法制審議会           第151回会議 議事録 第1 日 時  平成18年11月20日(月) 自 午後2時01分                        至 午後2時50分 第2 場 所  法曹会館「高砂の間」 第3 議 題  裁判員の参加する刑事裁判の制度の円滑な運用等のための法整備に関する諮問       第81号について 第4 議 事 (次のとおり)                議        事    (開会宣言の後,法務大臣から次のようにあいさつがあった) ● 法制審議会第151回会議の開催に当たり,一言ごあいさつ申し上げます。  委員及び幹事の皆様方におかれましては,公私ともに御多用中のところ御出席をいただき,誠にありがとうございます。  当省におきましては,国民の皆様が安心して暮らせる安全な社会を実現し,維持すること,加えて,多様化する現代社会に合った,適切なルールを整備することを重要な課題として,民事法,刑事法その他法務に関する基本法制の整備に取り組んできているところでございます。  この取り組みに当たりましては,法制審議会の委員の皆様方には,日ごろから,大変貴重な御意見を頂戴いたしており,改めて深く感謝申し上げます。  さて,本日は,新たな課題として,裁判員の参加する刑事裁判の制度の円滑な運用等のための法整備に関する諮問第81号について,御検討をお願いしたいと存じます。  裁判員制度の円滑な運用のためには,一般国民である裁判員の負担が過重なものとならないようにしつつ,充実した審理を迅速に行うことが重要です。  現行の刑事裁判の審理においては,同一の被告人に対して複数の事件が起訴された場合,これを併合して審理することが一般的ですが,裁判員制度下においては,事件の内容等によっては,全ての事件をあわせて審理すると裁判員の負担が著しく大きくなることもあり得るところです。  そこで,このような場合の裁判員の負担を軽減するとともに,適正な結論が得られるようにすることが必要であり,この点は,「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」の施行までの検討課題とされていたものです。加えて,裁判員の参加する裁判の評議等を充実したものとするため,裁判員裁判の審理における証人尋問等を記録媒体に記録することができるようにすること等の法整備も早急に行う必要があると思われますので,これらの事項についての御検討をお願いするものです。  それでは,どうぞよろしく御審議をお願いいたします。 (法務大臣の退席後,幹事の異動につき紹介し,引き続き,本日の議題について次のように審議が進められた) ● それでは,議事に入らせていただきます。  先ほどの法務大臣のごあいさつにもございましたように,本日の議題は「裁判員の参加する刑事裁判の制度の円滑な運用等のための法整備について」でございます。  まず,初めに,事務当局に諮問事項の朗読をお願いいたします。 ● ○○でございます。諮問を朗読させていただきます。  諮問第81号  裁判員の参加する刑事裁判の制度の円滑な運用等のために,早急に法整備を行う必要があると思われるので,別紙要綱(骨子)について御意見を承りたい。 ● 続きまして,この諮問の内容,諮問に至る経緯及びその理由等につきまして,事務当局から説明していただきます。 ● ○○でございます。よろしくお願いいたします。着席して説明させていただきます。  それでは,諮問第81号につきまして,提案に至りました経緯及び諮問の趣旨等を御説明申し上げます。  平成16年5月21日,「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が成立し,5月28日に公布されました。この結果,平成21年5月までの間に裁判員制度が始まるわけでございます。裁判員制度は,国民から無作為に選ばれた裁判員が,殺人,傷害致死などの重大事件の刑事裁判において,裁判官と共に裁判に参加するというものであり,その意義は,広く国民が裁判の過程に参加し,その感覚が裁判内容により反映されるようになることによって,司法に対する国民の理解や支持が深まり,司法がより強固な国民的基盤を得ることができるようになることにあるわけでございます。  このような裁判員制度を円滑に運用するためには,それぞれ職業等を持つ裁判員の負担が著しく大きなものとならないようにするとともに,迅速かつ充実した審理を行うことが重要でございます。  この点,現行の刑事裁判実務では,同一の被告人に対して複数の事件が起訴された場合,これを併合して審理することが一般的であります。  しかし,こうした事件の中には審理期間が長期に及ぶものも存するところであり,裁判員制度下においては,このような場合の裁判員の負担を軽減することが重要と考えております。  