法制審議会保険法部会             第3回会議議事録 第1 日 時  平成18年12月13日(水) 自 午後1時30分                        至 午後5時44分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  保険法の現代化に関する検討事項について 第4 議 事 (次のとおり)                議        事 ● それでは,定刻でございますので,法制審議会保険法部会の第3回会議を開催させていただきます。   まず最初に,配布資料の説明を事務当局よりお願いいたします。 ● 配布資料でございますが,3点ございます。まず,部会資料4,事前送付資料になりますが,「保険法の現代化に関する検討事項(3)」というもの,これはいつものこの審議のたたき台としていただくためのレジュメでございます。   それから,本日,席上に配布させていただきました資料は2点,1点が「保険法部会の審議日程(案)」というものの1枚紙でございます。既に今年度,平成18年度の第7回までの日程につきましてはお知らせ申し上げたところでございますけれども,本年もこの第3回会議が最後になりますので,来年度の日程について,こういうことでどうかということで提示させていただいたものでございます。概ね3週間に一遍ペースというところを基本としつつ,来年夏に予定されております試案の取りまとめの前,あるいはちょうど1年後ぐらいになりますでしょうか,最終的な法律案要綱案の取りまとめの前の時期は2週間に一遍ペースでとりあえず入れさせていただいたところでございます。   委員,幹事,関係官の皆様には大変お忙しいところを恐縮でございますけれども,どうかよろしくお願い申し上げます。   それから,第1回の会議の議事録が出来上がりましたので,これを配布させていただいております。これと同じものを法務省のホームページでアップさせていただく,こういうことになろうかと思います。以上でございます。 ● 以上,よろしゅうございましょうか。   それでは,具体的な審議に移りたいと思いますが,まず前回の第2回会議で保険法部会資料3の「保険法の現代化に関する検討事項(2)」の第3の3の「(3) 保険者の破産」及び「(4) 第三者のためにする保険契約における保険契約者の破産」,それから3の(後注)1の質権の問題及び同2の一般先取特権のところが残っておりますので,本日はこれから御審議いただくことが考えられるのですが,この問題について前回,最後に○○幹事から特に御発言があったところで,やはり○○幹事が今日お見えになってから,途中からお見えになることになっていますので,お見えになってから御審議をお願いした方がよろしいかと思いますので,この点を後回しにして新しい方の保険法部会資料4の事項から検討をしてまいりたいと思いますが,よろしゅうございましょうか。   それでは,4のほうから審議いたします。まず,最初に「(1) 被保険利益」についてでございます。まず,事務当局から御説明をお願いいたします。 ● それでは,御説明いたします。ここからは損害保険契約の固有の事項に関する規律に入っていくわけですが,まず損害保険契約に共通の事項について検討をし,その後に各損害保険契約に固有の事項について検討をするという順序で審議をお願いしたいと思います。   初めに(1)では被保険利益について取り上げております。本文では,損害保険契約は,金銭に見積もることができる利益に限り,その目的とすることができるものとする案を御提案しています。   これは,商法第630条を現代語化したものであり,一般にここでいう利益が被保険利益であるといわれております。したがって,被保険利益は金銭に見積もることができるものであること,すなわち経済的利益であることが必要であり,単なる主観的利益はこれに含まれないと解されております。   商法第630条の趣旨について,商法制定時の資料には,「新民法第三百九十九条ニ於テハ債権ハ金銭ニ見積ルコトヲ得サルモノヲ以テ其目的ト為スコトヲ得ルモノト為シ今日各国法制一般ノ傾向ハ金銭ニ見積ルコトヲ得サル利益ヲモ保護スルニアリト雖モ損害保険ニ付テハ特ニ金銭ニ見積ルコトヲ得ヘキ利益ノミニ限ルノ必要アリ」との記載があることから,本条は民法第399条との対比において被保険利益を金銭に見積もることができる利益に限定することに意義があると解されます。   被保険利益に関する規律については,被保険利益のない損害保険契約を無効とする旨の規律を設けるべきであるとの考え方もございますが,商法制定時の資料には,被保険利益の存在が必要であることは商法第629条に定める損害保険契約の定義から当然のことであり,これとは別に明文の規定を設ける必要はない旨の記載がございます。また,被保険利益の位置付けに関しては,古くから損害のてん補を損害保険契約の本質と考え,被保険利益の存在を損害保険契約が有効であるための絶対的な要件であるとするいわゆる絶対説と,損害保険契約の本質は金銭の給付であり,被保険利益の存在は損害保険契約が不労の利益獲得のために悪用されることを防止するための公序政策的判断から要請されるものにすぎないといういわゆる相対説の争いがございましたが,現在では絶対説の立場でも損害てん補の意味を弾力的に解するのが一般的であり,両学説の対立は具体的問題の結論を左右するものではなくなっているといわれています。   そこで,被保険利益の必要性を直接規律する規定を設けるかどうかを検討するに当たっては,商法第629条との関係や被保険利益の位置付け,さらには実際に被った損害を超える保険給付は受けられないといういわゆる利得禁止原則との関連等につきましても併せて御議論を頂きたいと思います。以上でございます。 ● ありがとうございます。それでは,この点について御意見を頂きたいと思いますが,いかがでしょうか。   これは,趣旨としては,被保険利益がない保険契約が無効になるかどうかという,その種の問題は理論に任せられる,そういう前提で書かれているということですよね。 ● はい。 ● この点は特段御意見はございませんでしょうか。   では,これはこういうことで概ねコンセンサスがあるのではないかと思いますので,次の事項へ進みたいと思います。今度は「(2) 委任を受けていない第三者のためにする損害保険契約」についてでございます。また事務当局より御説明をお願いします。 ● 御説明いたします。次に,(2)では委任を受けていない第三者のためにする損害保険契約について取り上げております。商法第648条前段は,第三者のためにする損害保険契約について,保険契約者が被保険者から委任を受けていない場合において,保険契約者が保険者に対してその旨を告げなかったときは,当該契約を無効とする旨を規定しています。   この規律の趣旨は,一般に,第三者の被保険利益につき,その第三者の委任を受けずに損害保険契約を締結するような場合には,不正な詐欺的行為が行われやすいことから保険契約者に委任を受けていない旨の告知を求めることにより保険者の注意を喚起することにあるといわれています。しかし,第三者のためにする損害保険契約においては,保険金請求権は被保険者に帰属するため,必ずしも第三者から委任を受けていない場合に保険金の不正請求が行われやすいとはいえないこと,告知義務違反の場合には保険契約は当然に無効とならず,保険者が契約を解除できるにすぎないこととの均衡を失することなどから,商法第648条前段の規律には合理性がないとの指摘がされています。   また,実務上は,第三者のために損害保険契約を締結する場合において,その第三者から委任を受けているかどうかを告知の対象とせず,委任を受けていないこと又はこれを告げなかったことから直ちに保険契約を無効とはしないのが通例であるといわれております。   そこで,これらの立法論的な批判や実務上の取扱い等を踏まえて,本文では商法第648条前段の規律を削除することを御提案しています。   なお,現在の多くの約款では,第三者のために損害保険契約を締結する場合において,保険契約者がその旨を保険契約申込書に記載しなかったときは,契約を無効とする旨を定めるのが通例であるといわれています。この約款の定めについては,一般に,モラルリスク排除の観点から保険者において被保険者が誰であるかを確知することができるようにする趣旨であるといわれていますが,この約定は第三者のためにする契約に関する一般的な取扱いを明示したにすぎないようにも考えられますし,またこの約定の規律と商法第648条前段の規律とは直接関係はないものと考えられますことから,この規律の削除によりこの約款の効力に影響を及ぼすものではないと思われます。   また,第三者のためにする損害保険契約に関し,保険契約締結時に被保険者が不特定の場合にも保険契約が有効に成立する旨の明文の規定を設けるべきであるとの考え方がございますが,現行法の解釈においても,被保険者を保険事故発生時までに特定できるような基準が確定されていれば,不特定の第三者のために損害保険契約を締結することができると解されていることから,このような明文の規定は設けないこととしております。以上でございます。 ● ありがとうございます。それでは,ただいまの点について御意見を頂きたいと思いますが,いかがでしょうか。   商法にこういう規定があったのですが,先ほど説明がありましたように,実務的にはあまりこういう委任の有無について問うということは行われていない。たまたまモラルリスクが疑われるような事案でまれに使われている裁判例がある程度だと思いますが,実務的にもこういうことでよろしゅうございましょうか。   ほかに御意見はございませんですか。   それでは,これも御意見が一致しているということではないかと思います。先へ進みたいと思います。   今度は「(3) 保険金額が保険価額を超える場合の規律」につきまして,今度は大分分量がございますが,まとめて御説明をお願いいたします。 ● 次に,(3)では保険金額が保険価額を超える場合の規律について取り上げております。ここでは,現行法でいうところのいわゆる超過保険の場合の規律,重複保険の場合の規律及び保険期間中の保険価額の減少の場合の規律について,いずれも保険金額が保険価額を超える場合の規律という点で共通していることから,これらをまとめて検討することとし,まずアで,保険契約の効力並びに保険金額及び保険料の調整について問題提起し,次にイで,特に重複保険の場合における保険者のてん補責任について問題提起しています。   まずアについてですが,現行の商法第631条は,保険金額が保険価額を超える場合には,その超過部分につき損害保険契約を無効とすると規定しており,一般にこの超過保険の判断時期は保険契約の締結時であるといわれています。この規律については,被保険利益の位置付けに関するいわゆる絶対説の考え方を徹底すれば,超過部分については被保険利益が存在しないため,超過部分を無効とすることは論理的に必然であるということになります。   しかし,先ほど御説明したとおり,現在では絶対説の立場からも被保険利益の存在について弾力的な解釈がされており,また保険期間中に保険価額が上昇する可能性を見込んで,高い保険金額を設定することも許容すべきであることなどから,立法論としては超過保険における超過部分を当然に無効とする必要はないという指摘が古くからされています。   また,重複保険について,現行の商法第632条から第635条までの規定は数個の損害保険契約が同時に締結された場合を同時重複保険,数個の損害保険契約が時を異にして締結された場合を異時重複保険とした上で,同時重複保険については,各保険者の負担額は各自の保険金額の割合により定めるという保険金額による按分主義を採用し,異時重複保険については,先に締結された保険契約の保険者がまず損害を負担し,その負担額が損害全部をてん補するのに不足するときには,後に締結された保険契約の保険者がこれを負担するという優先主義を採用しています。   具体的には,例えば,保険価額1000万円の建物が全焼し,保険者AとBが保険金額800万円ずつの火災保険契約を締結していた場合において,AとBが同時に保険契約を締結したときは,AとBは500万円ずつの保険金支払義務を負い,またAが先に保険契約を締結したときは,Aは800万円,Bは200万円の保険金支払義務を負うことになります。これらの現行法の規律は,一般に,同時重複保険,異時重複保険を問わず,商法第631条により,各保険契約の締結時に保険金額の合計額が保険価額を超えている場合には,当該超過部分が無効となることを前提とする規律であるといわれています。   つまり先ほどの例で御説明すれば,同時重複保険の場合には,AとBそれぞれの保険契約につき300万円の保険金額に相当する部分が無効となり,異時重複保険の場合には,Bの保険契約につき600万円の保険金額に相当する部分が無効となるという説明がされています。   そこで,商法第631条の規律を見直すに当たっては,重複保険の規律についても併せて検討をする必要があると考えられます。   他方で,現行の商法第637条は,保険価額が保険期間中に著しく減少した場合には,保険契約者は保険者に対して保険金額及び保険料の減額を請求することができると規定しており,これは,保険事故が発生した場合には損害が生じた時点における保険価額を標準として算出される損害額に応じて保険金が支払われることから,保険価額が著しく減少した場合には,その減少前の保険価額を前提とした保険金額に対応する保険料を支払うことは無益であることをその趣旨とするものでございます。   本文では,以上の超過保険,重複保険及び保険期間中の保険価額の減少のすべてに通じる規律として,(ア)のように一つの損害保険契約における保険金額が保険価額を超える場合と,(イ)のように複数の損害保険契約における保険金額の合計額が保険価額を超える場合のいずれにおいても,その超過部分を当然には無効としないことを前提とし,保険金額の総額を保険価額まで減額すれば保険料の総額も減額されることとなるときは,保険契約者は保険者に対し,保険金額及び保険料の減額を請求できるものとする案を御提案しています。   なお,現行の商法第631条の規律の趣旨については先ほど御説明したとおりですが,超過部分を無効とするという規律は,その本来の目的とするところではないにせよ,反射的効果として,超過保険であることにつき善意・無重過失の保険契約者は超過部分に対応する保険料の返還を請求できることになるという点で,保険契約者の保護に資する側面も否定できません。しかし,そのような保険契約者には本文の規律による保険料の減額請求が認められるほか,そもそも保険契約締結時の認識にそごがある場合には,錯誤や事案によっては詐欺という民法上の一般法理によって救済される余地も残されていることから,本文の規律は結果的にであっても保険契約者の保護に欠けることにはならないと考えられます。また,このような問題は主に火災保険における保険者の損害てん補額の算定にも関わるものと考えられますが,これについては後ほどその該当個所の審議に際して御説明を申し上げます。   (注)1では,重複保険状態にある場合において,保険契約者が保険契約を解除することができる旨の規定を設けるかどうかについて問題提起しています。保険契約者に保険金額及び保険料の減額請求を認める以上,重複保険状態の場合には保険契約者が保険契約を解除することも認めるべきであるという結論には恐らく御異論もないと思われますが,解除権に関する明文の規定を設けるかどうかを検討するに当たっては,当部会の第2回会議において御議論を頂いた保険契約者による任意解除に関する規定との関係を整理する必要があると思われます。   (注)2は,(5)のイにおいて後述するいわゆる一部保険に類似する問題ですが,保険期間中に保険価額が減少したために付保の割合が変更したという場合についても本文と同様の規律を設けるかどうかについて問題提起しています。   現行の商法第637条は,その文言上,保険金額が保険価額を超えることとなる場合に限定していないため,保険金額が保険価額を下回る場合であっても,保険価額が著しく減少した場合には,保険金額及び保険料の減額請求が認められるとする見解がございます。   しかし,保険契約締結時に保険価額を下回る保険金額を設定した保険契約者は,保険料の負担を抑えることを意図して低い保険金額を選択したものであり,契約締結時の付保割合を維持することについては特に強い関心を持たないのが一般的であるとも考えられます。   そこで(注)2では,一部保険状態の損害保険契約において,付保割合が変更した場合については本文のような規律は設けないことを御提案しています。   (注)3は本文の規律の性質について問うものでございます。   次にイについてですが,ここでは保険事故が発生したことにより損害が生じた場合において,2人以上の保険者との間で重複する保険契約が締結されていたときは,保険者は被保険者に対し,その独立責任額すなわち個々の契約で定められた保険金額をそのまま限度額として,各自が連帯して保険金を支払う責任を負うものとすることを御提案しています。   先ほど御説明したとおり,現行商法は同時重複保険と異時重複保険とに分けて保険者の損害てん補責任を規律していますが,本文ではそのような区別はしないこととし,またアの規律と同様に,重複保険であってもすべての保険契約は有効であることを前提として,本文では各保険者がその独立責任額を限度として連帯責任を負うこととするため,被保険者はその任意に選択する保険契約に基づき,損害のてん補を請求できることになります。   具体的には,保険価額1000万円の建物が全焼し,保険者XとYがそれぞれ独立責任額1000万円の火災保険契約を締結していた場合に,XとYは連帯して1000万円の保険金支払義務を負うこととなります。   この独立責任額連帯主義は,超過保険や重複保険を無効としないことの論理的帰結として,素直な考え方でありますし,各保険者が保険金額に応じて損害額を按分した限度で責任を負担する按分主義と異なり,被保険者には全保険者に対して支払請求しなければならないという不便がなく,また保険者の中に資力のない者が含まれていた場合でも,被保険者は独立責任額の限度で他の保険者に対して保険金全額の請求をすることができるという点で,被保険者の保護に資するものと言えます。   これに対し,このような独立責任額連帯主義の帰結を修正し,実務上約款で一般に採用されているといわれる独立責任額按分主義,すなわち各保険者は独立責任額の割合に応じて損害てん補責任を負い,各保険者間に求償関係を生じないとする考え方を法律上も採用すべきであるとの考え方もございます。   しかし,独立責任額按分主義の下では各保険者は按分による責任しか負わない以上,保険者による保険料の全額の取得を合理的に根拠付け,規定の上で整理することは困難であるように思われます。そこで,重複保険における保険者の損害てん補責任について御検討いただくに当たっては,アの規律との論理的な整合性や保険料全額を取得することの合理性等につきましても併せて御議論を頂きたいと思います。   (注)1では,本文において独立責任額連帯主義を採用した場合に,各保険者内部の負担割合や求償等に関する規定を設ける必要があるかどうかについて問題提起しています。独立責任額連帯主義を採用した場合の保険者の責任はいわゆる不真正連帯債務となるのではないかと考えられますが,不真正連帯債務には当然には連帯債務に関する民法第434条から第439条までの規定は適用されないため,各保険者内部の負担割合や求償関係を明文で定める必要があるかどうかが問題となります。具体的な規定振りとしては,例えば②及び③が考えられますが,この場合についてこのような特別な規定を設ける必要があるのかについて御議論を頂きたいと思います。   また,保険契約者が一部の保険者に対してその保険金請求権を放棄ないし免除した場合の効果については,民法第437条に定める連帯債務における免除の絶対効と同様の規律を設けることが考えられるため,これを④として御提案しておりますが,この点についても併せて御意見を頂きたいと思います。   (注)2は本文の規定の性質について問うものでございます。   次に,(3)の保険金額が保険価額を超える場合の規律関係の後注といたしまして,保険者からの保険金額及び保険料の減額請求並びに保険契約の解除を認めるかどうかについて問題提起しています。保険金額が保険価額を超える場合でも保険者は保険価額を超えて損害てん補責任を負うことはないため,保険者からの保険金額の減額請求等を認める必要はないようにも思われますが,例えば,保険契約締結後に多数の他保険契約の存在が発覚したような場合には,保険契約者が保険金を不正に取得する目的で保険契約を締結したことが疑われるとして,保険者が当該保険契約の解除を望むことがあると考えられます。   また,重複保険における保険者のてん補責任に関し,独立責任額連帯主義を採用した場合において,保険者内部の求償関係を認めることとするときは,これによる煩わしさや求償リスクを避ける目的で保険者が保険契約の解除を望むこともあると思われます。そこで,これらの考え方を踏まえて,保険者からの減額請求及び保険契約の解除を認めるかどうかについて御議論を頂きたいと思います。以上でございます。 ● ありがとうございます。それでは,ただいま説明のありました(3)全体につきまして御意見を頂ければと思います。いかがでしょうか。   ○○委員。 ● ありがとうございます。2頁のアの部分でございますが,これは事務当局案でいいと思うのですが,なぜかというと,保険価額を上回る保険金額での契約を当然無効としなくて,その上で保険価額の減少に際して保険金額,保険料の減額請求権を保険契約者に付与する,こういうことでよろしいのですね。   そういうことであれば,消費者にとっては非常にいいのではないかと思いますので,この点は将来にわたる消費者利益になり,利便性の向上ということを念頭において検討していただければと思います。   それからイの部分でございますが,これは質問も兼ねてでございますが,保険金額と独立責任額の関係,あるいは各社の負担額の割合,そういった割合などにつきましてこの普通の消費者から見て非常に分かりにくい。非常に複雑で混乱を招く可能性もあると感じておりますので,今回の保険法のみならず保険業法,約款,それぞれにおいてもこの消費者の利便性が向上するように分かりやすい仕組みにしていただきたいと思っております。   関連して,よく分からないのでお聞きするのですが,これは事務当局にお聞きするのがいいのか,保険会社に聞くのがいいのか,ちょっと分からないのですが,実際に重複保険になっているような事例というのはどの程度発生するものなのか調べたところによりますと,住宅金融公庫で加入する火災保険というのがあって,二十数社で共同で引き受けているようなものがありますが,これは重複保険とは呼ばないというような話も聞いているのですが,それでいいのかどうか。   それから,重複保険の発生割合,個人と法人と多分違うと思いますが,どういうものがあるのか。このことの重要性がどの程度なのか,よく分かりませんので,お伺いしたいと思います。 ● 重複保険はなぜ生じるかという,そこあたりの認識を事実の上でも持っていた方がいいと思います。実務家委員,この辺りの御説明をお願いできますか。   