法制審議会 被収容人員適正化方策に関する部会 第2回会議議事録 第1 日 時  平成18年11月2日(木) 自 午後2時58分                       至 午後5時01分 第2 場 所  法務省第一会議室 第3 議 題  被収容人員の適正化を図るとともに,犯罪者の再犯防止・社会復帰を促進するという観点から,刑事施設に収容しないで行う処遇等の在り方等について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● 大変お待たせいたしました。予定の時刻になりましたので,ただいまから法制審議会被収容人員適正化方策に関する部会の第2回会議を開催いたします。          (幹事の異動紹介省略) ● 前回の部会で皆様にお諮りしましたように,本日は社会奉仕を義務付ける制度の導入の当否について,一わたりの議論を行う予定でございます。  その本題に入ります前に,まず前回皆様方から御質問等があり,事務当局の方で検討することとされていましたものにつきまして,事務当局に御説明をお願いしたいと存じます。  前回の部会では,受刑者の収容期間等に関する御質問,出所後の社会福祉等に関する御質問のほか,本日の議題でございます社会奉仕を義務付ける制度に関するものとして,過去の法制審議会刑事法部会における議論の状況についての御質問,諸外国の法制についての御質問,少年の保護観察処遇の一環として既に行われているものについての御質問があったものと承知しております。  社会奉仕命令に関するものにつきましては,この後の本題の議論の際に御説明いただくこととしまして,まず受刑者の収容期間等に関するものと,出所後の社会福祉等に関するものにつきまして事務当局の方から御説明をお願いいたします。 ● 矯正局でございます。  お手元の配布資料5,統計資料4をごらんいただきたいと思います。これは前回会議での御質問に答えようとして作成したものでして,1.出所受刑者の受刑在所期間という表がございますが,これは前回言渡し刑期の長期化が見られるという説明に対して,実際の在所期間ではどうかという御質問がありましたので,それに答えるものです。表に記載はしていないのですが,平成17年出所受刑者の平均在所期間が23.2月で,平成8年のその対応する数字,平成8年出所受刑者の平均在所期間が21.1月でして,下のグラフ等から見ましても,言渡し刑期よりは変化があらわれるのが遅くなるのではないかと思われますが,実際の在所期間についても長期化の傾向が見られると言ってよいかと思います。  次の表,新受刑者の年齢別構成でして,これは前回受刑者の年齢についての御質問がありましたので,それに答えるものでございます。これもちょっと比率を表には記載していないんですが,新受刑者につきまして30歳未満の者を見ますと,平成8年が26.2%,平成17年が21.1%ですが,65歳以上の者で見ますと,平成8年が2.3%,平成17年4.9%となっております。また,右下の折れ線グラフが示しているところからもわかりますとおり,全般に受刑者の年齢は高くなってきているということが言えるかと存じます。  それから,その次の3ページ目と4ページ目の表でございますが,これは前回の質問で,御趣旨としては罪名別の刑期がどうなっているのかという問いと理解いたしまして,それに答えようとするものでございます。4ページ目の平成8年と平成17年に罪名別の言渡し刑期の比較をしておりますので,これを見ていただければわかると思いますが,ここに掲げましたそれぞれの主要罪名で,やはり言渡し刑期は長期化していると言えるだろうと考えます。  それから,5ページ以下でございますが,多数回入所者に関する事例,高齢受刑者に関する事例等が続きますが,前回,再入受刑者の通算在所期間についての御質問がありましたところ,これらは極めて多様にわたり,その在所期間の平均値等を出すのは困難でありますので,その事例を抽出しまして,その在所期間を見ることとしたものでございます。  多数回入所者に関する事例(1)というのは,大変極端な事例になってしまうのですが,ある刑務所,実際にこれは府中刑務所で入所度数が一番多い者を抽出したものでございまして,30回目の刑務所入所という人でありまして,この人でいきますと,最初に刑務所に入りました23歳以来,その後57年のうち48年3月を受刑して過ごすという状況でございます。この通算在所期間は,刑の執行による在所期間のみをとっておりますので,このほか未決勾留の期間も加えますと,もう少し長く矯正施設に入っているということです。この事例の人では,近年は社会で放浪生活を送っておりまして,直近の犯罪は,出所後のあてがなくて,刑務所に入ろうとして自転車を盗んでつかまったというものでございます。  その次の多数回入所者に関する事例(2)というのは,これは女性の刑務所で入所度数が一番多い人を抽出したものでして,17回目に入っております。この人では,最初に入所した19歳以来,約56年のうち26年3月を刑務所で,刑の執行期間として過ごしているということでございます。平成17年4月に刑務所に入る前は,少し間隔があいておりまして,この間は更生保護施設の世話を受けて,その後老人ホームに入っていたようですが,対人関係がうまくいかないなどの理由により,その後,一人で生活保護を受給して暮らしていましたけれども,生活が苦しくなりまして,刑務所に行くために万引きしたというのが直近の犯罪という事例でございます。  それから,その次の高齢受刑者に関する事例というのは,府中刑務所で一番最高齢83歳という人の事例でして,この人も社会では放浪生活です。犯罪は窃盗もありますが,酒を飲んだ上で女性にわいせつ行為をするというのが,1つのパターンになっております。  それから一方,間欠的に刑務所に入ってくる再入受刑者という者もおりますので,それが準初犯高齢受刑者に関する事例ということでございます。この人は,前回の出所から大分期間が経っておりますので,刑務所としては犯罪傾向の進んでいない刑務所で服役をしているというものです。この人の場合は33歳の昭和38年ぐらいから50歳になる昭和55年ぐらいまでのところですが,約17年ぐらいは工場に勤務しておりまして,生活は安定していたということでございます。課長補佐になるまでになったらしいんですが,中間管理職としていろいろ難しい立場があって,それで退職してしまったということですが,その後生活が不安定になっているというそんな事例でございます。  それから,資料はお配りしておりませんが,前回御質問がありました社会福祉とのつながりで見た出所者の類型ということでは,後ほど保護局の方で資料が配られておりますので,それについて御説明がありますが,刑務所で見ております満期出所者の事例について若干説明申し上げますと,満期出所時に最も職員が苦労しておりますのは,出所後直ちに入院等を要する,あるいは人工透析のための通院を要するという人で,引受人のいない場合の病院探しというのが極めて難しい業務になっておりまして,刑事施設の医師のつてを頼った病院探しだけではとても足りないというので,病院をランダムに当たってというような苦労もしているようでございます。それで病院が見つかれば,生活保護法による医療扶助,生活扶助ということで,これを刑事施設の所在地等の社会福祉事務所にお願いして,経済的には生活保護を受けた上,病院を探してそこへ引き取ってもらうという,それが一番苦労しているということでございます。  そのほか,精神障害者につきましては,御存じかと思いますが,精神保健及び精神障害者福祉に関する法律26条で通報義務というのがございまして,刑事施設の長が精神障害者あるいはその疑いのある収容者を釈放する場合に,都道府県に通報するという義務がありますので,通報いたしまして,そのうちの一部の者については入院措置が取られるということでございます。  それから,知的障害者という類型の人もいまして,知的障害は概念的には精神障害の一種ということのようでございますが,これについては,最近,厚生労働省の方でも,知的障害のある人で,刑事施設から出所した者をどうするかという問題意識が大分高まってきておりまして,元国会議員の山本譲司さんなども関与された厚生労働省の研究会で研究をされるということで,私どもの方もそれに対していろいろな調査について協力をするという状況にあります。  以上でございます。 ● どうもありがとうございました。  次に,保護局の方からはいかがでしょうか。 ● 保護局の方から説明させていただきます。資料は6でございます。  前回の部会におきまして,○○委員からの御質問がございました刑務所を釈放後の社会福祉とのつながりについて御説明申し上げます。  前回,○○委員からも御指摘がございましたように,福祉的な対応を要する仮釈放者あるいは満期釈放者,すなわち高齢者とか身体障害者とか精神障害者,知的障害者などに対しまして福祉機関にどうつなげるかが問題になるわけでございますが,これまでは十分な連携がとられてきておらず,その対応に苦慮してきた現状がございます。  本年度に入りまして,先ほど○○幹事からお話がありましたとおり,まず知的障害者の分野においてでございますけれども,厚生労働省と連携した厚生労働科学研究というのが始まって,今後その研究成果,これは3年計画らしいんですけれども,研究成果に期待したいと考えているところでございます。  御参考までに,現状はどのように対応しているのかということを申し上げますと,高齢者やさまざまな障害を持つ人のうち,すぐに福祉機関につなげられない人につきましては,極めて限定的ではございますが,更生保護施設が受け入れざるを得ないという実態にございます。ところが,更生保護施設は福祉施設ではありませんので,ノウハウの面でも設備の面でも,福祉施設のような対応をすることは不可能です。加えて,非常に少ない職員,かつ,限られた予算で保護を実施しておりますので,更生保護施設職員自身も高齢者や障害を持つ人の対応について,非常に苦慮している現状にあります。  ○○委員の御要望に直接お答えするものではないかとも思いますけれども,ここでは,更生保護施設における高齢者等の在所状況,処遇状況の事例を簡単に説明,御紹介したいと思います。  まずそういった人がどのくらいいるかを示したグラフが,1枚目の棒グラフでございます。黄色の棒グラフ,これは平成16年の5月末日現在で更生保護施設に入所していた対象者,合計1,586人,この人たちが,60歳以上の高齢者,それから身体障害または虚弱とか病弱の類型,これは身体障害と表示しておりますけれどもそういう人たち,あと精神障害者,そのおそれのある人を含むということでの精神障害者,そして知的障害者,平成16年は著しい性格の偏りのある人,人格障害と診断された人を含むとして調査しておりますけれども,この知的障害者,それから長期刑受刑者とか,受刑歴6回以上,常習窃盗者,問題飲酒者,薬物問題者,暴力組織関係者という10の事項に該当するかどうか,該当する場合には,そのすべてを回答してもらった結果でございます。この調査自体が,高齢者とか身体障害者とか,それに限定したものではなくて,更生保護施設においてなかなか対応が困難な人たちの割合をとったということですので,その10項目について調べたものでございます。  