一方,このような事件についても,適正な結論が得られなくなることがあってはならないのでございます。  そのため,この点については,部分判決制度という新たな制度を設けることにより,対処してまいりたいと考えております。  また,裁判員の参加する評議等を充実したものとするため,裁判員裁判の審理における証人尋問等を記録媒体に記録できるようにするとともに,連日的開廷等に対応するため,現行の公判調書の整理期限を伸長することも必要と考えておりますので,これらの点につき御議論いただきたく,今回の諮問に及んだものでございます。  次に,諮問の内容について御説明申し上げます。  初めに,御手元の「要綱(骨子)」の第一は,部分判決制度に関するものでございます。  先ほど申し上げました裁判員制度の意義を全うするためには,複数の事件が併合され,その審理が長期に及ぶ場合など,裁判員の負担が大きいことが見込まれる場合においても,長期間の審理に応じられる国民のみならず,幅広い層から,より多くの国民に積極的に参加してもらうことを可能とすることが重要です。部分判決制度は,このような観点から,長期の審理が見込まれる事件についても,より多くの国民が積極的に参加できるようにすることで,健全な国民の感覚をより一層裁判に反映できるようにするために設けるものであります。  まず,部分判決制度の概要について御説明申し上げます。この制度は,同一の被告人に対し,裁判員裁判の対象事件を含む複数の事件の公訴が提起され,その弁論が併合された場合において,裁判員の負担等を考慮し,一定の場合に,併合した事件のうち,一部の事件を区分し,順次,この区分した事件ごとに審理し,事実認定に関して部分判決を行った上で,残りの事件について審理するとともに,併合した事件の全体について,刑の言い渡しを含めた終局の判決を行うというものです。  このうち,要綱(骨子)第一の一は,部分判決制度により区分した事件ごとに審理する旨を決定する「区分審理決定」に関するものでございます。裁判員裁判の対象事件を含む複数の事件の弁論が併合され,その審理が長期間に及ぶ場合,裁判員の負担を軽減する必要がありますが,他方,犯罪の証明や被告人の防禦に支障を生ずることがあってはなりません。  そこで,一の1において,「裁判員の負担を考慮し,その円滑な選任を確保するために特に必要があると認められるとき」に区分審理決定を行うこととしつつ,「犯罪の証明または被告人の防禦に支障を生ずるおそれがあることその他相当でないと認められるとき」には,区分審理決定を行うことができないこととしております。  次に,要綱(骨子)二は,区分した事件の裁判等に関するものです。  部分判決制度では,区分した事件ごとに審理を行った上で部分判決を行い,その後,併合した事件全体について終局の判決を行うこととしております。  まず,要綱(骨子)二の1にありますように,部分判決では,当該区分審理に基づいて,有罪・無罪等の判決を言い渡しますが,刑の量定については行わないこととしております。刑の量定はすべての審理を踏まえて行うことが相当であって,区々の区分審理のみで判断することは困難ないし適当でないと思われることによるものです。  また,不服申立ては,すべての審理が終了し,終局の判決がなされた段階で行うことが相当でありますから,部分判決に対して,独立して不服申立てをすることはできないこととしております。  次に,要綱(骨子)二の2において,部分判決制度においては,区分した事件が裁判員裁判の対象事件を含まないときは,裁判員の参加する合議体の構成員である裁判官の合議により審理することも可能とし,その旨の決定をした場合には,裁判官の合議により,部分判決をしなくてはならないこととしております。  そして,要綱(骨子)二の3は,終局の判決に関する項目であり,区分事件の審理及び裁判の後,裁判所は,併合事件の全体について,刑の言い渡しを含めた終局の判決をしなくてはならないものとしております。終局の判決は,先の部分判決において示された事項については,これによるものとし,原則としてそれと異なる判断はできないこととしております。これは,区々の区分審理において判断した事実認定について,終局の判決で,それと異なる判断ができるものとすると,終局の裁判のための審理の中で立証の蒸し返しが行われ,結局,裁判員の負担が軽減されないためであります。  続きまして,要綱(骨子)三は,部分判決制度における裁判員等の選任手続に関するものです。  部分判決制度では,区分した事件ごとに審理を行いますので,裁判員の負担を軽減するとの観点から,区分した事件ごとに裁判員及び補充裁判員の選任を行い,部分判決を告知したときにその任務を終了することとしております。  また,順次行われる区分審理が円滑に移行することを可能とするため,区分した事件ごとに,選任が予定される裁判員をあらかじめ選任しておくことができるものとしております。  