法制審議会電子債権法部会 第11回会議 議事録 第1 日 時  平成18年10月31日(火)   自 午後1時00分                          至 午後6時40分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  電子債権制度の整備について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● それでは,時間になりましたので,法制審議会電子債権法部会の第11回会議を開催いたします。  まず事務当局に配布資料の説明をしていただきます。 ● 今回の配布資料は,事前送付させていただきました部会資料13の電子登録債権法制の私法的側面に関する要綱案(第1次案の上),1つだけでございます。前回部会が終わります時には,要綱案の全体をお示ししたいと申し上げていたんですけれども,ごらんのとおり,前半だけでこれだけのページ数になってしまいまして,全部ですとこの倍ということになるものですから,とても今日1回でやっていただくのは無理だろうと思いまして,前半部分だけをお示しすることにさせていただいた次第でございます。  以上です。 ● それでは,本日の審議に入りたいと存じます。  本日は,この部会資料13の「電子登録債権法制の私法的側面に関する要綱案(第1次案の上)」に基づきまして議論をしていただきたいと思います。この1次案は,今,事務当局から説明がございましたように前半部分だけでありますが,それでも20ページを超える分量がございますし,御議論をいただく必要がある論点の数も相当数に及んでおります。したがいまして,今回も終了予定時刻を超えて御議論いただくことになる可能性が高いかと思いますが,当部会が要綱案を取りまとめるまでに残された期間等を考えますと,本日は,この要綱案の第1次案の上の全部について一通り御議論をしていただく必要がございますので,どうぞよろしくお願いいたします。  なお,いつものように審議の途中で区切りのよいところで休憩をとりたいと思います。また,時間が5時をこえて,まだ審議が必要ならば,もう一度休憩をとりたいと思います。時間延長になる可能性が高いとは思いますけれども,できるだけ効率的に審議を進めたいと思っておりますので,どうぞ御協力のほどよろしくお願いいたします。  審議の進め方でありますが,原則として,このペーパーの順番に議論を進めていきたいと思いますけれども,この第2の電子登録債権の発生と第5の電子登録債権の譲渡は,論点の中に相互に関連するものが幾つかございますところから,続けて御審議をいただくことにしたいと考えております。  それでは,まず部会資料13の「第1 総則」の部分で新しく設けた項目,これまでの案から変更を加えた点,あるいは特に議論をしていただきたい論点などについて,事務当局に説明をお願いいたします。 ● それでは説明させていただきます。  この要綱案は,基本的には中間試案に沿って作っているわけでございますけれども,要綱の案ということで,少し書き方を変えた部分が相当数ございます。ただ,このうち実質を変えた部分としては,案を絞った部分がございますのと,新たな項目を書き加えたもの,少し中身を変えたものが幾つかございますけれども,そういうものについては基本的には注を付させていただいておりますので,何も書いていない項目については実質を変えたわけではないとお考えいただければと思います。もっとも担当者としてはそういうつもりなんですけれども,書き方を変えたことによって実質が変わってしまっている部分がもしかしたらあるのかもしれませんので,もしもそういう点があれば御指摘をいただければと思います。  それでは,第1の「総則」から説明をさせていただきます。  まず「1 電子登録債権等の定義」でございますが,(1)のところに注を付しておりますように,中間試案では電子登録債権の概念という表題のもとに,登録をしなければ譲渡の効力は生じないこと,それから電子登録債権は指名債権とも手形債権とも異なる新しい類型の債権であることなどを書いていたんですけれども,今回は少し条文風に定義という形にさせていただきました。その関係で,譲渡による債権移転の要件は,別に第5の1に書いておりますので,それとの重複を避けるために,定義としては登録が発生の要件であるということのみを掲げることといたしております。指名債権とも手形債権とも違うわけですけれども,それはこの要綱の全体を見れば当然わかるだろうということで何も書いていないということでございます。  それから,ちょっと訂正をお願いしたいんですけれども,(2)の一番最後の行ですが,「管理機関(仮称)が調整する」の「整」の字が間違っておりますので,「製」に直していただければと思います。  それ以外には,1のところは特に申し上げることはありませんで,2でございますが,2も基本的には中間試案と同じでして,ちょっと細かく丁寧に書いているというところが違うだけでございます。具体的には,(4),(5)といったあたりを不動産登記法に倣って要綱の中に盛り込んだということでございます。  (4)の「同一の電子登録債権に関し同時に2以上の登録の請求があった場合」というのはどういう場合かということですけれども,これは,債権者がAというふうに登録されていて,AのBに対する譲渡登録と,AのCに対する譲渡登録という相矛盾するものが同時に行われたという場合です。そんなことはまずあり得ないと思うんですけれども,そういう場合についてのことを書いているのが(4)ということでございます。  ちなみに,その次の3の(1)に書いていますように,登録の請求は,登録権利者と登録義務者の双方でするということになっていますので,ただ,同時に共同してしなければいけないとするかどうかは業務規程に委ねるということで規制していませんから,どちらかが先に請求をし,もう片方は後から請求するということがあり得るわけですけれども,その場合は,後からされた方の請求があって初めて請求がされたということになるという前提で,この「2以上の登録の請求があった」という表現を使っているということでございます。  それから,説明を飛ばしてしまいましたけれども,2ページの(2)の注1のところに,従前「申請」という用語を使っておりましたのを,民間企業が管理機関になることから「請求」という用語を使うことにしたということを書いてございます。意味は変わらないんですけれども,国とか,あるいは民間企業でも,国の行うべき業務を代わりにやるという場合は「申請」という言葉になるようですけれども,管理機関の業務は本来国の業務ではないという前提で物事を考えていますので,差し当たり「請求」という言葉にしてみました。ただ,ここは条文をつくる際に,また「申請」に戻るかもしれないということを留保させていただきたいと思います。  それから,次の3の登録の請求の(1)でございますが,先ほど申しましたように,登録権利者と登録義務者の双方が申請しなければならないという考え方をとっています。すなわち,注に書いておりますように,B-2案は採用しないということを意味しているわけでございます。これは,これまでの御審議の大勢に従ったものでございます。  ちなみに,「この要綱又は法令に別段の定めがある場合を除き」と書いていますが,この要綱に別段の定めがある場合としては,今回の上の部分で言いますと15ページの分割登録の請求がございます。これは,分割登録の請求は,登録されている債権者が単独でできるということを書いてございますので,これが例外ということになります。あと,下の方にいきますと支払等登録の請求は債権者が単独でできるというのが中間試案でも出ていたと思いますけれども,それはそのまま維持する予定ですので,この例外になるということでございます。  それから,この3の(1)の関係では,後半部分に,「これらの者の相続人その他の一般承継人がしなければならない」という場合を書いていますけれども,これは,いわゆる中間省略による譲渡登録等もすることができるということを意味しているわけでございます。なお,B-2案は採用しないという考え方をお示ししているわけですが,では,残りの今までA-1案からB-1案まで,それと前回新しくお示しした考え方のどれになるのかということなんですけれども,その関係で,注の後半部分,2ページの終わりから3ページにかけて,裁判になった場合の電子登録債権の発生の請求原因事実が何かという問題を御議論いただきたいということを書いてございます。ここでは,請求の外の別の合意というものは必要なくて,双方が請求したこと,それだけを主張・立証すれば請求原因事実としては十分であるという理解でよろしいかということを書かせていただいております。  それをより一層分かりやすくするために,発生登録の方へちょっと飛ばさせていただきますけれども,8ページでございますが,2の発生登録手続の「(1) 発生登録の請求」の「a.必要的請求事項」の①で,中間試案では債権額だけ書いていたんですけれども,「債務者が一定の金額を支払う旨」ということで,支払うという意思表示をしているんだという形にさせていただいております。それもあって,請求原因事実としては,そういう登録の請求をしたことだけでいいのではなかろうかと思っておりますけれども,それでよろしいかどうかを確認させていただきたいということでございます。  それから,3ページの(3)でまた誤記がございまして,⑤の括弧内でございますが,「登記権利者」「登記義務者」と書いてありますけれども,全部「登録権利者」「登録義務者」の誤記でございます。「登記名義人」も「登録名義人」の誤記でございますので,訂正をお願いいたします。  ここの部分は,中間試案では発生登録,譲渡登録等のそれぞれの登録のところに必要的な申請事項という形で書いていたものでございますが,どの登録の請求をする場合にも共通して提供しなければいけない情報については,総則でまとめて抜き書きをしたということでございます。あわせて,中間試案では①と②しか書いていなかったんですけれども,③以下を不動産登記に倣いましてつけ加えたということでございます。  それから,⑥でございますが,今までは業務規程で定める情報というふうに書いていたんですけれども,まだ条文の審査を受ける段階にはなっていないんですけれども,いろいろ検索してみましたところ,業務規程で定める情報というのを正面から書いているものがほとんどない。1つだけあったんですけれども,ほとんどないものですから,どうなっているのかなと思って調べましたら,大体政令で定める情報と書いてあって,政令を見ると業務規程で定める情報と書いてあるというのが普通のパターンでございますので,おそらく政令になるんじゃないかと思うんですけれども,まだ審査を受けていないものですから,政省令ということでどっちになるかわかりませんということを示しておるわけでございます。  次でございますが,飛びますけれども,4ページの(5)でございます。意思の不存在・意思表示の瑕疵と第三者保護というところですけれども,ここは,これまでの中間試案と同様に,強迫の部分はブラケットにさせていただいていますので,御議論をいただきたいと思います。  それから,前は「登録に係る意思表示」という言葉にしていたんですけれども,「登録の請求」という言葉にしてございます。これは,登録の請求の中に権利を発生させたり譲渡させたりする当事者間の意思表示が含まれているという前提で,先ほどの2ページの下から3ページにかけての注で,請求原因事実としては請求だけだというふうに整理をすることを前提として,「請求をした者は」という表現にしているということでございます。したがって,ここでいう第三者というのは管理機関以外の者ということじゃなくて,権利の発生,譲渡の当事者以外の者という意味の第三者でございます。  それから,次のbですけれども,①は中間試案のとおりですけれども,②でございますが,注に書いていますように,中間試案に対する意見照会の結果を踏まえまして,支払期日後の譲渡等については善意者保護規定を適用しないという案,これを後の方の第5の4の(3),21ページで採用させていただいて,それに合わせて,中間試案では注で,支払期日後の譲渡については人的抗弁の切断や善意取得の規定を適用しないということにする場合には,この善意者保護規定についても同じような取扱いをするかどうか検討する必要があるということを書いていたわけですけれども,同じような取扱いをするほかないだろうということで,同じような定めを置いているということでございます。  なお,「支払期日後」というのを「支払期日[以]後」という,「以」にブラケットを付しておりますが,従前は「後」ということにしていたんですけれども,例えば支払期日当日の朝一番でお金が払われた。ところが,その後,支払等登録をする前に,その日のうちに譲渡登録がされてしまったという場合があり得るということを考えますと,その日も含めておいた方がいいのかなということで「以後」にした方がいいのではなかろうかと思いまして,ブラケットの形で「以」を入れさせていただいたものでございます。「到来した」というのをつけ加えているのも同じ趣旨でございます。  それから,支払期日後の譲渡については,分割払の場合にどうなるかという問題があります。これは中間試案の補足説明に書いているわけですけれども,ここは中間試案段階では2つの御意見がありまして,1つは現在の案に書いているものですが,もう一つは,分割払の最後の支払期日が到来したときから後だけが善意者保護規定の適用がないというようにするという案だったわけですけれども,この後者の方の案をとりますと,お金を払ったにもかかわらず,その支払期日の分についても人的抗弁の切断がされるということになってしまうという問題があって,人的抗弁の切断や善意取得を排除しようという,この案のもともとの目的を達成するには,それぞれの支払期日ごとに考えざるを得ないんだろうということで,こういう形で案をお示しさせていただいている次第でございますので,それでよろしいかどうか御議論いただきたいと思います。  (6)は変更はないんですけれども,その次に注を付させていただいております。これは(6)の注ということではなくて,追認・追認拒絶の相手方について中間試案で示していた考え方について,これは中間試案に対する意見照会の結果では賛成意見しか寄せられなかったんですけれども,その後,いろいろ考えてみますと,ここに書いているような問題があるのではないかということで,余り中間試案の段階でも御議論していただかなかったわけですけれども,もう一度どうすればいいかということを御議論いただきたいということで,この注を付していますので,よろしくお願いいたします。  それから,次の4の,登録の権利推定効は特に申し上げることはなくて,5の登録の訂正等ですけれども,ここではまず(1)について,③という中に,自らの権限により登録すべきものについて,その登録をしなかったという場合も訂正の対象に加えております。これは,例えば譲渡制限を業務規程に書いていれば,それを自分の職権で登録しなければいけないわけですけれども,それをし忘れたときに追加で訂正して登録をつけ加えるという,そういう場合があるということに気がついたためでございます。  それから,新たに(2)で「回復」というものを設けております。これは,少しでも何かが書かれていれば,その訂正ということが言えるんですけれども,何も書かれていないときには訂正ということでは説明できないものですから,全部消されてしまったときは回復というようにせざるを得ないんではなかろうかということで,(2)をつけ加えさせていただいたということでございます。  それから,(4)でございますが,事後の通知をしなければならないものとするということで,9月12日の部会でお取りまとめいただいたと思いますので,そのように書いているということでございます。  それから,6の登録に関する管理機関の責任ですが,不実の登録についての管理機関の責任も,(2)の請求権限がない場合の請求に基づき登録をした管理機関の責任も,いずれも(2)の後ろの注に書いていますように,中間試案に対する意見照会の結果を踏まえまして,証明責任の転換案をとるということでいかがかということにさせていただいております。  それから,最後,後注でございますが,電子登録債権と原因関係との関係につきましても,これまでの議論の大勢に従いまして,規定は設けないで解釈で賄う。そこは,私どもが書く解説にしっかり,どういう解釈になるかということを示す形にするということでよろしいかどうかということを後注で書かせていただいておりますので,御議論をお願いいたします。  以上です。 ● 今御説明をいただきましたが,それでは,特に御議論をいただきたい論点について先に議論をしていただきまして,それ以外の項目については最後にまとめて御意見をいただくという形で進行させていただきます。  まず,2ページの下にございますが,「3 登録の請求」の(1)について御議論をいただきたいというふうに存じます。これは,中間試案ではA-1案からB-2案までの4つの案が掲げられていた論点ですが,今回はB-2案を採用しないということ,それから,一般承継人が登録の請求者に入っていること,さらに,請求と登録さえ主張・立証すれば,他のことは主張・立証しなくてもよい,この3点が議論を要する点として挙げられております。このうちB-2案を採用しないということと,それから,他の要件を立証しなくてよいという,この部分は全体の構造にかかわる部分ですので,まとめて御議論をいただければと思います。この点について御意見等をお伺いしたいと思います。  ○○委員,どうぞ。 ● これまで個々の議論の中で発言してまいりましたけれども,ちょっとこういう形で出てきていますので,ある程度これまでの考え方とかを整理した上で,ちょっと長くなるかもしれませんけれども発言させていただきたいと思います。  これまで手形代替手段として活用するという観点から,銀行業界の多数意見ということで,一貫してB-2案を主張してまいりました。パブコメの段階では,一部の業態でB-2案以外を支持する意見もございましたけれども,その後,議論を重ねました結果,手形代替手段に関してはB-2案でほぼコンセンサスが得られた状態であるということをまず申し上げたいと思います。  手形代替手段の活用方法として,まずは単純に手形からのシフトというものを考えておりますけれども,発生登録の段階では,債権者,債務者双方に金額,期間などの支払手段としての合意は事前に形成されており,この合意を前提として,当事者にどういう手続をとらせるのが利用者のニーズに合うのかという観点から,引き続きB-2案が最もすぐれているというふうに判断しております。逆に,B-2案以外を採用される場合には,当事者に要求される手続がネックになって使われないのではないかという点が,我々の一番懸念する事項であります。  電子登録債権制度の意義を利用者のニーズやマーケットという観点から見ますと,これまで具体的な活用方法として,銀行業界からは手形代替手段,一括決済方式,シンジケートローン等の譲渡というものを挙げてきましたけれども,後の2つにつきましては大企業,中堅企業,もしくは金融機関のニーズが起点となって,当事者間の契約を前提とし,かつ比較的閉じた世界の話をしているのに対して,前者については大企業から中小企業,営業性個人に至るまで,あらゆる利用者の活用が見込めるものであって,特に中小企業金融という視点で考えた場合には,この手形代替手段がうまく機能しなければ制度創設の趣旨が損なわれてしまうのではないかということを危惧しております。  これまで債務者の協力なくしては電子登録債権の発生はあり得ないという意味で,再三債務者の発生登録時の負担をどう考えるかということを申し上げてきました。これに対してB-2案以外からは,包括代理権を債権者,債務者間で認めればよいではないかという御意見ですとか,債権者側がワンクリックするのがそれほど負担なのかといったような御提案とか御意見を頂戴しています。しかし,結論から言いまして,どちらも利用者のニーズを満たす解決策にはなっていないと思います。前者に関しては,債権者がすべての債務者に発生登録申請の包括代理権を与えるということは,債権者の立場からは利用者のニーズに合わないと思います。我々サービスの提供者としても,手形決済との対比で,過大なリスクを債権者側に負わせることになると思いますので,これは採用することはできないと考えております。この点は,前回○○委員が御発言された趣旨も同趣旨であると思います。  次に,一括決済方式で同様のスキームなのではという御指摘もありましたけれども,一括決済方式というのは,債権者が自分より格付けの高い債務者の信用リスクをベースに資金調達することができるという立場を事前の三者契約で固めることができますので,その見返りとして,債権譲渡についての包括代理権を債務者に与えても差し支えないという判断が働いているということであって,単に資金決済目的で手形を振り出している当事者間の関係とは全く場面が違うということで,参考にはならないと考えております。  また,後者のワンクリックについてですけれども,債務者にとっては,多数の債権者が短期間にワンクリックするかどうかということを管理する必要がありますので,これが負担になって債務者が利用しないのではないかということが危惧されます。まさにここは利用者のニーズがどこにあるのかという問題であります。私が債務者の支払実務の御担当の方にヒアリングした範囲では,B-2案以外を支持される意見というのは皆無でしたので,今示されているB-2案以外の案というのは利用者のニーズがあるのかなというところは疑問に感じるところでございます。我々金融機関としましては,制度創設後にサービスの提供を検討していく立場にあるわけですけれども,特に今回は比較的規模の大きなシステム投資が想定されるわけで,さらに個別銀行ばらばらではなく,仮に統一した管理機関を検討していこうということになった場合には,なおさら利用者に確かに使っていただいて業務採算も確保できるという見込みがないと,なかなか具体的な検討に入るのも難しいということになってしまうんじゃないかと思います。  B-2案に対する総合的な問題点として,差押え時の問題と原因関係の影響と,この2つの点が挙げられていますけれども,これまでの議論をお伺いしていまして,結局B-2案の場合は,債権者が管理機関に利用者としての登録がなく,債権者が知らないうちに電子登録債権が発生してしまっているのではないかという点が問題として挙げられていると思います。もしそれがネックなのであれば,前回,○○委員も御発言されましたけれども,債権者,債務者ともに,管理機関に事前に利用者としての登録が完了していない間は電子登録債権をも発生しないということを制度上明確にすれば解決するんではないでしょうか。  以上,これまで本審議会で発言してきたことを再度整理及び敷衍して発言させていただきましたが,特に申し上げたいのは,でき上がる制度が本当に使われるものになって,利用者のニーズを満たすことができるかどうかということを具体的,実務的に検証する時期に来ているということだと思います。手形代替手段という観点からは,B-2案以外を採用した場合には,この点の検証というのが不十分なのではないかなとも思われます。もともとは一つの制度のもとでいろいろなニーズに対応していこうということが意見の対立の原因であるというふうに認識しておりますけれども,一般的に言いまして,法制度全体との整合性を理由として,すべてのニーズを満たすことができないということは当然あり得る話だと思います。しかしながら,その場合には何を取捨選択して,その際にどういう理由,政策判断でやったのかということを十分議論した上で判断していくべきなんじゃないかと思います。特に,今回の法制度創設の趣旨というのが,新しいニーズに対応していくために法制度を作るというところにあると思いますので,なおさらこの点は重要であると思います。  ちょっと長くなりましたけれども,以上でございます。 ● ほかに御意見はございませんでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● 今,○○委員の方からも御意見がございましたけれども,ここは総則の部分での登録の請求ということでありまして,これは発生,あるいは譲渡というところについてもすべてかかわるということになると思います。そういたしますと,発生だけではなくて譲渡も考えた場合に,果たして債務者だけの請求の行為だけでいいのかというところが問題かと思います。やはり譲り受ける側の立場からいきますと,その内容をもって譲り受けるということを考えると,この債務者だけの請求というのは,それはあり得ないのかなということが考えられると思います。  以上でございます。 ● ○○委員も管理機関になられる予定のお立場なんですけれども,○○委員がおっしゃられたB-2案じゃないと手形代替的には使えないということについて,手形代替的なものを一番最初におつくりになったのが○○委員のところなので,本当にそうなのかどうかというところについて,お考えをお聞かせいただければと思います。 ● 私としては,手前どもは中小企業のためということですので,やはり受取人の立場からいきますと,確かに○○委員の言われたように,事前に金額,期日というのは合意された上で手形での発行をされる。ただし,実務からいきますと,当然手形を受け取って,その内容を確認して受け取る。間違っていれば間違ったということで,それを返却するという行為がございますので,最終的にそれを受け取るという行為が必要であろうということは,これは中小企業の立場からいくと,そこは絶対必要であるというような意見があったと。  ただ,○○委員がおっしゃったように,大量の債務の登録請求をする債務者の立場からいきますと,そこは実務的に本当に回るのかというところに対して大企業からの意見があったことは確かでございます。ただ,中小企業の立場からいきますと,それは確認すべきであるということが非常に強い要望であったということは事実でございまして,そこがもし間違えた場合にどうするかというところがちゃんと担保されない限り,この債務者だけの請求によって発生されるということは,登録が有効になるということは,これは中小企業の立場から受け入れられないのかなと思っております。 ● ○○委員,どうぞ。 ● B-2案についての御支持の御意見があったわけですが,これまでの多数見解は,今回の要綱案第1次案の上に非常に的確に表現されていると私は思っております。そして,○○委員からは,金融機関の総意といいますか,多数の御意見というようなことでの御発言がありましたが,○○委員は十分に業界の御意見を聴取しておられるわけでありますけれども,一学者としての私が個人的に聞いているところでは,金融機関さんの方でも,B-2案でなければこの電子登録債権が使われないという御意見は余り強くないといいますか,私の聞いている限りではそれほど強い御意見というふうには感じておりません。  そして今回,この要綱案の方で,先ほど部会長も御説明くださいましたように,そのB-2案を採用しないことにあわせて,請求原因事実の観点からしても緩いといいますか,当事者のその外での登録権利者,登録義務者間における電子登録債権の発生の合意を主張・立証する必要はないということで,双方から請求がされたということがわかればよいというふうにしてありますので,この点も大きいと思います。  それから,学問的に申し上げますと,これは学会でもお話をしたところですけれども,いわゆるプロジェクトオリエンテッドに新しい制度をつくろうとするときに,やはり既存の法制度との整合性を著しく欠くという問題があってはならない。その点からいいますと,これは以前にも申し上げたかもしれませんが,既に動産譲渡登記の制度をつくりましたときにも,先行する隠れた占有改定にも勝てる強い登記をという御意見が審議の途中までかなり主張されていたわけなんですけれども,最終的には対抗要件制度に破綻を来すといいますか,三すくみの状況が出てきてしまったりするということで,この提案がとられなかった経緯がございます。今回の問題点についても,B-2案は,いわゆる理論的に言うと法定債権というような評価をされるものを創出するというところで既に非常に問題がありますし,それから,この点も私は学会では申し上げましたが,この考え方でいきますと,例の債権譲渡登記が先行されて存在しているケースで,その後に電子登録債権が発生した場合どう考えるかという,前回のここでの議論もあったところと思いますが,手形振出とのアナロジーで考えるという考え方が有力といいますか,ほぼ共通の御理解になったかと思いますが,そうすると,その場合には手形振出と同じように電子登録債権が登録されたということを民法468条の抗弁事由にするという形になります。そうすると,電子登録債権の発生が抗弁事由になるという論理でいくためには,発生登録のところでB-2案をとりますと,債務者が勝手に譲渡人に対して生じた事由というものを創出して,それを譲受人に対抗できるという非常に不合理な結果が発生してしまう。その他,幾つかやはり法律的にといいますか,法理論的に問題になるところがあるというのを学会では申し上げました。  このような観点からしても,また,最後に今私が申し上げた点は,○○委員の御発言の趣旨にも沿うものと思いますけれども,こういう諸々の理由からして,私はこの点は,これまでの議論の大勢からしても,今回のおまとめいただいた事務局案のような形でいくべきであろうと思っております。  以上です。 ● ほかに。  ○○委員,どうぞ。 ● 中小企業の利用者の立場から申し上げると,やはり今,○○委員,○○委員の御指摘のような形で,私はこの案が大変よく整理されていると思っております。ただ,別段の定めがある場合というところについては若干異論がございますけれども,全体としては私はよく整理されていると思っております。 ● 別段の定めというのは,先ほど申しましたように分割登録をする場合と支払等登録をする場合だけを考えておりますので,ですから,御心配いただくような変なことは考えておりませんので。 ● ○○委員,どうぞ。 ● あと,ここの論点については,私が考えますに一番重要なのは,できたものが使われるかどうかということであって,確かに○○委員のところのシステムで双方で申請していると,そういったものがあるというのは十分私もわかっていますし,そういった実験をやられたということもありますけれども,結局,それがインフラとして制度化されたときに,本当にみんなが使うものになるのかどうかという,そこがポイントだと思っています。