法制審議会保険法部会             第2回会議議事録 第1 日 時  平成18年11月22日(水) 自 午後1時30分                        至 午後5時36分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  保険法の現代化に関する検討事項について 第4 議 事 (次のとおり)                議        事 ● それでは,定刻でございますので,法制審議会保険法部会の第2回会議を開催させていただきます。  まず最初に,配布資料の説明を事務当局よりお願いいたします。 ● 配布資料でございますが,事前送付資料といたしまして,保険法部会資料の3「保険法の現代化に関する検討事項(2)」というものを送付させていただいております。これは,前回の資料2の「検討事項(1)」に引き続いて,この審議会で,本日後半になるかと思いますけれども,議論のたたき台としていただく趣旨で当方で作成したものでございます。  それから,席上配布資料といたしまして,「解約返戻金について」と題するA4の2枚紙がございます。これは,ただ今申し上げました資料3,「検討事項(2)」の最後の論点で用いることを前提に,生命保険会社出身の○○委員,○○委員に作成していただいたものでございまして,内容についての御説明は,その論点の説明の際に申し上げることとしたいと思います。  配布資料の説明は以上でございます。 ● ありがとうございます。よろしいでしょうか。  それでは,具体的な審議に移りたいと思いますが,まず,前回の第1回会議では,部会資料2の「保険法の現代化に関する検討事項(1)」の第3の1の「(4) 危険に関する重要な事項についての事実の不告知等による解除(いわゆる告知義務違反による解除)」の「ア 不告知又は不実告知があった場合の規律」のところまでを御審議していただきましたので,本日は,資料2の9ページの「イ その他の論点」から御審議をお願いしたいと思います。  まず,「(ア) 自発的申告義務か質問応答義務か」から,「(エ) 規律の性質」までについて,一応前回の会議でこの部分の説明も事務当局よりお願いしてあった,済んでいるところでございますが,改めてもう一度御説明をお願いしたいと思います。 ● それでは御説明いたします。  まず,「(ア) 自発的申告義務か質問応答義務か」の点でございますが,現行法は,何が告知の対象となる事実であるかを保険契約者等において自発的に判断して申告すべき義務として告知義務を規定しております。しかしながら,保険契約者等にこのような自発的な申告義務を課すことは相当でなく,むしろ保険者が保険契約の締結又はその内容の決定に当たり必要な事項を質問し,それに応答する形で告知をすれば足りるとすべきなどとの指摘がございます。また,前回,契約申込書と告知書を皆様に御覧いただきましたとおり,実務上は損害保険契約においては契約申込書において告知を求め,生命保険契約においては告知書によって告知を求めるのが通例とされております。このような実務の取扱い等を踏まえ,本文では告知の義務を保険者からの質問に応答すべき義務と位置付けることを提案しております。  続きまして,(注)1では,すべての種類の保険契約について告知すべき義務を負う者を保険契約者又は被保険者とすることを提案しております。現行法は,この点について,文言上は,損害保険契約においては保険契約者,生命保険契約においては保険契約者又は被保険者を告知すべき義務を負う者と規定しております。第三者のためにする損害保険契約の被保険者が義務の主体とされていない理由について,明治32年の商法制定時の議論を見ますと,損害保険契約においては,被保険者が契約が締結されたかどうかを知らず,告知をすることができない場合もあるからとの説明がされています。しかしながら,資料の本文のように告知の義務を質問応答義務とすれば,被保険者が告知すべきことを知らないにもかかわらず告知義務違反の効果が発生することはありませんし,そもそも被保険者は,危険に関する重要な事項について最も知り得る立場にあることから,これを告知すべき者とすることが相当と考えられます。実務上も被保険者が告知義務者とされているようでございます。そこで,本文では,いずれの種類の保険契約においても,保険契約者又は被保険者を告知すべき義務を負う者とすることとしております。なお,「又は」という文言は,保険契約者又は被保険者のどちらかに対して質問をする場合だけでなく,その双方に対して質問をする場合もあり得ることを前提としております。  次に,(注)2の前段では,現行法で告知の対象として規定されている「重要ナル事項」等のさらなる明確化について問題提起するものでございます。現行法上,これらの文言は保険者の危険測定に必要な事項であって,契約締結時に保険者が知っていれば契約の締結を拒絶し,又は同一の内容では契約を締結しなかったであろう事項を指すといわれており,これを前提として,法文上告知の対象を明確化することも考えられます。  また,(注)2の後段では,保険者が告知することを求めた事項を危険に関する重要な事項と推定する旨の規定を設けるべきであるとの考え方について問題提起しております。現行法上も,保険者が質問をした事項は,通常は危険に関する重要な事項であることから,経験則により重要な事項に当たることが事実上推定されるといわれることがございます。この点について,法律上推定する旨の規定を設けると,現行法上いわれている事実上の推定とは異なり,定型的に保険契約者等の側に危険に関する重要な事項に当たらないことの証明責任を課すことになります。しかし,これに当たるかどうかの判断に当たっては専門的な知識が求められることから,保険契約者等にこのような事実について証明責任を課すことは問題であるとの指摘もされております。以上の点を踏まえ,危険に関する重要な事項と推定する旨の規定を設けるべきとの考え方について御意見を頂ければと思います。  続きまして,(イ)でございます。現行法では,保険契約者等が事実を告知せず,又は不実の告知をしたことを保険者が知り,又は過失によって知らなかった場合には解除権を阻却することとされております。これは,保険者が悪意であった場合は解除を認める必要はないし,保険者に注意を尽くさせる趣旨で過失の場合にも解除を認めないこととしているといわれております。このほかに,ここでは保険者の使用人等のうち,いわゆる告知受領権のない者による告知妨害があった場合などには,保険者は告知義務違反を問うことができない旨の規定を設けるべきとの考え方について問題提起しております。保険者の使用人等,具体的には保険者との間に雇用関係にある者や,損害保険代理店のように保険者から委託を受けている者,その使用人等のうち告知受領権を有していない者に悪意又は過失がある場合は,直ちに保険者に故意又は過失があるということにはならないとされております。例えば,生命保険募集人は告知受領権を有していないのが一般的といわれております。この点については,学説上,生命保険募集人にも告知受領権があるなどという見解もあるものの,保険募集人が告知受領権を有しているかどうかは,一般原則どおり,保険者がそのような権限を付与しているかどうかによって決せられるべきであると解するのが一般的です。しかしながら,告知受領権を有していない者が保険契約者等に告知しないように勧める告知妨害をした場合や,保険契約者等から事実を告げられるなどして,悪意であったにもかかわらず保険者にこれを知らせなかった場合には,保険者による契約の解除を認めることでよいか疑問があるとの指摘がされ,現行法上も表見法理の適用だけでは十分ではなく,保険者に保険募集人等の選任,監督についての過失がある場合には,保険者に過失があるものとして契約の解除をすることはできないとの見解等が主張されております。以上の解釈論を前提としつつも,保険契約者等の保護は必ずしも十分ではないとして,立法論的に考慮を要するという指摘もされております。他方で,告知妨害が問題となる事案では,告知をしていたとしても契約を拒絶されていたであろう場合があり,契約の効力を保障することが常に正当な解決となるとはいえない等との指摘もされていますし,さらには,我が国における法体系を踏まえた検討として,そのような規律を基本法に置くのが相当であるのかという点についても検討する必要があると考えられます。以上の点を踏まえ,(イ)の考え方について御議論いただければと思います。  続きまして(ウ)です。現行法では,解除権は,保険者が解除の原因を知った時から1か月間行使しないとき又は保険契約の成立の時から5年を経過したときは消滅するとされています。いずれも除斥期間とされており,1か月の除斥期間は早期に法律関係を安定させる趣旨であり,5年の除斥期間は,これだけ経過すると告知されなかった事実が保険事故の発生率に影響を及ぼさないであろうからとの説明がされております。資料の本文では,これを維持することを提案しておりますが,特段の御意見がございましたらお願いいたします。  最後に,「(エ) 規定の性質」でございます。各規律が任意規定か強行規定かについて問題提起をしているところでございます。現行法の告知義務に関する規定について,大審院の判例には,これを任意規定としたものがある一方,学説上は片面的強行規定であるとか,不合理な逸脱は許されない等との指摘がされることがございます。立法論としても片面的強行規定とすべきとの指摘がされております。ただ,これについては,告知義務に関する規定を強行規定とすべきかというアバウトな形で抽象的に検討するのではなく,それぞれの個別の規律ごとにその当否を検討すべきと考えられます。例えば告知の義務の対象を拡大すること,告知義務違反の各要件を緩和すること,解除権の阻却事由を限定すること,因果関係不存在の場合の特則を排除するなど異なる効果を規定すること,除斥期間を伸長すること等について検討する必要があると考えられます。  御説明は以上でございます。 ● ありがとうございました。  それでは,ただ今御説明いただいた部分について御意見,御質問を頂ければと思います。  ○○委員。 ● 現行商法は自発的申告義務ということですけれども,個人向け保険--いわゆる消費者契約に当たるのかもしれませんが--については質問応答義務ベースに変更するということでよいかと考えております。  ただ,企業分野の方なのですけれども,質問応答義務との関係で実態を少し説明させていただきたいと存じます。損害保険は時代とともに新しいリスクにチャレンジして,従来保険を活用できなかった分野を切り開き,保険機能を提供できるようにして企業の方々のリクエストにこれまでもおこたえしてきたという経緯がございます。例えば少し前まででしたらD&O,会社役員賠償責任保険,あと最近では個人情報漏洩の保険や,E&Oと呼ばれる職業賠償責任保険などがそういう流れになります。例えば,当社の学校のための職業賠償責任保険を引き受けるための申告書をちょっと読み上げます。この中に具体的に次のような質問を用意しております。「本保険の御検討に当たり,想定しているリスク(事故の形態)を可能な限り具体的な例でお知らせください」,こういう質問もしています。このようなE&Oの職業賠償責任保険というのは,リスクが,非常に判断が難しくて,我々の保険会社の方でも勉強はもちろんするのですけれども,リスク実態については圧倒的にお客様の方がプロでいらっしゃいますので,お客様の方で懸念されておられるリスクを可能な限り申告していただいた上で,申告内容を信頼させていただいて,何とかお引受けできる形で判断して,そういう場合には引受けをさせていただいている。これが現状でございます。  今申し上げたものが質問応答義務としてしまった場合に,こういうような包括的な質問が全く許されないということになるのであれば,今後企業の新たなリスクに対応した商品を準備していくことが困難になって,経済界全体にとってもマイナスではないかと思います。つきましては,本条文を任意規定にしていただくか,あるいは企業契約,すなわち消費者契約法の事業者の契約のようなものについては任意規定としていただきたい。また,この項目だけではなくて,保険法全般を通じて,もしも片面的強行規定を定める場合があったとしても,社会への保険機能提供機会を狭めることがないように,事業者契約については適用除外とすることを希望したいと思います。  以上です。 ● では,○○委員からどうぞ。 ● 質問がありますけれども,(ア)の(注)2のところですね。「『重要ナル事実』及び」というところの「また」以降のところですけれども,この意味するところですね。というのは,これ,立証責任が保険者から保険契約者に移るということでよろしいのでしょうか。移転することになるのかと……。 ● そういうことになると思います。 ● そうすると,普通の私みたいな消費者は,医学的知識だとか法律だとか約款も十分理解していない人が多いわけで,ちょっとそれは消費者にとって少々酷ではないかなと思います。  以上です。 ● ○○委員。 ● 生命保険会社の実務を若干御説明申し上げて,この点について考え方を申し上げたいと思うのですが,生命保険会社の約款では,お手元の箱に入っております約款の第23条をちょっと読み上げますと,「会社が,保険契約の締結または復活の際,書面で告知を求めた事項について,保険契約者又は被保険者は,その書面により告知をすることを要します」と,それが大原則なのです。ただし,先ほど御説明がありましたように,会社の指定する医師が口頭で質問した事項については,その医師に口頭により告知することを要しますと,そういう規定になっています。したがって,私どもも原則は質問応答義務でよろしいかと思うのですが,この今約款に入っています医師扱いの場合,いったんお客さんに告知していただいて,そこから,その範囲内なのですが,それをさらに深掘りする意味で尋ねていくのですね。それをまた告知書に書いて,それを確認してからお客さんの方は署名していただくと,そういう事務手続をやっていますので,今の医師による口頭による質問が否定されない程度であれば,必ずしも自発的申告義務にこだわるものではありません。  以上でございます。 ● どうぞ,○○委員。 ● まず,この問題については,企業物件は外すというのでいいと思うのです。というのは,保険会社よりも加入者の方がよく知っているという事情がありますので,それはそれでごもっともな主張だと思います。  あと,この(注)2の危険に関する重要な事項の推定ですけれども,○○委員の御心配はごもっともで,特に保険会社ごとに引受けの基準が違うというような場合には,なおさら分からなくなるわけですよね。ですから,これは基本的に保険会社,保険事業者,共済事業者の方が立証すべきことだという考え方を採らないといけないのだと思います。  それで,あと,○○委員のおっしゃったお医者様の診査とか,これは必要なことだと思いますので,それは当然含むという意味で,私はこういう義務にするということに賛成したいと思います。 ● ○○委員。 ● 今までのお話と全く同じでございまして,消費者側が立証責任を課せられるというのは,いかようにも避けていただきたいと思いますので,あとは当然応答義務ということで,それには賛成でございます。 ● ○○委員。 ● 先ほどの○○委員のお話も,要は事業者について申告義務にするのではなくて,質問応答義務にしても任意規定であればいいという,こういう御説明だったと理解しています。事業者であっても,大多数の保険はやはり質問に対する応答をするというのが実務であって,先ほど御説明があったのは極めてまれな例外なので,任意規定であれば別に問題はないと思います。 ● 論点が,重要性の推定と,それから質問応答義務とするかどうかの点について御意見を頂いていますが,(イ)の告知妨害の辺りの点についてはいかがでしょうか。従来の法律行為論からいうと,告知受領権が外務員にないということになると,なかなか告知妨害の場合でも保険会社の過失というようなものが認められないという,そういう一つの筋道があって,解釈論はそこを多少,代理権と直結しないのではないかということで,余りよくない告知妨害があれば保険会社自身の過失があるというふうな解決をする意見が割と有力かと思います。そういう辺りを少し条文の形に直してみてはどうかという提案でございますが,○○委員。 ● これは,こういう告知妨害があった場合には,告知義務違反の規定の過失のところで処理すると。すべてではないにしても,多分実務はそうやって行われている部分もあると理解しているのですけれども,では,過失の解釈でやるのと法文を置くのと同じなのか。私は,よくよく考えてみますと,やはりこれは規定を置いた方がいいのではないかと。具体的には,スイス保険法の第8条にあるような,保険者が--第2号ですね--黙秘又は不実告知の誘因を作ったときは解除できないと。どういう意味があるかというと,やはり規定を明確化することによっていろいろないいことが起こるというふうに思うのですけれども,これは,こういう規定ができますと,この規定によって責任を負うというのがどういうものかと。これは保険会社が努力すれば減らせる責任なのですね。つまり従業員の募集人の方を訓練して,そういう事故が減らせるという形でマネジメントの対象になる費用ですから,そういう規定を置くのが非常にいいのではないか。  それからもう1点,行政的な監督との関係。これは直感的にどういうふうに分かっていただくかという問題なのですが,行政的な監督はやってもいいのですが,それよりも,こういう規定にして,当事者が経営判断としてコントロールしようと,少ないようにしていこうというふうにした方がいいのではないか。素朴な例ですけれども,今が明治初年だとして,ここに機関車ができて,機関車の煙で松が枯れてしまった。不法行為がなければこれでおしまいなのですが,不法行為責任を負えとなりますと,損害賠償2000万円を負うよりは,防止できるなら,1000万円掛けて自分でもう被害の損害賠償を負わないようにするという,こういう私法規定を置くことによって,もちろんその場合でも鉄道運送事業者に対して命令を出して,煙を出すなと。止められなかったら営業停止だとか役員の首を切るぞとか,そういう監督ももちろんあるのですが,それよりは,保険事業者,共済事業者の方がしっかりそういうものは防ごうと。防げば,人間,悪の能力がある限りゼロにはもちろんなりませんけれども,小さくしていくことはできるわけです。だから,そういう規定を置くということは,行政的な規制も大事ですが,より重要なことではないかと,こう考える次第です。 ● ○○委員。 ● 生命保険会社の考え方を申し述べたいと思うのですが,先ほど資料の御説明にございましたけれども,それは一方の考え方であるわけですが,現行法でも解除権が阻却されるのだという考え方は解釈論としても有力でして,業界としても実際には告知義務違反の態様とか程度,あるいは取扱者の不適行為の内容等,こういったものを総合的に勘案して,公平性の観点から,あるいは保険契約者を保護するということが相当と判断される場合には保険者の過失として解除権を行使しないと,こういうガイドラインを生命保険協会として作っておりまして,それにのっとって各社運用しているということでございます。  「告知妨害等」となっていますけれども,どこまで指すのか分かりませんけれども,一律に解除できないとした場合に,先ほど御説明がありましたようなことなのですが,次のような懸念が考えられるので,私どもとしましては慎重な検討をお願いしたい。解除の対象となった保険契約は,実は正当に告知されておれば同じ条件では引受けされなかったものである。こういうものが一律に解除できないとなると,保険群団の公平性に反して保険の健全性を失うとか,あるいは実際にはケース・バイ・ケースで単純でもないのですね。今お話しの単純化された告知妨害があって,告知の機会を奪ったということになれば,それはまた別の問題ですけれども,それぞれなかなか個別の事情というのは個々の事案によって違うので,それは,私どもは実際にそういうケースになりますと,弁護士の法的見解を聴取したりしながら,その適用を,解除するかどうかについて決定しているわけでございます。  以上でございます。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 今の点なのですけれども,○○委員の御説明にあったような実務のガイドラインというのがあって,それに従って現在行われているということであれば,そのガイドラインを法律の中に取り込むというか,そういうふうなことは考えられないのでしょうか。規定があってもなくても同じような実務が行われるということであれば,それは規定はなくても同じだということも言えるのですけれども,もしそうであるならば,規定を置いて,こういう方針で臨んでいるということを世の中に示した方がいいと私は思いますが。 ● ですから,実際にその規定の仕方にもよると思うのですね。告知妨害みたいなはっきりとしたものであれば,これは単純なのですけれども,例えば不告知教唆といってもいろいろケースが考えられるのですね。一般的にあるのは過少告知なんていうのがあるのですけれども,例えば風邪をひいた。こんなのは告知した方がいいですかねと営業職員に聞くと,営業職員は「いや,風邪程度だったらいいでしょう」と言ったとしますね。そうすると,実際の支払になってくると,それが争いになって営業職員が不告知教唆したというようなふうにとられてしまうのですね。ですから,最終的には司法の判断によるのですけれども,割とそんなに簡単明瞭に割り切れるものではないということで,個々のケースによってやはり取扱いは違うので,私どもとしては,この規定化するについては慎重な判断をお願いしたいと,そういう趣旨でございます。 ● ○○委員。 ● 実際の生保協会のガイドラインでもそうですし,それから,事実上,不告知教唆,告反教唆があったら解除権を阻却しているというお話も今ございましたが,実はたくさん告反教唆,不告知教唆の案件を扱ってきた経験から申し上げれば,今そういうふうになったかもしれないけれども,それまでは大変でございまして,不告知教唆,告反教唆って,実はもう山のようにございまして,それが大変ですね。いつも私ども消費者側から言えば水かけ論になってしまう。事実上,言った言わないの水かけ論に終始して,中には,某生命保険会社とお話をしたときは「告反教唆は告反教唆ですよ。だからどうしたのですか。解除権はなくなりませんよ」と,そういう暴言を吐かれたことが2度ばかりございまして,そういう事実を踏まえますと,体験論で素朴で大変申し訳ないのですけれども,そういう意味では規定の明確化が必要なのではないのかなと思います。 ● ○○委員。 ● ○○委員が,消費者との全体のトラブルの例をお話ししていますので,私の方から加えることもないのですが,ただ,やはり私も少し相談を受けた中で感じることは,外務員の方,勧誘員の方,その方に代理権がないということをほとんどの消費者は知らないということなのですよね。やはり実際に自分が対じしますから,その方に言ったことは絶対会社の方に伝わっていると思うし,また,その方に言われたことというのは,やはり何か断り切れなくなってしまうという,そういう実態が結構あるものですから,やはり法律の中できちんと書いていただくということと,やはり代理権がないということを一般の方に分からせるという,そういうことも是非,やっていらっしゃるのでしょうけれども,まだまだ私が感じるところでは,そういうことを分かっていない消費者はいっぱいいると思いますけれども。 ● ○○委員。 ● 簡単に。先ほどの風邪の例は,風邪を告知したからって,それで引き受けないということにはならない。これは重要事項ではそもそもないのではないかなと思うのですよね。実際は共犯のような場合もあります。確かに加入者の方が募集の人を巻き込んでやる場合。