ法の保護だというふうに言い,しかしX''はα法で合意しているので,α法上の保護なのか,2条1項のaとの関係ですけれども,β法上の保護なのかということが,経済実態としては重なり合っている。あるいはもしかしたら一番簡単にするには,A,X,X',X''と全部100しかなくて,全員がAだけのために動いているというふうにすればもっと簡単ですけれども,そういう局面のときにはどちらになるのかという問題は発生しますよね。   この問題はなぜ発生するのかというと,前に申し上げたように,その実質法上いろいろなシステムがあり得るんだけれども,そのシステムのところにはタッチしないという前提でこの条約がつくられてしまったがために,ある国の法制から見れば,X''だけがエクスクルーシブに権利を持っていて,その下は切れたものしかないというようなふうにも見えるし,他方,ある国から見れば,A自身がX'''に直接の権利あるいはその上に直接の権利を持っているというふうに見えるし,そのどちらかについて,そこはあいまいにした--あいまいというか,そこについては踏み込まない上でやってしまったがためにそういう現象が発生してしまうわけです。   その発生したことについて,じゃX''’の倒産国がX''が持っているα法上の保護というものを与えるべきなのか,それともAが持っているいわゆるインターミディアリーとこうしたβ法上の保護を与えるべきなのかということについては,そういう事態が発生した場合にはこの条約は厳密にはその問題にはタッチできていないのではないかということを申し上げたんです。それは○○関係官がおっしゃられたことと全く私は同じだと理解しています。 ● 何か違っているような,違っていないようなふうに私は思ったんですけれども,まず,私はこの,○○幹事はちょっと難しいことおっしゃったように思うんですけれども,つまり倒産手続があろうがなかろうが同じ問題はあると思うんですね。どういうことかというと,○○幹事の例で,X'''に1,000あるとして, そのうちの100は実はAまで下りているというときに,その100についてAがX'''に権利主張できるのか,あるいはするのか,X''も権利を主張してきて,1,000についてどっちが勝つかという話。これは倒産手続の内外を問わず存在していると思うんですね,この問題は。答えはもちろん自明ではありません。両方主張できるけれども,重畳的に両方満足はできませんけれども,早い者勝ちだというルールもあり得るし,その場合はAの方が勝つんだというルールもあり得るし,X''だけが権利行使できるんですというルールもあり得ると思うんですね。   これは何法で決まるんですかというと,このヘーグの準拠法だけではないと私は思っているんですけれども,これが倒産の局面になった場合には倒産の法適用でさらに変化する可能性があるので,その意味では私は,○○幹事おっしゃったとおりだと思うんですけれども,そこまでいけば。その前に問題として議論すべきは,X''の権利とA,同じ証券について,日本人的にいえば,X''とAがどちらもX'''に権利行使したときどっちが勝つんですかという話だと思うんです。   ○○幹事がおっしゃっているのは,その話というのは,やっぱり準拠法で答えが出るところがあると。強く読めばX''の方が勝つ場合は,Aはもういけないんだと読める場合があるのではないかということを○○幹事はおっしゃっていたと思うんですね。私はそれは自明ではない。Aの方が実は勝つかもしれない。なぜならこの条約は,Aはだれに対してでも自分に100は帰属していますということを主張できる--そう決まればですね,例えば日本法で--はずなんです。   ただ,私はこれを抽象的に言いますというのは意味がないなと思ったのは,先ほど申しましたように,X'''に対するどういう請求を問題にしているのか。X'''に記載している100というものをY'''に移せという形で倒産管財人を相手に訴訟しているとしますと,少なくとも日本法の場合には,ですからそういう意味では適用法のもとで違うかもしれませんけれども,少なくとも日本法の問題では,それはX''から振替の申請をしてくれない限りは,Aから振替の申請というか,そういう請求があっても勝訴判決は出さないのではないか。