そういう意味で信金中金さんのものも実証実験の段階を出ていないものだと思いますので,今後それが普及していくために,そのときにどういったものが必要になってくるのかといったことを考えなければいけないのかなと。そういった意味でいくと,B-2案以外のものを採用したときに,それで本当に使われるかどうかということの検証がそういう意味では十分になされていないと思いますので,B-2案以外を採用したときに,じゃ,本当に使われるのかどうかという観点では非常に不安感を覚えるというのが正直なところです。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 私は,従前から申し上げていますように原案どおりで結構で,いいと思います。  ○○委員が先ほど,一括決済とかシンジケートローンのような閉じた世界のみならず,開かれた手形代替の手段のところで債務者の一方のみで発生させることが必要だとおっしゃったかと思うんですけれども,私はむしろ,それはおかしいんじゃないかと。包括委任で対処するというのは,やはり委任の当事者に一定の信頼関係がある一括決済のようなケースで説明するための議論でありまして,それを一般の開かれた世界で債務者のみでオーケーということになると,全部について包括的に委任したら結果的には同じことになるわけで,すべての債権者は債務者を信じなさいということになってしまうので,それは先ほど来,中小企業の債権者の利益でおっしゃっているように,それは債権者としては受け入れがたいことなんではないかと思います。  それから,差押え時の問題について,○○委員は,管理機関に債権者を登録していないうちは債権自体が発生しないことにしてはどうかということをおっしゃいましたけれども,それは,今までの議論をしてきたこのシステムをがらりと変えることにもなりますし,発生,それから譲渡等のすべての段階で,債権者であるとか譲受人は管理機関にあらかじめ登録していなければ発生も譲渡もできないというようなものとして今まで議論してきているわけではないのではないか。要するに,大メガバンクの管理機関による囲い込みというものがさらに促進される結果にならないかと思います。  あと,B-2案をとらないと使われないぞということをおっしゃるわけですが,検証というのはどちらの方面でもまだ十分なされていないわけでして,それは,この原案であれば使われないぞと今おっしゃられても,「そうですか」とすぐ納得はしづらいことであります。債権者側のワンクリックが簡単だというのであれば,それは必要があれば使われるでしょうし,余りにそこまで債務者に任せるのは嫌だというのであれば,それは債権者が使わないだけの話で,それはそれでよろしいんじゃないかと思います。 ● いかがでしょう。  ○○委員,どうぞ。 ● ここに書いてあることについてお尋ねしたいことがあるんですけれども,よろしいでしょうか。  2ページの一番下の行に「また」と書いてあるところなんですけれども,それに関連してお尋ねしたいんですが,電子登録債権が発生するためには,電子登録債権の両当事者が個々の電子登録債権について合意をする。それも具体的に合意をしなければならないというのが今までの議論の流れのように理解しております。それは前にも自己決定の原理にさかのぼって,それを受け入れるかどうかということは個別に債権者になる人が決定する機会が与えられなければならないということだと思いますので,それは個々の電子登録債権について,それが要るか要らないかということを決める機会というものが与えられなければならないと,そういうふうに考えられるんですが,それが間違っているかどうかは,また後で教えていただきたいんですけれども,もしそうだとすれは,管理機関は,この発生に関しての登録の請求があったときに,そんなものが個々の電子登録債権について具体的にあったかどうかということは,その届いたデータを確認すればよいだけなのかということ。  そしてもう一つ,電子登録債権を請求するときには,そもそも債権者が発生時点で,それを原理に従って債権者となるということに個別具体的に同意していたということを言わなくても,そんなものがなかったというだけで足りるのかということについてお話を聞かせていただければありがたいんですが。 ● 申しわけないんですけれども,ちょっとおっしゃった意味がよくわからないんです。個別具体の電子登録債権について両方の当事者が請求をしなければならないということを本文に書いていて,それ以外には請求原因事実はないということを注に書いているんですけれども。 ● よろしいですか。今まで債権者になって利益を受けるには,それについて合意しているということが必要じゃないかという議論があったと思うんですけれども,そういうことは,この原案の中ではどこに取り込まれているのかということです。 ● 債権者が請求するということによってでございます。登録の請求をするということによって利益を享受するということがあらわれているんじゃないでしょうか。 ● それは,発生段階でそういうものがなくても発生するという考え方なんでしょうか。 ● 発生の段階で,管理機関に対して登録権利者の側も登録の請求をしなければいけないわけであります。もちろん,それを登録義務者に包括的な代理権を与えて,登録義務者からまとめて請求してもらっても,それはいいんですけれども,それは代理によって請求しているわけです。ですから,登録権利者の請求も要るということによって,個々の個別具体の債権の発生について請求をしているという行為で債権者の意思があらわれているという理解だと思うんですけれども。 ● たびたび申しわけないんですが,登録の請求をするということは,電子登録債権によって直接利益を得ますということの,それが発生に必要だと思われるんですが,それについて同意したということにもなるという,そういうことなんですか。 ● そう思っています。○○委員もそういう理解ですよね。 ● すみません。○○委員のおっしゃっているのは,事前の原因債権の発生の合意は当然あるわけですよね。それを問題にされているんですか。 ● いやいや,原因債権とは関係なく電子登録債権というのはでき上がるという……。 ● ですから,その事前の原因債権の方の合意は,まだ基本的にはあるわけですよね。 ● それとは関係なく,電子登録債権については合意ということが問題にされてきたと思うんです。 ● つまり,次の段階でそこの話をしようと思っているんですけれども,だから,債権者,債務者は,まず自分たちが債権者,債務者になるということは合意しているわけですよね。それはここで書く必要のないことですよね。 ● お尋ねになっていることがよく理解できたかどうかわからないんですけれども,原因債権とかというのとは関係なく,電子登録債権というのができるんですよね。 ● そこは,関係あるなしというよりも,まずそういう原因関係は,とにかく本来は通常契約があるんだろうと思うんですけれども,そこをまず置いておいて,そこはここに書く必要はなくて,それで,ここに書かれていることに関しては○○幹事の御説明のとおりと私は今理解をしておりますけれども。 ● ちょっと議論が錯綜している感じなんですが,私自身は,○○委員や○○委員がこの原案に非常に直ちに賛成されたのでちょっと驚いたんですけれども,本来A案とはちょっと違って,この原案はB-1案ではないかという気がしているんです。つまり,当事者間の事前の合意があるかないかということは一切問わずに,発生登録の場合であれば債務者になる人と債権者になる人が登録するということについての意思表示があれば,それで電子登録債権を発生させる。債権者,債務者間にどんな原因関係があって,どういう債権を発生させているとか,そういう合意の有無は一切問わずに,それぞれ登録請求があれば,それで債権を発生させるという考え方。そういう意味で言うと,私はある意味でこれは一種の法定債権じゃないかなと思っていまして,B-2案だけではなくてB-1案だって一種の法定債権だとは思います。ただ,それはそれで構わないと,もともとA案だった他の委員の方がそれでおっしゃるならば,私はとやかく申しませんけれども,考え方としては,まずそういうことだと思います。  その上で,ちょっと気にしておりますのは,ここでいう債権発生のときに関して言えば,債務者と債権者の登録請求の内容がどういうものであることが求められて,管理機関としてはそれをどうやって確認するかということが,私としては気になるところであります。私自身は理論的な理由から特にB-2案を支持したというよりは,実際上の便宜,そして実際にこの電子登録債権がよく利用されるためには,どういうふうな制度にしたらよく利用されるかということを考えてB-2案を賛成していたわけで,その大きい理由は,特に○○委員がああいうふうに御指摘になって,実務の方で債権者の方の登録請求を一々確認しないと電子登録債権が発生しないということだと,非常に負担が重くて実務が回りにくいというふうにおっしゃり,他方で,それが本当かどうかわからないというふうに○○委員がおっしゃって,私も実務をやっているわけじゃないから本当かどうかわかりませんけれども,ただ,実務の方はそういうふうにおっしゃることを考えると,それは無視できない御意見かと思っています。かつ,実際上もワンクリックというふうに言われますけれども,それはインターネットを使っているシステムを前提にした話ですから,この法制審で検討しているのはもっと広い,ファックス等による申込み等も含むものですから,そういうもの全体を考えたときに,それでスムーズにいくのかなということが心配で,B-2案の方が比較的ましかということで,私は賛成してきたということであります。  そこで,そういう立場から申しますと,債務者の方は個別の--まさにさっき○○委員が御指摘になりたかったことはこういうことかなと思うんですけれども--債務者の方としては個別の具体的な債権が発生したところで,自分でその内容で登録請求を具体的な債権ごとにする。それによって登録請求をするんだろうと思うんですけれども,債権者の方について,先ほどの○○委員の御指摘のような問題があり,また実際にも,さっきから包括委任という言葉が大分出てきているわけで,実際には個別の具体的な債権の発生ごとに債権者が自分で登録請求をするということがなされることも,無論それも多いんでしょうけれども,むしろそれでなくて,包括委任をしておいて,もう債務者の側からの登録請求でもって債権者の方の登録請求もあったと扱って登録をするということが多くなるんじゃないかと思っています。また,そうでないと,○○委員の御指摘のような問題があるとすると実務は回っていかない。だとすると,まずここでいう両当事者の登録請求が必要というときに,そういういわば包括委任を含めた広い登録請求でもいいのか,それを管理機関としてはどうやって確認するのか。包括委任があったということをどうやって確認するかということを明らかにする必要があるのかどうか。  しかし,次にちょっと気になりますのは,そういう包括委任を認めるということは,先ほどから,中小企業としてはきちんと具体的な債権が本当にそういう形で発生しているか確認したいという,何人かの委員の方の御指摘のあった問題からむしろ外れる。包括委任してしまっていれば,それを一々チェックできないわけですから,私は,そういうこともあるので,包括委任を認めるぐらいならばB-2案をとって,債務者の側からの登録請求だけで債権は発生するけれども,それは原因関係に影響を与えないという方が,まだ債権者の不利益が少ないのかなというように思ったためにB-2案に賛成したということでありまして,包括委任を認めて,結局,債務者の側からの登録請求だけで債権を発生させるということを実際上認めるということになると,これは単に結果的にB-2案にかなり近くなってしまって,単にそれは包括委任という形で債権者側の同意もあったということを,いわばfictitiousに認めているだけで,その結果,結局債権者の方は,実際に具体的債権について自分の考えているところと違っても文句は言えなくなるということになるのかなというのが,私としては懸念されるところです。しかし,そうでないと実務が回らないということを考えれば,その方がいいと,原因関係に影響を与えるよりは,そういうfictitiousな扱いをしてでも包括委任の形で登録がされるようにした方がいいというお考えが強いなら,私はあえて反対はしませんけれども,私はむしろどちらかといえば,私個人の意見としては,今でもB-2案の方がベターかとは思っていますが,皆さんがその方がうまく通るということであれば,絶対的に反対するということはいたしません。  なお,○○委員がおっしゃった手形振出の場合との関係で,民法468条のことをおっしゃいましたけれども,あれについて言えば,B-2案をとった場合,原因関係に影響を与えないという考え方からしますと,これは,たとえ勝手に債務者からの登録請求だけで債権が発生したとしても,それによって468条の方の問題が起きるということにはならない。そういう効果は認められないという考えになると思っております。  以上です。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 幾つか御心配の御意見があったんですが,一番最後にお話しになったところは,○○委員のお立場ではそうなるんでしょうけれども,現に今回の中間試案に対する意見でも,先ほど私が申し上げたようなことで,B-2案をとるのであれば,手形振出と同じような形の抗弁事由にはならないということを言わないと平仄が合わないというような御意見もいただいておりますので,この点は,前回議論した手形振出についての今日の判例と同じように考えるということであるならば,やはりB-2案はとり得ないだろうと。  それから,包括委任に何人かの委員の方はこだわっておられましたけれども,今,○○委員も,包括委任があった場合に債権者が個々の債権について自分の考えているとおりの発生かどうかをチェックできないという御指摘がありました。これを防ぐためにワンクリックというのを我々は主張しているので,いわば一般的に電子登録債権にすることについて委任しておいても,最後,具体的に発生させる段階で,今回のA案のようにしておけば債権者側からのワンクリックというのがあるので,そこで個々の債権について確認ができるということになると思います。  それから,この案については,実質B-1案ではないかという○○委員の御指摘がありましたが,私は,この案はA-1案からB-1案までを包摂する形で記載されていると考えております。したがって,先ほど○○委員の御質問は,私自身よくわからないところもあったんですが,お答えしようとしたのはそういう趣旨で,事前の原因関係の合意がある場合,ない場合,それはここで書く必要があるのは登録のときの双方の意思の問題であろうということで,この案に賛成するということでございます。  もう一点,蛇足ながらつけ加えれば,ファックスで受け付けるケース等も考えられているのだからという○○委員の御意見がありましたけれども,このファックスで管理機関が直接受け付けるのか,経由機関,仲介機関のようなものを置いてやるのかというのは,昨日の経済産業省の研究会でもセキュリティーの問題が議論されておりましたけれども,ファックスで受け付けるかどうかとかいうようなことは,まさに○○委員が部会長をされている金融庁の方での管理機関についての御検討でまた明らかにされるところではないかと思っております。  以上です。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● B-2案がいいか,原案がいいかということに対しての直接の発言ではなくて恐縮なんですが,2ページの注の内容の問題なんです。○○委員がおっしゃったことにも関連するのですけれども,この2段目の「また」以下というものの性格なんですけれどもね。まさに読みようによっては,登録権利者及び登録義務者が登録の請求をしたということを主張・立証していけばよいということになると,まさに○○委員がおっしゃったようにB-1案ではないかという話になるわけですが,しかしながら,○○幹事の説明とかを伺ってみますと,登録請求をしたということによって電子登録債権の発生の合意があったというふうに考えられるので,それを包摂されているというふうに考えられるんだという説明をしますと,まさに○○委員がおっしゃったようにA-1案,A-2案に近づいていく。今,3つ全部包摂しているとおっしゃったんですけれども,A-1案,A-2案に近づいていくということなんだと思うんですね。そこでやはり解釈の余地があるわけであって,そのときに,この直接の請求原因事実として,請求があったということを言えば足りるだろうというのが2つの意味に考えられるわけであって,請求したということが直接の証明すべき事実なんだというのと,それによって合意があったということを証明するというのは,2つ解釈が成り立ち得るわけで,それを注で書くというのが,私にはちょっと意味がよくわからないです。  実は,それは本当は抽象論だけじゃなくて,実は後でやるんでしょうけれども,4ページの(5)の意思の不存在とか意思表示の瑕疵というときに,どこに瑕疵があると。請求の意思に瑕疵があるというのか,発生させるという意思のところに瑕疵があるというのかというところにつながってき得るわけですので,別段どちらでもいいから書かない方がいいということには直接的にはならないんですけれども,こういう微妙な書き方をすると,ちょっと余りに微妙で,ここでそんなに明らかに,注にまで明らかにする必要があるのだろうかというのが,ちょっと私にはよくわからなかったんですけれども,お教えいただければと思います。 ● おっしゃったことに直接うまく答えられるのかどうか,質問自体もよく理解できていないかもしれないんですけれども,ここで問題にしたかったのは,裁判になったときに請求原因事実になるのは一体何でしょうかということだけであって,それは登録権利者,登録義務者がそれぞれ同じ内容の請求をしたという事実と,それに基づく登録というのが要件にもちろんなるわけですけれども,それ以外の,その外での合意があったかなかったかというようなことは請求原因事実にはならない。つまり,請求原因事実というのは権利の発生,譲渡の場合だったら譲渡による権利の移転の要件事実なわけですから,それは登録の請求だけであるということについては,説明の仕方は今までいろいろな御議論があったと思いますけれども,それ以外の外のものまで問題にしようという人はいなかったのではないかということで,こういう形にしているわけでございます。そうすると,これは民法的に説明しようと思うと,管理機関に対する請求だけで権利が発生したり譲渡,移転したりするはずがないですから,それは相手方に対する意思表示が含まれていると解さざるを得ないんだろうということで,それを前提に,後の部分では「登録の請求をした者は」という表現にさせていただいているということでございます。これで,条文としてはそれ以上のものをつけ加えることはないと思っているんですけれども。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 条文としてそれ以上のことをつけ加えることがないだろうとおっしゃるのは,まさにそのとおりなんですけれども,注の理解というのがどういう訴訟形態を念頭に置いて,今御発言なされたのか,よくわからないところもあったんですけれども,請求があったということを証明すれば足りるというときに,何をその事実によって証明しているんですか。証明があったということが……。 ● 電子登録債権の発生という効果です。だから,払えという請求をする際に,訴訟は,その払えという請求しかないわけですから,払えと言うためには両方が登録の請求をしたということさえ言えばよくて,それ以外の登録手続の外での合意みたいなものは,一切主張・立証の対象になるものではないということです。 ● それは,そのことならば5ページの4で推定されるんじゃないですか。 ● 5ページの4は適法に有するものと推定するだけですので,債務の発生自体は登録の意思表示,つまり登録請求によって債務が発生したということを具体的に主張・立証しなければ,債務の存在まで推定されるわけじゃありませんから。つまり,債務が存在している場合に,それが登録名義人に帰属していることが推定されるだけですので。 ● ちょっと○○幹事,先に。今のに関連した議論ですか。それとも……。 ● ○○幹事の最初の方にお話しされていたことに関連していて,今の問題については,やや解決していないのかもしれませんけれども。 ● どうぞ御発言ください。 ● 先ほど,○○委員の方がおっしゃられた事柄を踏まえてなんですけれども,○○委員は2つの重要なことをおっしゃられたと思うんです。1つは,発生の段階のときに,かつてA案,B案と対立していたことについて,この原案がどういうふうな位置づけなのかということについての問題提起がまずあったかと思います。ただ,私はこれに拘泥する必要はないだろうと実は思っておりまして,かつて手形について,これは随分古い議論なんですけれども,原因関係と手形債権発生の法律関係の間のところに手形を利用しましょうという合意を観念するという学説が随分古くございまして,それがまず原因債権が発生していて,次に両当事者間で手形を発行しましょうという合意があって,それから手形を発行させる法律行為があるという3段構えになっていた理論構成の時期がありました。これは日本では余り紹介されていませんが,古くドイツではそういうような議論があって,これが議論を混乱させていまして,真ん中の部分がないために手形債権にどういう影響を及ぼすのかということが複雑怪奇な議論を招いたこともあり,最終的には,この手形を振り出すという行為の中に手形を利用しましょうという合意が包摂されているんだという考え方にはアウフヘーベンされていたというふうに私は理解しております。  これに対して,考え方として,真ん中にあった考え方が消えたんだというふうに評価した人たちと,その手形債権発生の法律行為の中に包摂されたんだということを主張する議論が最後まで残って,最後学説が対立していったかとは思いますけれども,結論的にはこれは結果には影響しないものの説明の仕方に収れんしたんだろうというふうに考えています。そういう点では,真ん中の部分で電子登録債権を利用しましょうという,この意思表示についての議論は,どちらに理解するかは別にしても,A案のように理解をしていてアウフヘーベンさせていく先生もおられれば,B-1案だと理解していかれる方がいたとしても,制度としては,今お示しいただいたような案に終着するんではないかと私は思って,原案に賛成でございます。  ただ,私は,○○委員がおっしゃられたことの中でもう一つの重要な点につきましては,包括的な委任ということを制度として取り込んだときに,電子登録債権の管理機関の方が,それが本当に包括委任があったのか,なかったのかということをどう確認して,ないにもかかわらず債権者の方の側があたかも包括委任をしたかのような実務になってしまったときに不利益が生じないのかという問題提起と,それを慎重にするがゆえに,管理機関の方が過度な確認の実務というものを必要とするようになるのであれば動かなくなるんではないかという点については,まだ問題点としては解決しないまま,御指摘なされたままになっているような気がしましたので,その点,実務の方々に御確認いただければと思います。 ● 今の点でございますが,この包括委任という方式を認めるのか認めないのか,それから認めるとしてどういう方式にするのかというのは,この要綱案でいうと3ページの最後の行からの(4)で,業務規程で定めるところによるわけでございます。包括委任を認めているのは,現実では一括決済がそうですけれども,一括決済は管理機関に相当するものが入った三者合意の基本契約で包括委任規定を置いているわけであります。ですから,管理機関としては,後でまた議論していただく管理機関の責任の問題で,無権代理なのにそれを見落としたら管理機関が責任を負わなきゃいけませんから,当然三者契約といいますか,約款というか,そういう管理機関が入ったもので包括委任はさせることに実務上当然なるんだろうと思っていまして,ですから,そこはもう業務規程に委ねて,そうしないところは自分が責任を負う,リスクを負うということになるんですけれども,そんなリスクを負おうという管理機関は多分いないと思いますので,管理機関が関与した形で包括委任が行われるという一括決済方式がとられるんじゃないんでしょうか。 ● ちょっとすみません。包括委任がなされた場合に,いわゆる登録の申請というのは一本なんですか,二本なんですか。 ● 登録義務者に包括委任がされれば,登録義務者は登録義務者であるとともに登録権利者の代理人として登録の請求をすることになる。 ● その申請の書類というか,請求の書類の中には,相手方の代理人になっているということもあわせて書き込まれるということになるんですか。 ● もちろん代理であることは書かれることに当然なります。 ● だから,包括ではあっても,個々の申請の際に代理権があるということは,登録の書面の中に明らかになる。 ● 管理機関が関与して代理権が付与されているわけですので,確認する必要はもうないはずだと思います。 ● 書面の中に書き込まれるわけですよね。 ● この管理機関を利用するときの基本契約でそう定めると思います。一括決済はそういうやり方です。 ● ○○幹事,その前にどなたか,○○委員が先に手を挙げられて……。ごめんなさい,失礼しました。○○委員が一番最初に手を挙げて……。 ● ちょっと議論がもっとほかの方に移ってしまったので適切かどうかわかりませんけれども,この登録請求の請求原因事実としてというふうに先ほどからここに書かれて,そういう議論をされていますが,これは,実際に法文に書いたときには,要するに債務者と債権者のそれぞれの登録請求があったときはということになるわけですから,あくまで法文上は当事者の合意とか,そういうこととは関係なしに,両当事者の登録請求があることによって,それが一致することによって登録がなされるということになると思うんです。それを考えますと,あとはそれが合意があったとするかどうかというのは,むしろ学者がどう理論づけるかというようなことで,それで理論づけてくださいという御趣旨かなとは思ったんですけれども,ただ問題として残るのは,○○幹事が御指摘になりましたように,意思表示の瑕疵その他を考えていくときに,登録請求についての意思表示の瑕疵ではなくなるわけですよね。そうだとするとずれてくるわけです。もし当事者間の意思表示だというふうにそれを解釈すると,後で出てくる追認の問題でも,追認の相手方がだれかというのも,もしあくまで管理機関に対する意思表示だとするのであれば,追認の相手方はむしろ管理機関であるということになるわけですし,そのほか,登録請求以外の事実も含めて,もし当事者間の合意があるんだという前提の理論構成をすることも,意思表示の瑕疵等についてそういう問題は残ってしまうのかなと,ちょっとそういう懸念は持っています。 ● ですから,ここでは,例えば4ページの(5)のところで「登録の請求をした者は」という書き方をしておりまして,これは管理機関に対する問題じゃないことは明らかなので,その請求の中に権利の発生,あるいは移転についての意思表示が含まれていることを前提としないとこういう書き方はできないはずですので,それによってあらわしているつもりでございます。 ● ○○幹事,それではお願いします。 ● 請求に関することですけれども,よろしいでしょうか。先ほど来,クリックでいいというふうなことでお話があったと思うんですけれども,これは前回もちょっとお話をしたんですが,何か両方から請求があるというと,両方から何か申請のような積極的な行為がなされることをイメージするかと思うのですが,おそらくクリックということでイメージをされているのは,債務者から何らかのデータが来て,それが例えば管理機関から債権者の方に伝えられて,それでいいですよというふうなワンクリックがなされたと,こういったことであったとしても請求として成り立つし,そういったもので請求として認めるかどうかというのは,それこそ登録の請求に関して業務規程で定めればいいことであるということでいいわけですよね。 ● おっしゃるとおりです。 ● しかしながら,例えば業務規程で債権者について口座を開設してもらった上で,その口座に何らかのメッセージを伝えて,しかし一定期間返事がないときは黙示の承諾があったものとみなしますというところまでは行き過ぎでしょうか。商法ですと諾否通知義務みたいな考え方があると思うんですけれども,あらかじめ業務規程で債権者の側についても利用登録をしておいてもらわないといけませんというようなことにした上で,口座なり定められた方法で連絡をしたけれども,一定期間のうちに返事がないときには積極的な意思表示があったものとみなしますよ,あるいは承諾とかクリックがあったものとみなしますよということまで許されるということになれば,ほとんどもうB-2案というか,先ほど○○委員がおっしゃったことを認めるようなことになると思うんですけれども,それはさすがに認めないでしょうか。 ● 余り深く検討したわけじゃありませんけれども,私個人はそれでもいいと思っていました。つまり,業務規程で定めるわけですので,業務規程で管理機関から債務者からの請求があった内容を通知して,一定の期間内に返事がない場合は,通知したものと全く同じ請求がされたものとして取り扱わせていただきますということで,その管理機関を利用するのであれば,そういう手続をとられれば,それで請求したことになると考えていいのではなかろうかなと思っていたんですけれども,そこはさらに御議論いただければと思います。 ● 今の点がオーケーだとすると,先ほど○○委員が冒頭でおっしゃったようなビジネスモデルというのは,今お書きになられている原案の中でも現実的に達成される。あらかじめ利用登録をしておいた人じゃないと使えませんよということで絞っておいた上で,登録をして発生の請求を規制するようなことまで可能であれば,ビジネスモデルとしてはほぼ同じことが達成できるので,私は別に,そういう意味では原案というのは非常にフレキシブルであって,管理機関のまさに制度設計にかかってきている部分が多いのかなと思います。  あと,先ほど包括委任との関係で,○○委員は,おそらく包括委任があればそれで足りると。いわば私は包括委任されてきていますというふうなことを債務者の方が管理機関に伝えれば,それで足りるというふうな趣旨でお話をなさったようにお伺いして,他方で○○委員は,包括委任に加えて,ちょっとそれだけではリスクがあるので,さらにワンクリックというふうな御趣旨の発言をなさったようにお伺いしまして,包括委任で限界があるんだとすると,これはかなりストーリーが違ってくると思うんです。