次に,要綱(骨子)第二についてですが,裁判員制度下においては,証人尋問等を記録媒体に記録することができる制度を一般的に導入し,この記録媒体を評議等において活用することにより,裁判員が充実した審理及び裁判をすることができるようにする必要があります。  そのため,裁判所は,事案の内容等を踏まえ,「評議等における裁判員の職務の的確な遂行を確保するため必要があると認めるとき」は,裁判員裁判における証人尋問等を記録媒体へ記録することができることとしております。  続いて,要綱(骨子)第三は,公判調書の整理期限に関するものです。  現行刑事訴訟法第48条第3項は,公判調書の整理期限を,原則として判決宣告までとしていますが,連日的開廷が法定されたことや裁判員制度の導入により,公判期日後すぐに判決が宣告されることが予想されます。そのため,裁判所における公判調書作成実務の実態や上訴期間が14日間とされていることなどを踏まえ,公判調書の整理期限を伸長するものです。  最後に,要綱(骨子)第四は,技術的,細目的な事項を含めた,その他所要の規定の整備を行うものとするものであります。  提案に至りました経緯及び諮問の趣旨等は,以上のとおりでございます。  十分御議論の上,できる限り速やかに御意見を賜りますようお願い申し上げます。  以上でございます。 ● ありがとうございました。 ● 引き続きまして,配布資料の説明をさせていただきます。  まず,番号1は,先ほど朗読いたしました諮問第81号です。  次の番号2は,諮問第81号に関連する,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律及び刑事訴訟法の条文の抜粋です。  以上,簡単ではございますが,配布資料の説明をさせていただきました。 ● ありがとうございました。  それでは,ただいま御説明のありました諮問第81号につきまして,まず,御質問がございましたら御発言をお願いいたします。  御質問はございませんでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● 質問なのか意見なのかわからないのですが,要綱によりますと,最後の事件を担当する裁判員の負担というのは,確かに仕事の量は減るのですけれども,その中身は大変ではないかと思うのです。最後の事件を担当する裁判員は前の区分審理を担当したグループが判断した判決を含め,全部を併せて量刑を決めなければいけないという部分があるのですが,その辺がスムーズに行くようなそういう方向はもちろんお考えだと思うのですけれども,その辺を今の段階でお話しいただければと思いますが。 ● よろしいでしょうか。 ● ただいま御指摘の点は確かに重要な点だと考えております。今回の部分判決制度を導入した場合に,最後の審理を行う裁判員を含む裁判体というものがその前の部分判決を受けて全体の量刑を決めるということになるわけであります。その場合に量刑がきちんと行われるためには,前の事件の内容を十分に把握して,その上で適切な量刑の判断をしていただく必要があるわけでございます。  私どもといたしましてその点をどういうふうに行うかということについては,1つは部分判決でありますけれども,その事件の事実関係について重要な部分はその部分判決の中で具体的に記載がされるということで,それを受けて量刑をするということになりますし,さらに,その部分判決で取り調べられた関係証拠というものがございますので,例えば現場の状況はどうであるとか,あるいは,凶器はどうであるとかといったことについて,必要に応じてそういった証拠もその終局判決を行う裁判体の方で改めて見ていただくという形で,前の部分判決の事実関係についてきちんと把握していただく,そういう手続というものを考える必要があると考えているところでございます。 ● よろしゅうございますか。  ほかに御質問はございませんでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● ただいまの○○委員の御質問に関連してお伺いしたいのですが,区分事件が近接する時間の経過の中で行われた連続犯罪のような場合,例えば責任能力に関する判断というふうなものはそれぞれの事件ごとにされるわけでございましょう。例えば,1つの裁判員の裁判によれば責任能力なしと判断され,次の事件については責任能力ありと判断されたような場合,各事件の時期が離れていたらそれはあり得ると思うのですけれども,時期が近接していたような場合にそういうような判断の違いがあった場合には,終局の裁判をする裁判体は前の裁判員の判断に拘束されるはずなのです。そうしますと,自分たちの担当した事件の判断とは違う事実の判断をもとに量刑を決めるというふうなことがうまくいくのだろうかということが1つめの質問でございます。  