法制審議会 被収容人員適正化方策に関する部会 第3回会議 議事録 第1 日 時  平成18年12月15日(金) 自 午後1時02分                        至 午後3時05分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  被収容人員の適正化を図るとともに,犯罪者の再犯防止・社会復帰を促進するという観点から,刑事施設に収容しないで行う処遇等の在り方等について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● 予定の時刻になりましたので,ただいまから法制審議会被収容人員適正化方策に関する部会の第3回会議を開催いたします。 ● 本日は,前回の部会で積み残しとなりました点について御議論をいただくとともに,第1回の部会で皆様にお諮りいたしましたように,その他の社会内処遇の在り方及び刑執行終了者に対する再犯防止,社会復帰支援策について,一わたりの議論を行う予定でございます。   前回の部会では,社会奉仕を義務付ける制度導入の当否について御議論をいただきました。本日も事務当局の方から,前回と同じ,当面の主な検討事項を記載したペーパーを席上に配布していただいております。では,積み残しとなっております項目3の制度導入のメリットとデメリットについて御議論をお願いいたしたいと思います。 ● ○○でございます。   3番の問題とは違うんですけれども,前回御質問をいただいてお答えできなかったところについて,先に御説明させていただければと思うんですけれどもよろしゅうございますか。 ● はい,よろしくお願いいたします。 ● 前回の部会で○○委員の方から,裁判所が判決宣告を延期した上で社会奉仕活動を命じて,その結果を踏まえて執行猶予判決をしたが,これが高裁で破棄された事例について御質問がございました。恥ずかしながら明確な記憶がなかったものですから,その後調べてみましたところ2件そのようなケースが見付かりましたので御紹介したいと思います。   まず一つ目の例は大阪高裁平成9年5月27日の判決でございまして,判例時報1604号に紹介されております。これは,一審裁判所が事案としては無免許運転の罪等で執行猶予中に再び無免許運転を行った被告人に対して,結審後に阪神大震災のボランティア活動を勧めて,既に指定していた判決期日を延期して,その後,被告人が4カ月間にわたって週1回程度震災の被災者訪問などのボランティア活動に従事したということを確認した上で,判決ではそのことによって社会的非難はそれなりに減弱して評価するのが相当であるとして,再度の執行猶予のついた懲役刑を言い渡したという事案でございます。   これに対して大阪高裁は,交通の危険性の除去ないし減少とは何ら関係のないボランティア活動をしたことをもって被告人に対する社会的非難が減弱したと評価することは,無免許運転罪の罪質にそぐわないとして,原判決を破棄して自判し実刑といたしました。   ちなみに,高裁判決の量刑理由によりますと,この被告人はボランティア活動に赴く際にも,どうも無免許運転をしていたようで,原判決の前後に2回にわたって無免許運転で検挙されていたという事情もあるようでございます。   2例目は,東京高裁平成10年4月6日でございまして,判例時報1661号に紹介されております。これは,酒気帯び運転等の罪で執行猶予期間中に酒気帯び運転を行ったという事案でございます。一審裁判所は判決宣告期日直前に,弁護人から在宅福祉サービス協力会員の登録申請を被告人がしたということを理由とした期日変更申請を受けまして判決期日を延ばし,約半年後にその活動状況に対する証拠調べを行った上で,被告人に再度の執行猶予つきの懲役刑を言い渡しました。   これに対して東京高裁は,刑の量定はあくまでも犯罪行為に対する評価を中心としてなされるべきが原則であり,社会奉仕活動を通じての貢献などの事情は犯行後の被告人の態度の一つとして考慮されてよいが,その考慮には限界があり,原審がこの事情を量刑上取り上げたいあまり審理期間を殊更引き延ばした点は公平妥当な措置とはいえないとして,原判決を破棄して自判といたしました。この事例は判例時報の1661号に紹介されております。   さらに,○○委員の方からの御質問,こういう扱いはあまり一般的ではないのだろうかというものだったと思いますけれども,判決の宣告を猶予して社会奉仕を指示して,その結果を量刑上考慮して執行猶予を付すという,そういうケースについては,私自身はこの2件以外には存じません。決して一般的とは言いがたいように思われます。その理由については,まさに個々の裁判官の判断ですので私が明確にここで申し上げるということは難しいのですけれども,東京高裁も述べておりますように,刑の量定というものについては犯罪行為自体に対する評価,いわゆる行為責任を重視して行うというのが通常でございまして,犯行後の被告人の態度ももちろん一般情状として考慮はいたしますが,量刑に影響する程度は比較的小さいと考えられているということがございます。   また,社会奉仕活動を行うことが,被告人の円滑な社会復帰や再犯の防止にどのような効果を持つのかが必ずしも明らかでない。それこそボランティア活動に無免許運転で行っていたというのは,まさにそういういい例かもしれませんけれども,そのようなことも影響しているように思われるところでございます。   以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   ○○委員,今の見解に対して何かございますでしょうか。 ● 結構です。 ● よろしいですか,どうもありがとうございました。   それでは,項目3についての御審議をお願いしたいと思います。どうぞ御発言をお願いいたします。前にお配りした検討事項の第3は,制度導入のメリットとデメリット,社会奉仕を義務付ける制度を導入した場合に期待される効果等のメリットは何か。その反面,懸念されるデメリットは何か,こういう項目で議論をする予定ということでお諮りされております。どうぞ御自由に御発言をお願いしたいと思います。   どうぞ,○○関係官,お願いいたします。 ● メリットということですが,この部会で直接の関心対象になっているのは,第1は過剰拘禁の解消,緩和ということであり,第2は犯罪者の円滑な社会復帰を図るという両面あるわけで,社会奉仕活動のメリットも両方について考えなければならないと思います。しかし,とりあえず過剰拘禁の問題の方から考えていくことにしますと,問題は社会奉仕命令が何の代替になり得るのかということです。社会奉仕命令は,まずイギリスを舞台として発展してきたと存じますけれども,○○委員が特に詳しくていらっしゃるわけですが,イギリスの場合,たしかに相当数の社会奉仕命令が出されております。しかし,これによってどういう刑罰が置きかえられているということになるのでしょうか。 ● 最近の状況というのを的確にお話しできるかどうか分かりませんが,社会奉仕命令はイギリスも含めまして過剰拘禁の緩和という形で出てきたわけですけれども,実態としてどうなるかということになると非常に検証が難しい。過剰拘禁の緩和に役立った部分もあれば役立っていない部分もある。関係官の御質問のもう一つ奥には,ネットワイドニング,より統制の拡大になっているのではないかという御趣旨かと思います。つまり,刑政施策上の費用,人的な面も物的な面もそうですけれども,よりかかるのではないか。例えば,従来,社会内処遇になっていない人まで,単純な執行猶予,あるいは罰金刑で済んでいた人が社会奉仕命令になると,コストベネフィットという点で言えばコストはよりかかる,あるいは,対象者にとってはより統制の拡大ということになるという面があると思います。   社会奉仕命令が過剰拘禁の緩和に役立つかどうかということについては,イエスともノーとも言えませんけれども,ある部分役立ったかもしれませんけれども,同時に統制の拡大という部分があったという理解が,刑政学的には一般的かと思います。 ● ありがとうございました。私はイギリスの科刑の実情について詳しい知識を持っておりませんけれども,日本と比較した場合に,割合短期の拘禁刑が多く使われているのではないか。そうしますと,社会奉仕命令への置きかえは,あまり長期の刑については無理ですので,対象は短期の刑です。ところが,日本の方は短期の懲役,2カ月,3カ月というのは極めて少ないわけですね。その点では,仮に採用したとしてもイギリスのように目覚ましく社会奉仕命令の適用件数が増えていくということはなさそうな気がしますが,どうでしょうか。 ● 少し脇にある問題,少しそれますけれども,社会奉仕命令が出てきた当時,70年代ですけれども,日本での紹介では改善更生に役立つという形で,改善更生モデル,社会復帰モデルとして紹介されたと思うんですが,私は理解が少し違っていまして,これはむしろジャスティスモデル,正義モデルであると考えました。つまり,社会奉仕命令は応報的な色彩で,言ってみれば処罰の重みを持っており,犯罪対象者に対して一定の痛みを与えることになる。つまり今まで,特に英米のプロベーションというのは一種のケースワークといわれて福祉的なものという理解があったかと思うんですけれども,それを超えて対象者に作業をさせることによって本人に痛みを感じさせる部分がある。だから,過剰拘禁の緩和とか前面に出ましたけれども,社会復帰モデルからの離脱という動きが社会奉仕命令には私はあるんじゃないのかと考えております。 ● ○○委員,短期自由刑の点に関してはいかがでしょうか。 ● その点は○○関係官がおっしゃったとおりだと思います。 ● 今の問題との関連でも結構ですが,ほかにいかがでしょうか。 ● 私ども社会奉仕命令といっても,実際私自身が社会奉仕命令を見てきたのはオランダだけなのですけれども,いろんな文献等を見てみますと,例えば韓国なんかですと日本の法律がベースになっておりまして,その中に宣告猶予という制度を設けて,執行猶予・保護観察と一緒にセットで社会奉仕命令という。その宣告猶予を言い渡すことができるというのは,大体1年未満の刑を言い渡すような場合,上限1年ぐらいという形の短期のものに対応するという形で実施しているというように聞いております。そういう意味では,やはり長期のものにはかなり難しいけれども,短期のものについてはかなりあちこちでやられているのではないかなというような理解をしております。 ● どうもありがとうございました。 ● 諸外国と比べて,わが国では短期自由刑が少ないという御指摘はそのとおりだと思うのですが,ただ,第1回の会議の際に配っていただいた統計資料によりますと,道交法違反については,平成17年で6か月未満の実刑が797名となっていますので,相当数の短期自由刑が言い渡されているともいえると思います。これは,何度も道交法違反を繰り返していて,最後は,自由刑の執行猶予中の再犯であるため実刑にせざるを得ない事案であると理解してよろしいんでしょうか。 ● 実態としては御指摘のとおりで,通常ですと,例えば先ほどの例でもありますように無免許運転とか酒気帯び運転,こういうものは2,3回罰金刑に処せられて,その後公判請求になって,特段,非常に常習性が高いとかいう悪い事情がなければ,最初は執行猶予のついた懲役刑になり,その後,その執行猶予期間中に,あるいは猶予期間を経過しても,それから間もなく再度同じ犯罪を犯したということになりますと,その場合には再度の執行猶予はなかなかつかなくて実刑になることが多い。 ● そうだとしますと,そこで実刑にする前に,社会奉仕命令付きで,もう一度執行猶予にするという方法が,社会奉仕命令の活用手段の一つとしてあり得るのではないでしょうか。それによって,過剰拘禁の緩和にも幾分かは寄与すると思います。もっとも,先ほど御指摘があったように,社会奉仕命令をさせることが,どういう意味で責任非難と関係するのかという問題はありますので,そこの理論的な詰めは必要ですが,そこが解決できれば,一つの方策としてはあり得るのかなという気がします。 ● ○○幹事,どうぞお願いします。 ● 今に関連して,韓国の社会奉仕命令というのは受講命令付きのものもあるようなんですね。要するに,今の例で言えば交通事犯なんかの場合に,受講命令と社会奉仕命令と両方を科して,それで交通違反をした人に対してそれなりにきちんと考えさせると。プラス処罰的な側面で,処罰といっていいかどうか分かりませんが,社会奉仕命令を科すというようなやり方もあり得るのではないかと思うんですね。   あと,拘禁を減らすという点では,フィンランドなんかが実際に拘禁が減ったというふうにいわれているんですけれども,フィンランドなども8カ月までの刑ということですので,やはりそんなに長い刑に関しては社会奉仕命令というのは難しいんだろうと思いますけれども,今のような形でいろいろと利用の仕方というか,それはあるのではないかと思います。 ● どうもありがとうございました。○○委員,どうぞお願いいたします。 ● 今,○○委員からおっしゃっていただいたこととほとんど同じなんですけれども,責任非難という点で言えば,社会奉仕命令を刑罰の一つとして位置付ければ,まさに刑罰として科しているわけですから,そこで責任非難はできるということになると思います。ただ,そういう交通事犯を繰り返す者に対しては,社会奉仕命令を命ずるだけではやはり十分でないと思われますので,先ほど○○委員からおっしゃっていただいたような何らかの講習を受講するというようなことも併わせて命令する。今度の更生保護の法律の改正でもそのような受講命令というものもできるようにするというようなことも考えられているようですので,そういう組合せでやっていくということは十分考えられるように思います。 ● どうもありがとうございました。はい,○○委員,お願いいたします。 ● 今の関連で社会奉仕命令の政策的意義について簡単に。○○委員がおっしゃったことにヒントを得たんですけれども,社会奉仕命令の実施を,就労と関連させる,将来の仕事につながるような社会奉仕命令を科すという方向性も考えてよいのではないか。今後の進化した社会奉仕命令とでもいうべきもので社会奉仕命令の今後の在り方として模索されていいのではないか。 ● どうもありがとうございました。○○委員,お願いいたします。 ● 今,皆様方言われていることとほぼ関連するのですが,○○委員がさっきおっしゃいました社会奉仕命令を科す背後にある考え方の変化というのは,おっしゃるとおりだろうと思います。現在では,イギリスもアメリカも応報思想にもう一度戻っている面がありますので,当初は処遇が比較的やりやすい道交法違反者らが社会奉仕命令の対象だったわけですけれども,現在ではもう少しその範囲が広がってきていて,例えば常習累犯窃盗でも,犯情が軽いものについては科してはどうかという話が出てきていますし,強盗類似の犯罪でも,犯情によってはこれを使っていいのではないかというふうな議論も出てきています。そこまできますと,やはり社会奉仕命令は刑罰の一種であるということをはっきり言った上で,拘禁刑と罰金刑,あるいは,拘禁刑を科すのだけれども執行猶予の一条件としてというふうに,日本的に言うと整理が非常に難しいのですが,使える場面ではどんどん使おうという発想も出てきており,トライアルを繰り返しているのが現状かなと思います。   その中で,最後に○○委員がおっしゃったように,社会奉仕命令を科して社会内処遇をして,後でまたきちんと社会復帰をしないといけないわけですから,職業訓練的なことを加味するというのがやはりトレンドではないかと思っております。 ● どうもありがとうございました。どうぞ,○○関係官,お願いいたします。 ● 刑罰の一種としてとらえるというお話が続いておりますが,そういう意味で拘禁刑との代替と考えますと,量的な対比も必要になってくるかと思います。○○委員の書物には,社会奉仕労働3日と拘禁1日が匹敵するという記述があったように思いますけれども,一方で社会奉仕命令はそう長い時間を命ずるわけにはいかない,そこに上限が何百時間というふうに設定されると思いますけれども,そうなりますとおのずから何十日かの拘禁刑には代替できるが,何百日というものには無理であるということになりますでしょうか。 ● おっしゃったのは,私の20年以上前の論文のことなんですけれども,当時のイギリスを調べた段階では,量刑のガイドラインの目安としてそういうことが言われていたということだと思います。   それから,上限が現在では,240時間から300時間に伸びたということですね。もともとは余暇時間の剥奪ということが社会奉仕命令の趣旨だったんですけれども,それにしても1年間の間に300時間をこなすというのは大変な,比較的重みのあるサンクションであるということが徐々に理解されてきていると思われます。したがって,余計に240時間から300時間に伸びたということは,言ってみれば社会への償いという部分,応報的な部分もより強まったというように私は理解しています。 ● 社会奉仕命令に限らず,この部会での検討の方向として,いろいろプログラム,処遇の仕方,刑罰には,様々なメリットとデメリットがあると思うんですけれども,おそらく過剰収容の解消とか,あるいは社会復帰の促進に劇的に効く方法というのは多分ないのだろうと思います。それぞれにメリット・デメリットがあって,それもそんなに大きなものでないかもしれない。しかし,治療に例えるのが適当かどうか分かりませんけれども,現在の病気の治療でもいろいろな薬を組み合わせてなるべく副作用を減らしたり,効果を高めるというような治療が行われているのではないかと思いますが,ここでもやはり,先ほどの社会奉仕と,それから受講命令を組み合わせるとか,いろんな形で少しずつ選択肢を広げて効果を上げて,かつデメリットを少なくするというような方向で考えていくのがいいのではないかと思います。 ● どうもありがとうございました。ただいま検討の方向性の御指摘がありましたが,○○委員,この点についてはいかがでしょうか。 ● 社会奉仕命令は,おそらく30か国以上で取り入れられた。なぜこんなに発展したのかということなんですけれども,それは過剰拘禁の緩和以外のいろんな目的も加味されて,カメレオン的体質ともいうべき目的がからみ合ってきたことも一因であります。   それから,社会奉仕命令が発展したもう一つの背景につきまして,従来のプロべーションはいわゆるケースワーク理論に基づくものとされ,保護観察所におけるプロべーションオフィサーとクライアントとのケースワーク関係が中心であった。社会奉仕命令では,コミュニティの中で何か作業をする社会内処遇の本来の意味を取り戻す対象者がそういう面を持っている。社会内処遇の本来の特色がこの社会奉仕命令によって出し得るということが評価され発展につながったといえると思います。 ● いろいろ試してみないと分からない面もあるという○○委員のお話でございましたが,ほかにいかがでしょうか。こういうデメリットがあるとか,こういう面もあるとか御指摘がございましたら御発言をお願いいたします。   どうぞ,○○委員,お願いいたします。 ● 先ほどから皆様が御指摘いただいているように,刑罰もいろんな側面が多分あって,応報としての刑罰もあれば,特別予防的なものもやはり加味されているんだろうと考えられますが,応報としての刑罰という点で考えていったときに,それを社会奉仕命令で賄っていくということになると,先ほど御指摘あったように痛みを与える,あるいは自由を奪う的な側面で,果たして同等に評価し得るのかというところを考えていかなければいけないだろうと思われます。そのあたりになってきますと,例えば,先ほどから例に出ております道交法は比較的短期自由刑が多いと,これはこれまでの実務として事実なんですけれども,他方で道交法違反に対する社会の非難というのが今非常に強くなっているので,それをむしろより強めるべきだという意見が出てきている。そういう中で社会奉仕命令を科すことによってそういう社会的非難にこたえることができていくのかということは,多分検討していかなければいけないだろうと思われます。   他方で,特別予防的な観点からいくと,むしろ素直な発想としては,それこそ今もある保護観察の一つの遵守事項等の中で位置付けていくというような形が多分あるんだろうと思うんです。それは,あくまでも被告人の改善更生,あるいは再犯の防止に役に立つというような側面が出てこなければいけない。そういう面を考えていくということになると,やはり社会奉仕命令がそういう効果を持つ人を適切に選択して,その上で適切にその命令を与えるという枠組みをどういうふうにつくるのかということを考えていかなければいけない。ですから,その両面少し整理して制度の枠組みを考える必要があると思います。   ちなみに,先ほど職業訓練のお話も出て,これも一つの方法として有意義なところなんだろう,特に,保護観察の中で例えばそういう社会奉仕命令等,職業訓練的なものを入れていくというのは,非常に,一つの考えられるところだろうと思うんですけれども,他方で,例えば無免許運転,酒気帯び運転を繰り返す人というのは,どちらかというと職業的にはきちんと自立してやっていける人なんだけれども,その面だけは常習性が強いという人が多いもんですから,そのあたりも考えていかなければという気がしております。 ● どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。   どうぞ,○○委員,お願いいたします。 ● 今の○○委員のお話しを伺っていて,あるいは,皆様方の議論を伺っていて,社会奉仕命令といっても,社会奉仕の中身としてどんなものを考えるのかというところも随分違うのかなという気がいたしまして,例えば,私などニューヨークにいたときには落書きを消すというのがあったと思いますけれども,こういうのはまさにその種の,日本で言えば軽犯罪法に違反するようなことをやった人間に対して,お前らは社会に迷惑をかけたんだから,その分をきちんと社会に還元しなきゃいけないんだという発想としてそういうことをやっている。これは,どちらかというと罰金刑代替的なものなんですけれども,この種のものというのは,懲罰的な性格が強いのではないかと思うわけです。しかし,それとは別に,やはり対象者の社会復帰を促すために,例えば前回御紹介のあったような人との人間関係を通じて行うような社会奉仕というのもあるのかもしれない。だから,そのあたり,どういう対象者についてどういうものが考えられるのかというところは,なかなか一律には議論できなくて,いろいろな類型があるのかなという感じがいたしました。   それと,先ほどから御議論に出ていたところですが,自由刑を社会奉仕命令で丸ごと代替しようとすると,なかなか難しいのかもしれませんけれども,例えば,そういうものを仮釈放,保護観察の中の条件にすることによって,少しは早く出しやすくなるとか,そういう可能性というのが考えられるでしょうか。そうすると初めから丸々自由刑の代替はできなくても,少し早く出して社会に徐々に慣れさせるというような趣旨も含めて運用するという可能性もあるのではないかと,これは全く思い付きですけれども思いました。 ● 同じ意味で,○○委員は仮釈放という形でおっしゃいましたけれども,最初の段階で執行猶予を付けるかどうかという点でも,何もしないで,あるいは,ただ保護観察を付すだけでは,執行猶予にはちょっとできないけれども,制裁的な色彩のある社会奉仕を命令することによって,執行猶予に落ちるということもあり得るかなと思います。   それから,いろんな性格があるというのはそのとおりで,先ほど○○委員からも御指摘いただいたとおりなんですけれども,その際に,社会奉仕命令という新しい制度を仮に設けるとして,なるべく一つの性格で規定した方がいいという考え,はっきりとした制度として設ける方がうまくいくんじゃないかという考えもあると思いますし,逆にいろんな形で使えるようにしておけばいいじゃないかという考えもあると思います。どちらがいいのか私はまだよく分からないんですけれども,そこも選択肢としては考える必要があると思います。 ● かつての議論の中で,社会奉仕に適する仕事があるのかないのかという議論があって,前回,○○委員の方から「あります」という話があったんですが,そのあたりのこともちょっと議論しておかないと全体としての制度設計する上ではいろいろあるのかなと思っております。私,実は先ほどちょっと申し上げましたけれども,かつて三,四年前ですけれどもオランダにいきまして,オランダの社会奉仕命令の現場に行きました。オランダというところは,簡単にちょっとお話ししますと,もともと戦後オランダオークという木があったんですけれども,その木が戦後なくなりまして,戦災でなくなったり,いろんな伐採をしてなくなったためにアメリカンオークを植えたために,自分たちのオークがなくなったという市民の声が非常にあったので,全国の森を全部オランダオークに植えかえるという作業を社会奉仕命令としてやる。しかも,その森というのは町中にある森なんですね,山の中の森ではなくて。オランダはもともと平坦なところですけれども。これがかなり社会に受け入れられているんですね。実際はやはり保護観察官とボランティアの方がいて,具体的にその植えかえ作業を手伝っているというような状況で非常に感銘を受けました。 ● 私は,作業が日本でもありますと言ったのではなくて,これまでの各国導入の議論をみますと,当初,実際にその作業はあるんだろうか,それから本当に対象者が奉仕作業をするのかという議論が出るのですが,スタートしてみると運用面ではその点非常にクリアされるというのが現実だといった趣旨でございます。 ● また仕事の関係なんですが,前回実際の少年の例を御説明いただいたんですが,実は私どもの日弁連の委員の中で千葉の先生がおられて,千葉の少年の関係で申し上げますと,ある施設がその地域の神社仏閣の清掃作業をしていて,それが地域に完全に受け入れられて,その施設の子が一所懸命神社仏閣をきれいにしているという形で,ある意味で子供たちとその施設と社会が融合してしまっていて,お互いが感謝をし合う形になっているということを聞いています。そういったものがおそらくこれから考えればいろいろあるのかなという感じはしますけれども。 ● 話を少し発展させたいんですけれども,委員がおっしゃったことから言うと宗教的なことをさせることがいいのかどうかというのは,注意を要すると思います。いわゆる憲法上の信教上の問題がありますので,その点で刑罰としてどこかの神社仏閣を掃除しなさいということになると,我が国では抵抗感があるんじゃないかという気がしております。だから,そういう意味では作業の内容というのは先ほどから問題になっているように,注意深く設定する必要があります。同時に労働組合の問題も考える必要がある。奉仕作業をとることによってその地域での失業率を上げるのか。特にイギリスでは,この点,労働組合とプロべーションオフィスとかなり協議をしてからやっていますので,その点も考慮する必要があると思います。   それから,先ほど○○委員の話を伺っていて思ったんですがマッチングの問題が大切で多様な仕事を用意して対象者と適合させるということが非常に必要なことだと思われます。   それからもう一つ,社会奉仕命令に適さない対象者はどういうタイプの人なのかも考える必要がある。どういう人が社会奉仕に適すのかを議論する一方,適さない人はどんな人なのかということです。当初は暴力犯罪とか,薬物中毒者,アルコール中毒者,それから性犯罪者という類型があったんですけれども,その後の社会奉仕命令の運用の長い歴史の中でどんな人が適さないのかという情報も蓄積があるのではないでしょうか。 ● どうもありがとうございました。   どうぞ,○○関係官,お願いいたします。 ● 今の適性というお話になりますと,社会奉仕命令を実施している国々では大体成人についても社会調査の報告書があって,それが一番の資料になっているようなんですが,日本の裁判所は犯罪事実の認定と量刑資料の収集等をある意味で一体化してやっておられるんで,その辺どうでしょうかね。少し無理があるということになりますか。 ● 一般情状としての量刑に必要な範囲で身上,経歴や生活状況等について,例えば被告人の供述調書あるいは関係者,家族等の供述調書等が出るというのは,ある程度ございますけれども,ただ,やはり日本の場合は先ほども申し上げましたように量刑も行為責任の点が中心で,一般情状は比較的小さな影響しか及ぼさないという整理なものですから,おのずからそれがそれほど詳細なものにはなっていないというところがございます。ですから,そういう意味で言うと必ずしも今の一般的に出てきているもので,特に,重い罪ですと比較的その辺もよく調べるところがあるかもしれませんけれども,軽い罪の事件ですとごく簡単な身上に関する調書が出る程度です。そうなりますと,それが果たしてどの程度適する人を選択していくことができるのかという問題はあろうかと思います。 ● ○○関係官,よろしいでしょうか。 ● はい。 ● まさに適するか適さないかという問題は大きな議論になると思いますし,かなり議論しておく必要があると思います。ただ,韓国の例では,私がお聞きしたところでは,例えば,まさに先ほど来議論がありました交通違反者については受講命令というものが一つのセットになっていまして,そういうものについてはある種の類型として,そういうものについてはまずはそれをするという形のものを類型化してつくっているということなんですね。それと,日本の場合ではちょっとあまりありませんけれども,韓国の場合はいわゆる不法な利益を膨大に得るような形,例えば贈収賄のものについては金もうけだけじゃなくて,社会のために何かをしなさいという意味でやらせるとかというニュアンスのものがあると聞いています。ですから,類型化できるものもあるしできないものもあるので,そこら辺を議論する必要があるかと思います。 ● これまでの議論,前回も出たことの確認と今のお話と関連していると思いますので一言だけですが。まず社会奉仕命令をどういう性格のものと捉えるかは別として,一定のプログラムを考えた場合に,それに適する人,適さない人がいるとした場合に,まずだれが適するかどうかという点が,今のお話にもあって,直接は触れられていないわけですが,センテンシングレポートのようなものを実際にやらなければ,軽微な犯罪を犯した者との関係でも,社会奉仕命令を科すことは難しいかもしれないという気が,私はしています。軽微な犯罪者であるからこそ社会に対する危険の程度が低くて,社会内の処遇に適しているのでしょうけれども,少し現在の制度,訴訟法の制度も変えないと,そうした処遇に適した人を見つけられないのではないかな,というのが一つでございます。   それから,適した人にやらせていいのかというときに,それはその人の同意ベースなのか命令ベースなのかというのは,かねてから指摘させられている問題ですけれども,その点を考える際には,それは,広い意味で刑罰なのか非刑罰なのかという点,複合的な性格も残るかもしれませんが,基本スタンスとしてどちらなのかということを決めていくのがもう一つの問題かと思います。   これには応用編とでもいうべき問題があって,例えば,刑罰モデルで同意を得ないというモデルをとった場合,それは犯情が軽微なものに適するのだけれども,もう少し罪質としては重そうなことをやっている者ではあるけれども,どうしても社会内処遇を受けたいと本人が言っているという場合に,改善更生の効果が客観的な資料で認められるときには,そういう人に科しても良い,という話もあるかもしれません。   ですから,最後は,○○委員もおっしゃったようにオプションの整備ということが必要だと思うのですが,スタートしていくときには,軽微な犯罪者に対するものからまず考えていって,これを広げていって,それが刑罰ないし非刑罰モデル,どこまで分かれていくかというところを見ていきますと,新しい制度であっても作りやすいのかなという気がいたしました。感想です。 ● どうもありがとうございました。○○委員,どうぞお願いいたします。 ● 今の点に関連してなんですけれども,最初のどういう人が適するかということについて,どういう手続の中で判別していくか,これもいろんな在り方があって,それこそ日本の少年で言えば,保護主義の観点から審理そのものが行われていて,その中で調査が行われて資料が集められて,当然それに適する人が判断できるようになっています。刑事について同じように今言えるかというと,これは先ほど申しましたようにむしろ行為責任という点が重視されているということで,なかなかそこのところは手厚いものにはなっていない。ですから,そこをもし公判の手続の中でやろうとすると,○○委員がおっしゃられたように訴訟手続そのものを変えていかなければいけないかもしれない。他方で,今度センテンスが終わった後の保護観察の枠組みの中でということであれば,そこはまたもう一度人を見直した上でそこのところに資料を集めて,適切な人を選んでいくということもできようかと思われます。   たしかドイツで執行猶予を言い渡したときには,公判手続を終わった後に,裁判官が保護観察の監督機関でもありますので,そこでいろんな付加条件とかを付けていたように記憶しています。ですから,そのあたりは果たして公判手続の中で行っていくのがいいのか,それともその後の保護観察の実施手続の中で行っていくのがいいのかというのもちょっと,あるいはそのあたりが諸外国どうなっているかということも,できれば調査していただければありがたいなと思っております。 ● 今のお話で,軽微な犯罪についてという話でございましたが,他方,この部会は過剰収容をどうするかということが出発点でして,今お話を聞くと短期の自由刑というのは日本では比較的少ない。逆に言うと比較的多いのは長期の自由刑,そうなると,どちらかというと重い犯罪ではないかと考えられます。その中でも私ども警察は,第一番目に被害者をケアする立場から申し上げますと,そういった受刑者が早期に出てくる,社会内に戻されるという中で被害者の意向といいますか,今被害者に対するケアを非常に強めようという傾向があるものですから,そういう点での配慮も必要になってくるのではないかなと。   また,仮釈放のときに被害者の意見を今は聞くというようなことをされておられるようで,その中でもそういった声も被害者の方から,まだそういうことが忘れられないんだというような声もあって,なかなか仮釈放のときにいろんな御苦労があるとも聞いております。 ● どうもありがとうございました。   社会奉仕命令に関しまして,メリット・デメリットがかなり明らかになってきたように思いますが,ほかにいかがでしょうか。○○委員,お願いいたします。 ● 先ほど,○○委員がおっしゃったのと同じ趣旨のことなのですが,訴訟手続まで改正してセンテンシングレポートのようなものを作成する制度というと,かなり大掛かりな話になってしまうという印象がありますほか,そもそも,社会奉仕命令の対象となるような犯罪についてだけ,そのような制度を導入することができるのかという問題にもなります。かといって,そのような犯罪だけではなく,事件全体に制度を導入するとなると,おそらく,そのような制度改正それ自体が,刑事手続全体の在り方にかかわる大きな問題として,議論があるのだろうという印象でありました。   また,逆に,軽微な犯罪というものを対象にするとなると,センテンシングレポートの作成に伴いある意味コストがかかるわけでしょうから,そのコストをどこまでかけるのが適切なのかという問題になってくる気もいたします。コストのことばかり言っていると問題かもしれませんが,センテンシングレポートを作成した上で社会奉仕命令を課す場合のコストの方が,刑務所において処遇をする場合のコストよりも非常に大きくなることも考えられます。それで改善更生の効果が非常に上がるというなら,それはそれでコストに見合うのかもしれませんが,検討に当たっては,そういう観点も必要なのではないかという気がいたします。センテンシングレポートというのも一つの考え方かもしれませんが,それ以外にも,保護観察の枠組みの中で社会奉仕活動を義務付けるとか,保護観察の枠組みである必要もないのかもしれませんけれども,○○委員御指摘のとおり,公判手続終了後における何らかの手続の枠組みの中で,社会奉仕命令を位置付けるということも考えられるのではないかという感想を持ちました。 ● どうもありがとうございました。   問題点が出そろったようですが,項目3はこのあたりでよろしいでしょうか。また,後日,この問題が議論されるときに,改めて御意見を賜ることがあるかと思いますが,ほかに御意見がございますでしょうか。   ○○関係官,よろしくお願いいたします。 ● 最初の方に○○委員から御紹介くださった裁判例は非常に興味深いですが,1審と2審の考えがかなり違っているように思います。昔,似たような事例として,東ドイツに留学するので5年間判決の宣告を延ばしたというケースがありまして,これはたしか最高裁までいって破棄されたと思いますけれども。それに比べますと,今回御紹介の事例は4カ月とか6カ月とかその程度の期間なんですけれども,それがどこに問題があったのか。昔の事例はむしろ非常に長い期間,しかも犯罪事実とはあまり関係ないような事由で判決宣告を引き延ばすということ,そういう手続上の問題が大きかったと思いますけれども,今回の高裁のお考えは伺っておりますと,それよりむしろ刑の量定というものは犯罪事実を中心にして行うべきであって,その後で社会奉仕活動をやったからというようなことで量刑を左右すべきではないという実体法的な御判断かなと思うのですが,とりあえずそういうふうに理解していいでしょうか。 ● 申し訳ございません。御紹介に当たりまして多少かいつまんでおりまして,実は両方の判決ともそういう実体的な面でそれほど大きく評価できないという点と,そうであるにもかかわらずこんなに引き延ばすというのはむしろけしからんという両方に触れておりまして,ですから,そういう意味で言えば手続的な面にもやはり触れているというものでございます。 例えば,大阪高裁の事例でございますと,無免許運転が処罰される趣旨は,「一般に交通の安全を害し交通の危険を発生させるおそれが大きいので,これを防止するためであり,被告人のように運転免許を取り消された者も交通の危険性が高いがゆえにその処分を受けたものであるところ,原審が被告人に指示したようなボランティア活動に従事することによっては右の危険が除去され,あるいはこれが減少するものとは到底言えないところである。にもかかわらず,原判決のように無免許運転を単なるルール違反であるかのようにとらえて,交通の危険性の除去ないし減少には何ら関係のないボランティア活動をしたことをもって,被告人に対する社会的非難が減弱したと評価することは,無免許運転罪の罪質にそぐわず失当というべきである。まして右活動が原審裁判官の指示によるものであり,しかも被告人を右活動に従事させるために殊更被告人の最終陳述の終了後に判決期日を重ねて指定し,迅速な裁判の要請にも反する本件のような事案において,右活動をしたことを再度の執行猶予の根拠とすることは不当である」と,このような触れ方をしております。   ですから,前提としてはやはり,そもそもこういう活動が危険の除去という意味で,ですから行為責任の面だと思うんですけれども,そういう意味で量刑上大きく評価することはできないんだと。そうだとすると,そういうことのために殊更に審理を長引かせるのはむしろ手続としては相当ではないと。両方の評価が入っているように思われます。 ● ありがとうございました。   今のお話を逆に裏返しますと,犯罪事実とも関係深い刑の量定を十分左右し得るような社会奉仕活動をすれば,少し結論は違ってくるのかなという気もいたしますが,手続的に延ばすという点は,昔は判決の宣告猶予を採用しようかという機運がかなりありまして,特に小野清一郎先生が非常に熱心な主張者でいらっしゃいましたが,にもかかわらず刑法全面改正の特別部会では採用されなかったという経緯はありますけれども,今もう一度そういうことを考え直すことによって手続上の障害をクリアする。これは現に少年の保護手続では試験観察その他の形でフルに行われていると思いますけれども,そんなような気がいたしました。 ● 今の点もまことに御指摘のとおりでございまして,例えば社会奉仕命令ということではなく,犯行後の被告人の態度などでも,前回も申し上げましたけれども被害回復への努力とか示談とか,そういう機会を与えるためにしばらく判決を待つということは現在でも時折ございます。それはやはり,被害回復がなされれば量刑に結構影響するところが大きいというところがあるというところがございます。他方で,社会奉仕命令にそれと同じものを当てはめようといたしますと,社会奉仕命令がどのような意味で量刑に影響を及ぼすのかというところを考えざるを得ません。 この二つの高等裁判所はこういう交通事犯,無免許運転や酒気帯び運転において社会奉仕活動をしたということ自体は,一般情状としては考慮されるにしてもそれほど大きな影響にはならないという評価をしていると。その一つの要素としては,先ほども申し上げましたように社会奉仕活動をすることによって,例えば少年の場合ですと内省が深まって非常に効果があるというような評価がされております。それは前提として,そういう社会奉仕活動を行うことによって内省を深めそうな少年を選んでそういう活動を行っていただいているという面が多分あるんだろうと思います。そうしますと,例えば道交法違反の今行われているような公判手続の中で,この被告人は社会奉仕活動を深めることによって内省を深めて,道交法違反について常習性を減少させることができるという判断ができるケースというのはかなり少ないのではないかと。ですから,むしろそういう意味で社会奉仕活動を行うことがその被告人の量刑を考える上でどういう影響を与えるのか,与えるんだとすればその判別するためにどういう資料を集める必要があるのかということを考えていく必要があろうかと思っております。 ● 項目3につきましては,以上でよろしいでしょうか。御異議がございませんようですので, このあたりでこの問題を終えまして,本日の議題でございます「その他の社会内処遇の在り方」と,「刑執行終了者に対する再犯防止,社会復帰支援策」についての審議に入らせていただきたいと存じます。   諸外国におきましては,これらのテーマに関し種々の制度が導入されているようであります。また,我が国でも,現行法の下で実施されている制度の中には,特に,矯正処遇や保護観察の枠組みの中で行われているものを中心としまして,その法的性格を拡充することなどによって,今回のテーマに対応する制度として導入することが考えられるものもあるようでございます。  そこで,今回のテーマの議論に先立ち,まず事務当局の方から,諸外国における社会内処遇などの制度の例について御紹介いただき,これを参考に御議論いただくのが適当だろうと思われます。同様に,現行法の下で実施している制度で,参考となるようなものについても,事務当局から御紹介いただき,これも参考にして御議論いただくのがいいかと存じます。そのような進行でよろしいでしょうか。 特に御異論もございませんようですので,そのようにさせていただきます。   それでは,まず事務当局から諸外国に見られる制度の例について御紹介をお願いいたします。 ● 資料13と資料14の各一覧表を御覧ください。資料13,14は,本日の御議論において,社会奉仕を義務付ける制度以外の社会内処遇や,刑執行終了者に対する再犯防止,社会復帰支援策としていかなる制度が考えられるのかということを御検討いただくに当たり参考にしていただくため,事務当局の方で,諸外国に見られる制度の例を,幅広に列挙したものでございます。 本日のテーマである,その他の社会内処遇の在り方などにつきましては,諸外国の例を参考に,具体的なイメージをお持ちいただきながら,考えられる制度の在り方を御議論いただくのが効率的であろうと考え,このような資料を用意させていただいた次第でございます。 このように,資料13,14は,あくまで皆様の御議論の参考となるよう,諸外国で見られる制度例を幅広に挙げてみたものにすぎず,当然のことながら,これらの制度を我が国に導入することの可否,適否などにつきましては,我が国の法制度全体の体系との整合性や,制度としての実効性等の観点をも踏まえ,別途検討する必要があるものと考えております。 また,資料の作成に当たりましては,公刊資料等を参照するなどして可能な範囲で調査を行ったものにすぎず,制度の詳細や運用の実態などにつきましては十分に承知していないことなどを御容赦いただければと存じます。   それでは,まず,資料13について御説明させていただきます。   資料13は,諸外国において社会奉仕を義務付ける制度以外の社会内処遇について,いかなる制度が存在するかについて,参考となると思われる具体的な例を列挙したものでございます。調査に当たっては,公刊資料などをもとに,比較的多く情報の得られたイギリス,アメリカ,フランス,カナダを対象としております。個別の制度につきましては,同種の制度であっても,当然のことながら,各法域におきまして,それぞれの内容や位置付けなどが異なっておりますことから,資料13には,あくまでも代表的な特徴として考えられるところを簡潔に記載しております。   それでは,資料13に記載しております個別の制度について説明させていただきます。   まず①の「集中監督プログラム」は,いわゆるプロベーションやパロールなど,我が国で言えば保護観察に相当する枠組みの中で,保護観察官と対象者の頻繁な接触による行動監視を中心とする密度の高い監督を行う処遇方法の総称であり,後で述べます在宅拘禁,分割刑,各種処遇プログラムなどの,資料13記載の他の制度や,ただ今御議論いただいた社会奉仕命令などと組み合わせるのが一般的なスタイルのようです。   次に,②の「在宅拘禁」は,対象者に対し,出勤や学校への出席など,事前に許可された特定の行動を除いて,全日又は指定された時間帯,自宅にとどまることを求めるもので,拘束的制裁の要素を持つものである一方,例えば,飲酒の禁止などの個人の特性に合わせた遵守事項や,社会奉仕命令など,他の教育的手段と組み合わせることによって,社会復帰目的の達成を期すことも可能となるようです。   