ただ,包括委任さえしておけば,例えば業務規程で管理機関に対して利用登録してもらうときに,債務者に包括委任しますという,まさに書類を出してもらわないとうちとしては債権者として認めませんよと,それは非常にクリアになると思うんですけれども,そういった中でも,さらにワンクリックをしないとだめというか,あるいはワンクリックがなくても包括委任の中でクリックも不要なんだというかは結構違うのかなと思いまして,そこら辺はちょっとクリアにしておいた方がいいのかなというふうにお伺いしました。 ● それは業務規程でどう定めるかで,そういう明確な包括委任があれば,それで扱うという管理機関もあってもいいでしょうし,やはりそれじゃ不安だからワンクリックを要求するという管理機関があってもいいんじゃないでしょうか。あとは,だから無権代理だったときのリスクを管理機関がテークするということだけは明らかですので。 ● 最初で代理権の意思表示さえしっかりと確認して……。 ● 管理機関は,自分で意思を確認しておけば絶対問題ないんじゃないでしょうか。 ● 最後にもう一点だけ。この請求に関連する事項に関してですけれども,両方から今回いろいろ書き込めるようになっていまして,例えば債権者側と債務者側がクリックではなくて,何らかのデータを本当に送ってきたとしたときに,別な人が作っているわけですから,データの中に若干のそごがある。例えば点の位置が違うとか,ちょっと表現の仕方が違うというような場合,これは結構実務的にシリアスな話ではあると思うんですけれども,どこまでの一致で両方からの請求がなされたというふうにみなすか。例えば任意的登録事項のディテールの部分で多少記載内容が違うということがあったとしても,必要的登録事項の部分で両方からの請求が合致していると考えられれば,それは両方からの請求があったとして考えていいのか。あるいは,非常にビシッと一言一句一致をしていないと請求があったとして扱えないのか。これは本当に双方から来たものをチェックするというふうなシステムをとると,かなり現実的な問題として起こるような気がするんです。そこら辺は今まで余り議論されていなかったと思うんですが,それについても,例えば請求事項の内容,その他請求に関する事項ということで,管理機関の業務規程において,我々としては,両方から一応請求は出してもらいますけれども,ここまで一致をして,こういうことをチェックして手続をしますという,そのフレキシビリティーというのは業務規程に委ねていいんでしょうか。 ● これも委員,幹事の方々の御議論をいただいた方がいいと思いますけれども,それは違うんじゃないかという感じが私は個人的にはしていまして,任意的登録事項といえども,権利義務の内容が変わるのであれば,それは請求は一致していないのではないでしょうか。だから,それは権利義務の内容は変わっても,任意的登録事項の範囲内であれば一致したものとして扱わせていただきますという業務規程は適法な業務規程と言えるのかどうかも非常に疑問のように思います。むしろ,突き合わせなければいけないようなことをしないように業務規程は定めるんだと思っていました。 ● 例えば,商業信用状なんかで両方いろいろな人から来た書類をチェックして,支払うか支払わないかを決めるというようなところでは,ほんのちょっとの違いというのは,あえて全く違う主体がつくった書類なんかにおいては余り珍しくないので,現実的に心配としてあるのか。ただ,○○幹事がおっしゃったように,それはビジネスモデルとしてそういったことのないように対応すべきものなのかもしれません。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 今の業務規程云々については,ここで実質的な議論,つまり中小企業の保護ですとか,あるいは理論的な問題,事実上知らない間に発生することによって,電子登録債権,あるいは原因債権にどういう影響があるかという,そこがおかしなことにならないようにするという,運用で考えていくということになるんだろうと思います。前段の理論的な問題については,何人かの委員,幹事の方がおっしゃいましたとおり,私も,この原案を拝見したときに,原案の作成者は解釈に委ねる。もう法律に書くのは最小限のことになさるという,そんなお気持ちかなと拝察しました。ですから,事前の合意があることが必要なのか,あるいは登録によって合意が発生するのか,あるいはそもそも合意が要らないのか,解釈の問題だろうと思っております。  ただ,その上で3点ほど細かいことなんですが,請求原因事実としてという言葉が出ているのを見ると,抗弁事実としては何か別のことがあり得るのかなというふうに逆にとられるような気がしまして,むしろここで問題となっているのは実体上の合意が必要かどうかという問題ですので,そこに証明責任との関係を入れる言葉が入ってくると,かえって何か議論が複雑になるかなという気がいたしました。それが1点です。  それから,2点目も言葉だけの問題なんですが,登録権利者,登録義務者という言葉が使われております。そうすると,何か事前の合意があって,その合意に基づいて登録せよという権利,登録すべき義務というのが発生するかのように思える。おそらくそれは不動産登記法で登記権利者,登記義務者という言葉がかなりテクニカルに使われていることを反映したものだと思いますが,言葉だけを見ると一定の方向と結びつきやすい言葉かなという気がいたします。  それから,最後,実際の問題としては,合意に瑕疵があるという場合についてどう解決するのかということで影響するだろうということは,何人かの方がおっしゃったとおりだと思います。  以上です。 ● まず,第1点の請求原因事実という表現は無用な問題が起きるんじゃないかという御指摘は,なるほど,そうかなと思って伺わせていただきました。ここで言いたかったのは,権利の成立のための要件事実という意味でございまして,請求の外での登録権利者,登録義務者間における電子登録債権の発生の契約あるいは合意が,請求原因事実じゃないけれども抗弁だというふうに考えているということでは全くありませんで,抗弁でもないというふうに考えている。何でもないと,つまりどの要件事実にもならないというふうに整理したいということでございます。  それから,その前に○○委員がおっしゃられた,解釈に委ねるというお話ですけれども,そういうつもりはないのでございまして,つまり,この部会で登録の請求以外の外側での別の合意とか契約みたいなものを主張・立証しないと,権利が発生したとか移転したということが認められないということではないということについてはコンセンサスをいただきたいという趣旨でございます。そして,そのことがそこはかとなくあらわれるような条文を書きたいと思っています。そういうふうに書いているつもりなんですけれども。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 事前の合意がなければいけないという立場ではないということは理解いたしました。そうしますと,今度は登録による合意というものを観念するかどうかですが,ここは開かれているのかなと思ったんですが,いかがでしょうか。 ● ただ,4ページの(5)をごらんいただきたいんですけれども,「登録の請求をした者は」ということで,登録の請求ということしか問題にしていなくて,登録の請求以外の意思表示ということを問題にしていないんですね。だから,登録の請求以外に権利の発生,移転のための意思表示があるのだとすれば,その意思表示もここで問題にしなければいけないわけですけれども,それを問題にしないで「登録の請求をした者は」という表現をしているということから,意思表示は登録の請求という1個の意思表示の中に権利の発生,移転の意思表示が含まれているという,先ほど○○委員がおっしゃったような考え方をとっているということでございます。 ● そうしますと,○○委員が最初に御指摘になられたように,この案はB-1案をとったということになるんですか。 ● B-1案ではなくて,一番近いのは,前回の部会で私どもが今までの案を止揚する案としてお示しした,つまりB-1案というのは法定債権という考え方だけですが,法定債権というふうには考えていませんで,あくまでも相手方に向けられた意思表示なんですが,それが管理機関どまりになるということでございます。 ● そうすると,交叉申込みの構成がこの背後にはあると,そういうことですか。そうすると,交叉申込みによって契約が成立しているということですね。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 私もそこをちょっと確かめたかったので,前回の資料で交叉申込み説によって今までのA-1案からB-1案までを止揚したと理解しておりましたので,ちょっとその点を確認したかったことと,あと,先ほど○○幹事がおっしゃった,包括委任の場合にさらにワンクリックが要るかのような御説明を先ほど○○委員がなさって,私もちょっとあれっと思ったんですけれども,私の理解していたのは,包括委任をした場合には,さらなるワンクリックというものは要らないんじゃないか。そして,包括委任がない場合にもワンクリックで債権者からの請求として成り立つというふうに理解しておったんです。  それとあと,○○幹事がおっしゃった,業務規程で一定期間,例えば3日以内に返事しない場合には請求があったものとみなしますよというような規定というのは,それは包括委任と非常に近いのかなと。つまり,三者合意がなければそういうのは成立しないので,それと別に一定期間黙っていれば請求があったものとみなすという類型を認めるのは,何か変な感じがしておったんですけれども,その辺,ちょっとまだよく理解し切れておりません。  とりあえず以上です。 ● 今の,請求がされたことを通知した後一定期間内に違うという返事がない場合は,そのとおりの請求をあなたもしたものとして取り扱わせていただきますというのは,まさに○○委員がおっしゃられたように,まるっきりの包括委任が認められるなら,そこまでは授権しませんという人に,一定期間内に返事をしないときは同意したとして扱わせてもらいますよということになるわけですから,全面的な包括委任が認められるなら,それも認められるというふうに実質としては考えられるのかなと思った次第です。 ● ただ,その場合は債権者はだれでもいいというわけじゃなくて,あらかじめそれに登録した,合意した債権者に限るということで,債権者一般について,うちの管理機関は3日以内に返事しなきゃ発生ということは許さないということでよろしいですね。 ● それはもちろんそうだと思います。 ● ○○委員,どうぞ。 ● そろそろ議論が収れんしてきたのかと思うんですが,ですから,あと確認だけさせていただきます。  まず,ワンクリックの件では,今,○○委員がおっしゃったことで,私のさっきの発言の趣旨は,電子登録債権とすることについて包括委任があった上で,個別の債権についてはワンクリックというやり方をすれば,債権者が自分の考えに沿わない債権を発生させることはないということで,ただ,もちろん私の考えでは,そのワンクリックの分についても包括委任をして,先ほど○○幹事と○○幹事の間で,業務規程でそういうことを定めれば,それはオーケーではないかという指摘がされましたが,それも私はオーケーだと,同じ意見で賛成でございます。ですから,債権者が自分の意に沿わない債権を発生させられると困るというのであれば,電子登録債権にすること自体について包括的に委任をした上で,個々の債権についてはワンクリックを必要とするというふうに当事者のルールを作ればいいし,そのワンクリックについても包括委任の中に含めて,業務規程でそういうことを確認をするというのでもオーケーという考え。これでよろしいでしょうかというのが第1点の確認。  それから,第2点は,私は,先ほども発言しましたように,今回の御提案はA-1案からB-1案までを包摂するという趣旨でお書きになったものと思っておりまして,私自身は,その請求についての両方の当事者の合意があることを前提というか,原則として考えたいという立場ですけれども,ここでお書きになったものは,A-1案からB-1案までが包括的に入るものであって,今,○○委員と○○幹事のやりとりで,前回の交叉申込みというものが背景にはあるんだということでありましたけれども,私は,それには反対はしませんけれども,前回も言ったように交叉申込みというのを表に出されると違和感がある。つまり,債権者が債務者にデータを送って,債務者が確認のワンクリックをするとか,その逆,債務者が債権者にデータを送って,債権者が確認のワンクリックをするというのは,余り交叉申込みという意味に近くないですから,私はもちろんそういうものを包摂されるものとして原案を読んでおりますので,事務局提案の根底に交叉申込み的発想があることは,私,それはそれでよろしいと思いますけれども,特段両方から2つの申込みがあったなんていうことを強調されるものではない。それを強調しますと,さっき○○委員がおっしゃったように,それの中に齟齬があったときにどうするかみたいな議論が再び再燃してしまいますので,今,私の申し上げたような形で,相手方から送られてきたものをこっちで確認のワンクリックをするというようなことも,もちろん含まれるということでよろしいでしょうねということでございます。 ● ○○委員が今おっしゃられたとおりで,全くそのとおりでございまして,要するに交叉申込みということを前回申しましたのは,最低最悪の場合でも交叉申込みになるということで,当然通知がされてワンクリックするということであれば申込みに対する承諾ということになりますから,それも意思表示があることは問題ないわけでございます。それすらないような,両側からそれぞれの当事者が別個に登録請求をするという場合でも,少なくとも交叉申込みにはなるから意思表示はあるでしょうと,そういうだけの趣旨で使っているだけでございます。 ● では,改めて原案賛成ということで,以上です。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 私も,もう理論的なことは事実は1つでありまして,両方が申し込んでいる意思表示はたった1つしかなくて,外には合意はなく,そして,それが合致したということは,あとは理論的にどう説明するかというのは学説に任せればいいことですが,余分にそういう概念を新たにつけ加えて,せっかく作った制度をゆがめて解釈するのは望ましくないだろうとは思います。そこはもう理論的に決着がついたんだろうと私は思うんですが,先ほど御質問させていただいたのは,先ほどの意見の中でいろいろ出てきた議論で,最後,どういうのが実際の包括委任なのか,あるいは業務規程なのかということもある程度明確になってきましたので,最終的にこれをぎりぎり一番簡素な形態で,○○委員がこれで実務は回ると了解していただけるかどうかだけ御確認いただければ,終わるんじゃないかなと思っているんですが,その点,いかがなものでしょうか。 ● 包括委任で,例えば特定の債権者と債務者の間に契約が一つ一つ要るという前提で考えると,多分これは使われないと,私は実務的な感覚では思います。 ● ○○委員,どうぞ。 ● ちょっと,包括委任ということについて1つ確認をしておきたいんですけれども,包括委任というのは,要するに電子登録債権という支払手段を使って決済をするという,支払方法についての包括委任なんですね。要するに,商取引の決済について,いつ,いくらで払うよという,その金額や何かについてまで全部委任しているというようなことなのかどうかなんですね。少なくとも私はここで両方の請求が必要だということは,このところは金額や何かについては債権者は債権者としての意思表示がきちんとできるということで考えているわけです。  実際の取引というのは,例えば私どもがAという会社に物を納めたときに,これは設備で納めたのか,材料で納めたのか,それによってA社というのは決済条件が違ったりしている場合なんかもあるわけですね。それがまたさらに複雑なことが,同じ商品がある場合に材料として処理され,ある場合は設備として処理されるというふうなケースがあったりする場合に,当然我々債権者としてみれば,これはどうなんだということを相手と確認し合いながら,それならこれで決済しましょう,あるいは幾らでやりましょうということで,その確認があった上で先方も債務発生の登録請求する,我々も債権の発生登録をする。それで初めて成り立つんだというふうに思っているんですね。ただ,その場合に,包括委任というのは,要するに支払方法,電子登録債権を使って決済するということについてだけの委任の意味なのか,その取引の決済そのものまで含めての話なのか,そこのところがちょっとはっきりしておく必要があるのかなと。 ● ここで皆さんが議論している包括委任というのは,個別の電子登録債権の発生,あるいは譲渡について,債務者が自分の代理人として登録してくれればいいですよということを事前に包括的に基本契約で合意しておくということで,一括決済などで行われているものでございます。ただ,誤解がないようにしていただきたいのは,そうすることが義務づけられるわけではないということです。それが嫌なら,先ほどから出ているワンクリック方式を選択すればいいわけでございます。だから,包括委任を義務づけるというのがB-2案のような考え方なわけで,そういう考え方はとらないというのが今の議論の大勢でございます。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 先ほど,一定期間を経過した場合に請求があったものとみなすということで,それでもいいんではないかという話がありましたけれども,実証実験を私どもがやったときに,一定期間経過して承諾がないと抹消される仕組みにしていました。逆なわけですね。ただ,債務者からいくと,それがやはり債権者が受け取らないことによって抹消されてしまうのはまずいのではないかということがあって,ここについては逆に,先ほど○○幹事がおっしゃられたように,一定期間経過した場合に承諾があったものとみなすというような形にしてほしいということが非常に大きな意見としてありまして,これについては,当然受取側の債権者の方も,積極的にそれは反対する声はなかったと思っております。ただ,それが余りにも短い期間ですとか極端な事例になってしまうと,それは困るということはありましたけれども,そのような仕組みがとれれば債務者側の負担というのも減ってくるんではないかなと思っております。これはまさしく実務的にはそのようなことが十分考えられると思っております。 ● 今,○○委員がおっしゃったケースは,そういう規定にすることに特定の債権者たちがあらかじめ合意している場合ですよね。 ● そうですね。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 基本的に原案に賛成なんですけれども,難しい議論はさておき,今のお話ですと,実務的にそんなにさほど負担になる話ではないということと,手形代替ということを余り強調し過ぎると,そもそも電子登録債権ができたからといって手形代替というのは私は起こらないと思うんですね。手形制度というのは,やはり法律だけではなくて,銀行取引約定書ですとか手形交換上のルールとか,複合的なルールが積み重なってでき上がっているものですし,そもそも電子登録債権ができたからといって約束手形等がなくなるわけではないので,使いたい人はそのまま手形を使えばいいわけで,余りそこを意識する必要はないのかなと。少なくとも負担感というレベルですと,今,実務で過度な負担--過度な負担があったら,そもそも電子登録債権というのは使われないんですけれども--それはないだろうなという感想を持っています。 ● 大体議論も出尽くした感が--○○幹事,どうぞ。 ● すみません。せっかくまとめに入られるときに……。  ちょっと確認なんですけれども,この原案の前提としている考え方というのはよくわかって,それは基本的にはそれでよろしいんだと思うんですが,4ページの私が発言いたしまして○○委員が受けていただきました,どこに合意があるというふうに見るかによって,どの部分について詐欺とか錯誤とか考えが変わってくるという話につきまして,これは「登録の請求をした者は」というふうにしているので,まさに登録の意思表示についての錯誤とか詐欺とかを考える条文になっているんだ。そこで法律全体として,当事者間における発生の直接の合意というのは対象としていない。これはわかるんですが,これで前提にしたときに,これは詐欺というのは必ず第三者詐欺になるんですかね。また,錯誤というのは必ず動機の錯誤になるような気がするんですが,つまり,電子登録債権を発生させるという合意について詐欺とか錯誤とか強迫があって,それに基づいて登録請求を行ったという場合には,それは,その請求には瑕疵があるんですか,ないんですか。 ● あります。既に何回か御説明したと思うんですけれども,この登録の請求の中には相手方に対する意思表示が含まれていると考えることを前提にしていますので,ですから,管理機関に対するものではなくて,登記義務者がした行為であれば登記権利者が相手方で,そのさらに先に譲り受けた人とかが第三者であるということを御説明したと思いますが。 ● それが交叉申込みということの意味ということですね。わかりました。 ● いかがでしょう。もうほぼ議論が出尽くしたように感じます。 ● ちょっとよろしいですか。大勢はほぼ固まりつつあるように思うんですけれども,一部にまだ御納得されない委員もおられますので,この方向でさらにもう少し議論をして,もうちょっと,まだ二,三回は議論する時間がありますので,今日,かなり実務の運用のあり方も含めて有益な御指摘が多々あったと思います。それで大体回るんじゃないかという御意見が実務家の中でも大勢だったと思うんですけれども,それで大丈夫かどうかということをもう一遍○○委員にも御検討いただいて,それで最終的にみんなが納得する形で部会長に取りまとめていただければなと思っているんですけれども,それでよろしゅうございましょうか。 ● それでは,かなり時間を費やしましたが,いろいろな意見が出てよかったと思います。それでは,今,○○幹事がまとめていただきました方向で,この問題はなお少し議論を続けたいと思います。  それでは,この1のところで3つ新たな問題点があると申し上げました残りの1つで,一般承継人が請求できるということに新たにしているわけですが,この点について何か御意見はございますでしょうか。弁護士会は少し別な意見をお持ちだったかと承知しておりますが。 ● そうですね。後に中間省略された人の行為の効力が問題となったときに,だれがやったのかということを記録として残した方がよろしいんじゃないかという意味で,中間省略をしない方がいいという意見を弁護士会としても申し上げていたんですけれども,今回,ちょっとページ数が今すぐ出てこないんですけれども,後ろの方に半ば復活したような,これ,何ページでしたっけね。 ● 19ページでございます。3の(1)のaの③です。 ● 19ページの下の注ですかね。 ● ③のところですね。 ● ③ですね。譲渡登録する場合には,登録名義人の相続人である譲渡人を登録しておくということにされたので,譲渡の場合については,これで弁護士会の意見に沿った形になったのかなと勝手に考えておるんですけれども,そういう趣旨でよろしいでしょうか。 ● 結果的にはそうなっていると思います。 ● であれば結構だと思いますが。 ● それでは,この点について,ほかに御意見のおありの方いらっしゃいますでしょうか。--特にないようですので,それでは,この一般承継人が請求できるという点については,この原案どおりということで確定をしたいと思います。  それでは,次に4ページですが,この第1の3の(5)のところで,先ほど○○幹事が取り上げた点ですが,この意思の不存在・意思表示の瑕疵と第三者保護の部分でございます。ここはまだ強迫の場合の第三者保護をどうするのかという点が,ブラケットに入っておりますし,今回新たにbの②の支払期日後の譲渡人等については,この保護の対象にしないということが加えて掲げられております。後者については,後で支払期日後の譲渡登録の効力とあわせて御議論いただきたいと思いますので,とりあえずここでは強迫をどうするか,そういう点について御意見を承りたいと思います。いかがでしょうか。既にいろいろ御議論をいただいたところではございますが。  ○○委員,どうぞ。 ● これはパブリックコメントの前の段階から私と○○委員とが,そんなにどちらでも構わないんだけれども,最終的にはパブリックコメントの意見を聞いてみようかということになったわけですが,そこでも決まらなかったので,どうするかということだと思います。  それで,結局軽い強迫と重い強迫と,どちらに着目するのかという対立でありまして,○○委員は多分,重い強迫は,それは意思がないということで処理できて,軽い強迫の方は詐欺なんかと同じように扱えばいいんじゃないかという,手形的な御発想かと思います。それに対して私が考えているのは,やはり重い方の中程度以上の強迫をイメージしていて,うんと軽いものは,それはもう強迫ではないという考え方もできるだろうと。そうだとすると,やはりここだけ手形的な考え方を入れると,ちょっとバランスが悪いので,民法の一般的な考え方にしていいのではないかと思います。  どうしてもこだわるというわけではございませんけれども,そういうことで,一応もとの考え方を維持したいと思います。 ● ほかに,この点について特に御意見をお持ちの方はいらっしゃいますでしょうか。  ○○委員,何か。あるいは今までと同じことになるかもしれませんが。 ● 私も気持ちは変わらないんですけれども,私は気が弱いものですから。皆さんがこうでないと困るとおっしゃるならば,あえて反対はしません。 ● 実務で考えて,これはいかがなんでしょう。強迫の場合には第三者保護というものはなくなってしまうということで,実際に余り例はないんじゃないかと思いますけれども,理論的にどうこうという問題でも必ずしもないように思うんですけれども。 ● ちょっとよろしいですか。○○委員は先ほどから手形代替の活用ということをお考えなわけですけれども,手形とパラレルということになれば,手形では強迫も第三者保護の対象にはなっているというふうに解されているわけですよね。そこは銀行界の御意見では,しかし強迫は対象にしなくていいということのようなんですが,そこは手形代替という○○委員の御発想と何かちょっとずれているのかなと思わなくもないんですけれども,その辺をちょっと御説明いただけるとありがたいんですが。 ● そこは,いろいろなビジネスモデルがある中で,ここについてはどうするかという形で意見を出していますので,そこの整合性は確かにとれていないといえばとれていないです。 ● どういたしましょう。継続して,それでは議論ということで,議論は余りしようがないかもしれません。最後,あるいは決をとるかという形になるかもしれませんが,とりあえず,それではこの点についてはなお継続して議論をするということにしたいと思います。  それでは,bの②については,後であわせて御意見を伺いたいと思いますので,(6)の注の部分に移りたいと思います。この(6)の注の部分というのは,追認の相手方について,中間試案で掲げられていた考え方を再点検する必要があるのではないかという,そういうことで問題点が2つ挙げられていますが,この点について御意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。2つの問題点というのは,5ページのところに①,②と書いてありますが,直接の相手方なのか,あるいは債権の登録をしている名義人かという,そういうことですが,何か……。  ○○委員,どうぞ。 ● またしかられるかもしれないんですけれども,御参考までに,手形のときどうなっているかということです。判例では,追認について言えば,手形の所持人及び直接の相手方,いずれに対してでもいいということになっていまして,これはなるべく追認はやりやすくしようと。訴訟になったときに相手方として,あるいは紛争の相手方として出てきたものに対して追認すれば,本人が追認すると言っているんだから,それで広く効力を認めていい。多分そういう考慮があると思います。学説はさらに広く言っていまして,判例はその範囲でしか問題にならなかったから,それだけしか言っていないんですけれども,その中間のものに対してでも追認をする,あるいは追認拒絶の意思表示をすることができる。本人の意思がはっきりすればいいという考えをとっております。その点について言えば,私は多分,この電子登録債権についても,本人の意思がとにかくそういう形で示されればいいのであって,狭く解する必要はないのかなというように思っております。  なお,つけ加えて申しますと,手形の場合もう一つ問題になっているのは,取消しの意思表示の相手方をだれにすべきか。これ,ちょっとここで議論されていないような気がするんですけれども,むしろそっちの方が手形ではかなり議論があるところであります。 ● それはどういう議論になっているんですか。 ● 判例は,直接の相手方だけに対してしか取消しができないようになっているんですね。それに対して学説は広く認めようという意見です。 ● ありがとうございました。今の○○委員の御説明の関係なんですけれども,民法でも追認や追認拒絶というのは,一応だれにしたって構わないということにはなっていて,ただ,113条2項で,相手方に対してしないと,その相手方に対抗することができないということになっているんですね。手形についての先ほど御紹介いただいた判例とか学説は,この113条2項の相手方に対してしなければ,その相手方に対抗することができないというルールを変更しているということなんでしょうか。そこら辺が,ちょっと文献をよく見ても,よくわからなかったものですから。 ● 実際問題になった事例等を見ましても,そこまで考えて言っているのかどうかわからないんですよね。ですから,本当に113条2項の形で争われたらどうなのかということはあると思うんですけれども,ただ,実際には相手方が出てきたら,そこで意思表示すればいいわけですから,余りそんなぎりぎり問題になることはないのかなという気はしますけれども。 ● そうだとしますと,ここの部分については特に規定を設けなくても,民法のルールのままで賄えるというのは,結局手形における判例,学説にも沿っているということなんでしょうか。 ● 多分,特に規定を設けなくても済むんじゃないかと思いますけれどもね。とにかく,ただ相手方以外の者に対して先に意思表示をしてしまえば,もちろんそれに拘束されるということになると思うんですね。 ● 本人はですね。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 私も○○委員と大体意見が一致するわけでして,やはり追認と追認拒絶は違うのかなと思っていました。手形のことは全然思い浮かびませんで,局面は全く違うんですけれども,債権譲渡の承諾は譲渡人,譲受人のどちらに対してしてもいいということから連想がいったわけですが,追認はどちらでもいいんじゃないかなという気がします。他方,追認拒絶は債権者にしてもいいのかなと思いますが,しかし,それだけだと確定的にならなくて,特に催告権や取消権との関係がある。そうだとすると,民法の一般ルール,今,○○幹事の御指摘になられたことでいいのかなと思います。  以上でございます。 ● ほかに,この点についで御意見ございませんでしょうか。--そうしますと,民法の一般ルールに任せるということで,特にこの点について規定を置く必要はないという,そういう御意見だというふうに伺ってよろしいでしょうか。  それでは,そういう形で,この問題は取り扱いたいと思います。  それでは,この5ページの下の方の,5の登録の訂正等という項がございますが,この問題を御議論いただきたいと思います。  これは,(1)で職権で登録すべき事項を登録しなかった場合を加えたということ,(2)で新たに「回復」ということを加えたということ,それから,ずっと下の方ですが,(4)で意見照会の結果を踏まえて事後の通知を要することとした。そういうことが中間試案と異なる点でございます。これらの点について御意見といいますか,御異論ございませんでしょうかということですが,いかがでしょうか。--特にございませんでしょうか。○○委員,これでよろしいでしょうか。  それでは,今,3つの点を指摘いたしましたが,このような点については特に御異論がないということで,この要綱案のまとめで確定をしたいと思います。  それでは,次のこの6の登録に関する管理機関の責任,その問題の御議論をいただきたいと思います。  (1)は,これは不実の登録についての管理機関の責任,それから(2)は,請求権限がない者の請求に基づく登録がされた場合の管理機関の責任でありますが,意見照会の結果及びこの部会における多数意見に従いまして,いずれも過失の証明責任を転換するという案をこの本文で掲げてございますけれども,この点について御意見等をお伺いしたいと思います。また,注に示してございますように,保存期間が経過していない記録を抹消した場合を責任の対象に加えておりますけれども,その点についても御意見を伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● (1),(2)とも証明責任の転換でいいかどうかということにつきましては,前回以降で内部でも議論しまして,一応これでよろしいかなと。  それで,ちょっと1点確認させていただきたいんですけれども,特になりすましの場合についてなんです。これは,本人確認をIDとパスワードでやる場合に,管理機関の側というのは,主としてIDとパスワードがシステム上一致したということをもって本人というふうに認定しますので,逆にそれさえやっていれば,ここでいうところの管理機関がその職務を行うについて注意を怠らなかったと言えるのではないかなとは思うんです。そこが証明できれば,ある意味なりすましの場合については,さらに利用者側に転換されるということも十分考えられるというふうな理解でよろしいのかどうか。ちょっとそこだけ確認したいんですけれども。 ● 私どもとしましては,ID,パスワードで本人確認をするということになっている管理機関は,そういう業務規程が定められているはずですから,その管理機関を利用した方で,付与されたID,パスワードのとおりでやっておるのにもかかわらずなりすましだという場合は,そもそもそれはなりすましだと立証すること自体非常に困難だと思いますけれども,仮にそうであるにもかかわらず,なおなりすましだというふうに認定された場合には,それは管理機関は,もうそれ以上のことはチェックしようがないわけですから,注意を怠らなかったということになるのではないかと考えております。 ● ○○委員,御意見ございますか。 ● ちょっと,これは消費者取引を除いていますからどうなるのかわかりませんけれども,IDやパスワード,全体のセキュリティーシステムがセキュリティーシステムとしての一定のレベルに達していないという問題はあり得るわけで,そうであれば別だということだけは……。 ● 失礼いたしました。それはおっしゃるとおりで,普通の水準--普通のというか,管理機関としてあるべきID,パスワードの水準がカバーされているということを前提にして,それが使われたときという,そういう意味で申し上げました。失礼いたしました。 ● いかがでしょう。ほかに御意見ございますでしょうか。  この点については,今,○○委員が,基本的には賛成をしていただけるということでございますので,ほかに今まで余り強い反対意見はなかったと思いますので,こういう要綱案の形で取りまとめさせていただきたいと思います。  ○○委員,何か。 ● この実質については,もう既に議論が終わっていますので,今,それに立ち入るつもりはございませんが,言葉だけです。「管理機関がその職務を行うについて注意を怠らなかった」という表現なんですけれども,その職務を行うについて注意を怠らないというのは,例えば会社法の使い方ですとか,あるいは民法の旧44条の使い方ですと,機関ではなくて理事とかのレベルの話ではないかと思うんですね。ここは管理機関自体ということだと,ちょっと使い勝手が違うのかなと思ったんですが,これでよろしいんでしょうか。 ● どうすればよりよいか,教えていただけるとありがたいんですけれども。 ● それはまた考えますが。 ● また御相談させていただいて……。 ● 最後,その言葉遣いの点について,じゃ,少し検討いただくとして,実質としては,この要綱案にまとめられた形で確定をしたいと,そういうふうに思います。  いかがでしょう。ちょっと休みましょうか。それでは,ここで休憩をとりたいと思います。           (休     憩) ● それでは,再開をしたいと思います。  第1の部分で,あと議論が残っている点を取り上げたいと思います。まず,この7ページにございます,この第1の後注に書かれております電子登録債権と原因債権との関係についてでありますが,ここに挙げられた整理ですね。特に取り上げないという整理でありますけれども,そういうことでよろしいかどうかということについて御意見をお伺いしたいと思います。  ○○委員,どうぞ。 ● これは,前回御議論いただいたところで,大体ここにお書きになったような御意見が多かったと思いますので,私も賛成したいと思いますが,1点留保するのは,ここに「(部会資料12の2参照)のとおりの解釈でまかなうこととして」とある,ここは先ほどの発言させていただいたB-2案でいきますと,この部会資料12の2のところが,民法468条2項の,その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由として主張することができるというものですから,先ほどの大体のまとめのように,B-2案がなくなる形で今回の原案のような形でおさまるとすれば,そのままこのとおりの解釈で賄うということで,私としては異論がないということでございます。  以上です。 ● わかりました。この点について一番はっきりした意見をお持ちであった○○委員が,若干の留保はございますが,それは次回,あるいは次々回に決定されることになると思いますが,この原案の事務局のおまとめの方向でいいというふうにおっしゃっていらっしゃいますので,この点についてほかに御意見--○○委員も何かございますか。 ● 私も従前,何かデフォルトルールを置いた方が親切なんじゃないかというふうに申し上げておったわけですが,また意見照会で○○弁護士会とか裁判所とかの意見を見ると,やはりデフォルトルールがあった方が安心だろうと個人的には思っておりますけれども,多勢に無勢ですので後注のとおりで結構です。 ● わかりました。  ○○委員,どうぞ。 ● 賛成させていただいたのは,先ほど○○幹事が,いずれにしてもここのところの解釈論についてはしっかりと方向,説明を打ち出すということをつけ加えてくださいましたので,それを含めてのことで賛成ということでございます。 ● もちろんそういうことで申し上げたわけでございます。  それでは,これについては,この後注に掲げてあるようなまとめということでほぼ決したいと思います。  それでは,今まで特にということで御議論をいただきたい部分について御議論いただいたわけですけれども,この第1の総則全般,ほかに掲げられている項目がございます。それらについて何か特に御意見をお持ちであれば御発言をいただきたいと思います。--よろしいでしょうか。  それでは,それ以外の部分については,この部会資料で今回要綱案という形でまとめられている,そのまとめで一応決したいと思います。  それでは次に,この「第2 電子登録債権の発生」と,それから,大分後ろになりますけれども,「第5 電子登録債権の譲渡」の部分で,特に中間試案からの変更点や,あるいは特に御議論をいただきたい点,それらについて事務当局から説明をしていただきます。 ● それでは,まず第2の電子登録債権の発生の関係ですが,1の電子登録債権の発生の要件につきましては,「電子登録債権」の後に括弧を開きまして,「登録保証人に対して履行を請求する権利及び特別求償権を除く。」と書いています。この場合は,登録保証人に対する履行請求権は保証登録によって,それから特別求償権は支払等登録によって発生することになりますので,それを除いているわけですけれども,これによりまして,中間試案の段階で御議論になりました電子登録債権とは何ぞやということについて,特別求償権も電子登録債権であるというのは,中間試案では注に書いていたわけですけれども,それを規定上もはっきりさせようということでございます。  なお,注に書いてございますように,電子登録債権の定義,1ページでございますけれども,どうしても登録が発生の効力要件だということは定義のところに入れざるを得ないものですから,こちらにもそう書くとやや重複している嫌いがあるかもしれませんので,そこはまた事務当局において,さらに検討させていただきたいということでございます。  それから,次に2の発生登録手続の関係ですが,まずaの必要的請求事項です。①のところ,これは総則を述べたときにも申しましたけれども,前は債権額だけを書いていたんですけれども,支払約束自体も請求事項にし,そして登録をするということにしまして,登録の請求自体に債務負担の意思表示が含まれるようにしたということでございます。  それから,⑤の関係で注を付しておりますけれども,共同相続の場合の電子登録債権の帰属につきましては,中間試案では判例どおり可分債権として取り扱うという考え方と,不可分債権という特別の規定を設けるという両方の案を掲げていたわけですけれども,中間試案に対する意見照会の結果や9月12日の部会での御議論の結果も踏まえまして,特段の規定を設けないで,金銭債権一般の共同相続の場合についての判例理論に従って可分債権になるという整理にさせていただいております。なお,その場合の変更登録をどうするかというところは既に御議論いただいたところですけれども,可分債権ではあるけれども全員一致でなければ変更はできない--そうでないと善意取得とかの問題が起きますので--という,そういう整理をしたいと考えております。今回,まだ第1次案の下はお出ししておりませんので,ここには書いておりませんけれども,そういう整理でいきたいという前提で考えております。  それから,⑥です。この注に書いておりますように,括弧内の事柄は中間試案では法定の任意的申請事項の一つとして書いていたんですけれども,分割払の場合も支払期日というのはあるわけで,分割払の場合の支払期日の問題とセットで処理しなければいけない問題であるということに気がつきましたので,必要的請求事項の方にまとめて書くことにさせていただいたということでございます。  それから,次に9ページ,bの法定の任意的請求事項でございますが,まず③の関係です。中間試案では利息または遅延損害金についての定めとしていたのですけれども,もう少し言葉として広い方がいいということで,違約金という言葉にさせていただいております。  それから,次に大きなところですけれども,「⑤ 善意取得又は人的抗弁の切断の規定を適用しない旨の定め」の部分ですが,ここは中間試案でも,また当部会においても意見が分かれているところですので,それ自体をブラケットにしまして,今日御議論をもう一度いただければと思っております。  それから,その下の注でございますが,信託につきましては,これまで何回か御議論いただいたんですけれども,それぞれの登録事項の一部として信託の場合のことを書くのではなくて,信託の登録という別類型の登録として整理した方がいいのではなかろうかということで,その方向で考えておりまして,次回,下の方をお出しするときにもう少し詰めたものを御相談させていただければと思っておりますので,そういう観点で法定の任意的請求事項からは落とさせていただいているということでございます。  それから,次に(2)の発生登録でございますが,9ページの一番下に注をつけさせていただいております。これは発生登録自体の問題では実はないんですけれども,業務規程でどこまでいろいろなことが定められるかという問題について,何でも定められるというのを原則にしていたわけですけれども,変更登録はやはりそれはまずいのではないかということを詳しくこの注に書かせていただいております。そこで今回は,変更登録については業務規程で制限はできないという整理にすることでよろしいかということを,この注でお伺いしているわけでございます。  それから,⑤でございますが,これはほかのところも同じような形ですけれども,先ほど申しましたように,業務規程で定める事項という書き方がどうも先例が余りないものですから,政省令で定める情報ということにしまして,おそらく政令になるのではないかと思うんですけれども,そこで管理機関が業務規程で定めるものという形で整理するということにさせていただきたいということでございます。  それから,飛びまして第5の電子登録債権の譲渡,19ページでございます。  1は変更ございません。2も,残念ながら中間試案から変更がないわけでございまして,ここは9月12日の部会でも,それから前回も御議論いただいたところですけれども,さらに御議論をいただきたいということでA,B両案を併記してございます。なお,中間試案のときにつけていた注は落としておりますけれども,これは前回の御議論で,当事者が譲渡禁止にしなくていいと言っているにもかかわらず,管理機関だけが譲渡を禁止するというニーズはないというお話でしたから,その注は落とさせていただいております。  それから,3の譲渡登録手続の関係ですけれども,aの必要的請求事項の③,これは既に○○委員から御指摘のあったところですけれども,新たに「譲渡人が登録名義人の相続人であるときは,その氏名及び住所」も請求し,登録するという形にさせていただいております。ここは新規なんですけれども,理由は注に書いているとおりでございまして,これを書いておきませんと,登録原簿の開示を受けても譲渡人が消費者なのかどうかということがわからないということになります。普通は前の譲受人といいますか,債権者が譲渡人になるから,消費者かどうかはその人を調べればいいわけですけれども,この場合だけは中間省略になっているものですから,譲渡人を記録しておきませんと,その人が消費者であった場合に,亡くなられた方は消費者でなかったという場合ですと,間違って善意取得があるだろうと思って譲り受けたら,実は善意取得していなくて権利取得できないということが起きる可能性がありますので,登録事項にする必要があるということで書いたものでございます。もっとも,業務規程でほかのものも登録することができますので,もう面倒くさいから譲渡人を全部登録するという業務規程もあり得るのかなとは思っております。  それから,次でございますが,20ページのcの請求の制限のところに注をつけさせていただいております。後で詳しく御説明しますけれども,一部譲渡の譲渡登録というものをやめまして,分割登録の形にさせていただいております。その関係で登録事項が大幅に減っているということ。それから,信託については先ほどと同じで別類型の登録として登録するということにしていますので,その関係のものを落とさせていただいているということでございます。  それから,飛びまして4の譲渡登録の効力の(1)の善意取得の関係です。ここは書き方を少し変えていますけれども,消費者については適用しないというのをちょっと書き方を変えて表現しているというのがbでございます。  それから,次の21ページの(2)の人的抗弁の切断,ここは大きなところです。中間試案では主観説,客観説の両論併記で意見照会をしたわけですけれども,中間試案に対する意見照会の結果では主観説が圧倒的多数ということでございましたので,ここでは主観説を掲げさせていただいておりますが,これでいいかどうかについて御議論をいただきたいということでございます。  それから,(3)の支払期日後の譲渡登録でございますが,これは先ほど意思表示の瑕疵のところで申し上げたとおりでございまして,支払期日後の譲渡登録については善意者保護規定は適用しないという案の方を採用し,さらに分割払の場合については各分割払の支払期日ごとに分けて考えるという考え方でございます。例えば,5回払いで2回目を払った。そうすると,1,000万円の債権で200万円ずつ払うということになると,400万円分はもう支払期日が経過している。600万円はまだ経過していないというときは,600万円分は善意取得したり人的抗弁の切断があるけれども,既に過ぎてしまった400万円の部分については人的抗弁の切断も善意取得もなくて,仮に400万円が払われているのに支払等登録がされていなければ,400万円分については登録されていなくても対抗できるという考え方をとっているということでございます。  それから,注のところに書かせていただいておりますが,下から3行目の「なお」というところですが,このような支払期日後の譲渡登録について善意者保護規定の適用をしないという考え方をとりましたのは,意見照会の結果もその方が多かったということもあるんですが,支払の場合は,同期的な管理ということが,この中間試案でもそういうことを打ち出していましたし,金融審議会でもその方向でさらに詰めた御議論をいただいているところなんですけれども,法定相殺とか消滅時効の場合は同期的管理のしようがないという問題がございます。つまり,法定相殺の場合を考えますと,電子登録債権が自働債権であれば,自分が債権者ですので相殺をするとともに支払等登録の請求を債権者としてすればそれで済むわけですが,受働債権の場合は,相手方が債権者で相殺しますので,相手方が支払等登録の請求をしてくれない場合は債務者側である自分が請求するから,それについて承諾してくれという承諾請求の訴訟を起こして勝たないと支払等登録ができないということになるわけでございます。そうなりますと,法定相殺をされたのだけれども,支払等登録ができない状態のままで相当の期間が経過するということがあり得るわけで,これは実は中間試案に対する意見照会の中でも幾つかの団体からそのことが指摘されているわけなんですけれども,この問題は,同期性を確保することによっては解消できないと思われます。そこで,支払の方はいいんですけれども,法定相殺の場合は同期性が確保できないということになると,法定相殺されてしまって,自分の債権も債務も消滅しているはずなのに,自分の債務の部分だけ譲渡されてしまって,もう一回払わなきゃいけなくなるという事態が生じてしまいますので,それを防ぐためには,もう人的抗弁の切断の規定の適用はないという形にせざるを得ないと考えた次第でございます。  消滅時効の場合も同じでして,消滅時効の方はやや難しい問題があるんですけれども,つまり,時効期間が経過しても援用の問題がありますので,援用しないで置いておいて,後で請求されたときに援用すれば,そこで対抗ができるということにはなりそうなんですけれども,援用した後になりますと,援用した後,消滅したはずなんだけれども,そこから譲渡されてしまうと,善意取得とか,あるいは人的抗弁の切断という問題になってしまうということで,同じ問題が生ずるということでございます。そこでこういう整理にさせていただいていますけれども,これでよろしいかということを御議論いただきたいということでございます。  最後でございますが,22ページに長い後注をつけさせていただいております。これは事務局で議論をしていまして,だんだんわけがわからなくなってきたために,御教示いただきたいということでつけた注でございます。これは法定代位の問題でございますが,法定代位が生じた場合,これは例えば電子登録債権を被担保債権の一部とする抵当権の設定をしていて,その物上保証人がかわりに払ったという場合に法定代位が生ずるわけでございますが,その法定代位が生じた後に,代位者が法定代位した電子登録債権を譲渡しようとする場合に,これは譲渡登録になるのか,それとも変更登録になるのかというのが直接の問題でございますが,前提として御議論いただかなければいけないのは,まず法定代位とは何ぞやという問題になりますので,主として民法の先生に教えていただかなければいけないんですけれども,法定代位というのは,代位者の求償権を担保するために代位者に移転するものであるというふうにどの本にも説明されておりますので,求償権と切り離して独立に譲渡することができず,求償権を譲渡することによって,これに随伴して移転するだけであると考えていいのではないかと思っているんですけれども,どうもそのことは,そもそも法定代位した債権を譲渡するという場面設定のことが書かれていないものですから,本当にそうなのかどうなのかということをまず教えていただきたいというのが1つ目でございます。  仮に求償権の譲渡に随伴しての移転しかないんだということになれば,法定代位した電子登録債権の譲渡については,一般の電子登録債権とは異なりまして求償権を譲渡することに伴って移転するだけですから,善意取得を認める余地もないし,譲渡登録を効力要件とする必要もないというのが一つの考え方になるのかもしれないということでございます。ただ,法定代位した電子登録債権が求償権の譲渡に伴って移転する場合でも,やはり電子登録債権の移転なんだから,その譲渡について登録を効力要件とすべきじゃないかという考え方ももしかしたらあるのかもしれないということを,一番最後のところの「また」以下で書いてございます。  他方で,善意取得のない登録は譲渡登録の中に入れないという形に中間試案段階で整理していただきましたので,法定代位した電子登録債権の譲渡といいますか,求償権に随伴した移転と言うべきなのかもしれませんけれども,それは譲渡登録じゃないということになりますと,変更登録で受けるということになるんじゃないかと思うんですけれども,その場合,この「他方で」という真ん中から下のあたりに書いている段落なんですが,その変更登録は一体どういう変更登録をするのかということが問題でございます。問題といっても,やれるのは,法定代位が生じたことを示す登録は支払等登録しかないわけですので,その支払等登録の支払者の名前を譲受人名義に変更するほかないんだろうと思うんですけれども,支払等登録というのは,だれが支払ったかということを登録しているのに,譲受人が支払ったということに変更していいのかというのが,ちょっと何か変な感じがするので,譲渡登録の方がその点ではいいのかなと思わなくもなく,それでお考えを承りたいということでございます。  以上です。 ● それでは,順次御議論をいただきたいと思います。  まず第2の電子登録債権の発生と,この第5の電子登録債権の譲渡の部分,今御説明をいただきましたが,まず,この8ページの第2の「2 発生登録手続」の(1)のaの⑤の注のところですけれども,債権者に共同相続が生じた場合には分割債権とすることについて御議論いただきたいと思います。これは今までの議論で特に御異論はなかったように思いますが,いかがでしょうか。--では,この点については,この要綱案のまとめのとおりとさせていただきたいと思います。  それでは,次のページにございます,この第2の2の(1)bの「⑤ 善意取得又は人的抗弁の切断の規定を適用しない旨の定め」についてでございますが,これについては中間試案では,このA案からC案まで3つの案が掲げられておりましたけれども,ここでは,このブラケットを付した形でA案を記載しておりますので,ブラケットだけを外せばA案,ブラケット部分を削ればC案ということになりますが,この点について御意見をお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● ここについては従来から同じようなことを申し上げていますけれども,できるだけ自由度があった方がいいのではないかと思いますので,この⑤の規定がそのままあればいいのかなと思います。 ● なるほど。ほかに,この点について御意見ございますでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● 私も,これを特に排除する必要はないように思います。なるべく幅広い利用の仕方がされた方がいいように思いますので,⑤は残していただきたいと思います。  この後,私,早目に退席させていただきますので,それとの関連で申しますと,後の第5の方の2の電子登録債権の自由譲渡性,ちょっとこれはある面,共通する問題でもありますので……。 ● 19ページ。 ● 19ページ。これについてもB案の方を支持したいと思います。  以上です。 ● それでは,9ページの真ん中にあります⑤ですが,これはこのまま残したらどうかという御意見を,今お2人の方からいただきました。いかがでしょうか。これは,消すべきだという御意見があれば,なお継続して議論したいと思いますが,今の意見で尽きているということでございますと,もうこれはブラケットを外して⑤をそのまま残すという形にしたいと思いますが,よろしいですかね。おそらく今まで議論があって残ってきているので,何かほかの御意見がございましたと思いますが,いかがでしょうか。  ○○委員,何かございますか。 ● これは,今の⑤についてですか。 ● ええ。ブラケットが残っているので,このままブラケットを外してしまいますと,当初のA案ということになりますけれども。 ● これは私はよくわからないんですよ。 ● ですから,任意の定めを--それは自由なわけですけれども。 ● 私はむしろ,この⑤よりも,その前の④のところをスキップされているんですけれども,ここの譲渡登録等を制限する旨の定めという,ここのところ,上の④のところの方がちょっと問題だと思っているんですが。 ● ちょっと,⑤をとりあえず議論したいと思います。  ○○委員,手が挙がりましたか。 ● 私も同じことで確認の質問で,これが残ってきたんですけれども,実務上これはどういうときに使いたいというのか,いま一つ私はイメージがわかないので,それを確認してから,ほかに皆さんの御意見がなければ,私もそのまま同意しようということで考えておりましたが。具体的にどんなケースでこれは……。 ● 事務局,御説明いただけますか。 ● 電子登録債権の活用の仕方の一つとして,今日も何回も出ていますように手形代替というのがあるわけですけれども,手形には指図禁止手形というのがありまして,指図禁止手形の場合は善意取得も人的抗弁の切断の規定も適用されないというものがございます。ですから,そういう手形代替で使う場合で,しかも指図禁止手形としてのかわりに使うという場合が,この⑤の場合だと思いますけれども。 ● ○○委員,どうぞ。 ● さらに具体的に言えば,まさに事業者が自分の債権者に対する抗弁をきちんと主張したいと,第三者に対する関係でも主張したいと,瑕疵があったりした場合の抗弁をちゃんと主張したいというときに,後から判明する場合もありますから,それを保留して,そういう抗弁権を保留した上で譲渡するということも認めてほしいというのが,この⑤の趣旨だと思います。 ● ○○委員,どうぞ。 ● ○○委員は前からおっしゃっています譲渡禁止との関係で言いますと,譲渡は禁止しないんだけれども,人的抗弁は書いておきたいということが当然実務ではあり得まして,そういうことが認められれば,譲渡禁止じゃなくて譲渡をしてもいいかなというようなケースというのも増えてくるんではないかなと考えているんですけれども。 ● いかがでしょうか。これは特に,それでは……。 ● そうすると確認なんですけれども,後の方に抗弁の規定が出てきますよね,譲渡のところで。それがこれを入れておくと無になるということになるんですか。 ● 20ページに善意取得が出てきまして,21ページに人的抗弁の切断が出てくるんですけれども,この規定を適用しないという定めですので,この定めを登録しておくと,その電子登録債権については善意取得も生じないし,人的抗弁も全く切断されないということになるわけでございます。 ● そうしますと,これの人的抗弁の中に,前回も議論が大いにあったところですけれども,譲渡禁止特約もこの人的抗弁に含まれるという見解をとって,かつここのところを残すと何でもできちゃいますよね。譲渡禁止特約が実はあったんだというのが後出しができてしまうことになりませんか。 ● とにかく,この⑤の定めを登録すると,ありとあらゆる何でも言えるということになりますので,それは○○委員がおっしゃるとおりかもしれません。 ● そうなりますよね。それであれば,私は強硬にこれは削除ということで,そうしないと後の議論の以前に,もう既にこれで抜け道ができてしまいますので。 ● だから,ちょっと飛ばしてあれですけれども,19ページの第5の2とまとめて議論していただいた方がいいかもしれませんね。前回もそれで一緒に議論していただきましたので。 ● それでは,ちょっと順序があれですけれども,19ページにあります,この第5の2の問題とあわせて御議論いただければと思います。 ● それでは,今の話は,ですから人的抗弁のところに譲渡禁止特約が含まれるか,譲渡禁止特約だけは譲渡性を奪うというものだから,単純な人的抗弁ではないのではないかという議論が前回出ていました。