今の住宅金融公庫の保険は共同引受けなので,あれは重複保険とはまた別の話で。   それでは○○委員。 ● まず,住宅金融公庫につきましては複数の保険会社が引受けをしておりまして,しかし保険金額,契約金額は例えば2000万円の家に火災保険を付ける場合には2000万円でございますので,その2000万円をある保険会社の割合によって按分しているだけでございます。これは重複保険ではないということになっております。   では,重複保険はなぜ起こるか。一般的には一つの建物につきましては一つの火災保険を付けるというのが一般的でございますが,例えば,住宅ローンで例えば銀行からお金を借りていて,銀行で保険に入っていることがありながら,それを忘れてしまってもう後日違う保険会社と保険契約してしまった。通常,二重に保険契約をしても保険価額を超えるものは保険金をお支払いできませんので,通常はそういうことは非常に少ないのですが,過失によって起こるということが十分考えられます。   それから,一番問題なのは保険金をたくさんもらおうということを狙って意図的に複数の契約をするということが考えられますが,一般的な個人の家計につきましては,複数の保険契約が走っていて,なおかつそれが実際の保険価額を上回っているという状態はあまり存在しないではないかと思っています。 ● ○○委員。 ● 今,消費者側のという意見がございまして,それに重ねて申し上げるみたいですが,超過保険の問題は先日新聞でも取り上げられましたし,大々的に言われていまして,消費者サイドとしては大変関心のあるところでございます。どうやったら超過保険ではなく,一部保険でもなくて,イコールフィッティングで保険が付けられるかというのは新価保険のことを考えてもなかなか,新価でもあるという超過保険も一部保険もあり得るという話になってしまって,とっても一般消費者から見て大変分かりにくいというところは先ほど申し上げたのに私も加えさせていただきたいと思います。   それなりに一定程度の苦情もございまして,比例按分なんて言われたらもう目も当てられませんで,分損で比例按分なんかされた日には全然分からないという話になってしまうのですが,それで今ここの部分で申し上げれば,イコールフィッティングにしたのは大変結構ですが,第631条の「無効トス」ということで反射的な効果で保険料が戻されるという部分があった。その部分に大変関心を持っておりまして,今回のようにアにして減額というような方向でいくと,オーバーした分の,オーバーは事実オーバーしているのですが,オーバーした分の保険料が戻ってくるのか。そこに大変関心がありまして,そこを戻してもらわないとバランスが悪いのではないのかしら,そういうふうに考えております。   そういう意味では,将来に向けてのというここの書き振りが,私どもは分からない。将来に向かってと言われたら,契約しました,事故がありました,この事故の時点でオーバーしていました。ここから先が減額ができるということだと,この分の保険料が戻ってこないのではないのという,すみません,大変素朴論でございます。そこの部分をどういうふうに,先ほどの御説明では保険契約者の保護に欠けるところがないという御説明でございましたが,そこがどういうふうにクリアされるのか一個も分からないので,そこを御説明いただきたいというのと,重複保険における保険者のてん補責任で,保険料全額の取得を合理的にうんぬんかんぬんというところがあって,そこが正直に申し上げれば大変気に入らない。   なぜかといいますと,言っていることは独立連帯主義と按分主義のところ,どっちにしたらいいのかというお話は消費者サイドから見ると,最も簡単に言わせていただければ,消費者にとっては現行よりも難しくなったら困る。現行よりもシンプルになって,しかもなおかつ落とし穴のないようになっていただかなければ困ると思っています。   だから,それであれば正直に申し上げればどっちでもよろしいというと語弊がありますが,シンプルで落とし穴がないような支払われ方をすれば,それはよろしいのだろうと思うのですが,重複つまり超過であれとすれば,そこの部分の保険料は返金されないと,例えば保険料全額の取得を合理的に根拠付けるなんて言われてしまっては,私どもとしてはおかしいのではないかと思っております。そこら辺を御説明いただければと思います。 ● 今,○○委員から2点あったかと思います。最初の現在の超過保険は無効であるという規律をなくして有効であることにすると,無効であればそれに対応する保険料は返還請求することができるはずだと。それがなくなってしまうのではないか。その点についての危惧だろうと思います。   先ほどの事務当局からの最初の説明でもそこの点を触れさせていただいたところでございますけれども,もちろん反射的効果とはいえ,そういう機能があるということは否定できないところだろうと思います。その点については先ほどの説明でも申し上げましたが,要するにそれは契約者側から見た場合に意図せずして超過保険になっている場合であろう。古くからこの規律について批判されているような値上がりに備えてわざとといいますか,意識した上でやっている場合ではなくて,期せずしてそうなってしまっている場合であろうと思います。その場合は先ほども申し上げましたけれども,錯誤とか,場合によってはですけれども詐欺という民法上の一般法理によって救済される余地もあるのではないか。その場合,錯誤ということになると重大な過失があると主張できないわけですが,ただ現在の商法の規律でも無効の場合の保険料の返還について重大な過失がある場合はできないことになっておりますので,結論的にはそこは一致しているのではないかと考えられます。   それから,2点目でございますが,重複保険について連帯主義を採るか按分主義を採るかによって保険料の返還等についてどういうことになるのかということであったかと思います。我々の方でこの部会資料4で書いてあることは,要するに按分主義にすると保険料全額についての取得を合理付けることは,取得というのは保険者側の取得ですけれども,なかなか難しいし,やろうとすると法律上の規定はごちゃごちゃしたものになってしまう,こういうことを言っているつもりでして,連帯主義にするのであれば,それは最終段階まで全額を払う可能性があるわけですから,それは保険料の取得は別に根拠のないものではないのではないか。そういうことを書いているつもりでございまして,現行法よりも分かりやすくてなおかつ消費者側,契約者側の利益になるということであれば,こちらの方で提案させていただいている連帯主義,つまりこれは重複保険になった場合に仮にアの規律で減額請求されないまま保険事故が起きた場合の話になると思いますけれども,その場合は要するに約束した範囲で全部負ってもらうというだけのことですから。   あと,(注)1で負担割合とか求償とか書いてありますが,これを仮に採用するとしても,それは契約者側とはあまり関係のない話ということになりますので,○○委員の御意向を踏まえれば,この本文の規律の方がよろしいのではないかなと思うのですが。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 事務当局の案は非常によく考えられた案なのではないかと思いますが,直前の○○委員の御質問は非常にもっともなところがあると思いながら伺いました。2点補足的な意見ないし質問ですが,第1点は錯誤による処理の話をされました。それと,現在行われている取扱いと大きく変わるところはないというような御説明だったかと思います。もしそうであるならば,現在の取扱いを明文化するという扱いをお考えいただく方がよろしいのではないかというように感じます。   というのは,民法の一般規定に従って錯誤の主張をするということになりますと,当事者の関係は非常に不安定なものになりますので,保険法の中で要件が書ける形で対応ができるのならば,そうしていただいた方が安定性が高まるのではないかと感じたというのが1点でございます。   それから,もう1点は保険料の件についてなのですが,結局,この考え方というのは返還されなかった保険料というのは支払の際に連帯で責任が負われるということと見合っているという,そういう考え方に立っているように思うのですが,果たして連帯ということになるというだけで,従前の保険料の支払というのが十分に正当化されるのかどうかというのはやや怪しいのではないかと思います。   そう考えた上で,かつその制度を維持するとすると,先ほどこれも○○委員がおっしゃったところですが,将来に向かって減額の請求をすることができると書かれているのですが,減額請求の機会を消費者側に確保するような仕組みをどこかに組み込んでいただければ,これで合理性が担保できるのかなという印象を持ちました。   以上2点です。 ● ただいまの○○幹事の御意見ですが,まず最初の方ですが,御趣旨は民法の錯誤が適用になるようなものについてきちんと要件を提示して保険契約に当てはまるようなものを錯誤の特則になるのか,単なる具体化なのか分かりませんが,そういうものを設けたらいいのではないかということですか。 ● はい。 ● 分かりました。それから,2点目でございますが,ここは我々事務当局も正直申し上げてよく分からないところですが,独立責任額連帯主義という言葉で連帯ということですが,どの部分を連帯するのかということをいろいろ考えると,結局,重複している部分について連帯債務を負うわけであって,重複しない部分については連帯ということではないのではないかというふうにも考えたりしているところでございます。結局,保険料の全額が合理付けられるというのは,連帯というよりも保険事故が起きる段階までの時点において,当該A社なりB社なりが契約に基づいて最初に合意した保険金額の限度で,その実損てん補額を全額てん補するということを,多分そこが保険料の全額を取得することが合理的だということを導くのであって,その連帯があるからということではないような感じもしないでもない。例えて言えば,単発の損害保険契約があった,1個の。1000万の損害保険金額を定めた保険契約が1000万の目的物についてあった。火災保険だった。そのときに,それが第三者の不法行為に基づく火災に遭った。その場合には同時に被保険者はその第三者に対して不法行為に基づく損害賠償請求権を持つわけです,当然のことながら。その場合に普通はあり得ない話ですが,その後,被保険者が最初にその不法行為に基づく損害賠償請求権の弁済を受けた。その場合には保険金請求権はなくなってしまうわけですが,必ずしもその場合に保険料の取得が合理的なものではなくなるということではないだろうと思います。それと同じようなパラレルに考えられる関係にあるから,いわゆる学説上,独立責任額連帯主義といわれているものの考え方で,保険料は返す必要がないというのはそういうことなのではないかと思ったりもしているところでございます。   研究者の方から補足いただければと思いますが。 ● どうぞ,○○委員。 ● 企業ユーザーの立場で申し上げますと,事務当局の御提案の考え方は賛成でございます。重複ということは本来,事例としては当然ではないわけですが,あり得ることを考えてみますと,総合保険をかけていて,一方では個別の財産に対する保険をかけて,それが結果的に重複してしまうということはある。特に部門が違っていたり,企業の場合に組織で受けるのでこういうことがないわけではない。   もう一つは単純なるミス。これは消費者個人と全く一緒でございます。企業も構成しているのは人間ですから,ミスはあって当然。それから,3番目は,国内では現時点では想定し難いのですが,海外では想定されるということと,将来的に日本でどうなるかということで,保険会社の支払リスク,こういうようなことも勘案して,例えば海外でやればドメスティックなその国の保険を使えと強要されるけれども,本当に払ってくれるか。それに乗せて日本の信用できる保険会社で重複は分かっていて,コストとしてやるという,こういうことが企業としては考えられるわけですが,将来のことも見据えて,そのいずれにおいてもこの事務当局の提案にあるような連帯,将来に向かって解除という考え方が非常に合理的であろうと思います。   ミスの場合でもそれでいいということであります。というのは,ミスであろうと何であろうと結論は特定の保険会社さんと契約したわけですから,自己責任ですよね。自己責任に従って保険料を払うのは当たり前であって,気付いたら修正するというのが,これは自己責任の考え方で当然で,この考え方に実務家は,企業のユーザー側も,私の社内でも議論をしましたけれども全く抵抗がない。それでいいではないか。   翻って私は個人の立場を言うのは行き過ぎかも分からないけれども,私,個人でも同じ考えです。よく調べないで一杯保険をかけてしまって,保険料が気付いたら解約すると返せという議論をするけれども,自分がいい加減に,調べもしないで一杯かけてしまったから,過去に向かって無効で返せという議論は私はしたくないですね。消費者基本法も消費者の自己責任ということをうたっておりますので,非常にすっきりとした規律でいいのではないかと思います。   その上で連帯とした場合には,いわゆる学問上の不真正連帯債務というのは当然であろう。すなわち債務者間でつながりがないのは前提ですから,通常の連帯債務ではなくて,例えば免除の絶対効というのはどうかという(注)1の④でございますが,免除の絶対効なんていうのはない方がいいのではないか。不真正連帯債務で債務者側には関係はないということで,規律としてすっきりするのではないかと個人的には感じています。以上です。 ● ○○委員。 ● 重複の関係ですが,一般の損害保険と共済契約の重複ということではなくて,特に住宅金融公庫の仕組みからいいますと別口禁止規制というのが確か規定の中に入っていて,要は公庫の保険に入った場合には他の保険契約は締結ができないという仕組みはまだ生きていると思うのです。   今はどうか知りませんけれども,基本的には債務額までで,指導としては実際の価額までというふうになっているかと思います。そういう意味で保険同士の重複というのは基本的にはないと思いますが,別口禁止の対象に共済は入っていないわけなのです。ですから,同時に契約ができる。ですから,満額価額まで入っていれば入る必要はないのですが,債務額という範囲でとなりますと,追加で共済契約に入るという実態というのはあるわけです。そういう実態があるということを保険契約とみなして共済契約を考えればダブりはあるという実態をご承知願いたい。   それから,共済同士のダブりもありますけれども,保険と共済のダブりも含めて400万件のデータを精査したら27%のダブりがございました。ということが実態なので,それをどうするかというのはこれからの検討かと思いますが,そういう実態を一応報告させていただきます。 ● それはここで言っている重複保険というか,全部合わせると損害額を超える給付に,全部がそういうわけではないと。 ● 実際の保険価額を新価で見るのか時価で見るのかによって保険価額は違ってくると思うのです。そういう意味での物差しの違いも確かにあり得るのですが,物差しが一つだということを前提にして考えた場合であったとしても,元々共済と保険というのは特に住宅金融公庫の規制の中で対象外になっていますので,全く拘束なしということが特にサラリーマン層の場合には公庫と金融機関と,それから共済という関係がありますので,そういうところが法文上どうなのかというのはあるのですが,実態論としてそういうことがありますので,それが直ちになくなるというのは消費者といいますか,組合員から見てもどうなのかなという問題というのは実際には問題として発生し得るということの事実について,今後の議論の中で検討願いたいという意味です。 ● ○○幹事。 ● 現行商法の第631条あるいは第632条以下の規定というのは,保険法学では昔から評判の悪い規定です。ですから,こういうふうな立法論というのは従来からあったところで,事務当局の御提案というのはそれに従ったところだと思います。   それから,超過保険の問題と重複保険の問題を共通のルールで規律するということで,見た目も美しいとは思うのですが,ただ最近の新聞報道や本日伺った話を聞いていますと,超過保険というのは世の中では結構ありそうだ。それに対して重複保険というのはそれほどはなさそうだ。   あと,規律の内容についても,重複保険については次の保険者を連帯させるというルールとくっつけるとすると,全部契約は有効で,過去の保険料は返ってこないとしても,しかし連帯させるというメリットは得られるわけです,保険契約者としては。ところが,これに対して,超過保険の方は過去の保険料はもう返ってこないのだとすると,ほとんどメリットがない。唯一あるとすれば,値上がりした場合に無効にならないという,これぐらいかと思います。しかし,それがそんなにメリットだと言えるかというと,どうなのかなというところがあります。   それからもう一つは,先ほど錯誤のところで錯誤の議論をされたと思うのですが,第631条の規定だと,これは一部無効が前提になっているわけです。超過した部分だけが無効だから,その部分だけ保険料を返しなさいということで非常にすっきりしているのですが,錯誤を使うと果たして超過した部分だけが錯誤で,ここだけが無効です。その保険料だけを返してくださいということが,本当に民法の一般規定で言えるのかどうかというのはかなり難しいと思います。あるいは,言えるのかもしれないのですが,しかし必ずしもそれが定説になっているとは思えませんので,ですからこれは難しいかなと思いますが,○○幹事が言われたように超過保険については特別の規定を設けることも考えていただいた方がいいのかなと私は今日お話を伺っていて,そういう気がいたしました。 ● ただいまの○○幹事と先ほどの○○幹事の話を総合すると,重複保険,超過保険に共通の規律ではなくて,超過保険についてのみの規律として民法第95条の特則的なものとして一部無効が,ということを明文の規定で置くということでしょうか。検討したいと思います。 ● ○○幹事。 ● 今のところに追加するようなことになるのですが,先ほど○○委員がおっしゃったように,○○幹事が解説もされましたが,期せずしてという,いわば知らないで超過保険になってしまったというケースでの保険料の返還という場面と,今ここで御提案になっている想定ですと一部無効が常に適用されると非常に窮屈です。取引上,幅を持たせて契約を締結することが合理的な場面があります。意識的に超過保険にしている場合があります。これを一律に無効とされても困るという,その両方を成り立たせるというのは技術的には相当難しい面があろうかと思うのです。そうしたときに,○○委員がおっしゃっているように知らないで超過保険になっていたというケースをどう扱うかという,ここが規律上は焦点になってくるのでしょうが,これだけ取り出すことが技術的にどうか,ちょっと今,案が思い浮かばないですが,やるとすればそこだけですよね。あとは今の原案の規律で問題ないと私は思いました。 ● ○○委員。 ● 重複保険の方の連帯に関してですが,今の実務で我々がやっていますのは,ほとんどの約款が独立責任額の按分方式,按分主義です。これでほとんど統一されているという現状です。これがもし今回,こういう形で変わったとして,実際に約款が世の中に連帯主義と,それから按分主義,独責按分と混在した場合に,そこで事故が起きるとどうやって調整がつくのかという,混乱を招くという,そういう懸念があるのは正直なところです。それが一つです。   あと,これは御異論のある方もいらっしゃるかもしれませんが,重複保険の規整では今被保険者の方でそんなにあるわけではないですが,多重請求によって不法な利得を狙っている,それを抑止しようということも元々機能として期待されていると考えております。ですから,そういう意味でモラルリスクの排除の側面からの規律の在り方も検討すべきではないかと考えています。   そこと重なりますが,実務上のもう一つそこの懸念というのは,具体的に申し上げますと,連帯主義においては他保険があるかどうか,事故が起きたときに,そのお客様に他保険があるかどうかの確認作業が損害のてん補に関する調査の抗弁とはなり得ないと思われます。すなわち,他保険があるかどうかを確認するためにお時間をくださいということができなくなる。これがもう一つ懸念をしているところでございます。   具体的に,例えば家屋の全焼事故があって御請求がありました。調べてみると評価額が1000万だとします。保険金額は当社に500万円の一部保険が付いている。1000万に対して500万付いているわけで,一部保険が付いていて,質権も付いていない。ところが,登記簿を確認させていただくと銀行系列の保証会社が抵当権者になっている。そうすれば,ほかの保険会社で普通は質権付の火災保険に入っているのではないかと分かるのですけれども,それを調べるためにお時間をくださいと言えなくなるのでお払いする。結局,後で分かったのですが,実際はやはり他の保険会社で保険金額1000万付いていて,我々は調査の抗弁なく500万払って,お客様は500万円の利得になるという。1000万の価額に対して他社から1000万円払われていて,我々も500万払ったということですから,1500万手にされているという状態になりますから,そういうことが起きるということを懸念しています。   あと,連帯主義自体,今申し上げましたように賛成ではないのですが,連帯主義にされるのであれば分かりやすさの観点からここに書いてある3頁からの(注)1の②以下の規律は是非とも明記していただければと思います。以上です。 ● ○○委員。 ● 同時に申し上げればよかったのですが,共済契約を保険契約に読み替えるという前提での議論ですから,その前提に立って考えた場合に,2頁のイのところですが,結局,どの契約を無効にするのかという問題というのは,事務的に発生し得るわけです。先ほど言いましたように保険契約と共済契約のダブりというのが結構ありますので,その場合にどのような形で実際に解除といいますか,一部解除に保険価額の物差しがいろいろあるという話をしましたが,それを一つだと前提にした場合に,どちらかいずれにしても減額しない限りはできなくなるという,その調整の作業は実務的には入ってくるということになるかと思います。考え方としては理解できるのですが,かなり広範な重複保険がある中で,実務的に果たしてすんなり移行できるのかどうかという問題があるのではないかと思っています。   それと,解除がいいのかどうかというのはあるのですが,超過契約は基本的に無効だという概念が頭に入ってしまっているものですから,根っこから返してしまうというやり方を採っているわけですね。元々契約としてないものという前提で取扱いをしているケースが実務的にあるものですから,それはそれで決めの話ですから,この内容で全体的な整合性がとれるということであれば,それで結構かと思うのですが,その辺が実際の今やっている実務がそれでいいということではないでしょうから,新しく規律を整理するという中であれば,その点はいいかと思いますが,やはり一番気になったのは,前段に申し上げました同じ保険だという前提に立った場合での実際の調整の問題というのがお互いに事業者同士の調整でお選びくださいということで果たしてすんなりいくのかどうかというところは懸念される部分であります。