そして,在宅拘禁の実効性確保のため,多くの場合,電子監視が併用されているようでございます。電子監視は,技術の発達に伴い,種類も充実し,併せて,飲酒禁止の遵守を確認するための呼気検査付き装置によるモニタリングや,対象者の所在を常に衛星により確認できるGPS装置によるモニタリングなどが実現しているようです。   また,③の「定期出頭命令」とは,デイ・リポーティングセンターなど特定の場所へ定期的に出頭して,センター職員の指導監督の下,適切な活動をし又は教育を受けることを命じるものであり,社会復帰的効果を伴う拘束的制裁を課すものと考えられております。対象者の集団処遇によって,その行動を効果的に管理することができるということから,主にイギリスやアメリカで発達してきたものです。   ④の「治療参加命令」とは,プロベーションなどにおける遵守事項として,薬物乱用,アルコール依存などの治療を目的とする各種プログラムへの参加を命ずるものであり,そのようなプログラムを受けるかどうかについては,これを強制するものと対象者の自由意思にゆだねるものとがあります。 代表的な例としては,裁判所が主体となって,薬物検査やカウンセリングなどの治療的な処分を施すドラッグコートがあり,アメリカにおいては1989年にフロリダ州で初めて開設されて以来,短い間にアメリカ全州に普及しております。 次に,⑤の「強制的断薬」は,カリフォルニア大学ロサンゼルス校の教授であるマーク・クレイマンにより提唱された処遇方法であり,プロベーション又はパロールの一環として重篤な薬物依存症者を対象に,これを薬物使用から強制的に切り離すことができますよう,週に1,2回の薬物テストを義務付け,違反があればその都度数日間の収容等の制裁が科され,違反を繰り返すに従い,その制裁が厳しくなる上,刑事訴追を受ける可能性も生じるなどというものです。 なお,ドラッグコートも強制的断薬も,薬物の再使用などの失敗が生じることを前提にプログラムが組まれており,再使用が直ちにプログラムの打切りや刑事訴追に直結するものではないという点で共通しております。   また,⑥の「インターロックシステム」とは,アルコールの呼気検査を行い,アルコールが検知されなかった場合でなければ自動車のエンジンがかからないシステムですが,アメリカでは,この義務付けが広く用いられており,例えば,ニューヨーク州やメリーランド州などでは,プロベーションの遵守事項とされている一方, 社会内処遇ではありませんが,運転免許の再取得要件としている州もあるようです。   ⑦の「無令状捜索条項」とは,プロベーション又はパロールの遵守事項として,保護観察官や捜査機関などの法執行機関により行われる無令状の捜索差押えに服することを要求するというものを念頭に置いたものです。アメリカにおいて,このような無令状捜索条項はカリフォルニア州を始め広く用いられているようであり,プロベーションやパロールに付すに当たり,無令状捜索条項を含む保護観察条件について対象者の同意を必要とすることなどによって,合衆国憲法修正4条などの憲法問題をクリアしているようです。   最後に,⑧の「分割刑」とは,ショックプロベーションなどとも呼ばておりますが,犯罪者に刑務所生活での試練を経験させるため,刑期の一部について施設に収容し,残りの期間をプロベーションに付すという刑であり,裁判所が一種の刑罰として言い渡すもののようです。当初の施設収容によるショックにより,再犯防止,改善更生を期待するものです。   次に,資料14について御説明させていただきます。   資料14は,アメリカ,イギリス,ドイツ及びフランスにおいて,刑執行終了者に対する再犯防止,社会復帰支援策として,いかなる制度が存在するかについて,その具体的な例となるものを列挙したものです。これらの制度につきましても,資料13同様,広範にわたるものであることから,制度の詳細,運用実態等については必ずしも十分に承知していないことを御容赦願いたいと存じます。   なお,この表に不見当と記載しております部分は,私どもの調査した範囲では該当する制度を把握するに至らなかったという趣旨であります。   まず,犯罪者の情報登録に関する制度としては,主に性犯罪者について,アメリカ,イギリス,フランスに見られるところでありますが,情報を公開する制度については,アメリカにおいて,メーガン法と呼ばれている連邦法が各州に対しこれを義務付けているものの,イギリス,フランスにおいては,原則公開までは実施しておりません。   次に,刑執行終了後の社会内における監督については,各国にその制度が見られるところです。   アメリカにおきましては,フロリダ州のジェシカ法が,12歳未満の者に対して強制わいせつを行った者に対し,終身刑に処するか,あるいは25年以上の有期拘禁刑に処してその出所後においても終身電子監視に処しております。   また,イギリスにおきましては,2003年性犯罪法で,性犯罪により有罪判決を受けた者について,住所等の届出や,子供と接触するような活動の禁止などを定める4種類の公衆保護命令について規定しております。 なお,この公衆保護命令は,刑事処分ではなく,民事上の命令であり,原則として,警察の申立てにより裁判所が発することとされており,命令違反には別途罰則が置かれています。   さらに,ドイツにおいては,刑法に自由の制限を伴う改善処分としての行状監督が規定されており,これは,窃盗,詐欺,傷害など一定の犯罪について刑罰とともに付加的制裁として科されるものです。この制度により,対象者は,自由刑の執行終了後であっても,行状監督所の監督に服し,行状監督所及び保護観察官の援助を受けることとなります。   そして,フランスにおきましては,性犯罪者,特にいわゆる小児性愛者の再犯予防を目的として,裁判所は,社会司法観察刑というものを言い渡すことができ,これにより,対象者は,刑が執行終了した後であっても,裁判所が定めた一定の期間刑罰適用判事の監督の下に置かれ,特別遵守事項として治療を受けることなどが義務付けられます。   また,最近の法改正により,未成年者に対する性犯罪などを犯した者に対し7年以上の拘禁刑を科す際に,刑執行終了後の再犯を防止するために必要不可欠と認められる場合に,刑執行終了後の一定期間,当該対象者を電子監視装置に付する旨の命令を下すことができるようになったようです。   最後に,刑執行終了後の施設内収容処分については,アメリカのカリフォルニア州などにおいて暴力的な性犯罪により有罪判決を受け,精神の異常により,更に暴力的な性犯罪を行うおそれがあるような者を,病院や矯正施設に収容する制度があり,このような施設内収容処分は民事上のものとして位置付けられているようです。   また,ドイツにおいては,公共にとって危険であることが明白な者について,刑執行終了後も引き続き刑務所に収容することができる保安監置という制度があります。   以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   引き続き,現行法の下で参考となる制度について御紹介していただきたいと存じます。まず,矯正施設では,性犯罪者を対象とする処遇プログラムを実施しているようですので,矯正局の方から,この点について御紹介いただけますでしょうか。 ● 矯正局でございますが,資料15,矯正施設における性犯罪者処遇プログラムの具体的内容を御覧ください。経緯としましては,御存知のとおり平成16年11月奈良の女児誘拐殺害事件を機に性犯罪者処遇の充実を求める声が高まったことを背景としまして,保護局と合同で平成17年度に性犯罪者処遇プログラム研究会というものを立ち上げまして,その成果としてこのプログラムを作成し,実施しているということでございます。   第1ページ目は1として,これまでの問題点と,2として,新法も施行されましたので,その下で現在取り組んでいる内容について整理をしたものです。1の問題点としましては(1)から(6)までありますとおり,これまでの処遇は統一的・標準的なものが存在しなかった,あるいは監獄法に法律上の根拠がなく,受刑者に対して受講を強力に働きかけることができなかった,個々の性犯罪者の問題性に合わせた指導が困難であった,指導者が不足していた,受講回数も少なかった,それから,問題行動を変容させるための方法やメカニズムについて基本的な知識を付与する機会が不足していたというそれぞれの諸点に対応しまして,2で書いておりますように,(1)では研究会の検討結果を踏まえて,統一的・科学的な標準プログラムを策定しております。(2)は,今年の5月から施行されました新しい法律によりまして,プログラムが必要と認められる受刑者に対し受講を義務付けることが可能となっております。(3)は心理技官による専門的な調査を実施し,性犯罪に結び付いている問題性を特定した上で必要な処遇の密度,内容を判定することで,調査,処遇の一貫性を確保しようということです。(4)は,指導者について,平成18年度から教育専門官と心理技官の増員も得まして,指導に当たっ ているということです。(5)は,時間について,最も長い高密度プログラムでいきますと全部で69セッション,1セッション当たり標準100分ありますので,これまでのものと比べれば時間も長くなったということです。(6)は,そのプログラムの基本的な構造として,前半の30分程度授業といいますか,心理教育に充て,その他の時間をグループワークに活用することとして,基礎知識も与えつつ,自らの問題性等に向き合うことを促進するような構成になっているということでございます。   その次の2ページ目ですが,受刑者の処遇の流れから見ましたプログラムの全体像でございまして,新たに刑が確定した全受刑者に対して,比較的客観的事実をもとに判定できるスクリーニングというものを実施いたしまして,性犯罪者調査が必要な者を選び出そうということです。調査センターとして全国に八つの刑務所がありますので,ここで専門的な技官による性犯罪者調査をして,またオリエンテーションというプログラムへの導入の過程を経まして,プログラムの実施施設,これは全国20の刑務所を指定しております。ここで第1科から第5科のような内容のプログラム本科を受講させようというものです。これは,指導者が2名の組で受講者は10名程度のメンバーをつくって行くものでございます。一番下に書いてありますメンテナンスというのは最後の復習のようなものでして,プログラムの本科を受けた者の釈放前にもう一度復習をさせて,社会生活への円滑な移行を促すというものです。   3ページ目は,先ほど申し上げましたプログラム本科の構造につきましてもう少し詳しく,高密度,中密度,低密度等の内容を示しているものです。下の方のセッションの流れというのはどんなことをやっているのか,具体的なイメージを持っていただくための説明でございまして,さきに申し上げました授業,心理教育の部分とグループワークの部分,まとめ,それから宿題などというものも用いていくという内容になっております。現在の状況ですが,これまでの実績につきましては保護局とも合同で指導者研修等も実施いたしまして,指導者の養成,能力の向上に努めた上で,これまでのオリエンテーションの受講人員でいきますと,11月末までには250名程度がオリエンテーションを終えたという段階です。このオリエンテーションを終えてグループワークを実施できる8名程度の対象者が集まった施設から順次本科を開講してきたわけですが,現在は20の刑務所すべてで既にプログラムの本科を開講しておりますので,現在のところ編入者数は170名を超えましてこれに取り組んでいるというところでございます。   