法制審議会民事訴訟法部会            第3回会議議事録 第1 日 時  平成18年12月15日(金) 自 午後1時00分                        至 午後3時36分 第2 場 所  法務省第一会議室 第3 議 題  犯罪の被害者等の保護のための民事訴訟法の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり)                議        事 ● それでは,定刻がまいりましたので,民事訴訟法部会第3回会議を開催させていただきます。   本日の部会でございますが,審議に入ります前に,11月20日の法制審議会総会におきまして,会議用資料等の公開に関する取扱い方法の変更等について決定がありましたので,事務当局より報告をしていただきます。 (事務当局から,会議用資料等の公開について,法制審議会第151回会議における決定事項につき報告がされた。) ● それでは,本日は,事務当局作成の部会資料3「民事訴訟法の改正に関する要綱案の取りまとめに向けた議論のためのたたき台」によりまして,御審議をお願いいたします。   早速,配布資料の確認を○○幹事からお願いいたします。 ● 本日の資料でございますけれども,事前にお送りいたしました部会資料の3「民事訴訟法の改正に関する要綱案の取りまとめに向けた議論のためのたたき台」というタイトルのものでございます。こちらの方は,前回までの議論をもとにいたしまして,要綱案に近い形式で取りまとめたものでございます。本日の議論のたたき台にしていただければということでございます。   なお,少し形式面で御説明いたしますと,従来この部会でも例示の点が非常に大きな問題となっておりました。ただ,例示の点につきましては,大変申し訳ないことでございますけれども,本日までに事務当局の方で具体的な案が出せるまでには至っておりません。そこで,後で御覧いただきますとおり,この点につきましては独立して,少し抽象的な形で問題提起をさせていただいております。   したがいまして,各措置に関する記載のところでも,例示のところはペンディングである,こういう趣旨で記載していないものでございますので,例示の記載はないということは,例示を置かないという趣旨ではございません。   それから,もう一つ,本文と(注)ということになっておりまして,従来本文で書かれていたことが(注)になっているというものもございます。   この(注)の中には二つの性質のものがございまして,一つは,仮にそういう方向で議論がまとまったといたしましても,最終的には最高裁判所の規則に置かれるべき事項ではないかと考えられるものにつきましては,(注)に落としているというものがございます。あくまでもこの法制審議会の要綱案は法律の改正事項に関するものでございますので,最終的には規則事項になると思われるものにつきましては,要綱案には記載されないという扱いになるものでございます。   そのほかには,(注)といたしまして,内容的な説明の(注)も残っております。   以上が部会資料の3の御説明でございます。   それから,もう一つ,席上配布資料といたしまして,「ビデオリンク,遮へい及び付添いの各措置がとられた証人等の罪名別について」という横長の一覧表がございます。   こちらの方は,前回,刑事訴訟において各措置が,どのような罪名でとられているのかということが分かればということがございましたので,最高裁判所の方に調べてまとめていただいたという,こういう資料でございます。   以上が資料の御説明でございます。 ● ありがとうございました。   ただいまの資料の説明に関する御質問等,ございますか。  よろしければ,具体的な審議に入りたいと思います。   それぞれの項目ごとに区切って説明をして議論をしていただくようにいたしますが,まず初めに,部会資料3の第1,証人尋問,1,付添い(新設)についてでございます。   それでは,○○幹事から資料の説明をお願いいたします。 ● 前回までの部会での御議論を踏まえまして,まずこういった付添い等の措置を置く手続については,どういうものが相当なのかという問題がございました。   その点につきましては,前回までの御議論を踏まえまして,証人尋問の手続,当事者本人尋問,それから法定代理人尋問,こういったような手続において,措置についての規定を設けることが相当ではないかというふうに思われましたので,第1が証人尋問,それから,4ページの第2のところに当事者尋問,当事者本人尋問と法定代理人尋問というように,それぞれの手続ごとに記載をしたということでございます。これは,恐らく法律の規定もこのように手続ごとの規定になるということを見越して,このように分けたものでございます。   第1の1の「付添い」の中身でございますけれども,アのところでございます。   まず,冒頭は「裁判長は」となってございます。この点につきましては,従来各措置をとるとする,その主体をどうするかという問題がございましたけれども,付添い,それから遮へいにつきましては,これまでの実務でも裁判長が訴訟指揮としてやっていたのではないか,そういうこととのバランスで,この2つの措置については裁判長を主体ということでよろしいのではないかというような御議論ではなかったかと理解しておりますので,ここでも主体の方は裁判長としてございます。   それから,次に考慮事情といたしまして,「証人の年齢又は心身の状態その他の事情」といったようなものを掲げております。これは刑事訴訟法の規律と同じものでございます。   なお,御参考までに,後記,後の2のアというところですが,遮へいの措置の2ページの2のアの当事者等との間の遮へいの措置の規律がございます。これと,今の付添い等の規律を御覧いただきますと,若干違いがあるわけでございます。   その点につきまして簡単に御説明申し上げますと,まず一つは,遮へいの措置の場合には,「事案の性質,証人の年齢又は心身の状態,証人と当事者本人又はその法定代理人との関係その他の事情により」ということで,付添いに比べますと,「事案の性質」,あるいは「証人と当事者本人又はその法定代理人との関係」といった要素が増えております。   付添いの場合になぜそういったような事情が掲げられていないのか。これは刑事訴訟法でも同じような問題がございます。「事案の性質」という言葉は「犯罪の性質」となっておりますし,「証人と当事者本人」ではなくて「被告人との関係」ということになっておりますが,そのように刑事訴訟法でも違いがございます。   その違いでございますけれども,今回この資料におきまして,付添いの場合に事案の性質等の要素を掲げませんでしたのは,恐らくこの付添いという措置は,どういうような事情によるかはともかくとして,現在の状況,すなわち証人の年齢とか心身の状態といったような現状,こういうものを重く見て判断する。こういう趣旨のものではないかというように理解いたしまして,付添いと遮へいの措置とで掲げる事情を変えたという,そういう趣旨でございます。   それから,2番目の違いでございますけれども,遮へいの措置の場合には,2行目でございますが,「その他の事情により」という表現になっております。これに対しまして,付添いの方は,「事情を考慮し」というふうになっております。これも,刑事訴訟法でもこのような違いがございます。   このようにそこの表現が違うといいますのは,遮へいの措置の場合には,このような精神的な状態を生じさせた原因の面での,原因の関係での絞りといいますか,限定がかかっている。これに対して付添いの場合には,原因という面での限定,絞りはかかっていない。このように理解されるのではないかと思います。その点につきましては,この資料では,民事訴訟法でも,刑事訴訟法におけるのと同じような違いをつけていいのではないかという前提に立っているものでございます。   そのような事情を考慮しまして,「証人が尋問を受ける場合に著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認めるとき」となっております。このいわゆる精神的な状況に関する要件でございますが,ここは刑事訴訟法と同じ規律にしてございます。   今回,この措置の目的をどうとらえるか,特にその直接的な目的をどのようにとらえるかという点につきましては前回まで御議論いただいたところでございますけれども,直接の目的としては,証人の不安等の緩和ということでいいのではないかというような御議論ではなかったかと理解しておりますので,例えばここに「十分な陳述をすることができないとき」といったような要件は書いていないということになっております。   それから,続きまして措置の内容でございますけれども,どのような者を付添人として付添わせることができるのかという点につきましては,刑事訴訟法と同じ規律にしてございます。   続きまして,事案の限定でございますが,御覧いただきますとわかりますとおり,特に事案の限定はかけていないということでございます。   ただし,これも前回までの御議論がございましたが,例示の点が問題となります。例示の点は,1ページの下の(注3)に書いてありますとおり,ここはまだペンディングでございまして,後の3ページの4のところで,独立した項目として御議論いただければというふうに思っております。   さらに,こういった措置をとる際の手続につきまして,幾つかの問題がございました。   まず,一つは,証人の申立権,あるいは当事者及び証人の意見聴取の問題でございます。   まず,申立権でございますけれども,これにつきましても前回いろいろと御議論いただいたところでございます。ただ,刑事訴訟法でも申立権は認められていないということとのバランス,あるいは民事訴訟法のほかの証拠調べの方法に関する規律とのバランス,それから,仮にその申立権を認める場合に,一定の要件,「こういう場合に申立権を認める」というように要件の限定をかけるということになりますと,その要件の範囲をどうすればいいのか,あるいはそういう要件を満たしているかどうかということ自体が問題になってしまうのではないか。そのほかまた,申立権を認めた場合には,実際上の問題としていろいろと支障が生ずるという可能性もあるのではないか,こういった御議論がございました。   また,仮に申立権を認めないということにいたしましても,当然のことながら職権発動の促しという形での申出は可能である。したがって,職権発動の促しという形で申し出て,裁判所の方でこの要件があるというふうに認定されれば,措置をとることができるということになるわけでございます。   そういったこと等を考慮いたしまして,今回の資料では,申立権を認めないことではどうかということを前提にしたつくりとしているものでございます。   次に,当事者の意見聴取でございますけれども,こちらの方は,各措置が,やはり質問のあり方,当事者の質問のやり方に影響する可能性がある。付添いにつきましてもそのようなことが考えられますので,手続保障の観点から,当事者については意見聴取をすることを義務づけるのが相当ではないかという考えに立っているものでございます。   ただし,この付添いの効果ということを考えますと,法律に規定することではないのではないか,もし仮にそのような規律を置くとしても,規則に置いてはどうか,こういう趣旨で,(注1)という(注)に置いているというものでございます。   続きまして,証人の意見聴取の問題でございます。   証人の意見聴取の問題につきましては,一つは前回の御議論の中で,申立権との関連で,いわば意見聴取の一環として証人の意向を聴く,こういう意味を持たせることができないかというような議論もございました。   それから,もう一つは,人事訴訟法の第22条と同じように,この要件が証人の精神的な事柄にかかわるものであるので,やはり人事訴訟法と同じように証人の意見を聴くということが必要ではないかというような御意見がございました。   恐らく,制度的にこういう規律を設けるということになりますと,その説明としては,人事訴訟法第22条と同じような説明になるのかなというふうには思われます。