青色の棒グラフ,これは平成17年,昨年の4月中に更生保護施設を退所した人を対象といたしまして,先ほどの項目のうち,受刑歴6回以上を除きまして,ギャンブルとか浪費傾向,多重債務者を含む問題者,それから性犯罪者を加えた事項につきまして同じような調査を行った結果でございます。4月中退所ということで退所した人は562人でございます。16年と17年の調査対象,今申し上げましたとおり必ずしも同一とは言えず,調査項目も一致しておりませんけれども,おおまかな傾向として高齢者,60歳以上の高齢者が11から13%,身体障害者,虚弱・病弱者を含んだ者が大体5から7%,精神障害者が約2%程度いるということ,平成16年度調査では約2%だった知的障害者が,平成17年度調査では約6%いるということがおわかりいただけるかと思います。  このほかにも,更生保護施設において処遇困難と言われる問題にはさまざまなものがございますけれども,高齢者,身体障害者,知的障害者といった問題につきましては,本来であれば更生保護施設では十分に対応しきれない,福祉につなげたい事案でございます。更生保護施設の努力で何とか福祉の方につなげた事案も少なくありませんけれども,いずれにいたしましても,そうした司法と福祉の狭間にある対象者を更生保護施設が,今申し上げましたように,常時一定数抱えているということについて,御理解いただければと思っております。  次のページが,ごく簡単な,更生保護施設において福祉的対応をした人に関する処遇状況ということで,数例具体的な対応状況をメモした事例でございます。  まず一番上の(1)の事例,これは北海道の更生保護施設が受け入れた退所時68歳,委託日数が100日と,高齢で足腰が弱って日常生活にも非常に難儀した人の事例です。更生保護施設は,少ない職員ですけれども,病院まで送迎,日用品購入の付き添い等で苦労して,結局福祉につなげるために生活保護を受ける手続をすべて更生保護施設の職員が対応して,その受給が認められて退所したという事例でございます。  次の(2)の事例は,入ったときはまだ60歳未満ということで入所は認められたわけですが,心臓病の発作が起こったということで,病院への入院を世話して治療等々に対応し,それからいつ,どういう状況になるかわからないということで職員の気配りが大変だったという事例ですが,懸命に家族との調整をとって,幸いにして子供と連絡が取れ,調整もとれたということで,これも生活扶助,医療扶助を受けて退所することができました。これは日数自体は少なかったわけですけれども,家族との調整がとれた事案です。  3番目の事例は,刑務所の在所中に糖尿病が悪化し,視力障害2級の認定を受けたという人で,満期釈放になった事案です。保護カードを持参して保護観察所に出頭し,保護観察官の方でも更生保護施設に依頼して福祉との調整をとってもらったということで,結局これは養護老人ホームですか,福祉施設への入所がかなったという事例です。  それから4番目の事例。これは知的障害者の事例ということで,就労意欲はあるということで,いろいろ協力雇用主を含めて就労を援助したわけですが,なかなか円滑な調整が難しかった。療育手帳発給の手続等にも努力したわけですが,なかなかこれもうまくいかずに,更生緊急保護の原則6か月という期間ぎりぎりまで退所先確保が難航したわけですが,更生保護施設の努力によって,市内の知的障害者授産施設への移行が可能になった事例です。  5番目の事例は,これは仮釈放で約3か月の仮釈放期間で出てきたわけですが,事前の環境調整では健康上,特段の問題が認められなかった。60歳を超えておりますが,就労意欲もあるし,できるだけ引き受けようということで,更生保護施設が仮釈放で引き受けたわけですが,入る前からちょっと認知症の傾向とかそこらあたりのことが十分把握できていなかったというようなことで,釈放当日に転倒したり,いろいろ痴呆症状が出てきた。身体的にも,出た途端に一気にいろいろな病気が発現して,非常にその対応に苦慮したというような事案であり,病気入院のままで委託自体は打ち切られて福祉の方に引き取ってもらったというような事案であります。本来,福祉的な対応,機能,設備,職員等整っていない更生保護施設が,福祉的対応を要する人たちを,実際にも,先ほどお示ししましたように一定数抱えている,実際に福祉へつなぐ場合,こういう形での苦労があるということを御紹介申し上げたということでございます。  以上です。 ● どうもありがとうございました。  ただいまそれぞれ御説明を受けたわけでございます。この点につきまして,何か御質問等ございますでしょうか。今,御説明いただいた順序で御質問をお願いしたいと思いますが。  関係官,お願いします。 ● いただいた資料の中には,前回私がお願いしたものも含まれておりまして,ありがとうございました。それでは,矯正局の方からいただいた資料の関係ですが,矯正と福祉との接点が一つの大きな問題であるということは,もう共通の認識になりつつあると思いますけれども,出所前に日本の社会福祉の仕組みは具体的にこういうものだという説明を受刑者の人たちがわかるようにしておられますでしょうか。 ● この点いかがでしょうか。 ● 釈放前指導というものがございますので,仮釈放前は大体2週間,満期釈放による出所者は数日になりますが,その機会に社会福祉の制度等につきましても,刑事施設の刑務所の職員が知っている限りでの説明になるかと思いますが,その説明は概して盛り込まれていると承知しております。 ● 釈放前の2週間ということではなくて,もう少し早い段階から外の社会に出てもこうやって暮らせる方法があるんだよということを教える。それはどうでしょうか。 ● 先ほど申し上げませんでしたが,執行開始時の指導というのもございますので,今手元に詳細なデータがございませんが,その指導の中には出所してからの社会福祉の制度等についても概略を説明する時間を盛り込んでいる施設が多いと承知しております。 ● よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。  どうぞ,お願いします。 ● 保護局の方からも資料を頂戴いたしました。様々な障害を持っている受刑者,そのハンディキャップのある人たちをどうするかという問題ですけれども,先ほどお名前も出ましたが,元国会議員で,自ら受刑体験を持っておられる方が新しい本を書かれました。その「累犯障害者」という題の書物を見ますと,やはり刑務所に置くよりも福祉の方に早く移した方がいいのではないかと思われるような事例も幾つかあったと思います。  現在の仮釈放の要件は,「改悛の状」というのと「3分の1」ないし「10年」というので決められているわけですが,後者は動かせないにしても,「改悛の状」というところは,少し弾力的に考えて外へ出した方が,むしろ本人にも社会全体にも有益だと考えられるようなケースは,仮釈放を早める,そして福祉にのせるということは難しいでしょうか。 ● いかがでしょうか。 ● それはまずおっしゃるとおり個々の事案ごとでございますが,3分の1というのはぎりぎりの線ですけれども,どうしても仮釈放の場合,受け皿といいますか,引受人があるところ,どこに出すのかというところがやはり重要な問題になってきますので,問題になっている人たちが受け皿がしっかりしていて,引受人があってということであれば,ある程度柔軟な対応が可能かと思いますが,一番問題なのは,その受ける人たちがいない場合,なかなか柔軟な対応というのは難しいということです。  今,関係官がおっしゃいましたように,元衆議院議員の方が関係した,先ほどこちらからも御説明申し上げました,その厚生労働省との研究というのは,まさに刑務所に入る前に何らかの形での引受人とか,あるいは福祉施設に入っていたというようなところがあれば,今まではそこを取っかかりに調整して--環境調整といいますが--そこに帰住する。そしてそこが帰住先として適当かどうか,引受人として大丈夫かという形で判断していたわけですが,問題になっているのはそういう取っかかりもない,引受人のない人たち,その人たちをどうするかということで,今回検討されているのは,福祉施設の方が事前に関係のないところであっても知的障害者の情報をつかんで,直接刑務所からそういう知的障害者の授産施設とか,そういう施設に帰ることができないか。あるいは更生保護施設を経由するにしても,事前に受け皿が決まっていると円滑にいくのではないか。更生保護施設自体が,次の行き場がないと,なかなかそこにたまってしまうと,更生保護施設が機能しなくなりますので,やはり今まではちゅうちょするところがあった,福祉の方の受け皿が事前にある程度はっきりしていると,より円滑な形での対応ができるのではないかと。そういう方策ができないかということを,総合的に研究しようというところでございます。  お答えになったかどうか,ちょっとわかりませんが,そういうことです。 ● ほかにいかがでしょうか。  どうぞ,お願いします。 ● 前回の質問に大変詳細にお答えいただきまして,ありがとうございました。  追加で1点だけ教えていただきたいんですが,先ほど,生活保護の手続につき,更生保護施設の職員の方がすべて行ったという事例の紹介がありましたが,例えば,満期出所で刑務所を出る受刑者で,更生保護施設に入らないような人については,その刑務所の職員の方がその手続を手伝うとか,あるいは仮釈放中であれば保護観察官が手伝うとか,そういうこともやっておられるんでしょうか。 ● 今の点,いかがでしょうか。 ● 先ほど説明したようなケースでは,刑務所の職員がある程度社会福祉事務所の方と話をしまして,生活保護の手続等の話をつけるといいますか,その手伝いを実際にはするということをしております。 ● それでよろしいですか。  ほかにいかがでしょうか。  ほかに御質問等がございませんようでしたら,本日の議題でございます社会奉仕を義務付ける制度導入の当否について,審議に入らせていただきたいと存じます。  その議論に先立ちまして,前回の部会で御要望のございました過去の法制審議会における議論の状況や諸外国の法制について,事務当局の方で御説明いただけますでしょうか。お願いいたします。 ● まず,過去の法制審議会における議論の状況について御説明申し上げます。資料につきましては,資料7と資料8でございます。  法制審議会刑事法部会におきましては,その下に財産刑検討小委員会を設けまして,財産刑をめぐる基本問題に関して平成2年12月から約2年間にわたり,審議検討を行いました。その際,主刑としての財産刑の在り方や,その徴収手続に関する問題が検討され,その中で短期の自由刑に代わるものとして,あるいは罰金未納者の労役場留置の代替策として,社会奉仕命令制度の導入が検討されましたので,その当時の議論を御紹介させていただきます。  お手元の資料7は,その財産刑小委員会における議論の検討結果について,同小委員会の報告全文を掲載して紹介したジュリストの記事でございます。資料8は,その記事に基づきまして,当時の御議論の状況をまとめたものでございます。そこで,資料8を皆様に御覧いただきながら,説明させていただきたいと存じます。  財産刑小委員会では,まず,社会奉仕命令制度の導入に関する議論の前提として,慶應義塾大学の加藤久雄教授から,イギリスとドイツにおける社会奉仕命令制度の導入の経緯や制度の概要,運用の状況などについて御説明いただいた上で議論が行われました。