以上です。 ● ○○委員。 ● 超過とか,全体のシステムとしてここに書いた方が本当にいいのか,今の方がいいのかというのは微妙な問題で,私の認識は特に共済と普通の民間保険も重複というのは相当あって,バリュエーションをすると多分正確にはちょっと超過している。しかし,多少のことだったら実際に全部払ってしまっているということもあるのではないかと思うのです。   それから,家財のところの評価で実際より高く評価している。それであまりひどければ別ですが,超過というのが消費者にとって有利に働く場合と働いていない場合といろいろあるのではないかと思うのです。そこがちょっと分からないところです。   あと,この問題点のところで気になるのは,イの方の重複保険の連帯のところ,これは分かりやすくなるかどうかというのはなかなか微妙な問題があると思うのですが。それで,企業のときには連帯というのはまずいのではないですか。再保険の問題とかいろいろあって,それは何も知らないということは損害保険会社としてはいいという。   私は企業物件の方は任意規定,それ以外は強行規定かな,こう思ってきたのですが,何もおっしゃらないので,ただコンプリヘンシブなすごいものもありますね。各商社の部門ごとにある程度付けていて,それを超える大きなリスクで,実は重なっているところもあるかもしれない。そういうのを全部連帯で本当にいいのかというところ,これは余計な心配かもしれませんけれども,それだけお聞きしたいと思います。 ● どうぞ。 ● 任意規定か強行規定かという面では,任意規定で今進んでいるという意識でおりますけれども,逆にそうしていただければと思います。 ● 任意規定でも事務当局が考えている保険料全額を請求できるということとの関係,それはそれで説明が。   連帯主義を採るということと任意規定にするという,それは両立し得るという。 ● 要するに,この冒頭の説明でも申し上げましたが,連帯主義というのは重複の場合,超過保険に合わせて無効としないということになれば,放っておけばこうなるというだけの話だろうと思います。その場合に約款で按分主義にするということ自体について,論理的に考えると普通は多分修正ということになるのではないかと思いますが,按分主義による修正をかけるということ自体が,先ほどの○○委員のお話で分かりにくいとか分かりやすいとか,そういう話はあるのかもしれませんが,殊更にそれが何か問題が生じるということがあるかといえば,ここの(補足)で書かせていただいた保険料全額の取得をどういうふうに説明するのだろうか,もちろんその場合に返すというふうにやれば,それでいいのかもしれませんけれども,その限度で問題があるだけなのかなと一応考えているのですが。 ● 私が誤解しているのかもしれません。そうすると,今のまま,何も変わらないままでいくという。つまり約款を変えなければ今の連帯でないままでいくという,そういうことですか。私は何か誤解しているのですか。 ● ですので,そこは御議論を頂きたいのですが。 ● これは保険法の希望であって,業界は約款を何も変えないよと言ったら,今のままでいく,そういう趣旨ですか。 ● そういうことになりますが,ただ合理的に根拠付けるのにどうやって説明するのだろうかなという話はありますが。 ● これが外国だと連帯主義を片面的強行規定にしている例はあるかと思います。そういう判断はもちろんあり得ると思いますね。 ● ここまで言われるのなら,そういうふうに考えておられるかと思い込んでいたのですが。 ● ルールの説明が,理屈がつくかというご関心の方がやや大きいかと思います。 ● おっしゃるとおりでして,その上での政策的に片面的強行規定にするかどうかというのはまた別の話だと思いますので,それはそれでと思いますが。もしそこについて何か御意見があれば。 ● 私は企業ユーザーの立場で,この規律が賛成だと言ったのは,当然のことながら任意規定であるということが大前提で,先ほど○○委員が御指摘になった巨額な案件というのは,その上でいろいろな保険を組み合わせるのは必ず個別交渉で,その間の按分の在り方とか,いや連帯するかということは,個別でやるということは大前提で,その上で原則こういう考え方がすっきりしていいのではないですかという意味でありますので,それ以上でも以下でもありません。 ● 当然,これで変わるという前提で言われたわけではないのですか。 ● すみません,発言してもいいでしょうか。 ● どうぞ。 ● 聞かれたから申し上げますが,私はこの規定をこうやっておいて,約款は全然別で,これでさわらないでいいですよなんていうことになるとはとても思っていませんで,この規定が決まれば全保険会社の約款が変わるものだという前提で当然お話を申し上げておりました。   すみません,ついでにちょっと申し上げます。時期を逸して今ごろ言うのはあれですけれど,先ほど自己責任の原則というお話がございました。私が考えているのは,あなたは甘いと言われればそれまでですが,モラルハザードのそういうことを考えているのではなくて,あくまでごく一般的な消費者,善意にお入りになる消費者を考えている。そうすると,分からないで超過保険になる。それから,分からないで重複保険になるかいなという話もありますが,その保険価額の間で入れていたつもりで時間の経過とともに超過になってしまう。そういうものを前提としてお話をさせていただいています。そうすると,それの見合いであれば,オーバーしている分の保険料は返してしかるべきでしょう。そうではない論理というのはどこで成り立つのだろうと素朴に思っておりまして,それはここの保険料全額の取得を合理的に根拠付ける方向で,皆さん一生懸命にディスカッションしていらっしゃるのだけれども,大いにそれはないのではないかなと思っておりまして,そこら辺は一言触れさせていただきます。 ● ○○幹事。 ● 話がやや任意規定の話から外れまして超過保険の元の話に戻ってしまって恐縮ですが,恐らく事務当局が考えられた時には第631条の規定のほかに第637条の規定というのが存在していることを前提に,事後的に保険価額が減額したときに,第637条の場合は著しいということになっていましたが,それを外して減額した場合については将来に向かって保険料を減額請求できるという現行の規律との平仄を合わせながら第631条の規律を考えていこうという,そういうお考えだったと思うのですが,やはり何となく違和感がありますのは,いったんはちゃんとした全部保険だったときに,将来,保険価額が下がってしまったので,これからは無駄になるということが明らかになったときに,以前のものが維持されるということを解消するという手段を提供するのが当然だろうと思いますし,例えば火災保険などで一部分損が生じてしまって,ただ契約は継続している。保険金額は一応約款上は変更がないということになっているので,かけ過ぎになってしまっているのではないかと思うときには,分損が起こったので保険金額は8割に下げますというようなことが起こるというのは,事情が変更した後の話だと思うのですが,恐らくここで問題となっているのは最初から保険価額が1000万円の建物に2000万円の保険金額をかけてしまったというような,それはちょっとかけ過ぎですが,そういうことを想定していて,この分の超過分の1000万円については何の役にも立たないということが前提なわけです。先ほど,○○幹事がおっしゃられたように将来高くなるということのためにかけるというだけのことで,そこを一部無効にしてしまうと,そういうことができなくなるのではないか。こういう問題の設定だったとしますと,規定の仕方としては原則一部無効なのだけれども,当事者が了解している場合は無効にはなりません,無効主張はできませんというような規律の仕方にするのか,それとも事務当局の方が御提案されているような一応全部減額請求にしておきながら,一部例えば詐欺に当たるようなケースの場合について調整というような,そういう規定を設けるかという,いずれかになるのかなと思うのです。   そうすると,概ね返ってくるけれども,特に特定の契約者の場合には返ってこないことがありますよという規律が社会一般のルールとして妥当なのか,それとも概ね返ってこないのだけれども,特段の事情があったときには請求すれば何が減額してもらえるという事例が残りますよということでいいのかということをまず考えてみる必要があるかなと思いますが,もし仮に後者の場合だとしますと,それが正当化される場合は,契約締結時に募集人に例えばこの価格はどのぐらいなのでしょうかというふうに聞いたときに,著しい高い金額を言われて,大体このぐらい入っておかなければまずいですよと言われたというような,何か不法行為みたいな,そういう事例でというのをもし例外的な扱いをする場面だと考えるとすれば,そこは請求しやすいような規定を何らかの形で設けていただく。先ほど○○幹事がおっしゃられたみたいな何か事例を設定して,こういう場合には請求できるというような例外規定を設けていただくか,何かを配慮していただいた方がいいかなと。   逆に,もし一部無効がどうしても将来のために全部無効になってしまうのは困るという人のためだというのであれば,それは原則一部無効なのだけれども,例外的に当事者が了解している場合は有効になるというような規定で対処するという辺りで検討していただければなと思います。   長くなりまして恐縮です。 ● 超過している部分が生じているので,これは保険料の無駄だから,何らかの返還を認めた方がいいだろうという考え方で徹底していくと,これは契約時に超過していたので,それは無駄なものが最初からあった。それはそういうことで,その部分を返還してもらいたいというのは当然あると思います。   同じ発想でいけば,理屈の上では契約時には超過でなかったけれども,今の長期保険で生じているように契約の期間でやはり超過していく部分が生じている。それをいつからどうやって超過状態になって,その保険料はどうやって精算するのかという,これはなかなか実務上は処理できないような問題でもあるような気がします。そこはここの案は無効の扱いとはしないで,将来以降でということになると思うのですが,そういうルールを,私法上のルールを前提とするとこれだけで問題をすべて片付けることはできなくて,今,○○幹事が言われたような募集の時に消費者保険というのは,代理店がどういう保険金額にするか実情はコントロールしているわけですから,そこでけしからんアドバイスでということであれば,それは問題とするし,また契約の期間中も1年ものならともかく,長期のものについてはというタイムリーに見直しができるような機会を与えるとか,そういう方策等も併せて処理していくというので,無効という原理を取り入れると,なかなか実際のルールが動いていくのが難しいのではないかという,これは個人的な私の見解なのですけれど。   どうぞ。 ● 私も一部でも保障を受けた期間があるとすれば,それについて返還を求めるということは必要ないと思います。ですから,今回,話としては契約締結の時に明らかに超過していて,全く保障という点では役に立たなかったという保険料に関しては何か調整する方に,今,○○委員がおっしゃられたとおりで,例えば募集人の行動に何か問題があったときには,それを保険料の超過部分については別途請求できるということが,請求しやすいような規律をどこかに設けておいていただければいいかなという,そういう気がします。 ● 若干くどいようですが,自己責任というよりももっと基本的に今やろうとしているのは商法の保険法の基本法の話をしているので,契約は守られるべきという,非常にシンプルなことを大前提にものを考えるべきではないかというのが私の意見であります。   先ほど○○幹事の方からお話がありましたように,消費者契約法違反で説明において不適切があったとか,保険業法違反があったとか,そういう公的なやつとか,消費者を保護する特別の規律に従って,例外としてそういう事象があったときに契約の有効性について問われるというのは当然ですが,今やっているのは私の理解では商法の保険法の議論をしているわけですから,保険契約をしたからには守ってください。それから,我々はミスで保険契約をしても相手方の保険会社さんに対して,そんな失礼なことを言う気はありませんし,したからには守る。ただし,今言いましたように将来に向かって意味はないから解除するとか,減らすとか,それは当然ですが,こういうふうな物事の発想でいく方が真っ当ではないかなと思います。 ● ○○委員から。 ● 簡単に2点だけ。○○委員のおっしゃることはそのとおりですが,契約は守らなければいけないというのはそのとおりですが,保険の仕切りの難しさとか,約款は保険会社がお作りになるか,それだからこそ民法から離れて保険法という分野ができましたので,基本的に共感しますが,それだけではいけない部分があって,それであるがゆえにまた苦しんでいるという点は多分共感していただけると思うのですけれども。   もう1点,これは本当に分からないのですが,無効の部分と,それから将来効で有効にしておいてやるという,具体的な立法提案を頂いて申し訳ないのですが,一般論として聞いていると無効の方がいろいろ不効率なことが起こって,どちらかというとある程度そういうものだと覚悟して対応できるという意味で,こちらの案の方がいいのかなという感じがだんだんしてまいりましたので,その点だけお伝えします。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 遅れてきて途中から議論に参加させていただいて恐縮ですが,というわけで今までなされた議論を踏まえていなくて,ちょっとまた外してしまうかも分からないのですが,今,契約は守らなければいけないという○○委員の御発言から,それに関係して本件に関しても考えていたことがあったので,意見させていただければと思います。   というのは,契約締結時の告知義務違反とか,前回されました保険契約の期間における危険の増加に関しても,それから今御議論されている重複保険とか超過保険というのは,保険法の特有のことではありますが,そのベースには契約法の基本的な考え方があると思うのです。   その場合に恐らく皆さんには御同意は頂けないかも分からないのですが,契約締結時の告知義務違反とか,又は契約締結の時から超過保険,重複保険となっている場合というのは,保険契約が給付反対給付の均等ということを原則としている場合に,やはりそこには民法の瑕疵担保と同じ,瑕疵担保もこの特定物に対してこの対価を払うと約束したから,それでいいではないかと言いつつ,でも対価とその目的物とが均等しなければ不公平ですよねというところで調整する機能だと思いますので,そのような発想があると思うのです。   ですので,当初から保険価額と保険料とが均衡していないときには,それを知っていてそのように契約をしたとか,そういう事情がない限りはその部分に関して無効だということで保険料の返還が請求できるとか。   それから,途中で保険価額が減額したというときには,危険の増加と反対側のことが起こっているわけで,それが事情の変更というような,これも判例ではちゃんとは認められていないと思うのですが,民法の考え方でそれが当初予測できないような事情によって生じた場合には,均衡を取り戻すということで契約内容の変更又はその部分について解除というので,将来効として保険料を減額請求できるというような形でやると,いろいろな場面での考え方が整理つきやすいのかなと思います。   それに加えて○○委員がおっしゃっているように保険契約特有なことというのはさまざまありますので,それのアレンジが生じるのは,そこの処理が一番難しいのだと思うのですが,ということを考えていたので,もしその議論が少し関係していればと思いまして意見させていただきました。 ● ありがとうございました。○○幹事。 ● 一つだけ。この議論の前提として被保険利益論みたいなものが当然関わってくるのですが,問題になるのは時価ベースの被保険利益を対象にして保険価額を考えているときに,後下がったとか,実際の価額と違うのだということで超過保険が非常にシリアスに非常に問題になってくる可能性は高いと思うですが,新価保険のように当事者が合意しているケースの保険価額を前提にした場合ですと,それだと恐らくは当初はあり得るべき利益のような形で被保険利益あるいは保険価額を考えておりますから,保険金額がはなはだしく保険価額を超えるというような発想にはならないだろうと思います。   だから,今思いつきで恐縮ですが,分けるとしたら時価ベースの被保険利益の際のルールと,それから今までいろいろ御議論を頂いたような形だと,恐らく合意したあり得るべき利益の被保険利益を対象にした保険価額におけるその超過保険ということは,あるかどうかちょっと分かりませんが,それとは区別したルールを作った方が合理的かなという気もしてまいりました。ただ,そうは言ってもコーヒー豆のように変動するようなものをあらかじめ相場を見て高めに設定する,保険価額を高めに設定するということはありますので,企業が使うような一般のルールと我々が自動車,家屋を対象にして使う保険の場合と,それを時価ベースでやる場合と大分違うな,そういう感じがいたします。そこら辺の切り分けをしないとルール化は難しいかなと感じました。 ● ○○幹事。 ● もう最後にさせていただきたいと思いますが,先ほど○○委員からもお話があったし,それから○○幹事からも御指摘がありましたが,超過保険が問題となるケースというのは代理店ですね,ある程度分かっている。1年更新の火災保険で本来であれば更新の時に,この建物の値段はそんなにありませんよということで保険金額を引き下げることを言えばいいのですが,代理店としては保険金額が高い方が保険料も高い。そうすると募集手数料も高くなるということで,積極的にアドバイスをするというインセンティブが働かないものですから,超過保険であるということを分かった上で,そのまま保険者は締結しているということが多いと思います。   代理店は家計保険の場合は契約締結の代理権がありますので,結局,保険者が超過保険であるということを悪意で実際に超過保険契約が締結されているということなので,保険契約者側がきちんと調べずにうっかりしてだから自己責任で,およそ保険料が返ってこなくても仕方がないというのは,保険者側が分かった上でこういう事態が起こっているということを考えると,ちょっと無理があるのではないかなという気がいたします。   それと,いわゆる保険契約者が大きなリターンを狙って失敗したから,それは自己責任ですよというのではない。この超過保険のケースというのはほとんど保険料を払いっ放しで全然リターンはないわけです。ですから,そういうことを考えても自己責任だから,これは仕方がないのだというのはちょっと無理があるのかなという気がいたします。   ただ,先ほど○○委員が御指摘になりましたように,うまくルールを作るというのは非常に難しいだろうなというのは分かりますし,先ほどから○○幹事が頭を抱えておられる。それも恐らくそういうことなのだろうと思います。   ですから,私も先ほど申しましたように,もし可能であれば何かそういうルールをお考えいただければということで,もう難しいということであれば仕方がないと思っておりますので,その点だけ付け加えさせていただきたいと思います。 ● いろいろ問題の御指摘がありました。いいルールができそうであれば,検討されると。是非御提案を頂きたい。   それから,3頁の下,(注)1ですが,先ほど②から④のようなことは要らないという御意見と,実務上は是非置いてくれという意見がありますが,ほかの先生方はこの辺りはいかがですか。   どうぞ。 ● 私が誤解しているかもしれないので恥ずかしいのですが,前提として連帯の範囲について,複数の保険契約を締結していて,実際に発生した損害額を保険金として支払います,この範囲で連帯するというふうに考えていたのですが,先ほどの御説明ですと保険会社の引き受けた保険金額の範囲で連帯という説明を私は誤解しているのかもしれませんが,ひょっとしたら1000万円の保険価額に対して300万,500万,800万といったような重複保険があったとしたら,300万のところだけで連帯するというお話なのでしょうか。   あるいは,実際に1000万円の損害が生じたら1000万円の範囲を連帯というふうに考えるというのでしょうか。それがはっきりしなかったものですから,前提としてお伺いできれば有り難い。 ● 今の○○幹事のお話ですが,これも先ほど申し上げたように従来の議論がよく分からないのですが,一般に連帯ということの意味ですが,つまり連帯する部分についてある債務者のうちの1人が弁済した場合,それが債権の消滅を招いて,ほかの債務者は履行する必要がないという意味ではないかと思います。   そうであれば,今の○○幹事の説明は1000万円の保険価額の物について……。 ● 300万,500万,800万というような三つの一部保険みたいな形であったとして,一部保険でなくても何でもいいですが,1000万円の範囲で連帯するのか,実損1000万円として。 ● その場合は多分1000万円を超える部分ですので,500万と800万の債務者の間では300万の限度で連帯し,300万と800万の債務者の間では100万の限度で連帯し,300万と500万の債務者の間では合計が1000万円を超えないので連帯しないことになるのだろうと思います。   そういうことになるのが一般の,連帯の意味にもよるわけですが,先ほど申し上げたような意味でとらえるのであればそうなるのではないかと考えられます。 ● 私が全く取り違えて理解していたのだろうと思うのですが,それだと消費者サイドからいえば分かりにくくなるという話ではないのかもしれませんけれども,1000万円の損害に対して1000万円どの会社でもまずは取れますよ。後で求償するという話であれば簡単かなと思って聞いていたのですが,でも御説明ではそうではなさそうだとなと。 ● 各債務者,保険者との関係では約束した金額全額請求できるわけです。連帯ということの意味は保険契約者と保険者の間で,はっきり言って誰に対してでも契約に従って金額を請求できるという意味以上のものはないのではないかと考えられるところでして,それは問題ないのではないかと思いますが。 ● では,1000万円の損害に対して1000万円どの保険会社に対しても差し当たりは請求できると。 ● そうではありません。 ● では,分かりました。私が誤解していました。 ● それぞれ結んだ契約で払ってもらえる分は他の契約を全然無視してそのまま限度額まで払ってもらえると。 ● 重複状態が生じたからといって契約の範囲を超えて負うというのはなかなか難しいのではないか。法律で定めればそうなるのかもしれませんが,それは到底受け入れられないのではないか。 ● 連帯主義もみんなそういう前提だと思います。分かりにくくはあまりないように思うのですが,どうですか。自分の契約で,この保険会社との契約でもらえるはずだった金額……。 ● ○○幹事のやつをそのまま引っ張ってくると300万,500万,800万で1000万円の損害という話ですよね。そうすると,消費者はABCの順に3,5,8だとしますと,800万のところは800万まで請求するのですね。そして500万……,損害額……。 ● 800万もらうとまだ損害200残っているから,それは300のやつと500のやつどっちに行っても。 ● 好きな方に請求すればよろしい,そういうことですね。 ● 非常に分かりやすい感じです。 ● 分かりました。はい。 ● では,この辺り,今日いろいろ問題の御指摘がありました。もう1回事務当局で議論を整理してもらおうかなと思います。また次のラウンドで御議論をお願いしたいと思います。   ここで休憩をとりたいと思います。            (休     憩) ● それでは,再開させていただいてよろしいでしょうか。   それでは,先に進みまして,「(4) 保険者の免責」の部分について御説明をお願いいたします。 ● それでは御説明いたします。次に(4)では保険者の免責について取り上げております。まず本文①では,保険者は保険契約者又は被保険者の故意又は重大な過失によって生じた損害をてん補する責任を負わないものとする案を御提案しております。   保険契約者又は被保険者の故意,重過失は,現行の商法第641条においても保険者の免責事由とされており,その趣旨については後ほど申し上げるとおりいろいろな考え方があるようですが,免責の趣旨をどのように解するかにかかわらず,この規律自体には合理性があると考えられることから,本文ではこれを維持することとしています。   なお,本文①の規律に関して,保険契約者又は被保険者の故意,重過失に限らず,これらの者と密接な関係にある者,例えば,被保険者が法人である場合の代表者や被用者,被保険者が個人である場合の配偶者や家族等の故意,重過失も免責事由に含めるべきであるとの考え方もございますが,これらの者の故意,重過失については,保険契約者又は被保険者の故意,重過失と同視できるかどうかという観点から,法規又は約款の解釈論として,事案に応じてケース・バイ・ケースで判断するのが適当であると考えられるため,本文では明文の規定を設けないこととしております。   次に本文の②では,保険者は戦争,内乱その他これらに準ずる変乱又は地震,噴火,津波その他これらに準ずる天災によって生じた損害をてん補する責任を負わないものとする案を御提案しております。   現行の商法第640条は「戦争其他ノ変乱」を免責事由としており,その趣旨については,事故発生の蓋然性を測定することが困難であり,保険料率の算定に当たりその計算に加えることが一般的に困難であるなどという説明がされています。ここで言う「変乱」とは,例えば,いわゆる内乱,暴力革命等,人民が組織的武力を用いて国権に抗争する状態で,戦争に準ずるものをいうと解されております。   保険契約におけるスタンダードな規律として,同条の規律自体には合理性があると考えられるため,(ア)ではこれを維持することとしております。   (イ)の「地震,噴火,津波その他これらに準ずる天災」については,実務上,約款における免責事由として広く規定されていることや,特に地震免責については火災保険等の分野においてトラブルの原因となることが多いといわれていることなどから,本文では(ア)と同様の観点から,これを法定の免責事由に加えることとしております。   また,商法第641条は,「保険ノ目的ノ性質若クハ瑕疵,其自然ノ消耗」も保険者の免責事由として定めておりますが,本文ではこれを法定の免責事由とはしないことを御提案しております。   「保険ノ目的ノ性質若クハ瑕疵,其自然ノ消耗」による損害の具体例としては,果物や魚類の腐敗による損害,石炭の自然発火による損害,荷造りの不完全なことによる損害,機械の磨耗による損害等が挙げられており,商法がこれらを免責事由とした趣旨については,これらの損害は被保険者が自己の用意をもってあらかじめ備え得る普通の損害であって,特に保険の対象とする必要が低いからであるとか,偶然性の程度が低いため,保険という危険分散制度は適切でないからであるなどという説明がされております。   しかし,これらは必ずしもすべての損害保険契約において生じ得る損害とは言えないこと等から,本文では殊更に法定の免責事由として掲げることはしないこととしております。   (注)では本文の規定の性質について問題提起しております。本文②については公益上の要請によるものではないため,任意規定であると考えられますが,本文①のうち,特に故意免責についてはこれを絶対的強行規定と解する見解がございます。しかし,故意による事故招致が常に犯罪となるわけではございませんし,犯罪行為により保険事故を惹起した者にも保険金を支払うこととする損害保険契約は免責事由の適用を待つまでもなく保険契約自体が公序良俗に反して無効であると考えられること,実務上もホールインワン保険等の一部の損害保険契約においては,故意が免責事由とされていないことなどから,この規律は信義誠実の原則に基づくものであるとして,故意免責を含めて任意規定と考えるのが適当であるとも考えられます。そこで,これらの考え方を踏まえて本文の規定の性質について御議論を頂きたいと思います。以上でございます。 ● ありがとうございます。それでは,この部分についての御意見を。   ○○委員。 ● 自然の消耗等につきましては,これはやはり偶然性の要素を欠きますし,これは保険を付けるというより,むしろ自己の用意で備えるということが適切だということで,一般の保険の約款におきましては免責になっております。こういうことを明確化する上では法定化していただければ非常に有り難いと思いますが,約款の規定が特に妨げられることがなければ,こだわるものではございません。以上が私どもの考えでございます。 ● どうぞ。 ● ①についですが,物保険の場合にはこれでいいと思うのですが,賠償責任保険を想定したときに,重大な過失によって生じた損害もてん補できるようにしておくべきではないか。例えば最近,飲酒運転とか無謀な運転で痛ましい事故が起きるのですが,そういった事故における被害者を救済するという側面がありますから,そういうことで今の自動車保険などは重大な過失を免責事由にしていないと思います。強行規定にすると,今まで救われていた人が救われないというようなことになるのではないか。したがいまして,少なくとも重過失は補てんをするとか,あるいは任意規定いずれかが好ましいのではないかとも考えております。 ● ほかにこの部分は特にございませんでしょうか。   それでは,今のような御意見を頂きまして,内容については概ね御異論はないのかなというふうに思います。なお今後,事務当局で詰めていただきたいと思います。   それでは,次へ進みまして「(5) 保険者の損害てん補責任」についてを御説明をお願いいたします。 ● 次に(5)では保険者の損害てん補責任について取り上げております。ここでは,損害額の算定に関する規律について,原則論とともにその例外的取扱いであるいわゆる評価済保険及び一部保険に関する各規律をまとめて検討することとしております。   まず,アについてですが,本文①では保険者がてん補すべき損害の額はその損害が生じた地におけるその時の価額によって定めるものとする案を御提案しております。これは現行の商法第638条第1項の規律を基本的に維持しようというものでございます。   本文①の「その時の価額」の意義については,(注)1で問題提起をしております。商法第638条第1項の「其時ノ価額」が何を意味するのかは必ずしも明らかではありませんが,現在ではこれを損害が生じた時の目的物の時価と解する見解が一般的なようです。もっとも「時価」とは何かが明らかでなければ,この「其時ノ価額」が時価であるということの意味はないことになります。一般的な見解によれば,この場合の「時価」とは商品などの処分財産については,その時の市場価額をいい,不動産その他の使用財産については,取得価額からその時までの減損分を控除した額がこれに該当するといわれているようです。   そして,このような見解からは,同等のものを新品で再取得した場合の価額をてん補する特約,いわゆる新価保険は商法第638条第1項の適用を排除する特約として位置付けられているようです。   しかしながら,損害賠償論におけるのではあればともかく,損害保険契約におけるてん補すべき損害の解釈については別の考え方もあり得るのではないかとも考えられます。現に,参考で掲げました旧商法第630条は「被保険物ノ価額ハ使用ニ供スル動産ニ在テハ修繕又ハ新調ノ費用ニ依リ商品ニ在テハ損害又ハ喪失ノ生シタル時及ヒ地ニ於ケル市場代価ニ依リテ之ヲ定ム」と規定しており,少なくとも使用に供する動産について修理ができない場合には,新品の再調達価額をもって保険者のてん補すべき損害額とすることが明文で予定されていたようです。   この規定は現行商法と規定振りが異なりますが,現行商法制定時の資料によれば,旧商法第630条の規定は,家屋の火災保険等に対しては適用がないため,「総則中ノ規定トシテハ本条ノ如ク損害ノ生シタル地ニ於ケル損害当時ノ価額ニ従フヘキモノト規定スルノ外ニ其術ナキモノトス」とされているにすぎませんから,現行商法が旧商法の規律を実質的に変更したものではないということがうかがわれます。したがって,現行商法の下でも,全損が生じた場合には,中古品についても市場がある目的物,例えば車のようなものについては損害発生時の市場価額になるとしても,中古品の市場のない目的物,例えば建物などについては新品での再取得価額をもって保険者のてん補すべき損害の額とすることは否定されないのではないかという疑問がございます。   そして,このように解すれば,先ほど御説明したような新価保険は,商法第638条第1項の適用を排除する特約ではないと位置付けることができると考えられ,このことは最近の火災保険契約において新築の再調達価額をてん補額として定める例が多いという実務上の取扱いにも沿うものと考えられます。   そこで,このような考え方を踏まえて,本文①の「その時の価額」の意義について御議論を頂きたいと思います。   本文②では,①にかかわらず,損害保険契約の当事者が保険価額を定めたときは,保険者がてん補すべき損害の額は当該保険価額によって定めるものとする案を御提案しております。これは,評価済保険に関する商法第639条の規律に関するものですが,一般に,同条は商法第638条第1項の特則と解されているため,本文では,「①にかかわらず」という文言によりこの点を明確にしております。   商法第639条の趣旨は,損害発生時における保険価額の算定は一般に困難を伴うことなどから,当事者の意思を尊重して保険価額の協定に拘束力を認めるものであるといわれております。   本文②の括弧内のただし書の規律の必要性については,(注)2で問題提起しております。商法第639条の下では,評価済保険価額が損害発生時の保険価額を著しく超えることを保険者が証明した場合には,協定の拘束力が認められないことになり,これは一般に利得禁止原則の趣旨によるものであるといわれております。   しかし,利得禁止原則を厳格に解する立場からはそもそも評価済保険の有効性を認めること自体に疑問が生じることになりますし,利得禁止原則を緩やかに解するとしても,同条が保険価額を著しく超える場合に協定を直ちに無効とせず,保険者のイニシアティブによりてん補額の減額請求を認めるにとどめていることからすれば,利得禁止の実効性には疑問がございます。さらに,本文②のただし書を設けなかったとしても,保険者としては詐欺又は錯誤を理由に協定自体の効力を否定する等の余地もあるため,モラルハザードを誘引する恐れがないとも考えられます。   そこで,これらの考え方を踏まえて,ただし書の規律の必要性について御議論を頂きたいと思います。   また,本文のただし書の規律を設ける場合には,この規律が適用されたときは,未評価保険の一般原則に従って実際の保険価額を基準に損害のてん補がされることになります。この場合には,保険料と保険金額との均衡を図るため,保険者が評価済保険であることを前提として取得した保険料について返還する必要があるとも考えられますが,この点につきましても併せて御検討をお願いしたいと思います。   本文③では,損害の額の算定に必要な費用は保険者の負担とするものとする案を御提案しております。これは現行の商法第638条第2項の規律を維持しようというものでございます。   (注)3は本文の規定の性質について問うものでございます。   次にイについてですが,本文は損害保険契約の保険金額が損害の生じた時における保険価額に満たないときは,保険者は保険金額の保険価額に対する割合に応じて損害をてん補する責任を負うものとする案を御提案しております。   これは,いわゆる一部保険に関する現行の商法第636条の規律を維持しようというものでございます。一部保険について,全損が生じた場合には,保険者は保険金額に相当する保険金を支払いますが,分損が生じた場合には,商法第636条に従い,保険者は損害額に保険金額の保険価額に対する割合を乗じた額の保険金を支払うことになります。   この場合に比例てん補とされる理由としては,一般に,全部保険を付してそれに応じた保険料を負担した保険契約者と一部保険にとどめて保険料を節約した保険契約者との公平を図るためであるという説明がされています。   (注)では本文の規定の性質について問題提起しておりますが,現行商法の下では一般に任意規定と解されており,一部保険において分損が生じた場合にも,保険金額を限度として損害額全部を保険金として支払ういわゆる実損てん補特約も有効であるといわれております。   さらに実務では,特に家計保険において,付保割合条件付き実損てん補契約が行われることが多いといわれており,例えば,付保割合8割条件付きの場合には,保険金額が事故発生時の保険価額の8割以上のときに保険者は保険金額を限度として損害額全部を保険金として支払うことになります。   このように本文の規律は公益に関するものではなく,当事者の特約により合理的な規律をすることを許容すべきであると考えられるため任意規定と思われますが,このような考え方でよいかについて御意見を頂きたいと思います。以上でございます。 ● ありがとうございます。この部分について御意見を頂きたいと思います。   ○○委員。 ● また規定の分かりやすさという観点からですが,最初に「てん補する」という言葉ですが,ちょっと難しいかもしれないのですが,できれば現物給付も含まれる形でより分かりやすい表現が検討できないでしょうかというお願いです。   それから,もう1点は,超過保険の項目とも関連するのかもしれませんが,保険者のてん補責任,我々のてん補責任が保険価額限度であることですが,これはこの①で読めるのではないかという方もいらっしゃるのですが,分かりにくいという声も結構耳に入ってきますので,これもちょっと考えていただければと思います。   あと,別の話ですが,評価済保険の②のただし書ですが,これは是非とも設けていただきたい。「著しい」というのは程度にもよるのでしょうが,不当利得として許容できない程度の差異が生じたときには事情変更原則といいますか,そのような考え方で減額することが適当ではないかと考えておりますので,そうしていただきたいと思います。 ● 今のお話に出たアの②のただし書というのは,従来はこういう規定は当然置かれるのだろうかなというイメージでおられた先生方が多いと思いますが,その点はいかがでしょうか。   (注)2というのは,こういう減額をするにもかかわらず保険料の精算が全然行われないというのは問題が理論的にあるのではないか,そういう問題意識ですか。 ● そういうことでございます。 ● どうぞ。 ● テーマが保険料の返還ばかりで大変申し訳ないのですけれども保険料の返還です。いわゆる火災保険,比例てん補というのは両方まとめていいますと,モラルハザードは大嫌いでございまして,そんなものはけしからんと思っているのですが,例えば評価済保険,通常の価額協定特約をくっつけた保険,それで理解してもいいのでしょうが,著しく超えることを保険者が証明うんぬんかんぬんとあるのですが,超えた部分について保険料の返還が行われないと危険負担と,私が言うとすごく変ですが危険負担と保険料の見合いだと思っているので,その見合いの部分を超えて保険会社がそこにすぽっとおさまってしまっていいですよと,片方で払わないと言っているのに,そういうルールはすごくバランスを失していておかしいのではないか。そういうふうに思います。   それから,一部保険の方でいいますと,比例てん補は大変分かりにくくて,消費者サイドからは大変不満感が残ります。何で,お金がないから1000万円の建物に600万しかかけなかったとしても,何で600万出ないのという,ここの部分をどうやってクリアするか。全体の人の公平さという話が必ず出てくるのだけれども,そういう意味では実損てん補というのを前に出して,見合った保険料に当然超えていないわけですから,保険料に見合う危険負担がされるべきだと思っていますし,そちらの意味でいうと実損てん補をちゃんとやっていただきたいと思います。そうすると,火災保険に普通の消費者が持っている分かりにくさとか,それから誤解とか,トラブルとか,そういうものがぐっと減るのではないか。それは肌身にしみてそう思っておりますので,是非お願いしたいと思います。 ● どうぞ,○○委員。 ● 今お話がございましたような一部保険の問題は私ども損害保険会社としても非常に分かりやすい形でお客様に説明する上で難しい問題がございまして,今は基本的には新価契約で実損型の保険を販売しております。これがほとんど主流になっておりますが,なぜ1000万円の物に600万しか保険を付けなかったときに,例えば300万の損害が起こったときに300万をなぜ払ってくれないのか。こういうお話だと思うのですが,これは1000万円のものに600万保険をお付けになったということは,保険会社に600万のリスクを,それからご自身で400万のリスクを背負われたというふうに考えて,事故が起こった場合に6対4の割合で払っていく。したがって,300万の事故が起こったときには,その300万の60%部分は保険会社が,それから300万の40%部分はご自身のポケットから。こういうことが一応理屈の世界ではなるのですが,一般の方に御説明してもなかなか難しいということで,今そういう形の保険がなかなかないように代理店さんを通じて販売はしているのですが,それにつきましては,是非この保険料率の仕組みというのがございますので,御理解を賜りたいと思います。 ● 昔から勉強していた者から見ると,②のただし書を取るというのは気持ちが悪いのですね。いかがでしょうか。   どうぞ。 ● 聞き落としたのかもしれませんが,立証責任を転換するようで申し訳ないのですが,返還の規定を置かなかった理由はどういう。(注)2の括弧書き……。 ● 現行法上ないものですから,とりあえず本文では出していないということですけれども。 ● 失礼しました。あっていいような感じもいたしますが。 ● ただし書を置くとすると……。 ● そういうことも考えられるかなとは思うのですが,どうでしょうかということです。 ● 実際は保険会社の方が協定しておいて,後で減額請求するというのは普通はあり得ない。契約者がだましている場合を除いてはあり得ないとは思うのです。実際に機能する局面というのは実務上はほとんど出てこないのではないかとは思うのですが。   損害てん補の考え方からいうと,ちょっとこれがないのはいかがかというのと併せまして(注)1で問題指摘があった,その第638条ですか,この資料でいうとアの①の「その時の価額」は何を意味するかというのも,最初,解説にあったように,これは事故発生時のそのものの時価というふうに当然に解していたと思うのです。中古品であれば中古品の価格。それは市場価格,車のように市場価格がないものについては何らかの算定基準で中古品としての価格を算定するのだろうという理解でいたのですが,調べていただいたところ,(注)1にあるように旧商法では動産類については新価でてん補するみたいな考え方があったようで,私もその元になったロエスレルの商法草案を見たら,やはり同じように書いてあって,やはり中古なんていうのは買い替えができないと,保険としての意味がないのだと思いますね。結構進んだ考え方が昔からあったようです。   そこで,そうだからといってアの①のようなその時の時価というのを,これも新価を含むのだ,中古車のような使用価格が付いているようなものを除いては新価を含むのだということになると,従来の理論からいうと大分違う理解かなと思うのですが。   ただ,かといって古典的な利得禁止という原則を非常に硬直的に維持することが適切ではなかろう。これは一方でそういう問題意識もあって,実務上先ほどから出ているようにいろいろな新価保険,建物の火災保険でもむしろそういうものが原則化しつつあるというふうなことでして,その辺りを踏まえてこういう法律の規定をどういうふうに置くか。あるいは,こういう規定はもう別に置かなくていいという考え方もあるかと思います。その時の価額をきっちり決めないとルールが設けられないということであれば,こういう面については法律では立ち入らないという考え方もあるかと思います。なかなか難しいかなと思っているのですが,いかがですか。 ● 今,○○委員からお話を頂いたとおりでございまして,あともう一つ気になりますのは,先ほど超過保険のところで無効とする意味があるかないかという議論の時に,○○委員から実務上生じている問題点について御紹介があったわけでございます。   それに関連して○○幹事からも先ほどこの問題とも関係するようなお話があったかと思いますが,まさに我々の問題意識もそこにありまして,あの問題が生じているというのは要するに,火災保険において,従来の考え方によるところの時価が原則である,新築の再調達価額は特約にすぎない,こういう扱いがされていた結果,結局,時価と約束したのに最初に契約されたまま,減額されないまま来ている。したがって,それを一部無効として返還する必要があるという議論になっているのではないだろうかと考えられるところでございまして,そもそもその前提がどうなのかということで疑問を持ちまして,いろいろ調べてみたところ旧商法ではこういうこともあったようであるということでして,先ほどの論点とも絡むのではないかと考えている次第でございまして,いかがでしょうかということでございます。 ● 評価済保険については,②のただし書を取っても,それは実質的に何か利得がけしからんものがあれば,公序良俗に反してそういう請求はできない,解釈論はそれはそれでできるのですよね。これを仮に取ったとしても。 ● 前提ですが,今御説明いただいたお話ですと,①の損害が生じた地におけるその時の価額という点は,従来の読み方ですとオーソドックスには時価を想定していた。今,○○委員のお話ですと,場合によっては新価も解釈で含むこともあり得るよ,こういうお話なのでしょうか。そういう話だとすると,②のただし書の部分は,新価を著しく超えるというようなお話になってくるのですが,これは恐らくは不当な利得の部分が出てくるわけですから,先ほど御説明が少しありましたような公序良俗に関わる問題が出てくる。   ただ,新価を設定する場合は,保険会社とも合意して新価設定しますから,よほど無謀なことでもない限りは,一般には新価のレベルでは考えにくいだろうな。そうしますと,結局,翻って現実的にこのただし書の部分がワークする,適用されるケースというのはやはり元の時価のパターンなのかなというふうに考えていたものですから,そういう意味ではこれはこのまま入れていただいてもいいかなと思っておりました。