それがまたこの後で,抗弁のところで議論されるのかもしれませんが,それ以前に,まず19ページの2のところへ行ってよろしいわけですね。ここに関しては,その議論よりもさらにさかのぼって,私としては従前から主張していますように,ここはA案にすべきだと。  理由をもう一回申し上げますが,どうも前回,前々回の議論の後でも,企業の方とかにも私は個人的に聞いた範囲ですから非常に狭いんですが,A案で言っているのは,全面的な譲渡禁止特約をすることはできないということですから,何度も出ているように,譲渡先を限定するとか譲渡回数を限定すると,そういうことは何でもできるわけですよね。そうすると,全面的譲渡禁止特約ができないと使わないという御意見もありましたが,どうもほかにメリットがあれば,やはりこの電子登録債権を使う。だから,全面的譲渡禁止ができないからといって,それが絶対的な理由で使わないという,そういう御意見は余りないように私は受けとめました。したがって,ここではとにかく一々この電子登録債権について譲渡性があるのかないのかなんていうのを調べるというような,今の民法の指名債権についてされているようなことを繰り返すことになるのは絶対避けたいと思いますので,電子登録債権には,とにかく流通性がある。そういうことを宣言する意味で全面的な譲渡禁止特約をつけることはできないと,こういう規定を置くべきであろうと再度意見を申し上げる次第です。  以上です。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 実務上,譲渡禁止というふうに言われているものは,債務者が承諾する相手には譲渡できるという制限になっていまして,それがここで言っている全面的譲渡禁止特約に含まれるというふうに御主張されているようなので,それだと実務的にその部分のニーズが取り込めないだろうという御指摘でございまして,全く流通性を奪ってしまうとか,そこまで意図しているわけでは必ずしもないんですけれども,結論的には全面的に譲渡性を奪うというものも外す必要もないかなということで,とりあえずは入れてありますけれども,特に制限を設ける必要はないんじゃないかというB案を私は支持していると,そういうことでございます。ですから,実務上最低限必要だというのは,債務者が承諾する相手方には譲渡できるという特約でして,実務上,いわゆる譲渡禁止として行われているものが,この制度の中で取り込めればかなりいいんじゃないかなという感じはいたしております。 ● ○○委員,どうぞ。 ● これは中小企業の立場から言いますと,やはりこの電子登録債権というのは,いわゆる資金調達の手段として,それからもう一つは支払手段として使おうというニーズがあるわけですね。そのためには,やはりこの流通性というものは非常に重要だと思っているんです。今,○○委員が言われたように,債務者が同意すればいいんだよということではあるかもしれませんけれども,その債務者に一々承認を求めるということが,今現在売掛債権の流動性を妨げている要因そのものであるわけですね。それで,そもそもこの電子登録債権を議論しようということについては,要するにこの平成17年2月にIT戦略本部で決定したIT政策パッケージ2005というのがあるわけですね。その中に要するに電子的手段による債権譲渡の推進によって中小企業等の資金調達環境を整備するため云々というところがあるわけでございます。このそもそもの前提条件は,中小企業のために債権譲渡に流通性を与えようということが発想なわけでございまして,そういうことからいっても,前提条件である債権流動性を確保するということからいけば,当然これはA案しかないと私は思っております。 ● ○○委員,どうぞ。 ● その点については,私どもも特に異論はございませんで,ただ,要するにそれ以外の部分をこの制度の中に取り込みたいと。要するに現状行われているそういった相手方を制限するような指名債権の扱いについても,この制度内にできるようにしたいと。特に任意的登録事項が大幅に認められているような制度を作るということでありますから,そういったものも制度に取り込んでいけば,将来的には○○委員のおっしゃっているような方向で制度が収れんするかもしれません。ただ,現状でそれを外して,取り込まないということだと,全く現状でいわゆる譲渡禁止が使われている債権については,この制度のらち外ということになりますので,永久に2つが平行で進んでしまう可能性もあるんではないか。それよりもむしろ,この制度の中に取り込んでいけば,別に害することはないんではないかと感じております。 ● ○○委員,どうぞ。 ● また同じことのオウム返しになってもいけないんですが,永久にそういうふうになるなら,それはそれで結構だろうと思います。私は,譲渡禁止特約をいろいろ調べてみましたけれども,ほかの省庁の研究会なんかでも,どういう理由で現在の譲渡禁止特約つき債権というのが存在しているのかというのをアンケート調査,何千社にも対してしたものがあるんですが,それを分析しても,どうしてもこのまま譲渡禁止特約をつけなければ,この債権は動かないというのは,私は余り存在しないと思いました。したがって,こういう主張をしているわけでございまして,どうしても譲渡禁止を全面的につけたいという債権は,そのままおやりになればよろしい。それで,今,不要不急と言っては失礼ですけれども,ほかの理由で事務的な簡易化とか,余り事務を煩瑣にしないというような理由でつけられている譲渡禁止特約はとれることになるのではないかと思っております。そして,その譲渡先を一つ二つに限定して,ここだけしか認めないというようなことも書けるわけですから,あくまでも全面的譲渡禁止特約というのは電子登録債権では認めない。したがって,抗弁とか何かでそういうものが後から譲渡禁止だったよということが出てきて,物権的効力だよと言って譲渡が否定されてしまうというようなことは絶対に電子登録債権の場合にはないと,そこだけ確実にするためには,全面的な譲渡禁止特約というのはつけられないという明示的な規定を置く。それで十分だろうと思っております。  以上です。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 私も,ですから,使いたい人だけは使える。使いたくない人は使わなくていいというような,そういう狭い制度設計をされること自体が,電子登録債権をかなり広く取り込もうというような制度趣旨で行われていますから,使いたい人だけは使う,純粋培養のそういう制度にしても,現実にはたくさんそういう指名債権が存在していますから,それを取り込んだ方が実務的ではないかと,そういう発想でございます。 ● B案の方なんですけれども,前回の部会での御議論で,譲渡禁止特約を当事者間でしたとしても,登録しない限りは,これは人的抗弁にすぎないという整理になったと思うんですけれども,そうなりますと,登録するかどうかは先ほど来議論していただいた発生登録の登録事項ということになって,それは法定の任意的請求事項の中に入っていませんから,法定外の任意的請求事項ということになります。そうすると業務規程で定める範囲内でしか登録できないということになりますので,これは9ページのcですけれども,そうすると,仮にB案をとったとしても,それを物的抗弁のような形で対抗することができるようにするためには登録しなきゃいけないわけですけれども,その登録ができるかどうかは各管理機関の業務規程によって決まるということになるわけですね。それはよろしいですね。そうすると,例えば手形代替で使うような場合に,業務規程で債務者の承諾がなければ譲渡しない旨の登録を任意的登録事項としてするということは認めるんでしょうか。 ● 手形というような場合,イメージとしては,今の手形の取扱いの要領にできるだけ似せた形で約款とか業務規程とかも固めて,これに乗っかってくれば手形と同じような扱い方ができますという形でおそらく設計されると思いますので,そういう意味で,全面譲渡禁止というのは,その対象から多分排除されるんではないかなとは思います。 ● ○○委員はいかがでしょう。 ● 今の○○委員の意見でおおむね結構です。 ● そうすると,そういう債務者の承諾がなければ譲渡できないというのは,一括決済でもそういうのはちょっと考えにくいように思うんですけれども,考えられるとしたらシンジケートローンということになるわけですか。その登録が認められるとすれば。 ● おそらくシンジケートローンの場合は,債務者というよりもエージェントとか,だれかの同意がないと譲渡できないというふうな形にしておきませんと,シンジケート団相互のいろいろな諸連絡とか,そういうようなメカニズムを別途維持しないといけませんので,おそらくそうならないとちょっと苦しいのではないかなと私は思います。ただ,債務者ではないので,それが全面的な譲渡禁止でないんだというのであれば別ですけれども。 ● ただ,中間試案の前の御議論ではエージェントのことは議論しなかったと思うんですけれども,債務者の個別の承諾がない限り譲渡できないというのは全面的な譲渡禁止で,つまり譲渡禁止特約を解除する意思表示が債務者の承諾だから,そうすると,その債務者の承諾にかわるものをエージェントが行使しているだけだということになると,それも全面的な譲渡禁止の一類型ということになりそうで,それを認めないとシンジケートローンの場合はまずいということになるのかなという,今のお話を承っていて思ったんですけれども。 ● その関連で申しますと,以前,○○委員とも御一緒させていただいて検討をしたところに,中小企業等に対する貸出債権を流動化するという,貸出債権の流動化の研究会を金融庁肝入りで行いまして,そこでいろいろな実例等も検討したんですけれども,少なくとも多くの中小企業は,なお自分の債権がむしろ譲渡されないということを前提に融資を受けて,債権を譲渡するときには債務者の同意が必要だと--それは既存の債権ですね,シ・ローンなどの新しいものについては流動性を認めた約款を入れたりされているようですけれども--既存のものについては,むしろ当然の前提として,いわば債務者の同意がないと譲渡できないというものが多くて,それを前提にどういう制度設計をしようか。あるいは私も○○委員と同じように,なるべく流動性が高まっていくことは望ましいと思っていまして,そのための仕組みをいろいろ検討したんですけれども,ただ,残念ながら既存の債権等についてはそういうものが多いですし,中小企業におかれましては,なお自分の知らない債権者があらわれるということに対する抵抗感も非常に強いものですから,それを前提にどういう制度を作ろうかということを検討して報告書を出して,いまだにそれほど大きくはそれは変わっていないようなので,それを考えますと,そういうものも取り込んだ電子登録債権の市場を作る必要がありますから,将来の理想としては,私も流動性が担保されているのは電子登録債権だということならば望ましいとは思いますけれども,そういう現状の既存のそういう債権の市場を取り込んでいくことを考えると,やはりそういうものも認めた方がいいんじゃないかなと思っている次第です。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 今のお話とも若干関連するんですけれども,譲渡禁止がつけられれば電子登録債権化したいというニーズも逆にあるんじゃないかと思っています。それは,よく融資の電子化とかいうことも言われていますけれども,これは前にも申しましたけれども,金銭消費貸借約定書の代わりに電子登録債権に,任意的登録事項に約定をいろいろ書いて使うといったことも考えるんではないかなと思いますので,そういったいろいろな使い方を認めていくという観点からは,譲渡禁止特約がつけられてもいいんではないかなと私は思います。 ● それでは,先ほどの○○幹事のおっしゃられたものは,譲渡はエージェントの指示する譲渡先に限定されるということで書けばよろしいので,私の考えている全面的な譲渡禁止特約には入らない,こういうことですね。だから譲渡先の限定,さっきも申し上げたそういう形で処理できると考えております。  それから,○○委員が,今,貸出債権で中小企業の立場でとおっしゃったんですけれども,先ほどから○○委員がおっしゃっている,中小企業が資金調達で使うときのものは売掛債権ですので,金融機関からお金を借りたものが,金融機関がそれをセカンダリーで譲渡したというケースと同列というよりは,全く逆の問題でありまして,○○委員がいろいろな使い方がされるためには譲渡禁止特約がつけられれば電子登録債権にしたいとおっしゃる,そういう向きもあるだろう。それは私は否定しません。ただ,今一番問題になっているのは売掛債権が中心でありますから,ここについて流通性が確保される債権であるという大前提が法によって示されると,これが何よりも大事だろうと私は申し上げているわけでございます。  以上です。 ● 今の○○委員の御発言は,最初の部分についてちょっと確認の御質問をさせていただきたいんですけれども,○○委員は,シ・ローンの場合,○○幹事がおっしゃったエージェントの個別の承諾がないと譲渡できないというのは,そういう形で構成するんじゃなくて,エージェントの指定する先にしか譲渡できないという相手方の制限なんだというふうにおっしゃられたと思うんですけれども,そうすると,債務者の承諾がない限り譲渡できないというのも,債務者の指定する先にだけしか譲渡できないという相手方の制限に置きかえれば全部できるということになるんでしょうか。 ● 違います。譲渡禁止特約というのは,債権者と債務者の間で別段の意思表示をすることですから,債権者と債務者の間で全面的な譲渡禁止特約をすることはできない,こういうことを言っておるわけです。だから,債務者の承諾があればというのは,債務者が譲渡禁止特約の別段の意思表示をしているわけです。だから,債権者と債務者の間で譲渡禁止の特約をして発生登録をすることはできないんです。それはA案の全面的なということ,そこだけ限定しておければよろしいと私は思っています。 ● ○○委員のお考えを貫くと,エージェントの場合もやはり全面的な禁止になるんじゃないかなという気がしてならないんですけれども,その違いをもうちょっとわかりやすく教えていただけるとありがたいんですけれども。 ● エージェントが指定するというのは,第三者に譲渡先の制限を委ねるということですから,それは債権者と債務者が全面的な譲渡禁止特約をしたことにはなりません。だから,民法の条文の書き方を見てもおわかりのように,当事者が別段の意思表示をするんです。要するに,多くの場合,債務者がそういう意思表示をして,債権者はそれを受ける。それで譲渡禁止特約というふうに呼ぶわけですけれども,ですから,債務者からの全面的な譲渡禁止の主張というのは許されないということです。それをA案で示せばよろしいんではないかという,それだけのことです。  繰り返しますけれども,その結果,電子登録債権を資金調達等に使うような場合には,その流通性について,まず調査したりする必要がないということになります。それで,譲渡先の制限等は書かれていればそれでわかるわけですから,全面的な禁止は書きようがないと,こういうことになるわけです。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 今の御説明だと,要するに,形式上債務者と債務者がそういうふうに承諾するものというのじゃなければ,第三者が指定するというふうにすれば,その譲渡先の制限だというふうに,そういう形式的なことをおっしゃっているんでしょうか。もしそうだとすれば,債務者の関係会社を第三者として,それの承諾を要するものとしていれば,実務上は対応が可能かなと今思いました。 ● ○○委員のおっしゃっていることはこういうことでしょうか。○○委員の一番の,先ほどおっしゃったことは,隠れた全面的譲渡禁止特約が後で浮かび上がってきて物的抗弁としてきいてくるのが不当であると。それが善意取得とか人的抗弁の適用がないという特約とか,あるいは支払期日後の譲渡について浮かび上がってこないようにしたい。だから,債務者の承諾がある場合のみ譲渡可というのも,積極的にそういうふうに登録しておくということであればよろしいんでしょうか。つまり,隠れた譲渡禁止特約が人的抗弁でやったものが,あたかも物的抗弁のように浮かび上がってくることさえ防止できればいいのかということなんですが。ネガティブで書かないでポジティブで書いておけばいいのかという……。 ● ○○委員が御指摘になられたように,やはり一番避けなければいけないのは,そういう隠れた譲渡禁止特約が後から出てきて譲渡が無効になると,これですよね。だから,これはもうおっしゃるとおりです。ただ,それをどういう範囲で制限するかというときに一番わかりやすいのは,とにかく全面的譲渡禁止特約はできませんとして,後ろに置いておいて後から抗弁で出してくることもできないしという仕切りにしたらいかがかというのが私の提案です。 ● その場合に,○○委員は,債務者の指定する先にのみ譲渡できるというのはよろしいというわけですよね。 ● ですから,その譲渡先の制限として,最初からそれを書いておくわけですね。 ● 譲渡先を特定して,固有名詞でこの譲渡先と書かなくても,債務者がオーケーする譲渡先には譲渡できるという積極的な書き方はよろしいんですか。 ● それでやった場合に,債権譲渡してから債務者がここの譲渡先はオーケーしていないということになると,結局禁止特約でしょう。 ● いやいや,結局,譲渡するときに債務者がオーケーを出すのであれば,そのオーケーを管理機関は確認しなきゃ譲渡登録できませんよね。だからそういうことはないはずなんですよ。 ● ですから,それでは資金調達のために使えないわけです。だから,債務者が制限するとか,債務者が同意しなければ譲れないというのはやめていただきたいと思います。 ● そうすると,先ほど○○幹事がおっしゃった,エージェントの指定する先にのみ譲渡可というのも,だめだとおっしゃらなきゃおかしいんじゃないですか。 ● ですから,それは私は一つの譲渡先の限定ルールでいけるんだろうということであって,じゃ,それを潜脱してということで第三者を何か設定してと,そこまでおやりになるなら,それはおやりになってもいいんじゃないかということですね。 ● いやいや,○○幹事のおっしゃる制限は,何らかの形でオーケーだというお立場をとること自体が矛盾しませんかというのが私の疑問なんですけれども。つまり,エージェントの指定する先にのみ譲渡可というのは,指定する先はまだ書いていないわけですよね,そのときには。どこどこ会社に対するとは書いていないわけですね。そうすると,結果的には債務者の同意する場合のみ譲渡可というのと同じことであって……。 ● ただ,シンジケートローンですよね。だから,シンジケートローンは,まずメンバーがエージェントの意向に沿わない譲渡はできないんじゃないですか,契約上。 ● よろしいでしょうか。私ももう現場を離れて長いので,何とも言えない部分がございますが,例えばこういうところにしか譲渡できないとか,いろいろそういうような条件が入る場合もあると思いますし,エージェントが承諾するとか,少なくともエージェントの同意を得たとか,そういった条件が入ることの方が多いと思うんですよね。ただ,エージェントが普通同意を与えるかどうかというときに考えることと,債務者が同意を与えるかどうかというときに考えることは違いますので,そういう意味では,○○委員のおっしゃる趣旨は,債務者と債権者との間のそのような取決めは許さない。しかしながら,エージェントというのはちょっと債務者とは違う。筒のように使えるではないかと言えばそこまでなんですけれども,現実の世界においてはエージェントはエージェントの固有の利益を持っていて,債務者の利益とものすごく重なるかというと,そうではないので,別に見るという考え方ができないわけではないようにお伺いしていたんです。ただ,○○委員も御懸念されるように,エージェント的な,要はわら人形のようなものを持ってきたときにどうかというと,微妙になることは否めないとは思います。 ● ちょっと質問させていただいてよろしいですか。それは,要するに譲渡禁止特約を個別に解除するという,そういう方に関連するわけではない。 ● そこまですごく詰められているというわけではないと思います。ただ,やはり……。 ● もしそういうふうに関連できるんだったら,やはり譲渡禁止特約を認めたという形になりますので,どちらに属するかというのは微妙ではあると思いますが。 ● 通常は,ただむしろシンジケーションの,普通の頭からいうと譲渡はできるんだけれども,要はシンジケーションとしてのある種の団体性を維持するためには,シンジケートとしての団体の規律を承諾してくれると。あとは団体性を現実に維持できるような相手じゃないと困ると。そうじゃないとエージェントとしてその責任は持てませんよというふうなことなのかなと思います。 ● それはむしろ,やはりA案に近いですよね。非常に厳しい制限がかかっているというような形になるんでしょうかね。 ● ただ,そもそも譲渡される世界がそんなに変な世界ではありませんので,現実にはノーだというふうなことが発動されることが多いとは思わないんですけれども。 ● なるほど。  ○○幹事,どうぞ。 ● ちょっと○○委員に事実関係の確認だけさせてください。取引銀行にすら持っていってはいけない場合というのがあり得るのかというのは,ちょっと想像がつかないんですけれども。つまり,本当に何もどこにも譲渡しないということを前提にするような場合というのがあり得るのかどうかというのは,まずそこをちょっとお伺いしたい。 ● 先ほど申しましたとおり,別にそういうようなことは前提としておりません。 ● そうだとすると,○○委員のおっしゃられる解釈の仕方でいけば,多分そこは抜けられるような気が私はするんですよね。つまり,取引銀行もしくは自分の関連会社は必ず譲渡先にはなり得るので,したがって,その今の解釈でいうところの全面的譲渡禁止特約に当たらないというふうな抜け方というのが可能かなという気がするんですけれども。逆に言うと,今議論になっている,だれが出てくるかどうかわからない段階で電子登録債権だけ発生させるという行為というのは,それはまた何なんだろうかという感じがしていて,やはりそもそも譲渡性を前提にこの議論をずっとやってきたわけですから,発生させる段階でどこまでそれがいくのかどうかというのが,本来はわかっているはずじゃないかなというのが私の今までの理解だったんですけれども。 ● ですから,別に限定的に考えているわけではなくて,要するに制度をできるだけ広く構築したいと,そういう発想でございます。できるだけ,今考えられているニーズだけではなくて,さまざまなニーズがあり得るわけですから,取り込めるんではないかと。別にこれを譲渡禁止特約を認めないというふうにしなくてもよろしいんではないか。まだいろいろな使い方が考えられます。ここで議論しているだけではなくて,さらに多くの商品開発が考えられるわけですから,今の段階でそれは取り込まないんだと,流通性は極限まで高めるということであれば,そういう制度設計というのもあり得るかもしれませんけれども,ここで議論しているのは,かなり任意的登録事項も非常に広いですね。手形代替として使う場合もありますでしょうけれども,いろいろな形を考えられていますから,取り込めるようなものは取り込めた方がいいんじゃないかという発想でございますので,○○幹事がおっしゃるような狭い形で考えているわけでもないと,そういうことでございます。 ● 禁止特約をつけたいものは,それはつけてもいいということを認めるという程度のことで,それ以上の意味ではないということですね。 ● そうですね。ですからそれほど深くは考えておりませんし,いろいろなものが取り込めるんじゃないかなと想像しているわけです。実務はいろいろ工夫するわけですから。 ● ほかに。  ○○委員,どうぞ。 ● ○○委員がおっしゃることは全くごもっともで,そのとおりなんですが,やはり実務の世界では現実問題,譲渡に制限をつけている契約というのは結構,特に売掛金等は多いんですね。ただ何となく今までついていたからそうなっているという場合も確かにあります。多くの官公庁契約というのは,残念ながら譲渡禁止特約がついているんですよ。じゃ,そういうものを電子登録債権にしないのかというと,これも非常にそれはそれでもったいない話でしょうし,それから,例えば工事進行に伴ってお支払いをするような場合については,売掛金を持っているというのは一種の担保的な効果があったりとか,それが自由に譲渡されてしまうと,どう抗弁をつけるかという問題はあるんですけれども,そういうややこしさが出てくるとか,悪質な取立屋に譲渡しないですよねということは,悪質な取立屋に譲渡しませんという登録を認めるかどうかみたいな話になっちゃうので,それはそれで,実務のニーズとしてはやはりあるんだと思うんです。  それから,多くある取引としては委託加工取引というのがありまして,材料を支給して加工して,その分をお支払いするという形になりますと,債権債務を両建てで持つんですよ。ですから,材料を支給した材料代と,加工していただいた結果完成品として仕入れる取引というのは,これは債権債務両建てで持ちますので,片側だけが処分されてしまうと,その範囲の中で取引を行っているという,いわゆる与信とリンクした取引というのも結構行われていますので,一概に本当に譲渡禁止特約が全部悪なのかというと,必ずしもそう言い切れない部分があるので,少し制度の定着を待てば,私は必ずしもそういう譲渡禁止特約というのが使われる場面というのは減ってくるだろうと,ちょっと楽観的に考えていますので,スタートの段階はそれを認めないということはむしろしない方が,制度の普及にとってはプラスではないかと思います。 ● ○○委員,どうぞ。 ● やはり,先ほど出たようにシンジケートローンとか,その辺は私は詳しくありませんからわかりませんけれども,売掛債権について言うならば,やはり自由に流通性が確保されるということが何より必要なことでございまして,やはり今,特定の債務者に対して特定のところへ,要するに資金譲渡なんかのために使いたいということで譲渡の承認を求めたときに,やはり何より怖いのは風評被害なんですね。要するに,売掛金まで担保なりそういう形で利用しないと,あそこは資金繰りが苦しいんではないかというようなことを言われるという風評被害というのが,非常に今,売掛債権担保融資とか,そういったもので障害になっている現象なんですね。そういうことからいけば,やはり売掛債権をそういう制約なしに自由に譲渡できるということが,やはり中小企業として見たら何よりも必要だろうと思っております。  それから,先ほど,中小企業の借入れについて譲渡するということについて,中小企業は抵抗があるよというお話がございましたけれども,これは,従来借入れというのは対銀行と企業との相対契約でございまして,これが流通するという前提では全く考えていない。我々も銀行から借りたものは銀行に返すということで,一つの流れができ上がっているわけですね。ただ,最近は,これはもう○○委員なんかはよく御存じですけれども,いわゆる貸出債権を流通させるということを前提にして,あらかじめ銀行と企業が契約をして,場合によっては外へ銀行が売り出すというふうなことも承認してくださいということで,それを承認した上で借入れをするようなものも出始めているわけです。ですから,そういうことからいけば,中小企業はすべて借入れの場合でも譲渡禁止を望んでいるケースってあるんだよというのは,必ずしも今,そういうことではないということをつけ加えておきたいと思います。 ● ○○委員にちょっと教えていただきたいんですけれども,今,○○委員は,債権者として売掛債権を資金調達手段としてお使いになる場合のことをおっしゃられたんですけれども,逆に買掛債務の債務者になる場合もあると思うんです。その場合はどうなんですか。譲渡禁止というのはつけるんですか,それともつけない。 ● 一般的に譲渡禁止というのは大企業がつけておりますけれども,中小企業でつけているケースはまずないと思います。しかも,大体において,いわゆる取引の中で,まず契約書を交わしているものがどれだけあるんだろうかといったときに,契約書ベースで取引をしているというのは,まず大企業取引しかありません。ありませんというのはちょっと言い過ぎかもしれませんが,大企業の場合には取引約款というものをきちんと交わして,それに基づいて取引をしているということですけれども,中小企業間ではまずほとんどと言っていいぐらい契約書そのものがない。したがって,そういう中に譲渡禁止だとか,そういう概念というのが全くないし,それからまた,多分中小企業の売掛債権を受け取られた方が,なかなか大企業の場合なんかでは,それを活用してまで資金繰りに充てようという方はまずないだろうし,中小企業同士,こういう道ができてくれば,そういうことに活用できるであろうという期待があるということです。 ● いかがでしょうか。依然としてこの問題については議論があるように思いますので,引き続きこれは議論をさせていただくとして,これは結局,もとに戻りますけれども,この9ページのちょうど真ん中あたりのこの⑤についても,これは決まらないということになりましょうか。 ● セットですから。 ● だから,この点についても今,自由譲渡性についての結論の帰趨を見きわめた上で,さらにこの9ページの⑤については議論をしなくてはいけないということになろうかと思います。  それでは,いずれについてもなお継続して議論をいただくとして,次の項目に移りたいと思います。それでは,次に,この⑤の下の注の信託についてですけれども,これは先ほど紹介がありましたように,次回にまとめて御議論をいただくということにしたいと思います。  次に,この9ページの下にあります第2の2の「(2) 発生登録」の②の注の部分に移りたいと思います。これは管理機関による変更登録の制限は認めないこととしてはどうかという,そういう提案ですが,これは主に管理機関になられるお立場の委員の方から御意見を伺えればと思いますが,いかがでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● 特にそういうことで異存はございません。 ● よろしいでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● 同意見でございます。 ● ほかに。  ○○委員,どうぞ。 ● この注じゃなくて,その上の②なんですけれども,それともう一つ,先ほどもちょっと……。 ● (1)のbの④ですね。留保しました。失礼しました。 ● その④のところも,先ほどの譲渡のところではA案を私はとるという立場でございますけれども,これは,私はちょっと○○委員よりもさらに幅広く,全面的なというよりも,この分割とか,あるいは譲渡先の制限とか回数の制限とか,こういったようなことを含めて,できるだけ自由度を高めるという意味で,この(1)のbの④,(2)の②というのもA案のところと同じように,ちょっと御検討をいただくというか,むしろこの辺の登録事項の中からは,この辺は削除するというようなことを提案をしたいと思っております。 ● ○○委員から,前から何回もそれは承っているんですけれども,これは管理機関のコンピューターシステムの構築上,この制限は絶対不可欠であるというお話で,○○委員以外で○○委員の御意見を支持される方はだれもいらっしゃらないと思うんですけれども。 ● この点は,前にも申し上げたように,一体システム開発に幾らかかるのかというのが,何ら今までも検証されていない中で,非常にコストがかかる。だからこれを取り組む人がいないんだよということを前提に議論が進んでいるわけですけれども,その辺,どうも私は,何か目に見えない亡霊のような感じがして,一回この辺は,どういうシステムの作りつけをするかということによって,やはりコストシミュレーションをしてみないことには,本当は取り組める話なのか,そうではないかという結論が出せないんではないかと思っております。逆に言うと,見えないコストに振り回されてそういうふうに決めちゃっていいんだろうかと思っております。 ● いかがでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● ここは制限を全く認められないという前提ですと,いろいろなシステムの構築とか見積りをするという観点からいくと,かなり保守的に今は考えますから,無制限に分割されるということも想定されると,そもそもコストの出しようがないというか,そういった議論にやはりどうしてもなりがちなんですね。我々もここを使いにくくして御提供するということは全然考えていないですけれども,そういった無用な議論を避けるためには,やはりある一定の制限というのを設けられるようにした方がいいということじゃないかと思います。 ● 合理的な制約ということですね。  いかがでしょう。先ほどの変更登録に関しては,もう特にほかに御意見ございませんでしょうか。--そうしますと,この変更登録については,業務規程で特に制限はできないという,この事務局のまとめでよいというふうに伺いました。そういうふうに取り扱いたいと思います。  それでは後ろに飛びますが,これは先ほど19ページの自由譲渡性についてはもう御議論いただきましたので,19ページの3の譲渡登録手続の問題,そのうちの(1)の当事者の請求に移りたいと思います。  aの③のところで,新たに「譲渡人が登録名義人の相続人であるときは,その氏名及び住所」を請求事項,登録事項に加えたことと,それから一部譲渡の譲渡登録をやめて分割登録を設けることとしたことと,それから信託については独立の登録類型とする方向で検討するということが中間試案からの変更点ということになりますが,一部譲渡の譲渡登録をやめたことについては,後の第4の分割を審議する際に議論をいただくとしまして,また,信託については次回にまとめて御議論いただくということにして,ここでは新たに追加されたaの③について御意見等をお伺いしたいと思います。既に先ほど○○委員から御指摘をいただいて一定の議論がされたかと思いますが,いかがでしょう。改めて何かございますか。 ● 特に先ほど以上につけ加えることはないので結構です。 ● ほかに登録……。 ● 今の,2回相続があっても同じように書くんですね。 ● いかがですか。相続が2回累積する。 ● 電子登録債権で2回も相続がある,それで時効にかかっていないということがあるのかというのは,ちょっとあれですけれども。 ● 相次いで死ぬというのは民法でも想定されていることだと思いますので。 ● 同時死亡とか,そういうやつですか。交通事故とか。 ● おじいさんが死んで,お父さんが死んで……。 ● 要するに譲渡人が消費者かどうかが問題ですので,譲渡人だけ書けばいいと考えています。譲渡人じゃない人はどうでもいい。 ● 譲渡人だけ書く。 ● 譲渡人を書く。譲渡人である相続人を書く。その人が消費者かどうかだけをチェックすればいいわけですから,ほかにはチェックする必要はないはずですので。 ● わかりました。 ● ほかに御意見ございませんでしょうか。--特になければ,この必要的請求事項に,この③を加えるということでよろしいというふうに伺いました。  それでは,次に21ページの上のところですけれども,4の譲渡登録の効力の「(2) 人的抗弁の切断」,この問題に移りたいと思います。例外として人的抗弁が切断されない場合の要件として,これまで,いわゆる主観説と客観説の2案を掲げておりましたけれども,意見照会の結果や,この部会での御意見の大勢は主観説であったと伺っておりますけれども,ここでは主観説を本文で掲げてございます。これについて御意見等をお伺いしたいと思いますが,これは○○委員。 ● 確認をさせてください。まず主観説でいう「害する」というのは,以前たしか○○委員,あるいは○○幹事から,手形法の概念ではかなり狭いんだということをおっしゃられていたので,まずそこのところを確認させていただきたいということなんですが。 ● 注2に書いておりますのが,「害することを知って」の意味についてのいわゆる河本フォーミュラと言われているものでございまして,ここに特定の抗弁を支払期日に主張することが確実であることを認識しなければいけないというふうに手形法では解されていまして,それと同じ解釈になるだろうということを注2で書かせていただいております。 ● どうぞ,○○委員。 ● もう一点の確認は,したがって狭いということで余り出てこないだろうと考えてよろしいんだろうと思うんですが,ただ,手形とのアナロジーで考えるのと,この電子登録債権でデータを信頼して考えるというのは,やはり私としては相変わらず違和感はあるんですけれども,ここのところは大勢の御意見に私は従いたいと思います。ただし,先ほどの譲渡禁止特約をここの人的抗弁に入れるのか,入れないのかというのは,もう一つ別の議論というふうに留保させていただきたいと思います。 ● それでは,わかりました。  ほかにこの点について御意見等ございますでしょうか。--ございませんようですので,ほぼこのまとめで決したいと思いますが,なお1点,○○委員が最後におっしゃった留保がございますので,それは先ほど議論したものとあわせて決着をしたいと思います。  さて,それでは次に,その下の(3)の支払期日後の譲渡登録と,先ほどこれとあわせて議論をいただくということにいたしました,前の方の第1の3の(5)のbの②ですね。4ページにございますが,意思の不存在等の場合の第三者保護の問題とあわせて御議論いただきたいと思いますが,その問題に移りたいと思います。  中間試案では,善意取得等の規定の適用がないとする案と,適用があるとする案との2案を掲げておりましたけれども,ここでは善意取得等の規定の適用がないとして,分割払の場合には各支払期日ごとに判断するという案を本文に掲げてございます。このようにいたしましたのは,相殺や消滅時効の場合の同期性確保の困難性を考慮したものという御説明を先ほどいただきましたが,このような点も意識しながら御意見等を承りたいと思います。また,これまでは支払期日経過後ということで議論をしてまいりましたけれども,支払期日の当日に支払いがされた,そのすぐ後で支払等登録がされる前に譲渡がされてしまうという,そういう事態も生じかねない。そういうことを考えますと,支払期日以後とすることも考えられるのではないかということで,この部分はブラケットで囲っておりますけれども,この点についてもあわせて御意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● ちょっと質問なんですけれども,この両方の場面で,支払期日経過後,もしくは到来した以降の善意者保護規定については,個別の支払期日ごとに判断するという考え方が今回示されているんですけれども,通常,分割払であれば期限の利益喪失条項があって,当然喪失条項であったり請求喪失条項であったりしますね。それから,もちろん喪失条項が全くないというのもあり得る。このあたりが譲受人に,もともとこの期限の利益喪失条項については法的な任意的記載事項であるということでわかりにくいのかもしれないんですけれども,そういったこともあって,今回のような個別の支払期日というのは当然記載されているものですから,だれでも客観的にわかる。そういうことで区分をされたのかどうなのかというのが1つと,もう一つ,実際に,じゃ,期限の利益喪失条項があって,電子登録債権の方の期限が来た場合,全部の期日を到来させてしまった場合は,ここでいう個別の支払期日ごとに判断するというときのすべての期日が来たというふうに見るのか,それとも当初の支払期日どおりで,やはり善意者保護規定があるかどうか,こういう判断をするのか。そのあたり,ちょっとお伺いしたいんですけれども。 ● そこはさらに御議論いただく必要があると思いますけれども,私の個人的な考え方を申し上げますと,これは登録されている支払期日ごとに考えざるを得ないのではないかと思っています。というのは,期限の利益喪失約款が発動されて,それで発動されたということが登録された後なら問題ないんですけれども,登録されていないということになりますと,果たしてそれが発動されたのかどうか自体,登録上わからないわけですから,そういうわからないもので180度の差を設けるというのは,やはりまずいのではないかと個人的には思っています。 ● そうしましたら,例えば今まで議論をされてきていましたように,もう支払済みかどうかということで,債務者の方の二重払いを防止するという観点では,確かにおっしゃるような保護ということでよろしいんではないかなとは思うんですけれども,やはりもう一つ懸念されるのが,電子登録債権そのものではなくて,もともとのこの原因となっている契約関係に紛議があるということで,それで払っていないようなケースということを考えると,実際には譲受人としては,期日到来分でもう既に一切抗弁が認められるような債権と,それから未到来なために抗弁が切断できる債権と,2通りの債権を持ってしまうことになるわけですね。そうしたときに,かえってこの保護規定があるだけに,逆に紛争が混乱しないかどうかというのがちょっと懸念が1つあるんですが,それを解決する方法として,何かここの部分は期限の利益を喪失させるという方法とさせないという方法,それを債権者のサイドで選択できるような,もうちょっと柔軟にした方がいいんじゃないかなとちょっと思うんですけれども,それは具体的にどういうことかというと,もう既に内容について紛議がなくて,単に支払いができないというだけであれば,期限の利益を失わせて,すべての期日を到来させているという一本の債権にまとめて譲渡した方がいいケースと,それから,そうじゃなくても期限の到来したものとしていないもの,これを分割登録して譲渡するような方法というのもあるでしょうし,それから,紛議があるものについては,これについてももう一たん期限の利益を失わせて,すべて抗弁が付着しているという状態で譲渡する場合と,こういうふうに3つに債権者側としては電子登録債権を処理できるんではないかなと,譲渡するというときには考えるんじゃないかなと思われるので,そういう自由な処理ができるような形にしておいて,こういうように,ここで今示されているように,一つの方法しか認めないという形でなくてもいいんではないかなとちょっと思ったんですけれども,そのあたりはいかがでしょうか。 ● 債権者が自由な処理ができるというのは,一体どういうふうにして,どのような自由な処理ができるようにするんでしょうか。おっしゃっている意味がよくわからなかったんですが。 ● これは債権の譲渡をするときのというか,自分自身がその電子登録債権を保有し続けるときというのはそんなに問題はなくて,いずれにしろ,これは債権を譲渡したときの問題ですよね。ですから,債権を譲渡するときに,一律に期日到来前のものについては譲受人保護の規定があるというふうになった方が,表面的には確かに譲受人の保護になるのかもしれませんけれども,先ほど言いましたように,実際にはそういうふうにしてしまうと2通りの債権がいってしまう形になるので,譲受人が濫用的に権利を行使するとか,そういうことでかえって問題が起きやすくなるんではないかなと,そういうふうに思ったんですけれども。 ● 支払期日が経過した部分については第三者保護規定の適用がないわけですから,濫用しようもないんじゃないでしょうか。 ● だから,未到来の部分について認められないということで,その認められない間に将来の支払部分についての権利を確定しようとか,そういう動きにはならないのかなと思ったんですけれども。 ● ○○委員に質問なんですけれども,そうすると,分割払じゃなくて1回払の場合も,期限がまだ来ていないもので原因関係上の抗弁があるというものがあるわけですよね。それを譲渡されてしまった場合には人的抗弁を切断するというのが今の規定なんですけれども,そういう場合でも,○○委員は何か保護を考えた方がいいということになるんであれば,ちょっとこれは大変な問題になってきちゃうなと思うんですけれども。 ● それを知っていれば対抗できるわけですから。 ● それは害意の抗弁でいくと。そうしたら,分割払の場合だって害意の抗弁はきくわけだから,分割払の場合に特有の問題なのではないんではなかろうかという気がいたしますが,いかがでしょうか。 ● 大分わかりました。でも,もうちょっと整理が余りできていなかったんですけれども,そういう懸念がないかなとは思ったんです。 ● ○○委員,どうぞ。 ● そのことで,先ほど○○幹事がおっしゃった,既に経過したか,それとも到来したかということで,要するに支払期日当日を含むかどうかということなんですけれども,債権というのは,現実には支払期日当日に払うという場合が大半ですよね。その当日の支払いを確実にやはり保護してほしいわけですから,そうすると,当日を含む「以後」という方がよろしいような気がいたすんですけれども。 ● 「以後」として当日を含む方がいいという御意見をいただいたわけですが,いかがでしょうか。ほかに,この点について特にお伺いをいたしますが。  ○○委員,どうぞ。 ● この考え方は,債務者保護をどこまで徹底していくのかということだと思います。債務者の決済とか支払いに対する安定性が増せば,それだけ,その債務者も電子登録債権制度にいっぱい乗っかってきてくれるのかなと思いますので,ここに書かれていることは基本的に私としては賛成でして,○○委員がおっしゃったように以後というふうにするのが徹底していていいのではないかなと思います。 ● ほかに御意見はございませんでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● 別の問題なんですが,先ほど○○幹事がおっしゃった,この21ページの後ろの3行の問題ですが……。 ● 後ろの3行って,「なお」以下ですか。 ● 注の「なお」以下。相殺の場合,どういうふうにおっしゃったんですか。期日前に法定相殺した場合は,相殺の抗弁を物的抗弁にした方がいいとおっしゃったんですか。 ● いいえ,違います。そもそも弁済期が到来していないと相殺できませんので,相殺というのは支払期日が過ぎてから行われることになると思うんですね。自分の受働債権の方は期限の利益を放棄してやることもありますけれども,これは受働債権が電子登録債権の場合ですから,だから,支払期日の当日,あるいはその後に受働債権の方が弁済期日が来たら,相殺の意思表示が相手方から行われるわけですけれども,中間試案の段階でおまとめいただいたのは,とにかく弁済とか相殺とかというのは,当事者間では登録と関係なしに効力が生ずるということにしたわけですね。問題は第三者に対する関係で,そこは人的抗弁の切断の問題になると。そうすると支払期日後に相殺されるわけですけれども,相殺される当事者間では対当額で消滅しているはずなのに,第三者に譲渡されてしまうと一巻の終わりになるというのはまずいのではないかという,それだけのことでございます。 ● では,時効の場合も相殺の場合も,必ず支払期日後に起こることだから,それは物的抗弁になるという理解でよろしいんですよね。 ● 物的抗弁というか,人的抗弁なんだけれども対抗できるようになると。この規定でですね。 ● 人的抗弁として必ず対抗できるようになると。 ● その場合も含むという趣旨ですね。  ○○委員,どうぞ。 ● 今の点なんですが,それと期限の利益喪失等がくっつくとどうなるんでしょうか。期限の利益喪失後に相殺をしたと。しかし,その支払期日というのは当初の支払期日で判断するというのが,先ほど○○幹事のお話でした。そうすると,その相殺については相殺後に譲渡されてしまうと,やはりそれは人的抗弁にしかならないということでしょうか。 ● それはおっしゃるとおりですけれども,実務的に考えると,期限の利益が喪失しているということは,もう払えない状態,デフォルトになっているということですから,それで債務者が害されることは実際はないんじゃないんでしょうか。 ● おそらくないとは思うんですが,その債務者が自働債権を持っているわけですよね。電子登録債権の債務者が自働債権を持っていて,それで相殺をしている。債務者が期限の利益を放棄して相殺しても,それは無理だというのはわかるんですが,期限の利益を喪失して,それで既に持っていた別の債権と相殺したと。しかし,それは人的抗弁にしかならないということでいいのかどうかということは,ちょっと残るかなと思いましたけれども。 ● ここに書いてある問題というのは,電子登録債権を受働債権としてその支払期日後に相殺する場合のことですが,○○委員がおっしゃっているのは,電子登録債権の期限の利益が喪失して弁済期が到来して,それを受働債権として相手方が相殺し,その後に当該電子登録債権を相殺の意思表示した方が第三者に譲渡してしまったと,こういう場合でございますね。 ● 相殺の意思表示をされた方。電子登録債権の債権者が相殺後に譲渡したという場合です。 ● だから同じことを申し上げているつもりなんですけれども,そうすると,その場合,先ほど私が言ったデマケーションでいけば,登録はまだ支払期日前ですので,過ぎている部分があるかもしれませんけれども,過ぎていない部分については人的抗弁の切断は生ずると言わざるを得ないということになるんですけれども,問題ですかね。そうすると,もう登録の有無にかかわらず客観的に期限の利益を失う,つまり客観的に支払期限が到来しているかどうかで決めることになりますが,それは,人的抗弁の切断とか善意取得という第三者保護制度の立場からすると,非常にまずいような感じがするんですけれども。 ● 一般的にはおっしゃるとおりだと思います。そこで,今私が挙げたのは実際上は乏しいケースかもしれませんけれども,ただ,そこをどう解決するかということは一応考えておいた方がよかろうということなんです。 ● ○○委員はどう考えたらいいということなんでしょうか。 ● 今日私は,支払期日の基準をどちらにするかということを御質問しようというつもりで,ですから,さっきの○○委員と同じ問題に関して思っておりまして,それを先ほどの○○幹事の御説明はそうだろうなというふうに思いまして,そうすると,やはりこの問題は残ってしまうな。もちろんその先まで考えてくればよかったんですけれども,今の段階では問題があるということをまず認識して,それを何かほかの方法で解決できるかどうかが宿題かなと思っております。 ● どなたかございますか。  ○○委員,どうぞ。 ● 下3行の議論でよろしいですね。同期性を確保することは困難であるというところに関連して申し上げておきたいんですが,今,金融審議会では,管理機関の同期管理ということが非常に議論されているんですが,そこでの金融庁さんでの同期管理,同期性の議論というのは,少なくとも資金移動のある決済についての同期管理。だから振込と抹消の同期管理ということを議論しておられるわけですね。ここでの相殺等の場合には資金移動はありませんので,そうすると,ここでいう同期性というのは,もう少し広い意味で,要するに当事者間で相殺等が効力を生じて,そこで債権が消えたならば,なるべく早く支払等登録をすべきだ,そのタイムラグを少なくすべきだということですよね。これはよろしいですね。 ● おっしゃるとおりです。 ● そうすると,金融庁さんでの議論と少しそこが違う。資金移動の含まれないものについても,なるべく早くタイムラグを少なくすべきだという議論ですよね。それで言いますと,今ここには法定相殺の問題点が挙げられているんですが,先ほど受働債権でみずから相殺した場合のタイムラグについては自己責任だというお話がありましたよね。そうすると,同じように相殺契約で両当事者が消し込んだものについて,なかなか支払等登録をしなかったという,その間の問題もやはり,それは例えば債権譲渡しちゃった一方債権者の方が悪いとか,そういうのはもちろん問題は当事者間では残りますけれども,そのタイムラグについてはやはり自己責任ということでよろしいですね,相殺契約の場合は。 ● ○○委員がおっしゃっている相殺契約というのは,単発の相殺契約ではなくて……。 ● いいえ,単発でもいいですよ。とにかく,まず単純に単発で考えてください。お互いに相殺だと言っているのは,一方の意思表示である相殺ではなくて,合意による相殺ももちろんできるわけですから,それでこの債権とこの債権,何本もある債権のうち,こことここは相殺しましょうと当事者が合意して,それで双方請求--一方に委託してもいいです。それで支払等登録をいたしましたというケースですね。 ● これも全く私の個人的な意見になりますし,金融審でも議論されている事柄なので,ここで余り述べるのがいいことかどうかわかりませんけれども,私は,アドホックで単発的に行われる場合と,当該管理機関において行われる電子登録債権の消込み処理のスキームとして行われる場合で違うのではないかと考えていまして,スキームとして,いわゆるネッティング処理をして残りを払うという形になっているときは,最後に払う部分,支払尻を出す場合には支払等登録がされていなきゃいけませんので,そういう意味での同期性という言葉がいいのかどうかわかりませんけれども,それは必要なのではないかと思っています。 ● それは,今おっしゃったのは金銭移動のある支払尻のところですから,そうではなくて,今,○○幹事はマルチネッティングとかをお考えなんだろうと思うんですけれども,こことここはもう対当額で消せますから消しましょうとお互いに合意して,そのネッティングセンターが代行して支払等登録をしたというような場合でお考えいただければ結構です。 ● だから,そういうシステムになっているのであれば,そうやって全部処理していくわけですから,それを決済センターが全部計算処理が日々できるわけですので--日々か月に1回かわかりませんけれども,そのときに速やかに登録がされるべきだと思っています。 ● その場合は,ですから,同期管理といっても,それは管理機関の管理の問題ではなくて御本人たちの--例えばA社とB社が計算センターに依頼をして,計算センターでそのA社とB社の合意のもとに相殺契約をして支払等登録をする,そのときのタイムラグについては,やはりこれは今の受働債権の場合と同じように,いわば自己責任というか,そういうことになりますよね。 ● ただ,今,○○委員はAとBというふうにおっしゃられたんですけれども,私はだから,アドホックな場合と,その管理機関を使ったシステム全体の構造としてそうなっている場合とでちょっと違うんじゃないかなと思っていまして,そういうネッティング処理によって全部解決していくという形になっているのであれば,そこに管理機関は全く何の関与もしなくていいのかというのは問題なのかなと思っています。 ● その債務のところは,きっと金融庁さんでの御議論と思いますので,ここで使われている同期性という言葉は,資金移動と関係のないところでも,とにかく権利が当事者間で消えたらなるべく早く支払等登録をしなさいと,その間のタイムラグをなるべく小さくしようと,こういう議論だということでよろしいですね。ありがとうございます。 ● どなたか,先ほどの議論の関係でお手が挙がりましたか。よろしいですか。  ○○幹事。 ● 相殺についてなんですけれども,ちょっとA,Bになると図がないので非常にわかりにくいんですけれども,例えばAがBに対して通常債権を持っていて,BがAに対して電子登録債権を持っているという状態で,これが,例えばB,すなわち電子登録債権の債権者が信用状態が悪化したので,もともとの通常債権に基づく債権の期限の利益を喪失させて回収をしたい。そのときに電子登録債権と通常債権を相殺したいというようなケース。これは通常の債権債務であれば,またきちんと相殺をして,それで両方消えてなくなって終わりなんだと思うんですけれども,今回の場合,そういう意味ではAはみずからの電子登録債権についての期限の利益を放棄して,それで相殺をかけると思うんですけれども,今回の場合,それが電子登録債権ですと,期限の利益を放棄したとしても,その債権者の同意,債権者の協力がないと,これが払ったという事実ですとか,あるいは期限の利益を放棄して,期限が事実上前倒しになりましたという事実を登録することができないということになりますと,そういう場合には相殺をかけない方がAとしては懸命であろうということになると思うんですよね。そうしますと,これは物の考えようだと思うんですけれども,通常の債権債務の場合には,対立して持っている債権に対する相殺期待,担保的機能に対する期待というのはかなりあるように思うんですけれども,電子登録債権を持たれている場合については,その部分がひょっとするとうまくワーク,それほど担保的機能が持てないのかもしれないというふうなことがあるのかなと思いまして,それでいいという考え方が1つあります。  もう一つは,やはり放棄した場合ですとか,あるいは先ほどお話のありました,期限の利益を喪失したような場合とか,あるいは何らか別途口頭の約定で期限を前倒ししたんだけれども,一方の当事者が債権者の側が変更に協力してくれない場合ですとか,そういうような場合に,例えば何か裁判所か,何らかの仮処分か,そういうようなことで変更の登録を相手方の協力なしに認めてもらえるのであれば便利なのかなという気もするんですが,1点は,今申し上げたような割切りでいいか。もう一つは,割り切りがない場合に,一方当事者が変更登録に協力してくれない場合の意思表示に代替するような何らかの手続は本当になくていいのか。ちょっと前にも似たような話はお話しさせていただいたのかもしれないんですけれども,もしほかの委員の皆さんの御意見があればと思うんですけれども。 ● 今の関係ですけれども,まず仮処分で登録してしまう。断行の仮処分ということになりますので,それはこの手のものでは認められないんだと思います。処分禁止は今の民事保全法の規定に基づいてできると思いますので,その処分禁止で本案判決がとれるまでの間は,ほかの登録がされないようにして,意思表示なしに登録をさせようと思ったら,相手側の意思表示にかわる判決をとらなきゃいけないんだろうと思いますが。 ● ただ,現実のものとして処分禁止の仮処分をかけておけば,安心といえば安心。 ● そこから本案に何年もかかるかもしれませんけれども。このごろは裁判所は早いですから,何年もはかからないかもしれません。 ● いかがでしょか。この「以後」という点については,もう皆さん,了解はいただけたというふうに……。それで,あとは○○委員の御指摘の点が残る。  ○○幹事,何かさっき手を……。 ● 結構です。わかりましたので,特に発言はありません。 ● ○○委員の御発言との関係で,何か御発言をされたいという御趣旨だと私は拝見したんですが。 ● 特に発言はございません。自分の中で解決しました。 ● そうですか。何がどう解決したかよくわからないんですけれども。 ● 解決したなら答えを教えていただきたいんですけれども。 ● ○○委員の問題が解決したわけではなくて,それに関連してどうなるんだろうと思った自分の疑問が解決したということですので。 ● じゃ,その問題は,この最後の3行にかかわることでしょうか。あるいは括弧書きの部分ですね。「支払期日に係る部分に限る」というのがかかわることになりましょうか,○○委員。 ● はい。 ● じゃ,この問題についてはどういたしましょう。ちょっと検討を次回までにしていただきましょうか。 ● またちょっと○○委員にも御相談させていただいて,何となく私はもうあきらめるよりしようがないのかなというのが第一感なんですけれども,○○委員や○○幹事に御相談すればいい知恵が出るのかもしれないと思いますので。○○幹事も調べてもらいたいんですけれども,ひとつよろしくお願いいたします。 ● じゃ,とりあえず,なおそこの部分は事務当局で御検討いただくとして,括弧でくくっている「の経過後」,あるいは括弧でくくっている「以後」という点については「以後」ですね。あるいは「到来した」という,そういう形で決着を見たということで決したいと思います。  それでは,すみませんが休憩をとりたいと思います。           (休     憩) ● それでは,お疲れのところ恐縮ですが,もう少しお付き合いをいただきたいと思います。  それでは,この第5の電子登録債権の譲渡の後注の部分であります。22ページでございますが,まず前提として,この代位した電子登録債権は求償権と独立しては譲渡できないという,そういう理解でよいかどうか。その上でどのような登録によることが相当であるか,そういうことについて順次御意見を承りたいと存じます。  まず,この代位した電子登録債権を独立して譲渡できるかどうかという,そういう点についてですが,これは民法の問題でありますので,○○委員,お願いします。 ● ただいまの部会長のお示しになられた問題以前に確認をさせていただきたいところがございます。よろしいでしょうか。拝読して,これは私も全然よくわからなかったのでまず確認なんですが,求償権は一般債権,原債権は電子登録債権ということでよろしいんですね。 ● はい,おっしゃるとおりです。 ● そうしますと,「法定代位した債権を譲渡しようとする場合に」という問題設定なんですが,教科書に法定代位した債権を譲渡するというシチュエーションは書いていないんですよね。つまり余り考えられていないわけです。というのは,この法定代位というのは,釈迦に説法ですけれども,求償権の実現を確保するための制度ですよね。