その議論の中では,社会奉仕命令制度導入のメリットとして,資料8の白丸の方になりますが,①から③に記載してございますように,①として,労役場留置を回避することによって,資力の大小による刑罰執行上の不公平を解消できる,②として,短期自由刑の弊害を回避できる,③として,財産刑の短所である一身専属性の欠如の問題を解決できるなどの点が指摘され,我が国においても社会奉仕命令制度の導入を検討すべきであるとの意見が述べられました。  これを受けまして,その導入を図るべきという立場から,④から⑥に記載してございますように,④として,我が国におけるボランティア活動の実態や施設内処遇の現状にかんがみると,自由刑に代わる制度として導入するのは適当ではなく,労役場留置に代わる制度として導入を検討すべきである,⑤として,労役場留置の処分を受けている者の中には,住居不定者など,社会奉仕命令制度の対象者としてふさわしくない者が多い現状にかんがみ,労役場留置の制度は残し,社会奉仕命令制度との2本立てにすべきであり,この場合,いずれを選択するかは,裁判所の判断とするべきである,⑥として,社会奉仕命令に違反したときは,労役場に収監することも考えるべきであるが,その場合,検察官の請求により裁判所が社会奉仕命令を取り消し,改めて労役場留置を言い渡すこととすべきであるなどの提案がありました。  しかし,これに対し,導入に反対する立場の委員の方々から,資料8の,黒丸の方になりますけれども,①から⑨に記載してございますような意見が述べられました。  すなわち,社会奉仕命令制度の導入それ自体について,我が国の国民の意識や社会状況などになじむかどうかという観点から,①として,我が国は欧米に比べボランティア活動に対する意識が未熟である上,社会奉仕労働を受け入れる体制も貧弱であり,社会奉仕命令を受け入れる社会状況にはないのではない,②として,公衆の面前で社会奉仕活動をすることは,本人にとって施設内処遇より過酷なものとなり得るのではないか,③として,いわゆる逆差別が生じ,現在行われているボランティア活動がやりにくくなるおそれがある,④として,諸外国が社会奉仕命令制度を導入した背景には,刑務所の過剰収容の問題があったということであるが,そのような状況にない我が国において,導入する必要があるのか疑問であるなどの点が指摘されました。  また,社会奉仕命令を労役場留置の代替として導入するとした場合において,その制度としての有用性あるいは実行性等の観点から,次のような消極意見が述べられました。  すなわち,⑤として,社会奉仕命令制度においては対象者の選別が重要であるところ,実際に労役場留置となっている者は,ほとんどが住居不定・無職の者であり,このような者に対して社会奉仕命令が有用であるかは疑問である,⑥として,社会奉仕命令に違反した場合の措置をどうするのか不明確である,⑦として,人員及び予算の確保の問題がある上,果たして施設内処遇より安い経費で運営できるのか疑問である,⑧として,労役場留置となるような者から社会奉仕命令制度を導入していくことは,かえって我が国に同制度を根付かせない結果になるのではないか,⑨として,罰金刑の代替として労役場留置を位置付けた上,さらに労役場留置の代替として社会奉仕命令制度を位置付けるとなると,同制度は代替の代替ということになるが,そのようなことは避けるべきであるなどの点が指摘されました。  このようなことから,財産刑小委員会の議論では,社会奉仕命令制度を導入すべきであるとの結論には至りませんでした。  続きまして,社会奉仕を義務付ける制度に関する外国法制について御説明いたします。  お手元の資料11,「諸外国における社会奉仕を義務付ける制度」という表題の一覧表を御覧いただきたいと存じます。  諸外国における社会奉仕を義務付ける制度やその運用状況などにつきましては,前回の部会において御了承いただきましたとおり,当部会における審議の一環として,他の関連諸制度と併せまして,今後調査を実施する予定です。しかしながら,本日の御議論の参考にしていただくため,事務当局の方で,公刊資料等を参照するなどして可能な範囲で調査を行い,お手元の資料11の表を作成いたしましたので,その内容について御説明させていただきます。ただし,今申し上げましたように,あくまでも暫定的な調査に基づく資料であり,不十分な点や詳細については不明な点などがございますことを御容赦いただければと存じます。  まず,この資料の対象法域ですが,調査において取り上げましたのは,アメリカのニューヨーク州,イギリス,フランス,ドイツでございます。これらいずれの法域におきましても,社会奉仕を義務付ける制度がございます。  そして,この各法域における制度の法的性格・位置付けについて申し上げますと,イギリス,フランスでは,刑罰の一種ないし代替,あるいは,執行猶予に付される条件として位置付けておりますが,ニューヨーク州やドイツでは,いわゆるプロベーションないし保護観察の遵守事項として位置付けているようであり,法域によって様々な在り方がございます。  次に,社会奉仕の作業内容について申し上げますと,いずれの法域も,公共の利益となる労働を義務付ける点で共通しております。具体的に申し上げますと,表には記載していませんが,例えばニューヨーク州においては,落書きの消去,道路・海岸の清掃,公園や歴史保護区の清掃などがあるようでございます。  また,このような社会奉仕作業を命ずるのは,いずれの法域におきましても専ら裁判所のようですが,ニューヨーク州においては,具体的な労働の内容を決めるに当たって,保護観察当局の裁量が大きいようでございます。  さらに,制度の運用に当たりましては,社会奉仕を命ぜられた者を適切に配置・監督することが重要になると思われますが,そのような役割を担う実施機関といたしましては,保護観察所とされているもの,裁判所とされているものなど,法域によって違いがあるようです。もっとも実際の運用につきましては,より地域に密着した別の機関等に委託されていることも考えられ,その実態につきましては,現段階では不明でございます。  最後に,命令に違反した場合の制裁ないし法的効果につきましては,プロベーションや執行猶予の取消しなどにより,本来の刑が宣告ないし執行されることになるようですが,フランスのように,社会奉仕労働義務についての違反が別の犯罪を構成するとしている法域もあるようでございます。  以上でございます。 ● どうもありがとうございました。  次に,やはり前回の部会で御質問のございました少年の保護観察処遇の一環として行われたものについて御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。 ● 保護局でございます。  お手元にお配りしております資料9でございます。まず,保護観察所における社会参加活動実施状況という資料を御覧ください。保護観察処遇で行っております社会奉仕活動,それから清掃活動等の社会参加活動,その活動形態や実施方法におきまして,今回議題となっております社会奉仕命令について御検討いただく上で参考になると思われますので,御紹介を申し上げます。  保護観察処遇におきましては,福祉施設における介護,奉仕活動,公園清掃等の環境美化活動,それから陶芸教室,料理教室等の体験学習,農作業,スポーツ活動,レクリエーション活動等に対象者を参加させ,対象者の社会性をはぐくみ,社会適応能力を向上させることに努めておりまして,これらの活動を社会参加活動と総称しております。  この社会参加活動は,平成6年から実施されております短期保護観察の実施方法の1つとして開始されたものでございます。短期保護観察をちょっと御説明申し上げますと,家庭裁判所で保護観察に付された少年のうち,非行性の進度がそれほど深くないなど,短期間,おおむね6月から7月以内の保護観察を行うことによって,改善更生が期待できる少年を対象といたしまして,家庭裁判所の処遇勧告に基づいて行うものでございます。短期保護観察におきましては,対象となる少年の問題性に応じて,更生のために特に重要な指導領域,例えば生活習慣,学校生活,就労関係,家族関係,友人関係等を選びまして,問題改善を促すための具体的な課題を設定しまして,これを少年に履行させる形で個別指導を行っており,社会参加活動への参加は,少年に対して設定される課題の1つとなっております。  社会参加活動は,少年に多様な体験を積ませることで,対象者の社会性をはぐくみ,社会適応能力を向上させるための処遇方法の1つでありますところ,その有用性から短期保護観察に付された少年に限らず,最近では保護観察に付された少年全般にその対象が広がっているというところでございます。  お配りしました資料9,保護観察所における社会参加活動実施状況の表をごらんください。(1)の一番上の表ですけれども,これは平成13年度から17年度の社会参加活動実施状況の推移を示したものでございます。参加人員,実施回数とも平成15年をピークに漸減傾向にございますが,これは少年対象者数の減少の影響によるものと思われます。  (2)は活動内容の内訳でございます。先ほど申し上げましたように,高齢者等に対する介護・奉仕活動,これが比率といたしましては37.7%ということで最も多く,次いで創作・体験活動,各種講習等への参加,それから清掃,環境美化活動が続いているということです。  (3)は活動事例,ちょっとイメージを持っていただくということで,幾つかの活動場面を写真で示したものでございます。左端から特別養護老人ホームでの介助活動,それから真ん中が海岸での清掃活動,そして一番右端が老人ホームでの車いすの清掃活動でございます。  次に,具体的な活動実際例を御紹介します。資料10で2事例ほど紹介しております。  まず,最初の事例でございますが,これは特別養護老人ホームにおける介助活動の例でございます。この活動には,保護観察対象少年2名,男女1名ずつですけれども参加しておりまして,保護観察官2名が同行した事例です。活動先は,もとBBS会員が事務局長をしているということで,BBS会員から紹介を受けた施設で,おおむね月1回,社会参加活動を実施しているところでございます。この活動では,参加少年が保護観察対象者であることを,幹部である一部の職員以外には知らせておらず,入所者やその他の施設職員にはボランティア団体として紹介しておりまして,参加少年のプライバシーに配慮しております。当日の活動内容はここに示したとおりです。できるだけ入所者と直接接するような活動内容となるよう配慮しておりますほか,車いす体験が含まれているなど,参加少年がお年寄りや心身に障害をある方を大切にして,自分の健康について見つめ直す,あるいは自分の家族について見つめ直す機会となるよう工夫されております。  参加少年の感想は一番下に記載されているとおりでございます。一般的に非行をする少年は,自己イメージが低い,劣等感が強いとか,そういうふうなことが言われておりますけれども,こういう少年にとっては,ここに参加した少年のとおり,介護等の体験を通じまして,自分や他者を大切にすることを知り,特に自分に対して肯定的な感情を抱く,自己有用感,自己肯定感ですか,より健全で建設的な生活を送るきっかけとなることが,期待されるところでございます。  実際例の2は公園の清掃活動の事例でございます。この活動には,保護観察対象少年,そして保護観察官のほか,保護司,更生保護女性会員,BBS会員が数多く参加しております。この活動は保護観察所の指導に基づきまして,地区の保護司会が主導的に企画・実施したものでございます。