単純に思っておりました。   加えていいますと,協定保険価額のようなものを想定されているわけですよね。その協定保険価額のところでしたら,通常は,いわゆる時価ベースをお考えになっているのではないかと思ったのですが,そうでもないのですか。ここら辺は,全体は私ももう一つ十分に把握できていませんでしたので,誤解しているかもしれないです。 ● それは違ったレベルの話ではないですか。時価保険でも評価済保険があり得るし,新価保険は新価保険で評価済保険,新価の評価済保険というものがやはりあり得るのではないですか。違ったレベルの話で。 ● 新価の他の評価済保険ということを考えるわけですか。 ● それはあり得るのではないですか。再調達価額がインフレか何かで上がるとか,そういういろいろな局面で。そういう要素を入れると再調達価額を協定しておくという。再調達価格だからといってフィックスされるわけではなくて変動するわけだから,そこは協定しておく意味はあり得るのではないか。実際にそういうことをやるかどうかは別として。 ● ありがとうございました。もう少し考えさせていただきます。 ● どなたも新価保険を否定される御意見の方はいらっしゃらないと思うので,これは法律のルールをどう整理するかというところですが,観念的にはややこしい問題につながってき得るので,なおこれは事務当局でも検討して,特に研究者の先生方はこの辺りを少し御検討いただいて,次のラウンドまでお考えいただければと思います。   ほかにこの辺りで何かございませんでしょうか。   どうぞ。 ● 私もよく分かっていないのですが,この旧商法を引用したというのは,例えばこの中に動産の話がございまして,新調の費用を損害額の算定の根拠にしていた。この考え方を踏襲するというか,そういう意味合いでここに出したということですか。 ● 先ほどの冒頭の御説明で申し上げましたとおり,旧商法から現行商法に変わる時の,その当時の考え方ですが,必ずしも旧商法の新調の費用を否定した上で現行の規律に持っていったという説明はされていないのです。要するに漏れがあるので,全部に共通する規律として,書くとしたらこれしか術がないということで,今の規律があるようです。   ただ,その後の学説の進展,恐らくは利得禁止ということがかなり重要視されてきたわけで,その過程で新価保険というのはイレギュラーなものであるというような整理がされてきたのではないでしょうか。それはそれでもちろん合理性があるのだと思いますが,何度も申し上げて恐縮ですが,それが一番問題になるであろう火災保険においては,それがゆえに結局,実務もその整理に従って多分今のような運用がされてきた結果,原則は時価である,違うのは特約であるということになり,先ほどの社会問題化が一部しているようなものが生じてしまっているのではないでしょうか。であるならば,法律上もそれは別に特約でも何でもなくて,法律自体が想定している範囲内であるというふうに整理するのはいかがでしょうかという提案をしているわけでございます。 ● 分かりました。 ● 時価と言っても難しくて,本当に家財や何かを時価で評価したらろくな価値がないわけですから,それは実務でもそれなりに買い替える程度に近いものは払っている。そういうのを新価というか,時価の評価にもいろいろ基準はあるねというか,そういう話になるのだろうと思います。   ○○委員。 ● 今,○○委員のお話にもございましたように時価の評価というのは非常に難しくて,損害保険会社は一般的にどうしているか,御参考までに申し上げますが,建物ですと今同じ物を作ったら幾らかかるかという,再調達価格といいますが,これと購入してから何年たったか。例えば1年大体1.5%ぐらいずつ減耗していくと考えてみますと,10年たつと15%ぐらい減るだろうと考えております。   そうしますと,皆さんがお住まいの御自宅,例えば20年たちました。私の家も20年たちましたが,相当減耗している,自分では古くなっていると思っているのですが,保険者は今実際に作ったら幾らかかるだろうかというところから減耗分を引きますので,実際の購入した金額よりも場合によっては高くなることもありますし,かなり安くなることもあります。そういうふうに算出しております。   人が住んでいれば,最低限でも減耗は50%ですので,新しく作った家の価値の50%ぐらいの価値があると認めておりますので,私どもとしては火事が起こった場合にはそのお金で建て替えができるような,そういう仕組みにしようと思っておりまして,再調達というものを非常に重視しているということでございます。   非常に幅がございまして,実際には1000万円といっても1300万とか1900万とか非常に幅があるものでございますので,ピンポイントで決まるというものではございません。そこも是非御理解を頂きたいと思います。 ● この辺りは理論的な整理をなお進めて,次のラウンドにまた備えたいと思います。   では,先へ進みまして,「(6) 保険事故発生後の保険契約者等の義務」の部分につきまして御説明をお願いいたします。 ● 次に,(6)では保険事故発生後の保険契約者等の義務について取り上げております。ここでは,損害発生の通知義務及び損害防止義務に関する各規律について,いずれも保険事故発生後の保険契約者等の義務という点で共通していることから,これらをまとめて検討することとし,まずアで損害発生の通知義務について問題提起し,次にイで損害防止義務について問題提起しております。   まず,アについてですが,本文では保険事故の発生によって損害が生じた場合において,保険契約者又は被保険者がこれを知ったときは,保険契約者又は被保険者は遅滞なく保険者に対してその旨を通知しなければならないものとする案を御提案しております。これは現行の商法第658条の規律を基本的に維持しようというものでございます。同条は「其通知ヲ発スルコトヲ要ス」と規定して発信主義を採用しており,その理由については,到達するか否かの危険を通知義務者に負わせるのはあまりに過酷であるなどという説明がされておりますが,現代の通信手段の発達にかんがみ,本文では到達主義の原則によることとしております。   商法第658条の趣旨は,一般に保険事故が発生して損害が生じた場合において,保険者としてはてん補義務を負うかどうか,どの範囲で損害が生じたかを確定するために,損害の発生を可及的速やかに知ることが不可欠であるが,損害の発生は保険契約者側の把握している事情であり,保険者が自らその情報を入手することは容易ではないことから,保険契約者側にその通知義務を課すものであるといわれております。   商法は通知義務違反の効果に関する規定を置いておりませんが,この義務を真正の債務と解し,保険契約者等がこれに違反した場合には債務不履行となり,保険者はこれによって生じた損害額を保険金の額から控除することができるとする見解が一般的なようです。   通知義務違反の効果に関し,現在の多くの約款では保険契約者又は被保険者が正当な理由なく通知義務に違反した場合には,保険者は保険金を支払わない旨を定めておりますが,最高裁昭和62年2月20日判決は,保険者の免責を定めた当時の約款につき,保険契約者又は被保険者が保険金を詐取し,又は保険者の事故発生の事情の調査を妨げるなどの保険契約における信義誠実の原則上許されない目的の下に事故通知をしなかった場合に限定して保険者の免責を認め,それ以外の場合には事故通知を受けなかったことにより被った損害の限度において損害てん補責任を免れるにすぎない旨の判示をしていることから,このような約款の解釈はそのまま維持されることになると考えられます。   (注)1では,実務上,約款で保険契約者及び被保険者に課されているいわゆる説明義務を法定すべきであるとの考え方について問題提起しております。現在の多くの約款には,「当会社が特に必要とする書類または証拠となるものを求めた場合には,遅滞なく,これを提出し,また当会社が行う損害または傷害の調査に協力しなければならない」などの定めがあり,保険契約者又は被保険者が正当な理由なくこの義務に違反した場合には,保険者は保険金を支払わないこととしております。   確かに,保険事故は保険契約者側の支配圏内で発生することが多いため,事故原因や損害額等の調査のために保険契約者及び被保険者の協力が必要な場合もあると思われますが,このような説明義務を保険事故が発生した場合の一般的な法定の義務として課すことは,保険契約者側にとって過度の負担となる可能性があり,また説明義務の範囲が本来保険者が証明責任を負うべき事項,例えば免責事由の有無等に及ぶ場合には,その証明責任が保険契約者側に実質的に転換されることになる恐れもございます。   そこで,このような説明義務を法定するかどうかについては,保険契約者側の負担,証明責任との関係等に留意しながら,信義則上認められる協力義務では足りないのかという観点から御議論を頂きたいと思います。   (注)2は本文の規定の性質について問うものでございます。   次にイについてですが,本文①の前段では保険事故が発生した場合には,保険契約者又は被保険者は損害を防止しなければならないものとする案を御提案しております。これは現行の商法第660条第1項本文の規律を基本的に維持しようというものでございます。この規律の趣旨は,一般に保険事故が発生しても,損害の発生を防止したり,それを最小限に食い止めたりすることが可能な場合もあり,このような措置は保険の目的の帰属者である被保険者が採ることが最も現実的であるため,保険契約上の信義則の要請から被保険者に損害防止義務が課されたものであり,また損害の防止は公益にも合致するという説明がされています。   商法は損害防止義務違反の効果に関する規定を置いておりませんが,アの通知義務と同様に,この義務を真正の債務と解し,保険契約者等がこれに違反した場合には,保険者はこれによって生じた損害額を保険金の額から控除することができるとする見解が一般的なようです。   現行の商法は,先ほど御説明した趣旨にかんがみ,被保険者のみに損害防止義務を負わせておりますが,被保険者と密接な関係にある保険契約者にもこの義務を課すことが合理的であり,実務上も保険契約者及び被保険者を義務者とするのが通例であるといわれていることから,本文では保険契約者にも損害防止義務を負わせることとしております。   また,一般に損害防止義務の内容には保険事故自体の発生の防止は含まれず,保険事故が発生したことを前提として生じる義務であると解されていることから,本文では「保険事故が発生した場合には」という文言により,この点を明示することとしております。   さらに,商法第660条第1項本文の「損害ノ防止」の意義を明確にすることも考えられることから,一般に損害防止義務の内容には損害の発生及び拡大の防止が含まれるといわれていることにかんがみ,括弧内で損害の発生及び拡大を防止するとの案も御提案しております。   しかし,保険事故の発生後に被保険者等が損害の発生自体を防止し得る場合が果たしてどれだけあるのか疑問であり,他方でいったん損害が生じた後の損害の拡大を新たな損害の発生と位置付ければ,損害の発生の防止を観念することができるとも考えられます。   本文①の後段では,この場合において,損害の防止のために必要又は有益であった費用は,当該費用の額と損害のてん補額との合計額が保険金額を超えるときであっても,保険者の負担とするものとする案を御提案しております。これは,商法第660条第1項ただし書の規律を基本的に維持しようというものでございます。   これは,一般に,たとえ費用がかかっても,損害を防止した方が保険者としても保険金支払義務の拡大が防止されて有利になることから,損害防止のために必要又は有益な費用については,本来のてん補すべき損害とはいえないにもかかわらず,これを保険者に負担させる趣旨であるといわれております。   現在の多くの約款では,保険者は損害てん補額との合計額が保険金額を超えない範囲で損害防止義務を負担すると定めていますが,一般に損害防止義務に関する商法の規律は任意規定であり,このような特約も有効であると解されております。   しかし,本来,被保険者等の損害防止義務はそれに要した費用の償還が受けられるという保障があって初めてその履行が期待できるものであり,保険者が費用の全額を負担しないにもかかわらず被保険者等に損害防止義務を負わせるのは,被保険者等にとって過度の負担になる可能性がございます。   また,翻って考えれば,損害防止義務自体が信義則上の要請に基づくものである以上,そもそもこの義務自体を法定する必要がないのではないかとの疑問もあり,特に実務の多くの事案において損害防止費用の償還が制限されていることにかんがみれば,この義務を法定すること自体の合理性につきましても検討が必要であると思われます。   本文②では,現行の商法第660条第2項と同様に,一部保険の場合には損害防止費用についても比例按分主義を適用することを御提案しております。これは先ほど御説明したとおり,一部保険の場合には,保険者は比例按分による損害てん補責任を負うことから,損害防止費用についても同様の割合的責任を負うものとする趣旨でございます。   (注)は本文の規定の性質について問うものでございます。以上でございます。 ● ありがとうございます。それでは,通知義務と損害防止義務のパートにつきまして御意見を頂きたいと思います。   ○○委員。 ● アの通知義務とイの損害防止義務,両方に意見があります。   まず,通知義務につきまして申し上げたいと思います。一般の例えば自動車保険の約款等々では損害発生を遅滞なく通知という形ではなくて,実際には損害発生を直ちに通知というふうに約款上は書いてございます。   これはなぜ「直ちに」という表示をしてあるかといますと,例えば自動車事故の場合には,直ちに事故通知を頂くことによりまして速やかに原因調査や立会い調査ができまして,早期の事故解決が図れるというふうに考えているからでございます。こうした約款,現在の約款が事務当局案との関係で不当条項という可能性があるのであれば,この「遅滞なく」ではなく「直ちに」通知するというふうにしていただきたいなというのが損害保険業界の考え方でございます。なお,不当条項とは考えられないということであれば,このままでも構わないと考えています。   それから,併せまして説明義務につきまして,現在,個人情報保護法の施行によりまして,保険金支払に必要な書類の取付けとか調査に被保険者側の協力がなかなか難しいケースが増えてきております。損害保険の場合につきましては,事故状況や損害額の確定に必要な説明をしていただくということが非常に適正な保険金の支払に大切なことになると思いますので,契約者,被保険者,事故が起こった場合の協力義務や説明義務を是非約款上に義務付けることができるように,その根拠となるように協力が得られやすくなるための規定を法律の中に盛り込んでいただくことが望ましいと考えております。   それから,損害防止義務については後ほど申し上げたいと思います。 ● 今,通知義務の方のお話を頂きましたので,まずこの辺りはいかがでしょうか。   ○○幹事。 ● 今御説明いただいたこととほぼ同じですが,加えてどのレベルの説明を求めるか,協力を求めるかというのは一番難儀なところかと思うのですが,契約締結前の告知義務と大体同じレベルの協力義務というのを考えてはどうか。要は知っていること,調査を契約者側にせよというのはちょっと行き過ぎだろうと思いますし,それから先ほど御説明がありましたように,場合によったら免責事由に当たらないよというような証拠まで提出せよという協力を求められるのは,これはもう行き過ぎということは明らかなので,少なくとも契約者,被保険者側が今事故でどういう状況にありますかということを自分が把握できている,知っていると言った方がいいのでしょうか,そのレベルの事実は保険会社側に説明する必要があるということであれば,その契約締結前の告知義務とバランスがとれるかなとは思っているのですが,それ以上立ち入ってどこまで協力義務という形で要求できるかというと,ちょっと行き過ぎな証拠提出というようなところまでいくとしんどいかなとは思っております。 ● どうぞ。○○幹事。 ● 今のお二人の委員,幹事の方からの御意見と大体同じなのですが,それに加えてというか,損害発生の場合の保険契約者,被保険者の通知義務を契約関係の付随義務としての協力義務というふうに観念して,それは保険事故の事実というのが保険契約者側,被保険者側に偏在しているという保険契約の特性上,それを法律上の義務に格上げしてもいいのではないかと思っております。   これはまたちょっと突飛な発言になってしまうかも分からないのですが,前回,危険の増加のところで申しました通知義務というのが多少違和感があるというふうに申したかと思います。危険が増加したときの効果のように通知義務があって,それの違反の場合というふうに仕組むと何となく危険の増加の場合には通知義務というのが契約上の付随義務ではなくて,主たる義務になってしまうような印象を受けまして,ちょっと整理がしづらいのかなと思います。   ですので,この損害発生の時の通知義務で,保険者側が直ちに損害の額を算定したりとか,何か不正なことはなかったかとか,そういうことを自力で調査するプラス,それに協力するという義務というふうに整理した場合に,危険が増加したときに保険者側としては保険料を見直したいという,その事実を調査するために協力する義務ということで危険の増加の場合の通知義務。それから契約を締結する場合に,保険料を算定するのに保険者側に事実がないので保険契約者側が協力する義務としての告知義務というふうに位置付けると,比較的一貫できるのかなと思います。   そのように解した場合に,先ほど協定によって評価額を,保険価額を定めたけれども,それは実は過大であったということがある場合に,どうやってその要件と効果を定めるかというのにただし書はなくてもいいのではないかというような御説明もあったかと思いますが,それを告知義務とパラレルというふうにストレートに言うと多少ずれがあるかも分からないのですが,契約関係でバランスを失したときには,その効果としては解除又は内容の変更ということができるというふうに位置付けると比較的整理がつけやすいかなと考えております。   保険契約において一貫して通知義務を付随義務と位置付けるのであれば,要するにその効果というのが契約を無効にするとか,直ちに通知義務の違反によって契約が無効になるとか,そういう強い効果がないような義務であれば,法律上規定することで差し支えないのではないかと考えます。 ● ○○委員。 ● 説明義務のところですが,どういうものを法律に書くか,また書かないかという基準の問題だと思うのですが,強行法となれば当然書かなければいけないし,スタンダードを決めることが利益を及ぼすのだというのであれば,それもあるかもしれませんけれど,この通知義務のところは実務の約款は非常に効果が厳しすぎる。多分,裁判所の判断はまた限定しすぎかもしれない。結論としては,私は法律に書くというのには賛成できないのですが,その理由は,例えば強行法規といっても効果がはっきりしなければ意味がないわけで,そこがなかなか今のところうまく解決できていない。ですから,約款のレベルでおやりになるのはいいのですが,それ以上しなければいけないという理由はなかなか私はないと思います。ですから,ここは説明義務を立法化するというのには反対したいと思います。 ● ○○委員。 ● 私が想定しています一般の消費者は,事故に遭いましたらすぐ保険会社に一報いたします。通常,保険会社が出してくださいというものに対しては大変協力的で,保険金を払ってもらいたいという一心から大変協力的でございます。それをわざわざこういう形で法定化しなくてはいけないのかというのは大変疑義がございます。   ましてや皆さんおっしゃっていただいたように,約款としては効果がすごく……,要件と効果と考えるとすごく効果が大きすぎるということ。それから,過度の負担であるということもありますし,それからこんなことは証明できないということまで要求されてはとてもではないけれどもやっていられない。まともな消費者は保険金を払ってもらいたいからきちんと申入れをするのだけれども,ここまで言え,あそこまで言えと言われたら,とても大変だという部分がございまして,そういう意味では○○委員がおっしゃったようにしてくれないのが一番よろしいのですが,やるのだとすれば効果を規定しないか,又は単なる訓示規定で,最初からお飾りみたいな言い方で大変失礼ですが,そういう形でやっていただくのが,確かに言わない人がいたら,それは困るという部分もあります。そうしていただけないかなとは思っております。 ● ○○幹事。 ● 別の点で念のために確認させていただきたいという趣旨です。到達主義の点について,先ほどの御説明ですと元々到達についてのリスクを発信者に負わせないという政策判断から出されていたところ,通信手段の発達にかんがみると到達主義の原則に戻っていいのではないかという御説明だったのですが,通信手段の発達にかんがみるならばリスク分配はそのままでもよくて,ほとんど変わりないではないかということも考えられますし,電子承諾通知のときも到達主義という点については,限定は必ずしもされていませんが,消費者の通信販売のような場合を考えたときに,むしろリスクを消費者が負わない形になるということが一つの政策判断としてあったかと思うのですが,この局面では逆になってくるような気もするものですから,果たしてこれだけの理由で到達主義の原則に戻るということが十分なのかという気がするものですから,恐らくもっと付加的な理由があるのではないかという推察をするのですが,そういった事情があるようであれば教えていただきたいと思います。 ● 要するに何が原則かということではないかと思います。少なくとも現行法では発信主義になっているのは間違いがなくて,ただ,我々の方で調べた範囲では先ほど説明したような理由しかないところのようです。   結局,今,現時点において,これは効果がどういうものかということとも多分結びつく話だろうと思っておりまして,学説上はこの(補足)に書いてあるようなことがいわれているようですが,具体的に損害賠償は何が損害なのか,具体的に算定できるものは何があるのかというのはよく分からないところではありますが,結局,効果が法定されていないところで,現代社会における通知の方法を考えて,事故が起きた場合ですね,通知の方法を考えて,何がスタンダードな規律であるのかということを考えると,殊更に発信主義にしなくてもよろしいのではなかろうかという御提案でございまして,そこはもし御意見があればと考えている次第です。 ● ○○委員。 ● 直接生命保険のところが議論されているわけではないのですが,効果としての損害賠償責任とかそういうのを除けば,保険会社の実務からいえば事故が起きていることについては連絡を頂かないと物事がスタートしない。発信していても到達していないと知りようがないので,動きようがないというのは多分実務だと思うのです。そういう意味でいくと,今各社の約款というのは到達をベースにして物事を組み立てていますから,そういうので実際の実務からいくと,発信主義ですと言われても多分ワークしないというのが元のところにあるのではないか。