他方,Aが100持っていますという確認の訴えでも起こすとすれば,抽象観念的にはAは権利があるんですけれども,X''から振替の申請がない限り振替しない以上は,そういう確認の訴えというのは多分訴えの利益がないことになるのではないか。もう一歩進んで,AからX'''の100をY'''に移せという,そういう振替を命じる裁判というか,これはおそらく認められないので請求棄却になるのではないかということを申し上げていて,その理由は,日本法のもとでは,要するに振替制度というのは直近の--直近というか下の人からの振替申請だけで動かしている制度ですので,もしAがそれで勝訴判決をとろうと思ったら,X''から振替申請せよという,X''も名宛人にして訴訟を起こさなければいけない。ただ,それもできない,ジャンプしていますから。下から順番にいかなければいけないというふうに日本の制度は作られているのではないかと申し上げています。   ただ,これは何法かによってその制度の作りによりますし,そこの部分が2条1項で全部カバーされているかというと,私はちょっとクエスチョンマークなんですね。その振替申請はだれが出せるかということは,私は2条1項の範囲ではないと思いますので,したがって,結論としては,そういう意味では,私は○○幹事も○○幹事も正しいところをおっしゃっていると思ったんですけれども, ● 今の○○委員がまとめてくださったと思うんですが,何か御意見なりございますか。 ● 日本法の話で,○○委員がおっしゃられたことで,X''が振替の請求をX'''にして振り替えるんだというふうにおっしゃったんですけれども,これはX'’の自己口座であればおっしゃるとおりだと思うんですけれども,日本は自己口座と顧客口座とを分けていますのでX''がX'''に持っている口座というのが,自己口座と顧客口座に分かれるわけですけれども,顧客口座の方だとすると,X''は自分で勝手に振替の申請はできないので,下から振替の通知がきて,その通知をさらに通知するという形になっていますから,結局はAが最初に言い出しっぺというか,その振替の申請をして,そしてそれをXがX'に取り次ぎ,X'がX''に取り次いで初めてX''も振替の通知ができると。だからX''が独立して振替ができるということではないと思います。 ● おっしゃるとおりですね。ですから,それは倒産になったらどういうふうに主張するのですか。 ● まず,Aが振替の申請をXにするんじゃないんでしょうか。それでXから上に順に上げていって。 ● 最後にX'''で倒産管財人がノーと言ったら,Aはだれに対してどういう訴訟を起こすんですか。 ● それは振替の請求にしたがって通知をX''までしていますので,それに応ずる義務がX'''はあるにもかかわらず,X'''の管財人がそれに応じないわけですので,振替がさらに振替機関に振替の通知をしなければいけないということになっていますから,その通知をせよという請求はX''もできるかもしれませんけれども,Aもできるんじゃないんでしょうか。 ● それもそうかもしれませんよね。そこはAも原告適格があるんですかね,そういう請求するのに。そこだと思うんですけれどもね。 ● 条約の条文に照らして,今の,理解が違っているかもしれないので確認したいんですが,2条1項のaと2条1項のdなんですけれども,簡単な方から,dの方ですが,今のお話はX'''の口座とその口座管理機関によってと書いてある,そこはX'''だとしますと,X'''によって保管された証券に関する権利が,他の者の利益に対して優先するかという,この他の者というのが,X''から見ればAだということですかね,X''から見てAだと。   他方,2条1項aを見ますと,証券口座への証券の増額記録と,これをXの口座だとしますと,そこに記録されているAの権利が第三者に対してどういう効果を持つかも決めますと書いてあるんですが,ここの第三者をX'''だとしますと,条文自体で矛盾することが起きるようになっているのかなと思うんですが,そういう理解でよろしいでしょうか。 ● これは○○幹事がおっしゃったように,ですから,Aも第三者に対して権利を持つし,あるいはそしてX''も場合によっては別の準拠法であって,日本の場合にはX''は権利はないんですね。中間ですけれども,全部日本法だとしますと。 ● 先ほどの条文上2つ出てくると。 ● 出てくる場合も調整はしていない。○○幹事が繰り返しおっしゃっているのはそういうことです。それはこの条約の中では答えは出なくて,あえていえば,37ページ問題と同じように,それが同一の証券だということが立証された場合には,条文からは触れていませんけれども,ロジカルにどっちが勝つかというふうにしなければいけないのかもしれないですね。同じものを2人に譲渡するという結論になりますので。37ページ問題は譲渡があったときに1つの譲渡について2つの準拠法はおかしいという議論だったんですけれども,同じ証券で。この場合は譲渡はないんですけれども,同じ100なら100の証券の帰属について2つの準拠法が生じているわけですよね。その結果両方が勝つというか,両方に帰属するという結論が出てき得るわけですので,そこは37ページ問題と同じような問題があるのかなということはあるとは思いますね。ただ,調整していないことはたしかだと思います。 ● そうすると,○○幹事は,このdの方を強く読んでいらっしゃることになるんでしょうか。 ● 私が申し上げているのは,どちらが勝つかという比較を非常に抽象的なレベルでしてもしようがないんじゃないかと。X'''が倒産した局面でX'''の破産手続の中で問題となっているのは,当然X'''が管理する口座に記帳された権利で,その権利との関係ではAとX''とどちらの権利が優先するかというのは,まさにd項のカバレッジなのではないかなと。   XとAの間の,もしこれがXに管理されている口座についてAと例えばほかの人が争ったと。あるいはXに記載されたAの権利などはあまり重要な権利ではないんだと,お前の権利は劣後するんだというふうな形で,XA間の権利の性質について争ったというのであればそれはまた別だと思うんですけれども,今設定となっているような局面で直接問題になるのはd項であって,a項の出てくる範囲ではないのかなと。この問題となっているシチュエーションにおいて争いの対象となっている権利は,口座管理機関であるX'''によって保有される証券に関する利益で,それをめぐって争いになっている限りにおいては,AとX''の優先関係というのはX''が決めるし,X'''の倒産手続でおそらく問題になるのはそうではないかなと。   だからほかの争い方をするんだったらまた別の準拠法の立て方があるかもしれませんがというふうに申し上げたのはそうですが,なかなかそれは考えにくいのではないかということで,私はAが必ず負けると言っているわけではなくて,優先順位を決めるのはこちらの法律ではないかというのは,そういう趣旨で申し上げております。だからターゲットになっている権利が何かというのを決めるのが決まらないと,なかなか争いにくいのではないでしょうかということです。 ● 今の延長で,私もう大体○○幹事がさっきからおっしゃっているようなことはそれで正しいと思うんですね。ただ,X''の方が勝つとなると条約からは出てこないと思うんですけれども。 ● それはおっしゃるとおりです。 ● X'''の100を移すというときに,さっき○○幹事も正確に言ってくださったように,これを移せという訴訟を起こしたとしますよね,取戻権を主張して。その場合にはX''が訴訟を起こす形に形式的にはなるかもしれませんけれども,そこは私はわからないので教えていただきたいんですけれども,ただX''だけでは顧客口座は動かせないんですね,○○幹事がおっしゃったように。だから,下から全部請求が上がって通知がこなければいけないので,AからX,XからX',X'からX''へとここまで来ておりますと。そこで初めてX''はそれをベースにX'''に100移せと。管財人がノーと言ったら,それは取戻権なのであなたの権利じゃありませんと,この100については。そういうことになると思うんですね。   ですけれども,ということは,言葉を変えてみると,Aが直接X'''を訴えて,今の下からのルートをとらずに直接移せと言ったって,これは負けると思うんです。しかし,もし一番下のAは日本法で,X'''とX''の間はアメリカ法だとします。そうすると,アメリカ法ですと,X''はX'''に対して,100なり1,000なり権利があるんですね。