当日の活動はここに示したとおりです。ここに掲載した参加少年の感想からも認められますとおり,日頃,社会の役に立つ活動経験が乏しい少年にとっては,社会的に意義のある活動をすることを通じまして,自分自身,社会的に有意義な存在,自己有用感というんでしょうか,そういう存在として実感させることができると思われます。また,感想にありますとおり,「昔はごみを捨てる立場だったけれども,清掃をしてみて清掃が大変なことがよくわかる。」と,こういう感想からもわかりますとおり,自分が行った迷惑行為,落書きとか器物の損壊とか,自然破壊等を反省させるなど,公衆道徳感を育てる効果も期待できるのではないかと思われます。  本活動のように,保護司とか更生保護女性会員,BBS会員等の様々な年齢,立場の人が参加することによりまして,参加少年に健全な人間関係のありかたを学ばせることもできると考えております。この活動は任意ということですので,社会参加活動に参加させることが必要と思われる少年への動機付けになかなか困難を伴う場合もございますけれども,今までの実績,これは専ら感想文とかそういうことになるんですけれども,そういう実績を踏まえますと,保護観察所で行っている社会参加活動は,非行をした少年の健全育成,立ち直りに相応の意義があるのではないかと考えているところでございます。  以上です。 ● どうもありがとうございました。  ただいまのそれぞれの御説明につきまして,御質問等がございましたらよろしくお願いいたします。  どうぞ,○○委員お願いします。 ● 1つは,財産刑小委員会の議論に関してですけれども,そこでは積極,消極いずれの議論においても,ボランティア活動の実態とか,あるいはボランティア活動に対する意識ということが,1つの理由として挙げられています。これはどういう意味なのか,もう少しわかりましたら,お教え願いたいと思います。どういうふうにボランティア活動の意識の問題が,社会奉仕命令のところにかかわってくるのかということが,ちょっと私には見えにくかったものですから御質問させていただきます。 ● お答えいたします。事務当局といたしましても,結局,資料7のジュリストの記事を基にして資料8の資料を取りまとめているにすぎず,財産刑小委員会の当時の議論の詳細を必ずしも承知しているところではございません。そこで,あくまでも推測になってしまい恐縮ですけれども,やはり,我が国におけるボランティア活動に対する社会一般の意識がまだまだ低く,ボランティア活動が余り活発ではないという認識からの懸念であったのではなかろうかと思います。 ● その一般のボランティア活動の問題と,社会奉仕命令の問題とがどういうふうにリンクしてくるのかということが,ちょっとすっきりと見えないのですが,しかしこれはそこでそういう議論がされたということなのかもしれませんから,それで結構です。 ● ○○関係官の方から何かコメントがございましたら,お願いします。 ● 私自身,この小委員会に直接加わっていたわけではありませんけれども,その当時の議論を少し思い出しますと,例えばボランティア活動というと,老人ホームに行ってお世話をする,庭の掃除をしたりするというようなことが,よく例に挙げられていました。ただ,それは対象者のボランティア活動に当たるわけですが,そのほか,対象者の奉仕活動を指導し監督する仕事があり,むしろ,そちらの方の可能性が問題とされていたと思います。そういうボランティア活動がもっとうんと広がっている社会ならば,自然と受け入れられるだろうけれども,どうも日本ではまだ不自然な感じではなかろうかという疑問です。 ● どうもありがとうございました。その点に関しては,刑罰との関係や,欧米のように宗教の背景があって,それに基づいて社会奉仕というのが意味付けられており,それとはかなり違う理解かなという感じがしますが。そういうことでよろしいですか。 ● とりあえず,結構です。 ● この点については後で議論することになっておりますので,その際に改めて御意見を承りたいと存じます。  ○○委員,どうぞ。 ● 今,○○関係官がおっしゃたことと同じ感想を持っておりまして,今,川端部会長からも御発言があったと思うのですが,また,後で話が出てくるとも思いますが,ボランティア活動が日常生活に根づいている,例えばイギリスやアメリカですと,普段やっていることなのですね。例えば恵まれない人に寄附をするとか,教会活動の一環としてそのようなことする,非常に多くの国民が自発的にやっているものですから,そうすると刑罰の一種といいますか,その位置付けは後で議論があるかと思いますが,刑罰の執行に関連して,そのような活動を踏まえたプログラムが作れないかという発想が出てくるのも,自然なことではないか,との感覚を持っております。 ● どうもありがとうございました。  この点については,また後日十分に議論をさせていただくことになると思いますので,よろしくお願いいたします。ほかにいかがでしょうか。 ● まず,社会参加活動の実施について,その法規上の根拠は何なのかということが1つです。  次に,実際にそういう実施をするためのマニュアル,あるいは,要綱を持っておられるのかどうかということが2番目です。  それから,第3に,それと関連するんですけれども,どのように対象者を選択しているのか。先ほど必要という言葉を使われたんですけれども,どういう人を必要と考えてやっておられるのかということ。  第4に,受け入れる施設側の了承はどういう形でとらえているのか。しかも,その際にここではプライバシーを守ると書いてありますが,少年の身分というのは明らかにしているのかどうか。  さらに,本人の同意というのはどういう形でとらえているのかどうかということ。  最後に,違反者の取り扱いというのはどういう形でなされているのか。これらの点について,お聞きしたいと思います。 ● 御質問が多岐にわたっていますが,逐一お願いいたします。 ● 当初は短期保護観察の指導領域の中の課題の1つということで,指導監督の中身,こういう社会参加活動が,本人の社会適応を高めるということが,本人の改善更生に資するんだろうというような形で行われていたということですが,活動領域が非常に広くなって,体験学習とか講習だとか,特に陶芸教室とかそういう形にまで広がってくると,むしろ指導監督面よりも,補導援護面というようなところの性質も合わせ兼ね備えるというような形になってきているのではないかと思います。そういう形での項目でございまして,社会参加活動自体に対する,それを対象とした要綱,要領という統一的なものはございません。  それから必要性というのは,短期保護観察になった少年全部ということではなくて,疎外感とか,自己否定的なイメージが強い少年,それから閉じこもりがちであるような少年,あるいは余暇の活用にしてもゲーセンとかあるいはコンビニ周辺にたむろしているとか,対人関係が苦手だとかいう少年,家庭裁判所の調査の過程で,こういう少年についてはそういう社会的な奉仕活動とか体験活動をした方が少年の改善更生上有意義ではないか,社会適応を促進するために有効ではないかと思われる少年について,その他の課題というところで,家庭裁判所の方からいわゆる課題として,各保護観察所が持っている社会参加活動のそういう派遣先,活動先で社会参加活動をさせてもらったらどうかという意見をつけてくる。それを保護観察所も家庭裁判所の意見を反映,参考にしまして,対象者を選ぶという形でやっております。  あと施設側の問題ということでございますけれども,通常は今申し上げましたようなこの社会参加活動,少年に対する社会適応能力を促進するという観点で,その必要性を施設側の責任者等々にいろいろ御理解を求めるという形で説明いたしまして,したがって,施設全職員ということではなくて,施設の責任者あるいは少数の施設の担当者の方が趣旨を理解して,じゃあ協力しようというような形で,それから,活動時間はどうするのかとか,何人ぐらいどういう頻度で受け入れて,施設側としてはどういう形で協力したらいいのかとか,そういうところについて十分な根回しをすることになります。  活動先の選定等につきましても,開始当初は社会福祉協議会あるいはボランティアセンター等に趣旨を説明して紹介していただいて,そこで保護観察官が実際に自分も体験活動して,こういうことであれば趣旨は少年等に説明できるなというようなところで,活動先を具体的に開拓していった。あるいは,5万人の保護司の方々がいらっしゃいますし,その保護司の方々自身が,福祉施設を経営している方もいらっしゃれば,民生児童委員とかあるいは自治会の活動とか,御自分の居住地域においてそういう社会参加活動にふさわしい施設とか,活動先とかを十分御存じな方がいらっしゃる,あるいはBBS,先ほどはBBSの会員の方が事務局長をしている施設の例を申し上げましたけれども,保護司の方自身が非常に多方面にわたる人脈とか,そういうのを持っておられる。その保護司の方々に制度発足当初,こういう趣旨でこういう活動で,少年たちの社会適応を促進するために活動先をいろいろ探しているとして協力を求め,そういう形で情報提供いただいて,さっき申し上げましたような観察官が実際体験してみるなり,趣旨を施設の方に説明するなどして開拓していったというようなことでございます。  それから,本人の同意ということですけれども,少年の場合ですので,本人にも,例えば,「君の場合,こういうことをした方が将来いいんじゃないか」とか,それから観察官自身が体験しているということであれば,「こういう形でプラス面もあるし,幅広い経験もできるんじゃないか」とか,あるいは「今まで経験した子は,最初はみんな敬遠して嫌がるんだけれども,行ってみれば,またそういう機会があれば参加したいと言っているよ」というような事例とか,感想文だとか,あるいはビデオとか写真とか,そういうのを示して参加を呼びかける。先ほど示しました参加者には対象者のほか保護者もいますので,保護者の方も例えば福祉関係のところであれば限定されますけれども,みんなで公園の掃除に行くとか,あるいはごみの収集とか海岸の清掃とかは本人だけでなくて,家族の方も参加されてはいかがだろうかとか,あるいは担当の保護司の方も一緒にとか,そういう形での働きかけをするというようなことでございます。  ですから,違反者に対する扱いということですけれども,任意の参加ということで,例えば,奉仕活動の性質上,ボランティアの本質論にもかかわるのかもしれませんが,やはりその人がある程度進んだ形で同意した上で,納得した形で行かないと,嫌々ながらということになると,相手もあることですし,本人のためにもならない,あるいは施設にも迷惑をかける。活動自体が非常に不本意なものになるということで,少なくとも,そういう形でどうしても嫌がる,拒否する人に対しては義務付けるということではなくて,やはり当初から本人の納得ずくか動機付けして,「こういう形でやってみるといろいろな経験もできる」という勧め方をしている。納得を得て参加を求める。それから,実際には,「わかりました,参加します」ということでも,当日になって無断で休む人とか,あるいは理由をつけて休む人も現実にいるわけですけれども,無断で欠席して休んだと,あるいはそれは約束違反だということで叱責したり,注意指導はしますけれども,それによって特別のペナルティーを課すというようなところまではしておりません。  