矯正は以上です。 ● どうもありがとうございました。   続きまして,保護観察所において,性犯罪者を対象とする処遇プログラムを行ったり,あるいは,更生保護施設においても,様々な処遇を行ったりしているようでございますので,保護局の方からこれらの点について御紹介いただきたいと思います。 ● 引き続きまして保護局でございますが,保護局の保護観察所における性犯罪者処遇プログラムについて御説明申し上げます。資料16でございます。   保護観察所におけるプログラムの特徴は,1枚目のペーパーにお示ししたとおりでございます。第1に,50庁すべての保護観察所で実施することとしておりまして,刑事施設から仮釈放された者,そして保護観察付執行猶予中の者のうち罪名にかかわらず性的な動機に基づいて犯罪を惹起した人すべてを対象としております。 第2に,プログラムの受講の義務付けということでございます。対象となる者に対しましては,仮釈放者につきましては地方更生保護委員会が,保護観察付の執行猶予者につきましては言い渡しをしました裁判所の意見に基づいて保護観察所の長が保護観察中に守らなければならない遵守事項として,プログラムの受講を指導しております。 第3に保護観察所のプログラム,これは共通の理論に基づくというのは先ほど○○幹事から御説明いただいたとおりですけれども,同じ理論に基づくプログラムという形で4種類の体系的なプログラムで構成されております。プログラムの内容としまして,中心となるのがコア・プログラムということでございまして,このコア・プログラムをイギリスとかカナダなどの諸外国におきまして,性犯罪者に対して効果があると認められています認知行動療法を主として活用したプログラムでございます。性犯罪被害者の感情を理解させたり,共感を持たせたり,自分が性犯罪を起こす危険性の高い状況を自覚させまして,これを回避するための具体的な対処策を考えさせるということを主な内容としております。この中心となるコア・プログラムのほかに刑事施設,矯正施設においてプログラムを受けていない者に対する導入プログラム,そして保護観察官及び保護司との面接や家庭訪問によりまして,生活実態把握等指導を行う指導強化プログラム,そして性犯罪者の家族をサポートする家族プログラムというものを実施しております。詳細につきましては,次のページの保護観察所における性犯罪者処遇プログラムの構成,ここに概略図,流れが記載してあるとおりでございます。 それから第4に,専門的処遇実施のための班を設置したことが挙げられます。大規模庁であります東京,名古屋,大阪,福岡の各保護観察所,特に集中的にプログラムを実施するための特別処遇実施班を設置しているということでございます。これまでに,仮釈放者につきましては10月末現在でプログラムの受講を特別遵守事項として設定された者,まだ仮釈放されていない者も含めまして150名でございます。執行猶予者につきましては本年3月に執行猶予保護観察法が一部改正され,9月19日から施行されましたが,10月末現在33名についてプログラムの受講が特別遵守事項に設定されております。 性犯罪者プログラムの説明は矯正と併せてということですのでこれぐらいにさせていただきまして,引き続きまして資料17,更生保護施設における処遇ということで,こちらの酒害・薬害教育プログラムというものについての説明をさせていただきます。 更生保護施設,これは犯罪や非行をした人が頼ることのできる親族がいなかったり,居住環境が更生の場として適当でなかったり,あるいは本人に社会生活上の問題があるなどして改善更生することが困難な人を一定期間収容保護して,宿泊所や食事の提供,就職指導,社会生活に適応させるための訓練等を実施いたしまして,円滑な社会復帰と再犯防止に寄与することを目的として設置されております。現在更生保護施設は全国101カ所設置されており,そのすべてが更生保護事業法の規定により設置されました更生保護法人という民間の特別法人が運営しております。 更生保護施設では被保護者が社会生活に適応するために必要な態度とか生活習慣を身に付けることができるように,さまざまな処遇を実施しております。金銭管理,就労といった日常生活に関する自立支援を中心とした処遇に加えまして,最近ではSST,ソーシャル・スキルズ・トレーニングということで,社会生活技能訓練と訳されておりますけれどもそういう訓練とか,あるいは酒害・薬害教育というような被保護者が持つ問題性に焦点を当てた各種処遇が行われるようになっておりまして,より一層被保護者の円滑な社会復帰と再犯防止を促進する手立てを講じております。被保護者の問題性に応じた処遇といたしましては,対人関係の改善を目的とした先ほど申し上げましたSSTとか,あるいは情緒安定を目的としたコラージュ療法などがございますが,これは資料に写真がちょっと載っているところでございますけれども,今回は更生保護施設で行われております酒害・薬害教育プログラムについて若干御説明申し上げます。   更生保護施設における酒害・薬害教育プログラム,実際に酒害・薬害教育を実施している更生保護施設の意見とかプログラム例を参考としながら更生保護施設で実施する酒害・薬害教育の基本姿勢,効果的な実施方法について検討を重ねまして,その結果を教育プログラムとして取りまとめたものでございます。更生保護施設と申しましても,101あると申し上げましたけれども,定員100人を超える大規模施設から10人台の小規模施設までありまして,そのため職員体制も施設によって大きく異なります。立地場所も酒害・薬害教育に取り組む関係機関等,いわゆる社会資源が豊富に存在する地域であったり,逆に,これから,もしこういうプログラムを実施しようとすれば,社会資源を開拓していかなければならないような地域であったりするなど,各施設が置かれている処遇環境は一律ではございません。また,被保護者の在所期間も限定されておりまして,医療福祉機関と同じような治療的措置を講じることは実際には難しく,プログラムを維持していくためにはコストを抑える工夫も必要でございます。更生保護施設における酒害・薬害教育プログラムでは共通のコンセプトを定めまして,各施設の実情に合うスタイルでプログラムを実施する形をとっております。   2枚目の資料を御覧ください。 更生保護施設における酒害・薬害教育プログラムの共通コンセプトというものは,更生保護施設職員については「知る」と一番下に書いてありますけれども,施設職員がアルコール,薬物依存についての知識とか回復への措置について知ること,こういう共通コンセプトでございます。被保護者については,その上で記載してありますとおり「気付かせる」「学ばせる」「つなぐ」という4つのキーワードで構成しているところでございます。更生保護施設で実施いたします酒害・薬害教育プログラムは,被保護者の在所期間,先ほど申し上げましたとおり期間に制約がありますため,完結した酒害・薬害教育を施設独自で単独で実施することは非常に困難な実情にございます。そのため,施設を退所する被保護者に対しましては,継続的な酒害・薬害教育を受講することができるように,地域社会にある酒害・薬害の治療とか相談機関へつなぐということを強く意識しているところでございます。   次に,3枚目の資料を御覧ください。   これは更生保護施設で酒害・薬害教育プログラムを実施する場合,どういうスタイルで実施することが可能かを検討する際の資料でございます。この資料に記載してございますとおり,外部の関係機関や団体の協力を得て実施する方法,あるいは更生保護施設職員が直接指導するような方法というふうなところでございます。それぞれの,先ほど申し上げましたような更生保護施設の置かれている処遇環境に合わせてプログラムの実施方法を選択することになります。   最後に,更生保護施設で行われている酒害・薬害教育プログラム,若干でございますが2例ほど御紹介いたします。最後に添付してあるちょっと見にくいところもございますけれども,最後の資料を御覧ください。   最初の方の資料,これは東京都内にある更生保護施設で行われている薬害教育の例でございます。この施設は定員20名の女性専用の更生保護施設でございまして,精神保健福祉分野の専門家を講師に招きまして,1枚目のプログラムへの出席者等に表示してあるとおりでございますけれども,こういう人たちを講師に迎えて,アルコールとか薬物問題に限らず広く女性に共通する心身の健康問題についても取り上げているところでございます。必要に応じて先ほど申し上げましたSST,社会生活技能訓練とか,ロールプレイなども行っておりまして,被保護者全員を対象といたしまして毎月1回実施することにしております。特に酒とか薬物の問題を有する者につきましては,自助グループであるダルクとか,AA(アルコリックアノニマス)といった自助グループメンバーによるミーティング形式のプログラムを実施しているところでございます。その詳細はここにいろいろ資料を添付しているので,御覧いただければと思います。   最後に,更生保護法人和衷会という資料がございます。これが先ほど申し上げました大阪にある更生保護施設で定員110名,日本で一番大きい更生保護施設でございますけれども,そこの施設で行われている酒害教育の例を取り上げております。定員110名の男性施設でございます。精神保健分野の専門家が講師となりまして,依存問題の講義を行う酒害相談会,そして断酒会メンバーによるミーティング形式の酒害学習会,この二つを組み合わせながら処遇プログラムを実施しているところでございます。詳細についても先ほど申し上げましたとおり,資料を御覧いただければと思います。   簡単でございますけれども,更生保護施設における処遇,各施設が酒害・薬害教育に取り組む場合の姿勢と,あと具体的な二つの施設の実施例を御説明申し上げました。   以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   ただ今の事務当局から御説明をいただきましたが,これに関連して質問等がございますでしょうか。○○委員,どうぞお願いいたします。 ● 保護局からのご説明の中にあった性犯罪者処遇プログラムの件なんですが,プログラム受講を特別遵守事項として義務付けているという話でした。それができるのであれば,先ほど話題になった受講命令のような制度も,現行の枠内でも十分できるということになると思うんですけれども,私の記憶に間違いなければ,これまで,このように一定のプログラムの受講を特別遵守事項として義務付けるということはやっていなかったように思います。それは,これまでも義務付けることはできたけれども,そのための適切なプログラムがなかったからやっていなかったということなのか,それとも,特別遵守事項として設定できる内容につき,保護局内部で考え方の転換があったのか,そのあたりはどうなんでしょうか。 ● 実際には,今まで具体的に義務付けるプログラムが明確になかったというところでございます。 ● ○○委員,よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。   特に御質問はございませんようですので,本日の議題に関する議論に移らせていただきたいと存じます。   まず,「その他の社会内処遇の在り方」につきまして御議論いただきたいと思います。例えば,いかなる制度をどのような目的,法的性格のものとして位置付けることができるのか,あるいは,その際のメリットや問題点としてどのようなものがあるのかなどにつきまして,御議論をいただければ幸いだと存じます。