でも,大体そういう場合は募集の人の方がまだ新米で,こんな状態で募集を出していいのかなという方も非常に多いのですよね。要するに,もうちょっときちんと教育してからやれと言いたくなるような……。  それと,こういうことをやると,予期せぬものを引き受けてしまう。でも,これは告知義務違反という制度自体が,悪意とか過失があれば引き受けなきゃいけない場合もあるわけで,それは制度自体として覚悟している。それから,保険料としても安全率でそうしたものをちゃんと取っているわけですから,どうも明確化することによるメリットが非常に大きいのではないかと,今回私は思っているのです。  以上です。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 先ほど○○委員の方からいろいろなケースがあり得るということの中には,今,○○委員の方からもありましたけれども,明らかに募集人や代理店が顧客の側に立って,顧客に保険金を受けさせる目的で共犯的にかかわって積極的に関与するということはあり得る。これは保険募集人としてどういう者を雇っているかということの構造から,もうある程度そういうことは避けられないわけで,地元でしっかり営業して,お客さんがたくさん付いているところは保険の販売の成績もいい。そういうところは,やはり保険のお客さんである以前に自分の本業のお客さんである。そういう構造がままありますので,ここで先ほどのお話で言うと,教唆等の「等」にどこまで入るのかということに関しては,そういう問題を少し念頭に置いていただいた方がよろしかろうと思っております。ただ,結論としましては,私もこの規定は原則としては置いた方がよいと思っております。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 補足になるのかよく分からないのですが,最初に事務当局から,この規定を入れると,本来正しく告知されていれば引き受けなかった,保険金が支払えなかったような事例で保険金が支払えることになるのだけれども,それがいかがなものかという考え方もあり得るということを指摘されたと思いますが,ただ,過失によって保険者が知らなかった場合にも,契約者側が明らかに故意で告知義務違反した場合であっても,これは保険金が支払えることになるわけで,例えば診査医がきちんと診査して触診しておればしゅようがあるというのがはっきり分かったのに,それをしなかったがために過失があった。診査医の場合は代理権,告知受領権があるので,代理人の過失が本人である保険者の過失と同一視されて,結局解除権行使できなくなる。ところが,いわゆる外務員の場合は代理権がないので保険者の過失と同視することはできないという,まさに非常にテクニカルな法律論のせいで,従来こういうことになってきたわけで,しかし,実質的に見ると,診査医がうっかりした場合には,完全な故意の告知義務違反でも保険金が支払われる。ところが外務員の場合には,不告知を教唆したような,より悪質である場合にも当然には解除権が阻却されないで,やはりちょっとバランスとしては悪いような気がするのですね。ですから,私も結論的には,やはりこの規定を置いていただく方がいいのではないかと考えております。 ● 告知妨害についていろいろ御意見を頂きましたが,あと,除斥期間と強行規定性の問題も提示されております。この段階で特に何かございませんか。 ● これは基本的に強行法規的な方向で,個別の規定を取りまとめた段階で考えた方がいいのではないかと考えます。 ● (ア)については幾つかの規定の細かい内容をどうするかという辺りの御質問が出た。この辺りはなお検討してもらい,また,告知妨害の点につきましても,では,これは具体的に告知妨害とここでは簡単に書いてあるけれども,どういうふうな規定が実際にできるのだろうかと。それでまた,いろいろなまた同じ告知妨害の事案でもいろいろなタイプの事案があるということもございましたので,その辺り,どういうふうに具体的にはルールを作ることが可能かをなお検討していただいて,さらに御意見を頂くということにしてはどうかと思っております。この辺りは以上のようなところでよろしゅうございましょうか。  それでは先へ進ませていただきまして,「(5) 他の保険契約の存在及び内容等についての不告知等による解除(いわゆる他保険契約の告知義務違反による解除)」のところの説明を,まず事務当局よりお願いいたします。 ● それでは御説明いたします。  いわゆる他保険契約の告知義務については,現行商法上は第644条第1項本文又は第678条第1項本文の告知の対象となる重要な事実に含まれるかという形で議論がされております。学説上,告知の対象となる重要な事実は,いわゆる保険危険事実,すなわち保険事故の発生率の測定に関する事実,例えば火災保険における建物の構造,用法等や生命保険契約における既往症等に限られるという見解と,いわゆる道徳的危険事実,すなわち保険契約者側の関係者が故意の事故招致等により不正な保険給付を受ける意図を有している事実,例えば他保険契約の存在等も含まれるという見解があり,裁判例には保険危険事実に限るとの見解に立つと理解されているものがございます。他保険契約の存在が商法の告知の対象に含まれていないとしても,約款で保険契約者等に他保険契約の告知義務を課すこと自体については,一般にその有効性が承認されているといわれております。  実務の状況を見ますと,生命保険会社の生命保険契約や傷害・疾病保険契約では,他保険契約の存在は告知事項とされていないのに対し,損害保険会社の損害保険契約や傷害・疾病保険契約では,保険契約者等に他保険契約の告知義務が課されています。共済については,契約申込書で,建物更生共済等について他保険契約の告知を求めているようでございます。このような告知義務を課す理由としては,他保険契約の存在が道徳的危険に関する事実の徴表としての意味を持ち,保険者が契約締結を回避するために必要であるということが挙げられているほか,損害保険契約においては損害額以上の保険金が支払われることはないことから,保険者が同一の目的物について重複して保険契約が締結されていることを知っておく必要があるということが挙げられております。  これに関連して,契約内容登録又は照会制度について御説明いたします。前回と同じく,机の上に生命保険関係と書いたファイルを用意させていただいておりまして,それをちょっと御覧いただけますでしょうか。これの中に入っております最後の2枚が契約内容登録制度又は契約内容照会制度についての説明のパンフレットになります。これを御覧いただきながらお聞きいただきたいのですが,まず,これは生命保険協会の制度でございます。これは,生命保険会社全社と全国共済農業協同組合連合会が生命保険契約や傷害・疾病保険契約の内容,具体的には保険契約者及び被保険者の氏名等,保険金額,契約日,取扱会社名等を5年間登録するものであり,各社は契約の申込みがあった時点で,これによって他保険契約の有無や内容等を確認することとされております。  同じ制度が日本損害保険協会にもございまして,そのパンフレットが,今度は損害保険関係と書いてありますファイルの中に入っております。これは傷害保険契約等の契約内容登録制度でございまして,これには日本損害保険協会に加盟している損害保険会社などが参加しております。登録内容は,先ほど御説明しました生命保険協会の契約内容登録制度とほぼ同じであり,これを保険金支払等の判断の参考にしているということでございます。  以上の状況を踏まえまして,資料の本文では,いずれの種類の保険契約についてもいわゆる他保険契約の告知義務に関する規定を設けるA案,損害保険契約についてだけ規定を設けるB案,いずれの種類の保険契約についても特段の規定は設けないC案を掲げることとしております。これから御説明します(注)の問題点も踏まえまして,本文の考え方について御議論いただければと思います。  その(注)でございますが,A案又はB案を採る場合に検討する必要がある事項を記載しております。まず要件についてですが,損害保険契約では,目的物や被保険者等を共通にする保険契約を締結しているかどうかの告知を求め,保険契約者等が故意又は重大な過失によって告知せず,又は不実の告知をした場合には契約の解除をすることができるとされているのが通例ですが,学説においては,解除が認められるのは,保険者が他保険契約の存在を知っていれば保険を引き受けなかったであろう場合に限られるとの指摘がされているほか,約款の解釈を示す裁判例においては,例えば保険契約を解除し,又は保険金の支払を拒絶するにつき正当な事由があることや,保険契約を解除するにつき公正かつ妥当な事由があること等という約款で直接明示されていない要件を定立した上で告知義務違反の有無を判断しているものが多くあります。これは,他保険契約が存在していたとしても,実際に発生した保険事故が故意の事故招致等によるものとは限らないことによる議論と考えられますが,適切な要件設定が可能かという問題点についても御議論いただければと思います。  次に,効果について,約款では解除とされ,他保険契約の告知義務に関する規定を設けるべきとの立法論においても解除とされており,A案を採る場合には効果を解除権の付与とするものと考えられますが,他方で,B案を採る場合には,契約が重複していることを保険者に知らしめる点に制度の趣旨を求めることになることから,解除という効果を認める合理性については慎重に検討する必要があるとも考えられるところでございます。さらに,仮に規律を設けるべきと考える場合には,その性質についても併せて御意見を頂ければと思います。 ● 若干内容的には関係することでございますので,併せて(後注)の保険金不法取得目的の保険契約の無効についても御説明をお願いします。 ● この(後注)は,保険金不法取得目的の保険契約が無効である旨の明文の規定を設けるべきであるとの考え方について問題提起しております。この考え方は,モラルハザード防止の観点から,保険制度を悪用して保険金を不法に取得する目的をもって締結された保険契約は当然に無効であるということを明確にすべきとの考え方に基づくものでございます。この考え方自体については,恐らく御異論も余りないのではないかと考えられますが,このような規律を明文で殊更に設けるかという点については慎重な検討が必要と考えられます。  具体的には,民法第90条の公序良俗違反を根拠に,保険契約者が保険金を不正に取得する目的で締結した保険契約を無効とした下級審裁判例があることもあり,民法第90条の判断基準との違いが明らかでないとの指摘がございますし,また,「不法取得目的」が何を意味するのか,例えば「不法」には違法行為が広く含まれるのかなどの問題についても検討が必要と考えられます。このように,この問題を検討するに当たっては,民法第90条との関係を整理することが必要不可欠であると考えられますが,仮にこのような規律を設けるべきと考える場合には,「不法取得目的」の明確化等の問題につきましても併せて御意見を頂きたいと思います。  以上でございます。 ● ありがとうございます。  それでは,ただ今の点について,○○委員,いかがですか。 ● ただ今御説明を頂いておりますように,この問題は保険金犯罪に非常に関係している問題でございまして,保険金詐取を目的とした保険金犯罪,最近社会問題化されておりますけれども,不正請求対策として,やはり告知義務とは別に損害保険契約及び傷害・疾病保険契約にこの規律を設けるということを要望いたしたいと思います。現在の損害保険会社が扱っております商品のほとんどにつきましては,他保険の告知・通知義務を課しております。学説・判例におきましても,こういうものが肯定されていると考えております。モラルリスク排除のためには,やはりこれは保険制度を維持していく上で必要な規定であると考えています。一方で,先ほどの説明にもございましたとおり,お客様が仮に例えば火災保険を付けていて,ほかにもいろいろ付けているということがやはり無駄であるということ,これにつきましても保険会社として説明することができますし,また,1日5万円も10万円も入院保険金を付けようとする,こういうものをあらかじめチェックするということも有意義なことだろうと思っております。  先ほど御説明いただきましたように,損保につきましても契約内容につきまして登録する制度がございますが,損害保険の場合につきましては代理店が募集をしておりまして,代理店には契約締結権がございますので,契約をしてしまった後にそういう登録をしますので,結果的に契約が成立してしまうということが通常でございます。したがって,成立してしまっている契約につきまして,この条項がない限り,著しい重複が判明した場合,告知義務違反の規定がなければ解除できないと,こういう問題がございますので,是非この規定を設けていただきたいと,こういうふうに思っております。  なお,後ほど通知義務についても問題が出てくると思いますが,他保険告知と同様な問題があると考えておりまして,同じような取扱いを希望する次第でございます。 ● では,○○委員からまずどうぞ。 ● これは,同じリスクを引き受けるほかの保険契約があるかどうかということを問うわけですけれども,これは結局,そうしないと契約解除だということになるということなのですが,損保,生保と登録制度がそれぞれあって,情報の共有化をされるということなのですけれども,例えば共済だとか,農協の共済は入っていましたけれども,その他の共済もあるし,あるいは少額短期とか,そのほかのものもあるわけで,そこら辺をどういうふうに実務上カバーできるのかどうかといったところがちょっと心配なところかなと。  それから,これは損害保険の方に入ると思いますけれども,例えば海外旅行傷害保険なんかは,成田に行って自動契約機だとか,あるいは窓口があって,そこで簡便に契約できるわけですけれども,そこであれこれ聞かれてもよう分からんということで,これは利便性というところをどう整理をつけるのかなというところが素人なりに心配してしまうところであります。ただ,先ほどもありましたように,非常に金銭に絡むサービスの契約ですから,ある意味手続上もモラルハザードをきちんとしていかなければいけないという,その面もやはり重要だなと思いますし,一方でそういう海外旅行保険だとか,あるいは最近はクレジットカードに付いている保険だとか,そういうのは持っている人が認識せずに持っていたりするわけでありまして,これをとらえてこれを告知していないから解除というのは,これは余りにも酷過ぎるなということで,要はどうバランスをとっていくかという問題ではないかなと思います。 ● ○○委員。 ● 前回お配りしました生命保険のアンケートの方ですね。これの後半部分,他保険告知について若干御説明申し上げたいと思います。その最後のページの問2の(1)なのですけれども,そこから始まります。これは質問は,損害保険契約において現状行われているような他保険契約の告知について生命保険に導入することの是非について質問したのですが,これにつきましては,この表にありますように,「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」,これを合わせますと46.6で,「そう思わない」が51.1ということで,肯定,否定,両方の意見がきっ抗するような状況で,若干否定意見の方が多いかということだと思います。  次に,問2の(2)です。それでは,あなたは加入している生命保険契約の特約を正しく告知できますかという問いなのですが,これにつきましては,「できる」,「ある程度できる」と,これを足しますと55.3ということで,半分以上の方がある程度できる。できるという意味ですが,自信を持ってできるという方は29.1%,3割弱ということのようなのですね。これにさらに団体保険とか家族とか,そういったもの,あるいは特約なんかも聞けば,これはもっと答えられないという人の方が多くなると思います。  私ども生命保険会社としましては,他の保険契約を告知させて,正しく告知できなかった場合に契約を解除するというのは,契約者にとって負担を強いることになるのではないか。できれば保険会社の中の制度,先ほど御説明がございました契約内容登録制度ですね。これが私どもの業界では機能しておりますので,そこのところは契約者に負担を強いる必要はないのではないか。このアンケート自体はつたないアンケートですけれども,多少なりとも議論の参考にしていただければと思います。 ● ○○委員。 ● 先ほどの問題も今回の問題も,ある意味では今度の保険契約法,共済契約法の改正の根幹部分にかかわるものだと思うので,非常に重要なことだと思うのですけれども,私の意見は,この(5)については,これとはちょっと違う,しかし整合的な案というのがある。それから,(後注)のところは,これは反対するという意見なのです。まずは実務も研究者も争いがないというのはどこなのかというと,まず引受け告知。告知義務の方で告知する対象というのが,危険率を算定し,引受けの可否を判断し料率を定める。ここは争いがないのですね。それから,大審院の判例,これはどう見るかにもよりますけれども,料率算定以外の要素も告知義務の対象になるということまでは言っている。例えば解約されたことがあるかと現実的に調べると,生保の会社でも解約されたことがありますかと告知義務で聞いた例もあるようですし,損保は,ここに書いてありますけれども現に聞いている。ここまで来ますと,その原因としてたくさん契約があったから解除されたということも理論的には入っているわけですね。  3番目に,これは判例が苦労しているところで,他保険告知の他保険契約による解除というのは広過ぎると。何というのですか,いずくんぞ牛刀を用いんというか,戦う相手にしてはちょっと武器が大き過ぎる。いろいろな要件を絞ろうと,これで判例は非常に苦労しておられるわけですね。ただ,絞り方が私は,どうも多くは違っているのではないか。どういうふうに絞るかというと,やはり他保険の中にもいろいろあって,当社に1000万円入ってくれました。ほかは,例えば生命保険ですね。傷害保険1000万円に入っているだけというのだったら,これは告知されても別に拒否はしない。引受けにも関係ない。これは重要な事実ではないのですね。しかし,ふたを開けたら30件で20億ほかにありました。これこそはまさに言ってもらわなきゃいけないことだと。だから,この他保険事実の他保険の内容をやはり二つに分けて,重要なリスクに関係するもの,これは告知義務の中に入れる。それから,これから検討する通知義務の中に入れる。あと特別解約権にも少し関連するのかもしれませんが,そういう形。私だったらD案と言いたいのですけれども,そういう形にして,この他保険告知に関する今の損保の約款というのはもうちょっと考え直さなきゃいけない。  それから,生保さんと損保さん,これはどうやって両立させるか。基本的には消費者契約では質問対応義務にしてしまうわけですから,生保さんはお嫌であれば入れなきゃいいのだ。損保さんは入れるという形で,つまり,この質問応答義務にしたことがここで効いてきまして,だから一貫した形でできるのではないか。だから,そういう形のD案を私は提案したいと思うのです。  それから,(後注)の保険金不法取得目的の保険契約は無効であると,これはまさにモラルリスクと戦うという点は,そのとおり必要だ。ここは価値観を共有しているわけですね。ただ問題は,戦い方がバランスがとれているか。戦ったつもりで,保険契約の知識はないけれども何ら悪意はない人にとってか烈ではないか。なぜこんなに反対するかという,その反対の基準をお示ししないといけないと思うのですけれども,これはモラルリスクと戦うときにいろいろなスペクトラムがあると思うのです。それはまず,一つは契約は有効だと,その有効とした上で,故意とか故意免責とか重過失免責と戦う。次に,今度は解除というレベルで戦う。だから,契約はやはり一応存続していて,解除という方でいろいろな解釈が出てくる。効力を制限したり工夫ができるわけで,契約は残す。そこで告知義務違反で解除とか通知義務違反で解除という,特別解約権は私はやってもいいのではないかと今思っていますが,ただ,そういうのでやろうと。どうしようもない場合は,これは民法第90条の公序良俗違反で無効にする。何といっても約款は会社が作っているわけで,作っておいて,何かちょっとあったら無効にするというのだったら,これは全体としてフェアではないのですよね。約款を見ていただくと分かりますが,この不法目的の約款の手前に詐欺の規定があって,民法上は詐欺は取消しなのですが,無効になっている。これはもう公開されているから言っていいと思いますが,業界の方も告知義務の時効のところをかいくぐる。又は詐欺のところも,いろいろな取消しの場合の規定をかいくぐるというのが目的なわけですけれども,それはやはり問題であって,直感的には不法取得目的が立証できるなら故意を立証するという,まずそちらでいってくださいと,こういう話ではないかと私は思うのです。そういう基準を前提として,これには反対すると申し上げたいと思います。 ● ○○幹事。 ● 私は,(5)に関して,他保険契約の存在の告知に関しては,これはどちらも特段の規定を設けないということと,それからあとは,(後注)についても今のところ特段の規定を設けないでいいのではないかなと思っております。と申しますのは,一応保険法というか,保険契約についても,基本的には民法の原則から余り外れないように,出発点はそこに置いた方がいいのではないかなと思っております。それで,保険契約に特有な調整というのは必要だと思うのですけれども,その場合に,保険契約者の方に告知義務を課すとか,それを自発的申告義務か質問応答義務かにするというところで,質問応答義務の方がいいと思うのですけれども,その場合には保険の引受けという,保険者の方で相手方にしか情報がないものをいかに情報を取得して,その保険料率を適正に定めるかということの情報取得が難しいから,保険契約者--本来であれば対じする相手ですので,自分に不利益なことを言いたくないというのが契約の原則だと思うのですけれども,それを相手方に告知させる義務として課して,しかもその保険契約者というのはなおかつ素人であることが多いので,どんなことが保険者としては保険料の算定に必要かということを,まず保険者側で例示しなさいというふうにして,質問応答義務にするというのが流れかなと思っております。  それで,その中で質問応答義務にして,質問すればすべて重要なことかというのは,また次元の違う話ですので,個々の事由が重要かどうかという判断が出てきて,その場合に,では,他保険を契約しているということは重要かどうかと考えた場合に,生命保険さんと損害保険さんとで扱いが異なるということでも一つの事例かと思うのですけれども,他の保険を契約していることが直ちに,それを知っていたら契約は締結しなかったよというほどに一律に重要とは言えないことだと思いますので,一般法である基本法である保険法に,その他保険契約についての告知義務と,その違反の効果として解除というのを規定するのは,ちょっと問題かなと思っております。  というのは,相手方に情報が偏在している,契約締結時においても偏在しているし,それから事故が発生するまでの事情もずっと相手方に偏在しているから,事あれば保険契約者の方に情報を提供しなさいという義務を課すのは当然だと思うのですけれども,その情報をもらうときの保険者の必要性というのは,保険料の算定だけではなくて,保険金を支払う段階になって,損害保険契約の場合には損害額までですよということがありますので,その時点で知りたいということもあると思うのです。というわけで,その事実を知らなければならないというのが,解除させなければならないようなニーズではないということがあると思います。  それと,(後注)で設けなくてもいいのではないかと言っているのは,告知をさせて,保険契約というのは一般の売買とか債務引受けとかとは違って,多少射倖性があるというか,賭博ともぎりぎりのところもあり得るので,そうすると,保険契約者の方で勢い公序に反するようなこともしかねない。