御質問いただいたことを全部お答えしたのかどうかちょっとわかりませんが,大体そういうところです。 ● 法律上の根拠は何ですか。 ● 指導監督,保護観察の中身ということで,社会適応を促進するための働きかけということです。そういうところでよろしいでしょうか。 ● ○○委員,それでよろしいでしょうか。 ● はい。 ● どうもありがとうございました。○○関係官,どうぞ。 ● 先ほど○○幹事から,平成の初めに行われた部会の審議,それらに関連する委員会の検討結果についてお話がありましたわけですが,あの部会はもともと罰金刑の金額の引き上げを主たる任務として発足した部会でありましたので,社会奉仕命令に関する議論も,財産刑をめぐる基本問題の一環ということで取り上げたわけです。しかし,今回のこの部会は全く違った状況のもとで発足しているわけで,いわゆる過剰拘禁の状況,これに対して何らかの対応策があるかというのが,目下我々が検討している事項です。  その点に関連して,私は○○委員にお尋ねしたいことがあるのですが,前回までに頂戴した資料を見ましても,施設が過剰の状態にあるということは,これは否定できないと思います。その主たる原因は何かといえば,もちろん犯罪が増えたからであって,そのために現在の状況を生じているわけですが,しかし,犯罪者は直ちに刑務所に入るのではなくて,その間に刑事裁判という重要なプロセスがあり,手続の中心的な座を占めているのは裁判所です。そうしますと,裁判所としても過剰拘禁の状態の解消に,何らか力を貸すというお気持ちは働かないでしょうか。  具体的に言いますと一つは執行猶予の問題です。資料によれば,執行猶予のパーセンテージは毎年余り動いていないようで,ほぼ60%あたりを保っているわけですが,なにぶん自由刑を言い渡される被告人の数が増えているために,絶対数としては実刑の受刑者が段々増えているということだろうと思います。  そこで,その解決の一つの方法ですが,もちろん,実刑に処すべき情状の者は実刑にしなければなりません。しかし,実刑か執行猶予か,裁判官自身が迷われるといいますか,どちらにしようかと考えられるような事案もあると思います。それについては当分の間,執行猶予にするという御判断はできないだろうか。今ここでそれを持ち出しましたのは,その際社会奉仕命令をある程度組み合わせて,執行猶予にするが,しかしこれこれの社会奉仕活動をせよというようなことはどうだろうかと思います。先ほど御紹介の中にも,プロベーションの一環としてという制度をとっている国もあるようですが,この執行猶予との組み合わせというのが一つ考えられるのではないかと。  それからもう一つは,宣告刑の刑期が段々延びてきているということで,これは頂いた資料によれば,過去10年間に20%ぐらい伸びているようであります。これもまた,重かるべきは重くという原則は守らなければなりませんので,厳しい長期の刑をどうしても科さなくてはならないという被告人に対しては,それが当然でありますけれども,しかしそこまで至らない,いわば中間的な段階の犯罪あるいは犯罪者であって,そういう場合に,従来の基準ならこれは懲役5年だけれども,4年にしよう。3年のはずだが2年6月にしようというふうな判断ができないだろうか。ここでも,それをある程度社会奉仕活動などと結びつけることによって,刑期を若干軽減するけれども,これこれの奉仕活動をしなさいというようなことも考えられるのではなかろうかというような気がするんですが,いかがでございましょうか。 ● 裁判所の立場として言いにくい面もあるかとは思いますが--。 ● 大変難しい御質問ですが,一刑事裁判官として感じているところを申し上げますと,量刑として執行猶予をつけるかどうか,あるいは実刑にする場合に刑期をどうするかというのは,結局は事案ごとの判断であり,一般的なことは言いにくいということをまず御理解いただければと思います。  その上で今,○○関係官からも御指摘がございましたように,執行猶予の比率は横ばいか,むしろ若干増えているかもしれないと思われます。  裁判官の意識といたしましては,その事案の内容が,それほど重大でないもので,本人が初犯かあるいはそれに近く,社会内での改善更生が望めるという場合には,むしろ執行猶予で何とかならないかということを,常に考えてきただろうと思います。ですから,量刑判断については,それこそ過剰収容であること自体を考慮して執行猶予を更に多くするというのはなかなか難しいところではないかと思います。  ただ,もちろんここで議論される,例えば社会奉仕命令というものができて,それによって社会内での改善更生に向けての効果が期待できるのであれば,量刑における選択肢が広がることになりますので,それが執行猶予の判断に影響することは,あり得るところだろうと考えております。  あるいは,刑期の問題もやはり同様のところがございまして,結局刑期の問題は,その事案の中身がどうかという一般論のほかに,もう一つはそれぞれの恐らく罪種によっての違いというのもあるのだろうと思います。典型的に言えば,薬物事犯についての刑期が次第に延びていますし,昨今,交通事犯についても非常に量刑が厳しくなってきています。また,性犯罪についても同様の傾向があろうかと思いますが,その理由はそれぞれ異なると思われます。  例えば薬物事犯の犯罪状況に対する対応として何が必要かということについての社会的議論が当然ございますし,交通事犯の場合は,単なる過失と言っていいのか,そうではない事例があるのではないかということについての最近の社会的な議論が当然背景にある。それを踏まえて,いろいろな考慮をして各裁判官は量刑しているというところがあろうかと思います。  ですから,そのようなことと別に,一般論として過剰収容であるために刑期を短くするということができるかというと,なかなかそれは難しいところはあろうかと思います。ただ他方で,社会奉仕命令と刑期との関係ということであれば,最初に刑を決める段階で執行猶予にできるかということよりも,むしろ仮釈放につなげる時に社会奉仕活動をさせる形をとって,これが改善の効果につなげられるかというところとも絡むんだろうと思います。仮釈放の段階で社会奉仕活動が選択肢としてあれば,何らかの形で実際の執行される刑の長さに影響するということはあり得なくはないだろうと思います。  ただ,そうは言っても,実刑との関係で言いますと,それとともに刑の目的論との関係がやはりあろうかと思います。要するに目的刑,改善更生のための特別予防という観点以外に,一般予防なりあるいは応報というものを刑の目的としてどう考えるか。そこのところとの兼ね合いで言いますと,社会奉仕命令が持つ効果というものが,その刑にかわり得るものかどうかということも,恐らく国民社会は見るだろうと思いますので,これも含めて考える必要があろうかと思います。 ● まことに申し訳ありませんが,すでに内容の問題に入っているようでございますので,それ位にしていただきたいと思います。  ○○委員から資料の御提供があるということでございますので,簡単に御説明をお願いいたします。 ● 日弁連の封筒の方に入っております資料を,今日お持ちしております。まず社会奉仕命令を検討するに当たってということで,今日の社会奉仕を検討するに当たっても,今日これに付随して添付してあります資料の中の1990年の社会内処遇措置のための国際連合最低基準規則,東京ルールズと呼ばれているものがあるので,それについて私どもとすれば,せっかくここで社会内処遇の問題を議論するのであれば,一つの国際基準でもありますので,こういった観点からも議論をいただいて,この中に書かれていますように,拘禁刑というのは最後の手段だということを認識した上で,今回の立法なり,新しい方策を考えていくべきではないかと。  このような視点でまとめたものが今日の議論との関係では,ここにあります1ページには基本的にそういった趣旨が書いてございまして,社会奉仕命令との関係では,犯罪者のいわゆる対象者の同意を得るか,得ないか,作業の内容とか作業の場はどうあるべきか。対象者の尊厳や対象者及び家族のプライバシーの権利の方がどうあるべきか。その場合の監視・監督の手段・目的はどうなのか。さらには,先ほど来も少し議論がありましたが,監督・指導の担い手としてのボランティアの問題とか,それから社会奉仕命令に違反をした場合について,どういうふうにすべきかということとか,こういった問題に関する公衆の理解,あるいは公衆の参加といったもの,そういったものも必要だということをちょっと抜き書きをしてまとめてあります。これはほとんど国際連合人権高等弁務官事務所のヒラノさんという方が作って出されている「裁判官・検察官・弁護士のための国連人権マニュアル」というものを引用した形でまとめたものであります。  これとの関連で,今日のお手元にある資料として,別紙1から別紙4-2までございます。別紙1と別紙1-2は,今申し上げました東京ルールズの原文と,それから日弁連で作りました仮訳でございます。さらに別紙2と別紙2-2ですか,これは欧州評議会閣僚委員会の欧州規則と同じような社会内制裁及び措置に関する欧州規則というものの原文と,本件で関連する社会内処遇との関係での第2章の抄訳です。それから別紙3は,この別紙2に関連した用語の解説の英文と,別紙3-2はその仮訳です。さらにはこの別紙2の注釈書として別紙4の原文と別紙4-2を添付してあります。これからの議論においては,多分今日だけではなく,この東京ルールズがある意味で議論をする上での参考になるのではないかということでお持ちした次第です。 ● どうもありがとうございました。貴重な資料の御提供をいただきまして感謝申し上げます。これからこの議論において,非常に参考になると思いますので,御参照ください。  それでは,これから本日の議題であります「社会奉仕を義務付ける制度の導入の当否」に関する議論に入っていきたいと存じます。  本日,事務当局から,この議題に関する当面の主な検討事項を記載したペーパーの提出をいただいております。これは配布資料12でございます。このペーパーについて簡単に御説明いただいた上で,これらの論点を中心に一わたりの議論をしたいと考えておりますが,このような進行でよろしいでしょうか。  御異議がございませんので,このペーパーに沿った形で議論を進めていくことにいたしたいと存じます。  それでは,まずペーパーについて,事務当局から御説明をお願いいたします。 ● 資料12でございますが,「社会奉仕を義務付ける制度の導入の当否に関する当面の主な検討事項」ということでございまして,本日,特に皆様の議論の参考となりますように,社会奉仕を義務付ける制度の当否を検討するに際して当面検討すべきと考えられる事項を整理したものでございます。もとより,検討すべき事項をこれらに限定するという趣旨のものではございませんが,制度導入の当否を検討するに当たってまず問題となるような,大きな論点としてこのようなところがあるのではないか,そのような論点から御議論いただくのが効率的ではないか,ということでまとめさせていただいたものであります。  まず,項目1の「考えられる制度の法的性格と目的」ということでございますが,導入が考えられる制度の在り方を検討するに当たりましては,その制度の法的性格,どのような制度として位置付けるのかということや,それと密接に関連するのではないかと思われますけれども,その制度の導入によって実現しようとする目的について検討する必要があると思われます。  