したがって,固有の権利として,X''はX'''に対して100移せということが言えるはずなんです。X'''がつぶれている場合には。もしそういう法制のもとで,X'''の倒産手続が始まって,そういう法制というかそういう関係のもとで,X''がアメリカ法を主張して言ってきたら,それはX''が勝たないと困るんですよね。そのときにAに何ができるかという話ですと,Aは日本法だと。だから日本法の方から積み上がっていって,XとかX'とかX''を通じて初めて言えるというところは動かないわけなので。   ですから,今の例から言うと,答えは,条約から直接出てくるんじゃないけれども,○○幹事がおっしゃったのに一致するんですよね,今の例で言うと。結果的にX''の権利は認められて,Aの権利というのはいわば消えてしまうという。ただ,X'''が倒産したけれどももしそのアメリカ法のX''が権利行使しなかったとします。その場合にAが権利行使したいなと思ったら,それはやっぱり日本法なんですけれども,Aの実質法上の権利は日本法なんですけれども,ただ,繰り返しになりますけれども,直接ジャンプしていくわけにはいきませんので,その場合にはたどって権利主張をせざるを得ないのではないかという,そういうことなんですけれども。 ● 実務的にそれをどこまで,この議論が果たして意味があるかと思われると思いますが,ただ,条約の理解としては重要なポイントだと思うのであれなんですが,要するに最初の2条1項のaとかを入れるというところは,倒産という局面を想定してやっているわけですね。条約の作成過程では基本的な問題と応用的な問題があって,最初の一番最初にBernasconiが用意したペーパーの中にも37ページ問題に代表されるような注で書かれている問題とか,それから飛び越えてアタッチするような場合どうするかみたいな話とか幾つかあったんですが,そういう問題はあるにはあるにしても,とりあえず一つ一つ片付けていくという基本的なところでは,2条1項のaが想定している場合というのは,例えばAがXの倒産のときに,そのXの倒産の中で権利が保護されないと困りますので,そうするとAは準拠法の合意などをして,その合意した準拠法というのが倒産の状況においても自己をちゃんと保護してくれるような法をちゃんと選べば,そうしたらば自分は少なくとも取戻権のようなものが与えられると。それはXとX'の間で何かそういうことが起きるかもしれませんけれども,それも同様であるという,そういう発想で,A自身がX'''にまでいくということをまず一番最初の段階から想定して作っていないわけですね。   そのときに,しかし応用問題として確かにX''’の口座をめぐってX''とAの二人が登場するというような問題はあって,そこのところについては,確かに○○幹事がおっしゃるように,本当は最終的な会議があった方が望ましいことですし,解釈論としてdのところを,先ほど○○委員から御指摘のあるとおり,強く読んで,それについては最終的にはX''の方が条約の実体法の記述として解決を与えているのだというのも不可能ではないと思いますけれども,ただ,私の理解としては,aとdというのは2つ存在していて,それらはそれぞれにちゃんとみずからの領分を主張していて,その結果として,X''がα法でAがβ法だった場合において,もちろん通常の場合には,先ほど○○委員がおっしゃられたように,両者が共同して自分たちの権利を保全しようとするわけですけれども,それが何らかの形で1つの権利をめぐって,1つの口座をめぐって争いになっているような局面において,両者を調整する関係というのはこの条約を作っている課程では埋め込んでいないというのが私の理解で,それは先ほど言ったように応用問題であって,時間の問題もありますので,それが理由の一つですし,それから条約の作成過程において,各国の実質法がさまざまな形で異なっているということ自体が,必ずしもすべての当事者において認識されているわけではなかったので,このような状況からこういうシチュエーションが生じるということが,すべての参加者において共有された問題を議論できるような段階に至ることまではなかなか難しかったというのがもう一つです。   