であれば,その徴表というのをできるだけあらかじめ出させるようにするためには告知義務とかを課す。他にもたくさん掛かっていますねというのを告知させるということも,告知義務として課すことを損害保険会社の方ではされてもいいと思うのですけれども,そこから公序違反という事実があるのであれば,それは民法第90条で対策をとればいいのではないかと思っている次第です。  以上です。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 今,いろいろ議論がございましたけれども,私の考えでは,今ちょっと御心配になっている部分は,要するに保険会社の引受け基準みたいなものも他保険の存在については出てくるかと思うのですね。たくさん他保険があるというケースですと,保険料もそれに応じてもちろん高くなるわけですので,むやみやたらとたくさん保険料を払うほどの多額の契約をたくさん持っているということになれば,これはある意味でも相当保険に突っ込んでいて,ひどい例ですと自分の収入を超えるような,あるいは収入に匹敵するぐらいの保険料を払い込んで他保険を維持している。これは,要するに保険金をねらって早晩事故を起こすことを予定しているからそういうことがやれるわけで,そういうケースについて,保険会社がおよそ保険契約を引き受けられるはずもないわけですね。ですから,そういうケースについては,この告知段階で他保険があるかないかということを聞くということはワークするわけですね。  一般の善意の多くの契約者というのは,そんな無謀に幾つも幾つも保険契約を締結するものではありませんし,そのレベルの契約について,およそ保険会社サイドも他保険の告知義務違反で解除するということはお考えになっていないだろうと思うのですね。すなわちそれは,一般の保険会社としては,要するに引受け基準の範囲内に入っているということですので,他保険の告知を聞いたとしても,それによってよしんば告知漏れがあったとしても,通常の生活で保険料を払える範囲の契約を付けているという人たちの契約で,他保険の告知義務違反を問うて解除して保険金を払わないという,そういう結論は一般にはちょっと考えにくいですね。したがって,やはり他保険の告知を求めたという事例で告知義務違反解除をもしするとしたら,やはりそれは異常なケースで考えられる。そうすると,異常なケースというのは,(後注)のところにありましたような保険金不法取得目的というのとオーバーラップしてくるわけですね。こういう異常なケースの撲滅対策の一つとして,こういう,後ほど出てきますような他保険の通知義務というのがありますので,それと(後注)の不法取得目的の保険契約の無効という制度,これらを全部組み込むということになると,相当防御手段が過剰ではないかという,こういう色彩も出てくるのですが,それでも規定としてこれを起こすかどうかという,非常に私も微妙なのですけれども,そのルール化がきれいな形でできるのであれば,やっていただければ有り難いなとは思っております。  それから,もう1点,不法取得目的の保険契約無効という,この規定につきましては,私は従来から設けてほしいと申し上げてきました。それは,この価値観が共有されているということであれば,公序良俗違反ということで,根こそぎその契約自体について無効ということになりますので,あえて規定を設けるほどのことはないと,こういうふうになるかと思うのですけれども,果たしてそうかというところが,ちょっと私自身まだ確証を得られませんでしたので,そういう角度から言いますと,一応保険金不法取得目的の契約というのは,やはり無効なのですよということを宣言していただいて,これは言ってみたら包丁とか,あるいはカッターナイフですか,ああいったものを不法に使うということを目的に買うというのと同様で,要するに民法上の理論ですと動機の不法になるのですかね。ですから,保険契約の中身自体がもちろん無効ではなくて,契約の中身は当然有効なのですけれども,その使い方がいかんというお話になる。その動機がいけないということになるので,そういったものは,やはり民法の動機の不法の議論の中でも必ずしもぴったり定着しているのかどうかというのがちょっと不安になる部分がありましたものですから,これは規定を起こしていただければ有り難いなと思いました。 ● ○○委員,どうぞ。 ● この件に関しては,ちょっと私はよく分からないのですが,例えば保険金の支払に上限がない定額給付の方の業界団体は,これを実際上不要だと言っていらっしゃる。焼け太りがあり得ない重複保険だったら按分で払う方の業界がこれが要るとおっしゃっている。どうも素人から考えると逆なのではないのと,大変そう思いまして,よく分からない。ここのところがまず分からないということなのですね。  それと,この危険測定とか危険選択とか,業界団体によって名前が違うのでとても嫌なのですけれども,危険選択に必要な部分で告知を受けるというのだったら,それはよく分かるのです。ただし,これに関して言えば,いわば,とてもはっきり言えばモラル対策という話ですよね。モラル対策でこれを契約の解除まで持っていくのだというのは,要件と効果のバランスからいうと,いかにも効果の方がでか過ぎちゃって,これはバランスが悪いのではないですかというのが素朴な議論でございまして,それからあと,実際上,では,保険契約者の方にこれを告知せいと言ったときにできるか。今,これだけ保険が複雑で,一つの保険でいろいろな分野をカバーしている保険さえあるのに,どれをどう書けというのか。ニックネームを書けというのか,認可名を書けというのか,どっちもできないでしょうけれども,そういう意味では,普通の人にそんなことができるのかという部分を考えると,大変過負担だという部分はそうだと思うのですね。そういうふうに考えれば,やはりさっき申し上げたように要件と効果のバランスが大変悪いですし,もしもモラルハザードへのことを考えるということで,この案が土台になっているなら,例えば他保険契約をどうしても本当に告知させたいという,そういうインセンティブであれば,ちゃんと告知をすると保険料を安くしますよとか,そういう考え方だってある意味ある。その方がよっぽど素直に,安くなるなら言いましょうかという,そういうインセンティブが働くのではないのかなというふうに,大変素朴なレベルで申し訳ないのですけれども,そう思っています。  消費者から見て,この現状は,一方の団体ではやっていないことですから,ここの分野について告知しろという,こういう規定が今度新しく入ったとすると,やはり今度ここの部分を周知徹底,国民レベルに浸透していくのはとても大変で,またトラブルの元になっちゃうのかなと考えます。 ● では,○○委員から。 ● 損害保険の中には,定額的に払うものと,それから実損てん補的に払うもの,両方ございまして,それから,実損てん補的に払うものの中も,一部定額的に払うような形にだんだん増えてまいりまして,損害保険の場合には代理店に契約締結権がございますので,非常に申し込んですぐに保険契約が成立するという利便性がある。例えば,先ほど○○委員のお話がありましたように,海外旅行に行くときにすぐ保険に入る。そういう面では非常にすぐれておりまして,そういう利便性を維持する上で,やはり事前に契約された内容が,ほかで既に保険契約があるかどうかをチェックするという情報交換制度がなかなかうまく機能しにくい。事前にはできないと。したがいまして,やはりこういう制度がないとうまくいかないのではないかなと私どもは思っております。  では,実際にこういうものを適用するのはどういう場面かといいますと,通常,例えば海外旅行傷害保険で2000万,3000万入ったからといって,それですぐほかの契約を告知しないからといって解除するというようなことはあり得なくて,これはやはり何億も入っている方々が,実際に何口も入っているという方がいらっしゃる。そういう方々についてだけ排除したいというのが,この制度の趣旨でございます。実際にもそういうふうに運用しております。  なお,告知義務の中にこれを入れてしまうという考え方もあるかもしれませんが,その場合には,因果関係不存在の特則が使われた場合には,結局これは保険金を払わざるを得ないということになってしまうと,本来こういうモラルリスクの人たちは排除できないということがございますので,やはり解除するのと同時に,既に発生した事故について保険金を払わないという仕組みを併せて設ける必要があると考えています。 ● ○○委員。 ● どうも,私がさっき言ったことが理解されていないなというのがよく分かったものですから,○○委員がおっしゃったこともごもっともで,具体的には,例えば傷害保険である会社が4000万円以上は引き受けませんと。それは告知のときには,当社とほかの会社,合わせて4000万円以上入っていますかという質問だけが重要な事実で,それ以外は,ある意味では,うそを言ったって解除するのはとんでもない話なわけですよね。だから,そういう限定された,例えば死亡保険で,うちは生命保険で3億までしかいきませんと,聞き方を,他保険契約を聞くときに,単に「ありますか」ではなくて,「合わせて幾らありますか」という聞き方をした限定したものだけなら,そういうのがまさにさっき言った引受けの可否に判断するものですから,それを告知義務のところに入れたって,通知義務のところに入れたっていいわけで,これは限定して,ですから,そういう書き方をすれば,○○委員の御心配も,普通の人は忘れたって全然問題にならないわけですよ。  このアンケートの場って非常に面白いもので,アンケートはもっと,これは--というのは後半の部分ですけれども,一般でありながら「できる」という人が50%を超えているのですね。本当に重要なのは何かというと,要するに結婚して子供ができて,家族のために保険に入りたい。要するに本当に保障が必要。そうすると,まず普通は自分が知っているのですよ。でも,例えばあなたは全部で5億入っていますかとか,4億入っていますかとか言われたって,もちろん入っていないよと,それはもう重要ではないという話ですから,だから,他保険の告知というときに,本当に引受けの可否に関連するものだけを対象にして規整すると,それで十分なはずなのですよ。これは学説,実務とも共通だと思いますけれども,損害保険で重複保険のことを調べるために必要だというときに解除までやるのは行き過ぎだというのは,これはもうだれもが認めていることなわけですよね。それとあと,因果関係の話がありましたので,これは是非話さなきゃいけないのですが,だから,先ほど○○幹事がおっしゃったような,本当に犯罪を犯そうとしている人にとっては,もうその人の立場になってみますと,保険が山のようにあるからそういう行為を起こすわけで,要するに,その基準が本当に,こういう一定の条件は他保険告知をしてくださいよと。それはモラルリスクそのものだというような場合には,その保険がなければ犯罪行為を行わないわけですよね。だから,これはなかなか微妙な問題があって,その部分だけは立法論としては外して,因果関係なしという立法論をするという方法もあります。そういう提案をしておられる方も,それも一例ですが,ドイツの少数説を○○委員の御本の中で紹介しておられますけれども,本当の明々白々のモラルリスクというのも,多分因果関係はあるという感じもするのですね。だから,ここはちょっと微妙ですが,でも,一番誤解というか話のポイントは,他保険で告知しなきゃいけないのは非常に限定して,その上でそれを規定を置くというのであれば,それは告知義務のところに入れたり通知義務に入れるのと同じでしょうと,こういうことを申し上げたいということです。 ● ○○委員。 ● 始めに,不法取得目的について,生命保険会社はどういうふうに考えているかということをお話ししたいのですが,この不法取得目的無効というのは割と新しく入ってきた規定でして,先ほど○○委員の方から若干偏った御説明があったと思うのですが,これは告知義務違反を免れるためにやるという,そういう例もありましたけれども,この詐欺無効の規定そのものは,約款に入ったのは明治の末からなのですね。これは民法の詐欺による取消しと違って,保険は大量に扱っているところは,そういったような理由があって詐欺は契約無効だということでやっているわけです。  それから,先ほど来出ています,なぜ他保険を告知させるかというと,多重契約の問題だと思うのですね。私どもが問題にしているのは,これを告知義務として入れるのは本当にいいのですかと。○○委員のおっしゃるような限定した,ちょっとこの原案と違うようなものにすれば,それはそういう別の考えもあろうかと思うのですけれども,そもそもこの保険金取得目的とか,そういったものの立証の間接証拠の一つにすぎないのですね。これだけでもって解除とか,そういうことはしないと思うのですね。やはり先ほども出ましたけれども,収入に比してとか,あるいは生活環境というか,それだけ本当に必要なのですかという,そういうところに寄り付くと思うのです。  ですから,私どもとしては,今の原案ですと,これは重要事実かどうかと。ほかのものは判例等も積み重ねてきて,絞って絞って,これは重要事実と推定されるというぐらいになってきたのですが,ここでいきなりまた他保険告知が入ってきますと,これは言っても言わなくても解除しませんと,そんな重要事実ってあるのでしょうかという話になりかねないのですね。そういう心配はありますので,私どもとしてはそこのところは,他保険告知については不要であると,そういうふうに考えておるわけです。 ● ○○幹事。 ● すみません。今,○○委員のおっしゃったことも分からないではないのですけれども,要するに登録制度の方で,やはりほかの契約があるかないかということは相当気にしておられるわけですね。これは結局契約の諾否に影響を及ぼす事実になっていますので,実質的には告知義務の中身と変わらないことを危険選択としてやっておられるわけですね。もちろんそれは一般の善意の契約者について,普通の保険料を払える範囲で契約を締結されている方の契約を,何も告知義務違反として解除するということを考えておられるわけではないし,特段のケースについての一つの防御策として,一般の他保険契約の告知義務の制度というものを考えているということかと思うのですね。  加えて,契約者,一般の人の方のという点では,この告知義務違反はやはり契約の諾否に影響を及ぼすような事実があったかどうかという点でまず切られますし,加えて,契約者側が過失で言わなかったという場合も,別にこれは告知義務違反に問われないわけですね。故意や重過失で言わなかったというケースだけですし,故意のケースはよほど深刻かもしれませんけれども,しかし,知っていても額が限られているというので言わなかったというのであれば,それもまた重要事実ではないということで,どんどん告知の対象から落ちて,要するに告知義務違反を問われる対象から落ちていくということなので,その規定自体があったとしても,それ自体はそんなに問題になるわけではないのですが,ただ,規定の作り方が大変難しいなという,それは重々承知しております。 ● ○○幹事。 ● 幾つかございますが,まず,告知義務があるかどうかということについて,ある程度金額が大きいような保険について,そもそも新しく保険に入るときに,それまでの自分の保険がどれぐらい付いていたかということを確認しないで買っていいか。売りに来られたときに,普通は自分が今までどういうものに入っていたかというのを見た上で,さらに必要かどうかというのはそこで判断があり得ると思いますので,そんなに慌ててばたばたと買うものではないだろうという,そういう商品については,特にその点は余り心配する必要はないと思います。  それから,登録制度との関係では,登録制度は5年しかデータを持っていないということとの関係が多少ありまして,短期間に集中して入る場合には,それはデータの更新の頻度が頻繁に更新されていれば,短期集中のものはそれで拾えますけれども,5年以上前のものと積算して合計でどうかということについては登録制度ではとれないので,これはやはりそこの限界はこの制度でカバーできるということになるかと思います。  あと,要件を結局どうするかということでありますが,引受け基準を超えている場合に解除権を与える。告知の対象はそれぞれの契約であるけれども,解除の要件としては引受け基準を超えているということが必要だろうと思いますし,保険事故発生前と後で要件を変えるということは十分考えられまして,保険事故発生前の場合は,先ほど損保側の方からお話がありましたように,登録してみたら非常に多かったという場合には,もうその段階でお断りするということは十分あり得るということだと思います。保険事故発生後にこれを立証する場合には,不正請求の疑いがあるとか,そういった場合に解除の要件を変えると考えれば整理ができるだろうと考えております。 ● どうぞ,○○委員。 ● 企業ユーザーの立場だとC案です。特段の規定を設けていただかないというのがいいかと思っています。  損害保険で事実上,保険約款で他保険のことについて告知をしているという事実が多いというか,それが基本であるということはそのとおりなのですが,そうではないケースもあるだろうし,今後,またそういうケースが増えるのではないかなというような予測も持っています。たまたま全部調べる余裕がなかったのですけれども,海外のプロジェクトファイナンスで,そのプロジェクト全体が担保になっている案件で,それに対して保険を掛けて,その保険をまた担保に入れるといったような契約の事例を見ますと,要は他保険なんて関係ないと。保険会社は全部払えと,むしろそういう規定振りの約款もあるようなのですよね。それから,日本の損保会社は立派な会社ばかりですから,皆さん,全く想定していないので,この場で言うのも皆さんに失礼かもしれませんけれども,保険会社の倒産リスクということも考えて,保険の保険というのを裏でこっそりとって,これはこっちの問題であってあなたの問題ではないでしょうというようなこともあり得るわけですよ。したがって,その他保険の内容をちゃんとそ上に出して,まさに先ほど○○委員の方から話があったように,保険契約の保険料の話とパッケージでするとか,そういう形でやれば契約の中に当然に盛り込まれることになるだろうし,そうではないポジションもあって,いずれにしても契約自由の原則でやるというのが企業のユーザーとしては望ましいと。したがって,一律に基本的に告知義務はあるのだというふうに決めつけた改正をしなくても,今まで現状問題がないのに何で変えるのだというような意味のスタンスで,本当に問題ない規律ができるのであればいいけれども,先ほど○○委員の方から話があった,将来のいろいろな新たな危険に対する新たな保険というような企業リスクマネジメントと保険との関係で,いろいろな保険のタイプができてきたことも考えると,やはり他保険が不告知解除というのは,どうもそれが当然だというふうなことは,余り企業ユーザーとしては受け入れ難いと思います。 ● では,簡単に。すみません。 ● ちょっと今,言いにくくなったのですけれども,前提が故意,重過失で今やっています。それに対して広過ぎる,あるいは効果に対して武器が多過ぎるということに対して,先生方がかなり言っていただいたのですが,○○委員が言ったのは,その実務で実際は調整していると。そういう意味では,要件論というのは御議論いただいていいかと思うのですけれども,ただ,やはり本当に悪質な--これは生保さんでもあるかと思うのですけれども,我々は基本的には損害保険と第三分野があればと思っているのですが,定額保険でも保険金額を低く抑えて,たくさんの数を一度に入ってしまうという,そういう悪質なケースもあるので,それを抑止するということではやはり効果があると思うのですね。ですから,武器が大き過ぎるというのであれば,本当にバランスのとれた使い方でいいと思うのですけれども,使えるようにはしていただきたいということと,それからあと,最後,すみません。(後注)についてはいろいろ御議論があったのですけれども,保険金不法取得目的ということに絞って宣言しているわけですので,やはり分かりやすさということもありまして,できれば宣言をしていただければと思っております。よろしくお願いします。 ● この辺り,いろいろ意見が出て,これはまさにいろいろな角度からの意見が出て,なかなか整理するのがまだ難しいような感じでございますが,今日はこういうように問題点を御指摘いただいたということで,この辺りは議論を取りあえず収めて,なお検討して次の段階でということにさせていただければと思います。  それでは,休憩前にもう1点,次は2の「(1) 保険料の支払時期及び支払場所」と,これに関連します次のページの「(2) 保険料不可分の原則」につきまして,併せて御検討をお願いしたいと思います。まず事務当局からお願いいたします。 ● それでは御説明いたします。  次に,保険契約に基づく給付に関する問題でございますが,始めに,(1)では保険料の支払時期及び支払場所について取り上げております。商法上,保険料の支払時期に関する規定はございませんが,実務上は一般に保険料の支払方法として,損害保険契約においては一時払と分割払があり,生命保険契約においては一時払のほか月払,半年払,年払があり,しかも払込期日の属する月の1日から末日までの間を支払期間とする支払期月という概念が約款により導入されております。  実務における保険料の支払時期の定めは保険契約ごとに異なるため,保険料の支払時期に関する特別な規定は設けず,約款の定めにゆだねるのが適当であるとも考えられますが,他方で,保険料の支払時期に関連する問題として,(補足)に掲げました,いわゆる責任開始条項ないし保険料領収前免責条項,すなわち保険期間が開始しても保険料領収前に発生した保険事故については保険者は保険金を支払わない旨の約款の定めについての規定を設けるべきであるとの考え方もございます。もっとも,この考え方に対しては,いわゆる保険料前払の原則は保険契約の本質から導かれるものではなく,保険者の支払能力の確保を目的とするものにすぎないから,責任開始の時期については約款の定めにゆだねるべきであるとの指摘がございます。  また,保険料の支払を怠った場合に,特段の意思表示を要することなく保険契約を終了させる失効や,失効から一定期間内であれば保険契約の効力を回復できる復活に関する規定を設けるべきであるとの考え方もございますが,この考え方に対しては,失効及び復活の法的性質について争いがあることや,約款の定めとしてその効力を認めれば足り,保険契約の終了事由として法定する必要はないことなどが指摘されております。さらに,保険料の不払を理由とする保険契約の解除の要件に関して,保険契約者保護の観点から,民法第541条の債務不履行解除の要件を強行規定化し,約款等によっても催告を不要とすることができない旨の規定を設けるべきであるとの考え方がございます。しかし,これらの考え方に対しては,あらゆる債務不履行による解除に共通する問題でもあり,保険契約だけに特別な規定を設ける理由を合理的に根拠付けることは困難であるとも考えられます。  以上のように,保険料の支払時期に関する規律を設けるかどうかを検討するに当たっては,これらの関連する問題につきましても併せて御議論いただきたいと思います。  次に,保険料の支払場所についてですが,当事者の特約がなければ,民法第484条又は商法第516条第1項により持参債務となり,保険者の住所又は営業所が支払場所になります。実務においては,一般に,損害保険契約における保険料の支払方法には口座振替扱い,年金扱い,団体扱いの三つがあり,生命保険契約においては口座振替扱い,集金扱い,送金扱い,団体扱い,店頭扱いの中から保険契約者が選択できる方式が採られているようです。