制度の法的性格といたしましては,諸外国の例などを見ますと,例えば,短期の自由刑に代わる刑罰と位置付けるもの,執行猶予の条件と位置付けるもの,罰金刑の代替執行手段と位置付けるもの,保護観察の条件ないし遵守事項と位置付けるものなど,様々な位置付けがあるようでございます。もちろん,そのほかにもいろいろな位置付けが考えられると思います。  それから,制度の目的についてでありますが,これも諸外国における議論などを参考にいたしますと,例えば,過剰収容の緩和を目的とするもの,対象者の余暇時間を剥奪して奉仕活動に従事させることによる刑罰を目的と考えるもの,やや抽象的な意味合いになるのかもしれませんが,犯罪によって大きな意味での被害を被った社会への償いを目的と考えるもの,さらには社会的な責任感を涵養することなどによって社会復帰を図ることを目的と考えるものなど,目的のとらえ方につきましても様々なものがあるようであります。  今申し上げたものも,諸外国の議論の中で言及されているものの一例ということでございまして,いろいろお考えいただく中で,そのほかにもこのような目的が考えられるというところはあるのだろうと思います。  もとより,制度の目的というものは単一ではなく,複数の目的が並存するということも十分考えられるところだと思いますが,その中でも,どの目的に重きを置くかということは,制度の法的性格をどう位置付けるのかということと相まって,制度の具体的在り方に関わってくるものと考えらます。  以上,申し上げましたようなことから,考えられる制度の法的性格と併せて,制度の目指す目的についても,十分に御議論いただく必要があるものと考えた次第でございます。  次に,項目2の「考えられる制度の基本的内容」について御説明いたします。制度をどのように組み立てていくのかという,大きな骨格といったところの検討事項という趣旨でありますけれども,制度の基本的内容は,もちろん制度の法的性格や目的という,項目1の検討事項と密接に関連するところであり,それによって制度の基本的内容も大きく変わるのであろうと思われますので,項目1についての御議論を踏まえつつ,制度の基本的内容としてどのようなものが考えられるのかということを御議論願いたいと考えております。  この項目2の検討事項につきましては,更に細かい事項としていろいろな点を考えなければいけないわけでありますが,例えば,社会奉仕を義務付ける命令をだれが発するのか。制度の対象とする犯罪や,制度の対象者とする行為者をどのようなものとするのか。さらには,社会奉仕の作業内容として,どのようなものを想定するのか。そして,その実施面ということになるかと思いますけれども,そのように想定される社会奉仕の作業をどのようにして確保していくのか。また,対象者に対して社会奉仕の作業を割り当て,その作業が実際にきちんと履行されていることを監督する役割だれが担っていくのか。さらには,先ほども少し議論になりましたが,命じられた作業を怠ったなどの義務違反があった場合にどのような法的効果を考えるのか,あるいは法的効果はなくともいいのかということなど,様々なより細かい検討事項が出てくると考えております。  先ほども申し上げましたが,制度の法的性格や目的いかんによって,制度の基本的内容は相当変わってくると思いますので,そこが決まらないと項目2についての具体的な議論がなかなか難しいという面もあるかもしれませんが,可能な範囲で,この段階でも御議論いただければと考えているところでございます。  それから,項目3が「制度導入のメリットとデメリット」ということでございます。この点も,導入が考えられる制度の法的性格や目的,基本的内容によってもちろん変わってくると思われますけれども,考えられる制度の法的性格,基本的内容等に即しまして,その導入によって,どのようなメリットがあり,デメリットがあるかということを検討する必要があるのであろうと考えるところであります。その点は,財産刑小委員会での議論の中でも,いろいろなメリット・デメリットというものが議論されていたようでございますが,そのあたりも参考にしつつ御議論をいただければと考えているところであります。  以上でございます。 ● どうもありがとうございました。  ただいま御説明を受けたわけですが,この点に関して御質問ございますでしょうか。御質問がありましたらお願いいたします。 ● 今御説明いただきましたけれども,これは恐らく2番,3番の議論をする場合については,1番目の議論がどこに焦点を当てた形の社会奉仕命令なり,社会奉仕を義務付ける制度を考えるかによって多分違ってくると思うんですが,それを並列的にやると非常に議論が混乱すると思いますので,第1番目の議論である程度この方向というか,そういうものは,今日は第1巡目ですからそこまでいかないのかもしれませんけれども,その辺の交通整理のやり方を考えてやっていただきたいなと思っております。 ● 今私どもでも申し上げましたとおり,御指摘のように,制度の法的性格であるとか目的によって項目2と項目3の内容が大分変わってくるというのはそのとおりだと思います。ただ,この段階で,項目1の法的性格あるいは目的を1つに絞るというのは無理だと思いますので,項目1の議論の中である程度いろいろな考え方を出していただいて,それぞれの考え方ごとに,今おっしゃるとおりに交通整理をした上,項目2,項目3についてどう考えるかという議論の仕方がよろしいのかもしれないとは思います。 ● ○○委員,今のような手順でよろしいですか。 ● 結構です。 ● まず第1段階で理念論を議論し,それから具体的内容,個別的内容を検討して,最後に制度導入のメリットとデメリットを検討するという順序で進行させていただきたいと存じますが,よろしいでしょうか。  それでは,その順序で御議論をしていただきたいと存じます。まず項目の第1ですが,考えられる制度の法的性格と目的についてということでございます。先ほど若干議論に入っていたため,途中で遮った関係もございますので,○○委員,何かございましたらお願いいたします。 ● いえ,結構です。 ● これは大きな問題であり,今回の諮問の根本にかかわる点でございますので,じっくり御議論をしていただいて,それを基礎にして2の具体的内容を検討していきたいと存じます。どうぞ,自由に御発言をお願いいたします。 ● 先ほどの○○委員のお話に反論する趣旨ではありませんけれども,ただ1点,過剰拘禁ということを意識して裁判官が刑を動かすということは,およそあり得ないという御趣旨の部分があったと思いますけれども,それは確かに裁判所は,目の前に置かれた個々の事案に対して最も適切と考えられる刑を言い渡すために全力を尽くしておられるので,そういう御意見になるのが自然だと思います。  しかし,この過剰拘禁という問題は,個々のケースではなくて全体状況から生じている話であす。そのことを視野に入れますと,せっかく刑務所に送っても,過剰な状態であるがゆえに十分な処遇ができないと。そのまま社会に返してしまうので,それがさらに再犯を招くような結果にもなっているということであれば,一種の悪循環が働いているということになりますが,そのあたりについて裁判所の方で認識を深められれば,長期の刑を言い渡して過剰拘禁を一層激しくするよりも,逆の方法をとった方が全体としては適切ではないかというようなお考えになり得るのではないかという気もいたしますが,いかがでしょうか。 ● ○○委員,お願いします。 ● 先ほどは少し舌足らずだったと思いますが,当然御指摘のような考慮というのはあると思います。私が先ほど申し上げましたのは,結局,今刑期が,平均としてとったときに延びているのは,それぞれの事件の内容,あるいは被告人のうち累犯者がどのくらい増えているか,という事案の内容とともにもう一つ,それぞれの罪種において,その犯罪に対する社会的非難の度合いが変わってきていることが背景としてあり,裁判所は,これらも考えながら量刑判断をしているので,単に過剰拘禁があるからということだけで,一般論として刑期を短くすることは難しいのではないかということでございまして,いろいろな要素の一つとして考えていくということは十分あり得るというところだろうと思います。 ● ○○関係官の御発言の御趣旨を十分踏まえているかどうかわかりませんけれども,少なくとも,今の過剰拘禁の状態と今の法制度を前提にしたまま,単に,過剰拘禁解消のために,刑期を減らせないか,あるいは執行猶予にできないかという議論というのは,少なくとも,この部会の趣旨からするとやや外れているかなという感じを率直なところ持ちました。最初に諮問に至る経緯・趣旨のところで申し上げましたとおり,刑罰の目的といったものをよりよく,あるいは今と同程度に実現しつつ,過剰拘禁を解消できる方策を新たにお考えいただくということでございますので,むしろこの部会で御検討いただくことは,過剰拘禁を解消できる方向に働く方策としてどういうものがあって,そのような新たな選択肢の中で,刑罰の目的といった点からいっても問題ない,あるいはよりよいものというものを考えていただくということだろうと思っています。制度が導入された場合には,それを裁判官に一つの前提としていただいた上で,制度導入後の量刑に当たっていただき,その結果,刑罰の目的はよく達成できているし過剰拘禁の解消にも役立つという,ちょっと虫のいい話かもしれませんけれども,そういう状態となることができるような方策を御議論していただくということが諮問の趣旨に沿うのではないかと思います。ちょっとせんえつではございますが,そういう感想でございます。 ● 諮問事項としては,被収容人員の適正化を図るとともに,再犯者の再犯防止及び社会復帰を促進するという観点から,社会奉仕を義務付ける制度の導入の当否を検討していただきたいということでございますので,その観点からの刑罰の目的ともかなり関連すると思います。このような観点からの御議論がございましたら,お願いいたします。  ○○委員,お願いします。 ● 議論の取っかかりを作るという趣旨で申し上げたいと思いますが,社会奉仕を義務づける制度の法的な性格という観点からは,大きくは2つに分けられると思います。1つの類型は,社会奉仕活動を,それ自体独立した刑罰と位置付けるもので,それは,先ほどの説明の中にありました,短期自由刑の代替刑としての社会奉仕命令というものもあれば,罰金刑の代替としてのものもあるでしょうし,さらに言いますと,既存の刑罰の代替ではなくて,例えば最近の刑法の改正で,窃盗に罰金をつけたような話で,本来起訴猶予になっていたような事案について,社会奉仕命令という刑罰をつくることによって,それを取り込むという形の刑罰として位置付けるということも考えられるだろうと思います。  もう1つは,独立した刑罰として位置づけるのではなくて,社会奉仕を何か別の処分等の条件にするという類型です。先ほどのご説明の中では,執行猶予の条件にする,あるいは,保護観察の条件にするというものがありましたが,それ以外にも,わが国でそういう制度ができるかどうかは別として,例えば起訴猶予の条件として社会奉仕活動を位置付ける制度もあり得るだろうと思います。  このうち,執行猶予の条件にするという場合ですが,その場合も,2つのタイプがあるだろうと思います。1つは,執行猶予判決に伴う付加的な条件として社会奉仕活動をさせるというタイプ,もう1つは,そうではなく,執行猶予をつけるかどうかを判断するために,その前の段階で社会奉仕活動をさせるというものです。