事故が起きている,あるいは損害が発生したことを保険会社の方に到達して,そこで初めて物事が動き始めるということで,そこが起点になるということではないのではないかと思っておりますが。 ● 通知書を発しても,何らかの郵便の事故か何かで届かなかったときに,この義務違反の効果が発生するかというと,それはないだろう。届かないと,そういう意味で通知義務違反になって何らかの効果が発動されるみたいな,そこまで考えているわけではないですね。   義務を課す理由としては,保険会社が知ることが○○委員がおっしゃったように重要だということはあるわけで,それは義務としてはそれを到達という方が本来の狙いには合致するだろう。   仮に到達しないような事故が起きた場合に,それは直ちに何かの不利益につながるかというと,それは事情によって契約者側に全然落ち度がないようなものについて,何か不利益を生ずる,そんなことはあまり想定していないだろう。 ● 実際にその後の処理が進むかという点からすると,知らせられなければ進みようがないわけですし,その部分についてだれがイニシアティブをとるかというと,契約者の方だと思うのです。発信はしたけれども,全然アクションが起こされなければ,連絡したはずなのにどうなっているのかという問い合わせをできるのも契約者側だと思うのですが,元々の説明で到達のリスクとともにそれが遅滞なく到達までいかなかったではないかということになるようだと,非常に問題であるということがありますので,今のような理解の下で,それに基づいて実は実質的には効果違反というのは全く生じなくて,何らかの加重の義務ないしは責任は生じないのだという理解の下であれば,メカニズムとして動くような保険に適合的なものとしてはむしろ到達主義の話,到達主義という言葉を使うかという問題かもしれませんが,隔地者間でのリスク配分を考えた規定ではないのだという,むしろそういう話ではないかという気がするのですが。 ● 通知義務と説明義務について御意見を頂いていますが,損害防止義務の方はいかがでしょうか。   ○○委員。 ● 損害防止義務につきまして損害保険業界の考え方を申し上げたいと思います。損害防止費用は保険金額を超えるときでも保険者の負担が負担するというふうに書いてございますけれども,これにつきましては,例えば,これは保険の種類によりましては大分違いまして,個人の火災保険につきましては保険金額を超えても支払をするというふうになっていますが,一方で自動車保険の賠償条項につきましての費用は保険金額の内枠,合わせて保険金額以内というふうになっております。   また,どういうものが対象になるかにつきましても,火災保険の場合は損害防止費用というのは消火活動に関わる費用に限っております。これはそれぞれ事情がございまして,例えば火災保険につきまして損害防止費用というものを広く拡大しますと,いろいろな費用が損害防止費用になるということから,消火活動に限定しているわけでございますが,費用をどの範囲で支払うかとか,それはすべて保険料に関係してまいりますので,現行の自動車保険や火災保険の約款でもやはり保険料に妥当に反映されていれば,不当条項には当たらないと私どもは考えております。   このような理解でよいのであれば,任意規定とすることを前提としてこの事務当局案でよろしいかと思うのですが,もしこれが不当条項になる,現在の約款が不当条項になるというような恐れがございますれば,これは契約者が負担されます保険料にも影響しますので,法律でここまで規定するのはどうかなと考えております。   それから,事故の発生後の義務になると。損害防止費用というのは事前ではなくて事故が発生した後の発生する義務であるということを明確にした点,さらにまた保険契約者も義務の対象となるという点につきましては,私どもは賛同いたしたいと思っております。以上でございます。 ● ありがとうございます。これは昔から保険法では法定されている義務で,当然あるものかなという,私などはそういうイメージだったのですが,先ほど説明にあったように,義務を課されるのだけれども,ではそれにかかった費用をてん補してくれるかというと,今○○委員のお話にあったように,一部の保険では保険金額を超えてもてん補されるけれども,大部分のものはそうではないという,そういう実態があって,実際に事故が起きたときにどれだけのことを義務としてせよと言えるのかというのは,現実的に考えてもこれが実際に機能する局面がどれだけあるか。事務当局の説明の中ではそういう面も考慮すると,こういう規定を是非置いておかないといけないのだろうかというような問題の指摘もあります。   私のように若いころからこういう分野を勉強していると,そういうのが全然なくなってしまうというのももう一つ気持ちが悪いなというところですが,いかがですか。   ○○委員。 ● 企業ユーザーも保険ユーザーなので,ユーザーの立場は当然なので言う必要もないと思ったのですが,先ほどのアの方の説明義務について,やはりユーザーとしては若干説明義務とすることは過度というふうに当然受け止めています。協力はするのだけれども,説明義務というと結果責任がつきまとうので,法定化というのはユーザーとしては抵抗がある。   それから,損害防止義務ですが,費用が保険金の範囲内であるということについては,現状の日本の実務はそうなのですが,ライアビリティ・インシュアランスですね。責任保険で第三者から訴えられた場合の応訴費用というのは,保険大国のアメリカでは基本的に外枠で保険会社がやってくれるので,訴訟社会になると頼りになる保険があるということで,私もアメリカにいた時には助かりました。訴状がぼんぼん来て,それを保険会社にボンとお願いすれば外枠で弁護士費用,これで全部やっていただける。こういうのが今日本にはあまりないのですが,将来の傾向として日本もだんだんPL訴訟その他を含めて訴訟が増えてくるという方向感を見せると,この費用というのが保険金額を超えるということをやっても保険会社の負担という規律が任意規定として一つの考え方であって,特約で保険料との関係でそうではないというのも当然でございますので,そういう規律で違和感はないと申し上げます。 ● ○○委員。 ● これはお金を払ってくれるかどうかという問題があります。払ってくれないのならその義務はその内容に合わせて内容を薄くしていく,解釈する。こういうのが本当はいいのかもしれませんが,法律に書いてしまうとそう言えるのか。   そうすると,最後は,一般債権法上の一般原則としての義務はあるということにして規定はやめる。民法の方でそれ相応の損害防止義務を念頭に置けるのであれば削るというのも一つの方法ではないかと思います。 ● ○○幹事。 ● 民法の方で損害防止義務なりが観念できて,その違反の効果についても一定の効果が確立しているかと。 ● 効果までは。効果というところがそんなに詰めていなければいけないかというのは問題があると思いますが,もちろんゼロではいけないと思います。立派なものではなくてもいいという観念ですが。 ● 損害防止義務というのが民法上の手がかりとしては恐らく二つあって,一つは契約上の一種の協力義務ないしは信義則上の付随義務としての損害防止義務という話と,他方で損害賠償のところで語られる損害軽減義務という一般的な話と両方あるかと思います。これがどちらかという話がまず一つはあるように思います。   それから,前者の方の各種の契約において明示に合意されていなくても信義則に基づいて一定の義務が発生するというのは契約の一般理論であって,しかしながら具体的にどういう信義則上の義務が発生するかは契約類型によっても変わってくる問題ですので,当該契約で典型的に考えられる類型であるならば,それは規定した方がいいのではないかという感じはいたします。ただ,信義則を媒介として導いてくるということにはなりますので。   後者の損害軽減義務は英米法では非常にポピュラーなものであって,効果としても損害賠償がそれだけ取れなくなるということだというのではあるのですが,日本法においてはかなり議論のある概念で,債務不履行の場合の損害賠償の局面においてという話と不法行為の場合と両方あるわけですが,この局面は基本的に債務不履行ということを想定したときに,債権者に損害軽減義務があるかということになるわけですが,これは学説上,対立が結構あるような話で,大変有力なこれを肯定する見解がありますが,有名な論文も二つぐらいという状況ですので,果たして確立した原則と言えるかと言われると,そこは大変有力な主張ではあるけれども,いまだ十分には煮詰まっていないのではないかという気はしますので,完全に削除して民法にゆだねられて大丈夫だろうかというのはやや懸念を持ちます。 ● ○○委員。 ● 契約に書く,法律には書かない。契約には各社工夫して書いていただく,そういうのだったら。 ● 契約で書けばもちろん不当条項等でない限りは義務として認められるので,その限りでは全く民法上の問題はない。 ● 契約の根拠としてそういう理論を多少引用する。であれば一応飲み込めるということになりますか。当然の見込みということになりますか。 ● 当事者が合意するのならもちろん。 ● ○○幹事。 ● 損害防止義務のところですが,確かに契約法上の付随義務というとらえ方もあるとは思うのですが,一つの考え方としては,いったん事故が起こって,通常そこから起こり得る損害というものが発生した後の損害については,防止をしなければ故意に損害を拡大しているというふうにも見ることができるわけです。例えば,極端な例でいきますと,火事が起こりました。本来だったら消防署に通知をすればいいところですが,それを燃えているのだったら全部燃えてしまえばいいという形で,極端な場合はそういうケースを考えれば,その極端な事例でいきますと,後半の部分は保険事故から発生しなかったものについて人為的に発生を拡大させているわけですから,払っていいのかという問題が保険法的には存在するという説明の仕方もあって,単純な契約法上の付随義務ではまとめられない部分もあるのかなというのがちょっと思ったところです。   それは要するに,本来でいきますと,自分は火災保険に入ったからといっても,火災が起こらないように普段から注意をしているわけですね。通常,火災は起こらないように生活上,注意を果たしているわけですから,それと同程度の火災が起こった後のそれを拡大させない義務というのがあるというのは,保険というものに入ることによって注意散漫になるという,いわゆるモラルハザードというものを考えた場合に,それを何らかのモラルハザードに対する制裁という形での義務化というのがあってもいいのかなというのが思ったところです。   損害防止義務の話が今重要なのでしょうが,ついでですので説明義務についてだけお話しさせていただければ。先ほどもう既に事務当局の方からも御説明があったのですが,私は,これは義務と書くと証明責任との関係でややバッティングするのかなというのがすごく気になるところであります。   例えば,火災が起こったときに最高裁の判例でも火災については原因を請求者側に言わせる必要はなくて,火災が起こったということだけ証明すればいいということで,あとは免責事由は保険者の方で証明責任を負うということはもう確立しているわけですが,そういうときに,例えば両親が亡くなって,その火災の原因が無理心中だったのではないかと思われる節があるが,確証が得られないというようなときに,その子どもに対して夫婦仲はどうだったのかとか,それまでの間に何か自殺をにおわすようなことはなかったのかということを徹底的に調査に来ても,そのことについて子どもの方としては何も言いたくない。そういうことで保険会社の人たちに言う必要はないだろうということで非常に対立的な状況に陥ったときに,保険会社としては協力を得られなかったから証明はできなかったのだということを言うのかというと,それは言わないだろうと思いますが,こういう義務を課せば証明責任を果たせなかったことが相手方の説明義務違反だということになりかねない部分があって,やや気持ち悪いかなという。これは義務として法定するのではなくて,先ほど来から出ている契約法上の信義則上の協力義務と,それから○○委員がおっしゃられたと思いますが,本来,保険金がほしいわけですから,そういう意味では通常は説明するというところにゆだねておいていいのではないだろうかと考えました。 ● ○○委員。 ● ○○幹事におっしゃっていただいたのでほとんど言うことはないのですが,そのとおりでございまして,義務が多すぎるのです,消費者側からいいますと。通常の消費者は保険法で損害防止義務を課せられているなんていう認識は多分ないと思うのです。多分,そんなことは思わなくて,家が焼けていたら必死になって消防署には電話をするでしょうし,必死になって消火器を持って走って行くかもしれませんけれども,それは保険法で課せられている損害防止義務を自分が履行しているのだという認識は全くなしにおやりになっていらっしゃると思うのです。だから,そういう意味では損害防止義務とここに書いてあるのはさっきの通知義務と同じに,譲ってせいぜい訓示規定と申し上げましたが,それと同じような状況であればまだしも,モラルハザードの問題でいえば保険金詐欺などの信義則,そういう部分は違うところでおやりになるべきであって,ここでこういうものをかけたことによって,何かモラルハザードを何とかブロックしようというお話は筋が違うのではないかと思います。   それから,先ほど消防署への通知と言われたのであっと思い浮かんだぐらいで,具体的に損害防止義務,損害の発生と拡大の防止のためにうんぬんかんぬんと言われて,何をやればいいのかというのは全然つまびらかには分かりませんで,そういう意味では具体性を欠いているような印象がございます。 ● ○○幹事。 ● 私は先ほど○○幹事から御説明があったような考え方に賛成なのですが,通知義務は成立の場面でも,契約期間の場面でも,保険事故が起こった場面でも付随義務という位置付けは失わない方がいいと思っている反面,付随義務であっても,保険契約の特性上,法律上の義務に格上げしていいのではないかと思っておりまして,それで損害防止義務に関しましても○○幹事がおっしゃっていたところまでは全然理解できていませんが,少なくとも民法上も契約法ではないですが,不法行為で過失相殺ということも法律上規定されておりますし,その場合の過失というのは不法行為者側の過失とは違って,何らかの寄与があった場合といわれていると思いますので,損害が発生した段階で損害の拡大に努めなかったことというのも大体類似に観念できるのではないかと思います。   それで,この点に関して消費者側の負担になるという御意見もあるかとは思いますが,それは事故が起こって何かしなければいけないというのは,損害が拡大しないように努めなければならないというのは,これは一般的な常識であるところ,プラス自分はこれに保険をかけていて,保険金がもらえる地位にあるというのは,普通の事故とは違うと思う。多少強化した義務になっているかなと思います。   それがパラレルに言えるかどうか分からないのですが,商法の方でまた瑕疵担保のことになってしまうのですが,瑕疵担保の責任を追及する側は相手方,買主側がお互い速やかに営業活動,商取引を完結しなければならないから,速やかに検査して6か月以内に請求しなさいということが規定されているわけです。そちらの商法上の瑕疵担保責任の特則については,その効果が瑕疵担保責任を追及できなくなってしまうという厳しい効果があると思います。保険契約者側,被保険者側にそこまでの効果は課さないで,漠とそれによって,事件として合わないかもしれませんが,人をひいてしまって助けたら怪我だったけれども,寒い夜に放置してしまったというときに拡大防止の義務違反をしていますねというときには,ちょっと違うかも分からないのですが,多少保険金額が減額されるような考慮要素になっても不当ではないのではないかと考えております。 ● 確かに保険というのはいろいろたくさんのものがあるので,家が火事になったときにどうするのだというレベルの話だけで考えてもあれかと思います。そこはいろいろ考慮する要素はあるかと思います。   ○○幹事。 ● 一言だけ。説明義務は大分不評ですが,私も別に一般的な義務というのを認める必要まで感じているわけではなくて,協力義務の一つとしてまさに契約上の信義則上の協力義務の一つとして考えればいいかなとは思っているのですが,保険会社側は,もし法典上認められたとしても,強制的に履行させようという,裁判所に訴えて履行を強制するような義務の性質ではもちろんないと思いますので,どこまでいっても間接義務的な要素が非常に強い中身,性質を持つものですので,法典化されないとしても理論上,それが認められるものであれば実際的にはあまり影響はないかなと思っておりますので,法典化されるかどうかというよりも,これを実際にワークするような形で入れられるかどうかということで,最初におっしゃったように最近,プライバシーということを楯に何も言わないとか,そういう話がもしあるとすれば,これは少しこういうのを入れておいた方がいいのかなという,そういう意味合いで申し上げました。 ● ○○委員。 ● 説明義務のところですが,法定すべきか,した方がいいかというのは判断がよく分かりません。それぞれに理があるような感じがして。ただ,もし法定する場合には,保険者側にある免責についての説明責任,これは保険契約者に転嫁されないように是非留意していただきたい。   それと,損害防止義務の方ですが,①に書いてあるところでいわゆる防止のために必要有益であった費用等々を保険金額を超えるときがあっても,保険者の負担とするものとするというところは,このとおりでいいなと思いますが,損害防止義務を商法上に言うならば国民の義務みたいなものを商法に規定するというところはちょっと違和感はあります。私は法律的なところはよく分かりません。 ● 特に説明義務の辺りについては御意見が分かれています。損害防止義務についてもこういう規定が要るのかというような御議論もありましたが,損害防止義務はもうちょっと具体的にどういう義務が課されるかというあたりを整理した上で,もう1回議論した方がいいと思いますが,今日のところはこのぐらいのところで,なお事務当局に今日の問題提起を踏まえて検討していただこうかなと思います。そういうことでよろしいでしょうか。   それでは,このペーパーの最後の「(7) 損害発生後における保険の目的物の滅失」についての御説明をお願いします。 ● (7)では損害発生後における保険の目的物の滅失について問題提起しております。   (補足)に記載のとおり,商法第659条については一般に保険者に保険金支払義務がいったん発生した以上,その後に当該保険契約の目的物が滅失したとしても,発生した損害保険金支払義務が消滅することはないという当然のことを規定したものにすぎないといわれていることから,本文では同条の規律を削除することを御提案しております。   同条が想定する場面としては,例えば火災保険契約の目的物である家屋が半焼した後に洪水により同家屋が流失した場合等が考えられますが,商法制定時の資料によれば,商法制定当時,このような場合に保険者は火災により消失した部分をてん補する責任を負わないとする見解があり,この種の解釈を試みる余地があるため,同条を設けて保険者の保険金支払義務が消滅しないことを明確にしたという趣旨の説明がされております。   そこで,同条の規律を削除するかどうかについては,現代の法解釈として,何も明文の規定がない場合に,いったん発生した保険金支払義務が消滅すると解釈する余地があるのかという観点から御議論を頂きたいと思います。以上でございます。 ● 以上のとおりですが,何かこの点について。   古い学説で今御紹介があった,最初に生じた分損の損害てん補請求権というのはなくなるのではないかという意見があるので,こういう規定を設けたというのですが,そういう解釈が今もあるとすると,この規定をなくすと困ることになるかと思うのですが,ないのではないかと思うのですが,この点,特に御意見はございませんか。   では,一応こういう方向で御異論はなかったということではないかと思います。   それでは,恐縮ですが,前回の保険法部会資料3で積み残しておりました保険者の破産等に関する部分に進みたいと思います。まず,部会資料3の5頁「(3) 保険者の破産」という部分と,7頁の「(4) 第三者のためにする保険契約における保険契約者の破産」の両方にまたがりますが,これを一括してまず事務当局より御説明を頂きます。 ● (3)でございますが,ここでは保険者の破産について取り上げております。   本文の①では,保険者について破産手続開始の決定があったときは,保険契約者は保険契約の解除をすることができるものとする案を御提案しております。これは現行の商法第651条第1項本文を現代語化したものでございます。   一般に保険契約は双務契約であると解されているため,それを単純に当てはめてみますと,未払の保険料がある場合に双方未履行の双務契約に関する破産法第53条が適用され,破産管財人は,保険契約の解除をするか,又は保険契約上の危険負担義務を履行して,保険契約者の債務の履行を求めるかの選択権を持つことになり,他方,保険契約者は,管財人に対して相当の期間内にどちらを選択するかを確答をするよう催告する権利を持つことになります。   しかし,この規律に従えば破産管財人が選択権を行使するまでの間,又は破産管財人からの確答を受けるまでの間,保険契約者は不安定な地位に置かれることになります。そこで,商法第651条第1項本文は,破産法第53条の適用を排除して保険契約者に保険契約の即時の解除権を認め,保険契約者が早期に保険契約から離脱できるようにしたものであるといわれております。   このように商法第651条の趣旨については,保険契約に破産法第53条が適用されることの不都合を前提とした説明がされるのが一般的ですが,毎回の保険料と該当期間の保険者による危険負担との間に厳密な対価関係が存在しないことなどを理由に,保険契約の双務契約性に対する疑問を提起する見解もあり,この見解に従えばそもそも保険契約には破産法第53条の適用がないことになります。もっとも,仮に保険契約に破産法第53条が適用されないとしても,商法第651条第1項本文の規律自体には合理性があると考えられるため,本文①ではこれを維持することとしております。   本文の②では,本文①の規定により解除されなかった保険契約は,破産手続開始の決定があった日から一定の期間を経過したときは,その効力を失うものとする案を御提案しております。   本文①の規定により保険契約者は保険契約の解除権を有することになりますが,保険契約者がその解除権を行使しない場合に,いつまでも保険契約が存続されるとしたのでは,破産手続の終結が遅延する恐れがございます。   他方で,保険者について破産手続開始決定があったときは,直ちに保険契約が失効するとの規律を設けると,保険契約者が別の保険者との間で新しい保険契約を締結するまでの間に無保険状態が生じることになります。そこで,本文②では,破産手続の早期終結の要請を考慮しつつ,同時に保険契約者が新たな保険契約を締結する時間的余裕を確保するため,破産手続開始決定日から一定の期間を経過した時点で保険契約が失効するものとしております。   