このように,実務における保険料の支払場所の定めは保険契約ごとに異なるため,保険料の支払場所に関する特別な規定を設けず,約款の定めにゆだねるのが適当であるとも考えられますが,このような考え方につきまして御議論を頂きたいと思います。  続いて,(2)では,保険料不可分の原則について問題提起しております。保険料不可分の原則とは,保険契約が中途で終了した場合に,保険者は保険料計算の基礎とした単位期間である保険料期間全部の保険料を取得することができ,保険料期間のうち未経過期間に対応する保険料を保険契約者に返還する必要がないという原則をいいます。保険料不可分の原則の理論的根拠としては,保険料が保険料期間に基づいて算定されている以上,より短い期間に応じた保険料を算定することが技術的に不可能であるということや,保険契約者は保険者の危険負担に対する対価として保険料を支払うのであり,保険者の危険負担という給付は分割できないということなどが挙げられております。また,商法に明文の規定はございませんが,同法第655条の反対解釈などを根拠に,商法は保険料不可分の原則を当然の前提としているとの指摘もございます。しかし,近時では,保険料期間より短い期間に対応する保険料を算定することが技術的に不可能とは言えないことや,実質的な危険負担期間の長短を無視して一律に保険料期間全部の保険料を保険者に与えることは不公平であることなどを理由に,保険料不可分の原則を採用することについて立法論的な批判がございます。  そこで,保険法においては,保険料不可分の原則を採用したことを前提とした規定は設けないこととし,同原則の採否は個々の保険契約にゆだねるのが適当であるとも考えられますが,このような考え方につきまして御議論を頂きたいと思います。  以上でございます。 ● ありがとうございました。  この辺りについての御意見,御質問はいかがでしょうか。  ○○委員。 ● 生命保険会社の立場をちょっとお話ししますと,まず,支払時期,支払場所につきましては,基本的に立法化の必要性は感じていません。  それから,先ほど御説明がありました支払時期の関係ですけれども,払込期月という概念が導入されておりますが,その翌月一杯が今度は猶予期間ということになっていまして,さらにまた責任準備金のある商品につきましては自動貸付けという制度もあったりして,なかなか契約が安易に失効しないように取扱いをしているわけです。それは保険会社のニーズにも合うわけなのですが,そういったことで契約者保護には十分配慮していると考えております。  そしてもう一つ,失効予告通知はがきを出したり,あるいは失効した場合には失効通知はがきを出して復活を勧奨するとか,そういったこともやっております。  それから,保険料不可分につきましては,特に明示の規定は設けていただく必要はなくて,個々の契約に任せていただきたいとは思うのですが,年払であれば,その1年間に対応する保険料を頂くということでやっています。月払であれば,その1か月分をやっていますので,例えば15日に亡くなったから残りの15日分の保険料を返せとか,そういうのは保険数理上あり得ない話なのですね。  それから,私どもとしては日割り計算みたいなことはやっていませんけれども,それぞれについて払込年月という概念を用いて,それは前払ですから期始に払っていただくのですが,それによって解約返戻金なんかは計算しておりますので,必ずしも不公平ではないと考えております。 ● ○○委員。 ● ほかに御意見がなければ,○○委員の御説明にありましたように,生保会社はきちんといろいろやっておられる。特にこの10ページの一番下のところの契約がなくなってしまうところ,これはとても消費者にとって,非法律家の契約者にとって重要なところで,催告がない。諸外国には,これは必ずやれと言っている法律もあるわけで,しかし,学者はどう考えているかというと,本当はそう言いたいのだけれども,業界の御説明を伺うと,どうもいろいろ,仮に払われなくても貸付制度があったり,後でまた取り消したら元へ戻しますとか,いろいろやっているから大丈夫だと。それはそれで一応飲み込もうと思っているのですが,問題は,損害保険会社,生保会社もいろいろ新規参入される会社もあるし,共済でおやりになっているときに,つまりそういう実質的に問題がないという状態が,今本当に全部あるのか,これからも保障できるのかという問題で,その1点だけ。もしその1点がないと,これはちょっと○○委員に伺わなきゃいけないのですけれども,催告なしとしてしまっていいのかと,こういう話だったと思うのです。その点だけ,重要だと思いますので伺いたいと思います。 ● この点は,先ほど生命保険の方は督促はがき等を出している。これは業界ベースで大体励行されているということなのですか。損保さん,あるいは共済さんの方は,その辺りはいかがなのでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● 長期,短期ありますけれども,基本的にはやはり短期が主流の,例えば生協系の共済なんかは猶予期間を当然設けておりますけれども,応当月に入らない場合は必ず通知をして,それは厳密な意味での催告に当たるかどうかというのはありますけれども,必ず通知をして納入をしていただく。それが一定の期間支払がなければ契約としてなくなるという仕組みで,長期の場合は確かに貸付けという制度がありますので若干違いますけれども,いずれにしても,その種の手続というのは共済の場合はほとんどやっていると思っています。 ● ○○委員。 ● はがきで対応しております。 ● 損保さんも同じようなことで……。これも昔から議論があって,学者は,○○委員が言われたように,催告を法律で義務付けるというのを昔から言ってきているのですけれども,なかなか技術的に難しい。これもあって今のような実務ができて,どうなのでしょうか。○○委員,余りこういう面で,今大きな問題というのは。 ● 催告書が届かなくて知らないうちに失効したとか,それから,損保さんだと分割払で,生保さんだと例えば月払の場合に,翌月の末までだったのに翌々月の末までに延びたり,技術的にしているのですけれども,それでもやはり分からないでというトラブルはそれなりに一定数ございます。やはりそういうときに,消費者側としては,それを法律上の催告として見るかどうかという,そういう議論を別にして地べたの議論で言えば,例えば簡易書留で送ってくれとか,分かるようにもっと際立つような方法で送ってくれとか,そういう形で保険会社に申し上げるのですが,保険会社さんの方では,もちろんコストがかかるというお話がございますし,簡易書留を送ったからといって見ないでしょうみたいなことを言われたりします。言われたことがあるものですから,口が悪くてすみません。そういうようなお話がありますので,そこら辺はこういう形で取り上げていただいて,例えば催告をちゃんと法律的にしなさいという形でやっていただくのは歓迎でございます。 ● この辺り,ほかに御意見ございませんか。  どうぞ,○○委員。 ● すみません。保険料不可分の方もよろしゅうございますか。  保険料不可分の方に関しましては,技術的な問題ということがございましたけれども,現実的にお支払をするときに,月払で払ったり分割払で1か月ベースで払っております。日割りで返せとは申し上げませんが,やはり月単位では,是非未経過分は御返還いただきたいと思っております。 ● 生命保険。 ● 生命保険の方も損害保険の方も。 ● 両方ということですか。 ● はい,両方でございます。 ● どうぞ,○○委員。 ● 個人分野の保険,ごく一部と言うと違うかもしれないのですが,基本的にはそれで構わないのですが,生保さんと同じようなことで,ちょっと説明が難しいですが,リスクが偏在している商品があって,具体的には一番分かりやすいのは組立工事保険なんかですけれども,それを6か月契約でやったときに,6か月間,リスクはずっとあるのですけれども,最初の方に物すごくリスクが偏在しているとか,そういうものがありますので,そういう形の保険の場合にはお返ししていないとかというのがあります。ですから,そういう意味で,不可分則が--今の不可分則という言い方もあるのでしょうけれども,不可分則がなくなったからといって,全部保険料の濃さが違うというような言い方をしたらいいのかもしれませんけれども,本当に日割りで済むものと済まないものがごく一部ですけれどもまだありますので,それはまだ不可分則を適用するというか,そういう形の考え方が残るような余地は与えていただきたいと思っております。どう法律を書くかだと思いますけれども。 ● ○○委員。 ● この先ほどの催告の問題なのですけれども,以前に判例評釈を書いたことがあって,その後,実務は改善されているとは聞いているのですけれども,それでもなお,こういう口座振替方式で本当にどういうときに失効してしまうかというのは,必ずしも契約者に分かりにくいことがありますので,そういう場合を考えると,やはり催告が必要な場合があり得るのではないかと考えております。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 催告が必要な場合はあると思いますし,それから,民法でも規定されていて,それを任意とするか,それとも片面的な強行規定とするかという議論もあると思うのですけれども,その場合に,この問題提起でよろしいのでしょうか。保険料の支払時期に関する特則というところ,これに関連する議論だとは思うのですけれども,できれば片面的な強行規定というのを設けた方がいいと思うのですけれども,ちょっとここにストンと落ちないかなというのが疑問です。 ● おっしゃるとおりだと思うのですが,関連するということでここで挙げたということだけの話でございまして,別問題といえば別問題だろうと思います。問題の設定の仕方としては,○○幹事のおっしゃるとおりかと思います。 ● 一応ここで御議論いただいて結構ですので。  この点も,今日のところは割と催告というのをもう1回考えた方がいいのではないかという御意見があったと思いますので,なお少し考えてもらおうかなと思います。不可分の方は若干細かい問題の御指摘もあって,それはなお検討してもらおうと思いますが,大きなところでは,こういう原則はもう規定しないという,あとは合理的な契約実務に任せていくと,そういう辺りでよろしいですか。  どうぞ,○○委員。 ● 不可分原則を緩和するという方針でいくと。実際,消費者はそれを望んでいますから,これは強行法規がうんぬんということではなくて,もう後戻りはできない。ただ,保険数理上,今の緩和というのは,要するにあたかも分割できるかのようにお金を集めて払っているだけですから,これは余り突っ込まなくて,とにかく不可分原則が緩和して,消費者の方に--これは企業物件は,衛星保険とかいろいろありますから,ちょっと別でしていただいてもちろん構わないのですけれども,消費者分野で緩和するということだけ共通意識があれば,それでいいのではないかと思います。 ● いろいろな保険があるというのが今日のお話にも出てまいりました。そういうところを踏まえて,なお検討してもらいたいと思います。この辺り,以上でよろしいでしょうか。  それでは,時間が大分たちましたので,ここで休憩を入れたいと思います。           (休     憩) ● それでは再開させていただきたいと思います。  次は,11ページの「(3) 消滅時効期間」のところでございますが,併せまして12ページの(後注)にも差押禁止というふうな事柄が出ておりますので,便宜上これについても併せて事務当局より御説明をお願いいたします。 ● それでは御説明いたします。  次に,(3)では保険金請求権や保険料請求権等の消滅時効期間について問題提起しております。商法第663条は,保険金の支払請求権及び保険料の返還請求権の消滅時効期間を2年と規定しており,同条は,同法第683条第1項により生命保険契約にも準用されております。商法が保険金請求権について商行為性を有しない相互保険を含め,5年の消滅時効よりさらに短い消滅時効期間を定めた理由としては,一般に,長期間経過後に保険金請求を認めると,保険事業の円滑な運営及び保険者の財産状態の明瞭性を害する結果になるということが挙げられております。現行の保険契約の約款では,この消滅時効期間を定めるのが通例のようであり,損害保険契約については2年,生命保険契約については3年と定められているのが一般であり,傷害・疾病保険契約については一般に損保会社が行うものについては2年,生保会社が行うものについては3年と定められております。また,共済の約款の中には2年とするものと3年とするものがあるようです。  消滅時効に関する一般論として,法定の消滅時効期間を延長する合意は,民法第146条により時効完成前の時効利益の放棄が認められないことから無効であるとの指摘がございます。他方で生命保険契約の約款には,保険者自らが3年間の保険金請求に対応することを認め,商法第663条の消滅時効期間を保険契約者に有利に変更するものであるから,その効力は否定されるべきではないとの指摘もございます。これに対して,法定の消滅時効期間を短縮する合意は一般に有効と解されておりますが,保険金請求権の権利行使期間を不当に短くする約款の条項については,消費者契約法により無効となる可能性があるのではないかとの指摘もされております。  そこで,本文の①では,保険金請求権及び保険料相当額の返還請求権の消滅時効期間について,A案からD案まで四つの考え方を提案しております。A案は,すべての保険契約について3年とする考え方で,B案は,いわゆる物保険と人保険に分けて,物保険については2年,人保険については3年とする考え方,C案は,生命保険契約において被保険者と保険金受取人が異なる場合に,保険金受取人が被保険者の死亡の事実を知らない場合があることを考慮し,生命保険契約以外については2年,生命保険契約については3年とする考え方,D案は,すべての保険契約について2年とする考え方です。  本文の②では,保険料が日常的に反復,継続して発生するものであり,その権利関係を早期に確定する必要があることから,現行商法と同様に保険料請求権の消滅時効期間を1年とする案を提案しております。  (補足)では,保険金請求権の消滅時効期間の起算点について,一般原則に従い民法第166条第1項が適用されることを注意的に記載するとともに,(注)では,本文の規定を任意規定とするか,強行規定--ほかに我が国においては用例は見当たりませんが,特に保険契約者に不利な変更を許さない片面的強行規定とすることなどについて問題提起しております。  保険金請求権等の消滅時効に関する御説明は,以上のとおりでございます。  続いて,(後注)では,保険金請求権について一定の範囲内で差押えを禁止すべきであるとの考え方について問題提起しています。現行法上,簡易生命保険法には保険金請求権の差押禁止の規定が設けられているものの,商法上の保険金請求権を差押禁止とする規定はもちろんございませんので,民事執行法第152条の差押禁止債権に当たる場合を除き,その差押えは禁止されないことになります。この点については,立法論として,特に生命保険契約や傷害・疾病保険契約については生活保障等という性質を有している場合もあることを重視し,一定の範囲内で差押えを禁止すべきであるとの主張がされています。もっとも,健康保険や介護保険等の公保険とは異なり,私保険の分野においてこのような差押禁止を認めることの当否についての議論の余地があるほか,一定の金額の範囲内で差押禁止とするのであれば,その額の根拠が問題となり,また保険契約が複数締結されている場合には,どのようにして差押えが禁止される範囲を一定額の範囲内にとどめるのかを執行実務上の観点から検討する必要があると考えられます。また,生命保険契約には資産運用としての性質等を有するものもあるとされており,そのような契約に基づく保険金請求権について差押禁止を認める必要はないと考えられるものの,生活保障の性質を有する契約との区別も困難を伴います。  他方,債権の差押えに関して,生活保障等を図るための制度としては,民事執行法第153条の差押禁止債権の範囲の変更の制度があり,執行裁判所は申立てにより,債務者の生活の状況,その他の事情を考慮して,差押命令の全部又は一部を取り消すことができるとされています。そこで,これとは別に保険法において差押えを禁止する必要があるかという観点から検討する必要があると考えられます。  以上の点を踏まえ,(後注)の考え方について御議論を頂ければと思います。  以上でございます。 ● ありがとうございます。  それでは,まず時効の点から御議論いただきたいと思います。  ○○委員,どうぞ。 ● 今,損害保険全般につきましては,商法第663条に従いまして時効期間は2年ということで実務が定着しておりまして,特段の問題は生じていないと考えております。また,自動車保険のように,いわゆる賠償責任保険,車両保険,それから,それだけではなく搭乗者傷害保険という傷害保険的なものも組み合わされた保険につきましては,いわゆる損害保険と傷害・疾病保険,両方にまたがるような,そういう商品になっておりますので,やはり一つの保険の中で同じ基準で行うというのが実務上適切ではないかなと思っております。現在,2年で回ってやっておりますけれども,これを改めて3年にするということの必要性は,私どもは特にないのではないかなと考えております。  以上でございます。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 期間と対象と二つについて,ちょっと述べさせていただければと思うのですけれども,まず期間の方ですけれども,私ども,先ほどの御説明にありましたように3年ということでやっております。これ,消費者,顧客有利ということでやってございますので,そのことについて継続できるような形での法制をお願いできればというのが1点でございます。  それから,対象なのですけれども,事務当局の案では保険金請求権及び保険料相当額の返還請求権ということで限定列挙されているのですけれども,そこに記載された権利以外にも,例えば解約返戻金の返還請求権だとか配当金の請求権,あるいは保険料払込免除請求権といった権利もございますので,対象につきましては保険契約に基づく請求権が対象になるような形で表記をしていただければと思ってございます。この2点でございます。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 共済の場合は,いわゆる生命保険分野,損害保険分野,両方やっておりますので,その種類によって期間を分けるということは非常に契約者,組合員にとっては分かりづらいということがありますので,2年がいいのか,3年がいいのかというのは,契約者有利,合理的な理由がつけば延びるということは可能かと思いますけれども,期間についてはいずれにしてもここで挙げられておりますけれども,2年ならば2年,3年なら3年と考えていただければと思います。併せて,当然,いわゆる第三分野の問題もありますので,それのことも勘案しますと,分けるというのはちょっとどうなのかなと。それが不可能であれば,かなりの任意性を持たせていただくということで検討ができないだろうかと。基本は合わせるということが基本だろうと考えております。  以上です。 ● ○○委員。 ● これは生保と損保でまた意見が違うので難しいところなのですけれども,やはり根本に立ち返って考えると,民法の先生がいらっしゃるから,民法の方の議論を我々が知らないだけなのか,私が知らないだけなのか,基本的に2年の商法の時効を3年にするのは民法に反して無効かもしれないというところがあって,これは強いものから弱いものに対して時効の利益を放棄するということを無効とはやはり言わないのだと。実際実務では,対等の者同士では民法の規定を無視して契約で時効を延長しましょうとか,又は我妻先生の説があるから,既経過期間だけ放棄しましょうとかいって何とかやっているわけです。そういう意味で,生保が3年おやりになったのは非常に敬意を表したいと思うのですけれども,何かいろいろ聞いてみますと,時効になったものでも,両業界でも実際は時効は主張されない。時効を主張されないなら,どっちか長い方に合わせたっていいのではないかと。でも,それはいけないという議論があるかもしれません。でも,今,○○委員が言われたとおり,消費者からすると,少なくとも同じ種目で時効が違うのは,やはりこれはあんまりではないか。これはおっしゃるとおりだと思うのですね。  ですから,私の案は,第1案は両方3年にする。しかし,もっと根本的な解決として,民法の特則として,消費者契約だけですけれども,保険事業者,共済事業者は保険契約者,被保険者,保険金受取人に対してあらかじめ時効の利益を放棄することができると,だから民法の反対に書く。そうすれば,取りあえずは2年,3年おやりになって,うちはいいよというところは延ばして4年にしたっていいわけですよね。これからのニーズに対応するという観点がありましたけれども,例えば年金保険,介護保険で途中で払われた支分権,これは時効にかかるっておかしいではないかと。だから,保険契約存続中は時効の利益を主張しませんと,こういう契約だって私はいいと思うのですよ。だから,民法の方がそういう形で納得していただけるのであれば,要するに,取りあえず第1案は3年で一緒にしていただく。  第2案は,現状のままでそういう時効の利益を放棄できる。それでいろいろな商品設計,特に介護,年金はそうだと思うのですけれども,そういう設計ができるように民法の特別規定を置くと,こういうのがいいのではないかという主張です。 ● 今の○○委員のお話ですけれども,いろいろ,この時効の利益を放棄できるようにするという話で,その対象をいわゆる消費者契約に当たるような保険ないし共済契約に限るというお話かなと今お伺いしたのですけれども,民法の特則というか,民法自体ですべて抜本的にやるということであれば格別,保険契約とか共済契約に限って,その辺について消費者契約に相当するものについてそういうものをするということは,我が国の私法の体系ではないですけれども,なかなか技術的に,第一感として難しそうな予感がしております。 ● 問題は,非法律家というか一般消費者というのをどう書くか。企業,法人格又は法人格なき社団で,かつ商人ではない者とか,いろいろ工夫はする必要があるかもしれません。  それとあと,最高裁の15年の判決,消滅時効期間の起算点に関する判決では,これは3年なのですね。でも,最高裁はそこを職権で調査しないで,それはそれで有効だという前提で判決しているわけで,これは工夫して逆立ちしてもできないというなら,それはあきらめますけれども,私はそういう規定を工夫してもいいのではないかと思っているのですが。 ● 私が申し上げたかったのは--申し訳ございません。申し上げ方がよくなかったのかもしれません。保険とか共済に限ってそういうことをやるということについては,なかなか難しいのではないかという趣旨でございます。 ● でも,いわゆる消費者契約で優越的な地位にある者と,法律的な知識がない者の間でそういうことをやるということ自体,類型化してやることができないというのはよく分からないのですが。 ● 今,○○幹事が申し上げたのは,○○委員のお考えを法制的に貫こうと思えば,例えば消費者契約についてはという仕切りでやるべきであって,消費者契約のうちの保険契約だけはというのは日本の法制実務からするとなかなか難しいのではないかということを申し上げたのだと思います。 ● そういう意味であれば分かりますが--分かるというのは,そういう御主張の内容が理解できるということです。 ● ○○委員,どうぞ。 ● ○○委員がおっしゃっていただいものに屋上屋で言わせていただければ,おっしゃっていただいたのは大変面白い着眼点だというふうに思わせていただいて,そういう方向で,もしも本当にできるのであれば,それは一つの方向だなと思うのですが,取りあえず私がここのところで申し上げたいのだけ申し上げれば,保険金請求権と,それから保険料相当額の返還請求権が並んでおります。