そうしますと,いわゆるこの要件の有無の判断が適切に行われるということを制度上担保するために,いわば要件が不十分なのにこういった措置がとられるということがないように,その判断方法について裁判長にいわば縛りをかける,こういう制度になろうかと思います。そのような縛りをかける必要性があるかどうかという点が問題になろうかと思います。   また,制度的にはこういう意見聴取という規定を置いたといたしましても,あくまでも措置をとる場合には意見を聴かなければならないということでございますので,措置をとらないというふうに裁判長が考えた場合には,意見を聴かなくてもいいというようにはなってしまうわけでございます。   甲案でございますけれども,甲案は,ここに書いてございますとおり刑事訴訟法とのバランス,あるいは人事訴訟法の公開停止との効果の差,こういうものを考慮して,特段規定は設けない。すなわち,裁判長が適切に判断する,適切な方法で判断するということを裁判長に委ねるというものが甲案でございます。   それから,乙案は,やはり付添いであってもその効果というものに照らして,精神的な,証人本人の精神状況にもかかわるものであるから,やはりそういう要件の有無を,証人本人の意見を聴かないで判断することを許容することは相当ではないという考え方に立つものでございます。   ただ,仮にそのような考え方に立ったとしても,人事訴訟法における公開停止ほど効果は重大ではないということに鑑みますと,仮にそのような規律にするとしても,最高裁判所の規則において規定するのが相当ではないか。つまり,当事者と並べて証人の意見を聴かなければならないという形にしてはどうかというのが乙案でございます。   以上が,証人の申立権,あるいは意見聴取の問題でございます。   それから,続きまして2ページのイでございますが,これは付添人のいわば責務といいますか,どういうことをしてはいけないかという点の規律でございます。これは,刑事訴訟法と同じ規律にしてございます。   最後に,ウでございますけれども,裁判長の処置に対し,異議を述べたときは,裁判所は決定でその異議について裁判をするという規律でございます。これは,裁判長が措置をとることとした場合に,裁判所に異議を述べられるという規律にするものでございます。   以上が,付添人に関する1についての御説明でございます。 ● どうもありがとうございました。   それでは,御議論いただきたいと思いますが,便宜上少し区切って,まず付添いのアの本文の部分について,先ほどそこで掲げられている内容を遮へいの措置の場合の内容と比較いたしました説明がございましたが,アの本文のあたりにつきまして御意見,御質問等ございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。   どうぞ,○○委員。 ● 「考慮」と「より」という点で確認なんですが,これはこの後も関係してくることだと思いますが,先ほどの御説明ですと,遮へいの場合の「その他の事情により」というのは,原因を列挙することにより絞りをかけるということで,一応要件という位置づけとしては,実体的要件としての位置づけとしては,実体的要件がその原因に絞りをかけたものであるという理解でよろしいのでしょうか。ちょっと質問の趣旨が余りよくないかもしれませんが。   それに対して「考慮」というのは,簡単に言うと,要件と言えば要件なのでしょうけれども,いわゆる実体的要件というまでの拘束力はないというふうな理解でよろしいのでしょうか。そこのところだけ,すみません。 ● ここは,かなり法律の技術的なものにわたりますので,正確なことは申し上げられないのかもしれませんけれども,遮へいの場合に「事情により」とございますので,やはりここに掲げられているような事情,あるいはこれに準じるような事情と,それから,「圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれ」との間の因果関係が必要ではないか,例えば,こういった事情に準じるようなものとはとても言えないようなものが原因となって,こういう精神的な状況になるというのでは,やはりこの要件は満たさないというような文言上の解釈になるのかなというふうには思っております。   「考慮」の場合には,特にその原因としての絞りはないわけですが,大抵考慮事情を書くということは,いわば要件が抽象的で,そういう考慮事情を何も書かないと,どういう場合にこの要件に当たるのかというのがよくわからないという場合と思われます。したがって,こういうことを考慮すればその要件に当たるかどうかの判断につながる,いわばその考慮事情が影響する。そういう要件であるということを示すことになるものと思われます。ですから,ここに掲げられたもの,あるいはこれに準じるような事情とは全く無関係な事情を考慮してといいますか,そういった事情が全く影響を及ぼさないような場合に,この要件に当たるというような解釈はしてはいけませんというようなメッセージを示すことになるのかなと考えております。   若干,非常に形式的な説明で難しいのですけれども,要するに,考慮事情を掲げるというのは,ある程度,抽象的な要件というのは大体この考慮事情,あるいはそれに準じるような事情にかかわるものですよということを意味するために使われているのかなというふうに,私は理解しているのですが。 ● 例えば具体的場面で,付添人のときには裁判所が,裁判長が,この証人にはやはりだれかが付き添ってあげた方がいいという判断があれば,それが余り,要件に合致するからというのは確かになじまないような場面はあると思うんですね。   ですから,相当萎縮しているとか,結果的には,これはとにかくどなたかがいた方がいいというような場合だと,要件に該当するからというよりは,そういう全体の,この方の年とか,体の状態を考慮しというのは何となく実際の場面ではしっくりいくのですけれども,ただ,「考慮し」と「より」というのは要件なのか,要件にそもそも「考慮し」がなじむのかと細かい議論になってくると,今度は異議を申し立てるときに,これはこういう要件に合致していないという場合に,「より」の場合にはその原因から来る絞りであるから,この「事案の性質」等がこういう要件に該当しないので,裁判長のその判断については異議がありますというのは割となじむと思うのですが,付添いというような場合に,「考慮し」という場合には,考慮すればいいわけですから,なかなか異議になじまないのかなという印象はちょっと受けたものですから,要件と考慮というのはどういうふうに整合的に考えるのかな,という感じがしております。というのは,この後の例示の議論にちょっと関係するものですから,その辺のところが整理がちょっと分かりにくかったものですから。 ● それぞれの,考え方としては先ほど○○幹事が説明されたとおりだと思うのですが,それは前提として,実際にこの二つが運用されるときに,「考慮」と「より」というのでどれだけの違いが出るかというのはちょっと私にも余り実際の運用の場面になったときにはそれほどはっきりしたイメージがまだあるわけではないのですけれども,今の点,何かほかの方,御意見ございますか。   どうぞ○○幹事。 ● 法律的に私も全く考えたことはなくて,提言もないのですけれども,今の○○幹事の御説明のように,法律論的に何が違うかというと,ぎりぎり詰めると違わないのかもしれませんが,遮へいの方の「事情により」というのは因果関係を示し,付添いの方の「考慮」というのは考慮事情を示したということで,それが現実の実務においてどういう違いをもたらすのかということはよくわかりませんけれども,ともかくそういう整理ということで,一応の違いということでいいのではないかと思います。   先ほどの御説明にありましたように,確かに付添いの場合は,何が原因かというよりも,今どういう心身の状況にあるかという点のみが基本的には重要ですので,そのことをこういう表現であらわしているということで理解しております。 ● ありがとうございました。   どうぞ,○○委員。 ● この場合に,ウと関係するのですが,多分○○委員の意見と同じような質問になるかと思いますが,異議を述べることができるといったときの異議理由は何でしょうかというところを考えたときに,遮へいのところは因果関係があるなしとかいうような話で異議理由にはなろうかと思うのですが,異議を言おうとすれば。   ただ,付添いのときに,付添いを命じたときに,そんな事情がありませんと言ったときに,どっちを,つまり「著しい不安又は緊張を覚えるおそれがある」,それがないというのか,あるいは,その他の事情を考慮した考慮事情がおかしいというのか,何かそこら辺がどうもはっきりしない。異議を,本当に述べていいのかというところも若干気にはなるのですけれども。本当に異議を述べたときに,異議理由は何だろうかというのがどうも,付添いのところは余りはっきりしてこないなということなんですが。もともと異議を述べさせてもいいのかというのもあるのですが,どうもそこら辺が任されてしまっているような気がするのですが。 ● おっしゃるとおり,なかなか難しい問題があろうかと思います。ただ,一応刑事訴訟法でも,こういう規律で異議が出せるというふうになっているものですから。   ただ,おっしゃるとおり,考慮事情が違うということが直接の異議になるのかというと,そこはちょっといろいろと問題があるかもしれない。あくまでもそれは,「著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認めるとき」というような要件の判断がおかしいと。その要件は,本来こういう事情を考慮して判断すべきような要件なのだから,ほかの全然全く無関係なようなことを考慮した上でやるのは,その要件としての判断がおかしいのではないかという,そういうことになるのかもしれません。ちょっと余り整理されていませんが。 ● いかがでしょうか。   実質において,それほど大きな違いを生じるような性質の問題でないという気もいたしますし,法律的な表現については一応御理解いただいたということであれば,これはこれでよろしいでしょうか。   どうぞ,○○幹事。 ● 1点だけ,○○幹事に確認させていただきたいのですが,先ほど冒頭の御説明の中で,付添いにつきましては「事案の性質」がないということとの関係で,現在の状況というものを何か重視しているというふうに理解できるのではないかというような御発言があったかと思うのですが,付添いについての考慮事情は,「その他の事情」というふうに非常に包括的になっておるのですが,そういうふうに現在の状況に絞る趣旨で,例示がこの二つだけになっているというふうに理解すべきなのかどうかということでございまして,ちょっと個人的な感想としては,そうしますと非常に逆に考慮事情を狭く絞りすぎているように感じられるのですけれども。ここに「事案の性質」というのはないわけですが,例えば現在問題になっております犯罪被害を受けたという過去の事情があるということを考慮することを,今回のこの書きぶりが排斥するご趣旨ではないというふうにお伺いしてよろしいのかどうか,ちょっとその点だけお願いいたします。 ● ここはまたいろいろと御議論があるとは思いますけれども,もちろん「その他の事情」には入り得るのだというふうに私は理解しておりますが,ただ,あえて刑事訴訟法が「犯罪の性質」ですとか,「被告人との関係」を挙げていないというのは,やはりウエイトの置き方が違うのではないか。   やはり遮へいの場合には,それぞれが同じような形で,それぞれが重い事情としてウエイトが置かれているのに対して,付添いの場合には,「証人の年齢」とか「心身の状態」というものにはウエイトが置かれているというような,そういう理解でございます。 ● よろしいでしょうか。   ○○幹事がおっしゃったような過去の事実ですよね,あるいは歴史的事実も,当然それは現在の心身の状態に影響を持っているから,こういう措置の対象になるというふうに説明してもよろしいわけですよね。 ● そうですね,説明のつけ方なのかもしれませんけれども,ちょっと実務的な感覚としては,現在の心身の状態,とりわけ精神的な状態を直接認定しろと言われても,これはなかなか実際上難しいわけですから,結局はそこで考慮するときの判断作業としましては,過去にどういう被害にあったのかどうかとか,あるいは,実際上その人が当該事案について証言するとしたときにどういう精神状態になるだろうかというようなアプローチで,実務的には,第一義的には判断するのではないかなと。   そのあたりがある種,精神医学的な立場の方々のように,心身の状況を直接的に認識するというのは実際上は難しいのかなというようなちょっと印象があったものですから,お伺いしたものですが,考慮事情の広い意味での中には当然入り得るというふうに御理解させていただいてよろしということであれば,それはそれで,その限りでは結構かと思っております。 ● どうもご指摘ありがとうございました。   それでは,このアの本文につきましてはご了解いただいたものといたしまして,次に(注1)で,この本文の措置をとるに当たっての当事者の意見の聴取,これは規則になるかどうかという点はございますが,実質においてはよろしいでしょうか。はい。   そういたしましたら,次の(注2)でございますが,これは先ほど○○幹事からの説明がございましたように,甲案・乙案という二つの案,規定を設けない,それから,そういう趣旨の規定を設けるという二つの考え方が掲げられておりますので,いずれが適当かをこの場で御審議いただきたいと存じます。   どうぞ,○○委員。 ● もしこの乙案をとった場合に,最高裁規則において規定することが相当であると仮にした場合に,当事者の意見の規定も最高裁規則にということにやはりなるということかどうかというのが1点と,そうした場合に,当事者の意見と証人本人の意見に軽重があるか,事実上というのはおかしいかもしれませんが,軽重というものを考えていいのかどうかですね。   例えば,当事者の意見と証人の意見が食い違った場合に,当事者は「ぜひやってくれ」,本人は「要らない」といった場合には,それはもう裁判所が意見を聴いて,どうするかは判断をする,そういう割り切りでいいかどうか。当事者と証人の意見のときには,例えば証人の意見が尊重されるべきで,当事者は参考人というようなイメージで考えたらいいのか,そこのところ,もしお話しいただければありがたいのですが。 ● 規定を置く場所でございますけれども,(注1)にありますように,当事者の意見は,規則にしてはどうかというのをまず御提示しております。これは,例えば今のテレビ会議システムにおける当事者の意見聴取とのバランスといったような問題もございます。したがいまして,こちらのお出しした案としては,当事者も,それから証人についても,もし置くとしても,いずれも規則にしてはどうかという趣旨でございます。   それから,あとは,それぞれのものをどうウエイトを置くかというのは,これはあくまでも裁判長の判断に委ねられる。べつに,人事訴訟法の22条におきましても,それをどう裁判所が判断するかについてはこれはもう裁判所に委ねておりますので,そこも同じような規律になるのかと思います。   特に,あと,当事者の場合には,この要件が満たしているかどうかということについての意見もあるでしょうし,それとはまた別個違った観点から,手続保障の観点からの意見を言うということもあり得るかと思います。そういったものも含めて,最終的にどちらの意見を重視するかというのは,これはもう裁判長の判断ということになろうかと思います。 ● よろしいですか。はい。   それでは,さらに甲案・乙案につきましての御意見をいただきたいと存じます。   どうぞ,○○幹事。 ● 民事訴訟の場合,代理人がついている事件であれば,当然証人を申請するときに,代理人はその付添いの必要性についても考慮するでしょうし,証人の意見も聴ける場合には当然聴いてやるでしょうから,当事者の意見聴取だけで十分だと思いますし,刑事訴訟との比較で言うと,刑事訴訟は一方は検察官ですし,被告人の方は,事件によりますけれども,必要的弁護事件の場合には弁護人がつきますから,そういう配慮がされるのでしょうけれども,民事訴訟の場合,本人訴訟があり得ますので,当事者の意見だけで十分かという問題があるのではないかと思います。そういう意味で,刑事訴訟と多少平仄が違う部分があるとしても,乙案をとるという選択肢もあるのではないかという気がいたします。   もちろん,申立権を認めない以上,乙案のように措置をとるに当たって意見を聴くということになるのが自然かと思いますが,実際には措置をとらない場合に意見を言わせたいわけですが,それはちょっと申立権との関係で,整合的な制度になるかどうかちょっとよくわかりませんので留保しますが,そういう意味で,乙案にも置く意味がどこまであるのかというような問題も若干あるのかもしれませんが,ただ,これ,付添いをする,しないだけではなくて,だれを付添人にするかという点での意見というようなことも,これも多くの場合には,証人の意見を聴かなくても自然に適切な人がわかるのかもしれませんけれども,事件によってはそこが証人本人の意見と食い違うということもあり得るかもしれませんので,そのような諸々を考えて,余り強い意見ではないのですけれども,乙案もあり得るというふうに感じました。 ● わかりました。   ○○幹事からは乙案支持の御意見がございましたが,他の委員,幹事の方,いかがでしょうか。   ○○委員,どうぞ。 ● 私は,法律の文章との整合性がどうなっているのかというあたりのところはよくはわかりませんけれども,少なくとも民事裁判を起こす人たちすべてが,先ほど○○幹事からもお話がありましたように代理人がつくわけではありませんので,法律そのものにうとい人もおりますので,やはりこういう制度があるということを裁判長からきちっと説明をしていただけるということは,その制度を利用するということができるということにつながりますので,私はぜひこの乙案で行っていただければと思いますが。 ● ○○委員からもただいまのような御発言がございましたが,いかがでしょう。   どうぞ,○○委員。 ● 実際にもし証人に意見を聴くとした場合,前回も出た議論だと思いますけれども,裁判長が迷っているところではなくて,とるに当たって,とるという方向で考えたときにということだろうと思うのですけれども,技術的なことになるかもしれませんが,証人の意見を聴く場面というのは実際はどんなイメージになるのかなというのが,ちょっとイメージがわかないものですから。   当日では当然遅いわけで,そうすると,先ほど○○幹事からのお話もあったとおり,だれを付添人にするかという議論について,そのだれをというところの意見を聴いてから考えるのか,事前にどの場面でどんなふうにやるのかなという。実施の連絡をとって,その上で決定をしますというようなイメージなのか,ちょっとその辺の,大げさに言えば訴訟の遅延といいますか,とも関係がするのかなというので,そこはちょっと気になります。そこを教えていただければ。 ● 状況によっては,その場でということがないわけではないでしょうけれども,しかしそれは例外的なもので,今,○○委員がおっしゃったように,あらかじめ何らかの形での判断資料を得るとか,そういうことが必要になるのかと思いますが,そのあたりは裁判所の幹事の方,何かイメージ的なことで御発言いただけるとありがたいのですが。 ● 証人が当事者の申請による場合なのか,要するに当事者が同行する証人なのかどうかということによって,恐らくこれは大きくイメージが異なるのではないかと思いますけれども,きょうの段階では甲案・乙案という御提示をいただいた段階なので,まだ内部的に十分に詰めているものではないので,私の個人的な意見になるかと思いますけれども,やはり当事者側で申請をして,かつ同行していただけるような,ある種,当事者サイドの方が証人として立たれるような場面につきましては,恐らく証人尋問の申請の段階でやはりこれは,こういった措置をとる必要があるのかどうかというところを,代理人の方など,あるいは当事者本人に,訴訟であれば本人の方経由で御意見を伺って,実際上はそれによって措置の必要性,あるいは,付き添わせるとしたらどういう人を付き添わせるかというところについては,きちんと詰めた上で,証人申請とほぼ同タイミングで,同じタイミングで,この措置をとるかどうかというようなところも決定していくというような運用にならざるを得ないのかなというような印象を持っております。   今御指摘いただきましたように,それをまた別の段階で,実際の尋問期日までに別途意見照会するということになりますと,逆に遅延その他の混乱の問題も生じますので,実際上,今申しましたように,採用の段階までに当事者経由で証人の意見も併せて聴くというようなイメージになるのではないかなというように思っております。   他方で,どちらの当事者も直接的には連絡のとれない,いわば第三者証人のようなものについて,仮にその方が犯罪被害者であって,こういった措置を,本人がその制度を知っていれば求めるであろうということがかなりの蓋然性であらかじめわかるような場合であれば,これはやはり実際の尋問期日の前に,例えば証人としての呼出しをする際に,併せてこういった措置をとることについての本人の意向,あるいは立ち会わせるとしたら,どういう方を立ち会わせるのかということを併せてお伺いして,期日よりも前の段階までにその回答をいただけるように御連絡をする。あるいは,個別的に電話連絡等によってその点を確認しておくというようなことになるのではないかと思います。   いずれにしましても,当日実際の尋問をする際に措置をとるということになれば,面前で,「最終的にこういう措置をとるということでよろしいですね」という,ある種の最終確認はとるということにはなろうかと思いますけれども,大体そのようなイメージなのかなというふうに考えております。   ただ,そういったイメージをとりました場合に,とりわけ典型的に想定されます当事者側で申請して同行されるような証人の場合には,今申しましたように,その意向聴取はどちらかといいますと当事者本人,あるいは代理人を通じて行うという形が恐らく最も,実務的にも円滑になろうかと思いますので,そういった実態を前提としましたときに,法律なり規則なりで,証人の意見を聴くという条文を置くことがその実態にぴったり当てはまっているのかどうかといいますと,若干,実態とその文言が逆にずれてしまうというような別の問題も出てくるのかもしれません。   そこは,当日最終的な確認をとることによって,当然証人からも直接意見を聴いているのだということで,規定の文言に合致しているという説明は十分に可能かと思うのですけれども,今申しましたように,むしろその意向聴取というのは,証人から直接というよりも,代理人等を通じて事前に行うというようなことに運用上はなろうかと思いますので,規定として置くべきか置かないべきかというところはまた別途議論はあり得るかと思いますが,それは規定を乙案のように置くかどうかにかかわらず,運用としては,円滑に手続を進めるためには当然そうなっていくのかなというような印象を持っております。 ● どうもありがとうございました。   先ほど○○委員がおっしゃったような,この証人の方がどういう状況にあるとかそういう把握をして,その意向も含めてそれを聞いてその判断の資料とする,それは当然のことで,また最終的には,今,○○幹事がおっしゃったように意向の確認というのも,これも必然的にあるものだと思いますが,そういうことを前提にしてもなお乙案で意見を聴くということを規則という形ではあっても裁判長に義務づけるかどうかというあたりが考え方の分かれるところかと思いますが,なおほかの委員,幹事の方,いかがでしょうか。   どうぞ,○○委員。 ● 先ほど○○幹事の方から,「この措置をとるに当たって」という,これの解釈の問題だろうとは思うのですけれども,この措置をとるということにする場合にだけ聴く,とらない場合には聴かないということがもしこの規定の趣旨ならば,とるということになれば,当然証人で来られる方は,被害者であれば,犯罪被害者であれば,その方にとろうということであるので,その方にとって,意見を聴かなくてもその場でとることになっているわけですので,むしろ意見を聴かなくても,その被害者の方の不安とか緊張を和らげるという,そういう方向に働くわけですので,あえてここを規定していただかなくても,裁判所としては当然に,先ほど○○幹事の方から出たように,裁判所の実務としては,「付添いの方が今日来られています。その方を付添いでやりますけれども,よろしいですね」という形でやりますし,むしろ,私自身は,この規定は当事者の権利,当事者というか原告と被告の方の尋問権というのでしょうか,そちらの方の制限になってしまわないか,それについての意見を聴くという,そういうふうな方向での規定かなというふうにも,私自身,個人的にですが,実務の体験を踏まえるとそういうふうに思いますので,そのあたり○○幹事がどのようにここをお考えかという,規定を置く趣旨ですね。   私自身は,繰り返しますけれども,証人で来られる方が不安とか緊張を覚えるおそれがあるということであれば,それは裁判所としてはとる方向と,こういうふうになると思われますので,証人の方がそういうふうなことであれば,当然意見を聴くというよりは,むしろ当然のこととして前提に考えていますので,あえて意見を聴くというふうなことを定めていただくまでのこともなくスムーズにいくのかなという,そんな実務の感覚でございますが。ちょっとまとまりがないのございますが。 ● どうぞ。 ● 私は,実務とか全くそういう面ではありませんので,規定になければ,きちっと聞いてもらえない場合も出てくるのではないか。それがとても不安ですので,やはり多くの被害者の方に,裁判所もきちんと,法的にもこういうものが保障されているというようなものがあった方が,被害者の方はとても安心をすると思うんですね。ですから,そこら辺が,法曹の世界にいる方と一般市民感覚では全く違うものがあるのではないかということは今感じます。 ● どうぞ,○○幹事。 ● ちょっと違う観点から,やはり証人の場合も意見を聴くということは,それは条文にきちんと決められるかどうかというのはちょっと別なんですけれども,やはり聴くべきだと思います。   特にこの付添いの場合は,遮へいとビデオリンクと違って,犯罪被害者にかかわらない規定になってございますよね。だから,どうですか,「その他の事情」で,しかも「考慮し」だから,必ずしも犯罪被害者にかかわっていない。   例えば未成年者の証人とか,あるいはちょっと身体的にハンディキャップのある証人とか,もちろん心身というか,どちらかというと精神的な状況を考えているのでしょうけれども,そのような状況にある方にもつけることになっていて,これ,使いようによっては,逆に証人にとっては,ハンディキャップであるということを言っているようなことになるものだと思うので,証人が「要らない」と言っている以上は,やるべきではないという見方があるのではないかという気がしまして,やはり証人の意思と無関係にこの措置をとられるのはおかしいのではないかと思います。 ● なるほど。どうぞ,○○委員。 ● 申立権の問題の方も若干絡むのですが,僕自身は証人が「つけてください」と言ったらつければいいというような気がしていまして,そこのところを前回の議論で職権発動を促すというような形にされまして,大体そこで意見が一致してきたかと思うので,その最終的なところでは,やはり証人の意向みたいなもの,証人が望めば付添いをつけるというのが本来のこの制度をつくる意味ではないのかなというのがありまして。まあ,いろいろな想定がされますけれどもね。いろいろな場合が想定されるということになろうかと思いますが,その申立てのところでいろいろな調整をつけて,聴かなくても,実際には聴いているというような事態が起こるかもしれませんしということになりますが,いろいろな場合を想定したときに,最終的には,あらかじめ,どんな形であっても証人の意見を聴いておくべきではないのかというのが最終的で,ここが歯止めになるのではないのかという気がしておりますのですが。 ● わかりました。   ○○幹事。 ● 結局,制度の本来の趣旨と,それがどういうふうに運用されるかが,また非常に微妙な関係になるかと思います。   制度の本来の趣旨を制度的に説明すると,これは先ほども申し上げましたとおり,結局,とる場合の手続ですので,結局,証人の意見を聴かないでもとるということを認めるかどうかという,最終的には措置がとられるという場面の問題となります。   逆に,とらない場合には,この規律というものは全く制度的には働かない。そういうようなものを制度として置くかどうか。とる場合には普通は多分聴くでしょうし,聴かないでとったからといって,とった以上は,それは証人は保護されるわけですので,そういう点で,証人の保護という点では余り問題が起きないのかもしれない。   結局,制度としては,本来は必要がない,本来はやってはいけないときにこの措置がとられるというようなことを,こういう制度を仕組むことによって防止するかどうかというのが制度的な説明ということにはなろうかと思います。 ● 大分御意見が分かれているようでございますので,ぜひ,御発言のない委員,幹事の方もお願いいたします。   ○○委員,いかがでしょうか。 ● 状況がまだ具体的にクリアになっていないので結論が出てこないのですが,難しい問題のときには簡単に考えるというのが私のくせで,そうだとすれば,実務上は実際やるというなら規定を置いても害はないというふうに考えまして,まあ,乙案でいいのかなという気がします。   乙案をとることによってすごく何か支障が生ずるということがあれば別ですが,そうでなければ,やはり証人本人の意見を聴いておいて悪いことはないというぐらいの感じを持ちます。 ● ありがとうございます。   ほかの方,○○委員,いかがですか。 ● 私もよくわからないのですけれども,その前提として,この措置をとる場合に意見を聴くというその規定を入れるかどうかということだという御説明を踏まえて考えますと,そういうことからすると,甲案でもいいのか。   つまり,証人がこのような枠組みの中で保護されるという,その措置をとる前提として,証人の意見を聴くということは必ずしも最終的には必要ないのかなという気もするのですが,ただ,こういう形で条文を置くことによってこの制度が証人の間にも理解されて,証人が安心感を持つ,そのような意味では乙案にするということも一つの考え方であろうと思います。   そして,乙案にしても,それで意見を聴く方法はいろいろ柔軟なことでありましょうから,そんなに実務に支障があるということはないのではないかと,そういう感想を持ちます。 ● ありがとうございました。   純粋の法律論からすれば,甲案をとった場合でも,先ほど○○委員が御発言になったような危惧が生ずるということは,まあ,考えられないけれども,しかし,この制度というか,あるいは規定の持っている目的からすると,こういう乙案的な規定を規則の中に設けるということがそれなりに意味があるのではないか,そんなことですよね。   ほかにいかがでしょうか。○○幹事いかがですか。 ● 私も乙案でよろしいのではないかなという気がいたします。今,○○委員がおっしゃったことに同感ですし,先ほど○○幹事がおっしゃったように,本人の尊厳の問題が少しかかわってくるということは確かだろうと思いますので,その面でやはり証人自身の意向というのも考えなければいけないし,それから,例えば子どもの場合ですと,だれをつけるかということでかなり大きな影響が及ぶ場合があり得るのだと思うんですね。   つまり,精神的に支配している親のもとでは親の顔色を伺ってしまう。もちろんそれは排除するのだという趣旨になっているわけですけれども,これはなかなか外部から容易に知れないという場合もあり得ますので,やはり安全弁として本人の意向を聴いておく。   聴き方がかなり難しくなってきて,家裁の調査官のようなことまでやれるかどうかというと,これはできないのですけれども,やはり安全弁として置いておいた方がよろしいのではないかという気がいたします。 ● どうぞ。 ● 私も,結論としては乙案でよろしいのではないかということで,特につけ加えることもないのですけれども,ここの後半のところで書かれていることですが,確かに公開停止と比べれば,その重大性は劣るというのはそのとおりなのだと思うのですけれども,ただ,その意見を聴く理由は,この人訴の22条のところでは,「個々の事案において要件該当性を適正に判断するには,事柄の性質上,当事者等及び証人の意見を聴くことが必要不可欠であることによる」というのが○○さんが書かれたものの御説明で,それはここでの,著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあるかどうかというような事柄の性質上,証人の意見を聴くということは必要不可欠なのではないかということを思います。   その措置をとるに当たってということですけれども,それは公開停止の場合もそういう規定の仕方をされているわけで,公開停止の場合も,普通は証人は非公開での審理を求めるということだと思いますけれども,ですから,それはそれほど違いはないのかなというふうに思っているということです。   それから,刑事訴訟法との関係は確かに平仄の問題はあると思いますが,ただ,刑事訴訟手続の進め方と民事訴訟手続の進め方ということを考えると,特に新民訴のもとでは,これは証人ではありませんけれども,当事者の意見を聴いていろいろな手続を選択するということが随所に定められているという観点からすれば,裁判所がほかの意見を聴いていろいろな手続をとっていくということはそれなりに,刑事訴訟の場合と違うということはあり得てもよろしいのかなというふうに思いまして,結論としては乙案でいいのかなと思っています。 ● わかりました。   ○○幹事,おそれ入りますが。 ● 私は,申し訳ないのですが,まだ確たる意見を持ち得ないところですけれども,おっしゃるように乙案の発想は,もう繰り返し指摘していただいていますように正しい判断をするという発想だろうと思います。   それを前提に考えますと,果たしてそこまで常に義務づける必要があるかどうかという疑問は残るわけですが,先ほど○○幹事によって御指摘いただき,○○幹事によって補足された点につきましては,今まで十分に考えていなかった点が指摘されまして,ちょっとその点については,なるほどなという印象を持つところであります。その意味では,乙案はあり得るのではないかなという印象です。   もう一つは,恐らく申立権を否定したために,○○委員が御指摘されるような懸念が若干出てきたのかもしれませんが,これはもう実務では,裁判所としては十分に配慮すべき事項である,可能性がある場合にはそれなりの手当はするであろうということでございますので,それに期待したいと思いますが,そうした配慮をするため,するという観点から見ますと,証人の意向を確かめるということの重要性というものはあり得ようかと思います。   そのための,直接この規定ではそこに対して働かないというのは御指摘のとおりですけれども,そういう象徴的効果という点では,乙案も意味がないわけではないという印象はないわけではありません。   ただ,もとに戻りますが,乙案でそうした象徴的効果が出てくるかどうかというのはなお疑問でありまして,別の方法があり得るのかもしれませんし,甲案であっても十分その点は,法制審議会でも確認されているということで,そうした運営,運用がなされるということは期待できると思いますので,どうしても乙案でなければいけないというほどの感触は持っておりませんけれども,現在の段階ではそういう感触を持っているということでございます。 ● どうぞ,○○委員。 ● 先ほどの○○幹事の御説明,私なりに理解したのは,「とるに当たっては」というところの解釈にまた戻るのですけれども,人訴の22条も「決定をするに当たっては」にはなっているのですが,これが同じかどうかはよくわからないのですが,先ほどの御説明のイメージだとすると,裁判長がこういう,とるつもりである,こういうことをしたい,するのだけれども,やはり念のために本人の意向という意味では,聴かなくても,聴く前の段階ではやる必要はあると思っているけれども,一応本人に確認するという意味では,むしろその結果として,裁判長はやろうとしていたのだけれども,意見を聴いたためにやらなくなったという。そういう意味では,保護しようと思った,保護する措置をしようと思ったのに,本人の意向という意味では,ある面で,先ほどどなたかから出ましたように本人の名誉といいますか,その意向を尊重するというところにむしろ乙案の意味があって,そもそもどうしたらいいかという判断材料として意向を聴くという,「とるに当たっては」の意味なんですけれども,「とるに当たって」が肯定の方向で前に進んだ後の話ではなくて,そもそもとるに当たって,やはり本人の意向を聴いた上でどうしようか考えようかと,非常に微妙ではあるのですけれども,このたてつけ自体は,むしろ裁判長としてやった方がいいのではないか。ただ,念のために本人の意向を聴くのだという趣旨だとすると,客観的には保護が薄くなるわけではないのですけれども,やろうとしたことが本人の意向によってやらなくなったという意味なのかなと。   そうすると,そもそもやはりやるかやらないかについては本人の気持ちが一番大事だからという議論とはまたちょっと違うような印象を受けたのですけれども,今のお話を聞いていて。この「とるに当たって」の理解はそういうことでよろしいのかどうか,もう1回お伺いさせていただきます。 ● いろいろな運用はあるとは思うのですけれども,制度の建て前としては,「とるに当たって」は,ですから,まずとろうと思った上で,本当にそれで要件がきちんと備わっているかどうかを確認しようというのが人訴の立場ですので,そうは思ったけれども,聴いてみたところやはり要件から外れていたのでとらないことにしたというようなことにつながる,本来やはりとってはいけないような場合にとるということを防止できるというのが一番,制度のコアな場面設定かなというふうには思います。   ただ,最終的には,「とるに当たって」というときに,どの程度確信を持って裁判長がこの意見を聴くかどうかというのは,これは人訴の規定の運用でも,それはいろいろな多少のバリエーションはあるのかなというふうには思っていますけれども。 ● ですから,実際に本当にそういう措置をするかどうかは,先ほど○○幹事からお話があったとおり,実際に代理人や,証人申請のあったときに意見を聴いて,そこは事実上,判断材料にやはりなるのだと思うんですね。   ただ,制度としてのこの乙案というのは多分そういうことではなくて,まあ,でもそれも,そうか,証人の意見ということで,代理人を通じた証人の意見という意味ではそうなのかもしれませんけれども,ここで言う制度というのは,だから,やろうと思っているのに,それは本人の意向をやはり尊重しなければいけない,やろうと思ったけれども,「要らない」と言われたのだというふうに考えると。   いや,私は甲案がいいというふうに言っているわけではないのですけれども,あえて乙案までやらなければならない本当の意義というのはどこにあるのかなという感じはちょっと受けたものですから。   先ほどの御議論を聞いていますと,むしろ裁判所が判断する実質的な,やるかやらないかの判断材料の場面の問題と,ここの乙案のたてつけはちょっと違うのではないかという印象を受けて,判断材料としては実際の法廷で聴いている。それは実務の感覚からすると十分できるわけですから,そちらの方がむしろ大事なのかなと。あえてここだけを規定するところの意味は,どの程度なのかなというような感じは受けました。 ● どうぞ,○○幹事。 ● 私は全然裁判官の心理はわからないのですが,ただ,考え方としてはやはり,迷っているというときに,当事者の一方からは付添いの措置を求めるような職権発動の申出が出ている。しかし,要件が充足されているか,必ず十分にはわからない。そういうときに,当事者から意見を聴いて最終的に判断するということも,ここに入るわけですよね。   とにかく,完全にもう保護しなければいけないと決めてからしか意見を聞いたらいけないということでは,私はないと思いますので,ちょっと○○委員のおっしゃっていることがもう一つよくわからないのですけれども,そんなに限定されているのかというイメージを持ちましたけれども。 ● あくまでも「とるに当たって」の意味だけのことですので,今おっしゃられた実際にどうするかというところで,裁判長も,実際に何も聴かずにやらないということはまずあり得ないと思うんですね。ただ,その場面は,ここで言う場面と同じなのかどうかというところがちょっと分からない。この「とるに当たって」の文言にちょっとこだわっただけなんですが,説明の中では,とるという方向を出したときの意見聴取のように思って,私はそういう意味なのかなとちょっと思ったものですから,それだけでございますけれども。 ● そういたしましたら,先ほど来の御意見を伺っていますと,甲案をとるにせよ,乙案をとるにせよ,それぞれのもとでの実務の運用が正反対になるとか,あるいは大きく食い違ってくるということはおよそあり得ない。恐らくここはもう,共通の認識かと思います。   しかし,その上で,甲案か乙案かということにつきましては,御意見を伺っていますと,甲案をとるべきだという御意見が幾つかございますが,この場の多くの御意見としては乙案がよいという御意見のように承りましたので,その事実をここでは確認させていただいて,先に進みたいと存じます。   それでは,(注3)はよろしいんですよね,これは後からあれですから。   そうしますと,あとイとウですが,2ページのイ及びウにつきまして,何か御意見はございますでしょうか。ここは従来特に御異論や御意見がなかったところと思いますので,本日もそれでよろしいでしょうか。   そういたしましたら,次の遮へいに進みたいと存じます。 ● それでは,資料の2ページの2,遮へいの措置というところにつきまして御説明いたしたいと思います。   まず,冒頭「裁判長」とありますが,これは先ほどの付添いと同じ,こういう措置をとることとする,決める主体は裁判長というふうにしたものでございます。   それから,考慮事情でございますけれども,「事案の性質」,これは刑事訴訟法では「犯罪の性質」というふうになっておりますけれども,民訴の場合には「事案の性質」というふうにするのが相当ではないかと考えたものでございます。   それから,証人の年齢又は心身の状態。   さらに,刑事訴訟法では「証人と被告人との関係」とありますけれども,これも「証人と当事者本人又はその法定代理人との関係」という形に変えております。   まず,法定代理人というのを入れております趣旨でございますけれども,例えば加害者が未成年者であるということで,そういった犯罪の被害を受けた人が損害賠償を求めているというような場面ということが考えられます。   そういった中で,証人と加害者が直接接触するということがあるかどうかわかりませんけれども,例えば加害者側とのいろいろなやり取りの中で,その加害者の親がその証人に非常に精神的にダメージを与えるような言動をしたといったような場面も想定され得るのではないかということで,そういった加害者の親というようなものも含めて,その法定代理人というふうにしたものでございます。   それから,「当事者本人」というように「本人」というのを入れておりますのは,これは訴訟代理人は含まないという趣旨で,「当事者」ではなくて「当事者本人」という表現を使ったというものでございます。   こういったような事情,「その他の事情により」ということで,こちらの方は,原因としての例示でございます。   それから,「証人が当事者本人又はその法定代理人の面前において陳述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合」という,こういった精神状況に関係します要件につきましては,これは刑事訴訟法と同じ規律にしてございます。   遮へいの内容,あるいは遮へいをとり得ることができる場面でございますけれども,この点につきましては,前回までに,訴訟代理人がついていない場合,当事者本人しかいない場合でも,遮へいをすることができるかどうかという点が問題となっておりまして,前回までの御議論では,そういうような場合にこそむしろ必要性が高い等の理由から,その場合でも遮へいを置いていいのではないかという御議論だというように理解しております。   そこで,刑事訴訟法では,弁護人がいない場合には遮へいはできないというただし書がついておりますけれども,民事訴訟法の場合にはそういう規律を置かなくていいのではないかということで,このような案になっております。   それから,(注1)でございますけれども,この点は手続的な問題につきまして,1と,1のアと同じような問題があるという趣旨。それから,例示の点はペンディングにしていますということを確認的に書いているものでございます。   それから,(注2)でございますけれども,これは非常に,ちょっと技術的な面も含まれておりますので恐縮でございますけれども,先ほど申し上げましたとおり,この本文の案は,「事案の性質」等の「その他の事情」といいますものを,保護の必要性が生じた原因の例示として位置づけております。   ただ,この点につきまして,後に犯罪被害者であること,犯罪被害者の例示をどういうように置くのかというような問題がございます。それが,3ページの一番下の4のイというところにございます。   その犯罪被害者の方を例示として挙げる場合の一つのやり方としては,例えば保護の必要性が生じた原因として,犯罪によって害を被ったことを例示するということも,一つ考え得るわけでございます。   具体的に申し上げますと,例えば犯罪によって害を被ったこと,その他の事情によってこういう当事者本人等の前で陳述するときは,圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるというような形で,「犯罪によって害を被ったことその他の事情により」といったような形での例示も一つの方法として考えられるわけでございます。   そうしますと,その次に4ページの(注)にございますように,仮にそういったような形で例示をするといたしますと,先ほどの,戻りまして2ページの2のアの遮へいの措置ですが,既に例えばこの「事案の性質」等が原因の例示として列挙されているということとの関係を,どう整理したらいいのかといったような問題が出てくる可能性がございます。   したがいまして,2のアといいますものは,例示ということを全く考えないで,しかも刑事訴訟法と同じような規律にするということの立場に立ちますと,「事案の性質」等はこういった「その他の事情により」という原因の例示になるわけですが,その点につきましては,後の犯罪被害者の方の例示との関係で,若干ペンディングになる要素がございますということを確認的に書いたのがこの2ページの(注2)でございます。はなはだ技術的でわかりづらい説明で恐縮でございますけれども,そういう趣旨でございます。   それから,2ページの下の方のイでございますが,こちらの方は,傍聴人との間の遮へいでございます。   主体が裁判長となっておりますのは,先ほど御説明したとおりでございます。   それから,考慮事情につきましては,これは基本的に事案の性質が変わっておりますけれども,刑事訴訟法と同じようなものでございます。こちらの方は,刑事訴訟法でも「考慮し」という形になっておりますので,それにならっております。   そのほか,要件,相当と認めるとき,それから,この措置の内容等につきましては,刑事訴訟法と同じ規律にしてございます。   手続的な点が問題になるというのは,(注)で,1とアと同じであるということ。   それから,2ページの一番下のウでございますけれども,裁判長の処置でございますので,これに対しましては,裁判所に対して異議の申立てをすることができるという点にしてございます。   