なお,本文の規律に関連する問題として前回の当部会の会議におきましても○○幹事から御指摘がございましたが,本文②の一定の期間内に保険事故が発生した場合に,保険金請求権が破産債権となり,保険契約者は割合的弁済を受けられるにすぎないのか,それとも財団債権として破産債権に先立って弁済を受けられるのかについては争いがございますが,破産管財人が双方未履行双務契約の履行を選択した場合の相手方の請求権に関する破産法第148条第1項第7号を類推適用して,財団債権になるという見解が有力なようです。   また,同期間内に保険契約者が保険契約を解除した場合又は同期間経過後に保険契約が失効した場合に,積立金払戻請求権又は解約返戻金請求権が破産債権になるのか,財団債権になるのか等の問題もございますが,少なくとも後者については宣告前の保険料支払に対応するものという理由で破産債権になるという見解が有力なようです。   これらは,後ほど御議論を頂きます(後注)2の一般先取特権の付与とも関連すると思われますが,御意見があればお願いいたします。   (注)1では,本文②の「一定の期間」について問題提起しております。   現行の商法第651条第2項は,破産手続開始決定日から3か月が経過した時に保険契約が失効すると規定しておりますが,平成16年の破産法の全面改正によって破産手続全体の迅速化が図られたことを考慮すると,3か月という期間は長く,破産法改正の趣旨に合わないとも考えられることから,この期間を短縮することの要否について問うものでございます。   (注)2では,再生手続に関して問題提起をしております。   本文は破産手続に関する規律ですが,保険者に関する倒産手続としては破産手続のほかに再生手続,更生手続及び特別清算手続がございます。このうち特別清算手続に関しては,保険業法第177条により,商法第651条と同様の規律が適用されることになります。また,更生手続に関しては,金融機関等の更生手続の特例等に関する法律,いわゆる更生特例法の第439条により,破産法第53条と同様の規律を定める会社更生法第61条の適用が排除されております。これは,更生管財人に保険契約の解除権を認めると,更生の可能性を高めるために,保険事故の発生率が高い保険契約のみが解除され,新たな保険契約を締結することが困難な保険契約者の利益が著しく害される恐れがあることから,保険契約者の保護を図るために更生管財人の解除権を排除したものであるといわれております。   再生手続に関しても,同様の規律を定める民事再生法第49条の適用があるとすると,更生手続と同じ問題がございますが,更生特例法には再生手続に関する特例は設けられておりません。その理由としては,後ほど(後注)1で御説明するとおり,保険業法により,生命保険会社に対する保険契約者等の権利については,一般先取特権が認められており,これが再生手続上一般優先債権として随時弁済の対象となるため,仮に生命保険会社について再生手続を開始してみたところで,会社の債務の大部分を占める保険契約者等の権利が手続の外に出てしまうことになり,破綻処理手続として無意味であることから,再生手続による処理は更生特例法の対象とはしないこととされたといわれております。   このように生命保険会社については一般に再生手続が利用されることはございませんが,損害保険会社及び共済団体についてはその可能性があるため,民事再生法第49条の適用を排除する旨の規定を保険法等に設けることも考えられなくはありません。   しかし,実務上は,生命保険会社に限らず,損害保険会社の破綻処理にも更生手続が利用されるのが一般的であるといわれております。また,共済団体にはさまざまな組織や規模のものがあるため,その再生手続に関して一律の規律を設けることが適当であるかどうかについては慎重に検討する必要があると思われます。   そこで,一応理論上の問題として提起させていただいてはおりますが,保険者の倒産手続として再生手続が利用される可能性がどの程度あるのか,仮に可能性がないとはいえないとしても,保険法に特別の規定を設けるのが適当かどうか等につきましても併せて御意見がございましたらお願いしたいと思います。   (注)3では,本文の規定の性質について問題提起しております。   同資料の4(1)において既に御検討いただいておりますが,保険契約者の任意解除に関する規定を新たに設ける場合には,本文①により保険契約者の解除権を認める意味がなくなるのではないかという疑問が生じるため,例えば,本文①の規律を片面的強行規定とし,任意解除権の規定を任意規定とすることなどが考えられます。   元々本条は,破産手続に関するものとして当然に強行規定であるとも考えられますが,本文の規定の性質について御議論を頂きたいと思います。   続きまして,(4)ですが,ここでは第三者のためにする保険契約における保険契約者の破産について取り上げております。   先ほどの保険者の破産の場合とは異なり,保険契約者について破産手続開始決定があった場合については,一般に未払の保険料がある場合には破産法第53条が適用されると解されているようです。ただ,第三者のためにする保険契約に関しては,商法第652条に特則が設けられており,保険者は被保険者又は保険金受取人に対して保険料を請求できるとされています。同条の趣旨について,商法制定当時の資料には,「保険契約者ハ保険料支払ノ義務ヲ負担スルヲ以テ其破産ノ宣告ヲ受ケタル為メ保険者ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得ヘシ而シテ被保険者ハ自己ノ利益ヲ喪失スルモ法律上之ヲ如何トモスルコト能ハストスルハ正当ニアラサルノミナラス寧ロ保険者ノ利益ヲ害セサル程度ニ於テ之カ利益ヲ保護セサルヘカラサルモノトス」との記載があり,元々同条は,その立案時に保険者の解除権を認める規定が存在していたことから,被保険者が保険料を支払うことによって保険契約を存続させる余地を認め,保険者の利益を損なわない範囲において被保険者の保護を図る趣旨で規定されたものであると解されます。   ところが,大正11年の旧破産法の制定に伴う商法の整備において,保険者の解除権に関する規定が削除され,破産法第53条第1項により,破産管財人のみに解除権が認められるようになったため,商法第652条の規律は既に立案時の前提が失われていると考えられます。   他方で,商法第652条の趣旨については,保険者が破産財団から割合的弁済を受けられるにすぎないにもかかわらず,被保険者が全額の損害てん補を受けるのは不公平であるため,例外的に被保険者に保険料支払義務を認めたものであるとする見解もございます。   しかし,同条の趣旨をこのように解するとしても,そもそも破産手続開始決定前に保険料全額が支払われている場合には同条の適用は問題となりませんし,保険料全額が支払われていない場合であっても,第三者のためにする保険契約における保険金請求権は破産財団に帰属しないため,破産管財人としては保険契約の解除を選択するのが通例であり,保険契約が解除された場合に同条を適用する余地はないことから,結局のところ,同条の規律が働く場面はほとんどないことになります。また,実務においても,同条に基づいて保険者が被保険者又は保険金受取人に保険料を請求することはないといわれています。   そこで,現行の商法第652条の規律を削除することが適当であると考えられますが,この点について御議論を頂きたいと思います。   なお,以上の問題を専ら保険者の利益から考えるのではなく,被保険者ないし保険金受取人の利益から考え,生命保険契約等において破産管財人が解約返戻金を破産財団に組み入れるために保険契約を解除する恐れがある場合などに,保険金受取人が解約返戻金相当額を破産管財人に支払うことによって保険契約者の地位を承継する制度を設けることも考えられますが,この点についてはいわゆる介入権の問題として後に改めて検討することといたします。以上です。 ● ありがとうございます。それでは,ただいまのところについて。   ○○幹事。 ● 6頁の(注)1に関してです。破産手続に関して開始決定があった後に,一定期間が経過したときは保険契約の効力を失う,この短縮についての議論でありますが,ちょっと保険契約法の議論から離れますが,保険業法におきまして,保険会社が破綻した場合に契約者保護のための契約者保護機構がその損失の一部を埋めるということをいたしますが,殊に損害保険の場合は,いわば生保のような再加入困難性がないということもありまして,むしろ破綻した場合にはできるだけ新しい契約に乗換えていただくという,そういう趣旨で,実は破綻後から3か月に限っては責任準備金を全額補てんし,その後は責任準備金を8割しか補てんしない。その3か月以内に新しい保険に乗換えてください,こういう趣旨で破綻処理をしてございます。   その点から言って,その3か月というのは何なのかということでございますが,現行,ここに3か月とありますから,それを引いてきたということがないわけではありませんが,現実の実務として,非常に保険会社が破綻して混乱をしているときに,各契約者がこれから自分はどうしたらいいのか,それを理解して,それから新しい保険会社を見付けてくるということを考えますと,どうしてもそれぐらいの期間は置かないといけないのではないかといったようなことがあろうかと思います。   したがいまして,この期間どういうふうに見るのがいいのかということについてもそういう事情もあるということを考慮の対象にしていただきたい。ただ,1点フェアに申し上げますと,これは破産の場合でありますが,通常の保険会社の破綻処理ということになりますと,もっと手前の段階で保険管理人の派遣その他の措置が採られますので,実際,破産という手続の中でこういった場面が実際にどの程度の蓋然性で起こるのかというのは,別の問題としてあるかと思いますが,保険会社の破綻の中に破産が入ることも間違いがないことでもありますし,そういった点をよく御議論を頂きたいと思います。 ● ありがとうございます。○○委員。 ● ○○幹事より御説明いただきましたような形でセーフティネットによるカバーが既にございますので,損害保険会社につきまして一般先取特権を付与することにつきましては,私は慎重に御検討いただきたいと思っております。損害保険会社の一般債権としまして,大きな金額は社債がございます。保険契約に先取特権を与えますと,社債は債務超過の場合には回収可能性がほとんどない劣後債に近いものになってしまいます。保険契約上の債権を有する者には企業契約者が含まれる一方,社債権者には一般の個人投資家も含まれますので,先ほどのセーフティネットの関係からいいますと,そこにアンバランスが生じてしまうということから,保護すべきものはだれかという点を考えますと,やはりセーフティネットがこれだけきちっとできておりますので,一般先取特権の付与につきましては私どもとしては慎重に御検討いただきたいなと思っています。 ● ○○委員。 ● この(後注)2の問題は議論してよろしいのですか。 ● 次に分けてと思っていたのですが。 ● では,そういうことでまた後ほど。 ● 先取特権は後ほどお願いします。  ○○委員。 ● 保険会社の破産に関しましては,破産してほしくないという,ものすごい大変で,ペイオフが預金保険機構が始まる前に,事実上保険については同じようにペイオフが始まったように混乱がありまして,消費者センターのようなところにたくさん苦情が来まして,当該保険会社に聞いても信じられない,業界団体に聞いても信じられない,あなたたちに聞きたいということでワーッと殺到してくるという実態がありまして,破産はあるべきではないと思っています。   保険業法の手当てがありますが,共済さんについてはありませんし,今,生協法のパブリックコメントをとって,多分昨日が締切りだったと思うのですが,ああいうのでもセーフティネットの存在は事実上無理ですねというふうに書いてあります。それはけしからんとパブコメを出したのですが,それはそれですが,先ほど○○幹事におっしゃっていただいたように3か月というのはとても無理でございます。当然,迅速に行われるべきで,それが利益なのだという,そういう流れは理解した上でも,でも事実上3か月というのは乗換えにそれだけかかりますので。ましてや保険事故が起きたときには自分のこととしてとらえますが,保険会社が破綻したときに毎日毎日自分の保険会社はどこかとチェックしているわけでもありませんし,いろいろな経緯もございます。そういう意味では3か月というのは維持していただいて,それ以上短くしないでいただきたい。 ● どうぞ。 ● 今,○○委員から厳しいことを言われましたが,行政の代弁をするわけではございませんが,基本的に破産というのは元々想定をしていないということがありますので,理屈の方をお話になるかもしれませんが,一般的に契約者保護という意味で,今,○○幹事から御説明があった中身は十分に理解できます。   ただ,一つは課題といいますか,検討しなければいけないのは,共済だけやっている団体とその他購買事業,それを実施している団体というのは県の段階にあるわけです。そうしますと,組合員から見た場合に,なぜ共済だけなのかという疑問は当然起きてくるのだろう。総合事業ということになりますと,ステークホルダーといいますか,利害関係者が多いわけですから,そこを共済だけということが果たして世間的に通用するのかどうかというところがちょっといまいち,確かに共済をやっている側から見れば一定の保護措置というのは必要だろうと思いますが,協同組合がやっているトータル的な事業を考えた場合に,共済だけということが果たしていいのかどうかというところは,今の段階ではそれで結構でございますとはなかなか言えないのですが,そういう課題も協同組合の場合は抱えていることを前提に今後慎重に検討を頂ければと思います。 ● これは共済を含む組合規制の問題なので,ここの部会の所管を超える問題が多いと思いますが,破産法の適用の辺りの問題についてはいかがでしょうか。先ほど一部学説が紹介されていた。必ずしもそれでいいのかなという御意見。 ● 随分昔に研究を○○委員と一緒にしたのですが,大分忘れてしまっていますが。まず,実際上の問題としていうと,破産手続に行くのは極めて例外的な場合だと思います。現在では更生特例法が整備されていますし,業法上の手続もありますので,実際に起きた破綻においても,特に更生特例法ができてからは全部更生特例法にいっているわけで,もし更生特例法の後でも破産に行く場合が起きるとすれば,いわば更生特例法の後始末として,法人としての保険会社を清算するために破産の手続を使うという場合があり得るのかなと,それぐらいかなという感じがします。実際上の重要な問題はほとんど更生特例法や業法の方で手当てされていますので,ここで扱う問題はそんなに多くはないのかなという感じはします。ただ,ここで扱わなくていいということにはならないと思いますので,考えておく必要があると思います。   そういうふうに後始末だけということだと,一定の期間,3か月というのも実際には見えていることが多いので,それほどかかるかなという気がしないではないのですが,慎重にやるためには3か月ということかもしれません。   外国の法制ですと,1か月というところが多いみたいです。アメリカのNAICの規則もそうです。それから,ドイツ,その他オーストリア等も大体そんなものですが。でも,実務的に3か月ぐらい実際にはいるのだということであれば,3か月ということでよろしいのではないかと思っております。   問題は,まずこの①と②にあります。①の方が保険契約者側の解除権です。②は失効で,問題の性格はかなり違うと思います。②の失効の方はとにかく保険契約関係をいったんやめてしまって,まさに全体として清算しようという場合の問題でありまして,これが実際に意味を持つのは破産と,後は業法の第177条第2項の解散手続の場合で,これは業法の方で手続がもう規定されていますし,それと大体同じでいいのではないかと思います。   もう一つの①の方の破産手続開始決定があったときの保険契約者の解除権ですが,これはどの国でも大抵解除権を認めておりまして,ほかの国ではむしろ破産だけではなくて保険会社が信用失墜の事態になったときには,一般的に保険契約者に解除権を認めるという国が多いし,日本でも解釈でそういう解釈が主張されています。   ただ,これも実務的に言うと,実際には一部の損保の企業保険を除いては,保険契約者の任意解約権が大抵入っていますから,実際上問題があることは少ないのですが,あえて言えば解約返戻金が契約上の解約返戻金なのか,現行法でいうと商法第683条第2項の積立金の返還請求権なのかということで,その範囲が両者で違ってくるというところが違いかなというように思います。   私は,原則としては外国と同じように契約者に基本的にはそういうような破綻があったときには解約権があるのは原則かなと思っています。   更生特例法の方は,そちらの方で特別な手当てがありますから,そちらの方でカバーできていますから,問題はないのかなと思っております。   ②の「一定の期間」はさっき申し上げましたが,その後で先ほど解釈論として破産手続開始決定後の保険金請求権が破産法第148条第1項第8号のこれは適用なのか,類推適用なのか分かりませんが,財団債権として扱われるかという問題が議論されましたが,これは私はちょっと無理ではないかと思っております。双務契約といっても普通の双務契約とは意味が違うわけで,双務契約を続けた方がいいから保険料と,その後の保険金請求権が経済的にバランスしているのであれば,それを続けた方がいいということで,財団債権化するということ意味がありますけれども,これは保険料と保険金請求権というのは普通は全くアンバランスですから,普通の双務契約に関する破産の規定をそのままもってくるというのは,私は無理があるのではないかと思います。   もし,それについて手当てをするならば,先ほど議論が出ました保険業法第117条の2のような一般的な保険契約の特別の扱いをするかどうかという問題で,これは以前から大議論があります。生保の方は御希望されて,損保の方は否定されています。昔から変わらない構造になっているかなと思います。 ● 解約返戻金などは破産債権でいいという理解ですね,普通は。 ● と思いますよね。それと同じではないかと思っています。   あと,民事再生も実際には使われることはないと思いますね。更生特例法ができる前もギリギリやむを得ない選択として,民事再生法を使えるようにしてくれということを法務省に陳情に行ったことはあるのですが,更生特例法ができましたから実際にはそちらの方でいきますので,そこまで実際考える必要はないのではないかというのが感想です。とりあえず。 ● 説明を伺っていろいろなことがよく分かってきたのですが,幾つかお話をしたいと思います。前回の発言の趣旨を釈明する意味も込めまして,第651条の意義がどこにあるかということなのですが,気になっておりましたのは,(注)3との関係で任意解除権というのが規定されるのならば,一体どういう意味があるのかということで,ただ前回の御議論によると,任意解除権の方は基本的に任意規定と考えるべきではないかというのが大勢だったと思いますので,ここは強行規定だということであれば,それを明らかにするとここだけは排除できないという意味では規定の意味が出てくるのだろうとは思っております。   他方で,そうではないというようなことになったとすると,規定の意味があるのかという気がします。かつ,それほど活発な議論があるわけではないようですが,そもそも双方未履行双務契約といえるかをめぐって議論があり,かつ,双方未履行双務契約であるとしても破産法第53条の適用は商法第651条によって排除されているという考え方もあれば,そうではない,しかしながら事実上は意味がないのだと,3か月で失効してしまうからという説明があったり,それによって破産法第54条の適用可能性の可否が変わってきたり,また先ほどの○○委員の御説明にもありましたように,破産手続開始後の保険事故による保険金請求権が財団債権であるのか破産債権であるのか,適用条文がどれであるのかをめぐっても見解が分かれているという状態だとすると,そのあたりを明確化しなくていいのだろうか。規定を置くとすると,かつ,解除権を置くことがあまり意味がないとすると,むしろどういう権利を破産債権としてであれば,破産債権として行使できるということさえ明確にしておけば,疑義も解決するのではないかというのが前回の発言の趣旨ということでございます。   若干,さらに幾つかの点を申し上げさせていただきますと,再生手続に関してですが,双方未履行双務契約の適用を除外すべきだというのは更生の場合と変わらないと思いますので,その結論自体は本来そうあるべきだと思いますが,ただ御説明にもありましたように,基本的には特に生命保険会社の場合ですが,再生手続の利用はないという想定の下で規定が逆に置かれていないということがあちこちにあって,仮に理論的に再生手続になったときにはどうなるのだろうという空白がここ以外にもかなりあるように思いますので,それを双方未履行双務契約の適用除外だけ定めてしまうと,再生手続の適用は前提とされながら規定がないということを今までは想定されていないからという説明であったのが,あえて更生とは違う手続を想定しているのかとか,そういう疑義を呼ぶように思いますので,もしもここに一つ手をつけるとすると,恐らくかなりの手当てをする必要が出てくるのではないかと思われまして,その必要性が果たしてあるのかというのは,実際に,特に生命保険会社以外の場合にこれを受けるような仕組みが用意されているのかという説明になって,それ以外についても再生手続の利用は基本的にはないという想定で統一して構わないのだということであれば,それが前提になっていますという説明で,いいのではないかと思います。   それから,「一定の期間」についてですが,期間がどのぐらいが適切かというのは既に御議論があったところですが,元々この期間というのが乗換えのための一種の熟慮期間のような形で設けられているとすると,その期間の長さが適切かという話と,熟慮のための土壌が整備されているのかということも気になっておりまして,例えば,こういう破産手続開始決定があったので,3か月後には失効するので付保されないことになる。したがいまして,この間に必要な考慮をして乗換えが必要ならば乗換えを決定していただく,あるいは解除権もありますというような情報提供が企業の場合は必要はないのでしょうが,個人の消費者であるような場合に,そういうメカニズムが用意されなくていいのか。そういうメカニズムは用意されているかどうかによっても,その期間がどのぐらいあればいいのか。自分で調べて見付け出さなければいけないということであると,何か月でも本当に大丈夫かということがありますので,そのメカニズムが果たして現在,用意されているのか。あるいは用意させなくてもいいのかということが気にかかっております。   (4)ですが,これには私自身は異論はありませんで,むしろ現在のこの局面というのは被保険者ですとか,受取人の保護の観点から考えるべきではないか。あるいは,その意味において有意義さを見出していける扱いではないかと思いまして,是非介入権の制度のところでは改めて検討が必要かと思いますが,それ以外のところでは意味はあまりないのではないかと思っております。 ● ありがとうございます。一つ前の3か月で十分一般の契約者が熟慮できる。これは最初,○○幹事から御説明があった保護機構による救済と関わっています。