保険料相当額の返還請求権というのは具体的に何を言っているのか。相当額という言葉がよく分からないのですが,ざっくり保険料なのかなとか思いますけれども,そこの部分で言いますと,例えば銀行員と一緒に行った融資型の変額保険のトラブルとか,現状,銀行窓販で売られている変額個人年金保険のトラブルとか,実にたくさんございまして,それについて時効をこの期間で2年,3年というもので仕切られると,なかなかその辺の説明義務がちゃんとつくされていなかったことに気付いたのが結構遅くて,もたもたしている間にというお話がございまして,そこら辺の仕切りだけでも,普通の商事の消滅時効の5年という方向で,何かそういうことがおできにならないのかなと。そういうふうにしていただけないかなとは思っております。 ● この保険料相当額というのは,今のところどういう……。 ● これは現行法にもあるものでございまして,最終的にこの保険料相当額の返還を要するという条文が立つのであれば,これも入るし,立たないのであれば入らないというだけの話でして,これは現行法をそのまま書いただけでございます。 ● ○○幹事。 ● 私も,2年か3年か,どっちかにもう統一すべきだと思うのですね。B案,C案というのは,先ほど御主張されましたように,ちょっとちぐはぐなことが起こりますので,AかDかという話になるかと思うのですけれども,その前提として,先ほど少し御指摘がありましたが,保険料積立金の返還請求権ですとか解約返戻金の返還請求権の消滅時効と合わせて2年ないし3年とお考えだという,この前提でお話ししてよろしいわけですね。 ● 積立金については,本日の最後の方に出てくるのではないかと思いますので,そこで何の規定も設けないという考え方も提示しているものですから,そちらの結論を見ないことには……。ただ,設ければ多分,今,○○幹事がおっしゃったようなことになるのではないかと思います。 ● 研究会の取りまとめの方では,一応これを同じ期間とするとやっておりましたので,別に論点を分けられたということですか。分かりました。  それで,私は,できたら3年の方がよろしいのではないかとは思っているのですけれども,2年ともし定めた場合は,生保側の今の実務がちょっとちぐはぐになるというような面が,現状そのままということになります。法律の理論構成としては,約款で3年と定めた以上は生保側としては3年までは時効を主張できないという,信義則上そうなりますよということで裏付けるしかないのかなということになってしまいそうなのですけれども,自分が言っておきながら違うことはできませんよという,いわば禁反言的な信義則ということになるかと思うのです。それで生保側が2年でもいいのですよと言われるのであれば2年でもいいのかなと思いますけれども,できれば長い方が契約者の保護には資するので,3年でいければいいのではないかなというのが今の感想めいた意見でございます。 ● 3年と一律に決めちゃうと,損保の実務で2年というのは,これはただ法定期間を短縮することになるので,それができるのかという問題があり,逆に2年と法定しちゃうと,今の生命保険のように3年と延ばすことができるのかと。これは保険の分野では従来から議論しているのですが,一般的には民法の話になるので,ちょっと民法の先生方,何かその辺り,御感触はいかがなのでしょうか。  ○○幹事から。 ● 時効の期間を特約によって延長したり短縮したりできるかという一般論については,先ほどの時効の利益をあらかじめ放棄できるかという問題があり,他方で権利の放棄という問題をどう考えるかということがありますので,短縮と延長するのとで少し事情は違うということだと思います。  消費者契約性ということを除けば,本来でいうと延ばす方がまずいということになるわけですが,今回の生命保険契約の場合に,では,約款が直ちに無効だと考えられているかというと,まさに消費者保護になるということで,恐らくは問題はないだろうと考えられているというのが現在の民法の時効の話としての理解だと思いますけれども,一般には債務者から時効の利益を奪うのは,これが逆に貸金業だったりしたときに,そういう特約を置いておかしいのはもう明らかだろうと思いますので,これは立場が逆だからこそ有効と認められるのではないかという議論があるところですが,他方で,時効制度自体が何のためにあるかと。当事者の処分可能性のあるような制度と考えたらいいのか,それとも裁判所のサービスを受けられるような公的な意味を持った期間と考えるべきなのかという話もございますので,そういうことからすると正直難しい問題であって,この場面でこれが無効であるとか,あるいは信義則を介して対処されているということなのかもしれません。  先ほどの御提案の中で,消費者契約一般という形ではなくて,保険や共済に限ってあらかじめ時効の利益を放棄できるというような規定を置くというのは,確かに一つのアイデアではあると思うのですが,既に御指摘があったように,なぜ共済だけとか,なぜ保険だけという問題を抱え込むほか,単純に期間を2年であるところを3年にするから,さらにあらかじめ時効の利益を放棄するということになりますと,まさに民法の規定に正面から違うものを置くということですので,果たしてそれ自体は同じであるのかということも気にはかかっております。  個人的な意見を申しますと,私自身は実は複雑で,非常に問題であるといわれていて,実際に動かないということであれば,それはもうあきらめた方がいいとは思うのですが,民法自体,短期の消滅時効というのは1年,2年,3年といろいろ用意しておりますし,損害保険の性質と生命保険の性質がやはり違うとか,期間なんかもかなり違ってくることを考えると,時効期間が違うというのは,それ自体は決しておかしなことではないとは思っております。ただ,複合的なものがあったり,かえって誤導を招くということであれば,それは望ましい法制度ではないだろうということは理解しておりますけれども。 ● ○○委員,何か。 ● 論ずべきことはすべて○○幹事が述べていただいたのですけれども,解釈論的には対応は十分可能なのだろうとは思っているのですね。時効の利益をあらかじめ放棄することはできないというのは,債務者に債権者が強い立場で無理強いをすることは許さないということですから,このケースの場合には,そういう意味ではまさに強い人がサービスで時効の利益を放棄しているケースですから,民法の制度趣旨に照らして,それに抵触するということはないのだということ。それから,現実に時効を主張さえしなければ,時効を援用しなければそのまま,時効期間は経過していても幾らでも債務は履行できるわけですから,解釈論的には十分に対応できて,そんなに難しく考えなくてもまあまあ大丈夫だろうと一応思っています。立法については,そういう○○委員の御提案のような立法をすること自体は考え方としては否定されないけれども,法制上のいろいろ難点があるというのは,○○幹事や○○幹事のおっしゃったとおりだろうと思います。 ● ありがとうございます。大体問題点というか,方向性がある程度見えてきたのではないかと思いますので,これを踏まえてまた次の段階で検討してもらいたいと思います。  では,(後注)の差押えの辺り,何か御意見ございますでしょうか。一応これはなかなか難しいのではないかという御説明だったと思いますが。  ○○委員。 ● 簡単な御質問なのですが,○○委員,○○委員,○○委員にですが,介護とか高度障害,そういうときにある程度保障を考えなくちゃいけないのではないか。どう思っておられるのか。特に現在,ただ,こういうものを認めたとしても,その寝たきりの方とか,そういう方にお金が行くようになっているかというと,必ずしもそれはそうではないのですね。例外は,多分自動車保険なんかで重度後遺障害の方に定期金払をする。定期金払していくと,割合盗まれても一つだけということかもしれません。だから,こちらの方も商品を変えれば別なのかもしれない。しかし,客観的には,今は年金の一部が認められておりますが,介護とか高度障害の場合に,何か直感的には必要性がある。商品的にはちょっと問題はありますけれども,でも,方向性としては何か考えなきゃいけないのかという,そういう素朴な前提の上で,御意見だけちょっと伺いたいと思います。 ● ○○委員。 ● 素朴にお答えをいたしますが,一定の範囲内で差押えを禁止していただけるものであれば,それはしていただくことに大変消費者側としては利益があるだろうと。高度障害状態になっていて,例えば一定の高度障害保険金が払われたときに,それを横から持っていかれる,生活が苦しくて差押えうんぬんという話になったら,やはりそれは何のために保険に入っていたのかということに,本来の保険の目的からやはり外れてしまう。そうではなくて,ほかのところでお金がかかるでしょうという話になっちゃえば別ですけれども,そういう意味では介護のケースも全く同じでございまして,素朴レベルで申し上げれば,差押禁止という保険をしていただくということは大変有り難いことだと思っております。 ● ○○委員。 ● 私も同様の意見ですけれども,ケース・バイ・ケースの問題が入ってくると思います。一定の範囲内でという,この一定をどういうふうに位置付けるかというところが非常に問題になるわけですね。そこら辺はちょっと,今のところはまだ十分な情報も得られていないので,どういう判断をしたらいいか分からないのですけれども,消費者として見れば,例えばその人が生活困窮者みたいな人であれば,これは禁止をしてもいいのではないのかと,そういう,いわば今のところは一般のことしか申し上げることはできません。 ● どうぞ,○○委員。 ● 逆に我々実務のサイドから申し上げますと,この一定の範囲内というのがどういうふうに規定されるかということもあるのですけれども,現実,金融財産としてワークしている部分もあるという問題と,今度,一部差押えを禁止するとなると,要はその人が一体他社の分も含めてどれだけ保険に入っておられるのかとか,では,その部分のどれを差押禁止にするのかといった上で,非常に実務的には難しい問題を抱えるのではないかなと思っていますので,これを法制化するとなると,相当その辺をきちんと押さえた上でしていかないと,なかなか実態としてワークしない形になるのではないかなと,そんな感じがしてございます。 ● どうぞ,○○委員。 ● 基本的には保険会社さんの考え方と協同組合の実際に適用されている対象者の違いもあるのですけれども,基本的には家計保険ということが前提になっていますので,企業側も,家庭の生活を万が一の場合に保障するということが前提になっておりますので,結果として受け取った共済金を他の債務に回すとか,それはあってもいいかと思うのですけれども,最初から押さえられてしまうということについては,やはり,もし可能であれば,それが禁止できるような規定が,他の法律で可能だという御説明がありましたけれども,明文の規定があればよろしいのではないかと思います。ただ,いろいろな法制上の課題だとか,今,○○委員が言われたように,一定の範囲というのをどこまでにするのか。例えば変額年金だとか,いろいろな年金の部分が本当に家計分野なのかどうかというふうに個人的には思うのですけれども,そういうものまで対象にする必要があるのかどうかという,ちょっとお聞きした部分では感じたのですけれども,ある程度は自らの生活を守っていくために必要なものということはやはり基本にしながら,法制上非常に難しいと思うのですけれども,検討を頂けたらと思います。 ● 世の中に,この差押えはいかがなものかというのが,そういう事例があるのはだれも否定しないと思うのですよ。制度として仕組むには非常にハードルの高い制度だということについては御理解を頂けるかと思います。今日は御意見を頂きまして,それを踏まえてなお検討していきたいと思います。  それでは,先へ進みます。ようやく本日の資料の部会資料ナンバー3の1ページ,第3の「3 保険契約の変動」。「(1) 危険の増加」と,4ページの「(2) 危険の減少」。これ,少し長いですが,全体の御説明をまず頂いて御議論いただきます。よろしくお願いします。 ● それでは御説明いたします。  アに関し,まず,危険の増加について御説明しますと,ここに,危険とは,保険事故の発生の可能性を意味し,これが継続的に増加することを危険の増加といいます。具体例としては,損害保険契約であれば自動車保険契約で自家用自動車を業務用に変えたとか,火災保険契約で居住用建物を工場用に変えたなどということが,生命保険契約であれば職業が危険性を伴うものに変わったなどということが挙げられることがございます。本日,冒頭に御審議いただきました告知義務は,契約締結時のリスク評価のための制度であったのに対し,危険の増加の制度は,一般に保険契約締結後にリスクが変動した場合にリスクを評価し直すための制度であって,保険料の額は個々の契約における保険事故の発生率に応じて算出されるという給付反対給付均等の原則を維持するために必要な制度であるなどと説明されております。そして,契約締結時に将来のリスク変動の可能性をすべて保険料に織り込む必要があるとするのではなく,保険料に織り込んでいないリスクの変動について事後的な調整の余地を認めることが保険料の額の低廉化に資するという趣旨の指摘もされております。  次に,現行法の規律について御説明しますと,商法第656条は,保険契約者等の責めに帰すべき事由によって危険が著しく増加した場合には,その時点で契約が当然に失効することとしています。ここに責めに帰すべき事由とは,保険契約者等の故意又は過失による作為又は不作為という意味であるとされることがある一方,少なくとも過失による危険の増加まで含むべきではないという指摘もされております。いずれにせよ,例えば,先ほど挙げました自動車保険で自家用自動車を業務用に変えたなどという例は,これに当たると考えられます。また,商法第657条は,保険契約者等の責めに帰することができない事由によって危険が著しく増加した場合において,保険契約者等がこれを知った場合には保険者への通知義務を負い,遅滞なく通知しないときは,保険者は危険が増加した時から契約が失効したものとみなすことができるとするとともに,通知義務違反があったかどうかを問わずに,将来に向かって契約の解除をすることができることとしております。この商法の規律については,立法論として保険契約者等の責めに帰すべき事由による場合に,契約を当然失効させるという必要はないという指摘がされており,実務でも契約は失効させないことを前提として,保険契約者等に通知義務を課すなどの規律を設けているのが通例でございます。そこで,本文でも(補足)1に記載いたしましたように,商法第656条の定める場合を含め,契約を存続させた上で保険契約者等が危険の増加を知った場合には,保険者に通知すべきこととしております。  なお,商法では,危険の増加の適用範囲について「保険期間中」とされておりますが,危険の増加の制度趣旨に照らし,本文では「保険契約の締結後」としております。また,いわゆる道徳的危険が増加した場合,例えば故意によって事故招致をしようとした場合に,商法第656条を適用し,その時に契約が失効したと判示する裁判例がありますが,これについては本文の問題としてではなく,後日重大事由による解除の問題として御審議いただくこととしたいと考えております。  次に,本文では,危険の増加は危険の測定に影響を及ぼす事実を考慮するという点で告知義務と共通する問題であることから,通知の対象について,契約の締結に際して保険者から告知を求められた危険に関する重要な事項についての事実のうち,保険者から通知を求められたものとすることとしております。すなわち「危険が著しく増加した」とは,その程度の危険が契約締結当時にあれば,保険者がその保険を引き受けなかったか,又は少なくとも同一の契約内容では引き受けなかったであろうと考えられる程度に危険が増加することをいうとされているところ,これと前回御説明しました告知義務における「重要ナル事項」等に当たるかの判断基準では同一でありますから,このことを明確化すべきと考えられますし,告知義務を質問応答義務としたことをも考え合わせますと,告知事項のうち保険者が通知を求めた事項を通知の対象とすることが合理的と考えられることによるものです。現在の損害保険契約の実務によると,火災保険契約においては通知事項が建物の構造や用途の変更等に限られており,自動車保険契約においても,通知事項は告知事項の範囲内の事項とされているようでございます。  以上に対し,損害てん補方式の傷害・疾病に関する保険契約を含む個人の生命保険契約や傷害・疾病保険契約等のいわゆる人保険においては,危険の増加として問題にすることがあるのが,いわゆる環境的危険,例えば職種,就業場所,渡航先その他の被保険者の業務又は生活に関するものの増加だけであり,身体的危険の増加,例えば健康状態の悪化は保険料に織り込み済みであって,危険の増加としては問題にしないとされております。現在の実務を見ますと,例えば個人の生命保険契約等では,一般に身体的危険の増加はもちろん,環境的危険の増加も問題としないといわれており,現行商法上も,個人の生命保険契約については商法の規定の適用が排除されているといわれております。これに対し,団体定期生命保険契約,例えば会社が保険契約者となり,その従業員等を被保険者とする団体保険契約や,損害保険会社の傷害保険契約等では被保険者の業務の変更等が通知事項とされ,環境的危険の増加を問題としているようでございます。  これらの実務の取扱いを本文の規律に当てはめますと,危険の増加が問題とされることがない通常の個人の生命保険契約等においては通知を求められた事実はなく,したがって危険の増加に関する規律の適用はないということになるのに対し,危険の増加が問題とされる団体定期生命保険契約等の保険契約では業務の変更等の通知が求められ,したがって危険の増加に関する規律が適用されるということになると考えられます。  なお,この点については,人保険について通知事項を告知事項のうちの環境的危険に関する事項に限定するということも考えられるものの,環境的危険と身体的危険との区別は必ずしも明確ではありませんし,ある種の身体的危険に関する事項を通知事項とすることが人保険としての性質上許されないとまで言うことはできないと考えられることなどから,本文のような規律とすることを提案しております。  さらに,(補足)3について御説明しますと,商法は危険の変更についても規定しておりますが,航路の変更等が危険の変更として問題とされる海上保険契約であればともかく,陸上保険契約では,危険の増加とは別個の概念としての危険の変更を問題とする必要はないとされていることから,本文では危険の変更については規律を設けないことを前提としております。  続きまして(注)ですが,本文の通知の時期に対し,一定の場合にはあらかじめ通知をしなければならないものとすべきであるとの指摘がされております。これは,あらかじめ危険が増加することが判明している場合には,あらかじめ通知することができるし,あらかじめ通知を求めることによって危険が増加した時から保険料の増額等による対応が可能であるということを踏まえた指摘と考えられ,損害保険契約においては,約款上,事実の発生が保険契約者等の責めに帰すべき事由によるときはあらかじめ通知すべきと規定されるのが通例といわれております。  もっとも,火災保険契約の約款上,用途の変更等の危険の増加に関する事由とともに,目的物を譲渡したことがあらかじめ通知すべき事項とされておりますが,この約款の規定については,平成5年3月30日の最高裁判決が,所有権の移転についてあらかじめ通知をすることを要求するのは保険契約者等に困難を強いる結果となることから,この約款は譲渡後遅滞なく譲渡の事実を通知すべき義務を課したものと解するのが相当であると判示しており,これは危険の増加に関する判例ではないものの,この判例の趣旨は危険の増加の通知義務に及ぶとの指摘がされております。このあらかじめ通知を求めるということを法律上の義務として規定すべきかどうかということは,通知義務違反の効果等をどのように考えるのかという問題と密接に関係するものと考えられますし,また,(注)の「一定の場合」の意義についても検討する必要があり,例えば,約款の解釈としていわれているように,保険契約者等の意思による危険の増加の場合がこれに当たるとも考えられるものの,意思に基づく事実の変更についても,事実に変更が生じるかどうかはその時まで不確実な場合もあること等を考えると,法律上,その時点で通知を求めることが相当かについては議論の余地があり,このような観点からの検討をお願いできればと思います。  続きまして,「イ 危険の増加があった場合の規律」の(ア)でございますが,先ほど御説明しましたように,危険の増加は告知義務と同じく,危険の測定に影響を及ぼす事実を保険契約の維持等の判断に当たって考慮する制度であることから,本文では,保険契約者等が故意又は重大な過失によって事実を通知せず,又は不実の通知をした場合の規律については告知義務違反の場合の規律と同様とすることを提案しております。具体的には,(補足)に記載いたしましたように,オール・オア・ナッシング主義又はプロ・ラタ主義の採用,因果関係不存在の場合の特則の採否等が問題となります。前回,告知義務違反に関して御議論を頂きましたこれらの論点につきましては,事務当局において問題点を整理した上で,二読において再度御議論を頂くこととしまして,ここでは告知義務違反の場合の規律と同様とすることでよいかという点に絞って御意見を頂ければと考えています。  続きまして,(注)は若干細かいところですが,現行法と本文とで違いが生ずる可能性がある点について御確認いただくものです。  まず,(注)1は,保険契約者等が(軽)過失によって通知しなかった場合等の取扱いについて問題提起しております。この点,商法第657条第2項後段は,保険契約者等が危険の増加を知った場合において遅滞なくすべき通知を怠ったときは,保険者は契約が効力を失ったものとみなすことができるとしております。この「怠った」という文言については,過失による懈怠を含むのか,無過失の場合を含むのか,必ずしも明らかではなく,一般的には「怠った」という文言は故意又は過失によって何かをしないという意味で用いられることが多いようにも思われますが,告知義務との均衡という観点から,故意又は重過失による懈怠に限られるという指摘もされております。  火災保険や自動車保険の約款の「怠った」という文言に関しては,その実務上の注釈書において故意又は重過失と解すべきとの指摘もされております。本文では,告知義務との関連性を意識して,故意又は重過失とすることとしており,この点について御議論いただければと思います。  次に,(注)2では,商法第657条第1項及び第2項のように,通知義務違反があった場合について,保険事故が発生していたときにおいても保険者が免責を求めずに,将来に向かっての契約の解消のみを求める選択肢を許容する必要があるかどうかについて問題提起しております。この点,商法第657条は,第2項で,通知義務違反があった場合には「効力ヲ失ヒタルモノト看做スコトヲ得」と規定しており,法文上は,第1項によって将来に向かって契約の解除をしつつも,危険が増加した時から契約の解除をする時までの間については契約は失効したものとはみなさずに保険金を支払うことも可能となっております。これに対し,通知義務違反があった場合の規律を告知義務違反があった場合の規律と同様とすれば,危険が増加した後に保険事故が発生していたときに,保険者がその免責を主張するためには契約の解除をする必要があることとなります。この点について考えますと,商法は,危険の増加については,いわゆる因果関係不存在の場合の特則を採用していないため,例えば通知義務違反があったとしても,通知されなかった事実と発生した保険事故との間に因果関係がない場合には,保険者が契約当初から想定していた危険が現実化したにすぎないことから,契約が失効したとはみなさずに保険金を支払うということも考えられます。