それから,現状の刑事事件の弁護という観点からしますと,情状弁護が非常に大きな比率を占めると思うのです。例えば,この制度によりますと被告人の生い立ちだとか,現在の心境とか,そういった意味での情状は最後の量刑を決める段階で立証がされるということだと思います。例えば,犯情といいますか,非常に残虐であるとかというようなことについては事実としては部分判決において認定され,それがまた今御説明にあったような資料も終局の裁判を行う裁判体に伝えられるわけでしょうが,その前の事件の裁判員の犯情に対する判断といったものは,普通その辺は情状の中で一括して言われるものだと思いますが,前の裁判員が犯情についてどういう判断をしたかというようなことがうまく伝わるのだろうかとか,あるいは,弁護人としては犯情に関する情状立証をどこでやればいいのだろうかと思うのであります。  これらの点についてはどのようにお考えになっているのかお伺いできればと思います。 ● お願いします。 ● まず1点目の例えば近接した日時における事件で,それぞれ責任能力が問題となるというような場合の問題でございますが,先ほどの説明にもありましたけれども,この要綱(骨子)で申しますと第一の一の1でございますが,最初の区分審理決定の記載の中でただし書が設けられており,「ただし,犯罪の証明又は被告人の防禦に支障を生ずるおそれがあることその他相当でないと認められるときは,この限りではないものとすること」というふうに書いてございます。近接した日時における事件で責任能力が同様に問題となるといった場合には,当然その関係の証拠も概ね共通するという問題がございまして,犯罪の証明という観点からもそうでありますし,被告人の防禦という観点からも,別々に審理をしていてはそういったそれぞれの活動に支障がある,あるいは,それによって区々の判決になるということは問題があるというような場合には,こういった分けて審理をするということをしないということを考えているというものでございます。  それから,2点目の,いわゆる犯情というのでしょうか,当該事件の事実に密接に関連するような情状部分についてどうするのかということでございますが,これも要綱(骨子)の第一の二の1の(3)でございますが,裁判所が部分判決で有罪の言渡しをする場合に,具体的にこういうことを示すことができるということで,「犯行の動機,態様及び結果その他の罪となるべき事実に関連する事実……を示すことができるものとすること」としております。お話がありましたように,いわゆる一般的な情状ではなくて,当該事件にまさに関連する情状について重要と考えられるものというのは,この最初の当該部分判決を行う裁判体の方で審理をし,その事実関係を判決の中で示すということを考えておりまして,それによって終局判決を行う裁判体は,前の裁判体が行った事実認定を踏まえ,また,必要に応じて証拠関係を見るなどしまして量刑をしていくということを考えているというものでございます。 ● よろしゅうございますでしょうか。  ほかに御質問はございますでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● 1つ1つの裁判について,有罪・無罪だけが決まって,最後で量刑を決めるということですが,なぜ1つ1つの事件についてそれぞれの判決で量刑まで決めたらまずいのでしょうか。と申しますのは,裁判員の場合には,前の区分事件の審理には関与しておりませんので,有罪・無罪だけではなくて,有罪でどうなるかというその情報というのも非常に大きいのではないかと思うのですね。確かに3つに分けて行われるときに,3つ足して懲役何年というふうになるとは私は思っていませんけれども,直接自分が関与していないものも含めてやはり量刑を決めるというのは,頭の中ではそういう考え方もあり得るかなとは思いますけれども,実際問題としては非常に難しいことを最後の人に要求していることになるのかなと思うのです。どうして個々の事件ごとに量刑を含めた判決をする方法はだめなのかということをちょっとお伺いしたいと思います。 ● お願いします。 ● 私どもはこういった制度を考えるに当たりまして,いろいろな仕組みが考えられないかということで,シミュレーションというのではないのですが,いろいろ検討はしたところでございます。御指摘のような,事件を分割して,それぞれについて量刑を含めた判決をしていくという制度もおよそあり得ないわけではないように思いますが,1つ問題となりますのは,それぞれ量刑をしていくということになりますと,最終的に全体を合わせてどういう量刑にするのかという手続を設ける必要があり,そこの調整というのは結局だれかが何かの資料に基づいてしなければならないという問題がございます。  