以上が,遮へいでございます。 ● そういたしましたら,これについても御議論をいただきますが,前回までの本部会においての御意見を踏まえて原案がつくられている,そのあたりにつきましてはそれほど御異論がないかと思いますが,先ほど○○幹事の御説明があった2のアの(注2)がちょっと,私自身も十分わかっているかどうか自信がないところでございますけれども,あるいは御質問があるかもしれません。そういったことも含めまして,御発言いただければと存じます。   どうぞ,○○委員。 ● まだまとまっていなくて,また失礼してしまうかもしれませんが,冒頭の議論に関係することですけれども,遮へいの要件の,「その他の事情により,面前において陳述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがある」,これ,要件という観点で先ほどお話をさせていただきましたけれども,要件という観点から言うと,異議理由に関係するわけですが,「圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であって,相当と認めるとき」,これが要件ということなのか,「その他の事情により」までの,いわゆる因果関係の原因のことは,その要件をさらに絞り込んだものなのか,圧迫を受け平穏を著しく害されるという要件の絞り込みとして,「その他の事情により」以前の事案の性質や証人の年齢云々かんぬんがあるので,この遮へいの措置をとるための要件として,やはり「こういう事情によりという原因の場合ですよ」という絞り込みをした実体要件というふうに考えていいのかどうかということが1点と,ちょっと議論を先走ってしまいますと,例示のところは,べつに例示をさらに加えるかどうかということではなくて,さらに事案の性質云々というところの因果関係のところも,必ずしも具体的に絞り込んであるわけではないので,その中の一つの場面として,犯罪被害者のケースがあるという整理は可能なのではないかなというふうには思っているのですけれども,その点いかがでしょうか。そういうことなのですが。 ● まず,第1点につきましては,やはり形式的には,抽象的にはやはり,事情により圧迫を受け,精神の平穏を著しく害されるおそれがあるということが,一体となって要件となっているというように私は理解しております。   ただ,「その他の事情」ですので,かなり幅広いものが入ってくるとは思いますけれども,やはりここに掲げられた例示されているもの,それに準ずるようなものというものが,原因としての絞り,要件面における絞りになっているのではないかなというふうに考えております。   ただ,先ほど○○委員からも御発言がありましたように,これが「事情により」というものが全くなくなれば,そういう点では限定がなくなってしまうわけですけれども,この「事情を考慮し」というようにやった場合と,「事情により」ということとの実際上の効果がどれほど違うのかというのはまた別の問題かと思います。   それから,2番目の例示の方法につきましては,後の4のところでまた詳しい御議論があるのかもしれませんけれども,仮に原因として例示をするとした場合でも,どのような形でそれを規定の上に反映させるかというのは,確かに御指摘のとおりいろいろなやり方があろうかと思います。   ただ,どのような仕方でやるのが,いわば例示の趣旨といいますか,今回例示を入れる趣旨がより条文上に反映されるか,そういったようなことも含めて考えていかなくてはいけないのかなというふうには思っております。 ● 「より」と「考慮」というのは,やはり要件の限定といいますか,そういうところで,考慮はやはり考慮であって,要件ではないというふうな私は理解をしようとしているのですけれども,やはり「より」というのは,どうして圧迫を受けているのかという原因が,その前の記載ですよと。   そうしますと,「その他の事情」,もっとも,本当に「その他の事情」だけですと,前に書いてあったことが全く意味がなくなってしまうので,今,○○さんがおっしゃられたように,それは「事案の性質」云々に準じるようなものによって圧迫を受けた場合ですよということで,やはりこの規定を解釈ができるのかなというふうに考えていまして,ただ,それにしても,具体的なこととか何か特定をしているわけではないので,「事案の性質」って,ここに犯罪被害者とかあるわけではありませんので,だから,これもかなり幅広くて,限定はしているものの広いので,その中にやはり,例えば犯罪被害者って,それが本来の例示だというふうな構成は可能なのではないかなと。   前回から申し上げているとおり,もちろん4の方の議論に先取りして恐縮なんですが,これだけですとちょっと犯罪被害者をイメージがなかなかわかりにくいのではないかなという感じを受けております。   以上です。 ● いかがでしょうか。どうぞ,○○幹事。 ● この点も,前の審議会から申し上げていたように,やはり「考慮して」と「より」との違いというのはよくわかるので,「より」であれば,精神圧迫とか,精神の平穏を著しく害されるおそれと因果関係がある事由が前に並べられているということだと思います。   ただ,その場合,本文の案ですと,これに当てはまる事由が民事訴訟ではかなり多くあるような,たとえ「より」という因果関係性が強い言葉を使っても,これに当てはまってしまう事例がたくさん出てくるのではないか。つまり,犯罪被害者に関係しないような事例もかなり出てきてしまう。   これは前から申し上げておりますが,とにかく民事訴訟法というのはいろいろな形態の案件がありまして,証人に立つ以上,やはり圧迫を受けたり,精神の平穏を害されるおそれがあるという人たちはたくさんいるわけで,それから,当事者との関係,法定代理人との関係もさまざまで,犯罪というような強い事実がなくても,そういう事情にあるという人がたくさんいるわけですから,それが余りに広く取り込まれるような規定となるのは,いくらそれは,運用で違います,そういう運用はしませんと言っても,やはり文言上そういう広く取り込まれるような規定になってしまうのはちょっと賛成できません。ということで,4番の例示をぜひ何とか,文言として考えていただきたいと思います。 ● どうぞ,○○委員。 ● どうもそこの原因か何とかに関係するのかもしれませんが,イとかに比べたときに,「裁判長は考慮し,相当と認めるときは」というのは,相当と認めればいいということになりますが,アを行きますと,「事情により」が,「著しく精神の平穏を害されるおそれがあると認める場合」でなぜいかないかというのがどうも気になるのですがね。   要件を絞って設定すれば,それで,その圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認めれば,遮へいの措置をとれるのではないのか。そう考えながら,なお相当と認めないとかいうようなことが本当にあるのかというところが,ちょっと気になるのですけれどもね。   その事件の範囲にもよるかもしれませんが,要件設定をするなら,この場合は必ず遮へいの措置をとれるというのがわかればいいのです。にもかかわらず,「相当」とかいうのは--その「考慮して相当と認める」とかいうのはわかるんですよ。だけれども,このアを要件設定すれば,仮にその原因設定をすれば,むしろ,要件に当てはまればその措置をとることができるので,それで十分ではないのか。無論,刑事訴訟法との辻つまが合わなくなってくるということはあるのかもしれませんけれども,どうもちょっとおかしいという気がするのですが。 ● 刑事訴訟法でも,こういう認める場合であっても,ではどういう場合に相当と認めないのかという例としては,例えば,精神の平穏を著しく害されるおそれがあっても,やはりどうしてもその事案の性質上,面と向かって質問をさせなければいけない,やはりそういうようなケースもないわけではないので,「相当と認めるとき」を入れているのではないかと考えております。 ● どうぞ,○○委員。 ● 今の○○委員と○○幹事の指摘された問題との関係では,私はこの「相当と認めるときは」という規定があることによって,「著しく害されるおそれ」というところがどの程度の範囲がそれに当たるという判断になるのかはわかりませんが,それがあるとしても,余り広くならないように,いわゆる尋問権の保障という意味から,公正な手続を確保するという利益も,ここの「相当と認めるとき」というところで考慮することができるということになるのかなと思っていて,それは,同じ「相当と認めるとき」でも,イの場合の傍聴人との間の遮へいとはかなり手続の重みが違うので,アの方はかなり慎重な要件にしたのかというふうに理解して,そういう意味でこのアの今の原案はよろしいのではないかと考えております。 ● わかりました。   どうぞ,○○幹事。 ● 傍聴人との遮へいなんですが,もう刑事訴訟法がこうなっているのでやむを得ないのかもしれませんが,何のためにこの措置をとるかというのが条文上明確ではないような気がするんですね。   付添いであれば,付添いでも,本人等との遮へいですと,緊張を和らげたり,精神の平穏を害しないようにするためにというのが明瞭に条文から読み取れるのですが,この場合,傍聴人との遮へいでは,何のためにこの措置をとるのかということは必ずしも明確ではない。   そうすると,相当である,ないというのは,一体何を判断すべきなのかというのもわからなくなるという気がして,最終的にはケースの横並びでもやむを得ないとは思うのですけれども,もう少し何か工夫して,何のための遮へい措置なのかということがわかるようにしておいた方がよいのではないかという気がするのですが。 ● 恐らく刑事訴訟法では,裸で「相当と認めるとき」というふうに書くと,何が何だかわからないじゃないかというので,考慮事情を掲げて,例えば,「犯罪の性質」,犯罪の性質からストレートに「相当と認めるとき」にどう結びつくのかというのは,ちょっといろいろとあるかもしれませんが,証人の年齢,心身の状態,名誉に対する影響というものを考慮し,相当と認めてとすることにより,場面がわかるというような前提に立っているのかなという感じもします。   ただ,それだけではわかりづらいということであれば,もう少しその場面が何らかの形でわかるような工夫ができないかというのは,検討しなければいけないのかなという気もいたします。 ● 名誉に対する影響はよくわかるんですね。名誉に対する影響が生じないようにするための措置であると。それ以外の場面が,やはり証人の心理的な圧迫であるとかいうものに結びつくのであれば,それを書き分けた方がいいのかなという気がするということで,そうした方が,ほかの3つの措置との差別感がよくできるという気がするのですが。 ● なるほど。わかりました。   どうぞ,○○委員。 ● 絞り込みの点で,先ほど○○幹事が,いろいろなこういう場面が想定できるという場面の一つの例示として,民法715条が問題になるようなケースで,会社と不法行為者本人が715条と,本人は709条で訴えられている。   訴えられているのはいろいろあるわけですけれども,例えば金融取引で,デリバティブだとか,変額保険だとか,説明義務がいい加減だったので,こんなものを買わされたという事件はもう腐るほどあるわけですけれども。それから,そのときにいいことばかり言って,安易に信じてしまったという事件はいっぱいありますし。   そういう場合に,やはり一番の当事者は売買契約の勧誘を受けた人と勧誘した人というところで出てくるときに,必ずこういう種の証人は,「本人に随分恨まれているので会いたくない,あの場面で」という場合が,文言だけで言うと,当事者本人との関係,事案の性質,あと心身の状態も入るかどうかわかりませんけれども,これに当たるではないかと言われたときに,本人は非常に圧迫を受けて,随分激しい手紙をもらったとか,「おまえのために家が倒産したのだから許さない」とか「殺してやる」とか,そういう場合もあり得るわけなんですけれども,そういうのも,「いや,それはちょっとこの本来の趣旨と違いますので。」と言えるか,そういう,まさに事件の核心のところについて「遮へいをしてください」と言えるか。