どなたからでも結構ですので御発言をお願いいたします。どうぞ,○○関係官,お願いいたします。 ● 「その他の社会内処遇」という表を拝見しているわけですが,①のインテンシブなプログラムなどは別に法律改正を要せず日本でも実行できそうに思いますけれども,向うのプログラムを御覧になって現在の日本の保護観察官の活動とは密度が非常に違うという御印象ですか。 ● 密度は相当違いますが。 ● それは,やはり人手の不足というような問題ですか。それとも保護観察のやり方についての考え方が違っているということでしょうか。 ● 両方の面があろうかと思います。人手の面もございますし,今までなかなか具体的な処遇プログラムを確保することができない状況にあったということです。 ● 日本の場合には,保護司さんが非常に大きな役割を果たしておられるわけですね。その点ではアメリカと違うんだろうと思いますけれども,やはりこういう集中的なプログラムをやろうとすれば保護司さんとの関係が問題になりますか。 ● 保護司さんとの関係というよりも,むしろ実際にそれに当たる保護観察官の人員の問題が大きかろうと思っております。 ● 今度の更生保護法が施行される中で,言ってみれば密度の濃い保護観察,保護観察官が接触回数をかなり増やした形でやる処遇というのは構想されているというふうに考えていいんじゃないですか。ただ,アメリカでの集中という程度は分かりませんけれども,思想としては日本では新しいというように思えない。昔からある発想であって特に新しい社会内処遇制度とは言えないような気がします。 ● どうもありがとうございました。○○委員,お願いいたします。 ● 今の過剰収容の状況等を犯罪白書で見てみますと,特に薬物,覚せい剤が非常に多いですよね。多分24パーセントぐらい覚せい剤で収容されている方がおられると思うんですよ。この覚せい剤対象者を本来,すべてということではなく必ずしも刑罰で処さなければならないのかどうか。これはある種の薬物依存症という病気というふうに考えることができるとするならば,ある種の治療なりそういったものにきちっとしたダルクなりに行って,そこから離脱するような作業をするという形での社会内処遇ということも考えられるんじゃないかというように思うんですが,皆様方の御意見もちょっと伺いたいと思います。 ● ただ今,○○委員から問題提起がございまして,薬物事犯の行為者に対して収容がかなり多くなっているようですが,その点について別の方策があり得るのかどうか,これを含めて御意見を賜りたいと存じます。   どうぞ,○○委員,お願いいたします。 ● 基本的な考え方としては,私も○○委員に賛成なのですが,その点につき,実務の現状をお伺いしたいと思います。例えば,覚せい剤の自己使用で起訴された被告人について,弁護人が治療のために ,病院とか,ダルクのような民間団体とかに入れるといったことを,検察官,裁判所に,事実上約束し,それが考慮されて,実刑ではなく執行猶予になったという事例もあるという話を以前に聞いたことがあります。弁護士の方の活動として,そのような働き掛けがなされ,そのことによって刑務所に入れるよりも病院に入れるとか,あるいはダルクの援助を受けるとか,そういう形の方が望ましいということで,実刑が回避されている例というのが実際にあるのかどうかを教えていただけませんでしょうか。 ● 私の経験の中ではちょっとそれがないんですけれども。 ● 私自身の経験ということではないんですが,むしろそのあたりの方のお話と,あと染田さんが書かれている本などに出ていることとの関係で言うと,むしろ実刑を免れてというのはなかなか難しいのかもしれないんですが,保釈中に指導を受けて,それでその状況を見て執行猶予になると。その執行猶予後もそのプログラムに参加をして離脱を図ると。ただ,本によると再犯であっても執行猶予判決が出た場合もあるということですから,そういう意味で言うとそういうプログラムに参加していなければ実刑になっていたようなケースが,そういうことによって実刑にならなかったということもあるのではないかというふうに思われます。 ● ○○委員,今の点はそれでよろしいですか。 ● はい。 ● この点について,○○委員,お願いいたします。 ● なかなか難しいところなんですけれども,私自身も実際に担当した覚せい剤の事件で,ダルクに通わせますということで弁護士さんの方がそれを情状立証の主軸に据えてきたという事件がございます。私自身はダルクのことは前々から関心を持っていたんで,それはそれで一つの情状立証としてそれなりに評価したんですけれども,難しいところは,最近の活動はちょっと存じていませんけれどもダルクの覚せい剤依存からの離脱を進める活動の主眼というのは,要するにグループワーキングの中で,いろんな体験を語り合う中で自覚を高めていくという形のものなんですね。そういう形の中で,それこそケースによっては逆にダルクの中で再び覚せい剤に染まってしまうというようなケースもあります。ですから,そういう意味で言うと例えば刑事裁判官の一般的な意識かどうか分かりませんけれども,意識の中に,例えば私などは自分の方からダルクを勧めるということはしないというところはまだある。ただ,そういうところに通ってでも依存から離脱しようという意志が今あるんだということは,それはそれなりに評価すると。ただ他方で,じゃダルクだけで果たしてそれが保てるだろうかというところになると,ほかにも家族で支えてくれる人がいるとか,いろんな条件を考えた上でということになります。大体実刑にされる方というのは,覚せい剤の使用の場合は,一度覚せい剤の使用をやって,それで執行猶予の刑を受けて猶予中,あるいは猶予が切れてからそれほどたたないうちに再犯を犯した人ですので,そういう方について,ダルクに通うということが条件になったというだけで果たして大丈夫だというふうに考えるかどうかというのは微妙なところがある。むしろもっとほかの条件もあわせて考えて,そこは量刑を判断しているんじゃないかなと思います。 ● 覚せい剤なり麻薬なりの犯罪を扱った経験から申し上げますと,必ずしも多くの事件を扱ったわけではないのでどこまで当たっているかというところはありますが,覚せい剤の場合,薬物依存が問題になっているというケースももちろんあると思いますけれども,そのほかにも,例えば,定職に就かないとか,交遊関係が非常に悪いとか,そのような生活の乱れによって,覚せい剤に手を染めたり,あるいは,保釈や執行猶予になって社会に出てきても再度覚せい剤に手を染めるというケースも多いように思います。そういうことからいたしますと,被告人に対する薬物治療が完全に自由刑の代替になるかというと,それだけで足りないのではないかという印象を持つというところです。もちろん,執行猶予にしたり実刑に処すことに加えて,薬物依存のある人にそれを除くためのプログラムを受けてもらうなどのことが有効なのはもちろん当然ではありますけれども,それだけで代替できるかどうかというと疑問なしとせずという印象を持っています。 ● もう一点だけ質問ですが,先ほど性犯罪者の処遇プログラムの話がありましたけれども,例えば,病院で薬物依存の治療などを行っているところはあると思います。例えば,そこに入院して,あるいは通院して治療を受けるといったことを,保護観察の特別遵守事項として設定している事例はあるんでしょうか。 ● 現在も治療命令とまではいきませんけれども,緩やかな意味での特別遵守事項の中に医師の指導に従って病院で治療を受けること,命令とまではいかないですけれども,非常に微妙なところでございますけれども,治療を受けるように努めることというような援助的な形での特別遵守事項を設定して,本人にその病院での治療を受けるように勧めるというような形での特別遵守事項の設定ということはありますけれども,具体的に治療命令という形まで特別遵守事項で出せるかどうか,ちょっとそこまではいっておりません。 ● その援助的という言葉の意味なんですが,先ほどのお話では,性犯罪処遇プログラムの受講は義務付けているわけですよね。場合によっては,それに違反すれば,執行猶予や仮釈放が取り消されることもあり得るわけです。だから,それは援助的なものではなくて,今おっしゃった事例は,従わない場合に取消しが想定されていないという意味で援助的だということなんでしょうか。 ● これは問題になっているところなんですけれども,実際,今設定されている特別遵守事項の中には,いわば生活指導的なものも混在している。ですから,この前の有識者会議でいろいろ御指摘受けたものの中には,やはり特別遵守事項というのは設定するからには違反すれば取り消し得るというような形で整理すべきではないか。今現実に設定されている特別遵守事項というのは,そういう本人の生活を援助するような,あるいは被害者に対して誠意を尽くせとか,そういう形の。必ずしも違反したら取り消すんだということまでは要求できないようなものもある,混在しているというようなところがございましたので,そこは整理すると。そういう意味で今まで必要があると思われる病院で治療を受けるというようなことにつきましては,病院で治療を受けろというような命令的ではなくて,付けるとしても,先ほど言いましたような本人を病院に赴かせるような援助的なところが特別遵守事項という形で設定されたという実情にございます。それを違反したから取り消すというところまでは意識していないし,運用もされていなかったというようなところです。 ● 現在の運用がそうなっているということは分かりましたが,考え方としては,今後は,性犯罪処遇プログラムの受講と同じような形で,病院での治療を義務付けるということもあり得るわけですよね。 ● はい。特別遵守事項をそういう形で整理して,しかもそういうものだということであれば,付ければ,もし違反すれば取り消し得るだろう。ただ,それが治療命令という形で出せるかどうかということ,相当かどうかということはまた別の問題だと思います。 ● なかなか難しいのは,特に薬物依存でもいろんなタイプがございまして,覚せい剤依存というのがアルコール依存なんかと違いまして,精神的な依存が非常に強いというところなんでございます。そういう意味で言いますと,本当に覚せい剤精神病になったような,本当に病的症状が出ている人に対しての治療というのは,どこの精神科の病院でも行っています。ところが,そういう病的症状が出ているわけではなくて,ただ覚せい剤に精神的に依存しているという人について,その精神的依存から脱却させて立ち直らせるというところになると,ここはなかなか,精神科の病院でどこまでケアしてくれるのかというところはあろうかと思うんです。そういうことに努力されている病院もあるかもしれませんけれども,そんなにまだ一般的ではないんじゃないのかなという気はしておるんです。ダルクのような自助グループというのは,むしろそういうところを補完する意味でそういうグループ活動の中で精神的にそういうディスカッション等を通しながら自覚を深めて依存を脱却しようと,そういう形をとっております。ただ,先ほども○○委員の方からありましたように,結局そういう精神的な依存だということなものですから,決め手になるのかといわれますと,むしろ生活自体を安定させ,精神状態を安定させていかないと,そこはなかなか続かないところがあると。そういう意味で自助グループだけではなくて例えば家族の支えとか,あるいは生活を安定させるための就業の問題とか,そういう条件を整えていかないとというところがあって,そのためになかなか,守らなかったときに制裁を科すような形での命令というところに踏み切れるかというのは,なかなか微妙なところがあると,おそらくそういうことではないかと思うんですけれども。 ● どうぞ,○○委員,お願いいたします。 ● 先ほどもお話に出ていました「更生保護のあり方を考える有識者会議」の報告書では,薬物検査を義務付ける,それから治療プログラムの受講を義務付けるというようなことを,現在の特別遵守事項ということでどこまでできるかというのは議論のあり得るところだと思いますけれども,法改正を行って明確化した上で薬物犯罪者に対して,薬物犯罪者といってももちろん単純自己使用のような事犯が念頭に置かれているかと思いますけれども,そういうものに対して行っていこう,そのことによって,施設内処遇から社会内処遇へできるだけ移していこうというような方向での提言を行っていますし,その方向で改正の準備が進められているということを伺っております。また,提言の中には,例えば自立更生促進センターのようなものを作るというものもあり,それは中間処遇のような側面も持っておりますので,やはりその辺りについて,○○幹事の方から次回でも結構ですけれども,説明していただいた方が,議論の整理,あるいは二重の議論を省くという,もちろん決してここで議論しないようにしようという意味ではございませんけれども,やはりよろしいのではないかという気が今議論を伺っていて感じました。 ● どうもありがとうございました。   その関係については,まだよく分からないところもありますが,内容によってはやはりこちらの部会でもきちんと議論しておくべき点もあると思いますので,大いに御議論いただけたらと思います。○○委員,いかがでしょうか。   ● 今の点なんですけれども,覚せい剤事犯者の処遇プログラムというのは一応実施することになっているというか,方向にはあると思うんですけれども,性犯罪者の処遇プログラムに比べますとややエネルギーの割き方が少ないというか,そういう印象を私は持っております。そういう点でもっと覚せい剤事犯者の処遇プログラムの実施に向けてもっと拡大的にといいますか,内容をもっと濃くしてやってもいい時期に来ている。○○委員の問題提起を受けてということもあって,そういう方向に向けてもっとやっていいんじゃないかと思います。それから,矯正の場面で言うと交通刑務所と同じように,薬物刑務所のようなものがあっていいんじゃないか。つまり,いろんなほかの対象者と同じように扱うんじゃなくて,薬物はいろんな問題のある対象者なんでありまして,刑務所でも集中的にやる方策が可能となっていいんじゃないかと思います。   それから,保護観察の場面でもより先ほどの話と同じように集中的な監督という方向での覚せい剤対象者に対する処遇というのも考えていいんじゃないかというふうに考えています。 ● ○○委員,どうぞお願いいたします。 ● 今との関連ですが,去年ぐらいから矯正局の方でもダルクの関係者と協力してやっているという話がちょっと聞こえてきているんで,そのあたりの実情もまた御報告いただければ参考になるかと思います。 ● 今の点についての御報告を改めてお願いします。 ● 次回,説明を用意しますが,取りあえずということであれば,性犯罪者処遇プログラムを先ほど紹介いたしましたが,新しい受刑者処遇法の下で取り組んでいるのが性犯罪者処遇だけということではございません。これ以外にも覚せい剤事犯指導等も含めまして6種類の指導類型につきいわゆる特別改善指導として,矯正局で標準プログラムをつくりまして,それに応じた実践プログラムを各施設で策定し,実施しております。   薬物依存の離脱指導につきましても,従来は刑務所での指導というのは,いわゆる「だめ,絶対」というか,二度と覚せい剤に手を出さないようにということで,それを職員が教え,ビデオ等によって覚せい剤の害悪について指導するというのが中心でしたけれども,これを完全に放棄したわけではございませんが,これだけでは有効性がないということで,先ほど○○委員から御指摘もありましたように,ダルク等の自助グループの方に入っていただいて,でグループワークを行いつついろんな問題に気付かせ,そこを考え直そうという内容を大幅に取り入れております。矯正施設の中ではこのプログラムをもっと拡充していこうという方向にございます。 ● どうもありがとうございました。   当初お諮りしたときには,刑執行終了者に対する制度についても本日御議論するということでしたが,もう時間がかなり差し迫っておりますので,この点は次回に回すということで,今のその他の社会内処遇に絞って御議論をしていただきます。どうぞ,○○委員,お願いいたします。 ● 今回,更生保護の新法ができましても,そこでの最大の抜け落ちた部分は何かといいますと,それは満期出所者問題だと思うんです。つまり,仮釈放する人はまだ一定の期間,非常に短い期間にせよ保護観察というのはあるんですけれども,満期釈放者に対しては言ってみればそれで終わりでありまして,社会内処遇は全くかかわらないということになってしまいます。その点で,私は今日の「その他の社会内処遇」の一覧表の中で一番下の分割刑なんですけれども,これは私は前々から注目している制度であります。一見奇想天外のように我が国で思えるんですけれども,特に我が国では刑法改正というのは長くできておりませんが,刑事立法の活性化を背景として何か新しい処遇形態が創出されていい時代になっているんじゃないかと考えています。   ショックプロベーションとかスプリットセンテンスという領域で言いますと二つの類型があって,一つは最初に裁判段階で拘禁刑と保護観察の両方を言い渡すというやり方と,それから長期の拘禁刑を言い渡すんですけれども,一定期間だけ収容した後,裁判官の裁量によって保護観察処分に切り換えるというやり方があります。   それから,若干側面を変えますと最近の山本譲司さんの累犯障害者という本は注目すべき本だと思います。特に注目すべきは,刑務所の中に比較的重い人格障害者,あるいは知的障害者,これがかなり組み込まれていっている。この二つの対象者が精神医療のベースから抜け落ちていっているし,精神病院でもあまり受け入れないというシステムになっていますので,満期釈放になって出て行くということになっているわけですね。そこで何か大きな重大な犯罪が起こりうるという現実がありますので,その点で言えばこういう対象者も含めて何か社会内処遇の中で考えられないかということですね。この点是非考慮していただきたいと思っています。 ● どうもありがとうございました。   どうぞ,○○委員,お願いいたします。 ● 私も全く○○委員と同意見でございまして,やはり施設内処遇から社会内処遇にソフトランディングといいましょうか,なだらかにつなげていくような制度が必要だと思います。従来か ら,そのための制度として必要的仮釈放の制度が一部で提言されているんですけれども,先ほど○○委員から御提案のありました分割刑のような形で,実質的に同じようなことを実現するということの可能性も検討すべきことだと思います。 ● まず一つは,八つの項目の中にないんですが,実はここで取り上げることが多分ほかの関係で非常に難しかったと思いますけれども,先ほど○○幹事の方からお話がありましたけれども,犯罪被害者をどう考えるかという観点から,犯罪被害者に対する弁償を義務付ける形での保護観察なりいろんな形の社会内処遇があると思いますし,犯罪被害者と加害者のいわゆる修復的処遇のプログラムの中でそれに参加をしていくというようなやり方の諸外国の例もあるというふうに聞いていますので,そういったこともやはりその他の社会内処遇としては考えておく必要があるんじゃないかなという気がします。   それともう一点,これはつい最近韓国の関係者からお聞きしたんですが,保護観察等について,ある種の人間については夜間外出禁止令というのはかなりうまい具合に機能しているということで,昨年韓国で2,857名,今年の8月現在で3,845名とかなりの数の夜間外出禁止令が出ているんですが,これが社会でかなり好意的に受けとめられているという話を聞いております。これも一つの社会内処遇になるのかなという感じがしております。 ● 予定した時間になりましたが,ほかに何かございますでしょうか。どうぞ,○○幹事お願いいたします。 ● 先ほどちょっと私聞き漏らしていたんですけれども,○○委員,有識者会議のときに薬物プログラムを治療プログラムについてとおっしゃったようなんですけれども,有識者会議の報告書で治療プログラムの受講義務ということじゃなくて,処遇プログラムの受講義務と簡易尿検査の受検義務というような形であります。治療プログラムということではないということのようなんですけれども。 ● ああ,そうですか。私の頭の中では薬物犯罪者の処遇と治療というのはあまり区別できていないんですけれども,どういう違いでしょう,具体的には。 ● 治療というと,やはり治療命令とかそういう形。 ● 治療といってもカウンセリング的なものが念頭にあったのですが,手術や投薬のような治療と混同されるといけませんので,処遇という方が正確かもしれませんね。 ● 社会内処遇の在り方等については,まだまだ御議論の余地があろうかと思います。予定の時間になってしまいましたので,また引き続き次回以降に御意見を賜れば幸いだと存じます。それで,本日の議論や外国法制の調査結果を踏まえて今後も議論を重ねてまいりたいと存じます。 外国法制等の調査につきまして,今後の見通しを事務当局の方から御説明いただきます。 ● 外国法制等の調査の具体的なスケジュールや内容につきましては,現在,事務当局において調整しているところです。それで,あくまでも現段階での予定として御説明させていただきますと,まず,社会奉仕命令,中間処遇,保釈の在り方などに関し,その制度の概要や運用の実態等につきまして,イギリス及びフランスの調査を○○委員にお願いをしたいと考えております。 また,ドイツの調査につきましては,神戸大学の○○助教授にお願いをしたいと考えております。現地調査をお願いする日程につきましては,年が明けました後3月ころまでを目処に調整中でございます。   以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   次回は,本日積み残した事項について御議論いただいた上,第1回の部会でお諮りしましたように,中間処遇制度の在り方,保釈の在り方等についても御議論いただきたいと存じます。そういうことでよろしゅうございましょうか。御異論がございませんようですので,そのようにさせていただきます。   どうぞ,○○委員,お願いいたします。 ● よろしゅうございますか。今,イギリス,フランス,ドイツの海外調査をされるというお話がございました。今回の諮問は被収容人員の適正化という意味合いのものですので,私は思うに,やはり諸外国の中でも被収容者の人員が適正化に成功している国というのが幾つかあるように思っています。そういった国の視察は考えられないかどうかということだけお聞きしたいと思います。 ● その件に関しましては後日ということでよろしいでしょうか。どうもありがとうございました。 それでは,次回の日時,場所等につきまして,事務当局の方から御確認をお願いいたします。 ● 次回は,来年2月5日月曜日に,法曹会館高砂の間において会議を行う予定でございます。開始時刻につきましては,午後1時からでございます。 ● ただいま御案内がございましたように,次回は2月5日月曜日,法曹会館高砂の間において会議を行うことにいたします。開始時刻につきましては,午後1時からということですので,よろしくお願いいたします。   時間が若干延びましたことをお詫び申し上げます。本日はどうもありがとうございました。 ―了―