それから,もう1つは,それぞれの事件について量刑をすると申しましても,先ほどのお話の裏返しかもしれませんが,いわゆる一般的な情状というものもあるわけでございまして,生い立ちであるとか,あるいは,今後どういうふうに生活をしていくのだとか,そういったことを含めて量刑というのは決まるものでございますので,そうすると,分割した場合にはそういったいわゆる一般情状をその都度それぞれの裁判所といいますか審理の中で行うということになると,まさに同じことを繰り返していくということにもなりまして,こうしたことなどを考えますと,なかなか分割をしてそれぞれ量刑をするという制度というのは現実問題としては難しいのではないかと考えているところでございます。  確かに,おっしゃるとおり,具体的な事実関係が争われて,ほかの裁判体が審理したものを踏まえて全体の量刑をするということについてうまくできるのだろうかという問題だろうと思いますが,先ほども申し上げたように,部分判決の中でそれなりの具体的な事実関係というものがいわゆる犯情を含めて記載されるということを考えておりますし,また,証拠も具体的に目を通して,どういう事実関係なのか,あるいはどういう犯情であったのかというのを十分把握していただいて量刑をすると考えておりますし,もちろんそういう問題が適切に行われるような工夫というものもさらに考えていきたいと考えているところでございます。 ● もう1つお聞きしたいことがございます。この部分判決制度では,裁判官は同じ人なのですか。 ● はい。この制度におきましては,裁判員は部分判決の都度交代をし,裁判官は共通に従事するということを考えております。 ● ○○委員,そのほかにはよろしゅうございますか。  では,その他御質問はございますでしょうか。  どうぞ。 ● 先ほど聞き忘れましたので,もう1つ質問をさせてください。  例えば非常に極端に有罪・無罪の判断が分かれるようなときに,例えば前の部分判決では有罪で,後の量刑を決める裁判員は当該事件については無罪という判断をしたような場合に,全然それぞれが独立した事件だったらそれは当然あり得るわけなのですが,何か関連するような場合には,自分たちは無罪という心証を取ったのだけれども,しかし,前の部分判決の有罪という判決に拘束されるから有罪を前提とした量刑をしなくてはいけないというふうなことが起こるのかなと思いまして,そういう意味での前の部分判決の量刑を含む終局の判決に対する拘束力といいますか,その辺は,もし拘束力を持たないようではまた意味がないのだろうと思うのですが,どう考えればよろしいのでございましょうか。 ● 御質問は,前の部分判決の有罪なら有罪という認定について拘束されるのかどうかという点かと思いますが,その点はこの要綱(骨子)の中でも記載してございますが,第一の二の3の(2)で,「裁判所は,併合事件の全体についての終局の判決をするときは,部分判決に係る事項についてはこれによるものとすること」という書き方をしてございまして,いわゆる拘束力というものだと思いますが,有罪という判断を部分判決においてした場合については,その判断に従ってそれは有罪として取り扱って量刑をしていくという,そういうことを考えているというものでございます。 ● よろしゅうございますでしょうか。  ほかに御質問はございませんでしょうか。  御質問がないようでございますので,ここで諮問第81号の審議の進め方について御意見を伺いたいと存じます。御発言をお願いいたします。  ○○委員,どうぞ。 ● 諮問されている法整備は必要なものであると思いますが,先ほど来,各委員の御質問にもありますように,かなり技術的な問題を含んでおりますので,やはり部会を設置して,そこで十分審議していただいた上,その部会の報告を受けて改めて審議をしてはいかがかと思いますが,いかがでしょうか。 ● どうもありがとうございました。  ただいま○○委員から部会設置等の御提案がございましたけれども,これにつきまして御意見はございますでしょうか。  特に御意見はございませんようですので,諮問第81号につきましては,新たに部会を設けて調査・審議をすることに決定いたします。  次に,新たに設置する部会に属すべき総会委員,臨時委員及び幹事に関しましては会長に御一任願いたいと存じますが,御異議ございませんでしょうか。  ありがとうございました。  それでは,この点は会長に御一任願うということといたします。  次に,部会の名称でございますが,諮問事項との関連から,諮問第81号につきましては「刑事法(裁判員制度関係)部会」と呼ぶことといたしたいと思いますが,いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。  ありがとうございました。  特に御異議もないようでございますので,そのように取り計らわせていただきます。  