それは必死に破綻になれば契約者に連絡するという仕組みにはなっているわけですね。 ● 法的に公告をどうするとかそういう話は別として,当然のことながら破綻が起これば保護機構は説明いたしますし,当該破綻保険会社,それから当局ももちろんこういう仕組みになっていますよというのはあらゆる手段を通じて説明することにはなると思います。それに上乗せして何かを制度的に設けたらどうかという御議論はまた別だろうと思います。 ● そういたしますと,いわば3か月の猶予期間があって,その間に乗換えが必要ならば乗換えてくださいということも情報提供がされるという理解でよろしいですか。 ● そのとおりです。 ● 分かりました。それはしかし,対象は限られているということですか。   すべての保険者の破産に。 ● 保護機構の対象となるのは一般の消費者向きの保険が中心。それ以外の,結局,破綻処理をすれば企業契約者についても移転するなり何なり。 ● そうせざるを得ない。 ● そういうことで通知したりとか,そういうことが当然行われるだろう。 ● ○○幹事からの御指摘の中で,確かに破産法第53条が少なくとも適用されるのはまずいと思いますので,どのような法的な手当てをするにせよ,第651条を残すような形にするにせよ,何らかの形で破産法第53条が少なくとも適用されないことを明らかにする立法はした方がいいと思います。 ● そこで破産について,それをはっきり書いてしまうと,○○幹事が言われたように再生はどうなるのかとか派生する問題が出てきます。 ● 倒産法に詳しい方にお聞きしたいのですが,仮に民事再生の方での申立てが行われてしまった場合,これはどういうふうに処理しますか。 ● 協同組合ではあり得る形。 ● まさに先ほどの共済の問題にも絡んできますが,共済の場合はそもそも法的手当てがないので,これは何とかしなければいけないと私は思っていますが,ほかのいわゆる共済以外の事業を営んでいる協同組合でも農協なんかは金融機関のものとして特別の規定を更生特例法の中に入れているわけですから,それと同じような配慮を共済を行っている協同組合について入れていただくのが一番いいのではないかと思います。   民事再生と更生特例法については,私は万が一民事再生の申立てがされたら,何らかの手続でむしろ更生特例法の方を始めて,そちらの方に中止命令か何かで移すのが望ましいのではないかと思っています。今,倒産法の手続は十分に記憶していませんので,もしご存じの方がいれば教えていただきたい。 ● かなり難しい問題がありそうですが,今日の御指摘を踏まえてなお検討していただきたいと思います。 ● 申し訳ありません,先ほど申し上げるべきでした。6頁の(注)3の4(1)との関連で片面的強行規定にするということなのですが,片面的という場合,具体的にどういうような約定が考えられるのでしょうか。   単純に強行規定ではなくて片面的と言われた場合に。 ● ここで片面的ということを強調する必要はなかったのかもしれません。要するに解除権を付与しないという約束を入れることはいけないというふうにする意味で書いたつもりです。 ● 逆に片面的というと4か月に延ばしていいかとか,そういうことはあり得ないですよね。ですので,ここは強行規定ではないかという感じがしたものですから。 ● 4か月に延ばすというのは契約者にとってみれば不利益ではないので。 ● 本来3か月で失効してしまうところを1か月期間を延長して,その間解除の期間を与えますとか,そういう……。 ● ①②というのはもちろんセットですので……。 ● 単純に延ばすのがいいのかどうか,相当問題がありそうです。これもなお検討していただくことにします。   よろしいでしょうか。では,きりのいいところで時間を超過していますが,(後注)について御説明を。ここまでやっておきたいと思います。 ● 御説明いたします。次に(後注)1では保険金請求権等の保険契約に基づく権利を目的とする質権に関する規定を設けるべきであるとの考え方について問題提起をしております。   保険事故の発生により具体化した保険金請求権はもちろんのこと,保険事故発生前の保険金請求権や約款に基づく解約返戻金請求権も一般には停止条件付債権と解されており,民法第362条第1項により質権の目的になると考えられます。   商法には保険契約に関する質権についての特別な規定がないため,民法の規律に従うことになり,例えば,民法第364条により通知又は承諾が保険者に対する対抗要件になります。実務上は保険者があらかじめ用意した書式による質権設定承諾依頼書兼質権設定契約書などの文言の書面に保険契約者等及び質権者が署名押印して質権設定契約を締結し,保険者がその質権設定を承諾する旨を同書に記載することによって対抗要件を具備する方法が一般的に行われているようです。   保険契約に関する質権については,保険者が質権者に対して保険金又は解約返戻金を支払うに当たり,質権設定後に発生した未払保険料や保険契約者に対する貸付金を当然に控除できるのかという問題や,保険者が異議をとどめることなく質権設定を承諾した場合に,民法第468条第1項により保険契約上の抗弁を質権者に対抗できなくなるのではないかということについて議論がされております。   しかし,これらはいずれも民法の解釈の問題であるとともに,必ずしも保険契約に特有の問題ではなく,契約一般について問題となり得る性質のものであると言えます。   そこで,保険法に質権に関する規定を設けるべきであるとの考え方については,何か特別に具体的なものがございましたら御意見を頂きたいと思います。   次に,(後注)2では保険金請求権等の保険契約に基づく権利について,保険者の財産に対する一般先取特権を付与すべきであるとの考え方について問題提起しています。   民法及び商法には保険契約に基づく権利に一般先取特権を付与する規定はございませんが,保険業法第117条の2では,同法にいう生命保険会社との間で締結された保険契約に限定して,保険契約に基づく保険契約者等の権利について一般先取特権を付与しております。これは,一般に,生命保険契約が生活保障的機能を有することから,保険契約に基づく権利について一般債権者に対する優先権を認め,保険契約者等を保護する趣旨であるといわれております。   これに対し,損害保険会社の保険契約に関して一般先取特権が付与されなかった理由としては,損害保険契約には生命保険契約ほどの生活保障的機能がないことや,会社の格付けに対する悪影響が懸念されたことなどが挙げられております。   保険者の経済的破綻の場合に,保険契約者等の保護を図るべきであるとの考え方自体については否定すべき理由も見当たりませんが,ここで問題とするのは,債権者平等の原則に対する例外として,一般的に保険契約に基づく権利に優先権を認めることの当否であり,兼業規制が課せられている保険業法上の生命保険会社以外の保険者を想定した場合,一律に優先権を付与することについては必ずしも合理性がないとの指摘もございます。   そこで,これらの考え方を踏まえて,保険契約に基づく権利について一般先取特権を付与すべきかどうかについて何か特段の御意見があれば頂きたいと思います。以上でございます。 ● ありがとうございます。この2点について,先ほどから一部御意見は頂いております。○○委員。 ● 私は今日,これだけしゃべればいいかと思ってきたのですが,生損保ともに一般先取特権を認めるという法制にしないといけないのではないか。順位の問題とかいろいろありますが,結論をまずそれだけ申し上げて,現状をどう理解しているか。それから,理由ですね。この理由を申し上げたいと思います。もし一部不正確なところがあれば御指摘いただければなと思います。   例えば,家が燃えてしまった人と,一家の大黒柱がなくなった場合,どう比較するのか。これはそう話は簡単ではないわけで,諸外国の立法はここでは紹介されませんでしたが,日本のように生命保険だけはなんていう国はフランスもニューヨークもドイツもどこもないわけです。   保険業法に規定されているというのは,これは保険法の改正がずっとできなかったから緊急避難的に置かれたものであって,これは基本法に本来書くべきものだと私は思います。そこで,幾つか生保と損保の更生計画案を最近ためつすがめつ見たのですが,現行の保険業法第117条の2の規定,立法時の解釈がどうだったか,私は不勉強で分かりませんが,第2項で先取特権の順位は民法第306条第1号に次ぐ。では,労働債権は同じなのか。それとも1番と労働債権の間なのか,生保の方にお聞きするとどうも同じだということのようですが,更生計画案を見ると必ずしもそうでもない。ある会社の場合には,労働債権と保険金債権を同時に扱うとはしておりますが,変額保険のところは責準の削減率もゼロで,基礎率も変えない。ここだけを見ますと,労働債権に優先しているわけです。保険金については,やはりこれは裁判所も弁護士さんも非常に御苦労されたと思います。保険金の方はできるだけほぼ全額払う方向でもっていこう。それから,払戻積立金については,生保の場合,これは給付金で払われる場合があると思いますが,それも大体保険金額と同じようにやるようにしている。   この辺りはいろいろ議論はあるかと思いますが,見ていると,ある意味では諸外国の立法例と同じような価値基準というか,そういうものに従っていろいろ苦労しておられる。ただ,諸外国の立法例に従えば,保険金,損保,生保を問わず保険金請求権と生保の保険料積立金を同順位にという場合だと思いますが,計画案の中には保険金を一部削除しているのもあります。   これは,法制度の基本的な問題で,基本法でどういう権利が元々あって,更生計画とか破産でどれだけ自分が減らされたのか。こういう基準を示さないと,更生決定そのもの,更生計画の公正でかつ公平だということすら判定できないわけです。そういうものをまさに書くのが民事基本法の使命であって,それを前提として更生計画の裁判官の皆さん,弁護士さんたちが考えていく。その基準がないままに。   私は労働債権と同等でもいいと思うのです。今ははっきりしないというか,法的解釈はあるのかもしれません。実際ではそういう形の処理がされていますので,そこもとにかく権利関係を明確化するというのが大前提で,それが民事の基本法の使命だと思うのです。   社債の話が損保業界の委員からありましたが,これはまたなかなか理解できない話で,要するにアカウンティングのことが分かって,財務諸表が見える人が見れば,どこを期待していいのか,期待していけないのか明らかに分かることで,ここでどうしてそういう議論が出てくるのか,全く理解できないと思っています。   ですから,これはここに法律家ではない方もいらっしゃるからいろいろな説明をしなければいけないのかもしれませんが,やはりいろいろな破綻処理があったときに,保険契約者が自分が本来どれだけの権利があって,それをどこまで譲ったのか。それに比べてほかの人はどれだけ譲って,その違いは公正なのかということはやはり分からなければこの基本法というものを定めた意味がないわけですから。   以上をまとめますと,基本法の使命として,こういう先取特権についてはもちろん規定を置いて,しかも諸外国と比べたら恥ずかしいような法制は勇気を出して改めて,損保も生保も保険金請求権と生保の保険料積立金,それから払戻請求権については,これはいろいろ考え方はあります。でも,これも整理をして,あと労働債権との関係は重要ですから,そこを明確化して,そういう規定を置くべきではないか。   これ自身,独立の検討項目として,本当はこの(後注)2で扱うような問題ではなくて,正面から独立の項目として扱うべきものではないか。先だって解約返戻金についてワーキンググループという話がありましたが,それに勝るとも劣らないというか,ここできちっとやっておかないと,やはり禍根を残すのではないかと私は思います。以上です。 ● さっきの事務当局の問いかけに,共済組合のように一般事業も兼業している,そこへいろいろ一般債権者,そういう事業の中でいうと小口のものもいる。こういう場合はどう。生損保で考えると,これは兼業禁止ですから,契約者とあと金融債権者に労働者と大体主立ったところで比較的優先権というのも各国で認められているというのがそういう実態があるからと思います。 ● これは,今,シカゴ大学の法科大学院の教授でノーベル賞をもらったコースの定理の最初のところではないですが,要するにそういう優先権を持った人がいるぞというのを最初に規定してしまえば,事後的な問題としてそれに対応した覚悟はせよ,そういう考え方もできると思います。 ● 先取特権そのものの考え方を否定するわけではなくて,組織の形態なり,組合員の持っている権能の関係からいった場合に,一般の消費者と生損保の皆さんとの契約の概念とやはり違うのだろうということがまず前提にあるわけです。さっきはいろいろな事業もあるので共済単営ではないので,一律的な考え方ができない部分がありますねと申し上げましたが,基本的にこれは原則ですから,実態論がどうなのかということは別にしまして,組合員,契約者そのものが実際に事業利用と実際に運営に参加をするというのは原則ですから,当然,その組織の経営の状況なり,そういうことを当然知らせることも事業者の仕事ですし,当然,していますし,運営にも参加できるという原則をまず押さえた上で,決してそういう事態に陥らないような経営を自治としてやっていくことをまず原則にしませんと,先取特権だけが先に出てきますと,その辺の原則は薄れてくるというところを懸念するところです。 ● 私も共済の事業規約とかいろいろ拝見したのですが,いろいろな共済の加入者の方の意識は保険と変わらないと思うのです。ここで言っているのは現行法の解釈ではなくて,立法政策としてどういうものを採るのが望ましいかということですから,私は共済の加入者の方の意向,仮定的な推定的な意思ですが,それを考えてもそういう考え方はおかしくないと思いますけれども。 ● 現実のお話で,そういう考え方の契約者,組合員の方は当然いらっしゃいます。それはそのとおりだと思います。ただ,そうはいいましても協同組合の組織としての教育事業というのもありますが,そういう中で理解をしていただく努力は当然私たちもしていかなければいけないですし,そこを抜きにしてしまいますと,最初の部会のときに申し上げましたように協同組合だからいいだとか,相互会社,株式会社だったらだめとか,そういうことを一切申し上げているわけではなくて,協同組合は協同組合としての組織の特質,商品をつくる場合の組合員の関与の仕方,その辺の違いが原則としてあるだろう。   ただ,これだけ普及してきますと,その部分の考え方はどうしても薄れてくる部分は否めませんので,そういうところはやはり事業をやっている側がきちっとやっていくべき点は十分にあるわけで,原則の問題と実態の問題,これは逃げるわけではありませんが,差があるというのは当然承知をした上で,なおかつ原則に近い形で運営をしていくという立場でものを申し上げていますので,委員のおっしゃることは十分に理解をした上で発言をさせてもらっていますので。 ● 私は実態に着目しているということなのかもしれませんね。 ● ○○委員から民事基本法で定めるべき内容であると。先取特権の付与ですからそれはおっしゃるとおりのような気もするのですが,他方で先ほど○○委員からもお話がありましたが,基本法で定めるということは,およそ保険者の属性を問わず,すべてについてそういう権利を保険契約者等に付与するということになるわけでして,気になるのは保険業法上の生命保険会社あるいは損害保険会社については兼業規制がかかっているわけですから,ほかの一般の消費者に値するような債権者というのはあまり想定することはできない。労働債権を有する人は別途一般先取特権があるということになると思いますが,それ以外の保険者,具体的に共済とか,団体であるとかいうところになると思いますが,そこについてはそういう規制がないということになりますと,保険契約者と同価値で要保護性があるような契約者というのも恐らくいるのではないか。   そうしてみた場合に,この問題は冒頭の御説明でも触れさせていただきましたが,債権者平等の大原則に対して保険契約者に例外として優先的地位を与えるかどうかということだと思います。そこは確かに規律すべき事項の性質からすると民事基本法ではないかというのもよく分かるのですが,他方でそういったことを考えるとなかなか難しいのではないかということも考えられるところでして,なかなか悩ましい問題です。 ● 外国でも保険契約法で優先権を書いているというのはあまりないのです。やはり破綻処理法制の中で出てくるという方がむしろ一般かなと思います。 ● ○○幹事がおっしゃったことについてですが,その論理だと共済も一緒にやっているからほかの方を保護できない。そんな形にも聞こえるのですが,それはまず少なくとも現在の生損保についての,特に損保についての先取特権というのは認めないとおかしいと思う。それは論理が逆転しているのであって,それと一般債権との比較ということであれば,私は生保だけというのは論理的に説得力のあるものではないと思います。特に保険金のところについては。ですから,共済のところをどうするかという問題はありますが,でも大規模共済については同じことですから,それは相当工夫しながらも,結論としては工夫してもとにかくやる。いざとなったら契約法になくてもいい。先取特権についての規定は設けないとあまりにもおかしいと思います。 ● ○○委員の言われることはそのとおりだと思います。あまりにも協同組合の実態が法体系も違いますし,例えば全国を網羅している連合会の場合は兼業といっても基本的には単業ですから,そういう組織に対する先取特権の取扱いの問題と,それから規模が大きくても県単位でやられている協同組合の場合,ほとんど農協さんの場合は金融事業をやられておりますし,また別の規制があると思います。生活協同組合においても住宅からいろいろな事業をやられているという中で,きちっと区分をしながらその辺は整理をしていきませんと,一般的に保険と同等の機能を持っているという意味ですべての共済について先取特権の問題を論ずるということは,まず組織的なベースを議論していただいて,そういう中で必要ならば必要だということで全体で御検討いただければよろしいのではないかと思います。 ● 簡単にしますが,法制審議会からの諮問78号,規定の内容の現代化の中に保険契約者の保護に配慮し,その内容を見直すものとする。この指示,もちろんこのことを言っているわけではないと思いますが,範囲で一番重要なことは何なのか。この問題が入ることは間違いがないので,御事情はよく分かりますし,困難はありますが,優先順位についての合意はほとんど,業界の方には納得していただけないかもしれないけれども,特にほとんど異議はないと私は思うので,そこはそういう方向で一度御検討いただけないかと思います。 ● 諮問事項についての,共済に対しての取扱いをどうするかというのは1回目に申し上げましたが,契約者保護というのは大優先課題だと認識しておりますし,共済においても組合員,契約者の両面を持っておりますので,その意味では最大限契約者に対する保護の措置をどういうふうに考えるのかということをやはり優先しながら,ただ多様な形態をとっているものですから,そういう中でやはりバランスのとれた政策を考えていかないと,やはりいけない部分がありますので,その部分を先に申し上げましたが。 ● 申し訳ないのですが,私は今の言葉をこちらに言ったのですから,あまり気になさらないでください。 ● もう1点関連して申し上げますと,もちろん今は保険業法上は権限の規制は業法上の規制として課されているということであると思いますが,それが今後どうなるのかというのは,だれにも分からないことではないか。つまり,基本法と業法の関係が論理的にそっちがこうなったらどうにということで自動的に変わるという関係にはないわけです。つまり,先ほど私は保険業法の保険会社ということで,それ以外は共済と言ったのですが,保険会社という名前であっても論理的には基本法レベルでは兼業規制がかかるというのはないわけなので,そこはそれぞれの組織の在り方はそれぞれの業法で考えるべき話であって,兼業するか,規制を認めるか認めないかということだろうと思いますので,そちらの議論がストレートにこちらに反映するという法制上の担保があるのであればともかく,それは恐らくないと思われますので,そうすると振出しに戻って,要するに他の一般債権者との比較,とりわけ要保護性において保険契約者と変わらない人たちが出てくる可能性がある。あるいは現にいる。そういう場合にその人たちに対する関係で保護するのがいいのか悪いのか。そういう観点から議論をしていただく必要があるのではないかと思っています。 ● かみ合っていないと思いますが,兼業規制があるかどうかということと直接リンクしていないと思います。立法政策上の問題というところがあるのでは。債権の性質とか,そういうものから演えき的にやろうという議論を聞いているとしていると思うのですが,でも諸外国の立法例はそうかというと,必ずしもそうではないと思っています。 ● 保険会社が専業でやっているというのが前提の破綻処理における優先権だとは思いますが。この問題は過去の経緯がいろいろあって,今の制度でこれまでコンセンサスを業法的な分野ではできた。今度,契約法の分野で考えているのですが,そこでは今○○幹事が盛んにいわれているような,一種の債権者の平等といった一般民事法の観点からの議論の整理が必要だろうというふうなことで,そう簡単に割り切れる問題ではないのではないかと思います。   今日は大分時間が超過いたしましたので,今日は意見が出たということを踏まえて,なおいろいろ御検討を頂こうかと思います。 ● (後注)1で一つだけよろしいでしょうか。結構インパクトのあった判例と聞いていますが,最高裁判例の平成10年1月30日の判例で,第三者に譲渡した賃料債権について,その対抗要件が具備された後であっても,抵当権者が差押えをして物上代位権を行使することが可能というのが出ていたと思います。この判決の立場が今後,保険金請求権,今でもかもしれませんが,同様に及んで,抵当権者の差押えが日付が後であっても対抗要件を具備した質権に優先するのかどうかというところが不明確な現状ではないかという認識をしております。   この不安定な状況を解決すべく保険金請求権について抵当権の差押えが優先するならするという形での優先関係,整合関係を結構重い話かもしれませんが,今の不安定状態を解消するということを目的に何かこちらで定めていただければと考えております。 ● 保険金請求権の質権だけ何かをということはあまり考えにくいと思いますが。 ● さっきの全体との関係があると思いますが,もしできればということです。 ● そういうことを承ったということで,大分時間も超過して不手際で申し訳ございませんが,今日はここで終わりたいと思います。   次回につきまして事務当局より。 ● 次回,第4回目の会議でございますが,来年の1月17日水曜日,午後1時半から。場所が法曹会館,法務省敷地の皇居寄りになりますが,そこの高砂の間というところで開催させていただく予定でございます。   審議事項は今回に引き続きまして損害保険契約に固有の事項の後半部分をお願いしたいと考えております。どうぞよろしくお願いします。 ● それでは,本日は長時間の御議論をありがとうございます。これで終了させていただきます。 -了-