そうすると,欲しいのは電子登録債権が欲しいんじゃなくて,旧債権者が持っていた債権についている担保権等を使えるということがメリットだから法定代位があるわけですよね。  そうすると,質問の第1点ですけれども,この場合は原債権が電子登録債権ですから,そこについている担保というのは基本的に登録保証の話とか,そういうものになるんですか。 ● 登録保証もあるでしょうし,電子登録債権を被担保債権とする抵当権とか,そういうものはあり得ると思います。ただ,そんなことはほとんどないんだろうとは思います。 ● と思うんですね。そうすると,そこで使いたい担保権というのは電子登録債権。最初に伺ったように原債権は電子登録債権ですから,登録保証等の問題になるのかなというのが1点ですね。  それから2点目,これも釈迦に説法ですけれども,そういうことで求償権の実現確保のための制度ですから,これは弁済した人が使える求償権の範囲で原債権を行使できるんですよね。だから,求償権の方が小さい場合には,原債権を譲渡するといっても全部は譲渡できないわけですよね。そういう問題が前提として存在するというわけですよね。例えば,だから,100万円の電子登録債権について弁済した物上保証人がいるんだけれども,実はその物上保証人と債務者の間での関係があって,求償権は80万円しか発生していないなんていうときには,その80万円だけが使える原債権ということになりますよね。その上で電子登録債権が求償権を譲渡しようとするときには一緒についていくものなのかという,そういう設定で今回のこれは始まるわけですよね。そこまでまず確認した上で,あと,皆さんの御意見を聞いて考えます。 ● 求償権が譲渡されれば,原債権であるこの電子登録債権も移っていくというのは,これは当然なんですが,ここに質問があるのは,原債権である電子登録債権は求償権と独立して譲渡できるかという逆の質問になっているので,その点は……。 ● それは私はないだろうと思いますけれども。 ● ほかの民法の先生方,いかがでしょうか。一般的な議論と同じベースでの議論になろうかと思いますが。 ● それは独立して譲渡できないんじゃないですか。だって,それが担保だけ,抵当権とかという意味じゃなくて,原債権である電子登録債権が担保のために存在しているということになりますと,担保権だけの譲渡を認めるのと同じシチュエーションになりますから。ただ,そこから先がちょっとよくわからないんですが,確かに電子登録債権に普通抵当権が設定されていると。そんなにありませんよねという話なんですが,仮にそれがある場合だけが問題となったときに--ああ,なるほど。いやいや,善意取得を認める余地がないという意味がちょっと実はよくわからなかったものですからあれなんですが,電子登録債権は求償権を取得する人によって弁済されていて,そのときにはもちろん善意取得の問題ではなく,通常の随伴する移転によってやってくるわけであって,それ以上の善意取得というものがないと,こういう話ですね。それはそうだと思います。 ● それでよろしいですか。抵当権がある場合の話を何かしかけておられたように……。 ● いえ,それは結構です。 ● そうですか。そういう理解,つまり独立して処分するという,それは考えられないという理解でよろしいのでしょうか。何かほかの理解というものがあり得るのか。何かちょっと当てて申しわけないですが,○○幹事,いかがですか。 ● ないんじゃないかと思います。ほかの理解は基本的にないんじゃないでしょうか。つまり,本来消えるものが求償権を担保するためだけに復活するというか,そういうものですので,存在意義はそれに限られますから,独立した存在としては扱われないというのは,そこまではそう考えてよいのだと思いますけれども。 ● そうしますと,今度は求償権を譲渡したときには,当然に随伴しなければならないということになって……。 ● ええ。担保のために存在するということですので。 ● したがって,求償権を取得していない人が電子登録債権だけを登録したからといって善意取得するということはあり得ないと考えていいわけですよね。 ● ええ,そう思います。 ● ちょっと申しわけないですが,○○委員,今の議論はそれでよろしいですか。何かひっかかるものがあるとお考えであれば,今述べておいていただいて……。 ● 第一段階で譲渡できないということの意味がよくわからないんですが,譲渡はしても結局は意味がないということなのかなと。譲渡契約自体が無効というわけではなくて,譲渡しても結局は行使できないから意味がないという,それだけのことなのかなということ。そうでもないですか。 ● この問題設定をしていますのは,普通の譲渡登録ができるとすると,切り離して譲渡したときに善意取得が起きるのかという問題が生じるのかなと思いまして。ただ,先ほどのお話ですと,求償権を担保するためだけに消えないで残っているものだから,それ以上の意味はないということですと,善意取得とか何かということは考える必要はないし,独立して譲渡するということも考える必要はないということになるという整理なのかなと思ったんですけれども。 ● それがさっき,○○幹事が復活というような言葉をおっしゃったと思いますが,これも釈迦に説法ですけれども,擬制説なのか,それとも債権移転説なのかという対立が古くからあって,それで現在は債権移転説と考えられている。そうすると,移転であってフィクションではないんだとすると,原債権は一応債権としてはあるという認識も可能だと思うんですね。そうすると,その債権は譲渡の対象となるけれども,しかし求償権を担保するためのものだから結局は意味がないと,債権移転説の考え方を強調すると,その方がわかりやすいのかな。ただ,それに対して擬制説的な考え方を入れて復活するというようなことをより強調していくと,そもそも譲渡できないということになるのかもしれません。ですから,債権自体の属性として,およそ譲渡性のない債権なんだということまで言えるのかどうかですが,ただ一般的には,譲渡はできるけれども,しても意味がないという方がわかりやすいかなと思いました。そのことと譲渡登録になるか変更登録になるかとはまた別の問題だと思いますけれども。 ● 何か民法学会の安定した解釈であれば,先ほど来おっしゃっていただいたように独立して譲渡というのはないか,あるいは今おっしゃっていただいたのは,譲渡出来るかもしれないけれども,それは意味がない。いずれにしろ独立した譲渡というのは,いわばある意味ではないというふうに判断すべきじゃないかということだと思うんですが,そうした上で,何か次に質問があるのは,譲渡登録によるのが相当ではなく変更登録による方がよいというのは,これは,意味がないということになればもう議論をしなくてもよいという,そういう御趣旨ですか。それとも,随伴して移るという場合についても登録ということが問題になり得るわけですので,そのときの登録はどうするかという,そういう御議論をいただきたいという……。 ● 後者の方です。 ● 随伴して移るから,そのときの方法というのもありますけれども--登録ですか。電子登録債権だけをあえて譲渡するということをしようとしたときに,譲受人がとれませんでは,ちょっとやはり取引の安全を害するわけですので,今,○○委員がおっしゃったように,譲渡はできるんだけれども,しかしながら,求償権者からの譲受人は,結局当該電子登録債権を行使できないということになりますと取引の安全を害しますので,単純な変更登録ではなくて,これは求償権の担保のために法定代位によって移転しているものなんだということを示す登録というものが必要になるのではないかという気がするのですが。 ● 法定代位していることは支払等登録を見ればわかるという前提で中間試案のときに書いていまして,つまり,支払等登録をした人が発生登録における債務者ではなくて,それとは違う人の名前が書かれているわけですね。それで幾ら幾ら払ったということが書かれていますので,その払われた額の限度で法定代位が生じているということが支払等登録から一見明白でございます。 ● それならそれで全くそれでよいのではないかと思うんですが,ちょっと1分前にさかのぼりまして,○○委員のおっしゃったことと,その前の譲渡自体が効力を生じないのかということは同じではないんだと思うんですね。つまり,求償権者が譲渡してしまった後に電子登録債権の方を担保として使えるのかという問題があって,譲渡契約の効力自体が生じていないと考えますと,当該電子登録債権が求償権者のもとにまだとどまっているということになりますので,当該電子登録債権を求償権の担保のために用いることだって可能なんだと思うんですが。譲渡は有効なんだ,ただ譲り受けた人が行使できないだけなんだということになりますと,求償権者が譲渡をしてしまった後は,求償権者はもはや電子登録債権を担保のために持ち得ないことになりますよね。 ● 求償権は残ったままで,原債権だけ,電子登録債権だけを譲渡できるというか,したという場合についての御議論。 ● そうです。だから,有効だけれども行使できないというのと無効であるというのは,やはり結論が違うんじゃないかと思うんです。 ● ただ,先ほどの議論で言えば,支払等登録はなされていますから債権者には支払っているわけですよね。だから,残っているというのは,要するに支払等登録をした求償権者のために残っているということしか,多分登録の上では表現されていないんじゃないかと思うんですが。 ● その状態のものをさらに譲渡したいというわけです。基本的には求償権とともに譲渡するということになるんだろうと思いますけれども,その求償権とともに譲渡するときに,しかし,電子登録債権を今度発生登録における債務者に対して請求する場合は,電子登録債権の登録名義人に譲受人がなっていませんと,弁済する側は恐ろしくて弁済できないということになりますので,何らかの登録名義を取得させる手続が必要になるんですが,その登録名義の取得の方法が譲渡登録であるべきか,変更登録であるべきかということを最終的にはお尋ねしているわけです。 ● だから,いずれにしろ,求償権と一緒に譲渡されたという場合についての電子登録債権の移転についての表現方法というか,それが問題になっているわけですよね,登録上。 ● いやいや,それは2段階の別の問題で,最初にここに書かれているのは,求償権者に対して電子登録債権が移転したときの方法なんですよね。 ● いいえ,違います。それは支払等登録によってあらわすということは,もう既に中間試案の段階で決まっていることですので,そこから先を書いているんです。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● ただ,そうではあっても,おそらく○○幹事の御説明は,先ほどの結論は基本的に変わりはないんだけれども,およそそういうものは独立性を持っていないんだから譲渡ができないと言うのか,譲渡はできるけれども意味はないという説明を,いずれの説明をするかによって,実際にはおよそ考えられない事例だけれども,万が一原債権である電子登録債権だけ譲渡をしてしまって,何らかの登録なども受け付けられたとしたときに,残った求償権者が行使できるものが何であるかといった法律関係の説明の仕方は変わってくるんじゃないかという御指摘ではないかと思ったのですが。ただ,それはどういう変更登録にするのか,譲渡登録にするのかという問題以前に,そこの説明の仕方がどっちでも同じですねということでは必ずしもないという御指摘をされたのではないかと思いますが。 ● 最初はそうです。 ● どっちと考えるかによって,どういうふうに変わるんでしょうか。 ● つまり,求償権と独立して原債権である電子登録債権を譲渡するという行為をしたときに,それが有効だけれども,譲受人は電子登録債権だけを持って,譲受人は当該電子登録債権を行使できないと考えますと,当該電子登録債権の譲渡人である求償権者も電子登録債権はもはや行使できないことになりますよね,移転しているわけですから。しかしながら,無効であると解すれば,その電子登録債権が求償権とは独立に譲渡されるという行為が行われた後であっても,求償権者は電子登録債権を行使できるという状態にあるので--違うんですか。ですから,その両方の○○委員の御説明と私どもの説明との間で,同じですよねと部会長がまとめられたことに関して,そう同じじゃないんじゃないでしょうかという話だけなんですけれども。 ● 登録がおそらく譲渡の効力要件だというふうに言われているわけですから,原債権である電子登録債権だけが求償権者から譲渡されたとしても,登録がなければ譲受人は何ら権利を持っていないということになるんじゃないでしょうか。 ● もちろん登録がなければそうなんですけれども。 ● 登録する方法は,とりあえず今のところないですよね。 ● ないとすると,今度は求償権とともにする譲渡も登録できないことになりますか。 ● だから,その点について今議論しようという……。 ● それはそうなんですけれども。 ● ○○委員,どうぞ。 ● ちょっと議論の前提でわからないことがあるので教えていただきたいんですけれども,ここで今問題にしている法定代位が生じた場合というのは,登録保証人が支払った場合以外の事由によって法定代位が生じた場合ですか。 ● おっしゃるとおりです。 ● 登録保証人の場合は,これは特別求償権になるわけだから,同じ電子登録債権が特別求償権も表章して,それは譲渡できることになるわけですよね。それはその後,譲渡登録というふうに移っていくわけで,ここで問題になっているのは民事保証人とか物上保証人の問題だけですね。 ● はい,そうです。 ● ○○委員,どうぞ。 ● そうするとやはり,今,部会長がおっしゃられたように,これは法定代位した電子登録債権を求償権とともにもう一回譲渡するというときには,やはり登録を効力要件としなければいけないはずでありますから,その登録を旧来というか,今考えている譲渡登録でいくか,変更登録にするかということと,もう一つの選択肢としては,その求償権とともに法定代位した債権を譲渡するということがわかるようなカテゴリーを作るのかどうかという,こういう選択肢も出てくるわけですよね。 ● 論理的には○○委員がおっしゃるとおりだと思うんですけれども,これ以上登録の種類は管理機関のシステム負担の関係で増やしたくないとは思っているんですけれども。 ● ○○委員,どうぞ。 ● ちょっと私が余計なことを申し上げたので,議論が錯綜してしまったかもしれませんが,私は,譲渡が当然できないということにして,原債権と求償権を常に切り離せないというふうにしてしまうと,ほかの問題との関係がうまく説明できるかどうかということはちょっと自信がなかったから,あえて問題提起したわけです。例えば,具体的なケースはよく覚えていないんですけれども,倒産手続の中で一方の権利を行使した場合に,他方にどういう影響があるかというような問題があったかと思います。ただ,譲渡に関して言えば,債権の譲渡性の規定で性質が許さないときは譲渡できないというのに当たるんだというふうに解釈すれば,とりあえずはこの場面はもうそれで抑えて,後の倒産手続等の関係では,またそれは別の問題だというふうに整理できるでしょうから,それであれば結論として譲渡できないということでもよろしいかと思います。 ● それで,独立には譲渡できないとした場合に,求償権を譲渡すると,それに当然漏れなくついて移転するということになると思うんですけれども,先ほど○○委員がちょっとおっしゃられたのは,漏れなくついて移転するときも,電子登録債権が移転するためには登録が効力要件になる。この後注ですと一番最後のところの段落に書いている考え方なんですけれども,そこまでしなければいけないのか,それとも漏れなくついてくるんだから,求償権の決着がつけば,それに必然的に従うのであって,登録はこの場合は効力要件じゃないと。つまり,法定代位するときに登録が効力要件じゃないのと同じように,法定代位された電子登録債権を求償権とともに譲渡する場合も,あくまでも求償権の決着で物事が決まって,あと,債務者に請求できるかというところは登録しないと権利資格がないですから,債務者は拒絶できるということにならざるを得ないと思うんですけれども,それだけの問題であるという整理なのか,どちらがいいかという……。 ● 求償権は一般債権で,原債権は電子登録債権なんですよね。それで,支払等登録でわかるのは,法定代位が起こったことはわかるんです。ただ,その法定代位が起こった結果出てくる求償権と,その原債権について,今度一緒に譲渡する。原債権はあくまでも電子登録債権で,その性質は法律的に変わっていないはずですから,これを求償権とともに譲渡することができるのであれば,電子登録債権については,その譲渡はやはり登録が効力要件になるはずだというのが私の考え方です。 ● いかがでしょうか。ちょっと関係がややこしいですけれども。  ○○幹事,どうぞ。 ● 行使するのには,いずれにせよ変更登録が必要であると考えますと,変更登録がなされていない段階で実体法上,既に譲受人に対して当該電子登録債権が移転しているのか,それとも実体法上も移転していないのかということをさほど議論する必要は,理論的にはあるんですけれども,結論には差は出てこないですよね。したがって,そこは置いておいてもいいような気が私はします。私個人的には何となく,随伴ですので,実体法上は移転していて,ただ行使できないだけかなという気はして,○○委員のようにおっしゃいますと,随伴して移転している状態にあるんだけれども登録されていないという状態というのをどういうふうに観念するのかがちょっと難しいかなという気はするんですが,それはいろいろな説明の仕方があると思いますので,いろいろあり得ますけれども,結論には差が出てこないという気が第一にします。  第二に,ちょっとこれは私の全体構造に対する無理解から来ているのではないかと心配をするのですけれども,支払等登録というのがなされて,それだけによって代位が起こっているという状態がわかっているときというのは,抹消はできないんですか。やはり支払等登録をした者と債務者との合意によらないと抹消できない。 ● 何を抹消するんですか。 ● 登録。 ● どの登録を。 ● 電子登録債権の。 ● 発生登録を。 ● そうです。 ● 抹消というのはないんですけれども。 ● 抹消というのはないのか。 ● 抹消を内容とする変更登録という整理になっていますが。 ● なるほど。抹消を内容とする変更登録という--そうか。じゃ,支払等登録がなされている状態で基本的にはそのまま……。 ● 満額の支払等登録がされていて,かつ,その支払った人が発生登録における債務者であれば,それで電子登録債権は完全に消滅していることが公証されているということになります。そうじゃなくて,別の人が支払者になっているときは,その人に権利が移転されていることが公証されていることになります。 ● 説明を補足させてください。これも釈迦に説法ですけれども,最近も判例が出ていまして,何度も言いますけれども,この求償権は一般債権,原債権は電子登録債権で,法定代位した求償権者は,その電子登録債権についている担保を使えるわけですけれども,その担保はあくまでも一般債権の求償権の担保にすりかえられるわけではなくて,原債権の担保のままであるというのが判例の考え方です。ですから,そうすると,この原債権についている担保を使うためには,原債権について移転したのであれば,その原債権の移転登録がされていなかったら,それの担保権が使えないでしょうということを私は申し上げたいんです。ですから,求償権と一緒にこの原債権である電子登録債権を移転するのであれば,必ずその譲渡について何らかの登録が効力要件になるでしょうと,こういうことを申し上げているわけです。 ● ここは事務当局の中でも考え方が分かれているところであって,そもそもがよくわからないというところもあり,○○委員が今おっしゃられたような考え方も当然一つの考え方としてありまして,他方で先ほど○○幹事がおっしゃられたような考え方,その両方があり得るだろうというふうに迷っていることから,この両案が上がっているというところでございます。  これも皆様御承知のところで,あえて御説明申し上げることでもないのかもしれませんけれども,先ほど,あくまで求償権に随伴して当然に移転する独立の電子登録債権の譲渡はないんだということになるのであれば,そこは効力要件ということではなくて,単に行使するために変更登録なりを受けておく,自分名義にしておく必要があるだろうという,先ほどの○○幹事のような御説明に親和性を持つのかなというのが私の印象でございます。これはだから譲渡登録がだめだということではないんですけれども,譲渡登録という形をとりますと,これが期限後の譲渡登録になるのかどうかと,そこでまた考え方が変わってきますけれども,譲渡登録特有の効果,先ほどの抗弁切断とか善意取得とか,そういう事態が生じてき得る余地はある。そこはどこが違うのかというところをちょっと説明する必要が生じてくるのかなという気はいたします。だからどうしたという結論がない話で恐縮でございますけれども,ちょっとそういう整理だけ。 ● ですから,そういう細かいことを気にされるんであれば,譲渡登録はそのまま使えないから,別の登録を考えなきゃいけないんじゃないですかというのが私の意見です。私が申し上げているのは,譲渡登録にしろ変更登録にしろ,登録が効力要件になるでしょうということを申し上げているんです。 ● 今おっしゃったのは,変更登録の場合は権利行使要件というふうに何かおっしゃったように伺ったんですが。 ● ○○関係官が権利行使要件という言い方をしたので。私は,ですから,効力要件となるはずだというのは変わりません。ただ,その登録の名前が譲渡登録だろうが変更登録だろうが,私は,その譲渡登録,変更登録の定義の仕方で決まる。それから,譲渡登録としちゃったら,今,○○関係官がおっしゃったような細かいことが出てきてしまうというのであれば,さっき私が申し上げたような別の類型の登録を考えなきゃいけないんじゃないですかということです。 ● その別の登録の類型として,ここに書いていますのは変更登録で支払者の名前を変えるというアイデアなんですけれども,これはどうでしょうか。 ● ですから,私は,変更登録という概念が,この求償権とともに担保のために法定代位によって移転するということをあらわせるのであればいいんですよ。 ● ただ,移転したかどうかを求償権の方の--例えば求償権を二重譲渡した場合には,求償権の方の対抗要件で勝った方が勝つということになりますよね。 ● 私はそこまで考えていなくて,求償権と一緒に動いている法定代位によって生じた債権を譲渡するんですということがわかる登録にしてくださいということを申し上げている。 ● そうすると,変更登録にするにせよ,支払者の名義を譲受人名義にした登録原因というんですか,登記法的にいうと。そういうものをあわせて書いておいた方がいいという,そういうことですね。 ● 今の○○委員の御指摘,非常に貴重な御指摘と思っておりまして,今,できるだけ登録を増やしたくないという,不純な動機かもしれませんけれども,そういうことで変更登録にいろいろなものが取り込まれているんですね。言葉は悪いですけれども,るつぼみたいな形になっているところもあり,例えば相続だって変更登録にしておりまして,いわゆる譲渡以外の,要するに法律の規定によって当然に移転するような形態,それについてはすべて変更登録で賄おうというような形で今考えているわけでございます。それは皆さん御承知のとおりかと思いますけれども,そうなってくると,じゃ,一体何が原因で変わったのか。それが相続なのか代位なのか何なのかというところは,やはり何らかの形で明らかにした方がいいのかなという感じを持っておりまして,その点は次回,変更登録のところで御議論いただきたいと考えているところでございます。 ● 今の点は,ぜひお願いしたいなというのは,パブコメの議論で証券化等で行われる信用補完で信用補完取引というのがあるんですよ。これは,例えばプールについて,100億円の債権プールについて1億円だけ保証しますという信用補完取引があって,それは多分登録保証ではなくて,電子登録債権の外側で信用補完措置を図るというようなことをやらなきゃいけないのかなと。もしかしたら工夫をすれば登録保証の登録の仕方によって何かできるのかなといろいろ考えたんですけれども,結局結論が出なくて,パブコメのときにはどういうふうに登録をすればいいんでしょうかとか,そういう場合が起こったときにはどういうふうに,いわゆる支払等登録をするのかどうなのかよくわかりませんというような中身でお出ししたんですけれども,多分そういう実務的なニーズは結構あるはずなので,ぜひその辺,整理していただければと思います。 ● 随分御議論いただいて大分わかってまいりまして,どうも,やはり善意取得とか人的抗弁の切断があるのが譲渡登録なので,譲渡登録という形をとるのはいささか問題であろうということがわかったかと思います。それから,そうすると,登録をこれ以上増やしたくないという問題がありますので,変更登録で受けざるを得ないということになりますから,○○委員から御示唆いただいたように,変更登録全般の問題ですけれども,登録原因を登録する方向で変更登録で受けるという方向で,次回までにさらに検討したいと思いますけれども,それでよろしゅうございましょうか。--ありがとうございました。 ● それでは,ここの第2と第5の2つの項目,つまり電子登録債権の発生と,それから電子登録債権の譲渡について御議論いただいたわけですが,特に取り上げて御議論いただいたもの以外の項目について,ここで御意見がございますれば御発言をいただきたいと思います。--よろしいでしょうか。  ○○幹事,どうぞ。 ● 大変細かい,むしろ説明の仕方だけの問題なんですけれども,8ページの発生登録の請求のaの①で,これは「金額」というところから「債務者が一定の金額を支払う旨」というふうに記載が変更されたのは,債務負担の意思表示が含まれるようにという趣旨であるということなのですが,発生登録の請求自体は債権者からも両方すると。それで,合意によれば,要するに合意の内容を書くという説明だということになると思うんですが,非常に例外的な場合とされる交叉申込み型の場合の説明は少し多分違ってくるだろうと。そうしたときに,この記述でいいのかどうかというのが若干ちょっと気になったものですから,あるいは説明だけの話かなという感じはするのですけれども,少し御留意をいただければいいのかなと思いました。 ● どういうふうに説明すればいいんでしょう。 ● この記述というのは,基本的に債務者が発生登録の請求をする場合だけを考えて,そのために出てくるような記述のようになっていますので,債権者からすれば権利取得の意思表示ですとか,そういうようなものを含むという説明を加えるか,それとも債務負担の意思表示というよりは権利発生の意思表示というふうな形の方が,両方含み得るんじゃないかなという気はいたしましたけれども。 ● わかりました。それはおっしゃるとおりだと思います。 ● ほかにございませんでしょうか。  それでは,この第2と第5のいろいろな問題についてはこの程度にいたしまして,あと残った問題,つまり,まずこの第3の登録保証の問題を取り上げたいと思います。中間試案からの変更点や,特に御議論いただきたい点について,事務当局に説明をお願いいたします。 ● まず,第3の登録保証でございますが,10ページの下のところに前注をつけておりますように,中間試案では支払等の後ろに配置していたんですけれども,民法の規定の配列からしますと,譲渡よりも保証の方が先に規定が置かれているので,とりあえずここに置かせていただいています。また,これは最終的に条文を作るときにどういう順番になるのかというのは,私どもが決めることじゃないものですから,それに従ってまたもとへ戻すかもしれないわけですけれども,民法の順番からするとこういう順番になるということで,ここにとりあえず置かせていただいたということでございます。  それからあとは,登録保証は表現を,例えば特別求償権なんかは号立てにしたりして変えているところがございますけれども,実質を変えたところはごくわずかのつもりでございます。  まず第1に,11ページの2の登録保証の内容でございますが,注に書いていますように,適用除外規定に商法511条2項を追加いたしました。これは単に商法のことをすっかり忘れていたというだけのことでございますけれども,保証時の保証債務の連帯性ですけれども,これは連帯債務とは違う別の登録保証債務という特殊な保証債務ですので,連帯債務でもあって登録保証債務でもあるというのはまずうございますので,適用除外に加えるべきだろうということで加えさせていただいたということでございます。  それから,3の登録保証の独立性のところですけれども,ただし書を加えさせていただいております。これは注に書いておりますように,中間試案に対して寄せられた意見に基づくものですけれども,要するに,必要的登録事項の記載が欠けているために形式的要件が欠けていて,主たる債務者が債務を負担しない場合は,必要的登録事項が欠けているわけですから,登録保証人も一体どんな債務を負担するのかわかりませんから,独立に成立しようがないので,それは当然除かれると中間試案では思っていたんですけれども,それはやはりちゃんと書いておくべきじゃないかという指摘を受けて,それを書くことにしたと。うまく書けているかどうか,ここでは要綱ですので「必要的登録事項の記録が」と書いているんですけれども,多分条文を書くときはそうは問屋がおろさないので,いささか,さらにわかりにくい条文になるかもしれないと思います。  それから,次でございます。大分飛びますが13ページの5でございますけれども,特別求償権の部分でございますが,注1と注2をつけさせていただいております。  まず注1ですけれども,本文でいいますと(1)の柱書の上から3行目あたりに「民法459条,462条及び465条の規定にかかわらず」と書いているところ,ここを前は「464条の規定にかかわらず」というふうに入れていたのですけれども,今回は外させていただきました。この民法464条は,お手元の六法をご覧いただければおわかりのとおり,連帯債務者または不可分債務者の一人のために保証したものの他の連帯債務者あるいは不可分債務者に対する求償権について規定したものでございますけれども,これは主たる債務者が当該他の債務者に対して求償権を有する場合に,それと同一の求償権を中間省略で行使できるという規定なものですから,特別求償権のように主たる債務者が債務を負担していないのになお行使できるというのはまずいんだろうということで,それはまた別の問題として整理すべきなんじゃないかということで外したんですけれども,必ずしも全幅の自信があるわけじゃありませんので,御指導いただければと思っています。  