そこで,仮に告知義務で因果関係不存在の場合の特則を採用し,危険の増加でもこれを採用することとした場合には,保険者が免責を求めずに将来に向かっての契約の解消のみを求める余地を残す必要はないとも考えられ,このような観点から御議論を頂ければと思います。  次に,(イ)では,先ほど御覧いただきましたアの危険の増加があったものの,保険契約者等に通知義務違反がなかった場合の規律について問題提起するものであり,これは告知義務にはない規律を問うものでございます。  まず,①では,保険者は,将来に向かって契約の解除をすることができるものとすることについて問題提起しております。これについては(補足)1で説明しており,商法は,危険が増加したときは,保険契約者等の通知義務違反を問題とすることなく保険者に契約の拘束からの解放を認めているのに対し,告知義務の場合にはこのような規律はありません。このような契約の拘束からの解放を認める現行法の規律は,告知義務の場合は契約締結の場面であって,保険者においてそもそも締結しないという選択肢も存在するのに対し,危険の増加の場合は既に契約が締結された後の場面であって,そのような選択肢は存在しないこと等にかんがみると合理的とも考えられます。なお,契約の拘束からの解放を認める場合には,ここでもプロ・ラタ主義的な規律を及ぼし,その事実が契約締結時に存在していれば,保険料の増額等をした上で契約を締結していたであろう場合には,直ちに契約の解除は認める必要はないとも考えられますが,その点については告知義務違反ないし通知義務違反があった場合のプロ・ラタ主義導入の当否の判断を踏まえて,さらに検討することとしたいと思います。  次に,本文②は,保険事故が発生していたときは,危険の増加が保険契約者等の責めに帰すべき事由によるものであっても,保険者は責任を負うものとすることについて問題提起しております。これについては(補足)2で説明しており,商法第656条によると,保険契約者等の責めに帰すべき事由による危険の増加の場合には,本文①の規律に加え,保険事故が既に発生していた場合には,さらに保険者の免責が認められることになります。もっとも,先ほど御説明しました告知義務と通知義務の違いがあることを考えても,このような免責を認めることについては告知義務の場合の規律とバランスを失するようにも考えられますし,保険契約者等としては通知をしようがしまいが効果が同じということになり,通知をするインセンティブが失われるという問題があるとも考えられます。  続きまして,「ウ その他の論点」についてですが,まず(ア)では,解除権について告知義務違反による解除と同様の規律とすることを提案しております。この点については,商法第657条第3項は,保険者が危険の増加等を知った後,遅滞なく契約の解除をしないときは,その契約を承認したものとみなすと規定しており,これは,解除権を行使したり契約を失効させたりすることはできなくなるという意味であるとされております。本文では,告知義務違反による解除権の除斥期間の趣旨との共通性や,通知義務についても応答義務と変えることを前提として,保険者が危険の増加を知った時から1か月,危険が増加した時から5年という除斥期間を法定することを提案しております。  次に,(イ)では,いわゆる他保険契約の通知義務については,他保険契約の告知義務と同様の観点から検討することを提案しております。他保険契約の通知義務は,本文に記載したように,保険契約の締結後に新たに締結した他の保険契約の存在や内容等について通知すべき義務ですが,この通知を求める趣旨は,先ほど御審議いただきました他保険契約の告知義務と同様です。ただ,他保険契約の通知義務については,先ほどの危険の増加と同様に通知義務違反がない場合にも解除等の機会を与える必要があるかという問題がある点に留意が必要と考えられます。また,他保険契約の通知義務をめぐっては,他保険契約の告知義務とほぼ同様の議論がされていますが,他保険契約の通知義務については契約締結後の義務であり,保険契約者等にこの義務の履行を期待することが困難であるとか,他保険契約の告知義務よりも加重的な要件を定立すべきであるなどの指摘もされているようです。  なお,商法制定時にも他保険契約の通知義務を法定するかということは検討されたようで,法典調査会の資料を見ますと,「各保険者ニ通知ヲ為スノ利益ハ被保険者ガ保険価額ヨリモ超過シテ契約ヲ為シ又ハ自ラ火ヲ放ツテ不法ノ利益ヲ得ントスルノ弊ヲ防グノ効アリ」としつつも,「保険者ノ営業上ノ規則ニ一任セバ足ルベシ故ニ法律ニ通知ニ付テ規定ヲ設クルノ必要ナシ」とされたようでございます。  以上の点を踏まえ,ここでは義務を法定することの当否や義務違反の要件,効果等について,他保険契約の告知義務と基本的に同様の観点から検討することでよいかという点に絞って御意見を頂ければと思います。  最後に,(ウ)は各規律の性質について問題提起するものでございます。具体的には,通知義務の範囲を拡大すること,解除等の要件を緩和すること,異なる効果を定めること,除斥期間を伸長すること等,それぞれの規律ごとに反する特約を許さないものとすべきかどうかという観点から,各規律の性質について御議論いただければと思います。  続きまして,「(2) 危険の減少」でございます。この危険の減少は,危険の増加と表裏一体の問題であり,危険の増加で挙げた例ですと,例えば業務用自動車を自家用に変えたなどという場合がこれに当たるとされております。この点について,商法第646条は,特別の危険をしんしゃくして保険料の額を定めた場合において,その危険が消滅したときは,保険契約者は保険料の減額請求をすることができると規定しており,商法制定時の法典調査会の資料では,「保険営業ノ発達スルニ従ヒ各種ノ保険ニ付キ危険ノ程度ヲ種々ニ分チ之ニ付キ各其保険料ヲ定ムルニ至ルベシ故ニ其甲種ニ属スベキモノガ乙種ニ変ジタル場合ニ於イテハ保険料等ノ減額ヲ請求スルモノモ敢テ妨グル所ナキヲ以テナリ」と説明されておりました。しかし,外国の立法には例がないということで,「可及的厳格ニ規定セザルベカラズ」として現行法のように規定されたようです。  学説上,商法第646条は事故発生率に影響を及ぼすべき事情があるため,そのことを考慮して,特に保険料を普通より高く定めた場合に適用されるといわれておりますが,保険の種類やリスクが多様化した現代にあっては,「保険料を普通より高く定めた場合」とは何かということは必ずしも明らかではなく,これを明確化するとともに,危険の増加に関する規律との均衡を図るなどという観点から,危険の減少という形で規定すべきと考えられます。現在では,外国の立法例でも危険の減少の場合の保険料減額請求について規定されておりますし,約款でも同様の規定が置かれていることがあるといわれております。そして,この危険の減少は危険の増加と表裏一体の問題であることから,本文では危険の増加に関する(1)アとの整合性を意識し,保険契約の締結後,危険の増加において通知を求められた事実に変更が生じたことによって危険が減少した場合には,保険契約者に保険料の減額請求を認めることを提案しております。  この減額請求権の法的性質は,商法第646条の減額請求権と同じく形成権であって,商法の下では保険料不可分の原則によって次の保険料期間から減額の効果が生ずるとされることがありますが,これについては,先ほど御審議いただきましたとおり,保険法では保険料不可分の原則を当然の前提とはしないとすれば,減額の効果が生ずる時期についても個々の契約にゆだねることとなり,何らの規律も設けない場合には減額請求の時から減額の効果が生ずることとなると考えられます。  次に,(注)は,本文の規定の性質について問題提起するもので,危険の増加との関係を踏まえ御議論いただければと考えております。  御説明は以上でございます。 ● ありがとうございます。  それでは,かなりいろいろな項目が含まれておりますので,取りあえず最初から4ページの上から4行目までの「ウ その他の論点」の前のところまでで,まず御議論いただければと思いますが。  ○○委員。 ● 今の資料ですと2ページの(注)のところですが,あらかじめ通知をしなければならないという点についてですけれども,本案のように一律に遅滞なくではなくて,責めに帰すべき事由がある場合はあらかじめ通知としていただきたいと考えます。これからお話しすることは,3ページの(イ)の通知義務違反がなかった場合の②の「保険事故が発生していたときは,危険の増加が保険契約者等の責めに帰すべき事由によるものであっても,保険者は責任を負うものとする」ということにも関連いたします。  先ほど御説明にもありましたように,告知及び通知制度というものはリスクに見合った保険料集団を構成・維持して,さらに加えて通知制度の方は,これら各保険料集団間の保険契約者の移動を規律し,それぞれの集団及び当該契約者の保険料が合理的,低廉になることを確保するためのもので,本件は,この通知制度の根幹にかかわる問題と考えております。  例えば例を申し上げます。火災保険で住宅を改築して,取りあえず一戸建てということにしてください。改築して喫茶店を始めるという場合で,リスクに見合った保険料ということですので,例えばこれは木造だったとしたときに,保険金額1000万の場合,場所によって違うのですけれども,ある年の住宅の場合の保険料ですと,1年間に約1万5000円ぐらい頂くことになります。それが喫茶店に変わりますと,年間の保険料ですけれども,3万2000円に大体ですけれどもなります。こういう形で,住宅の場合は住宅リスクという保険料集団,それから喫茶店の場合は喫茶店,実際はレストランとかも一緒にしますけれども,喫茶店というリスク,それぞれの別ごとに保険料集団を形成して,変更することが分かっている場合にもかかわらず,通知は遅滞なくでよいと,もし全体を決めてしまうと,1万5000円のまま,1万5000円で引き受けているにもかかわらず,その間,3万2000円のリスクを負担してしまうことになってしまう。保険料は小さくて保険金は大きいですから,1万5000円の住宅の保険料集団が危うくなって,その集団がつぶれてしまうということはすぐにはないのでしょうけれども,普通に起こりますのは,1万5000円の保険料が維持ができなくなって,その集団が保険料アップというのがまず起きるという,そういう形になります。ですから,そういう意味で低廉なものが崩されるということなのですけれども,そういう形が起きます。  逆に,我々としてというか,この制度としてそうだと思うのですけれども,通知がない場合に免責にしたいというのが本質ではなくて,事前に通知いただいて危険に見合った保険料集団で事故に備えたいという,そういう考え方です。ですから,変更があらかじめ分かっているのにもかかわらず,遅滞なく通知すれば保険金も支払われるということになってしまうと,事故があってから通知すれば間に合うとか,そういうような行動につながってしまいますので,そうすると,きちんと通知した人だけがリスクに見合った保険料を負担するということになってしまって,火災保険や自動車保険のリスク別の料率制度が成り立たなくなってしまうということになります。せめて責めに帰すべき事由がある場合は,あらかじめ通知しないと通知義務違反に問えるという形にしていただきたいと思います。  あと,別の事例ですけれども,自動車保険で自動車を契約締結後に急きょ改造してレースに使用する。通常は自動車保険ではレースカーは引受けをしません。すなわち引受けしないということは,あらかじめ準備された保険料集団がないということです。それが遅滞なく通知であれば,急きょ改造してすぐ使っちゃって事故って通知すれば通知義務違反になりませんから,そうすると解除もできなくて免責も主張できないという,こういうことが起こります。  取りあえず,ちょっと……。 ● 要するに,危険が増加したその時から即高い保険料を頂きたいと,そういうことですね。 ● 入れて,その同じ保険料の固まりの方から保険金を払うというふうにしたいということです。 ● 喫茶店に現実に変わったときから危険は高まるわけで,その時点から直ちに高い保険料を取りたいと,そういう話ですね。そのためにはあらかじめ分かっていれば…… ● だから,知らないのは仕方がないし,あらかじめ責めに帰すべき--これは解釈もいろいろあるのでしょうけれども,少なくとも責めに帰す場合は…… ● この責めに帰すべき事由というのは,今おっしゃっているのは,分かっているという,そういう意味だと理解してよろしいですね。 ● はい。 ● そうしたら,○○幹事から。 ● すみません。今の○○委員のお話に続いてなのですけれども,今のお話ですと,そうしたら,危険が増加した後の通知を怠ったというケースでは全額免責ということを考えておられるのでしょうか。もしそれがちょっときついということであれば,それこそプロ・ラタのように,本来払うべき保険料と実際払っている保険料との間の比例で一定額を支払うと,こういう形になっていくのでしょうか。客観的に危険が増加しということを強調されるのであれば,一層プロ・ラタの方がなじみやすいという形になっていくと思うのですけれども。 ● これは責めに帰すべき場合ということですから,どう言ったらいいのですかね。責めに帰すべき場合,今でも商法にありますよね。それはまずどう解釈されていますか。 ● 今は全額免責ですよね。約款上は全額免責になっていると思うのですけれども。 ● ただ,責めに帰すべき場合に関してはオール・オア・ナッシングで今は考えております。その効果が強いか弱いかというのは,また議論があるとは思うのですけれども,今はオール・オア・ナッシングで全額免責ですね。 ● そうすると,ちょっと大分厳しいと思うのですよね。 ● そうか。事故がすぐあった場合ですね。すみません。その場合,一つ忘れているのは,通知をもらいますよね。もらったときに普通何をやるかというと,前もって通知をもらったら,ここで値上げ分の保険料をもらうのですね。その後で起こった事故は逆に担保されますから。 ● その払っていなかった場合で,その通知も遅れましたと。実際危険が増加しまして通知が遅れていました。しかし遅滞のない範囲の通知でした。この場合も,やはり今の○○委員のお話ですと全額免責ということになりますよね。 ● 責めに帰すべき事由がある場合に関してはそうです。 ● それだと,ちょっとやはりきついと一般には考えられるのではないでしょうか。 ● でも,普通,自分で喫茶店にしようとか改造しようとかというのは分かっているわけですよね。契約時にも通知事項ということで御説明しているわけですから,それをやっていただかないと,先ほど言った保険料の同じリスクに合ったものという集団が崩れてしまって,それが守れないようであれば,結局どういうことかというと,母集団の構成が高い方と一緒になってしまうというようなことになってしまう。だから,今申し上げたような構成ではなくて,もう少し細かく細分化して,何のために細分化しているかというと,より危険に見合ったもの,要するにリスクの低い人は安い保険料でより済むように分けているのですね。ですから,それが保てなくなって,より大きなリスクになって,リスクのいい人も高い保険料を払わなくちゃいけないという,そういうふうな制度に崩れてしまうという,そういうことだと,それを申し上げています。 ● あらかじめ通知する義務があるとしても,そこは一定のアローアンスはあると。通知義務があるということを,そんなに契約者一般は認識しているとはなかなか言えない場合もあるので,そこは一定のアローアンスがあるというふうに学説は考えてきたように思うのですよね。 ● 先ほど御説明がありました最高裁の判例もございますので,事前に必ず通知しなければいけないという,そういう厳格なところまでは判例,学説は考えていないのではないかと思いますし,実際に契約者が,先ほど提示していただいた例などでも,保険会社に必ず事前に危険が増加するので通知しなければいけないということを理解しているかという点を考えますと,喫茶店に変更するということで危険がそんなに大きく変わるのだということを,保険会社サイドはもちろんお分かりでしょうけれども,実際そういう営業を始めようと考えられた方が直ちに保険会社に通知するというようなアクションを起こされるような形になっていくのかというのは,ちょっと定かでないと思うのですね。そうすると,もちろんここは主観的要件,故意,重過失というような形に絞って御提案になっていますから,そんなに大きな弊害は生じないのかもしれませんけれども,しかし,もし万が一,少し遅れて通知はしたけれども,別に悪いことをしようとするつもりはなかったというケースで,全額免責ですという話になると,やはり大分一般とのバランスが悪いかなとは思うのですけれども。 ● さっき手を挙げておられたのは……。では,○○委員。 ● 生命保険の方のお話をさせていただきたいと思うのですが,先ほど来御説明がありましたけれども,現在の生命保険契約,あるいは傷害・疾病保険契約では,基本的に危険の増加又は減少に関する一般規定は設けておりません。いわゆる危険という場合,三つ考えておるわけですが,身体的危険と,環境的,つまり業種又は職業の危険,それから道徳的危険,いわゆるモラルリスク,この三つがあると考えているのですけれども,ここで告知を求めているのは身体的危険と環境的危険なのです。  まず初めの身体的危険につきましては,生命保険契約,傷害・疾病保険契約では,健康状態が変動する可能性というのは保険料に既に織り込んでおりますので,保険契約の継続中に身体的危険の著しい増減により契約内容を調整するということは基本的に想定しておりません。  それから,2番目の環境的危険。これは職業とか業種の変更なのですが,個人保険につきましては,やはり規定を設けておりません。ただ,団体定期保険,先ほど御説明ありましたけれども,それと一部就業不能保障保険,こういったものがあるのですが,これにつきましては規定がありますので,そこをどう考えるかということなのですが,私どもとしましては,特に契約法に規定していなくても,例えばこの約款が団体定期とか就業不能保障保険について契約法に規定がなければ,それは何か問題であると,仮に無効であるとか,そういうことであれば今後の検討課題とさせていただきたいと思っております。  以上です。 ● ○○委員も手を挙げておられましたか。どうぞ。 ● すみません。一般的な消費者を対象にした保険ということを考えますと,○○委員が言われたように損保ですね。それから,言われたように,大体同じような感覚は持っているのですけれども,この部会において協同組合のやっている共済についても,少し実態も含めて御検討されるということであれば,規律だけでは実際の適用は非常に難しい例があるものですから若干御紹介しておきます。  例えば,漁業者でつくっている水産業協同組合。共済をやっていますけれども,二つほど最近事故が起きております。1件目が,これは天候の関係ですけれども,たまたま低気圧が二つぶつかっちゃって事実上の台風になった。そういう中で18名の方が亡くなられているわけですね。当然低気圧ですから,通常でも一定の危険は当然あるわけですけれども,それが結果として気象庁の基準でいいますと,よく分かりませんけれども,北緯25度以上は気圧が低くても台風とはいわないということで通知はしなかったと。そういうことを正確に通知されないで漁業に行かれて18名亡くなられて,5億円支払ったと聞いております。台風の真っただ中に仕事に行くということは,明らかに通知義務に入っていたとしても,全くそのことは入れるべきだと思うのですけれども,実際に漁場ですから,そのときの瞬時の状況を見て判断しなきゃいけない部分がある。結果としてそれは免責にならないとは思いますけれども,そういう業種もある。  それから,もう一件,北海道でロシアに鉄砲で撃たれましたよね。恐らく外交的な問題もあって,どっちに瑕疵があるかというのは明らかにはならないだろうとは思いますけれども,明らかに違反行為をしたと一般的に報道されていますけれども,実は片方ではしていなかったといわれているわけで,その辺の責任をどう問うのか。では,あらかじめカニをとるのであれば通知すべきではないかと一般論としては言えるのでしょうけれども,実際には線が引いてあるわけではないですから,結果的にそういうこともあったという意味で,通知義務の必要性というのは損保分野,生保分野,共済分野も同様ですけれども必要だとは分かっておりますけれども,業種によっては非常に一律の規律では難しいものが,特に漁協の場合は多いケース。数としては少ないにしても,そういうケースもありますので,共済,保険を含めて,全体としてやはり基本的な法律を作られるということであれば,食生活において魚というのは非常に大事な部分ですから,そういう方々の仕事を守っていくという立場でも,やはりそういう点について規律のあり方について少し,一律的なものではなくて,多少の運用が可能な任意規定的な性格のものとして整理をいただけるということで,ちょっと長くなりましたけれども。 ● ありがとうございます。  では,○○幹事から。 ● この危険の増加のところの効果なのですけれども,ちょっとそもそも論になってしまって,議論がかみ合わなかったら大変申し訳ないのですが,その危険の増加の効果というのを,この問題提起としては従前が効力を失うというふうになっていたのを,通知義務を課すというのでどうかというふうになっているのが多少議論を整理しづらくなっているのかなと思うのですけれども,危険の増加があったときには,当初危険の告知義務のところとパラレルに考えた場合に,契約を締結した後の保険者として引き受けたつもりの危険が,状況が変更した,事情の変更の原則というのがやはり基本ではないかなと思うのです。そういうふうに考えた場合に,例えばそれが生命保険にあって病状が悪化したとか,その変更というのは事情の変更ではなくて織り込み済みの危険であるから,それは何ら危険が増加しても契約関係に変化は生じないということは出てくると思いますし,又は火災保険において喫茶店に変えたというのであれば,それはこの住宅について火災保険を掛けて契約を締結して料率を定めたときに織り込んでいない危険の増加であるから,それは事情の変更として考慮する,一定の効果が生じるということになると思います。  その事情の変更の場合の効果として,それがもう大幅な,そんなことであったら当初,それが起こっていたであれば引き受けなかったでしょうというときには解除になるでしょうし,それが喫茶店というぐらいであれば,それが当初から喫茶店であれば料率が違っただけのことですから,そのときから料率の変更という契約の変更ができるという規定になるのかなと思うのです。それプラスアルファとして,先ほど申しましたけれども,保険契約の場合には,そういう事情の変更というのを,状況というのはすべて保険契約者側にあるので,ボーッとしていると保険者としては分かり得ないから,それは通知義務を課しますというふうな整理になるのではないかなと思っております。  その場合に,先般,前回のときにも,重過失というのと告知義務違反の方からオール・オア・ナッシングというのか,又はプロ・ラタかというのが関連されていたかと思うのですけれども,基本的に重過失というところと関連するのではなくて,重過失とか故意の場合にその効果が与えられるというのは,例えば,また民法に引き戻して恐縮なのですけれども,瑕疵担保責任の場合に,任意規定として瑕疵を担保せずという特約はあってもいいけれども,知りて告げざる事実については瑕疵担保責任は負いますよというのと同じように,保険契約において事実の不告知であったとか,それから危険の増加があったときの,保険者側で解除ができるとか,それから料率を変更できるとか,そういうような規定は保険契約者の方で軽過失までのときにはそういう規定は適用しないという,そういう整理になるのではないかなと思っております。  