それから,先ほどから御指摘のあった手続的にはそういったシチュエーションというのは通常Aの側からのX'''のところまでの自分の権利を証明して請求できるということは難しいでしょうが,そういうシチュエーションが果たしてどこまで起こり得るのかというところで問題になるので,実質的にはあまり議論がなされていないところだと思います。   だからd自身を強く読んで,そういうふうな規律をX''とX'''の間の準拠法でさらに決めることができるのだというのは解釈としてあると思うんですが,条約それ自体としてはそこまで考えて作っていないのではないかというのが私の理解です。   ただ,先ほど○○委員がおっしゃられたように,だからといってすごく困ることがいっぱい起きるのかというと,それはそうは私は思っていなくて,この条約を理解するために重要だと思うから,先ほども説明はしておりますけれども,現実にはAとX''というのが共同して,X''’にある口座というものの自己の証券を保全していこうということは当然起こると思いますけれども,両者が相対立して,しかも主張立証まですべて両者きれいにできて,きれいに対立するという事態は実際には起こらないんじゃないかと思っています。 ● ○○幹事は,このX''とAとの関係を2条1項dのプライオリティーだというふうにお考えになるみたいなんですけれども,しかし,この図のとおりの事実関係だとすれば,X''とAとの関係というのは,集合の大きな塊の中の一部でしかないので,AとX''との間はどんな法律がそれぞれ適用されるにせよ,1つのものを取り合う関係にはないはずなんですよね。だから,もしもそれが取り合う関係なのだとすれば,この図にはならないはずだと思うんです。   そうだとすると,○○幹事がおっしゃったように考えるのがいいのかなと思いまして,つまり,X''とAとは別にどっちが優先するとかそういう関係じゃないんですけれども,倒産になったときにX''がまとめて手続に参加してお金をもらってAに分配するという関係になるのか,それともAが直接倒産手続に参加できるかという問題にすぎないんじゃないでしょうか。そうだとすれば,この条約が定めているところじゃないという○○幹事のおっしゃるとおりなのかなと。さっき○○幹事がおっしゃっている趣旨がよく理解できていなかったので,違うように申しましたけれども,結局そうなのかなというふうに考えを改めたんですけれども,○○幹事,いかがでしょう。 ● あまり私だけがこだわってもしようがないですし,かなり細かい問題ですので,あまり口頭でやるよりも,本来であれば論文か何かで論じるべき話なのかもしれませんが,間につながっているというのも,これも本来であれば法律が決める話で,この図をぱっと見たときに,実際上,問題が発生しないではないかというのは,まさにそのとおりなんですけれども,じゃあ確かに準拠法が,今おっしゃられたように,X'''とX''の関係ではなくて,Aという人が来たときに,この人は同一の人なんだから,本来X'''とX''の口座の準拠法じゃなくて,別の法律でどちらが権利行使をできるのか決めましょうというのを,そうしますと,本当につながっているかどうかを全部段階を遡って,それもまた全部異なる準拠法を当てはめて点検した上じゃないと決まらないというようなことを本当に考えていたんだとすると,少し--だから考えていなかったとおっしゃるのかもしれませんが,ちょっとどうなのかなと。そういった部分はどうなのかなと思います。   あと,実は私の個人の考えとしては,今の問題というのは実はちょっと根が深い問題で,これは同じ階層の流れの中に含まれていますけれども,競合した場合にどうかと。単純なAがまさにストリームにつながっている場合じゃなくて,Aが本当に競合する権利者だったような場合はどうかというようなときにも,相通ずるAは自分の口座管理機関との関係ではこの準拠法を主張し,ほかの人はこの準拠法を主張するということで,異なる準拠法をベースに自己の権利を主張するというようなケースは出てくるのかなと思いまして,必ずしもおっしゃるようにも簡単にいかないのではないかと思いますし,一応条約上の手当がついているのかなという気はいたしますけれども,次回までに私もよく考えたいと思います。 ● 実際の裁判においては,この図のような事実関係であるかということ自体からまず問題になるはずなので,そこは○○幹事のおっしゃるとおりだと思うんです。