それから,注2でございますが,②の場合です。②というのは,遡求・被遡求の関係にない通常の共同登録保証人相互間の求償の場面で,その場合は共同登録保証人の負担部分の額について特別求償権を行使できるとしていますが,民法を見ますと,465条に相当する部分になるわけです。民法465条ですと,請求できる額は他の共同登録保証人の負担部分の額なんですけれども,それができるようにするためには自己の負担部分を超えて弁済したことが必要だということになっておりますので,それとここを区別する理由はないんだろうと思いまして,ここを直してはどうかということで案を出させていただいていますので,それでよろしいかどうかを御審議いただければと思います。  以上です。 ● それでは,この第3の登録保証の部分についてでありますけれども,既に○○幹事から説明がありました3つの点について,あわせて御意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。  まず,この2のところで,商法511条の2項を追加した点についてですが,これは単に忘れていただけとおっしゃっていたので,これは追加するのが適当かと思いますが,いかがでしょうか。特に御意見ございますでしょうか。--それでは,これを追加するということで扱いたいと思います。  それから,次は3の(1)のところで,ただし書部分が加えられているということですが,この点についてはいかがでしょうか。主たる債務が確定できないわけですから,この対象はやはり必要であるというのはそのとおりかなと思いますが,よろしいでしょうか。--それでは,この点についてもそういう形で確定をしたいと思います。  それで,あとは,この13ページの5のところで,注1及びその次のページの注2で説明されている部分ですが,これについてはいかがでしょうか。--特に御説明について異論があるというわけではないと受け取ってよろしいでしょうか。それでは,特に御意見ないようですので,この説明で皆さん納得をされたということで,この事務局案でまとめたいと思います。特に御異論ございませんね。わかりました。それではそのように扱いたいと思います。  では,第3のところはこれで終わりまして,次に第4の電子登録債権の分割ということであります。この項目は全く新たに立てられた項目であります。その全般について事務当局から説明をしていただきます。 ● それでは,第4について御説明させていただきます。  まず見出しなんですが,ここで電子登録債権の分割という見出しにしているんですけれども,今になって考えますと,登録記録の分割にした方がいいのかなと思っています。というのは,15ページの2の分割登録の請求の(1)の②では「登録記録を分割する旨」ということで,電子登録債権を分割する場合と,電子登録債権自体はもとから2本あって,それが一個の登録記録に記録されているだけの場合に,記録を2つに分けて,あと譲渡しやすくするという2つがありますので,それをあわせる用語としては「登録記録の分割」の方がいいのかなと思いますけれども,またそこは権限ある当局とも御相談したいと思います。  それで,どうして今回こういう形にさせていただいたかという理由は,この前注に詳しく説明をさせていただいているんですけれども,最大の理由は一番最後に書いてございます③でございまして,中間試案のときは一部譲渡の登録事項というのはごくわずかのことだけを書いていたんですけれども,いよいよ条文を作らなきゃいけないということで一生懸命考えましたら,この15ページから18ページまでにありますように,中間試案に書いていたのとは比較にならないぐらい,おびただしい事項の請求事項や登録事項があるということに気がつきました。実は,もう既にお読みになられてお気づきかと思いますけれども,例えば一部保証があった場合の分割登録の場合の請求事項とか,電子登録債権の一部について質権が設定されている場合はどうするのかとかいうのは実は抜けていまして,そこまで考えられる余裕がなかったものですから,要綱案だからということで御容赦いただいて省いてあるんですけれども,そんなものも入れていきますと,条文にするときは相当の数になります。それを一部譲渡登録という形でまとめてやるというのは非常に困難であろうと。一回やはり分割した上で,分割したものを譲渡する形じゃないとうまくいかないのではないかというのが最大の理由でございます。  あとは,もう一つの理由は②に書いてございます。先ほども表題の関係で,登録記録の分割の方がいいんじゃないかということを申し上げたんですけれども,債権自体を分割するんじゃなくて,もとから債権が一つの電子登録債権番号で表示されている,その一個の登録記録に2つ以上あるという,これはどういう場合かといいますと,例えば登録保証人が一部弁済した場合でございます。一部が特別求償権に切りかわって,例えば1,000万円の電子登録債権のうち600万円を登録保証人が弁済したという場合は,600万円の特別求償権があって,400万円残りの原電子登録債権があるという,そういう2本の電子登録債権が一の登録記録に記録されているということになりますので,それはそれぞればらばらに譲渡しようと思うと,記録を分けないと譲渡できないということになりますので,そういう場合は,譲渡としては全部譲渡なものですから,一部譲渡という枠の中で説明できないということもあり,それで別のことにしなければいけないのではないかと考えた次第でございます。ですから,②と③が主たる理由なんですけれども,①は,こういう分割という形にするとこういういいこともありますよということを書いているんですけれども,つまり,社債の場合に総額引受けしておいて,後でお客さんに分けて売るというような,それに近いようなことも,一たん分割登録して切売りしていくというようなこともこの方式ならできる。一部譲渡だと譲渡とセットじゃないと登録できませんので,そういうことはできないということになりますが,分割しておいて後で買い主が決まったら売りさばくということも,この方式をとればできる。それがどれぐらい使われるかはよくわかりませんけれども,フレキシビリティーは増すというメリットもあるのかなと考えた次第でございます。  それで,さっきこれ以上登録の種類を増やしたくないと言いながら分割登録という種類を作ったんですけれども,これはなぜ作ったかというと,15ページの1にありますように,分割登録の場合は,電子登録債権の債権者であることが登録記録に記録されている者が単独でできる。つまり,変更登録ならみんなでやらなきゃいけないわけですけれども,そうじゃなくて,一部譲渡のときも単独で分割して譲渡することを認めていましたので,そういう単独で分割できるようにするというところにメリットがあるからでございます。  ちなみに,この1の「電子登録債権の債権者であることが登録記録に記録されている者」というのは,それに似た概念として登録名義人の定義がございます。登録名義人というのは,「電子登録債権についての権利者であることが記録されている者」と前の方で書いていますけれども,権利者か債権者かというところが違うわけでございまして,登録名義人には質権者も入りますが,ここでは債権者として登録されている者しか分割はできないということを書いているわけでございます。  分割登録の請求ですが,時間の関係で細かいことは申し上げられませんけれども,要するに,先ほど申しましたように,2の(1)の③の「電子登録債権が2以上あるとき」というのは,登録保証人が一部弁済をしたような場合で,支払等登録をしていて特別求償権が発生しているというような場合でございます。非常に複雑な形になっていますのは,例えば分割払の電子登録債権をどういうふうに分割するのか。いわば縦分割といいますか,それぞれの支払期日の,例えば200万ずつ払うということになっていたときに,100万ずつそれぞれ分割するという行き方と,横分割といいますか,ある支払期日の部分だけを抜き出して分割して譲渡するという,その2通りがあるものですから,こういう形になっていますし,債権者が複数の場合に,ある人の分だけを譲渡するとか,あるいは2人いる場合の2人とも一部ずつ譲渡するとか,いろいろなことが考えられるので,それをあらわすために,一見するとこういう複雑な形になっているということでございます。  それから,あとは登録の方法の関係ですが,18ページから19ページにかけて注をつけさせていただいておりまして,今回の案は,原登録記録への記録の方法として,分割登録記録に記録すべき登録事項については,もう一たん全部削除して,もう一回所要の情報を再度記録し直すという方式で要綱を書いていますが,分割の前後で内容に変更がない事項については削除しないで,変更があった部分だけ削って書き直すという方法も考えられます。ただ,後者の方の方法がうまく条文で書きあらわせるのかという問題があって,この要綱案をお届けする段階では前者の方しか書けなかったものですから,そういう前者の方でお送りしているということでございます。ですから,後者の方がよければ後者も考えたいと思いますけれども,条文に書き切れないかもしれないということは御容赦いただければと思います。  以上です。 ● これは,技術的な問題もたくさん含まれていてあれなんですが,まず最初にお伺いしたいのは,電子登録債権の分割という,こういう制度を取り入れるといいますか,一部譲渡という構成を改めて,そういう制度にするという,そういうコンセプトについていいのかどうかということについて御意見をお伺いしたいと思います。  この点については特に反対の御意見があるわけではないというふうに承ってよろしいでしょうか。--それでは,その点については御了解をいただけたということで,次に個別的な問題に移りますけれども,これは特にどれということではなくて,1,2,3のところまで数字が振られていますが,いずれについてでも結構ですので御意見等をお伺いしたいと思います。  ○○幹事,どうぞ。 ● これは単純に質問なんですけれども,100万円の債権を5人に譲渡しようと思って5分割したんだけれども,そのうちの1つだけを譲渡して4つ余ってしまった,売れなかった。それをまたもとに戻すようなのは,もう考えないんでしょうか。そうすると,また何か結合登録とか……。 ● その場合は関係者で変更登録をすれば足りるだろうと。どうして分割登録というのを認めたかというと,分割登録の場合は登録記録の番号が増えて,新しく登録記録を作り直すことになるんですけれども,併合の場合は,一番最初の1個ある登録記録はそのままで,それの債権額をまた増やすという変更で足りると思われますので,それはそういう処理でよろしいのではないかと内部では議論しております。 ● わかりました。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 私の方も質問なんですけれども,今のように分割したときに,分割も幾つかありますけれども,特に支払期日が同じ分の分割ですね。支払期日が同じものについての分割して譲渡したとき,別々の譲受人に譲渡されたときですが,基本的に登録された債権者の方に支払うパターンであれば全然問題は起きないんですけれども,例えばいろいろな代金の決済方法が考えられていて,特に金融機関が代理受領した上で払うという方式で,その全額に足りなかったときの充当とかいうのは,ここの中で充当順位等についての登録事項を設けるようにするのか。それとも,全くもう金融機関の方が代理受領で払う場合の充当順位という形にしてしまうのか。そのあたりについてはどういうふうに考えておられるのかというのを,ちょっとお聞かせいただきたいと思います。 ● ちょっと設定された事例自体がよくわからなかったんですけれども,幾つかに分割して,まとめてお金が入金されたんだけれども,その入金された額が分割されたものの合計した額よりも少なかったという場合ですか。 ● ええ。その場合についての,特に譲受人の保護という形であらかじめ充当順位というのを入れておく必要があるとも考えられるし,そういうのは全く分割のときの契約関係,二次的なことであって,この法律の中では介入するつもりはないと考えておられるのか,どちらなのかという御質問なんですが。 ● これは契約関係じゃありません。15ページの1に書いていますように,電子登録債権の債権者が単独でやる行為ですので,契約とかそういうことはまずないということを申し上げなきゃいけないと思います。その場合は単なる法定充当の問題で,民法の規定に従って法定充当すると考えています。 ● それが非常に難しいのか。全く完全に平等に5つに分かれたときで,全部譲受人が違うケースだと,それでも解決しないように思うんです。 ● 解決しないというのはどういうことですか。民法の規定で全部処理できるはずですよね。 ● そうすると,もう完全に案分ということになるんですか。 ● そうです。 ● そういう案分というのを嫌って,例えば順番をつけるということは有害的記載事項になるんでしょうか。 ● ですから,分割というのは債権者が勝手にやることですので,債権の内容は変えられませんから。だから,債権の内容を変えたかったら変更登録しないといけない。しかも,電子登録債権相互には順番はないので,例えば何番の登録番号の債権は何番よりも優先するとか,そういうことはちょっと考えていなかったんですけれども。 ● それは考えておられない。わかりました。 ● ほかに。  ○○幹事,どうぞ。 ● 基本的な質問で,もう手おくれなのかもしれないんですけれども,分割は債権者単独でできる。一部譲渡のときも確かにそうです。例えば債務者にとってみれば,手形だった場合は分割できませんから1人に送ればいいわけですけれども,例えば5分割とか10分割,100分割されると,要するに債権者が100人になる。これ,持参債務だと思うんですけれども,そうすると送金手数料がばかみたいにかかる。おそらくこれは,念頭に置かれているのはシ・ローンですとか,そういう社債的に使うとかいう場合は,債務者は納得しているから多分いいんだろうと思うんですけれども,手形的に振り出した方が勝手に100分割されて,100人別々の銀行口座に振り込んでくれということになると,これは大丈夫なのかとちょっと心配になったものですから。 ● そこは9ページをごらんいただきたいんですけれども,○○委員に御異論のあるところなんですけれども,bの法定の任意的請求事項の④で分割登録についての登録の請求をすることを制限する定めが置けますので,ですから,発生登録の債務者が,2分割までしかだめだという定めが置けます。 ● 債務者はかなり気をつけてここは見ないと,やはり……。 ● あるいは管理機関の方でも制限することはできますので。 ● だから,この管理機関はどこまで分割できるのかというのを,よく債務者は気をつけている。 ● それはそうですね。 ● ほかに。  ○○委員。 ● ちょっと質問なんですけれども,債権者が複数いる場合は,債権者のそれぞれが単独で,ほかの債権者とは関係なく自由に分割できるということでよろしいんでしょうか。 ● 可分であればですね。もちろん自分の分だけですけれども。だから,自分の分だというのをこれであらわしているつもりなんですけれども。 ● 例えば,先ほどお話が出た,登録保証人が一部だけ支払ったというような場合に,それを2つに分けるという,支払等登録をした人が自分の分だけ単独にしたいというケースがあると思うんですけれども,へそ曲がりがいて,一部の金額だけ別にしたいと。残りは残しておきたいというようなのも,他方の債権者の意思にかかわらず自由にできるんですか。 ● ええ。できるという前提で,この15ページの2の分割登録の請求の(1)を書いております。つまり,今の場合ですと,③の原登録記録に記録されている電子登録債権が2以上あるときに該当しますので,登録保証人が自分の分だけ分割登録記録に書いてくれということをまず請求するわけです。ただ,書いてくれという額が全額じゃないわけです。ですから,④にもかかってくることになりまして,分割登録による一の電子登録債権である特別求償権を分割することになりますから,④のイに該当して,ただ,600万円のうち400万円だけを移すというなら400万円と書くということになります。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 今のと関連するのかどうかわからないんですが,共同相続の場合に可分債権になるけれども,しかし全員そろって変更登録をするんだということが前に出ていたと思うんですが,それとの関係はどうなるんでしょうか。 ● 一たん全員の名義に変更登録をした上で,その変更登録したものが可分債権になりますから,変更登録し終えた分で,例えば相続人がA,B,Cといて,A500万円,B250万円,C250万円というときに,Aが自分の分だけ譲渡したければ,それを切り出して,A500万円の分だけを別の分割登録記録に書いてくれという請求は,これはAが単独でできる。ただ,その前のA500万円,B250万円,C250万円なのかどうかということがまさに問題ですから,そこは全員で変更登録をやってもらわなきゃだめだと,こういう整理でございます。 ● そうすると,この分割制度ができたとしても,やはり共同相続のところで変更登録が1回入るのはしようがないということですね。 ● はい,そうです。 ● わかりました。 ● ほかに。  ○○委員,どうぞ。 ● 先ほど回数制限の話が出ましたけれども,回数制限というのは,割と大きな数字がついていたとして,最初2つに分けた。次から分かれて,また債権者が別の人に分けることができるんですけれども,どの時点でどれが分かれたかということをだれがカウントしてくれているというふうに……。 ● これは,16ページの(2)に入る手前のヘというのがありますけれども,登録をすることができる回数が記録されるときは,当該回数のうち,分割登録記録に記録すべき電子登録債権について,分割後にこれらの登録をすることができる回数を必ず登録事項として請求しなきゃいけないということにしていまして,その請求があると,その請求どおり分割登録記録に書くとともに,それを引いた残額を原登録記録の方へ書く。引いてさらにプラス1ですね。既にもう1回使っていますから引かなきゃいけないんですけれども。 ● でも,意見が合わない可能性はないと考えられているんですか。2つに分けるときに……。 ● 自分が自分の分を分けるだけですから。 ● 債権者がやるんですけれども,自分が前にやっていたところを全部把握した上でやると。それで数字が合わないときは……。 ● 今登録されているので,あと何回というのが登録されていますから,それを2つに分けるだけですから。 ● わかりました。 ● ほかに,この分割について御意見,あるいは御質問等ございましたらお願いをいたします。  ○○幹事。 ● ちょっと確認だけですけれども,管理機関を選ぶというのもありますけれども,そもそも債務者が登録するときに分割禁止というのは,それはいいんですよね。 ● 分割禁止も……。 ● つければいいわけですね。わかりました。 ● ただ,管理機関が分割禁止はできないということにしているとだめですけれども。 ● ほかに御意見,御質問ございませんでしょうか。--これは,今回確定するということになりますが,特に御意見ないようですから。 ● 確定は1月ですので,もしも何か誤りがあれば御指摘いただければと思います。 ● 御指摘いただく点がございましたら,また最終的にこの問題を扱うまでに事務局に御指摘をいただければと思いますが,○○委員,何か。 ● ちょっと1点だけ,すみません。先ほど○○幹事がおっしゃった送金手数料の件なんですけれども,分割禁止をしていない限りは分割されるのはやむを得なくて,その場合は送金手数料は債務者負担になるというのが原則だということにはなってしまうのでしょうか。実務的には管理機関の口座に一回引き落としされれば--でも,その先に行く手数料がやはり債務者負担になるんですかね。 ● 債権者の行為によって弁済費用がふえるわけですよね。だから,ちょっと別の考慮はあり得るかもしれませんね。勝手に答えましたが,どうぞ。 ● 今,○○委員がおっしゃられたとおり,民法485条ただし書の方に当たるんじゃないかという議論を昔,研究会のときでしたかね,したような記憶がございまして,そうなるんじゃないかという意見と,他方,分割するのはもともとの債権者であって,負担してしまうのは譲り受けた後の人になってしまう。それで485条ただし書で読めるのかどうかというところがクエスチョンのまま終わっていたというような,研究会段階ではそういう記憶があるんですけれども,民法の先生方,ここら辺のところはいかがでございますでしょうか。 ● 直感的に答えてしまいましたが,あるいは当時,研究会--○○委員,どうぞ。 ● 実務的に言えば,送金手数料の負担というのは相対で,要するにどちらがというのはお互いに決めるということで,送金者が負担する場合と受取人が負担する場合とございますので,この場合も多分そういう関係になってくるんじゃないかなという気がするんですね。 ● 最初の発生登録をした当事者間ではそうだと思うんですけれども,ただ,譲渡されてしまいますと,当事者間の合意がいわば人的抗弁になってしまいますので,譲受人にもそれが言えるのかどうかということは問題で,例えば任意的登録事項として送金手数料の分は削って送金しますとかいうのが定まっていれば,それで対抗できると思うんですけれども,そうじゃないとすると,勝手に削ることはできないかもしれないので,そこは先ほどの485条のただし書の問題がどうなるのかという問題とあわせた問題だとは思いますけれども。 ● 何か,その最後の点について御意見ございますでしょうか。  ○○幹事,何か。 ● 特に……。 ● 特にないですか。それでは,ほかに何か御意見ございますでしょうか。  ○○幹事,どうぞ。 ● ちょっと,もう一回,次回に例の譲渡性の議論があるので,むしろ○○幹事に確認だけしておきたいんです。今日,○○委員もおっしゃられたように,相当いろいろなビジネスモデルを想起した上でこの議論をしているので,もともと事務局としては,それを法律の中に書き分けるというのは余りよろしくないんだと,こういうことをおっしゃっていたと理解しているんですけれども,これは将来的にも--つまりちょっと心配しているのは,いろいろなビジネスモデルを詰め込んだがゆえに,つまりこれが法律ができ上がった後を見ると,参照すべき判例がない世界に突然入るわけで,それで,ないんだけれどもはまっているそのビジネスモデルが多いがゆえに,多分最初の段階で判例が積み上がるまでは相当予測がちょっとしづらい部分というのが出るんじゃないか。つまり,なぜかというと,今の手形の世界ですら法律と判例と,それからいわば銀行システムの何かみんなが寄り合って制度ができている部分があるんですけれども,この本件については,法律ができ上がった後は,多分そういうものが突然ない世界から出発をするということになっちゃうような気がするんです。まずその点については,それはそういうものであるという理解をしているんでしょうか。まず質問です。 ● ちょっと御質問の趣旨が正確に理解できていないかもしれないんですけれども,この電子登録債権というのは全く新しい債権の制度ですので,新しい法律に基づいて新しい制度になりますから,もちろんそれについての直接の判例はないということにはなるし,実務慣行もないことにはなるとは思うんですけれども,しかし,それで何らか問題が起きるのかというと,そういうことは余りないんではなかろうか。その問題が起きそうなところは,例えば今日も御議論いただいた原因債権との関係とか,そういう問題があり得るわけですけれども,そこは解説等でしっかり書くことによって,問題が起きないだろうという整理をしていただいたと思います。あとはもう金銭債権ですから,事細かに整理してありますので,ビジネスモデルによってどういう,例えば業務規程でどこまで任意的登録事項を認めるかとか,それは例えば手形代替であればこういう形になり,例えば,既に○○委員の方でおやりになられたようなモデルが一つあるわけで,そういう形,任意的登録事項がほとんどないものもあれば,シンジケートローンであれば任意的登録事項というか契約書が全部登録されたものに多分なるんだろうと。ほかのものもいろいろあり得ると思うんですけれども,そういうふうに幾つかの類型には分かれると思いますが,それは業務規程で全部定められるので,その枠に入ってしまえば,それであとは処理されるだけですから,それで何か問題が起きるのがあれば,そういう問題が起きないようにしなきゃいけませんから,むしろ承りたいんですけれども。しかし,問題が起きることはないんじゃないかなと思っているんですけれども。 ● 問題が起きるというのは,多分法律的な問題が起きるかどうかという趣旨でおっしゃられていると思うんですけれども,もともと,先ほど○○委員の御発言にもあったように,それぞれのビジネスモデルでやりたいことと,それから法律的に問題が起きるかどうかというのはやや次元が別な話なので,私の発言の趣旨は,だから,逆に言うと,この場は法律を議論する場であるから,実務的に意図した政策効果が出るかどうかというのは,それはまた別の場所で議論すべきである,こういう理解をしてよろしいですかね。 ● それは,社会で役に立つためにこれを議論していただいているわけですから,法律的には何の問題もないけれども,何の役にも立たないものを作ってもしようがないので,そこは,もしもそういう問題があるのであれば,ここで御議論していただいて,そういう問題がないような法制度にしなければいけないと思いますけれども。 ● 質問の2番目は,今,業務規程の話を出されましたけれども,そうすると,一義的には法制度ができた後,管理機関のあり方というか,業務規程なんか,管理機関のあり方は金融審でもやっていますけれども,それと,それから債権者と債務者の約定というか,それで何ができるかというのは決まってくると,こういうことですよね。 ● おっしゃるとおりだと思います。 ● わかりました。そうすると,例えば先ほど中小企業の観点で○○委員が言われたこととか,それから,将来的に新しいビジネスモデルはどういうのができるかというのはわからなくもありますけれども,それを具体的に実現するかどうかは,実現したいと思ったら,それは行政的に対応するべき話だと,こういうことですか。そこに政策的な意義があることを前提に申し上げているんですけれども。 ● 行政というのがちょっとぴんとこないんですけれども。民間の時代だと思っているものですから。 ● だから,この法制度だけ見ていると,例えば手形的な世界が本当に実現できるかどうかというのは,まだちょっと要件が足りないような気もするんです。つまり,法律的にはある意味で完璧なものになっているのかもしれませんけれども,多分それで法律だけがあっても,例えば電子上の手形が実現できるかどうかというのは,まだこれはわからないわけですよね。それはそういう理解をしていていいですか。 ● それは,そういう管理機関が出てきてくれなきゃいけないわけで,さらに,これは前にいろいろな研究会とかでも議論されたことですけれども,例えば手形と同等ということにするのであれば,銀行取引停止処分に相当するものを,これは実務慣行で今やっていますので,そういうものを入れるかどうかとか,それ自体も前の金融審のワーキングのときは両論あったと思いますけれども,そういう問題は別途考えなければならないと思います。ただ,私が答えるよりも○○委員にお答えいただいた方がいいのかもしれませんけれども,そういう手形代替の管理機関を構築すべく,これは一金融機関ではなかなか難しいという問題があることは,前に○○委員からも御指摘があったところですから,そういう業界横断的な管理機関というものを作った方が手形代替にはなりやすい。つまり,手形交換所みたいなところがあった方がいいわけです。 ● もし銀行から何かあれば,ちょっとお伺いしておきたいんですけれども。 ● そこにつきましては,今日もいろいろと議論が出ましたけれども,この法制度がどういうふうに作られて,それが,最終的には銀行もサービス提供者ですので,これを使われる利用者の方が真に使われるものになったかどうかと,そこの判断次第だと思っていまして,例えば一つの管理機関を作るという前提に立った場合に,金融機関といっても非常に数が多いし業態も多いわけですから,その意思を統一してまとめていくだけでも非常にエネルギーが要る話で,かつシステム投資もかなりかかるだろうということを考えますと,これは本当に使えるなという確信がかなりないと,なかなか次のところに進みづらいのかなという感じはしております。 ● すみません,もうちょっといいですか。銀行業界の議論の中で,そういう議論はもうされているのかしら。 ● そこはまだです。 ● 金融庁でもまだですか。 ● 金融庁は,金融審議会でも議論をしようと思っています。 ● そうですか。わかりました。ありがとうございました。 ● よろしいでしょうか。  それでは,一応本日予定しておりました審議はこれですべて終了いたしました。次回の予定の説明をお願いします。 ● 本日も非常に長時間にわたりまして熱心な御討議をいただきましてありがとうございました。おかげさまで,それぞれの論点について随分検討が深まったと思っております。今日は予定よりも大分早く終わったなと。第1の最初の方をやっているときは,今日は8時を超えるかなと思っておりましたけれども,先生方の御協力によって非常に効率的な御審議をいただきましたので,6時台で終わるとは途中の段階では全く思っていませんでしたけれども,ありがとうございました。  それで,次回でございますが,11月28日火曜日13時から,場所は東京地検の会議室です。この建物の方のエレベーターの下層階に上がる方の--つまり,今日は20階に上がるエレベーターに乗ってきていただいたんですけれども,12階までしか上がらないエレベーターというのがありまして,そこが3階にとまるものです。20階に上がる方ですと11階以上しかとまりませんから,12階まで上がるものに乗っていただいて,3階でおりていただきまして,日比谷公園側です。おりていただいて右手に出て左真正面に行っていただく。東京地検側の方のビルなんですけれども,入るのはこちらの入り口から入っていただいて,3階で東京地検側に渡っていただいて,入ってすぐの会議室になります。そこで13時からお願いしたいと思っていますので,よろしくお願いいたします。次回の審議内容としましては,要綱案の第1次案の後半部分を御審議に供したいと思っております。  どうも今日は長時間ありがとうございました。 ● どうもありがとうございました。 -了-