そういう事件に限って,むしろ原告本人の方は当事者席に座ってにらみつけていますから,それは勘弁してくれというようなことは十分あり得るんですね。そういう場合に「いや,これはそういう措置ではないですよ」というのが,この文言だけだと言えないのではないかなという感じがしてですね。もちろん,「いや,そういう場合も遮へいしてあげるのだ」という,もうそこまで飲み込んでしまうのだったらいいと思うんですけれどもね。   もちろん事案の筋にもよりますけれども,でも,今回のあれはそういうのではないのではないか。○○委員がおっしゃったように,やはり犯罪被害者をメインであり,それに準じるものだという色彩が強い改正のはずではないかと私は思っているのですけれどもね。ですから,そういう場面とはまた違うのではないかなという感じを受けているんですけれどもね。   ですから,もうちょっと絞り込みがやはりいずれにしてもいるのかなと,観点がちょっと今までの議論と違いますけれども,そういうことを気にしております。 ● わかりました。   ○○委員,○○幹事からは,こういう「より」という言葉で,原因となる事実と,それからその結果というふうに一種の限定をしているけれども,しかし,やはり事案の性質,心身の状態という非常に一般的な概念を使っているものですから,かなり予想される適用範囲というのが,一見非常に広いように理解されるおそれがあるということで,そこで後の例示の問題と関係をいたしますけれども,その原因となる事実についての例示という形での絞り込みが必要なのではないか,こんな御意見で,そうなると,結局最後の例示の問題と,それから例示に伴って生じる,(注2)に書いてある,ややこれは立法技術的な問題とがありまして,立法技術的な問題の方は問題点の指摘は認識していただいたものとして,実質は例示の話になるのかなという気はいたしますけれども。   なお,この遮へいに関して御意見等はございますでしょうか。   どうぞ,○○委員。 ● しつこいようで,確認ですが,遮へいのところで「相当と認めるとき」は,認めないときもありますよということは,その場合は,要するに犯罪被害者の保護よりも,真実発見なりという方が優先しますよという,そういう局面もなきにしもあらずということになりましょうかって,要するに,最初の目的設定をしたときに,真実発見のためにとかいうようなこと,とりあえずは犯罪被害者を保護するということで使った点ですが,その,相当と認めないというときもある,そこは真実発見にそこが譲るという場合があり得るということで理解しておいてよろしいでしょうかということですが。 ● この目的自体は,やはり陳述する方の保護という点でありますけれども,目的はあくまでもそれであっても,その目的が絶対的なものとするかどうかはまた次の問題として,やはりそれはいろいろな面でのバランスという局面は出てくるのではないか。したがって,今先生がおっしゃられましたように,真実発見との関係で後退する場面というものもあり得るのではないかと考えているところでございます。 ● そういたしましたら,例示の部分についての関係がございますので,そのあたりはまだ議論をしなければいけませんが,そこを除いた部分に関しては,一応この遮へいの措置に関して,記載してある本文等の内容を御了解いただいたものとして,例示についてはまた後ほどさらに議論をするということでよろしゅうございますか。   それでは,今から休憩をとりたいと存じます。            (休     憩) ● それでは,再開いたします。   引き続きまして,ビデオリンク方式による尋問につきまして,○○幹事から説明をお願いいたします。 ● それでは,資料の3ページの3の「ビデオリンク方式による尋問」というところでございます。   まず,こちらの方の決定の主体でございますけれども,こちらの方は,現在の遠隔地の場合のテレビ会議システムと同様に,裁判所というようになっております。   それから,事案の性質,証人の年齢又は心身の状態,それから,証人と当事者本人との関係,その他の事情といいますものを当事者等との間の遮へいと同じように,原因事情として列挙しております。   細かい点でございますが,当事者等との遮へいのところでは,法定代理人というものを入れておりますけれども,こちらの方では,法定代理人との関係というものを入れておりません。これは,刑事訴訟法では,どちらも被告人との関係というようになっておるところでございます。   こう書き分けている理由でございますけれども,なぜ刑事訴訟法で,ビデオリンク方式の尋問の場所で,被告人との関係が挙げられているのかということでございますが,典型的には,どう例えば証人が被告人に脅かされて異常な性的関係を持つようになった。さらに,被告人に脅かされて犯行を手伝った。こういったような特別の関係がある。被告人との間のそういう異常な性的関係というものは,法廷というこういう場で供述するには非常に圧迫を受けて精神の平穏を害する。こういったような場面が一つ想定されて,「被告人との関係」というものが入っているのではないかと考えているところでございます。   すなわち,このビデオリンク方式による尋問といいますのは,特定の人との関係で圧迫を受ける場面ではございませんで,法廷という場で話す,そういうことについて圧迫を受ける場面のための規定でございます。   したがいまして,先ほど申し上げました例で言いますと,そういったような異常な性的関係を持ったというようなそういう特殊な事情があるので,こういう場では圧迫を受けるというようなことになるわけでございます。   そうしますと,法定代理人との関係ということになりますと,その人との関係で圧迫を受けるというのは,いろいろな法定代理人とのこれまでの接触状況の点で考えられることがありますけれども,法定代理人との関係でそういった特殊な状況があるというのは,余り類型的に多いというようなことは言えないのではないか,そのように考えられるわけでございます。そこで,例示には掲げないというふうに書き分けたものでございます。ただ,もちろん例外的にそのような事情があれば,「その他の事情」には入り得るということにはなるわけでございます。   それから,「証人が裁判長及び当事者が証人を尋問するために在席する場所において陳述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認められる場合」,このような精神的な状況に関する要件は,刑事訴訟法と同様でございます。すなわち,当事者等との間の遮へいと同じようなものにしたというものでございます。   あとは,刑事訴訟法との違いでございますけれども,刑事訴訟法の方には,性犯罪,あるいはそれに準ずるような犯罪類型を特定した特則の規定が設けられております。このような特則を民事訴訟法において設けるかどうかにつきましては,前回までに御議論いただいたところでございますけれども,例えばそういったような要件を切り出して類型を設けると,そもそもその類型に当たるかどうかということ自体が紛争の対象になるのではないかといったようなことなどもございましたので,そういうことを考慮して,今回はそういった特別の類型は,民事訴訟法の場合には設けないというようにしてございます。   それから,手続の関係,意見聴取等の関係につきましては,(注1)に書いてあるとおりでございます。   それから,(注2)でございますけれども,出頭した証人がどこで話すかという場所につきましては,刑事訴訟法は法律で規定しているわけでございますけれども,民事訴訟法の場合には,現在のテレビ会議システムと同様に,最高裁判所の規則に規定を置いてはどうかという趣旨で,(注)に記載がございます。   その内容でございますけれども,前回までの御議論を踏まえまして,当事者の方は受訴裁判所に出頭する。証人の方は受訴裁判所と同じ構内にある別の場所で陳述するということでもいいし,あるいは,イにありますとおり,ほかの裁判所,例えば近くのテレビ会議システムの設置されている別の裁判所に出頭してもいいというような選択肢も,刑事訴訟法と違って,認めてはどうかということでございます。   それから,(注3),それから(注4),これは例示の関係でございますけれども,こちらの方は先ほどと同じような問題があるということでございます。   さらに,刑事訴訟法と違いまして,ビデオ録画については特に規律を設けないこととしております。これも前回まで御議論がございましたけれども,民事訴訟におきましては特段証拠能力に制限がございませんので,前の訴訟の記録といいますものを書証として提出することが可能でございます。   あるいは,むしろそういうものが,ビデオ録画ということになって,記録の一部ということになりますと,例えば被告である加害者がそういったビデオを複製することが可能となってしまうということで,かえって被害者の保護につながらないというような場面もあるのではないか,こういう指摘もございました。   そういうことを踏まえまして,今回のこの案では,ビデオ録画については規律を設けないというようにしたものでございます。   以上です。 ● それでは,ただいまのビデオリンク方式による尋問につきまして,前回までのここでの審議内容を踏まえたものとなっておりますけれども,いずれの点についてでも御意見,御質問をいただければと存じますが,まず,本文に関してはいかがでしょうか。   ○○幹事,どうぞ。 ● もしかしたら誤記かもしれませんので,早めに申し上げたいと思いますが,刑訴法では「裁判官の在席する場所において」となっているのに,こちらでは「裁判長」となっておるのですが,これは裁判長に限る理由というのはないと思いますので,誤記ではないかなという気がするのですが。 ● ここは,「裁判長及び当事者が証人を尋問するために」というふうになっておりますが,民事訴訟法の202条で,尋問の順序が,「当事者,他の当事者,裁判長の順序でする」というふうになっており,陪席裁判官が尋問できるというのは規則に書かれております。ですから,「尋問するために」とあって,しかも,かつ,法律の規定だけを見ると「裁判長」になるのかなということで,こうなっているものでございます。 ● なるほど。何かちょっとそれは奇妙な気がいたしますが。刑訴はあれですか,裁判所が尋問することになっているんですか。 ● 実は,陪席裁判官が尋問できるということ自体が,刑事訴訟法に規定がございます。 ● 法律に入っているということですか。 ● 入っているのでございます。 ● なるほど。いや,そこまで深い考慮があるとは思いませんでした。 ● 先ほど御説明すればよかったのですが,ちょっと説明が漏れておりまして失礼いたしました。 ● どうも御指摘,ありがとうございました。私も,うっかり見逃しておりましたけれども。 ● 何か,そうすると規則で,陪席裁判官について,この規定を準用するみたいなことをしないとまずいのかなという気もしなくはないのですけれどもね。 ● 御指摘を踏まえまして,検討させていただきます。 ● ありがとうございました。   ほかに,本文の関係,いかがでしょうか。当事者本人に限ったことなどの説明は先ほどあったとおりでございますが。それから,例示の点はまた後で議論するとして,それ以外の点はよろしいでしょうか。   どうぞ,○○委員。 ● 先ほどの2のアの方は,「当事者本人又はその法定代理人」とあるのに,こっちは「当事者本人」だけだという御説明は--必ずしも私も全部理解できたわけではないのですが--伺ったのですが,ただ,これは結局,後の例示の全体の議論になるのかもしれませんけれども,例示だということで考えますと,そこまでこの2と,アと3の書き分ける必要があるのかなという,そういう疑問がある,そういうことを申し上げます。 ● その辺は,御指摘も踏まえて,次回の部会資料でどうするか,御指摘も含めて検討はいたしたいと思います。 ● では,そういうことで,ほかに御意見等はございますか。よろしいでしょうか。   そういたしましたら,(注)の1,2の関係はどうでしょうか。