この関係で,○○委員にお伺いしたいんですが,平成10年前後だったと思いますが,執行猶予中に再犯を犯した被告人について,裁判所が公判期日を延期したうえで,ボランティア活動をすることを勧め,それに応じた被告人がボランティア活動をしたことを理由に,再度の執行猶予を認めた事案があったと思います。そういう事例が,いくつかあって,ただ,結果的には,高裁でいずれも量刑不当で破棄されたということを記憶しているんですが,これも,社会奉仕を制度として組み込む1つの方法だったと思います。あの当時,一般的にそのような動きが裁判所の中にあったのでしょうか,それとも,非常に特異な例であったのでしょうか。その点について何かご存じであれば,教えていただきたいんですが。 ● ○○委員,今の点については,いかがでしょうか。 ● 被害弁償や示談についての期間を与えてしばらく判決を待ち,その結果を量刑上考慮するというのはしばしばあるところだと思いますが,裁判所が社会奉仕活動をするようにと言ったという例は,申し訳ありませんが,今明確な記憶がございません。少なくとも,一般的に行われていることではないと思います。 ● 刑罰との関連で,刑罰それ自体としてとらえるのか,それとも執行猶予,保護観察等の条件として社会奉仕命令を考えるのかという2つの性格付けがあるという御指摘ですが,この点について何か御意見はございませんでしょうか。  では○○委員,お願いします。 ● 今,○○委員の方から話がありましたように,私も今,○○委員がおっしゃったような分類の仕方があるのかなと思っておりまして,それを発言しようと思いました。  1つは,先ほど○○関係官からお話がありましたけれども,例えば起訴猶予の段階でこれができるかどうかは別ですが,社会奉仕命令を入れるということになると,裁判をする事件を減らすということで,実質的に収容する者を減らすという道があるだろうし,保護観察の場合に関していえば,本来実刑になっていた者が保護観察を条件にすることによって執行猶予が得られるという形になれば,やはり収容は減るだろうと。そこは裁判官の言い渡しの問題になるだろうし,さらには仮釈放の関係で申し上げると,仮釈放の段階で今まで保護観察が許されなかったもの,あるいはもうちょっと早めに保護観察の期間,仮釈放を出すといった場合ということができれば,社会奉仕命令をつけることによって,保護の分野でもってさらに出るものを早めることによって過剰収容を解消できると。こういった面があるので,ある意味で裁判官だけが悩むのではなくて,それぞれのところでみんなが悩んでこれを考えていかなければならないのではないかなと思います。 ● どうもありがとうございました。○○幹事,お願いします。 ● 先ほど○○委員が言われたこととの関係で,日本の今の制度には直接ないんだと思いますけれども,事前に社会奉仕命令を命じてというのは,刑の宣告猶予みたいな形だと思うんです。一応その量刑と有罪・無罪と量刑が分かれた形になれば,一応有罪を前提として,その後一定の社会奉仕命令を科す。その後に刑を宣告するということになれば,場合によっては,その実刑になるものが実刑にならないというような形も,法制度全体を見直すのであればあり得る話かなと思いました。 ● ○○委員,お願いします。 ● 少し皆様の御意見と違う観点かもしれませんが,その社会奉仕を義務付ける制度ということで,幾つか資料もいただいておりまして,今議論を開始しているところですが,例えば諸外国の例を見ますと,それが社会奉仕を義務付ける制度というかはともかくとして,対象者の同意を不要とする国と必要とする国がございます。同意をもって執行するということが,刑の代替手段としてということであれば,可能かもしれないのですが,広い意味で刑罰目的ということを踏まえて,多様な刑種の選択としてここで議論するのでしたら,どのようなものであれば同意ベースでなければできないのか。あるいは,相手方が同意していなくても命令を科して良いのは,従来の刑罰目的からしてどのような場合であるかと。まずはそのあたりから考えまして,その後に,不同意でもやっていい場合,義務付ける制度の趣旨を考えていく方が,現実的な議論のやり方かと思いまして,発言させていただきました。 ● どうもありがとうございました。  対象者の同意が刑罰の本質論にどう絡むのかということがポイントになるという御指摘でしょうか。 ● ただ,それを例えば宣告猶予でありますとか,あるいは執行猶予の過程でということを考えますと,刑罰より広い,刑事制裁の周辺的な部分まで踏まえなければいけませんので,どこまで議論を広げるかということにも関連するかと思います。 ● 先ほど○○委員から対象者の同意の問題について御質問がありましたが,○○委員,今の○○委員の御発言と関連しますか。 ● 今,関連ではありません。 ● そうですか,わかりました。根本問題についての性格付けが議論されていますが,これは最終段階で結論を出さなければならない問題ですけれども,今第1巡目の議論でございますので,できるだけフリートーキングの形で,理念論や根本にかかわる問題点の御指摘をお願いいたします。  どうぞ,○○委員,お願いします。 ● 今,○○委員が最初に言われたこと,あるいは○○委員が言われたことにやや関連してくるかもしれませんけれども,刑罰そのものとしてとらえるのか,それとも例えば執行猶予の要件--一番考えやすいような気がしますけれども--と考えるのかといったときに,それが履行されなかったときにどうなるかということで考えていくと,執行猶予の要件だということだと執行猶予が取り消されるという形でつながっていくということなのだろうと思います。  では,刑罰そのものとしてやるとどうなるのかというと,刑罰なのだから,そのものを無理やりやらせる,強制してやらせるということにつながっていくことになりそうな気がします。そのあたりがまた同意が要るかどうかというような問題ともつながってくるということかと思いました。 ● どうもありがとうございました。では,○○委員,お願いします。 ● 今の点に関連してですけれども,刑罰として科した場合に,それが履行されない場合にどうするのかというのは大きな問題で,我が国では刑罰の事後変更を認めていないので,罰金に対する労役場留置のような形で規定するというのも一つ考えられるところかとは思いますが,執行猶予や保護観察の条件にした方が,我が国の法制度にはすんなりと収まるのかなという気はいたします。その場合にもさらに--話が細かくなって恐縮ですけれども--2つ性格付けはあり得るのかなという気がしています。1つには,一定の負担を社会奉仕という形で履行することによって責任を解消する。その結果実刑を免れることができるというような形で,一種刑罰的な性格を持たせるということも考えられると思いますし,もう1つには,社会復帰の観点からのみ社会奉仕というものを考えるということもあり得ると思います。後者の方が現在の保護観察の条件とはマッチしているのだろうとは思いますけれども,2つあり得ると思います。  それから名前につきましても,社会奉仕命令というと,何となく先ほどお話にありましたボランティアというところにもつながりますし,社会復帰のための措置というようなイメージがあるんですけれども,刑罰として正面から位置付けて社会労働命令というような名前に変わると随分イメージも変わります。社会奉仕という言葉が唯一のものではないのかなという気がいたします。 ● どうもありがとうございました。○○委員から,刑罰としてとらえた場合に,社会奉仕命令に従えば,ある意味で責任の減少とか贖罪とかの部分が認められるという側面が出てくるのではないかという点と,社会復帰の観点からすれば,むしろほかの執行猶予や保護観察の条件にした方が,現行法の制度になじむのではないかという点の御指摘がございました。  それから,これも重要な問題と思いますが,名称をどうするかという点についても御指摘いただきました。やはり名は体をあらわすということがございますので,名称の如何によって国民がそれを受け入れるかどうかという場面で,重要な意味を持ち得ると思います。これらの点もまた改めて御議論いただければと存じます。  ほかにどうでしょうか。○○委員,お願いします。 ● 初回の議論ですので,幅広くいろいろな考え方があった方がいいのかと思いますので申し上げますと,社会奉仕を例えば執行猶予でも何でも,何かの要件にするというような場合にも,多分考え方としては2通りあって,執行猶予の条件として付けて,やらなかったら執行猶予を取り消すというようないき方と,それから例えばさきほど刑の宣告猶予というような言い方がされましたし,あるいは○○委員の最初の発言の中の,執行猶予にするかどうかの段階で社会奉仕活動をやらせてみるというのはいいのかというお尋ねにも問題意識としてあらわれていたのだと思いますけれども,例えば刑の宣告を猶予しておいて,一定の条件が履行されることを条件にして,その後--刑の宣告を猶予したら,その後始末はどうしたらいいかですが,最終的に刑を言い渡さないこととするというような,そういういき方,つまり先履行を求めるようなやり方,両者が多分あるのかなと思いました。 ● どうもありがとうございました。要件にした場合のあり方ですね。そういう問題も出てくると思います。  ほかにいかがでしょうか。○○委員,お願いします。 ● 刑罰の本質論をめぐって先ほどから議論されていますが,社会奉仕命令について,刑罰とは何かとかという観点から論じるのも一つの方法だと思いますけれども,他方でもっとプラグマティックな観点からの議論も必要ではないでしょうか。本質論からは確かに刑罰としては不同意が当然だということなのかもわかりませんが,英米で発達した状況から見ますと,有効性という面では社会奉仕を不同意でやるということのむしろマイナスですので,この制度が軌道に乗せるためにはどうするかという観点からも議論の必要がある。英米流の議論から言えば,ドイツ流の刑罰の本質論だけではなく,実際にやった場合の有効な運用という視点からも制度設計を考える必要があるのではないかというのもある。 ● 英米法系と大陸法系の対立点が出てきたような感じもしないではないのですけれども。 ● よろしいですか。 ● どうぞ。○○委員,お願いします。 ● ○○委員のご意見については,社会奉仕の内容にもよると思うんですね。先ほど御紹介いただきました例えば老人ホームでの奉仕活動というようなものについては,同意しない者を連れて行っても,相手に迷惑になるだけでうまくいかないでしょうけれども,海岸の清掃活動などであれば,強制的にやらせるということも考えられるかもしれません。現在でも刑務所の構外活動のようなものは行われているわけですので,同意のないものが全く考えられないかというと,内容によるという気がいたします。 ● どうもありがとうございました。○○委員,お願いします。 ● 先ほど○○委員が言われた名称のことですが,これは悩ましい問題だと思うんです。イギリスで採用された当時,このコミュニティ・サービスを日本語にどう訳すかというのはひとつの問題でありました。その後いろいろな形で言われ,最近ではコミュニティ・サービス・オーダーと片仮名で書かれることもある。イギリスでもコミュニティ・オーダー,コミュニティ・パニッシュメント,様々な名称があります。手続面,内容を見た上で,改めてまた考えてもいいかと思います。 ● ありがとうございました。