以上です。 ● ○○幹事。 ● 最初の○○幹事と○○委員の間の議論を聞いて,ちょっと気になったというか,○○委員の御主張は,保険契約者側の責めに帰すべき事由による危険の増加の場合は,あらかじめ通知をしなければいけないという,そういう規定を入れてほしいということで,その問題と,義務違反があった場合にオール・オア・ナッシングで解決するか,プロ・ラタ主義でいくかというのは必ずしも連動する問題ではないと思うのですね。○○幹事の質問に答えられて,オール・オア・ナッシングだと,全部免責だと言われましたけれども,確かに現在の損保会社の約款ではそういう形になっていますけれども,しかし,○○委員が主張された,この規定を入れた場合で,なおかつ現在の約款とは変えてプロ・ラタに変えるということは十分あり得ると思いますので,ですから,それでもなおかつ○○委員は,おれは全部免責を主張するのだと,それはともかくとして,しかし,考え方としては,別に二つの問題は連動する問題ではないと考えております。  それから,私の一般的な印象で,これは間違っていたらまた御指摘いただきたいと思うのですが,前回の告知義務の問題,これは主として生命保険に関して問題となることで,生命保険業界からはプロ・ラタに対して強い懸念を表明されました。それはやはり解除権に関しては,解除権の除斥期間というのがあって,商法では5年,約款では2年たってしまえば告知義務違反をもう責任上は問えなくなる。その問題が非常にプロ・ラタ主義に対する懸念の大きな理由になっていたのかなという気はするのですけれども,損保の場合は,特にこの危険の増加が主として問題となるような,火災保険とか自動車保険は大体短期ですから,違反があった場合に解除権を行使できなくなるという事情は考えにくいですし,私の一般的な印象としては,損保業界は,このプロ・ラタ主義に対してそれほど何かそれを嫌悪するというような印象はないのですね。それを積極的に受け入れられるかどうかはともかくとして,もし違えば○○委員に違うと言っていただければいいのですけれども,○○幹事が質問された全部免責かどうかというのは,必ずしもひょっとしたら○○委員の本心とは違うのかもしれないということを申し上げておきたいと思います。 ● ○○委員。 ● ちょっとよく分からないで質問してしまうかもしれませんけれども,3ページの(注)1のところですが,これは,ここに書いてあるということは,「事実を通知せず」の,この事実は,増加する危険に関係をするという事実を通知せずと,こういう理解でよろしいのですか。 ● そのとおりです。 ● そういうことですね。分かりました。例えば,それが契約者がちょっと記入ミスをしたとか,こういうものについてまで問われるというのは,ちょっと厳しいなという感じがしていまして,そこは是非考慮していただきたいなということであります。 ● どうぞ,○○委員。 ● 私はそもそも論という感想論なのですけれども,現在の法律の規定が責めに帰すべからざる事由において危険が増加した場合に契約の解除と,これを全く寡聞して勉強不足で,今回この会合のために勉強したところ「あっ」と思いまして,こんなのは保険ではないと思いましたね。要するに,責めに帰さない事由というのは読めなかった危険だろうと。もしくはビヨンドコントロールで法律が保険者も保険契約者も,要はコントロールのきかない事由で,事実上リスクが増えたというのは,別にリスクが増えたのではなくてリスクが顕在化しただけで,何でそれで解除だと。それだったら保険なんて掛ける意味は全くないと思うぐらいに最初は思いましたね。  最低限,現状が法律上こうなのだから,任意規定でそこのリスクは保険契約者がとってくださいと。とってくれないのだったら掛けるのをやめますと,こういうふうな交渉になると思いますから,いいといえばいいのですけれども,そもそも企業はだんだん自家保険という考え方が高まってきて,読めるような事故について一々保険を出す必要はないのであって,自分の資本の範囲内で平準化すればいいだけの話で,読めないリスクとか,将来の変更リスク,法制変更リスク,環境変更リスク,こういうことについて読めないから保険会社にパッケージでとってもらって,企業のリスクマネジメントをしようかと思っていたところが,読めないリスクだったら解除だと言われたら保険を掛ける意味はないなと,こういうのが正直な感想ですね。ですから,少なくとも責めに帰されない事由による危険の顕在化なんていうことに関して強行規定なんていうことは,そんなことはないと思うのですけれども,というのが私の素直な感想です。 ● この1ページの案だと,まさに告知を求められた事項について危険が増加したら通知してくださいと,そういう仕組みになっているので,例えば,急に何かいろいろな慣例が変わって法的なリスクが非常に高くなったとか,そういう告知のときに問題意識がなかったようなことについては対象としないというようなことにはなっていると。 ● 専門分野なんかについて保険を掛けようとすれば,当然現状の法規制というのは説明させられる,しなきゃいけない。だけれども,その法律が将来変わるかも分からない。より規制が厳しくなるかも分からないと,このリスクをとるかとらないかというのは,もうこれは保険を掛けるか掛けないかの話ですね。したがって,明らかにとっていただいたリスクに関して増加ととらえるということは,そもそも変だなと受け止めています。 ● では,○○委員から。 ● すみません。私もそもそも論なのですが,この危険に関する重要な事項というお話,通知義務の話なのですけれども,基本的には継続前提なのですよね。そうすると,まず1点先に確認をしたいのは,ここでいっている危険というのは他保険契約の告知というのは入らないのだという理解でよろしいのでしょうか。そういうふうに思いたいというのが実はありまして,そこがそういう理解でいいのかということなのですね。それで,従前我々,消費者サイドの方で通知義務と言われてトラブルになるケースって,それも一定程度あるのですけれども,そのときに一番問題になるのは通知義務の中身が分からない。何が通知すべき義務なのか,いつまで申し上げればいいのか,どのタイミングでというのが,そこが分からないという部分がございましたので,そういう意味では1回契約をして,その以降について通知義務の内容が明瞭になったという部分については評価をしたいなと思うのです。ただし,これだと告知事項全部が通知義務と言われる可能性だって十分にあるので,そこら辺はどうなのかなというのがあります。  それと問題なのは,通知義務についての説明を販売勧誘のどの時点で行うのか。どの時点でこういう形で通知をしなきゃいけないのですよというのを言うのかなというのが全く見えないのでよく分からない。通常考えれば加入時に行うのでしょうが,例えば長期間の契約なんかの場合で,初めの時だけぽんと言っておいて,では,終身という話になったときに,それが通知義務と言われると,それはちょっと厳しいのではないのですかと。一度言われただけでずっとそのことを覚えていなさいと言われるのは,ちょっとかなり厳しいのではないのかなと思います。  それと,先ほどの御説明の中で出ましたけれども,通知をしても通知をしなくても,危険がたくさん増えれば,どっちにしても受けてもらえないというような,そういう整理なのかなと思いまして,それだと通知をするインセンティブって本当に働かないなということと,逆に,危険の増加というのは,先ほど来のお話を聞いていると2種類あるのだと。母集団からはみ出す危険の増加と,それから母集団の中にとどまって保険会社が引き受けてくれる危険の増加と2種類あるのだろうと思って聞いているのですね。そうすると,母集団の中からはみ出すものは,それはある意味致し方ないかもしれないけれども,とどまるものであれば,何かプロ・ラタみたいなこと,保険料増額だとか,保険金を減額するだとか,継続前提なのであれば,そういう形で続けていけるのではないのかなと。つまるところ,消費者側から言うと,「あら,気がついたら無保険でした」という状態は大変困るので,そういう状態には何とかならないような,そういう作りにしていただかないと仕方がないと思っています。どちらにしても,これも契約者にどうやって周知をするのかという問題が大変問題だろうと思います。 ● 今の○○委員のうち,最初の質問のところについて申し上げますと,他保険が入るのかという話は,これはレジュメで言いますと4ページの「その他の論点」の(イ)で,改めて告知義務と同様に別の論点としてくくり出しておりますので,これはこれでと御理解いただければと思います。 ● 「これはこれで」というのは,入らないという意味ですか。 ● 別途という,そういうことです。 ● そうですか。分かりました。 ● それから,さっきの事務当局の御説明で,○○委員の母集団の範囲に,まだ危険は上がっても範囲内だという場合に続けられるかどうか。それが先ほどの御説明だと,告反とか通知義務についてプロ・ラタ主義をとるかどうかということと何か一体のような御説明だった。ここは切り離して考えることも可能で,現在の損保の約款でも,それは通知してもらって引受け可能な範囲であれば保険料を増額して契約を続ける。それは行われているので,それをなくす必要は全然ないと思うのですよね。  ○○委員。 ● 先ほどの○○委員の御意見に関連しまして,私の考えをちょっと述べさせていただきたいと思うのです。保険法をどの程度の普遍的なレベルで決めるかということとも関係するかも分かりませんが,○○委員のおっしゃったことはすごくよく分かって,99%そのとおりだと思うのですけれども,ただし企業保険の分野に限られる話だと思うのですね。先ほど○○委員の議論ですと,もう少しパーソナルなビジネスで,例えばリスクプーリングを通してリスクを軽減できるような,そういう保険で,リスク区分が明らかに分かっている場合に,高リスクの人が低リスクに入ってしまうと経済学的にも非効率が生じる。もしそれを防ごうと思うと,保険会社がすべての契約者の保険の目的を監視して,そのためにコストを払って防止しなきゃいけませんけれども,そのコストってトータルで考えると,結局は市場が完全で競争が十分だったら保険料にはね返るわけですから,それは最終的には契約者。そういった問題から見ますと,必ずしも通知義務というのが一概に不必要だとも--現時点での私の考えですと思われますので,その点,ちょっと一言。 ● ○○委員。 ● ○○委員と○○幹事のお話を聞いていて思ったのですけれども,ちょっと私は誤解していたらあれですけれども,この御提案の案は,○○委員が言われたような場合に,それは通知事項にはもちろんなるわけですけれども,なった後,要件は,だから責めに帰すべき事由というのは故意,過失とかできちんとすべきだと思いますが,そのときに,ただ重大な過失であった,できなかったという場合には,これは前回のプロ・ラタか何かという話になるわけで,傷害保険でももう確かやっていると思うのですよね。だから,この案を見ていくと,もう前提そのものが,常に全部免責という話にはならない。だから,そこがちょっと理解が,私が間違っていたらあれですけれども,この案は○○委員の言うような案ではないと私は理解してきたのですけれども。 ● もちろん○○委員のおっしゃるとおりでして,通知義務違反があった場合にどうするかというのは,保険事故が起きていた場合にプロ・ラタか,オール・オア・ナッシングか,前回の議論の続きをしてもらって,それをこっちでも受けたらどうかという提案です。恐らくは私も,先ほど○○幹事がおっしゃったように,○○委員がおっしゃったあらかじめの問題と,このプロ・ラタか,オール・オア・ナッシングというのは必ずしも連動する話ではないと聞いていて思いました。 ● 通知義務の発生時点を早くしてほしいと,そういうことですね。 ● そういう前提ですと,約款で通知をあらかじめするというのを定められればいいと思うのです。それがふさわしい場合もあると思うのです。でも,全部あらかじめやらなきゃいけないと,これはちょっと問題があるということと,それから,さっきの他保険の話は後でやりますけれども,例えば当社は10億以上は引き受けませんと。自分の収入より10倍以上の契約をしている場合は告知してくださいとかいうのだったら,それはしてもらえばいいと思うのです。それはしてもらえばいいと思う。でも,普通は入らない,他保険の規定も要らないというのが私の感覚で,そういうふうに何かちょっと誤解があったような気がしたので,その点だけお伝えしておきます。 ● ○○幹事。 ● ちょっとまたテクニカルな話で恐縮なのですが,この事務当局がなされた整理の仕方についてなのです。非常に錯そうした問題なので,非常に御苦労されたと思うのですが,これを見ますと,通知義務違反があった場合と通知義務違反がなかった場合を分けられて,通知義務違反があった場合は告知義務違反と同じ規律にする。その説明として,保険者が全部免責かオール・オア・ナッシングかになるのかという話が中心になっていて,最後に,2ページの最後から3ページにかけて,保険事故が発生していないときの規律としてはうんぬんとあるのですが,これを見ますと,通知義務違反があって,事故が起こったときは保険者の免責が主たる問題となって,事故が起こっていないときは,契約がその後どうなるかというのが問題とされているみたいなのですが,生命保険の告知義務は,事故が起こってしまったら,もう契約はなくなってしまうのでいいのですが,損保の通知義務の場合は,通知義務違反があって事故が起こったとしても,それで契約がパーになるわけではない。例えば自動車保険なんか,いったんぶつけて保険事故が起こっても,それで契約が当然パーになるわけではなくて,その後もう1回事故が起こることはあるわけですから,整理の仕方としては,通知義務違反があって,事故が起こった場合にも,その場合には保険者が免責されるかどうかという問題と,契約はその後どうなるかという問題。解除することができるとなれば契約はなくなるし,保険者も責任を負わないということになるのでしょうけれども,一応問題としては二つあるのではないかという気がいたしましたので。 ● ○○幹事のおまとめいただいたとおり認識しているつもりなのですけれども,ここは典型的な場合を想定した上で,余り複雑にすると分かりにくくなってしまうのではないかと思いましてこうしているだけでして,御指摘はごもっともだと認識しております。 ● 他保険の通知義務の辺りは御意見ございますか。今まで,多少それに絡んでおります。  ○○委員。 ● 他保険の通知義務は,これは契約者にとって非常にやはり酷ではないかなと。私ももともと生命保険会社の場合,先ほど○○委員が申し上げたように,危険の増加,減少についての立法化は不要だと思っておりますけれども,ましてや他保険ということになってくると,やはり契約者にとって,より難しい義務を課すことになるのだろうということで,不要だと考えております。 ● どうぞ,○○委員。 ● 今まで申し上げたことはあると思うのですけれども,通知義務の結果をどう取り扱うかという問題はあるかと思うのです。やはり確かに物保険と人保険の性格の違いはあると思うのですけれども,やはり一定の告知もそうなのですけれども,通知についても一定必要ではないかなと私どもは思っております。 ● ○○委員。 ● 損害保険の立場から申しますと,先ほどお話ししましたように,やはり告知のところで通知,他保険を求めておりますので,そのパラレルな関係で保険契約の途中におきましても他保険契約の通知を求めまして,そして極めて悪質なものにつきましては排除するということは,やはり保険制度を守っていく上で重要かなと,こういうふうに思っております。 ● 一応意見はそういうのが出てくるかと思いますが,その他,危険の減少というのも少し現行法を変えるというような提案ですが,この点,何かございますか。  ○○委員,どうぞ。 ● 生命保険としましては,増加と同じに考えていますということです。 ● それでは,この辺り,一応今日の議論はこれぐらいにしておきたいと思います。  若干時間を超過して申し訳ないのですが,次は「保険者の破産」という項目なのですが,ちょっとそれを次回に回しまして,8ページの「4 保険契約の終了」のところを今日ちょっと御議論を頂ければと思っております。  それでは,まず事務当局から御説明をお願いいたします。 ● それでは,4の「(1) 保険契約者による任意解除」について御説明をいたします。  これは保険契約の終了に関する問題でございます。本文では,保険契約者はいつでも保険契約の解除をすることができるものとする案を提案しております。保険契約が締結された以上,特別な規定がない限り,これを任意に解除することができないのが原則ですが,現行の商法第653条は,保険者の責任開始前に限定して保険契約者の任意解除権を認めています。これは特に海上保険契約などにおいて古くから事情変更に基づく保険契約者の任意解除権が認められてきたことから,これを法制化したものであるといわれております。しかし,現在の実務では,約款で保険者の責任開始の前後を問わずに保険契約者の任意解除権を認めるのが通例となっていることから,本文では,保険者の責任開始後についても保険契約者の任意解除権を認めるものとしております。  (注)では,本文の規定の性質について問題提起しております。先ほど御説明しましたとおり,現在の実務では,約款で保険者の責任開始の前後を問わずに保険契約者の任意解除権を認めるのが通例となっておりますが,例えば個人年金保険契約の約款では,保険契約者は年金支払開始後に保険契約を解除できない旨を定めているようでございます。これは,被保険者の死期が近づいた保険契約者が,期待される年金支払総額よりも高額となる解約返戻金の請求をすることを防止するためのものといわれております。このように,保険契約によっても約款で任意解除権を制限することに合理性のある場合も考えられることから,本文の規定は任意規定とするのが適当であると思われますが,この点につきまして御議論いただきたいと思います。  続きまして,「(2) 保険契約の解除の効果」でございます。本文は,保険契約の解除の効果について一般的な規定を設けることを提案するものでございます。この解除の効果について,商法は解除事由を定める各規定ごとに規定することとしており,告知義務違反による解除に関する第645条第1項,保険者の破産による解除に関する第651条第1項ただし書及び危険の増加等による解除に関する第657条第1項ただし書では,これらの解除が将来効であることが明示されています。これに対し,責任開始前の任意解除に関する第653条では解除の将来効が明示されておらず,その効果は遡及効であるとされております。  保険者の破産に関する規定については,商法制定時の法典調査会の資料では,「民法ニ依ルトキハ恰モ既往ニ遡ルガ如キ結果ヲ生ジ既ニ払ヒタルモノハ再ビ之ヲ払戻スナリ然ルニ保険ニ於テハ保険料ヲ返還セバ従来負担セル危険ノ報酬ナキモノナリ故ニ此場合ニハ将来ニ向テノミ効力ヲ有スベキ規定アリ」として将来効としたと説明されております。  また,告知義務に関する第645条は,明治44年に効果が無効から解除権の付与に改められたのですが,その当時の資料を見ますと,「契約ノ解除ノ効力ハ保険契約ニ於テハドウモ既往ニ遡ルコトハ出来ナイノデ」と説明されております。なお,告知義務違反による解除によって,既発生の保険事故についても保険金支払債務が免責されるという効果の説明の仕方として,現行商法の明文の規定にかかわらず,これを遡及効として説明するという考え方がありますが,いずれにせよ説明の仕方の問題であって,個別の規律の結論に影響を及ぼす問題ではありませんので,その説明の仕方については,告知義務違反の場合の規律の方向性が定まった段階で改めて検討することとしたいと考えております。  以上の各規定に対して,保険料の不払による解除については将来効とする規定はないものの,保険者の責任が開始した後の不払による解除については将来効であって,既経過期間の保険料はリスク負担の対価として保険者が収受することができるとされています。これ以外の事由による解除,例えば(1)の任意解除に基づく解除についても,保険者の責任が開始した後であれば将来効とすべきと考えられ,実務の約款上も同様の規律とされております。  そこで,本文では,保険者の責任が開始した後の解除については,将来に向かってのみその効力を生ずるものとすることを提案しております。これは,同じく継続的契約である賃貸借契約に関する民法第620条に倣ったもので,同条については,継続的な関係について遡及的消滅を認めることは無意味だから等といわれており,この規定は継続的給付開始後の解除を将来効としたものとされております。  (注)は,本文の規定の性質について問題提起するものでございます。  続きまして,(3)でございますが,これは保険料積立金又はいわゆる解約返戻金に関する規律について問題提起をするものでございます。  まず,長期の保険契約の典型例である生命保険契約の保険料の算出方法について御説明しますと,その時における危険の程度に見合った保険料を徴収することを徹底すれば,生命保険契約については,若い時は死亡率が低いため低廉な保険料を支払えば足り,高齢になった時は死亡率が上昇するため高額な保険料を支払う必要があることとなりますが,終身の生命保険契約等を念頭に置きますと,高齢になってからの保険料負担を抑えるために,ある程度保険料の額を平準化し,若いころに徴収した保険料の一部を将来のために積み立てておくこととされるのが通例です。このように積み立てられた保険料を保険料積立金といい,商法も「被保険者ノ為メニ積立テタル金額」というものを観念しております。この保険料積立金の算出方法には,新契約締結費用を全保険期間の保険料において均等に配分して支出するという前提で積み立てていく平準純保険料式と,新契約締結費用を初年度の保険料で支出したこととした上で,次年度以降に平準純保険料式に比べて不足する分を徐々に埋め合わせていくチルメル式とがあるといわれております。商法は,被保険者の自殺又は保険金受取人の故殺によって保険者が免責され保険契約が失効する場合と,保険者の破産による解除の場合,責任開始前の任意解除の場合及び危険の増加等による契約の失効又は解除の場合に被保険者のために積み立てた金額を払い戻さなければならないものと規定しております。  実務上は,被保険者の自殺等,商法が積立金を払い戻すべきとしている場合には責任準備金なるものを支払うこととし,さらに債務不履行による解除,失効の場合,告知義務違反による解除の場合,契約が任意解除された場合等について,保険者は保険契約者に対し,いわゆる解約返戻金を支払うこととされるのが通例のようでございます。このいわゆる解約返戻金の性質については,一般に保険者が被保険者のために積み立てた金額から約款に定める解約控除をした残額であり,解約控除とは未償却の新契約費用及び抗死力減退費用等の諸費用の控除をいうとの説明がされております。このような費用等が解除され,又は失効となった保険契約の保険契約者から償還しないとすれば,ほかの保険契約者の負担によって賄うこととなりますが,これはほかの保険契約者との間の公平を害するようにも考えられます。  商法制定時の説明でも,被保険者のために積み立てた金額とは,月々支払う保険料から営業費と年々死亡する者に支払うべき保険金の割合を引き去った残額がこれに当たると説明されており,学説上は,保険者が支払うのは被保険者に積み立てた金額そのものではなく,そこから一定の金額を控除した金額であるとの指摘もされております。この点について,商法第655条は生命保険契約については準用されておりませんが,責任開始前の任意解除の場合について契約締結費用の償還を認めるものとされており,生命保険契約においてもその趣旨は妥当するようにも考えられるところでございます。  