(注2)は,もう前回までに御議論いただいたところに沿ったものかと思いますが。格別の御意見はございませんか。   そうしましたら,(注3),(注4)の関係は例示との関連がございますので,そちらの議論を踏まえてということで,よろしければ次に,「犯罪被害者であって保護の必要がある場合の例示」の点について,説明をお願いいたします。 ● それでは,4の例示のところでございますが,大変申しわけないのですが,今回のこのたたき台では,具体的な例示の掲げ方につきまして,検討が十分済んでいない状況でございます。   そこで,まず,アでは,やはりこの例示というものが必要かどうかという点につきまして,改めて確認させていただきたいという趣旨のものでございます。   それから,イでございますけれども,先ほども少し御説明いたしましたが,仮に例示するとすると,一つのやり方としては,原因として例示する。   例えば,「証人が犯罪の被害を受けたことその他の事情により,当事者本人の面前において陳述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害するおそれがある」といったように,一つの原因として例示するということも考えられるのではないか。   ただ,先ほど○○委員の方からお話がありましたとおりで,原因として例示するとしても,その示し方についてはいろいろと方法はあるのかもしれません。   もし何か,どのようなものとして,あるいはどのような形で例示をするのが相当か,御意見がございますればお聞かせ願いたいというものでございます。   とりあえず,事務局といたしましては,今回の例示のねらい,あるいは,効果という点では,結果として,要件判断において必要である場合以上に,こういった措置がとられるということを防止することをねらいとするための例示ではないかというふうに思っておりまして,その具体的な方法としては,一つはこういう原因の面で絞っていくということも考えられるのではないかというようなことが,このイのところに書かれたものでございます。   ただ,このように原因としてもし例示をするというようなことになるとすれば,その例示の書き方にもよりますけれども,4ページの(注)にありますとおり,例えば2のアの措置ですとか,あるいはビデオリンクの措置につきましては,こういった事案の性質等が原因の事情となってしまう。それとの関係について少し整理をしなければいけないという問題点があるということをここに掲げさせていただいたということでございます。   以上でございます。 ● そうしましたら,やや確認的なことになりますけれども,まず,例示をすることそのものにつきまして,どのように考えるかという,この4のアの点に関してはいかがでしょうか。これは,そういうことで,以下のイ,例示の表現の仕方を検討するという方向でよろしゅうございますか。   そうしましたら,次に,今説明があったとおりですが,原因として書く。そして,原因として書く場合に,(注)に指摘されているような問題についてどのように考えるかという,やや技術的な問題ではございますけれども,この点に関して何か御意見はありますでしょうか。先ほど関連する御発言のあった○○委員,あるいは○○幹事,何か御発言はございますか。 ● あの--いや,どうぞ,どうぞ。 ● まあ,そう譲り合わないで。 ● 先ほど申し上げたように,例示を何とか入れられないかということで,もうここの4番のイの方に一つの案が示されているのかなと思いますが,「犯罪によって害を被ったこと」と書いてありますので,その文言を結局どこに入れるのかということだと思うのですが,2ページの2番のアの遮へいのところで言いますと,「法定代理人との関係」,その後に点で,「犯罪によって害を被ったこと,その他の事情により」と入れると,4ページの(注)のような問題が出てくるということだと理解しておりますが。   それで,一応並列的に入れるのはちょっとおかしいのではないかということが(注)に書かれているのだと思いますが,私の感覚は,余り並列的に入れておかしいとは思わないのですけれども,おかしいでしょうかね。 ● かなり,どういう規律にするかという問題に入り込んでしまいますので,ここではご意見をお聞かせいただいて,さらに私どもの方で検討させていただければ大変ありがたいと思います。   いろいろこちらの方でも考えておりますのは,例えば「犯罪によって害を被ったこと」というものが並列的に並べられるのかどうか。あるいは,先ほどちょっと御意見がございましたけれども,例えば「事案の性質」等の事情との関係はどう整理するのかといったようなこともありまして,一つの御意見として参考にさせていただきたいと思いますけれども,なお検討させていただければと思います。 ● 事務当局も大変この点,苦心をしているようでございますので,何かよいお知恵があれば,ぜひ承りたいと思いますけれども。   どうぞ。 ● ○○幹事と同じ趣旨なのですが,先ほど申し上げましたとおり,「事案の性質」,「証人の年齢」云々で「その他の事情」と,例えばこの犯罪の害を被ったことというのは,例示がさらにふえるという認識というふうな印象は実は受けていなくて,先ほど民法715条の例を出させていただきましたけれども,「事案の性質」,「証人の年齢」云々だけでも,圧迫を受けた原因の絞り込みはされていても,なお,これだけでは実際にはこういう場合も当たるのではないかという,かなり漠然とした不確定な要素があるのではないか。   そういう意味では,この中の--集合で言うと,「犯罪の被害」というものは,「事案の性質」という象徴的なものに含まれるという世界になるかと思うのですが,「犯罪の被害」は,この「事案の性質」という例示をさらに絞り込む意味での例示なので,べつに屋上屋を重ねたわけではないという認識は持っているのですけれども。   それから,仮に事情が,原因が,例示がさらに増えるという認識に立った場合には,場合によっては「により」を,先ほどの「考慮」ですか,というような表現の活用もあるかどうかということを感じます。よろしくお願いします。 ● ありがとうございました。   そういたしましたら,ただいま○○委員から御発言がございましたように,この例示をすることを求める意味というのは,結局,今現在のここに掲げられているような表現で言われていることを実質的な意味で限定をするような運用を可能にする,そういうための目的のものである。恐らくその点に関してはこの場での認識の一致があるかと思いますので,御苦労さまですけれども少し,さらに事務当局で検討を続けて,また次回に御提示いただければと思います。   ほかに,特にこの関係での御意見はございますか。   そういたしましたら,4ページの第2の「当事者尋問」についての説明をお願いいたします。それでは,第2,第3,まとめて説明をお願いいたします。 ● 次に,第2の「当事者尋問」のところでございます。   当事者本人尋問,むしろこちらの方がケースが多いかもしれません。例えば犯罪被害者の方が原告本人になって,加害者に対して訴えを起こしていくというような場合が一番典型例かと思います。   それから,法定代理人尋問,例えば幼少の方が被害者の場合に,その親御さんが尋問を受けるというようなケースも想定されるわけでございます。   これまでの御議論で,当事者本人尋問,それから法定代理人尋問につきましても,証人尋問と同じように,各措置について規定を設けるのが相当ではないかという御議論というふうに理解しております。   こちらの当事者本人尋問と法定代理人尋問につきましては,民事訴訟法上の規定では,証人尋問の規定を準用する,あるいは当事者本人尋問の規定を準用するというような形で,同様の扱いをするということになっておりますので,この要綱案の形としても,証人尋問と同じように扱いますよというような表現でよろしいのかなというのが,この第2の案の趣旨でございます。   それから,続きまして第3でございます。   犯罪被害者の情報の保護の制度につきましては,これまで御説明申し上げてきていますとおり,現在法制審議会の刑事法部会の方で検討されているところでございます。   そこでは,例えば起訴状の朗読の際に被害者情報を明らかにしない,あるいは,被害者情報が明らかになるようなそういう尋問を制限するといったようなことが検討されておりますし,あるいはまた,証拠開示の際に,検察官又は弁護人が相手方に対して被害者の氏名等が関係者に知られないようにするよう配慮を求めることができる,こういったようなことが検討されておるわけでございます。   この点につきまして,民事訴訟法におきましても,これに類似するような制度を設けることとするかどうかという点につきまして,前回まで御議論いただいたところでございます。   この点につきましては,例えば民事の場合には,特に書面の朗読ということが法律上求められている,こういうような制度上のものはございません。   あるいは,被害者情報の保護ということになりますと,そもそも民事訴訟における記録の開示といったような非常に大きい問題にもかかわってくるのではないか,あるいは,証拠開示の際の配慮と同じような制度を設けるかということにつきましては,民事訴訟の場合には,相手方の当事者本人にも証拠が渡るということになっている,こういう点で,相手方本人にも何らかの規制が本当にかけられるのかといったような,刑事とは違うような問題も出てくる。そういった諸々の問題が考えられるわけでございます。   そこで,今回の案でございますけれども,今回この諮問に応じました犯罪被害者等基本計画に基づく民事訴訟法の改正といたしましては,この計画に掲げられた,付添い,それから遮へい,ビデオリンクの三つの措置の導入にとどめて,ここで掲げられた問題につきましてはなお実務の運用に委ねるというようにして,今回,この計画に基づく改正事項としないことではどうかというのが今回の案でございます。   以上です。 ● そういたしましたら,まず,第2の「当事者尋問」という事項で,当事者本人尋問及び法定代理人尋問についても同様とするという,ここは特に何か御意見はございますか。前回以来,格別の御異論はなかったように思いますので,こういうことでよろしいでしょうか。--はい,ありがとうございます。   そういたしましたら,最後の「その他」で,ただいま○○幹事から説明があったとおりでございまして,実際,実務上の運用において解決できる部分がかなりあるということと,それから,完全にそうかという点については前回の審議でも御意見がございましたが,かといってこれ,検討を始めるとなるとかなり多岐にわたる項目についての検討が必要になるということで,今回は,先ほど申し上げたようなことで規定を設けないことというそういう原案でございますが,これに関して,御意見はございますでしょうか。   格別の御意見はないと承ってよろしいですか。--はい,ありがとうございます。   そういたしましたら,こういう原案で取りまとめさせていただきたいと存じます。   以上で,本日の予定いたしました審議事項は終わりでございますが,次回が最後の部会になります。そこで,事務当局には,本日の頂戴した御意見を踏まえまして検討をした上で,部会としての要綱案の取りまとめをお願いしたいと存じます。   では,最後に,今後の予定等についての事務連絡をお願いいたします。 ● 本日は,御審議ありがとうございました。   次回,第4回でございますけれども,今○○委員からお話がありましたとおり,この部会としては最終回になる予定でございます。1月26日の金曜日,時間は,今のところ午後1時から午後5時までを予定しております。場所でございますけれども,本日と同じこの部屋でございます。法務省20階の第一会議室でございます。   次回には,要綱案の(案)を私どもの方で御用意させていただきますので,それに基づきまして御審議いただきまして,要綱案を取りまとめていただく,こういう予定になっておりますので,何とぞどうぞよろしくお願い申し上げます。 ● それでは,ただいま申しましたようなことで次回が最後になりますが,本日の部会はこれで終了させていただきます。ありがとうございました。 -了-