総会委員として諮問事項の中身についてほかに御意見がございましたら御発言をお願いいたしたいと思います。  ございませんでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● 実際にどうなるかが私にはよく想像できませんが,1つ心配なのは被告人にとってどのような状況になるかということで,憲法37条の公平な裁判を受ける権利の侵害だとか,もっと広く裁判を受ける権利の侵害だとか,あるいは,憲法14条の平等原則違反だとかいうような主張が起きるような気もしますので,部会の審議ではそのあたりの御議論も十分にしていただきたいと感じております。 ● 要望でございますね。ありがとうございました。  ほかに御意見はございますでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● 今日の諮問の内容とは直接的に関わりのない話かもしれませんが,ここで,記録媒体で証言等を録るというようなお話がありますが,それ以前に裁判員制度で捜査段階におけるいろいろな記録媒体の活用等,これは司法制度改革審議会の中でもいろいろ議論があったかやに記憶いたしておりますけれども,その辺は今どういう状況になっているのかちょっと教えていただけませんでしょうか。 ● よろしくお願いします。 ● ○○委員の御指摘の点につきましては,ただいま検察におきまして捜査段階での取調べの状況を録画することを試行し始めているところでございます。し始めていると申しますのは,7月末~8月にかけましてその試行を開始いたしまして,現在,東京地検において試行をしているところでございます。いずれその試行の状況につきましては検察の方で取りまとめて御報告をさせていただく時期が来ようかと思いますけれども,ただ,今のところはその試行を始めて4カ月近く経ったところであるということでございます。 ● よろしゅうございますか。  ほかに何か御意見はございますでしょうか。  それでは,諮問第81号につきましては部会で御審議いただき,それに基づいて総会においてさらに御審議を願うということにいたしたいと存じます。  続きまして,事務当局から,会議用資料等の公開に関する取扱いについて説明がございます。 ● 法制審議会の庶務を担当しております○○でございます。私から,庶務の観点から,会議用資料の公開と幹事・関係官の名簿の公開についてお諮りいたします。  まず,資料の関係でございますが,この法制審議会は非公開というルールになっておりますが,平成10年7月に開催されました第124回会議において議事録は公開するという御決定をいただいたところでございます。これを受けまして,私どもでは,議事録を法務省のホームページに載せて公開をいたしております。しかし,会議用の資料につきましては,ホームページには載せずに,いわゆる情報公開法に基づく請求があった場合には情報公開法の要件を審査した上で対応をするという取扱いをしております。現実の運用では,不開示情報に当たることはほとんどございませんので,会議用資料は原則として請求があれば公開をするということでこれまで運用してきております。  しかし,最近,ホームページに議事録は載っているけれども会議用の資料が載っていないのはおかしいのではないかと,資料も公開すべきであるという御意見や御要望がかなり増えております。そこで,検討いたしましたところ,やはり議事録とともに会議用資料も原則としてホームページに載せて公開してはいかがかと考えております。ただし,会議用資料の中には個人のプライバシーなど開示が相当でない情報が含まれていることもあり得るということを考えまして,原則は公開するけれども,例外として公開しない運用もできるということでいかがであろうかと。そして,その判断は,総会の資料であれば会長の御判断,部会に提出された資料につきましてはその部会長の御判断で決めていただくということにさせていただけないだろうかという御提案でございます。  「会議用資料」という言葉を使ってまいりましたが,基本的には資料番号を付してある審議資料を考えておりますが,そのほかに席上配布等で参考資料というものがあることもございます。この参考資料の取扱いにつきましては,審議に直接関係するものにつきましては審議資料に準じて原則公開という取扱いをして,そうでないものにつきましてはホームページには載せずに情報公開請求を待って対応させていただきたいと。ホームページに載せるか載せないかは会長あるいは各部会長に御判断いただくという取扱いにしてはいかがかと考えております。  なお,今申し上げました資料の公開につきましては,法制審議会令あるいは法制審議会議事規則に何の明文の規定もございませんが,議事録につきましても特に明文の規定なく総会の御決定で公開をしているところでございますので,資料につきましても本日の総会で御了承をいただきましたならば今回からホームページに載せて公開をさせていただくという形で運用させていただければと考えております。  