ある制度を導入しますと,いろいろな効果あるいは副作用が出てまいりますので,名称の問題も含めて内容の問題が重要な意味を持ってまいります。理念論は,最終的にどういう中身を持ったものとして導入するかという観点で,再度性格付けの議論をきちんとしなければいけないと思います。そのときに改めて御議論いただきたいと存じます。  内容につきまして,○○委員の方から御説明がありましたが,この点に関しまして,御意見を伺いたいと思います。  ○○委員,お願いします。 ● 一点だけ問題提起として申し上げます。今日お配りいただいた資料で,諸外国における社会奉仕を義務付ける制度の内容を紹介していただいています。先ほどの御説明のところで,命令機関についてはすべて裁判所がというような御説明があったと思いますが,これを考えるときに一点だけ考えておくべきことがあるかなと思います。それは例えばドイツで言えば,あるいはフランスもそうですけれども,結局もともと裁判所というのが,刑の執行というものに対して幅広く関与する制度を持っているということです。ですから保護観察所の監督機関,これはドイツについては保護観察官が実施機関と書いてありますけれども,恐らく刑事訴訟法上は裁判所が監督機関とされていて,ただ,実際上はほとんどのケースで保護観察官の監督の下に置かれているという意味で保護観察官が実施機関になっていると思います。フランスもいわゆる行刑裁判官といいますか,刑適用裁判官といいますか,そういう特殊な裁判官が幅広く保護観察の実施,あるいは実刑の場合の仮釈放などについても,審査に関与しています。そのような制度であるため,命令機関も裁判所ということになっていると思います。  しかし,日本の制度の場合,保護観察の内容についての裁判所のかかわり方は,この間特別遵守事項についての制度が設けられましたけれども,ここでもやはり内容を定めるのは保護観察所で,裁判所は意見を申し上げる形になっております。恐らく家裁におけるかかわり方もそういうような形になっているんだろうと思います。  そのあたりは,恐らく選択肢としていろいろなあり方があるところだろうとは思いますが,一点,論点との関係でぜひお考えいただければと思う点がございます。先ほど少年の保護観察で社会奉仕をするときに,対象者をどのように選ぶのかということがございましたが,あれは結局家庭裁判所においては,家裁の調査の中で果たして社会奉仕活動に適する少年か否かについてある程度資料が集まるというところがございまして,それをもとに家裁が恐らく御意見申し上げて,保護観察所も少年の様子を見た上で対象者を決めていると思います。ところが,日本の刑事裁判の中で同じことをやろうとすると,多分社会奉仕活動にそぐう被告人かどうかということについて,刑事裁判の手続の中で審理をしなければいけないということになってくると思われます。そのあたりの審査の手続との関係も,命令主体の関係では考えていただく必要があるかなと思います。ドイツですと,日本の少年の審判と同じで,捜査記録が全部裁判所に引き継がれますので,社会奉仕活動に適する被告人の選別が十分機能しているということもあろうかと思われます。  ですから,その点もぜひ今後の議論の中では,念頭に置いて御議論いただければと思っております。 ● どうもありがとうございました。それも検討事項として,皆さんの御意見を伺いたいと存じます。  先ほど,○○委員から主体の問題や対象者,対象犯罪などについて御指摘がございましたが,それらの点に関して何か御意見がございますでしょうか。  では,○○関係官お願いいたします。 ● 作業の内容でもよろしいですか。 ● はい,どうぞ。 ● この審議の最初にボランティアという話が出ましたけれども,日本でこれまでボランティア活動が一番充実して行われたのは,突発的な自体に対処するときで,阪神の地震とかあるいは日本海に石油が流れ着いたとか,そういうようなときに非常に盛り上がって,ボランティア活動がなされたと思います。  そういう非日常的な事態というのは,今考えている社会奉仕なり公益労働にはちょっと結びつきにくいと思うのですが,強いて考えれば,例えばですけれどもごみを集める仕事,今区役所だか東京都だかがやっているわけですが,ああいうのは日常的に毎日仕事がありますのでそういうのを科すると。これはきちんとやったかどうかの判定も比較的容易だと思いますので,その種のものを幾つか考えてみるということも意味があるかなと思いました。 ● どうもありがとうございました。そういう点もこれから具体化する段階で,内容の問題として検討させていただきたいと存じます。  ほかにいかがでしょうか。○○委員,どうぞ,お願いいたします。 ● 今,○○関係官のおっしゃったことに関連してなんですけれども,各国とも社会奉仕命令の導入について議論する際に,現実,そういう仕事があるのか,当初はかなり悲観論が強いんですけれども,やってみると案外存在するというのが各国の状況ではないかという感じがいたします。  それからもう一つ,1990年代初めの法制審議会の小委員会の議論の状況と今の状況ではいささか違っているのはないか。当時は恐らくまだ日本人には社会奉仕が根づいていないという観念でしたが,この議論が終わった後に阪神大震災があり,極めて多くの人々がボランティアとして社会奉仕的な作業に参加し,その後,社会奉仕を取り巻く状況は変わったのではないでしょうか。  それからもう一つ関連なんですけれども,作業を考える場合に,だれが実際に対象者をスーパーバイズするかという問題があります。我が国では保護司さん,あるいはBBSの方々が考えられます。  私も10年ぐらい前ですが,イギリスで社会奉仕の現場を見て歩いたことがあるんですけれども,そのときに感じたことは,いわゆる実際のスーパーバイザーはかなりタフな仕事だという感じがしました。この作業というのを考える場合に,実際のスーパーバイザーをだれにするのかという議論というのは重要だと考えています。  以上です。 ● どうもありがとうございました。御指摘された点も,また改めて御議論いただきたいと存じます。  では,○○委員,どうぞ。 ● 今ちょうど現実的な議論に向かっておりまして,私もそれがいいと思うのですが,ちょうど,先の財産刑小委員会のお話が出ましたので,感想めいたことなのですが,以前,その委員会では,罰金刑の代替と,さらに代替刑としての社会奉仕命令の導入の可否ということが議論となりました。今回議論しようとしているのは,自由刑の代替刑という側面を持ったものとしての社会奉仕命令ですから,やはり本来宣告すべき刑種あるいは刑の内容とあまりにかけ離れたものが社会奉仕命令として命ぜられてしまった場合には,それはコストを抑えることにはなるかもしれませんけれども,回りまわって本来の刑事政策の目的に合致しない可能性があるかもしれません。  ですから,今後の議論においてはこれができる,あれができるということを確実にチェックしながらも,本来はこういった刑を科して特別予防としてはやはり本当は自由刑がいいのだけれどもというふうなマージナルなところは踏まえて,刑の性質の同一性維持とでも言うのでしょうか,その点を踏まえて,代替がどこまで許されるかを考えるべきであろうと思います。  それから,社会奉仕を命ずるないしは同意に基づいてさせるときに,どういう種類があるかというときに,先ほどらいお話がありますように,プレ・センテンシング・ガイドラインあるいは量刑前の調査が,本来は必要ではないかとも思われますが,それを入れることが手続の体系を崩すのでしたら,○○関係官御指摘のように,まず容易に実施可能なものから考えていくのが現実的ではないかと思いました。  以上です。 ● どうもありがとうございました。今の点も具体化する段階で検討しなければいけないと思います。  ○○委員,どうぞ。 ● もう一つ,作業に関連して議論すべきことがあります。それは作業の期間をどれくらいにするかということと,また作業を何時間にするかということです。どれぐらいが適切なのかという観点から,どれくらいの期間--つまり1年以内なら1年以内で,何時間という議論ですね。具体的な問題として重要性を持ってくると思います。  アメリカの例などは,刑期でも懲役1万年とかいうような国ですので,作業時間でも恐らく何千時間というようなものがあるようですけれども,そこまでいかなくて,やはりアッパー・リミットをどこに求めるのか,どれぐらいが適正なのかということですね。年齢にも関係するかと思いますけれども,そういう議論というのは非常に必要ではないかと思います。そのとき付け加えて議論をしていただきたいと。 ● その点も大事なことだと思いますので,改めて検討させていただきます。  今日は時間の関係で,項目2までしかいけませんが,今までのところで何かほかにございましたらお願いいたします。  非常に盛り上がっているところですので,どうぞいろいろ御意見を賜りたいと存じます。  ○○委員,どうぞお願いします。 ● 内容に関連する,今○○委員の話にも関連すると思うんですが,具体的に社会奉仕命令を指導したり,いろいろな形で監督をするやり方,これが一体どうなるのかということについては,私は非常に関心が強いところがあります。  1つの方法としては電子監視という方法もあるのでしょうけれども,それでいいのかどうかというようなことの議論も必要だろうと思いますし,電子監視だとしても,その場合いろいろな対応があるので,どの程度までならプライバシー侵害にはならないのかという議論も必要ではないかと思います。そういった議論も,ちょっと今後は議論した上でやっていく必要があるのではないかと思います。 ● どうもありがとうございました。ただいまの視点も,これはプライバシーの保護や人権保障との関係がありますので,やはり詰めた議論が必要であると存じます。  内容の問題につきましては,個々的に議論する段階で,また新たな議論点が出てくるかと思います。  本日は第1巡目でございますので,大体の方向性や問題点についての指摘をいただきました。本日の議論はこういうことで十分ではないかという感じがいたしますが,それでよろしいでしょうか。  次回に,残りの第3項目について議論をさせていただきたいと思います。  既に予定の時間になりましたので,本日の審議はこの程度にしたいと存じます。  社会奉仕を義務付ける制度の導入の当否の問題につきましては,本日の議論とそれからまだ積み残しの部分がございます。さらに外国法制等の調査結果を踏まえて,今後も議論を重ねてまいりたいと考えております。  次回は,ただいまの第3の項目のところのほかに,前回お諮りいたしましたように,その他の社会内処遇のあり方のほか,刑執行終了者に対する再犯防止,それから社会復帰支援策について御議論いただきたいと考えております。そういうことでよろしいでしょうか。  では,そのようにさせていただきます。  それから,次回の日時・場所等について,事務当局の方から御確認をお願いいたします。 ● 次回は,既に御案内しておりますように,12月15日金曜日の午後1時から地下1階の法務省大会議室において開催する予定でございます。 ● ただいま御案内がございましたように,次回は12月15日金曜日に,地下1階の法務省大会議室において会議を行うことにいたします。開始時刻は,午後1時からということになりますので,よろしくお願いいたします。  それでは,本日はこれで散会といたします。  どうもありがとうございました。 ―了―