他方で,近時,解約返戻金の性質は多様化しているという指摘がされております。ここで,本日席上配布しました資料について説明をさせていただきます。席上に「解約返戻金について」と題する2枚紙が置かれていると思いますので,それを御覧ください。これは生命保険会社の実務家委員に御作成いただいたものでございますが,このうち「2.解約返戻金の算出方式」というところを御覧ください。ここで現行実務における解約返戻金の算出方式をまとめていただいておりまして,(1)が先ほど御説明した方式で,積立金から新契約費の回収等を考慮し,一定期間にわたり一定金額を控除する方式でございます。(2)は多くの保険料一時払の契約で採用されている方式で,契約締結時に新契約費を一時払保険料から控除する方式で,契約締結時から解約時までの運用成果を反映する場合もあるようでございます。(3)は,解約返戻金の水準をあらかじめ設定し,それを前提として保険料を算出する方式でございます。さらに海外では,※のところに記載されておりますような方式も採用されているということでございます。  また,その下の3では,解約返戻金に関する監督法上の規律を記載していただいております。これにつきましては,1枚めくっていただきまして2枚目に,関係する監督法上の規律を抜粋していただいております。例えば,保険者が積み立てるべき責任準備金の算出方法が保険数理に基づき合理的かつ妥当なものでなければならないことなどが規定されており,監督指針まで見ますと,解約返戻金は支出した事業費及び投資上の損失等に照らし,合理的かつ妥当に設定し,保険契約者にとって不当に不利益なものであってはならない旨の規定が置かれております。さらに,解約返戻金の開示に関しましても,抜粋されているような規定が置かれているということでございます。  以上の点を踏まえまして,本文では,法律上保険料積立金等についてどのような規律を設けるべきかについて複数の考え方を提案しております。  まずA案は,基本法である保険法で規定を設ける必要はなく,積立金の支払や費用等の償還については一般法理ないし監督法の規律にゆだねるべきとする考え方でございます。次に,B案は,現行商法と同様に,保険者は保険契約者に対し,被保険者のために積み立てた金額を支払わなければならない旨の規定を設けるものとする考え方でございます。これは,現在でも長期の保険契約については,保険料の平準化のため積立金が生じる例が多いということなどを前提としたもので,費用等の償還については現行法と同じく一般法理又は監督法にゆだねることを前提としております。C案は,積立金の支払に加えて費用等の償還に関する規定も設けるべきとする考え方でございます。これは,解約返戻金についての一般的説明をもとに考えた場合等に,私法ルールとしてこのような規律が必要であることを前提としたものでございます。最後にD案は,トータルとして保険数理等に照らし,保険者は合理的かつ妥当な額を支払わなければならないとの規定を設ける考え方でございます。これは,必ずしも解約返戻金の算定根拠が一義的なものではなく,積立金の支払や費用等の償還についても標準的な取扱いはないということを前提としております。  以上の各案については,解約返戻金の算出方法等を踏まえつつも,基本法における規律の在り方として相当なものはどのような規律かという観点から検討する必要があると考えられます。  続きまして,(注)1についてでございますが,これは,本文のB案からD案までのいずれかを採用する場合において,その適用場面を限定することについて問題提起するものでございます。例えば現行商法は,保険契約者の故殺による免責の場合には保険料積立金を返還しないこととしており,これは保険契約者に対する制裁の趣旨とされております。生命保険契約の実務でも多くの会社が解約返戻金等を支払わないこととしておりますが,一部の会社では保険者が利得する理由がないとして解約返戻金を支払うこととしているようで,このような約定にも相当な理由があるようにも考えられます。また,商法には告知義務違反による解除の場合には保険料積立金を払い戻すとの規律が設けられていないものの,実務上は解約返戻金が支払われるとされており,保険料積立金等を支払う旨の規律を設けるのが相当とも考えられます。  (注)2は,本文の規律の強行規定性について問題提起するものでございます。  以上です。 ● ありがとうございました。  なかなか難しいところなのですが,また御意見を頂ければ。  ○○委員からどうぞ。 ● まず,8ページの任意解除のところですけれども,先ほど御説明にもありましたけれども,是非ここは任意規定にしていただきたいということでございます。先ほど御説明にもありましたように,現実,年金開始後の解約というのは制限しておりますし,これを制限しないということになりますと,保険群団としての年金受給者のバランスが崩れてしまうということですので,任意規定でお願いをしたいというのが1点でございます。  それから,10ページのところの保険料積立金等に関する規律ですけれども,これも先ほど御説明していただきましたように,今,解約返戻金はいろいろなパターンが出てございます。そういう意味で,なかなか一義的に定義するのが難しいのではないかと思っておりますので,そういう意味ではB案,C案というのは,今の商品から見ると少し難があるのかなという感じがしておりまして,それ以外の一義的でない形での規律というところで御検討いただければ有り難いと,かように思ってございます。 ● では,○○委員。 ● 重要な問題ですが,簡単に。  任意解除ということは,これは企業物件では衛星保険の解除しない特約を付けたり,プロジェクトでは解除しない特約が必要なので,だからそれは自由と。では,消費者契約ではどうか。本当は強行法規なのかもしれませんが,実際,もう元へ戻らない。  あと1点,これは理論的にどうか,アクチュアリーの方にもお聞きしたいのですが,これは,要するにいつでも解約しているということは不可分原則を緩和しているのですね。そうすると結構保険料が高くなっているはずです。つまり,自分は1年間解約しない。もうそれでいいという場合だと,保険料はちょっと安いわけですけれども,だから,そういう月払の商品を売っているところで年払だけ解約できないという商品もあったって,それは安い競争ができるわけですからいいと思うのですよ。ですから,そういうふうに結論は任意規定でいい。  (2)の解除の効果のところですけれども,これは理論的にはどちらでもいいということなのかもしれませんが,よくよく考えたら,やはり将来効ではなくて遡及する。保険料を返さないということを規定。こういう場合には返しませんと,そこを書いた方が,普通の非法律家の方に分かりやすいのではないかなとちょっと思うのですね。つまり,遡るということは,要するに保険金が出ないということで,実は商法ができたときは不可分原則が完全にあって,1年間解除できないという前提ですから,例えば商法第645条の解除は,告知義務違反で解除は将来に向かってのみ効力を有すという意味は,これも保険料は返りませんよという,そういう趣旨だということは,これはもうだれも異論がなくて,文言とは全然違うのですけれども,そういうふうにだれもが解釈していたわけですね。見ると,要するにこれは保険料を返しませんよというときに,みんな将来に向かってのみと言っているわけで,そうすると,契約者の方にとっては保険金が出るかどうかというのがまず第一なので,あと特別解約権とか本質とかいうときに,これは継続契約だからというふうに私は必ずしも賛成しないので,モラルリスクに違反する行為があったところにさかのぼって解除します,だから保険金はおりませんと,こういう説明をするわけですね。だから,消費者の方に,あるいは問題になるところの説明はみんなそういう説明をするので,建前としてはかなり遡及効はある。民法と同じで直接効果説の通説,判例で,保険料を返さないところだけはちゃんと書くという,そういう方が分かりやすいのではないかと,こう思います。  (3)の解約控除のところですけれども,これは一応保険数理に照らして基本はD案でいきたい。ただ,これは諸外国では積立額を,つまりこういう生保の場合だと,あらかじめ預けた額を幾らで控除する額は幾らと,それに持分的なものを認める考え方を明示しなさい,契約ではっきりしなさいと。だから,私はできればこれは,こういう保険数理に基づいた上で,今,あなたの積立額は幾らです,それから解約控除をこれだけしますと,そういう形の規整にして,あとはもう監督の問題ですけれども,契約法上もそういうことを明示するというのがいいのではないかと思います。  最後の論点は消費者契約法の問題で,要するに解約控除が違約ベースかどうか。損害賠償の予定かどうかという問題があると思います。そうだという説明は割合論文なんかで多いのですけれども,この11ページの説明を見ると,11ページの真ん中よりちょっと上ですね。解約控除の内容で未償却の新契約費用,それから抗死力減退費用。つまり,いい人だけ出ていって,あとがリスクがなくなるから,その分ちょっと払っておいてくださいよと,それで諸費用の控除と。私が調べた限りでは,未償却の新規契約費用というのは,これは会計用語で言うと経費性があるわけですから,最初にそういうものを引きますよと言っておけば,これは違約罰とか,そういう話にはならないけれども,2番目の抗死力減退費用は,実際今やっておられないと私は聞いたのですが,3番目の経費というのは,これは例えば10年債に投資したら途中で解約せざるを得なくなったので,その費用を引く。これも経費性があるわけで,もしこの現実の理解が正しければ,これはもう消費者契約法とは関係がない。ただし,そのことをちゃんと言わなきゃいけない。言わずにおいて,後で契約費用を取りますよというのはちょっとまずいと,こういう整理ではないか。  問題は,私は損保が分からなくて,損保は積立型険で,これは満期返戻金だということなのです。積立金が返ってくるのは,事故がないという条件のときに初めて返ってきますよ。これは契約法上の条件つき債権でもあるわけですね。だから,生命保険よりもうちょっと強いものですが,このときにどうも失効とか何かで責めに帰す比重がある場合とない場合とで保険料を分けている場合がある。これがもしペナルティーで,それに経費性がないと,これは直ちに消費者契約法違反ということにはならないけれども,少なくとも損害賠償の予定とか違約罰にはなり得るという問題もある。そこだけちょっと私は御説明いただいて,結論としてはD案。先ほどのような明確化する形でのD案というのを支持したいと思います。 ● ありがとうございます。  ○○幹事,どうぞ。 ● ただ今の○○委員の御意見なのですけれども,二つ目の保険契約の解除の効果のところですが,これは保険契約者から解除する場合だけではなくて,告知義務違反や通知義務違反の効果として解除権を定めた場合の解除も含んでいるわけですね。そうだとすると,そこで遡及効を定めてしまうと,いわゆるプロ・ラタというのは多分とれなくなってしまうと思うのですね。最初から保険契約がなかったことになるので,保険者がプロ・ラタであれ,ともかく保険金を支払う理由はなくなってしまいますので,だから,私は個人的にはプロ・ラタを特に支持しているわけではなくて,前回の生保業界の方が言われたプロ・ラタ主義に対する懸念というのは十分理由があると思っているのです。ただ,まだそれをどうするかというのはこれから議論するということで,そのプロ・ラタも可能であるという形で議論しようとすれば,やはりこの解除の効果は遡及効ではなくて将来効としておいて,保険者が責任を負うかどうかという問題と契約はどうなるかという問題を一応別個に議論した方が,議論としてはしやすいのではないかなという気がいたします。 ● ○○委員。 ● 最後の解約返戻金について私の意見は,結論的には○○委員と同じでD案がよろしいと思います。一見しますとB案が解約返戻金の権利を守ったように見えて契約者保護に見えるのですけれども,実際に必ずしもそうとは限らないと思います。といいますのは,解約返戻金については,結局は解約に伴うリスク,それに見合ったコストを保険者が,あるいは保険者と契約者がどれだけシェアするかというところによって決まるものでありまして,したがって,解約費用等を一切控除しない保険商品を設計することもできるし,また,反対に解約返戻金なしの保険商品を設計することも可能であると思います。したがって,もし解約返戻金を保障すると法定してしまいますと,自由市場を前提に保険法がかなり普遍的なレベルで保険契約に影響するものとしましたら,やや問題があるのではないかと私は考えます。保険契約者の保護は,また一方でとても重要ですから,それは例えば解約返戻金のディスクローズとか,より上位というのですか,別個のレベルで規定すべきではないかと思います。ただ,かといって契約者は,解約リスクをめぐるコストの負担については容易に認識することはできませんので,D案によって妥当な計算についての説明責任,これを明確に要求することでD案が妥当ではないかと私は考えます。 ● ○○委員。 ● 私も,この(3)のところの保険料積立金等の問題についてちょっと申し上げさせていただきたいと思います。  ここでは「解除され,又は失効した場合に関し」と書いてあるのですが,この第683条第2項に規定されているのはいろいろな性格のものがあって,解約による解約返戻金の問題もあれば,契約がそもそも無効だった場合,あるいは失効した場合,特に本当はもっと先に破産の方を議論していただきたかったのですけれども,破産によって失効した場合とでは違うと思うのですよね。解約ですと確かに○○委員御指摘のように,契約事由にある程度--これも国によって違って,アメリカなんかは一定の強行法的な保障を置いているのですけれども,それは立法政策としていろいろあると思いますけれども,少なくとも保険会社の方が自分で破産したときに契約で一定の額を控除できるというのは,これはいかにもおかしいわけで,無効や破産による積立金の場合については,これは最初の契約で決めればいいというわけにはいかないと思っています。ですから,この中の性格の違うものが幾つか入っているのではないか。現に保険会社が清算したときについては,保険業法第177条第3項で強行法的にもう一定の積立金の規整を決めていて,その中には,いわゆる保険料積立金のほかに未経過保険料,その他かなり細かい規整を置いているわけで,それと同じようなことが破産の場合等もやはりしなければいけないのであって,そういうことを踏まえた上での法制にしていただきたい。それをどういう言葉で規定すればいいかというのは非常に難しいので,確かにB案なりD案なんかも一つの案かとは思いますけれども,御苦労はよく分かるのですけれども,そこで誤解の生じないような立法をしていただきたいと思う次第です。 ● 今の○○委員の話なのですけれども,ちょっと私の方から質問させていただいて大変恐縮なのですが,おっしゃるとおりだと思うのですが,民法,商法レベルでの基本法においてどこまで区別をつけて規律を設けるのか。○○委員としては,現時点ではそれはやはりやれるところは全部やるべきだと……。 ● 何も書かないよりは,一定のやはり権利があるのだということはデクレアしておきたいなと思っています。 ● 比較的D案の支持が多いような感じなのですけれども,これ,事務当局,D案で条文を書けるというふうに本当にお考えなのですか。もうちょっと言いますと,これは私法ですので,ガイドラインから引っ張ってきて文言を使っていますけれども,こんな文言は私法では絶対使えないと思うので。 ● 保険数理という言葉自体は法律上の概念でございます。それに比べて「合理的かつ妥当」というところが確かに,かなり私も違和感があるのですけれども。 ● 私の方からあえて申すと,一つは,会社法の中には公正なる会計慣行に従うというふうな,ああいうイメージがあって…… ● でも,それは会計基準にゆだねるということを言っているだけですけれども,ここでは支払わなければならないって,支払う額も裁判規範性があるようにも見えるし,そうでないとすれば,何か業法で定めるべきことを書いているようにも見えて,私法で書くなら,裁判規範性があるようなものとして書かないといけないけれども,合理的かつ妥当な方法というのでは,そういうふうにはならないので,そこに根本的な問題があるのではなかろうかと思った次第です。 ● では,何か具体的に一定の金額を返せという規定振りは,恐らく今の実務の実態から見て無理であると。かといって,では,何も規定を置かないかというのが,今の日本の生命保険,あるいはその他の長期の保険の解約等が行われた場合の解約返戻金を幾ら返せばいいのかと,そういうルールが全くない。保険業法の分野の方では,今日の資料にありましたように,ある程度の抽象的な規定はあるのですけれども,どういう解約返戻金が許されるのかという辺りについては,余り日本ではまだ考え方が確立していないように思うのですね。これはやはり消費者政策としては非常に生命保険の根幹にかかわる問題なので,是非契約法の方でも何らかの工夫をして,一定の消費者保護を図りたいというのが考え方でございまして,それを技術的にどう実現するかというのが甚だ難問で,取りあえずは契約法の方ではある程度抽象的に公正性を確保するというふうな規定を置いておく。これが実際,裁判規範としてぎちぎち,それが根拠規定になるかどうかという辺りになると,また議論の余地があるかと思いますけれども,その辺り,とにかく従来,昔は解約返戻金が非常に少ないという消費者問題が随分あったのですけれども,近年,解約控除がある程度は減少した経緯もあって,それは余り消費者問題の中心には出てきていないのですけれども,では,解約返戻金に関する実務が今,非常に透明に行われているかと,それから実体法的にもそれが妥当なルールかという辺りになると,かなり問題があるのではないかというふうに私は思っていまして,その辺りを少し,いずれにしても何か考えなくちゃいけないだろうということで,今日のA,B,C,Dというのは,別に確定的な案として出しているのではなくて,少しそういう課題があるので,これから検討してはいかがかという趣旨ぐらい。取りあえずは考えていただきたいと思います。  それで,この点については御意見もさまざまで,それから技術的にどうなのという御意見も当然あるわけでございまして,かなり技術的な問題でございますので,ここの部会の場で細かいところまで詰めるのはなかなかまず難しいと思いますので,これは私からの御提案ということになりますけれども,二読でまたこの問題が出てくるときまでに少し問題点を整理して,関係方面の方と御議論をした上で,例えば保険数理の専門家の方にも加わっていただいて少し論点を整理した上で,またこの場に提案して御議論を頂くということにしてはいかがかなということで,そういう方法論というのは,取りあえずいかがでございましょうか。その上で,今日のところでもし何か意見がございましたらどうぞ。 ● 今の御提案で,私は是非詰めていただくべきだろうと思いますが,ここで確認しておくべき点は,確かに○○幹事がおっしゃられたみたいに,条文まで考えてみると結構難しいかなとは思うのですけれども,監督法だけでいいのか。いわゆる私法上に規定はなくてもいいのかという,そういう抽象的な問題を立てた場合には,私はあった方がいいだろうとは思っています。  一つには,やはり商品の中で許容度が一応商品設計をして,それで業法上,監督当局に申し出たときに,許される範囲という許容度は一応あるわけなので,商品としては世の中に出るということはあると思うのですけれども,よくよく条件を見ていきますと,過度にペナルティーがとられているというような実態が存在したような場合に,そのことに対して本来請求権があるのだということの規律が,まずデフォルトルールとして存在しているということが紛争解決にとって重要なのではないかなということは一つ思います。  それから,最近はいろいろな無選択型といわれているような商品が発達していく中で,いわば高齢者でも入れるという商品を出すために,どこか削らなきゃいけないわけですね。高齢者の場合,当然保険料は高くなりますので,高くならないようにするためには何かを削らなきゃいけないわけですが,その削り方の一つとして解約返戻金を取ってしまうというようなものの商品も出てきていまして,それは先ほどの話でいけば契約自由の世界だということも言えるわけなのですけれども,果たしてそれが本当に計算が合っているのかどうかということが問題になった場合に,改めて本来取れるものがあるのではないかという議論もあろうかと思うという点があります。  それと,先ほどちょっと○○委員がおっしゃられたのですけれども,こういう条文がありますと,むしろここから逸脱した保険商品を販売するときに関しては,それなりに慎重な情報提供というものが必要になってくるということも言えるかと思いますので,そういう点では,私法上の効力のある何らかの条項というものを置くということを一つ考えた上で,どういう文言にするかということを議論した方がいいのではないかなと,そんなふうに思います。 ● ○○委員。 ● 1点だけ,書けるかという話ですね。だから,この被保険者のために積み立てる金額,実際こういうものがあったら,昔の言葉を使って,それはちょっと変わるわけですから,だから,そういう伝統的な言葉を使えばちゃんと書ける。新しいものを書こうとしたらそれは難しい。それだけ申し上げたいと思います。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● ○○委員が破産に関しておっしゃったところを若干,もし追加的にコメントさせていただければ……。次回は前半はやはり出られないものですから,申し訳ございません。  第651条関係でいろいろ問題提起がされておりますけれども,この任意解除権がこういう形で入りますと,第651条の解除権というのを一体どういうふうに考えるのかという問題が出てまいりまして,そもそも破産の規律がこれでいいのかと。破産法第53条を本当に除外しているということがより明確に出るというふうに読めるようでもあるし,逆によく分からなくなるということがございます。その際にさらに検討していただければと思うものとして,破産法第54条との関係だとか,損害賠償ができるのかとか,この場合に保険契約者がどういう権利行使ができるのかとか,そういったことの方が本当は重要ではないかと思っておりまして,今の返戻金の返還請求が破産債権なのか,あるいは財団債権的に扱われるのかとか,その範囲はどうであるのかとか,そういうところこそ詰めるべきではないかということ。第651条について感じておって,今日機会があればと思ったのですけれども,○○委員の御指摘にかかわる事項ではないかと思いますので,併せて御検討いただければと思います。 ● 次回,御欠席の場合でもいろいろ御指摘を頂ければと思いますので,その点よろしくお願いいたします。  ほかにございませんでしょうか。--それでは,先ほど申しましたけれども,この(3)の積立金等に関する規律については,ワーキンググループ的なグループを作って,少し検討してみるということを御了承いただけますでしょうか。  それでは,大分時間も回りまして,今日は一応ここまでということにさせていただきます  それでは,次回以降等につきまして事務当局から。 ● 次回でございますが,来月,12月13日水曜日の午後1時半から,場所は同じくこの場所で,法務省第1会議室でお願いしたいと思います。  審議事項としましては,本日飛ばした形になりました破産の問題,それから(後注)で一部,一般先取特権等の問題がございます。それから,部会資料4としまして,損害保険契約に固有の事項の前半部分を事前送付資料として用意したいと思っております。よろしくお願いします。 ● それでは,今日も不手際で大分時間が超過して申し訳ございません。終了いたします。どうもありがとうございました。 -了-