第2点目の幹事,関係官名簿の公開でございますが,法制審議会には,委員,臨時委員,幹事,関係官という4つのステータスがございますが,このうち,委員と臨時委員につきましてはその名簿をホームページに登載して公開いたしております。ただ,これは,委員,臨時委員の交代がありますとその都度更新をしておりまして,常に最新のメンバーがホームページに載っているということになります。また,部会の委員等につきましては,その部会の調査・審議が終了いたしますと部会は消滅という扱いになりますので,その時点でその部会の委員名簿は削除するという取扱いをいたしております。  一方,幹事につきましては,平成12年2月の第129回会議におきまして,幹事の氏名,肩書きなど,お問い合わせがあった場合には個別に対応するということでこの総会の場で御承認をいただいたところでございます。しかし,今日まで幹事,関係官についてはホームページには載せておりません。そこで,もし本日御了承をいただけるのであれば本日の会議から,委員,臨時委員の名簿に加えまして,幹事の氏名,肩書きも載せた名簿をホームページに掲載させていただきたいと考えております。  なお,ホームページに載せる名簿は常に更新をして最新のものでございますので,例えば1年前の総会のときの委員,幹事名簿を見たいということもあろうと思います。そこで,総会につきましては各会議ごとに,部会につきましては委員等の異動があるごとに,委員,臨時委員,幹事,関係官の名簿を会議用資料として作成して配布をさせていただくと,会議用資料でございますので,議事録とともに会議用資料の1つとしてホームページに登載する,そういう形で各会議ごとのメンバーというものをホームページで明らかにさせていただいてはどうかというふうに考えております。  以上,多少長くなりましたが,もしこの場で御承認いただけましたならば,今後は会議用資料と,幹事及び関係官の氏名,肩書き等についても,御説明いたしました方法で公開するという取扱いにさせていただきたいと思います。どうか御理解を賜ればありがたいと思っております。  以上でございます。 ● ありがとうございました。  ただいまの御説明につきまして,御質問あるいは御意見がございましたら御発言をお願いいたしたいと存じます。  それでは,特に御異議もないようでございますので,本日の会議の会議用資料から法務省ホームページに掲載することとし,また,幹事及び関係官の氏名,肩書き等についても,事務当局から説明のあった方法で公開をすることとしてまいりたいと存じます。各部会への報告やホームページへの掲載の手順など,詳細につきましては会長に御一任いただくということにさせていただきたいのですが,よろしゅうございますでしょうか。  それでは,詳細については会長に御一任いただくということにさせていただくことにいたします。  これで本日の審議は終了いたしました。  ほかにこの機会に御発言いただけることがございましたらお願いいたします。本日の議題以外のことでも結構でございます。  ほかに御発言もないようでございますので,最後に少々お時間をいただきまして,次回の第152回会議までの法制審議会の運営につきましてお諮りをさせていただきたいと思います。  明年1月13日をもちまして私の法制審議会会長の任期が満了いたします。非力な私が何とか無事に任期を全うすることができますならば,それはひとえに委員,幹事の皆様方をはじめとする多くの方々のお力添えによるものと深く感謝いたしております。この場をお借りしまして一言御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。  さて,後任の会長につきましては,私の任期満了後に開催される会議におきまして,委員の皆様方の互選の結果に基づき法務大臣から指名されるということになっておりますので,一定期間会長が不在ということになります。そこで,法制審議会令第4条第4項によりますと,会長に事故があるときはあらかじめ会長の指名する委員がその職務を代行するということになっておりますので,会長の不在に備えまして,会長の代行をお願いする委員を指名させていただきたいと思います。  私といたしましては,会長の職務を○○委員に代行していただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。  では,○○委員,よろしくお願いいたします。  それでは,以上で本日の予定はすべて終了いたしました。  本日は,お忙しいところお集まりいただき,大変熱心な御議論をいただき,ありがとうございました。これにて本日の総会を終了いたします。 -了-