ただ,AがX'''に何らかの権利を主張しようと思うと,X'''から自分まで真っすぐつながっているということを主張立証し終えないとそこまでいかないので,それができて初めて,X''の下にAはつながっていることが主張できて,そして,そうなった段階で初めてAとX''のどっちがX'''の手続に参加できるかという問題になるはずなんですね。そう考えれば,○○幹事がおっしゃるとおりなのかなと思うんですけれども。   ただ,そこは立証できないんだとすれば,もうそういう問題にならないので,どういうふうにお互いが,縦の関係なのか相対立する別のものなのか,あるいは全く別の,全然関係ないのか,そこが決まらないと,まず事実が決まらないとどうしようもないのではないかと思うんですけれども。それで事実が決まった段階で,それが相対立するようになったときに2条1項dで,それぞれAの権利がどこまで優先するのかはAとXの準拠法が決めて,X''がこういう縦の関係じゃないとしてですよ,対立する関係だとしたときに,X''の権利というのがどれぐらいの優先的な権利なのかはX''とX'''の準拠法で決まって,どっちが優先するのかは,37ページ問題であれば増額記帳を後で受けた方を優先的に考えると,そういうことですよね。 ● ここのシチュエーションで増額記帳。 ● ここのシチュエーションでは増額記帳がないからそういう問題は起きないということを申し上げているんです。 ● 私も文言に即してだから,同じことを繰り返してもしようがないと思いますけれども,申し上げますと,2条1項のdとかeもそうなんですけれども,○○幹事がおっしゃるとおりなんですね。ですから,例えばちょっと例を多少ずらしますけれども,Y'''がeで何らかの,e項というのがあるんですけれども,何か言われたときに義務を負うかどうかというのは物権的な権利の得喪との関係ですけれども,Y'''がY''との間で決めた法なんですよね。その意味ではY''の方が勝つという,表現はよくないんですけれども,決まるんですね。   ただ,ここで問題になっているのはAもぶら下がっていたらどうしようかと,○○幹事もさっきおっしゃいましたけれども,そういういわば37ページ問題的なものですから,それでインフレがない例なものですから,記帳が重なっていると言ったって含まれている例ですから,厳密にいえば,そこは答えていないとおそらく解する方が正しいのではないかと思うものですから,その後何法ですかというのは,倒産法内外両方あり得るんだとは思いますけれども,そういうふうに整理されるんじゃないかと思います。すみません,まとめになっていませんが。 ● 随分御議論いただきまして,今問題の所在が徐々に明らかになってきたと思うんですが,ちょっと倒産法上の問題なんかを少しお調べになるということなので,次回この続きをもう少しいたしまして,その次の段階に移りたいと思います。大変長々とやっておりますけれども,そんなに慌てなくてもよろしゅうございますね。EUの方向なんかもちょっと見定めますと。   ということで,今日は本当に大変熱心な御議論をいただきまして,まことにありがとうございました。それでは次回について。 ● 今日も本当に熱心な御議論をいただいてありがとうございました。ここ数回,随分議論が深まったのかなという気もしておりまして,ただ,深まった議論が次回になると忘れるというのも問題なんですけれども。   それでは,次回の予定を申し上げます。次回以降もアメリカ,スイス,EUの動向を見ながら会議を開いていくことになるわけですけれども,次回ですが,少し先になりますけれども,来年の,年明けた話を申し上げて 鬼が笑うかもしれませんけれども,1月30日の火曜日の午後1時30分から。場所はこことは違いまして,同じ20階なんですけれども,同じエレベーターに乗っていただくんですが,おりて反対側の方に行く最高検察庁の会議室,ちょうどこの部屋と斜め反対側,エレベーター挟んで斜め反対側の方でございます。そこで開催させていただきますのでよろしくお願いします。もう1回申しますと,1月30日火曜日の午後1時半から最高検察庁の会議室でございます。   どうも本日はありがとうございました。 ● それでは,これで散会といたします。   どうもありがとうございました。 ―了―